JP4400045B2 - 誘電体セラミックおよびその製造方法ならびに積層セラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体セラミックおよびその製造方法ならびに積層セラミックコンデンサ Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、誘電体セラミックおよびその製造方法、ならびにこの誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサに関するもので、特に、積層セラミックコンデンサにおける誘電体セラミック層の薄層化を有利に図り得るようにするための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサは、以下のようにして製造されるのが一般的である。
【0003】
まず、その表面に、所望のパターンをもって内部電極となる導電材料を付与した、誘電体セラミック原料粉末を含むセラミックグリーンシートが用意される。誘電体セラミックとしては、たとえば、BaTiO3 を主成分とするものが用いられる。
【0004】
次に、上述した導電材料を付与したセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、熱圧着され、それによって一体化された生の積層体が作製される。
【0005】
次に、この生の積層体は焼成され、それによって、焼結後の積層体が得られる。この積層体の内部には、上述した導電材料をもって構成された内部電極が形成されている。
【0006】
次いで、積層体の外表面上に、内部電極の特定のものに電気的に接続されるように、外部電極が形成される。外部電極は、たとえば、導電性金属粉末およびガラスフリットを含む導電性ペーストを積層体の外表面上に付与し、焼き付けることによって形成される。
【0007】
このようにして、積層コンデンサが完成される。
【0008】
上述した内部電極のための導電材料として、近年、積層セラミックコンデンサの製造コストをできるだけ低くするため、たとえばニッケルまたは銅のような比較的安価な卑金属を用いることが多くなってきている。しかしながら、卑金属をもって内部電極を形成した積層セラミックコンデンサを製造しようとする場合、焼成時における卑金属の酸化を防止するため、中性または還元性雰囲気中での焼成を適用しなければならず、そのため、積層セラミックコンデンサにおいて用いられる誘電体セラミックは、耐還元性を有していなければならない。
【0009】
上述のような耐還元性を有する誘電体セラミックとして、たとえば、特開平5−9066号公報(特許文献1)、特開平5−9067号公報(特許文献2)および特開平5−9068号公報(特許文献3)においては、BaTiO3 −希土類酸化物−Co2 3 系の組成が提案されている。
【0010】
また、特開平6−5460号公報(特許文献4)、特開平9−270366号公報(特許文献5)および特開2001−230149号公報(特許文献6)では、高い誘電率を示し、誘電率の温度変化が小さく、高温負荷寿命の長い誘電体セラミックが提案されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−9066号公報
【特許文献2】
特開平5−9067号公報
【特許文献3】
特開平5−9068号公報
【特許文献4】
特開平6−5460号公報
【特許文献5】
特開平9−270366号公報
【特許文献6】
特開2001−230149号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
近年のエレクトロニクス技術の発展に伴い、電子部品の小型化が急速に進行し、積層セラミックコンデンサについても、小型化かつ大容量化の傾向が顕著になってきている。
【0013】
したがって、内部電極に使用する卑金属が酸化されない焼成雰囲気においても、誘電率が高く、誘電率の温度変化および経時変化が小さく、誘電体セラミック層が薄層化されても、電気絶縁性が高く、それゆえ信頼性に優れた誘電体セラミックを望む要求が強くなってきている。しかしながら、前述したような従来の誘電体セラミックは、必ずしも、この要求を十分に満足し得るものではない。
【0014】
たとえば、特許文献1ないし3に記載された誘電体セラミックは、EIA規格におけるX7R特性を満足し、高い電気絶縁性を示すものの、誘電体セラミック層を薄層化したとき、具体的には、5μm以下、特に3μm以下というように薄層化したときの信頼性に関しては、必ずしも、市場の要求を十分満たし得るものではない。
【0015】
また、特許文献4に記載される誘電体セラミックは、使用されるBaTiO3 の粒径が大きいため、誘電体セラミック層が薄層化されるに従って、信頼性が低下し、また、静電容量の経時変化が大きいという問題がある。
【0016】
また、特許文献5に記載される構造を有する誘電体セラミックについても、誘電体セラミック層が薄層化されるに従って、信頼性が低下し、また、直流電圧印加下での静電容量の経時変化が大きいという問題がある。
【0017】
また、特許文献6に記載される誘電体セラミックは、原料調合時に、予めMgOとBaTiO3 とを反応させたものに希土類元素を添加するという工程を用いていることから、希土類元素が、粒内に固溶しにくく、それゆえ粒界および三重点に高濃度に偏析するため、粒内および粒界におけるドナーとアクセプターとの電荷バランスが悪くなり、誘電体セラミック層が薄層化されるに従って、信頼性が低下したり、直流電圧印加下での静電容量の経時変化が大きくなるという問題がある。
【0018】
以上のようなことから、積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化に対応するために、誘電体セラミック層を薄層化した場合、定格電圧を薄層化する前と同じであると、誘電体セラミック層の1層あたりに印加される電界強度が大きくなるため、室温または高温での絶縁抵抗が低くなってしまうことなどの点で、信頼性が著しく低下してしまう。そのため、従来の誘電体セラミックを用いる場合には、誘電体セラミック層を薄層化するにあたって、定格電圧を下げる必要がある。
【0019】
そこで、誘電体セラミック層を薄層化しながらも、定格電圧を下げる必要がなく、また、高い電界強度下での絶縁抵抗が高く、信頼性に優れた、積層セラミックコンデンサの実現が望まれるところである。
【0020】
また、積層セラミックコンデンサは、通常、直流電圧を印加した状態で使用されるため、静電容量が経時的に変化することが知られている。しかしながら、積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化に伴う誘電体セラミック層の薄層化の結果、誘電体セラミック層の1層あたりの直流電界強度が高くなり、静電容量の経時変化がより大きくなるという問題がある。
【0021】
そこで、直流電圧が印加された状態での静電容量の経時変化が小さい、積層セラミックコンデンサが望まれるところである。
【0022】
したがって、この発明の目的は、誘電率が高く、誘電率の温度変化および直流電圧印加下での経時変化が小さく、絶縁抵抗と静電容量との積(CR積)が高く、高温かつ高電圧下における絶縁抵抗の加速寿命が長い、積層セラミックコンデンサを構成することができる、誘電体セラミックおよびその製造方法を提供しようとすることである。
【0023】
この発明の他の目的は、誘電体セラミック層を薄層化しても信頼性に優れた、上述のような誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサを提供しようとすることである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ABO3 (Aは、Ba、またはBaならびにその一部が置換されたCaおよびSrの少なくとも1種であり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされる主成分と、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Co、FeおよびCrのうちの少なくとも1種である。)を含む添加成分とを含む組成を有し、かつABO3 を主成分とする結晶粒子と結晶粒子間を占める結晶粒界とからなる、誘電体セラミックにまず向けられるものであって、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0025】
