JP4398254B2 - 歯科用接着剤 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、歯質と歯冠用修復物を接着する際にマージン部からはみ出す余剰セメントの除去性に優れ、歯質に対する接着強度を低下させずに硬化時間を適度に調整でき、且つ硬化体が黄色に着色するのを低減した歯科用レジンセメント等の歯科用接着剤に関する
【背景技術】
【0002】
齲蝕や事故等により機能を失った歯牙は、例えば、インレーやクラウンと呼ばれる金属やセラミックス製の歯冠用修復材料を歯牙に固定することにより修復される。歯冠用修復材料の歯牙への固定には、歯科用セメントと呼ばれる接着剤が用いられている。歯科用セメントとしては、一般にレジンセメントやフルオロアルミノシリケートセメント(一般にはグラスアイオノマーセメントと呼ばれる)が広く用いられている。
【0003】
通常、歯質と歯冠用修復材料とを歯科用セメントを用いて接着する際には、いくぶん過剰な量の歯科用セメントを歯冠用修復材料に盛り付け、該歯冠用修復材料を歯質に圧接させる。そして該圧接により、歯科用セメントの過剰分をマージン部と呼ばれる歯質と歯冠用修復材料の接合部からはみ出させ、そのはみ出した余剰セメントを除去するという方法をとる。従って、歯科用セメントは歯冠用修復材料に盛り付けやすく、かつ、マージン部から適切に余剰分がでてくるように流動性の高いペースト状の組成物として提供される。また、余剰セメントは完全に除去しないと、審美性に劣るのみでなく、はみ出して硬化したセメントが口腔内の組織を傷つける可能性がある。
【0004】
通常、この余剰セメントは歯科用短針等を用いて除去するが、セメントがまったく硬化していない流動性の高い状態では短針による除去が困難である。従って、セメントが完全に硬化した状態或いは硬化が進行して流動性がある程度なくなった状態(半硬化状態)で余剰セメントの除去が行われる。
【0005】
歯科用セメントのうち、レジンセメントは、ラジカル重合性単量体と無機あるいは有機充填材とからなり、ラジカル重合開始剤によって重合硬化する。かかるレジンセメントは、酸性基含有ラジカル重合性単量体を配合することにより、歯質および各種金属に対して強固な接着性を示す。
【0006】
充填材として無機充填材が主として配合されているレジンセメントは、特に機械的強度や耐久性に優れている。このように機械的強度が高いセメントでは、完全に硬化してしまってからでは余剰セメントの除去が困難となってしまうため、半硬化状態で余剰セメントの除去が行われる。しかしながら、セメント中には、セメントを完全に硬化させることが可能な量の重合開始剤が配合されており、そのため半硬化状態である時間が短く、除去のタイミングが難しいという問題がある。
【0007】
一方、充填材として有機充填材が主として配合されているレジンセメントでは、セメント硬化体が弾性体となってしまうため、やはり完全に硬化した後には短針による除去が困難である。従って、半硬化状態で余剰セメントの除去が行われるが、無機フィラーが配合されているものと同様、半硬化状態である時間が短く、余剰セメントの除去のタイミングが難しいという問題がある。
【0008】
さらに無機充填材、有機充填材にかかわらず、歯質や歯冠用修復材料に対して高い接着強度を誇るレジンセメントでは、目的部位以外に付着した余剰セメントが完全に硬化、強固に接着してしまうと、その除去が極めて困難となる。
【0009】
特開平9−67222号公報には、重合禁止剤を添加して硬化時間を遅延させる技術が開示されている。しかしながら、この場合には、重合禁止剤が重合時間遅延の為に使い尽くされて消失した場合には、重合反応が一気に進行する。従って、余剰セメントを除去するタイミングを延長するという点では、充分満足し得るものではない。また、禁止剤を増量するに従い、歯質に対する接着強度が低下する等の問題が生じる場合がある。
【0010】
また、レジンセメントを硬化させるために、一般に化学重合開始剤として過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物及び第3級アミンからなる系が使用されている。この系からなる化学重合開始剤は硬化が確実で生体に対する安全性も確立されたものであるが、この系を使用した場合には、セメント硬化体が黄色に着色する問題が起こる。この黄色の着色度合いは通常、天然歯の色よりも強い黄色となってしまう傾向が強いため、歯冠用修復物を固定した後に、セメントのマージン部が目立ち、審美的な点から好ましくない。
【0011】
上述した着色の問題は、特開昭63−216811号公報に記載されている『ピリミジントリオン誘導体、金属化合物及び有機ハロゲン化合物の組み合わせからなる触媒系』をもちいることによりある程度解決できる。しかしながら、この触媒系を用いた場合でも、余剰セメントを除去できる時間的な余裕が充分でないという問題点は解決されるものではない。
【0012】
