JP4402285B2 - 共重合体ラテックスの製造方法および該製造方法で得られた共重合体ラテックス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジエン系共重合体ラテックス、およびそれを用いる紙塗工用組成物に関し、さらに詳しくは、オフセット印刷、グラビア印刷に供される塗工紙あるいは塗工板紙その他に使用する紙塗工用のバインダーとして好適な、高性能のジエン系共重合体ラテックス、およびそれらを用いる紙塗工用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成共重合体ラテックスは、例えば紙塗工用バインダー、カーペットバックサイジング用バインダー、不織布や人工皮革などの繊維結合用バインダー、あるいは各種材料の粘接着剤などとして広く用いられてる。そして、共重合体ラテックスがこのような用途に用いられる場合、共重合体ラテックスは、接着強度が強く、耐水性、乾燥加熱による耐ブリスター性などに優れていることが要求される。
【0003】
塗工紙は、紙の印刷適性の向上および光沢などの光学的特性の向上を目的して抄造された原紙表面に、カオリンクレー、炭酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、酸化チタンなどの顔料、それらのバインダーとしての共重合体ラテックスおよび保水剤あるいは補助バインダーとしてスターチ、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を主構成成分とする紙塗工用組成物が塗工用組成物が塗工されたものである。
【0004】
共重合体ラテックスとしては、スチレンとブタジエンを主要単量体成分とし、これらを乳化重合して得られたスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、いわゆるSB系ラテックスが汎用的に用いられている。
近年、カラー印刷された雑誌類やパンフレット、広告類の需要の拡大に伴って印刷速度の高速化が進められており、塗工紙および顔料バインダーに対する要求水準はますます高度化している。その中でも、特にインクピック抵抗性、いわゆるドライピック強度と、湿し水が塗付された後のインクピック抵抗性、いわゆるウェットピック強度の向上が強く求められている。これらのピック強度性能自体負の相関関係にあるだけでなく、他の印刷物性、すなわち耐ブリスター性、網点再現性などとも負の相関関係にあるため、これらの諸物性を高水準にバランス化させる改良が一段と要求されている。塗工紙のこれらの性質は、顔料バインダーとして用いられているSB系ラテックスの性能に強く依存することから、これまでSB系ラテックスについても種々の検討がなされてきた。
【0005】
例えば、これらの諸物性の高バランス化を目指し、2段もしくは多段重合法において特定のモノマー組成で重合する方法を用いたラテックスの改良が提案されている。(第1427990号,特開昭62−117897号,特開平6−240559号,特開平7−258308号,特開平7−324112号,特開平7−324113号,特開平9−25308号、特開平9−31141号,特開平9−31895号、特開2000−351803号)しかしながら近年における本技術分野においては、より高度な物性バランスの達成が要求されており、いずれの方法も塗工紙におけるドライピック強度、ウェットピック強度、耐ブリスター性、印刷光沢等の塗工紙物性や紙塗工における耐バッキングロール汚れ特性を向上させる方法として十分とは言い難かった。
【0006】
一方、塗工紙の生産能力を向上するために近年高速塗工化が進んでおり、塗工液においては塗工の高速化に伴う乾燥能力の低下への対応および生産効率を高める目的で塗工液の高固形分化が進められている。塗工液を高固形分化するには、重質炭酸カルシウムの配合率を高める等の顔料面からの流動性の改良とスターチ等の増粘性の大きい水溶性バインダーを減らしラテックスを増量することによるバインダー面からの改良が採られている。しかし、炭酸カルシウム比率を高める顔料面からの流動性の改良では、白紙光沢が低下し好ましくない。また、ラテックス量を増量するバインダー面からの流動性の改良では、塗工紙表面のベタツキ性を増大させるため、バッキングロール汚れやスーパーカレンダー汚れなどの問題を発生させ好ましくない。これらの問題を解決するために共重合体ラテックスを重合するにあたり、2段重合で第2段目にシアン化ビニル単量体、アミド基含有エチレン性不飽和単量体を重合することが提案されている(特開平4−240297号,特開平5−239113号)が、これらの方法では塗工紙の印刷適性と共重合体ラテックスの耐ベタツキ性は改善されるものの十分とは言い難く高速塗工のための高固形分条件下での塗工液の流動性は満足し得るものではなかった。
【0007】
さらに、共重合ラテックスを重合するにあたり、2段重合を行い第2段目にメタクリロニトリルをある添加速度で連続的に添加重合することにより、塗工紙の印刷適性と高速塗工のための高固形分の塗工液の流動性に優れることが提案されている(特開平10−182709号)が、この方法でも塗工紙の印刷適性と紙塗工における耐バッキングロール汚れ特性が満足し得るものではなかった。