すなわち、Rの濃度を原子比でRとし、Mの濃度を原子比でMとしたとき、結晶粒子の径に対して表面から5%までの領域に位置する分析点および結晶粒界に位置する複数の分析点について、それぞれの60%以上の分析点において、CR/CM>1の条件を満足することを第1の特徴としている。
【0026】
さらに、この発明に係る誘電体セラミックは、結晶粒子のうちの50%以上の個数のものについては、結晶粒子の中央部におけるCRおよびCMが、それぞれ、結晶粒子の径に対して表面から5%までの領域におけるCRおよびCMの各最大値の1/10以下であるという条件を満足することを第2の特徴としている
【0027】
の発明に係る誘電体セラミックは、SiO2、LiOおよびB23(酸化ホウ素)から選ばれた少なくとも1種を主成分とする焼結助剤をさらに含んでいてもよい。
【0028】
また、この発明に係る誘電体セラミックは、結晶粒子の平均粒子径が0.5μm以下であることが好ましい。
【0029】
この発明は、また、上述のような誘電体セラミックを製造する方法にも向けられる。
【0030】
この発明に係る誘電体セラミックの製造方法は、ABO3(Aは、Ba、またはBaならびにその一部が置換されたCaおよびSrの少なくとも1種であり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)を合成し、次いで粉砕することによって、ABO3粉末を得る工程と、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)を含むR化合物を用意する工程と、M(Mは、Mn、Co、FeおよびCrのうちの少なくとも1種である。)を含むM化合物を用意する工程と、R化合物とM化合物とを、R化合物の原子比が多くなるように混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、仮焼粉末を得る工程と、ABO3粉末と仮焼粉末の一部とを混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、変性ABO3粉末を得る工程と、変性ABO3粉末と仮焼粉末の残部とを含む混合粉末を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0031】
上述の焼成工程に付される変性ABO3 粉末と仮焼粉末の残部とを含む混合粉末には、必要に応じて、所定の添加物が添加されてもよい。
【0032】
この発明は、さらに、上述のような誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサにも向けられる。
【0033】
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、積層された複数の誘電体セラミック層および複数の誘電体セラミック層間の特定の界面に沿いかつ積層方向に重なり合った状態で形成された複数の内部電極を含む、積層体と、内部電極の特定のものに電気的に接続されるように積層体の外表面上に形成される外部電極とを備えるもので、誘電体セラミック層が、上述のような誘電体セラミックからなることを特徴としている。
【0034】
上述の積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極が卑金属を含む場合や、外部電極が卑金属を含む場合において、この発明が特に有利に適用される。
【0035】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【0036】
積層セラミックコンデンサ1は、積層体2を備えている。積層体2は、積層される複数の誘電体セラミック層3と、複数の誘電体セラミック層3の間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成される複数の内部電極4および5とをもって構成される。内部電極4および5は、積層体2の外表面にまで到達するように形成されるが、積層体2の一方の端面6にまで引き出される内部電極4と他方の端面7にまで引き出される内部電極5とが、積層体2の内部において交互に配置されている。
【0037】
積層体2の外表面上であって、端面6および7上には、導電性ペーストを塗布し、次いで焼き付けることによって、外部電極8および9がそれぞれ形成されている。また、外部電極8および9上には、必要に応じて、第1のめっき層10および11がそれぞれ形成され、さらにその上には、第2のめっき層12および13がそれぞれ形成されている。
【0038】
このようにして、積層セラミックコンデンサ1において、複数の内部電極4および5は、積層体2の積層方向に互いに重なり合った状態で形成され、それによって、隣り合う内部電極4および5間で静電容量を形成する。また、内部電極4と外部電極8とが電気的に接続されるとともに、内部電極5と外部電極9とが電気的に接続され、それによって、これら外部電極8および9を介して、上述の静電容量が取り出される。
【0039】
誘電体セラミック層3は、この発明の特徴となる、次のような誘電体セラミックから構成される。
【0040】
すなわち、ABO3 (Aは、Ba、またはBaならびにその一部が置換されたCaおよびSrの少なくとも1種であり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされる主成分と、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Co、FeおよびCrのうちの少なくとも1種である。)を含む添加成分とを含む組成を有し、かつABO3 を主成分とする結晶粒子と結晶粒子間を占める結晶粒界とからなる、誘電体セラミックから誘電体セラミック層3が構成される。
【0041】
この誘電体セラミックは、さらに、次のような特徴を有している。図2は、誘電体セラミックを構成する、ABO3 を主成分とする結晶粒子21と結晶粒子21間を占める結晶粒界22と図解的に示す断面図である。
【0042】
上述したRの濃度を原子比でRとし、Mの濃度を原子比でMとしたとき、図2に示すように、結晶粒子21の径に対して表面から5%までの領域(表面近傍領域)に位置する複数の分析点23および結晶粒界22に位置する複数の分析点24について、それぞれの60%以上の分析点23および24において、CR/CM>1の条件を満足することを特徴としている。
【0043】
上述したように、CR /CM >1であるという条件を満足する分析点23および24が60%以上であるとしたのは、これが60%より少ない場合には、過剰な酸素空孔の存在により、高温高電圧下における絶縁抵抗の加速寿命が短くなったり、誘電率の直流電圧印加下での経時変化が大きくなったりしてしまうためである。
【0044】
また、この誘電体セラミックは、結晶粒子21のうちの50%以上の個数のものについては、結晶粒子21の中央部における分析点25でのCRおよびCMが、それぞれ、表面近傍領域における分析点23でのCRおよびCMの各最大値の1/10以下であるという条件を満足することを特徴としている
【0045】
上述のように、結晶粒子の中央部における分析点25でのCR およびCM が、それぞれ、結晶粒子21の表面近傍領域における分析点23でのCR およびCM の各最大値の1/10以下である、結晶粒子21の個数の割合を50%以上としたのは、これが50%よりも少ない場合には、温度特性が悪化したり、粒成長を引き起こして信頼性の低下を招いたりするためである。