一方、グラスアイオノマーセメントは、多価金属イオンを溶出する粉末とポリカルボン酸の水溶液とからなるものであり、上記の粉末と水溶液とを混合した時に溶出する多価金属イオンとポリマー(ポリカルボン酸)がキレート架橋することにより硬化する。かかるセメントは、一般に歯質の前処理が不要であるために操作が簡単であり、余剰セメントの除去性に優れるといった特長を有する。また、このようなグラスアイオノマーセメントの硬化機構では、硬化体の変色も起きない。
【0013】
しかしながら、該グラスアイオノマーセメントが余剰セメントの除去性に優れるのは、完全に硬化したセメント硬化体の機械的強度がレジンセメントに比して低く、そのため短針を用いた除去の際に容易にセメント硬化体を崩すことが可能なためである。従って、グラスアイオノマーセメントは、上記のような利点を有している反面、セメント自体の耐久性(信頼性)という点で問題を有している。さらに、グラスアイオノマーセメントは、硬化時に唾液等の水と接触すると機械的強度等の物性が低下することも問題となっている。
【0014】
グラスアイオノマーセメントの有している問題点を解決するため、近年、ポリカルボン酸に加えて、ラジカル重合性単量体と化学重合開始剤を配合したレジン強化型グラスアイオノマーと呼ばれる歯科用セメントが開発され市販されている。かかるセメントは、キレート架橋による硬化時にラジカル重合性単量体を重合せしめ、得られる硬化体中に、ラジカル重合性単量体の重合体を存在せしめることによりグラスアイオノマーの欠点であった機械的強度を改良している。
【0015】
しかしながら、このようなレジン強化型グラスアイオノマーにおいても、硬化体がポリカルボン酸と多価金属のキレート(アイオノマー)を主体としている点には変わりなく、ラジカル重合性単量体の重合体を主体とするレジンセメントに比べて機械的強度がいまだ劣り、信頼性の向上は充分なものとは言えない。
【0016】
以上のように、高い歯質への接着強度および機械的強度を有すレジンセメントにおいては、余剰レジンの除去および硬化体の変色の点において問題があり、一方、余剰セメントの除去が簡単で変色もほとんどないグラスアイオノマーセメント(レジン強化型グラスアイオノマーを含む)においては、機械的強度の点で問題があった。
【発明の開示】
【0017】
本発明者等は上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、ラジカル重合性単量体(レジン)を主たる硬化成分として有する歯科用セメントにおいて、特定構造のスチレン誘導体を配合することにより、接着強度をほとんど低下させることなく余剰セメントの除去性を向上させることができ、さらには過酸化ベンゾイル/第3級アミン系等の化学重合開始剤を用いて得られる硬化体の黄変も防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
本発明によれば、ラジカル重合性酸性リン酸エステル(A)及び(A)以外のラジカル重合性単量体(B)を、質量基準で、A:B=5:95乃至80:20の量で含有しており、更に、前記ラジカル重合性酸性リン酸エステル(A)及び(B)の合計量100質量部当たり、(C)有機過酸化物とアミン類との組み合わせからなる化学重合開始剤:0.05〜15質量部、(D)充填剤:20〜1000質量部、及び(E)下記一般式(1):
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である]で示される化合物:0.01〜5質量部、を含有していることを特徴とする歯科用接着剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の歯科用接着剤は、一般にはセラミックス、金属等で作られる歯冠用修復材料と歯質との接着に使用される。
【0020】
ラジカル重合性単量体成分(A),(B):
本発明の歯科用接着剤には、ラジカル重合体成分として、(A)酸性基含有ラジカル重合性単量体(以下、単に酸性モノマーと呼ぶことがある)と、(B)前記酸性モノマー以外のラジカル重合性単量体(以下、非酸性モノマーと呼ぶことがある)を含有している。本発明においては、当該酸性モノマーとして、以下に示す酸性モノマーの中からラジカル重合性酸性リン酸エステルが選択される。
【0021】
このようなラジカル重合体成分の内、(A)酸性モノマーは、歯質に対する接着性を向上させる性質を有しており、また、卑金属製の歯冠用修復材料に対する接着性を向上させる効果も有している。
酸性モノマー(A)は、少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基を有する化合物である。
ここで酸性基とは、該基を有するラジカル重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を呈するものであり、代表的には、
カルボキシル基(−COOH)、
スルホ基(−SO3H)、
ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、
ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}、
等のヒドロキシル基を有するものが例示される。また、このようなヒドロキシル基含有酸性基以外にも、2つのヒドロキシル含有酸性基が脱水縮合した構造の酸無水物基、ヒドロキシル基含有酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基等を挙げることができる。
【0022】
また、ラジカル重合性不飽和基も特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基等の(メタ)アクリロイル系基、ビニル基、アリル基、スチリル基等が例示される。
【0023】
上述した酸性モノマー(A)の具体例としては、これに限定されるものではないが、以下のものを挙げることができる。
【0024】
(A−1)分子内に1つのカルボキシル基を有すラジカル重合性単量体、例えば(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸等。及び上記ラジカル重合性単量体の酸無水物或いは酸ハロゲン化物。
【0025】
(A−2)分子内に複数のカルボキシル基あるいはその酸無水物基を有するラジカル重合性単量体、例えば11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−メタクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート、N,O−ジ(メタ)アクリロイルチロシン、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、4−アクリロイルオキシブチルトリメリテート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−2,3,6−トリカルボン酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル−1,8−ナフタル酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,8−トリカルボン酸無水物、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリルアミドウンデカン−1,1−ジカルボン酸、及び下記式で示されるジカルボン酸。
(式中、R1は、水素原子又はメチル基である。)
並びに、上記ラジカル重合性単量体の内、カルボキシル基を有するものの酸無水物或いは酸ハロゲン化物。
【0026】
(A−3)分子内にホスフィニコオキシ基又はホスホノオキシ基を有すラジカル重合性単量体(ラジカル重合性酸性リン酸エステルと呼ぶことがある)、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス(10−(メタ)アクリロイルオキシデシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル}ハイドロジェンフォスフェート等。及び上記ラジカル重合性酸性リン酸エステルの酸無水物、酸ハロゲン化物。
【0027】
(A−4)ビニルホスホン酸、p−ビニルベンゼンホスホン酸等の分子内にホスホノ基を有すラジカル重合性単量体。
(A−5)2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸等の分子内にスルホ基を有すラジカル重合性単量体。
【0028】
さらに、上述した(A−1)〜(A−5)のラジカル重合性単量体以外にも、特開昭54−11149号公報、特開昭58−140046号公報、特開昭59−15468号公報、特開昭58−173175号公報、特開昭61−293951号公報、特開平7−179401号公報、特開平8−208760号公報、特開平8−319209号公報、特開平10−236912号公報、特開平10−245525号公報等に開示されている歯科用接着性組成物中の成分として記載されている酸性基含有のラジカル重合性単量体も、酸性モノマー(A)として好適に使用できる。
【0029】
本発明においては、上述した酸性モノマー(A)のなかでも、歯質に対する接着性が優れている点の他、余剰レジンの除去性の向上および硬化体の変色防止の効果も顕著に発揮される点から、分子内に複数のカルボキシル基を有すラジカル重合性単量体(A−2)、ラジカル重合性酸性リン酸エステル(A−3)、及びこれらの化合物(A−2),(A−3)において酸性基が脱水縮合した酸無水物基を有すラジカル重合性単量体を使用することが好ましい。特に、ラジカル重合性酸性リン酸エステル(A−3)及びその酸性基が脱水縮合した酸無水物基を有するラジカル重合性単量体を使用するのが好ましい。
また上述したラジカル重合性単量体の中でも、下記一般式(2)で示されるものを使用するのが特に好ましい。