このように、従来の技術では印刷と塗工紙の製造の一層の高速化に対応することができず、生産性を高め高品質の塗工紙の製造を可能にするバインダーとしての共重合体ラテックスの出現が強く求められているのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、重合安定性、粒径コントロール性に優れ、ドライピック強度とウェットピック強度、印刷光沢等の塗工紙物性に優れ、かつ湿潤ベタツキ性に代表される耐バッキングロール汚れ特性にも優れるジエン系共重合ラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、75℃以下の重合温度領域で、低Tgシードを用いて、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体およびその他共重合可能な単量体を多段乳化重合し、かつ第一工程と最終工程それぞれ単量体からなる共重合体部分の重量比と溶解度パラメータ差を特定範囲にしたジエン系共重合体ラテックスが課題を達成することを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち本発明の第1は、ガラス転移温度(Tg)30℃以下のラテックス粒子をシードとして用い、共役ジエン系単量体、およびこれらと共重合可能なその他単量体を、全単量体に対する重合率が少なくとも80%に達するまで重合温度75℃以下で重合を実施する多段重合により乳化重合するにあたって、第一工程で添加する単量体混合物(A)から得られる共重合体部分(PA)と最終工程で添加する単量体混合物(B)から得られる共重合体部分(PB)の重量比が下記式(1)を満たし、かつ第一工程で添加する単量体混合物(A)から得られる共重合体部分(PA)の溶解性パラメータ(SPA)と最終工程で添加する単量体混合物(B)から得られる共重合体部分(PB)の溶解性パラメータ(SPB)とが下記式(2)を満たすジエン系共重合体ラテックスの製造方法である。
0.25<(PA)/(PB)<4 (1)
0.2<(SPB)−(SPA)<2.0 (2)
但し、前記溶解性パラメータ(SPA)及び溶解性パラメータ(SPB)はRobert F.Fedorsの方法により算出されるものである。
本発明の第2は、最終工程での重合温度が、第一工程での重合温度よりも、5℃以上高いことを特徴とする請求項1記載の製造方法である。
本発明の第3は、透過型電子顕微鏡により測定した粒子径の標準偏差が15以下である請求項1または2記載の製造方法により得られたジエン系共重合体ラテックスである。
【0011】
本発明について、以下に具体的に説明する。なお以下の説明において、全単量体の合計は100重量部とする。
本発明に用いられる共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等を挙げることができるが、好ましくは1,3−ブタジエンである。これらの共役ジエン系単量体は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用される。
【0012】
共役ジエン系単量体の使用量は、全単量体100重量部に対し、好ましくは20〜70重量部、さらに好ましくは凝集力の点から25〜60重量部の範囲で選ばれる。この使用量が20重量部未満では得られる重合体が脆すぎ、また70重量部を越えると重合体が柔らかすぎ、いずれの場合も高い凝集力が得られず、本発明の目的を十分に達することができない。
共役ジエン系単量体の第一工程における使用量は、第一工程に添加する単量体混合物(A)に対し、好ましくは30〜90重量部%、さらに好ましくは45〜75重量%である。この使用量が30重量%未満では、得られる重合体が脆くなりすぎ、十分に高いドライピック強度を得ることが難しく、また90重量%を越えると、湿潤ベタツキ性に代表される耐バッキングロール汚れ適性が劣るようになり、本発明の目的を十分に達成することができない。
【0013】
また共役ジエン系単量体の最終工程における使用量は、最終工程で添加する単量体混合物(B)に対し、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。この使用量が5重量%未満では得られる重合体が脆くなり、塗工紙のドライピック強度の改良効果が十分に得られない。また、50重量%を超えると、湿潤ベタツキ性に代表される耐バッキングロール汚れ特性の改良効果、および塗工紙のウェットピック強度の改良効果が十分に発現されず、本発明の目的を十分に達することができない。
【0014】
本発明に用いられるエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などが挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体は1種あるいは2種以上組み合わせても良い。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、全単量体100重量部に対し、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜7重量部の範囲から選ばれる。この量が0.5重量部未満では、重合安定性、ストリッピング安定性が十分でなく、塗工液調整や塗工時において種々の問題が生じ、かつドライピック強度も劣り、また10重量部を超えるとラテックスや塗工液の粘度が高くなり過ぎ、かつウェットピック強度が低下する傾向が見られ、本発明の目的を十分に達することができない。