【0046】
添加成分であるRおよびMの添加量については、特に限定されるものではないが、高温負荷寿命の延長という観点からは、主成分であるABO3 100モルに対して、0.1モル以上であることが好ましく、高誘電率とするためには、ABO3 100モルに対して、10モル以下であることが好ましい。これらRおよびMの各々の種類の変更や添加量の変更といった手段を組み合わせることによって、高誘電率化したり、絶縁抵抗を高くしたり、高温負荷寿命を延長するなど、市場要求に応じた特性制御が可能になる。
【0047】
また、誘電体セラミックに、SiO2 、Li2 OおよびB2 3 (酸化ホウ素)から選ばれた少なくとも1種を主成分とする焼結助剤を含有させることにより、誘電体セラミックの焼結温度を低温化させたり、CR積や高温高電圧下における絶縁抵抗の加速寿命をより向上させることが可能になる。
【0048】
また、誘電体セラミックを構成する結晶粒子21の平均粒子径は、図1に示した誘電体セラミック層3の薄層化により適切に対応するには、0.5μm以下であることが好ましい。このような平均粒子径を有する誘電体セラミックを用いた場合、誘電体セラミック層3は、厚み1μm前後にまで問題なく薄層化することができる。
【0049】
なお、本件明細書において、「結晶粒界」とは、2つの結晶粒子により形成される領域を指す場合と、3つ以上の結晶粒子により形成される領域(いわゆる三重点)を指す場合とがある。より具体的には、セラミックの断面において、結晶学的に結晶粒子間に明らかな層が観察された場合、これが結晶粒界となる。また、セラミックの断面において、結晶学的に結晶粒子間に他の層が観察されず、結晶粒子同士が接合されている場合には、接合点および接合線を中心とした2nmずつの領域が結晶粒界となる。
【0050】
上述したような結晶粒界には、主成分であるABO3 成分ならびに添加成分であるR成分およびM成分以外に、焼結助剤成分、Mg、Al、V成分などが存在していても、誘電体セラミックの特性を実質的に低下させることはない。
【0051】
次に、誘電体セラミックないしは図1に示した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0052】
まず、誘電体セラミック層3を構成する誘電体セラミックの原料粉末が用意される。この原料粉末は、以下のようにして作製されることが好ましい。
【0053】
すなわち、ABO3 を合成し、次いで粉砕することによって、ABO3 粉末が作製される。他方、Rを含むR化合物が用意されるとともに、Mを含むM化合物が用意される。
【0054】
次に、R化合物とM化合物とを、R化合物の原子比が多くなるように混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、RとMとを含む仮焼粉末が作製される。
【0055】
次に、ABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、変性ABO3 粉末が作製される。
【0056】
次に、変性ABO3 粉末と仮焼粉末の残部とが混合され、この混合粉末が誘電体セラミックの原料粉末とされる。この混合粉末には、必要に応じて、所定の添加物が添加されてもよい。
【0057】
このようにして原料粉末を作製すれば、前述したような条件を満足する誘電体セラミックを得ることが容易である。
【0058】
次に、上述のようにして得られた誘電体セラミックのための原料粉末に、有機バインダおよび溶剤を添加し、混合することによって、スラリーが作製され、このスラリーを用いて、誘電体セラミック層3となるセラミックグリーンシートが成形される。
【0059】
次いで、特定のセラミックグリーンシート上に、内部電極4または5となるべき導電性ペースト膜がたとえばスクリーン印刷によって形成される。この導電性ペースト膜は、ニッケル、ニッケル合金、銅または銅合金のような卑金属を導電成分として含んでいる。なお、内部電極4および5は、スクリーン印刷法のような印刷法によるほか、たとえば、蒸着法、めっき法などによって形成されてもよい。
【0060】
次いで、上述のように導電性ペースト膜を形成した複数のセラミックグリーンシートが積層されるとともに、これらセラミックグリーンシートを挟むように、導電性ペースト膜が形成されないセラミックグリーンシートが積層され、圧着された後、必要に応じてカットされることによって、積層体2となるべき生の積層体が得られる。この生の積層体において、導電性ペースト膜は、その端縁をいずれかの端面に露出させている。
【0061】
次いで、生の積層体は、還元性雰囲気中において焼成される。これによって、図1に示すような焼結後の積層体2が得られ、積層体2において、前述のセラミックグリーンシートが誘電体セラミック層3を構成し、導電性ペースト膜が内部電極4または5を構成する。
【0062】
次いで、内部電極4および5の露出した各端縁にそれぞれ電気的に接続されるように、積層体2の端面6および7上に、それぞれ、外部電極8および9が形成される。
【0063】
外部電極8および9の材料としては、内部電極4および5と同じ材料を用いることができるが、銀、パラジウム、銀−パラジウム合金なども使用可能であり、また、これらの金属粉末に、B2 3 −SiO2 −BaO系ガラス、B2 3 −Li2 O−SiO2 −BaO系ガラスなどからなるガラスフリットを添加したものも使用可能である。積層セラミックコンデンサ1の用途、使用場所などを考慮に入れて適当な材料が選択される。
【0064】
また、外部電極8および9は、通常、上述のような導電性金属の粉末を含むペーストを、焼成後の積層体2の外表面上に塗布し、焼き付けることによって形成されるが、焼成前の生の積層体の外表面上に塗布し、積層体2を得るための焼成と同時に焼き付けることによって形成されてもよい。
【0065】
その後、外部電極8および9上に、ニッケル、銅などのめっきを施し、第1のめっき層10および11を形成する。そして、この第1のめっき層10および11上に、半田、錫などのめっきを施し、第2のめっき層12および13を形成する。なお、外部電極8および9上に、このようなめっき層10〜13のような導体層を形成することは、積層セラミックコンデンサ1の用途によっては省略されることもある。
【0066】
以上のようにして、積層セラミックコンデンサ1が完成される。
【0067】
なお、誘電体セラミックの原料粉末の作製や、積層セラミックコンデンサ1のその他の製造工程のいずれかの段階において、Al、Sr、Zr、Fe、Hf、Na等が不純物として混入する可能性があるが、これら不純物の混入は、積層セラミックコンデンサ1の電気的特性上、問題となることはない。
【0068】
また、積層セラミックコンデンサ1の製造工程のいずれかの段階において、内部電極4および5にFe、Cr等が不純物として混入する可能性もあるが、この不純物の混入についても、電気的特性上、問題となることはない。
【0069】
また、積層セラミックコンデンサ1は、誘電体セラミック層3と内部電極4および5とを同時に焼成して製造されるものであるため、焼成過程において、内部電極4および5の成分が誘電体セラミック層3に拡散することがある。内部電極4および5がニッケルまたは銅を主成分とする場合、ニッケルまたは銅元素の拡散量は、誘電体セラミック層3を構成する誘電体セラミックの主成分ABO3 100モルに対して、5モル以下であることが好ましい。これは、5モルを超えてニッケルまたは銅が過剰に拡散すると、積層セラミックコンデンサ1の信頼性が低下してしまうためである。
【0070】
次に、この発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0071】
【実験例】
1.誘電体セラミックの原料粉末の作製
作製された各試料に係る誘電体セラミックの原料粉末の組成が表1および表2に示されている。
【0072】
【表1】
Figure 0004400045
【0073】
【表2】
Figure 0004400045
【0074】
表1および表2において、焼結助剤を除いて、各成分の係数はモル比を示している。焼結助剤については、ABO3 100重量部に対する重量部で示している。
【0075】
(実施例1)
主成分としてのABO3 において、Aを含む化合物として、BaCO3 およびSrCO3 を用意し、Bを含む化合物として、TiO2 を用意した。次いで、これらの粉末を、表1の「ABO3 」の欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、1100℃の温度で仮焼してABO3 を合成し、粉砕することによって、実施例1に係るABO3 粉末を得た。
【0076】
他方、添加成分として、Ho2 3 およびMnO2 を用意し、これらの粉末を、表1の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、実施例1に係る仮焼粉末を得た。
【0077】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表1に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、実施例1に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0078】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表1の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表1の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、MgOおよびBaCO3 ならびにB2 3 −Li2 O−SiO2 −BaO系の焼結助剤を配合し、実施例1に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0079】
(実施例2)
主成分としてのABO3 において、Aを含む化合物として、BaCO3 およびCaCO3 を用意し、Bを含む化合物として、TiO2 およびHfO2 を用意した。次いで、これらの粉末を、表1の「ABO3 」の欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、1100℃の温度で仮焼してABO3 を合成し、粉砕することによって、実施例2に係るABO3 粉末を得た。
【0080】
他方、添加成分として、Sm2 3 、Y2 3 、MnO2 およびCr2 3 を用意し、これらの粉末を、表1の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、実施例2に係る仮焼粉末を得た。
【0081】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表1に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、実施例2に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0082】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表1の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表1の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、BaCO3 および実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、実施例2に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0083】
(実施例3)
主成分としてのABO3 において、Aを含む化合物として、BaCO3 およびCaCO3 を用意し、Bを含む化合物として、TiO2 およびZrO2 を用意した。次いで、これらの粉末を、表1の「ABO3 」の欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、1100℃の温度で仮焼してABO3 を合成し、粉砕することによって、実施例3に係るABO3 粉末を得た。
【0084】
他方、添加成分として、Er2 3 およびCoO3 を用意し、これらの粉末を、表1の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、実施例3に係る仮焼粉末を得た。
【0085】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表1に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、実施例3に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0086】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表1の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表1の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、Al2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、実施例3に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0087】
(実施例4)
主成分としてのABO3 において、Aを含む化合物として、BaCO3 およびCaCO3 を用意し、Bを含む化合物として、TiO2 を用意した。次いで、これらの粉末を、表1の「ABO3 」の欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、1100℃の温度で仮焼してABO3 を合成し、粉砕することによって、実施例4に係るABO3 粉末を得た。
【0088】
他方、添加成分として、La2 3 、Dy2 3 およびCr2 3 を用意し、これらの粉末を、表1の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、実施例4に係る仮焼粉末を得た。
【0089】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表1に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、実施例4に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0090】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表1の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表1の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、Cr2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、実施例4に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0091】
(実施例5)
主成分としてのABO3 において、Aを含む化合物として、BaCO3 を用意し、Bを含む化合物として、TiO2 を用意した。次いで、これらの粉末を、表1の「ABO3 」の欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、1100℃の温度で仮焼してABO3 を合成し、粉砕することによって、実施例5に係るABO3 粉末を得た。
【0092】