【0015】
共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体としては、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノ基含有エチレン性単量体類、スチレンスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらの共重合可能な単量体は1種あるいは2種以上を組み合わせて使用される。
【0016】
共重合可能なその他単量体の使用量は、共役ジエン系単量体+エチレン性不飽和カルボン酸単量体+共重合可能なその他単量体=100重量部になるように選択され、共役ジエン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸単量体の好ましい範囲から、20〜79.5重量部になる。
シアン化ビニル系単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリルニトリルなどを挙げることができるが、特にアクリロニトリルが好ましい。これらのシアン化ビニル系単量体は1種あるいは2種以上組み合わせてもよい。
【0017】
シアン化ビニル系単量体の最終工程における使用量は、最終工程で添加する単量体混合物(B)に対し、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは15〜50重量%である。その使用量が5重量%未満では、紙塗工における耐バッキングロール汚れ特性の指標となる共重合体ラテックスの耐湿潤ベタツキ性、および塗工紙のウェットピック強度が十分に発現されず、また60重量%を越えるとラテックスの重合安定性に劣り、本発明の目的を十分に達することができない。
【0018】
芳香族ビニル系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、ブロモスチレン、ビニルベンジルクロリド、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエトキシアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、グリシジルメタアクリルアミド、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、その好ましい使用量は全単量体100重量部に対し、10重量部以下、さらに好ましくは7重量部以下である。10重量部を超えて使用するとラテックスおよび紙塗工組成物の低せん断粘度を上げてしまい作業性を悪化させてしまうので好ましくない。
【0021】
本発明のジエン系共重合体ラテックスの製造方法では、2段階以上の、多段階重合法を用いて乳化重合するにあたり、第一工程で添加する単量体混合物(A)の組成から得られる共重合体部分(PA)の溶解性パラメータ(SPA)と最終工程で添加する単量体混合物(B)の組成から得られる共重合体部分(PB)の溶解性パラメータ(SPB)とが、下記式(2)を満たすことが必須である。
0.2<(SPB)−(SPA)<2 (2)
また、より好ましい範囲は0.4<(SPB)−(SPA)<1.5であり、さらに好ましい範囲は0.5<(SPB)−(SPA)<1.3である。(SPB)−(SPA)が0.2以下では、湿潤ベタツキ性が劣り、また、(SPB)−(SPA)が2以上では、特にドライピック強度が劣るため、本発明の目的を十分に達成することができない。
【0022】
なお、各共重合体部分の溶解性パラメータ(SPA)および(SPB)は、Robert F.Fedorsが規定する方法により、各々の単量体化合物構造と単量体組成から算出する。(POLYMER ENGINNEERING AND SCIENCE,1974,Vol.14,No.2,147−154page参照)
また、第一工程に添加された単量体混合物(A)の、最終工程での単量体混合物(B)が重合を開始する直前での、重合率は30〜90重量%であることが好ましい。この場合での重合率が30重量%未満では特に湿潤ベタツキ性とウェットピック強度が十分でなく、90重量%を超えるとドライピック強度が十分でなくなり、本発明の目的を十分に達成することができない。
【0023】
本発明の第一工程で添加される単量体混合物(A)の組成から得られる共重合体部分(PA)と最終工程で添加される単量体混合物(B)の組成から得られる共重合体部分(PB)の重量比(PA)/(PB)は、下記式(1)を満たすことが必須である。
0.25<(PA)/(PB)<4 (1)
また、より好ましくは0.41<(PA)/(PB)<2.4の範囲である。重量比(PA)/PBが0.25以下の場合ドライピック強度が十分でなく、また(PA)/(PB)が4以上の場合湿潤ベタツキ性が十分でなく、本発明の目的を十分に達成することができない。
【0024】