他方、添加成分として、Dy2 3 、MnO2 およびCr2 3 を用意し、これらの粉末を、表1の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、実施例5に係る仮焼粉末を得た。
【0093】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表1に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、実施例5に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0094】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表1の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表1の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、Yb2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、実施例5に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0095】
(実施例6)
主成分としてのABO3 において、Aを含む化合物として、BaCO3 、CaCO3 およびSrCO3 を用意し、Bを含む化合物として、TiO2 を用意した。次いで、これらの粉末を、表1の「ABO3 」の欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、1100℃の温度で仮焼してABO3 を合成し、粉砕することによって、実施例6に係るABO3 粉末を得た。
【0096】
他方、添加成分として、Y2 3 、Yb2 3 、CoOおよびFe2 3 を用意し、これらの粉末を、表1の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、実施例6に係る仮焼粉末を得た。
【0097】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表1に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、実施例6に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0098】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表1の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表1の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、BaCO3 および実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、実施例6に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0099】
(実施例7)
主成分としてのABO3 において、Aを含む化合物として、BaCO3 を用意し、Bを含む化合物として、TiO2 、ZrO2 およびHfO2 を用意した。次いで、これらの粉末を、表1の「ABO3 」の欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、1100℃の温度で仮焼してABO3 を合成し、粉砕することによって、実施例7に係るABO3 粉末を得た。
【0100】
他方、添加成分として、Gd2 3 およびMnO2 を用意し、これらの粉末を、表1の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、実施例7に係る仮焼粉末を得た。
【0101】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表1に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、実施例7に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0102】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表1の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表1の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、MgOおよびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、実施例7に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0103】
(比較例1)
比較例1では、実施例1の場合と同じ組成の誘電体セラミックの原料粉末を、実施例1の場合と異なる方法によって作製した。
【0104】
まず、実施例1と同じ組成かつ同じ方法にて、表2の「ABO3 」の欄に示すように、比較例1に係るABO3 粉末を得た。
【0105】
次に、添加成分としてのHo2 3 を用意し、この粉末を、表2の「仮焼粉末の一部」における「R成分」の欄に示した組成比となるように秤量し、これを、上述のABO3 粉末に加えるとともに純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、比較例1に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0106】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表2の「仮焼粉末の残部」における「R成分」の欄に示した組成比をもって、Ho2 3 を配合するとともに、表2の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、MnO2 、MgOおよびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成を有する焼結助剤を配合し、比較例1に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0107】
(比較例2)
比較例2では、実施例2の場合と同じ組成の誘電体セラミックの原料粉末を、実施例2の場合と異なる方法によって作製した。
【0108】
まず、実施例2と同じ組成かつ同じ方法にて、表2の「ABO3 」の欄に示すように、比較例2に係るABO3 粉末を得た。
【0109】
次に、添加成分としてのMnO2 およびCr2 3 を用意し、これらの粉末を、表2の「M成分」の欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、比較例2に係る仮焼粉末を得た。
【0110】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表2に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、比較例2に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0111】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表2の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表2の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、Sm2 3 、Y2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、比較例2に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0112】
(比較例3)
比較例3では、まず、実施例3と同じ組成かつ同じ方法にて、表2の「ABO3 」の欄に示すように、比較例3に係るABO3 粉末を得た。
【0113】
次に、添加成分としてのEr2 3 およびCoOを用意し、これらの粉末を、表2の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、比較例3に係る仮焼粉末を得た。ここで、「R成分」であるEr2 3 が、「M成分」であるCoOより少ない比率となっていることに注目すべきである。
【0114】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表2に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、比較例3に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0115】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表2の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表2の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、Er2 3 、Al2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、比較例3に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0116】
(比較例4)
比較例4では、まず、実施例4と同じ組成かつ同じ方法にて、表2の「ABO3 」の欄に示すように、比較例4に係るABO3 粉末を得た。
【0117】
次に、上述のABO3 粉末に、表2の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、添加成分としてのLa2 3 、Cr2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、比較例4に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0118】
(比較例5)
比較例5では、まず、実施例5と同じ組成かつ同じ方法にて、表2の「ABO3 」の欄に示すように、比較例5に係るABO3 粉末を得た。
【0119】
他方、添加成分として、実施例5の場合と同様、Dy2 3 、MnO2 およびCr2 3 を用意し、これらの粉末を、表2の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、比較例5に係る仮焼粉末を得た。ここで、「R成分」であるDy2 3 が、「M成分」であるMnO2 およびCr2 3 より少ない比率となっていることに注目すべきである。
【0120】
次に、上述のABO3 粉末と仮焼粉末の一部とを、表2に示した「ABO3 」および「仮焼粉末の一部」の各欄に示した組成比となるように秤量し、純水を加えてボールミルにより24時間湿式混合した後、蒸発乾燥した。次いで、この混合粉末を、自然雰囲気中において、900℃の温度で仮焼し、粉砕することによって、比較例5に係る変性ABO3 粉末を得た。
【0121】
次に、上述の変性ABO3 粉末に、表2の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、前述の仮焼粉末の残部を配合するとともに、表2の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、Yb2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、比較例5に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0122】
(比較例6)
比較例6では、まず、実施例5と同じ組成かつ同じ方法にて、表2の「ABO3 」の欄に示すように、比較例6に係るABO3 粉末を得た。
【0123】
他方、添加成分として、比較例5の場合と同様、Dy2 3 、MnO2 およびCr2 3 を用意し、これらの粉末を、表2の「R成分」および「M成分」の各欄に示した組成比となるように秤量し、ボールミルにより湿式混合した後、1000℃の温度で仮焼し、次いで粉砕することによって、比較例6に係る仮焼粉末を得た。ここで、比較例6に係る仮焼粉末は、比較例5に係る仮焼粉末と同じ組成であり、「R成分」であるDy2 3 が、「M成分」であるMnO2 およびCr2 3 より少ない比率となっていることに注目すべきである。
【0124】
次に、上述のABO3 粉末に、表2の「仮焼粉末の残部」の欄に示した組成比となるように、上述の仮焼粉末のすべてを配合するとともに、表2の「その他」および「焼結助剤」の各欄に示した組成比となるように、Yb2 3 およびBaCO3 ならびに実施例1の場合と同様の組成の焼結助剤を配合し、比較例6に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0125】
2.積層セラミックコンデンサの作製
次に、上述の実施例1〜7および比較例1〜6の各々に係る誘電体セラミック原料粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびエタノール等の有機溶剤を加え、ボールミルを用いた湿式混合を実施することによって、セラミックスラリーを作製した。
【0126】
次に、セラミックスラリーを、ドクターブレード法によって、焼成後の誘電体セラミック層の厚みが3μmになるような厚みをもってシート状に成形し、矩形のセラミックグリーンシートを得た。
【0127】
次に、セラミックグリーンシート上に、ニッケルを主体とする導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極となるべき導電性ペースト膜を形成した。
【0128】
次いで、導電性ペースト膜が引き出されている側が互い違いとなるように、導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層し、生の積層体を得た。
【0129】
次に、生の積層体を、窒素雰囲気中において350℃の温度に加熱し、バインダを燃焼させた後、酸素分圧10-9〜10-12 MPaのH2 −N2 −H2 Oガスからなる還元性雰囲気中において、後掲の表3に示す焼成温度にて2時間焼成し、焼結した積層体を得た。
【0130】
次いで、積層体の両端面上に、B2 3 −Li2 O−SiO2 −BaO系のガラスフリットを含有するとともに銀を導電成分とする導電性ペーストを塗布し、窒素雰囲気中において800℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成した。
【0131】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.6mm、長さ3.2mmおよび厚さ1.2mmであり、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは、3μmであった。また、有効誘電体セラミック層の数は100であり、1層あたりの対向電極面積は2.1mm2 であった。
【0132】
3.電気的特性の測定
このようにして得られた実施例1〜7および比較例1〜6に係る積層セラミックコンデンサの各種電気的特性を測定した。
【0133】
まず、各積層セラミックコンデンサの室温での誘電率εおよび絶縁抵抗を測定した。この場合、誘電率εは、温度25℃、1kHz、および1Vrms の条件下で測定した。また、5kV/mmの電界強度の下で絶縁抵抗を測定するため、15Vの直流電圧を2分間印加して、+25℃において絶縁抵抗を測定し、静電容量(C)と絶縁抵抗(R)との積、すなわちCR積を求めた。