本発明で使用される単量体を乳化重合するに際しては、特に制限はなく、従来公知の方法で、水性媒体中で前記の単量体、連鎖移動剤と界面活性剤、ラジカル重合開始剤と必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本構成成分とする分散系において単量体を重合させて、共重合体粒子の水性分散液、すなわちジエン系共重合体ラテックスを製造する方法などが用いられる。
本発明において、重合にガラス転移温度(Tg)が30℃以下のシードラテックスを使用することは必須である。シードのガラス転移温度が30℃を越える場合、シードに添加される単量体の膨潤が不充分になり、粒径コントロール性と重合安定性も低下するため、本発明の目的を十分に達成することができない。
【0025】
本発明に使用するシードは、共重合ポリマーのガラス転移温度が30℃以下になるように共重合性単量体を選択し、乳化重合して得られるラテックス粒子のことである。シードの製造に使用する共重合性単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体0.5〜10重量部、およびエチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量部、およびその他の共重合可能な単量体80〜99重量部の範囲にあることが好ましい。さらに、これらの単量体は、不飽和結合を1つのみ有し、シード粒子は直鎖構造を主体とする高分子であることが好ましい。不飽和結合を2個以上有する単量体を使用し、乳化重合して得られる高度に架橋構造を有するシードを本発明の重合に使用した場合、シードに添加される単量体の膨潤が不充分になり、粒径コントロール性と重合安定性も低下するため、本発明の目的を十分に達成することができない。
【0026】
シードの平均粒子径としては、5〜70nmであることが好ましく、5−50nmであることがより好ましく、5〜30nmであることがさらに好ましい。70nmを越えると、そのシードを使用して生成するジエン系共重合体ラテックス中のシードの比率が増大するため、ドライピック強度が低下し、本発明の目的を十分達成することができない。5nm未満のシードは、シードを構成する単量体重合率が高い領域(70%以上)で、作成することができず、また重合を途中で止め、重合率が低いところで5nm未満のシードを作成した場合、分子量が低くなるため、シードに添加される単量体の膨潤が不充分になり、粒径コントロール性と重合安定性も低下するため、本発明の目的を十分に達成することができない。
【0027】
シードの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、2万<Mw<100万であることが好ましい。Mwが2万以下でも、100万以上でも、シードに添加される単量体の膨潤が不充分になり、粒径コントロール性と重合安定性も低下するため、本発明の目的を十分に達成することができない。
シードを構成する単量体の内、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸1−ヒドロキシプロピルエチル、メタクリル酸1−ヒドロキシプロピル、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
シードを構成するエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などが挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体は1種あるいは2種以上組み合わせても良い。
シードを構成するその他共重合可能な単量体の内、比較低いTgを与えるモノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、酢酸ビニル、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
シードラテックスの重合は、本発明のラテックスの重合に先だって同一反応容器で行っても、異なる反応容器で重合したシードラテックスを用いても良い。
このジエン系共重合体ラテックス中の共重合体の平均粒子径は、本発明の目的を十分に達成するために、0.04〜0.4μmの範囲にあることが望ましく、0.05〜0.2μmの範囲にあることがより好ましく、0.05〜0.13μmの範囲にあることがさらに好ましい。
本発明のジエン系共重合体ラテックスの平均粒子径は、主に使用するシードラテックスの使用量、シードラテックスの平均粒子径等によって調整することができ、一般にその使用割合を高くするほど生成するジエン系共重合体ラテックスの平均粒子径は小さくなる傾向がある。ただし適切なシードを適切量使用しない場合、重合系が不安定になり、逆に粒径肥大し、重合安定性を低下させる場合もある。
【0030】
本発明の製造方法により得られたジエン系共重合体ラテックスの透過型電子顕微鏡により撮影した粒子1000個に対する粒子径の標準偏差は、15以下である方が好ましい。粒子径の標準偏差が15よりも多い場合、印刷光沢が劣るようになる。
ジエン系共重合体ラテックスを製造する際の重合温度は、全単量体に対する重合率が80%に達するまで重合温度が75℃以下であることが必須である。より好ましくは重合率が90%に達するまで重合温度が75℃以下であること、または重合率が80%に達するまで重合温度が70℃以下であること、さらに好ましくは重合率が90%に達するまで重合温度が70℃以下であることである。重合率が80%に達するまでに重合温度を75℃より高くした場合、ドライピック強度またはウェットピック強度が低下することで、本発明の目的を達成することができない。
【0031】
ジエン系共重合体ラテックスを製造する際の各工程での重合温度に関し、第一工程と比較し、最終工程の方が5℃以上高い方が好ましい。より好ましくは15℃以上である。5℃より低い場合、高重合率に達するまで非常に長い時間がかかり、生産性の点で工業的に好ましくない。5℃より低い場合でも、最終工程以降で、多量の開始剤と還元剤を加え、重合を速く進行させることはできるが、分子量が低下し、高いドライピック強度を有するラテックスを製造することができない。
【0032】
重合時間は、通常3〜30時間である。
本発明で用いるシードのガラス転移温度と重合温度の関係は、重合温度からシードのガラス転移温度を引いた温度差が+10℃以上あることが好ましく、温度差が+20℃以上あることがより好ましい。温度差が+10℃未満だと、シードに中の添加される単量体の膨潤が不充分になり、重合安定性、粒径コントロール性が劣るようになり、本発明の目的を達成することができない。
単量体組成物の添加方法としては、各重合工程とも、単量体組成物の一括添加法、単量体組成物の一部を添加した後に重合の進行に従って断続的もしくは連続的に添加する方法、また、単量体組成物を連続的に添加する方法等のいずれでもよい。また、単量体組成物を連続的に添加する場合の添加速度にも、特に制限はない。
【0033】
本発明のジエン系共重合体ラテックスの製造方法では、一般の乳化重合に使用されている公知の連鎖移動剤を使用することができる。例えば、α−メチルスチレンダイマーなどの核置換α−メチルスチレンの二量体類、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレンなどを挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。連鎖移動剤としては特にα−メチルスチレンダイマ−、t−ドデシルメルカプタン、ターピノーレンが好ましい。連鎖移動剤は単量体100重量部あたり0.1〜10重量部の範囲内で使用することが好ましい。この範囲を外れるとピック強度、湿潤ピック強度、耐ブリスター性のバランスが低下し本発明の効果を出現させることが難しくなる。α−メチルスチレンダイマーには、異性体として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテンおよび1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンがあるが、本発明で使用されるα−メチルスチレンダイマーとしては、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの比率が60重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの比率が80重量%以上である。
【0034】
界面活性剤としては、一般の乳化重合に使用されている公知の界面活性剤を使用することができる。例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤、スチレンスルホン酸ナトリウムの様な不飽和結合を有する反応性界面活性剤、さらに必要に応じてベタイン型などの両性界面活性剤などが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。この界面活性剤は通常、アニオン性界面活性剤単独、反応性界面活性剤単独、アニオン性/反応性またはアニオン性/ノニオン性の混合系で用いられ、その使用量は全単量体の重量に対し、通常0.05〜2重量%の範囲で選ばれる。
【0035】
前記ラジカル重合開始剤は、熱または還元性物質の存在下ラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤および有機系開始剤のいずれも使用できる。このようなものとしては、例えば水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等、具体的には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどがあり、また他に、POLYMER HANDBOOK(3rd edition)、J.BrandrupおよびE.H.Immergut著、JohnWilly & Sons刊(1989)に記載されている化合物が挙げられる。また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を採用することもできる。第一工程では特に無機系のラジカル重合開始剤を使用することが好ましく、さらには重合の全工程において無機系のラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。これらの中で特に過硫酸塩が重合開始剤として好適である。この重合開始剤の使用量は、全単量体の重量に対し、通常0.1〜5.0重量%の範囲から、好ましくは0.2〜3.0重量%の範囲から選ばれる。