【0134】
また、温度変化に対する静電容量の変化率を求めた。この温度変化に対する静電容量の変化率については、JIS規格のB特性すなわち20℃での静電容量を基準とした−25℃での変化率および85℃での変化率(ΔC/C20)と、EIA規格のX7R特性すなわち25℃での静電容量を基準とした−55℃での変化率および125℃での変化率(ΔC/C25)とを評価した。
【0135】
また、高温負荷寿命試験を実施した。高温負荷寿命試験は、36個の試料について、温度150℃において、電界強度が20kV/mmになるように60Vの電圧を印加して、その絶縁抵抗の経時変化を求めようとしたものである。なお、高温負荷寿命として、各試料の絶縁抵抗値が200kΩ以下になったときの時間を寿命時間として、その平均寿命時間を求めた。
【0136】
また、直流電圧印加下での静電容量の経時変化を求めた。静電容量の経時変化は、温度85℃、1kHz、1Vrms 、および直流電圧3.15V印加の条件下で、100時間後の容量変化を測定し、直流電圧印加直後の85℃での静電容量を基準としてDC負荷経時変化率を求めたものである。
【0137】
以上の誘電率ε、CR積、温度特性(ΔC/C20およびΔC/C25)、平均寿命時間ならびに静電容量の経時変化が、表3に示されている。
【0138】
【表3】
Figure 0004400045
【0139】
4.微細構造の調査
実施例1〜7および比較例1〜6に係る積層セラミックコンデンサについて、その誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックの微細構造を調査した。より具体的には、次のような調査を行なった。
【0140】
まず、試料としての積層セラミックコンデンサを、内部電極が延びる面に直角に研磨し、誘電体セラミック層を露出させた。次に、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(EDX)により、図2に示すように、結晶粒子21の中央部に位置する分析点25、結晶粒子21の径に対して表面から5%までの領域(表面近傍領域)に位置する分析点23、および結晶粒界22に位置する分析点24の各々でのRおよびMの濃度分析を行なった。なお、分析のための電子線としては、2nmのプローブを用いた。
【0141】
ここで、結晶粒子21の表面近傍領域および結晶粒界22については、より具体的には、無作為に5個以上の結晶粒子21を選択し、選択された各々の結晶粒子21の外周をほぼ4等分する、任意の4点をそれぞれの分析点23および24とした。また、結晶粒界22の分析については、2つの結晶粒子21により形成される領域から選ぶ場合も、3つ以上の結晶粒子21により形成される領域から選ぶ場合もあった。また、同一の結晶粒子21間に形成される結晶粒界22での分析を避けるようにした。
【0142】
このような分析の結果、Rの濃度をCR とし、Mの濃度をCM としたとき、結晶粒子の表面近傍に位置する分析点に関して、CR /CM >1の条件を満足する分析点の割合を算出した。その結果が、表4の「表面近傍濃度条件満足割合」の欄に示されている。
【0143】
また、結晶粒界に位置する分析点に関して、CR /CM >1の条件を満足する分析点の割合を算出した。その結果が、表4の「粒界濃度条件満足割合」の欄に示されている。
【0144】
また、結晶粒子の中央部におけるCR およびCM が、それぞれ、結晶粒子の表面近傍領域におけるCR およびCM の各最大値の1/10以下であるという条件を満足する、結晶粒子の個数の割合を算出した。その結果が、表4の「中央部濃度条件満足割合」の欄に示されている。
【0145】
また、試料としての積層セラミックコンデンサを破断して熱エッチングした面を走査型電子顕微鏡を用いて写真撮影し、得られた写真から結晶粒子の粒子径を求めた。そして、無作為に10個以上の結晶粒子を選択し、その粒子径の平均値を求め、平均粒子径とした。その結果が、表4の「結晶粒子の平均粒子径」の欄に示されている。
【0146】
【表4】
Figure 0004400045
【0147】
5.総合評価
まず、実施例1と比較例1との間で比較する。
【0148】
実施例1では、表4に示すように、「表面近傍濃度条件満足割合」は89%であり、「粒界濃度条件満足割合」は95%であり、しかも「中央部濃度条件満足割合」が73%である。他方、比較例1では、「表面近傍濃度条件満足割合」は86%であるが、「粒界濃度条件満足割合」は45%にすぎず、「中央部濃度条件満足割合」は53%である。
【0149】
その結果、実施例1および比較例1では、表3に示すように、誘電率およびCR積については、ほぼ変わらない値、すなわち、ともに、誘電率が2700であり、CR積が3000程度の値を示した。
【0150】
しかしながら、温度特性については、実施例1では、EIA規格のX7R特性を満足しているのに対し、比較例1では、この特性を満足していない。また、平均寿命時間については、実施例1では、214時間と長く、高い信頼性を示しているのに対し、比較例1では、36時間と短く、十分な信頼性が得られていない。また、静電容量の経時変化についても、実施例1では、−4.5%というように、比較例1の−16.3%と比較して、良好な結果が得られている。
【0151】
実施例2〜7についても、実施例1と同様、優れた結果が得られている。
【0152】
すなわち、実施例2〜7では、表4に示すように、「表面近傍濃度条件満足割合」はそれぞれ60%以上であり、「粒界濃度条件満足割合」はそれぞれ60%以上であり、しかも「中央部濃度条件満足割合」は50%以上である。
【0153】
その結果、表3に示すように、実施例2〜7のいずれについても、温度特性がEIA規格のX7R特性を満足し、CR積が高く、平均寿命時間が長く、それゆえ信頼性に優れ、静電容量の経時変化も小さい。
【0154】
これに対して、比較例2では、表4に示すように、「表面近傍濃度条件満足割合」は33%であり、「粒界濃度条件満足割合」は84%であり、「中央部濃度条件満足割合」は68%である。その結果、比較例2では、表3に示すように、平均寿命時間が20時間と短く、十分な信頼性が得られず、また、静電容量の経時変化が−14.1%と大きい絶対値を示している。
【0155】
比較例3では、表4に示すように、「表面近傍濃度条件満足割合」は56%であり、「粒界濃度条件満足割合」は93%であり、「中央部濃度条件満足割合」は75%である。その結果、比較例3では、表3に示すように、平均寿命時間が67時間と短く、十分な信頼性が得られず、また、静電容量の経時変化が−12.3%と大きい絶対値を示している。
【0156】
比較例4では、表4に示すように、「表面近傍濃度条件満足割合」は62%であり、「粒界濃度条件満足割合」は58%であり、「中央部濃度条件満足割合」は30%である。その結果、比較例4では、表3に示すように、平均寿命時間が6時間と短く、十分な信頼性が得られず、静電容量の経時変化が−19.1%と大きい絶対値を示し、また、温度特性については、EIA規格のX7R特性を満足していない。
【0157】
比較例5では、表4に示すように、「表面近傍濃度条件満足割合」は45%であり、「粒界濃度条件満足割合」は80%であり、「中央部濃度条件満足割合」は84%である。その結果、比較例5では、表3に示すように、平均寿命時間が33時間と短く、十分な信頼性が得られず、また、静電容量の経時変化が−15.0%と大きい絶対値を示している。
【0158】
比較例6では、表4に示すように、「表面近傍濃度条件満足割合」は53%であり、「粒界濃度条件満足割合」は72%であり、「中央部濃度条件満足割合」は70%である。その結果、比較例6では、表3に示すように、平均寿命時間が45時間と短く、十分な信頼性が得られず、また、静電容量の経時変化が−13.8%と大きい絶対値を示している。