【0036】
本発明においては、必要に応じ各種重合調整剤を添加することができる。例えば、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどのpH調整剤を添加することができ、この中でも水酸化カリウムがピック強度と湿潤ピック強度のバランスを高める点で特に好ましく、重合後のpH調整剤としては好適である。また、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどの各種キレート剤、無機電解質、有機電解質、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質などを重合安定剤や粘度重合調整剤として添加することもできる。また、必要に応じ本発明の共重合体ラテックスにアルカリ感応ラテックスを添加してもさしつかえない。
【0037】
本発明の製造方法で得られるジエン系共重合体ラテックスを紙塗工用塗料のバインダーとして用いる場合には、通常行われている実施態様で行うことができる。すなわち、分散剤を溶解させた水中に、カオリンクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク等の無機顔料、プラスチックピグメントやバインダーピグメントとして知られる有機顔料、澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子、増粘剤、染料、消泡剤、防腐剤、耐水化剤、滑剤、印刷適性向上剤、保水剤等の各種添加剤とともにジエン系共重合体ラテックスを添加して混合し、均一な分散液とする態様である。顔料と本発明のジエン系共重合体ラテックスの使用割合は組成物の使用目的によって適宜決定することが出来るが、好ましくは顔料100重量部に対してラテックス3〜30重量部である。そして、この紙塗工液は、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーターなどを用いる通常の方法によって原紙に塗工することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、各特性は次のように求めた。
(a)シードの重量平均分子量:Mw
シードをガラス転移温度(Tg)以上で成膜し、このフィルムをテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めた。
(b)シードのガラス転移温度:Tg
上記と同様に作成したシードラテックスフィルムについて、セイコー電子社製示差熱量計(DSC−220C)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定した。
【0039】
(c)シードの平均粒子径、共重合体の平均粒子径
光散乱法粒度分析計(シーエヌウッド社製モデル6000)により、平均直径を求めた。
(d)粒径コントロール性
シード効率:eで判断した。e=Se÷Sf×100
ここで、Sfはモノマー量100部に対する仕込みシード量であり、Dsは実測のシード粒子径であり、Dpは実測のポリマー粒子径である。また、Seはモノマー量100部に対する有効シード量であり、次式で与えられる。
Se=100/[(Dp)3/(Ds)3−1]
粒子径:Dp、Ds
シード効率80%以上:○、50〜80%未満:△、50%未満:×と判定した。
【0040】
(e)重合率の測定方法
重合中にサンプリングしたラテックスを2g秤量後、130℃で30分乾燥後、固形分を測定し、リアクター内に添加される単量体量から重合率を求めた。
(f)重合安定性の測定方法
重合終了後、ラテックス1Lを200メッシュ金網でろ過し、金網上に残った固形分を、130℃で60分乾燥後、その重量を求めた。
0.2g未満:○、0.2〜0.4g:△、0.4gを超えて以上:×と判定した。
(g)ドライピック強度
RI印刷試験機(明製作所)を用いて、中央部に塗工紙(1.5cm×20cm)をならべて貼った台紙(30cm×25.5cm)に、印刷インク(東華色素社製、商品名:SDスーパーデラックス50紅B(タック18のもの)0.5ccを25cm×21cmの印刷面積で台紙ごと印刷し塗工紙に重ね刷りした。ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は5点評価法で行い、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
【0041】
(h)ウェットピック強度
RI印刷試験機(明製作所)を用いて、中央部に塗工紙(1.5cm×20cm)ならべて貼った台紙(30cm×25.5cm)にモルトンロールで塗工紙表面に給水を行い、その直後に印刷インク(東華色素社製、商品名:SDスーパーデラックス50紅B(タック15のもの)0.5ccを25cm×21cmの印刷面積で1回刷りを行い、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は5点評価法で行い、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
【0042】
(i)印刷光沢
RI印刷試験機(明製作所)を用いて、中央部に塗工紙(1.5cm×20cm)をならべて貼った台紙(30cm×25.5cm)に、印刷インク(大日本インク社製、商品名:ジオスGスミ)0.6ccを25cm×21cmの印刷面積で1回刷りを実施した。23℃、湿度50%で、24時間放置後、印刷光沢値を光沢計を用い、60℃で測定した。
60以上を合格とした。
(j)湿潤ベタツキ性
ラテックスをポリエチレンテレフタレートフィルム上にNo14のバーにより塗布し、130℃で30秒間乾燥し、皮膜を形成させる。片面表面を水に浸漬した黒ラシャ紙をこの皮膜と合わせて、カレンダーを用い、温度80℃の条件下で圧着させる。両者を引きはがして、黒ラシャ紙のラテックスへの転写の程度を目視で5点評価法で行い、転写の少ないものほど高得点とした。
【0043】
(シードA−Cの製造方法)
撹拌機を備えた温度調節可能な反応器の内部を予め窒素置換した後、イオン交換水850重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部、亜硫酸水素ナトリウム0.5重量部、硫酸第二鉄0.0005重量部、表1に示す単量体混合物と連鎖移動剤を全量加えてから、90℃に温度調節し、過硫酸ナトリウム1重量部とイオン交換水50重量部にを溶解させた開始剤水溶液を一括添加した。その後2時間90℃を保持してから、重合系内温度を下げ、シードラテックス分散液を得た。合成されたシードラテックス分散液は固形分は、固形分約10重量%、ポリマーの粒径、TgおよびMwは表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
【実施例1】
シードAを(固形分換算)0.3重量部(シード水溶液固形分濃度10重量%)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、イオン交換水200重量部を撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に入れた後、45℃で表2中の第一工程単量体、第一工程連鎖移動剤と過硫酸ナトリウム1部を添加し、反応を進行させた。開始剤添加開始6時間後、表2中の第二工程単量体、連鎖移動剤を60℃で7時間に渡って追添した。第二工程単量体添加終了後、内温を65℃にして6時間反応させた。最終重合率は98%であった。生成したラテックスは、200メッシュ金網で濾過した。次に、水酸化カリウムを添加し、pH8に調整後、未反応単量体を除去し、さらに濃縮後、ポリアクリル酸ナトリウム0.5重量部、水酸化カリウムを加え、このジエン系共重合体ラテックスを最終的に固形分濃度50%、pH8に調整した。
【0046】
得られた共重合体ラテックスを用いて、下記の配合で紙塗工用組成物を調整した。
(配合処方)
カオリンクレー 70 重量部
炭酸カルシウム 30 重量部
ポリアクリル酸ナトリウム 0.2重量部
水酸化ナトリウム 0.1重量部
リン酸エステル化デンプン 2.5重量部
共重合体ラテックス 12 重量部
水(全固形分が64%になるように添加)
【0047】
なお、カオリンクレーはウルトラホワイト90(ENGELHARD社製)を、炭酸カルシウムはカービタル90(ECC社製)を、ポリアクリル酸ナトリウムはアロンT−40(東亞合成社製)を、リン酸エステル化デンプンはMS−4600(日本食品加工社製)をそれぞれ使用した。得られた紙塗工用組成物を坪量75g/m2の塗工原紙に塗工量が片面14g/m2になるようにブレード塗工後、恒温恒湿室(23℃、湿度50%)に一晩放置した。これをカレンダーロールで、ロール温度50℃、線圧147000N/mの条件で1塗工面につき2回通紙する事により塗工紙を得た。この塗工紙を用いておこなった評価結果を表3に示した。
【0048】
【実施例2】
シード種としてシードBを用いた以外、実施例1と同様に重合し、最終重合率は98%であった。次いで、実施例1と同様に調整し、評価を実施した。
【0049】
【実施例3〜6】
実施例1と同様に重合し、最終重合率は97〜99%であった。次いで、実施例1と同様に調整し、評価を実施した。
【0050】
【実施例7】
第二工程単量体添加終了後の内温を70℃にした以外、実施例1と同様に重合し、最終重合率は98%であった。次いで、実施例1と同様に調整し、評価を実施した。
【0051】
【実施例8】
シードAを(固形分換算)0.3重量部(シード水溶液固形分濃度10重量%)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、イオン交換水200重量部を撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に入れた後、45℃で表2中の第一工程単量体、第一工程連鎖移動剤と過硫酸ナトリウム1重量部を添加し、反応を進行させた。開始剤添加開始6時間後、表2中の第二工程単量体、連鎖移動剤を60℃で3時間に渡って追添し、次いで第三工程単量体、連鎖移動剤を65℃で4時間に渡って追添した。第三工程単量体添加終了後、内温を70℃にして6時間反応させた。最終重合率は96%であった。次いで、実施例1と同様に調整し、評価を実施した。
【0052】