【0159】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る誘電体セラミックによれば、ABO3(Aは、Ba、またはBaならびにその一部が置換されたCaおよびSrの少なくとも1種であり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされる主成分と、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Co、FeおよびCrのうちの少なくとも1種である。)を含む添加成分とを含む組成を有し、かつABO3を主成分とする結晶粒子と結晶粒子間を占める結晶粒界とからなるものにおいて、Rの濃度を原子比でRとし、Mの濃度を原子比でMとしたとき、結晶粒子の径に対して表面から5%までの領域(表面近傍領域)に位置する分析点および結晶粒界に位置する複数の分析点について、それぞれの60%以上の分析点において、CR/CM>1の条件を満足するので、これを用いて積層セラミックコンデンサを構成したとき、誘電率の温度変化および直流電圧印加下での静電容量の経時変化が小さく、絶縁抵抗と静電容量との積(CR積)が高く、高温かつ高電圧下における絶縁抵抗の加速寿命を長くすることができる。
【0160】
そのため、この誘電体セラミックをもって積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック層を構成すれば、誘電体セラミック層の薄層化に対しても、優れた信頼性を維持し得る積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0161】
したがって、誘電体セラミック層の薄層化によって、積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化が可能となり、また、誘電体セラミック層を薄層化しても、積層セラミックコンデンサの定格電圧を下げる必要がない。その結果、たとえば、誘電体セラミック層の厚みを3μm程度にまで薄層化することが問題なく行なうことができる。
【0162】
また、この発明に係る誘電体セラミックによれば、結晶粒子の中央部における分析点でのCRおよびCM、それぞれ、結晶粒子の表面近傍領域における分析点でのCRおよびCMの各最大値の1/10以下である、結晶粒子の個数の割合が50%以上となるようにされるので、温度特性が悪化や、粒成長を引き起こしての信頼性の低下を確実に防止することができる。
【0163】
また、この発明に係る誘電体セラミックに、SiO2 、Li2 OおよびB2 3 (酸化ホウ素)から選ばれた少なくとも1種を主成分とする焼結助剤を含有させると、誘電体セラミックの焼結温度を低温化させたり、CR積や高温高電圧下における絶縁抵抗の加速寿命をより向上させることが可能になる。
【0164】
また、この発明に係る誘電体セラミックを構成する結晶粒子の平均粒子径が、0.5μm以下となるようにされると、積層セラミックコンデンサに備える誘電体セラミック層の薄層化により適切に対応できるようになる。
【0165】
他方、この発明に係る誘電体セラミックの製造方法によれば、上述のABO3を合成し、次いで粉砕することによって、ABO3粉末を得る工程と、上述のRを含むR化合物を用意する工程と、上述のMを含むM化合物を用意する工程と、R化合物とM化合物とを、R化合物の原子比が多くなるように混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、仮焼粉末を得る工程と、ABO3粉末と仮焼粉末の一部とを混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、変性ABO3粉末を得る工程と、変性ABO3粉末と仮焼粉末の残部とを含む混合粉末を焼成する工程とを備えているので、前述したような濃度条件を満足する誘電体セラミックを容易かつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【図2】誘電体セラミックを構成する、ABO3 を主成分とする結晶粒子21と結晶粒子21間を占める結晶粒界22と図解的に示す断面図であり、結晶粒子21の表面近傍領域に位置する分析点23、結晶粒界22に位置する分析点24および結晶粒子21の中央部に位置する分析点25の各例を示している。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
3 誘電体セラミック層
4,5 内部電極
8,9 外部電極
21 結晶粒子
22 結晶粒界
23 結晶粒子の表面近傍領域に位置する分析点
24 結晶粒界に位置する分析点
25 結晶粒子の中央部に位置する分析点

Claims (7)

  1. ABO3(Aは、Ba、またはBaならびにその一部が置換されたCaおよびSrの少なくとも1種であり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされる主成分と、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Co、FeおよびCrのうちの少なくとも1種である。)を含む添加成分とを含む組成を有し、かつABO3を主成分とする結晶粒子と結晶粒子間を占める結晶粒界とからなり、
    Rの濃度を原子比でRとし、Mの濃度を原子比でMとしたとき、結晶粒子の径に対して表面から5%までの領域に位置する分析点および結晶粒界に位置する複数の分析点について、それぞれの60%以上の分析点において、CR/CM>1の条件を満足するとともに、
    結晶粒子のうちの50%以上の個数のものについては、結晶粒子の中央部におけるC R およびC M が、それぞれ、結晶粒子の径に対して表面から5%までの領域におけるC R およびC M の各最大値の1/10以下であるという条件を満足する、誘電体セラミック
  2. SiO2、Li2OおよびB23(酸化ホウ素)から選ばれた少なくとも1種を主成分とする焼結助剤をさらに含む、請求項1に記載の誘電体セラミック。
  3. 結晶粒子の平均粒子径が0.5μm以下である、請求項1または2に記載の誘電体セラミック。
  4. ABO3(Aは、Ba、またはBaならびにその一部が置換されたCaおよびSrの少なくとも1種であり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)を合成し、次いで粉砕することによって、ABO3粉末を得る工程と、
    R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)を含むR化合物を用意する工程と、
    M(Mは、Mn、Co、FeおよびCrのうちの少なくとも1種である。)を含むM化合物を用意する工程と、
    R化合物とM化合物とを、R化合物の原子比が多くなるように混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、仮焼粉末を得る工程と、
    ABO3粉末と仮焼粉末の一部とを混合し、得られた混合物を仮焼し、次いで粉砕することによって、変性ABO3粉末を得る工程と、
    変性ABO3粉末と仮焼粉末の残部とを含む混合粉末を焼成する工程と
    を備える、誘電体セラミックの製造方法。
  5. 積層された複数の誘電体セラミック層および複数の前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿いかつ積層方向に重なり合った状態で形成された複数の内部電極を含む、積層体と、前記内部電極の特定のものに電気的に接続されるように前記積層体の外表面上に形成される外部電極とを備える、積層セラミックコンデンサであって、
    前記誘電体セラミック層が、請求項1ないしのいずれかに記載の誘電体セラミックからなる、積層セラミックコンデンサ。
  6. 前記内部電極は、卑金属を含む、請求項に記載の積層セラミックコンデンサ。
  7. 前記外部電極は、卑金属を含む、請求項またはに記載の積層セラミックコンデンサ。
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