【実施例9】
シードAを(固形分換算)0.3重量部(シード水溶液固形分濃度10重量%)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、イオン交換水200重量部を撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に入れた後、45℃で表2中の第一工程単量体、第一工程連鎖移動剤の50重量%と過硫酸ナトリウム1部を添加した。開始剤添加後、第一工程単量体、第一工程連鎖移動剤の残りの50重量%を6時間に渡って追添した。第一工程追添終了後、すぐに表2中の第二工程単量体、連鎖移動剤を60℃で7時間に渡って追添した。第二工程単量体添加終了後、内温を65℃にして6時間反応させた。最終重合率は97%であった。次いで、実施例1と同様に調整し、評価を実施した。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【比較例1】
シード種としてシードCを用いた以外、実施例1と同様に重合し、評価を実施した。使用するシードのTgが、本発明の請求項の範囲外であり、重合安定性と粒径コントロール性が劣った。
【0056】
【比較例2、3】
比較例2は、シードを使用しない以外、実施例1と同様に重合し、評価を実施した。比較例3は、シードを使用しない代わりに、還元剤として亜硫酸水素ナトリウムを0.5部使用した以外、実施例1と同様に重合し、評価を実施した。比較例2−3は、シードを使用しないため、本発明の請求項の範囲外であり、比較例2は重合安定性、粒径コントロール性、ウェットピック強度、印刷光沢が劣り、比較例3は、重合安定性と数粒子径の標準偏差が大きくなったことによる印刷光沢が劣った。
【0057】
【比較例4】
重合温度55℃で1段で単量体を13時間かけて添加後、内温を65℃にして6時間反応させた。実施例4は多段重合でないため、本発明の請求項の範囲外であり、ドライピック強度と湿潤ベタツキ性が劣った。
【0058】
【比較例5、6】
実施例1と同様に重合し、評価を実施した。比較例5、6は、第一工程と最終工程それぞれの単量体からなる共重合体部分の重量比が、本発明の請求項の範囲外であり、比較例5は、重合安定性、粒径コントロール性、ドライピック強度、ウェットピック強度、印刷光沢、湿潤ベタツキ性が劣り、比較例6はウェットピック強度と湿潤ベタツキ性が劣った。
【0059】
【比較例7】
第一工程の重合温度60℃、第二工程の重合温度75℃、第二工程単量体添加終了後、内温を90℃にして6時間反応させた。第二工程単量体添加終了時での重合率は75%であり、最終重合率は97%であった。本比較例は、全単量体100重量部に対する重合率が80%を越える時点で、重合温度が75℃を超えているため、本発明の請求項の範囲外であり、ドライピック強度、ウェットピック強度が劣った。
【0060】
【比較例8、9】
実施例1と同様に重合し、評価を実施した。比較例8、9は、第一工程と最終工程それぞれの単量体からなる共重合体部分の溶解性パラメータ差が、本発明の請求項の範囲外であり、比較例8は、湿潤ベタツキ性が劣り、比較例9は、重合安定性、粒径コントロール性、ドライピック強度が劣った。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、ラテックスの粒子径を正確にコントロールでき、シード効率が向上し、重合残さが低減する。塗工紙におけるドライピック強度、ウェットピック強度等の塗工紙バランスを向上することができる。また、紙塗工におけるバッキングロール汚れ特性を向上することができる。
Claims (3)
- ガラス転移温度(Tg)30℃以下のラテックス粒子をシードとして用い、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体およびこれらと共重合可能なその他単量体を、全単量体に対する重合率が少なくとも80%に達するまで重合温度75℃以下で重合を実施する多段重合により乳化重合するにあたって、第一工程で添加する単量体混合物(A)から得られる共重合体部分(PA)と最終工程で添加する単量体混合物(B)から得られる共重合体部分(PB)の重量比が下記式(1)を満たし、かつ第一工程で添加する単量体混合物(A)から得られる共重合体部分(PA)の溶解性パラメータ(SPA)と最終工程で添加する単量体混合物(B)から得られる共重合体部分(PB)の溶解性パラメータ(SPB)とが下記式(2)を満たすジエン系共重合体ラテックスの製造方法。
0.25<(PA)/(PB)<4 (1)
0.2<(SPB)−(SPA)<2.0 (2)
但し、前記溶解性パラメータ(SPA)及び溶解性パラメータ(SPB)はRobert F.Fedorsの方法により算出されるものである。 - 最終工程での重合温度が、第一工程での重合温度よりも、5℃以上高いことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 透過型電子顕微鏡により測定した粒子径の標準偏差が15以下である請求項1または2記載の製造方法により得られたジエン系共重合体ラテックス。
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