式中、R3は、水素原子又はメチル基であり、R4は、炭素数1〜30の2〜6価の有機残基を示し、Wは、酸素原子、硫黄原子又はNHを示し、Zは、−COOH、−O−P(=O)(OH)2又は−O−P(=O)(OH)(OR5)を示す〔ただし、R5は主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基又は環を構成する炭素数が6〜14のアリール基であり、該アルキル基又はアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、炭素数1〜5のアルコキシル基、炭素数2〜5のアシル基、或いは炭素数2〜5のアシルオキシ基で置換されていてもよく、さらに複数の同一もしくは異なる置換基で置換されていてもよい〕。m及びnは各々独立に1〜5の整数であり、m+nはR4の価数と一致する。
【0030】
また、上記一般式(2)において、R4は、炭素数1〜30の2〜6価の有機残基であるが、炭素数及び価数以外に特に制限はなく、例えばその構造中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合、スルホニル結合、ウレタン結合、チオエーテル結合等の炭素−炭素結合以外の結合が含まれていてもよく、さらにはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等の置換基を有していてもよい。このような有機残基を具体的に例示すると以下のようなものが挙げられる。
一般式(2)中のZが示す基中に存在するR5において、主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基等が例示され、特に主鎖の炭素数が1〜5のものが好適である。また、前記置換基を有する置換アルキル基としては、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、6−ヒドロキシヘキシル基、2−シアノエチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、2−プロペニル基、シス−又はトランス−2−ブテニル基、2−プロピニル基、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシブチル基、3−オキサブチル基、4−オキサペンチル基、3−オキサペンチル基、2−アセチルオキシエチル基、3−アセチルオキシプロピル基、2−プロピオニルオキシエチル基、3−アセチルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基、2−エチル−3−ヒドロキシペンチル基等が例示される。
さらに、R5における環を構成する炭素数が6〜14のアリール基としては、フェニル基、1−又は2−ナフチル基、1−、2−又は9−アントラニル基等が例示され、該アルキル基が前記置換基で置換されたものとしてo−,m−又はp−クロロフェニル基、o−,m−又はp−ブロモフェニル基、o−,m−又はp−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシ−2−ナフチル基、o−,m−又はp−ニトロフェニル基、o−,m−又はp−シアノフェニル基、o−,m−又はp−メチルフェニル基、o−,m−又はp−ブチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、o−,m−又はp−スチリル基、o−,m−又はp−(2−プロピニル)フェニル基、o−,m−又はp−メトキシフェニル基、o−,m−又はp−エトキシフェニル基、2−,3−又は4−アセチルフェニル基、2−,3−又は4−アセチルオキシフェニル基、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル基、4−メチル−2−ニトロフェニル基等が例示される。
上記のような一般式(2)で表されるラジカル重合性単量体において、余剰セメント除去性や生体への安全性等の見地から、R3はメチル基が特に好ましく、R4は炭素数1〜15のアルキレン基が特に好ましく、Wは酸素原子が特に好ましく、さらにZは−O−P(=O)(OH)2が特に好ましい。
【0031】
更に、ラジカル重合性酸性リン酸エステル(A−3)としては、下記一般式(3)で示されるものを用いることが特に好適である。
式中、R3’、R3”は、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、R4’、R4”は、各々独立に炭素数1〜30の2〜6価の有機残基を示し、W’、W”は、各々独立に酸素原子、硫黄原子又はNHを示し、m’及びm”は、各々独立に1〜5の整数であり、(m’+1)はR4’の価数と、(m”+1)は、R4”の価数と一致する。
上記一般式(3)において、R4’及びR4”としては、一般式(2)のR4に関して例示したものと同様のものを挙げることができる。
また、上記一般式(3)のラジカル重合性酸性リン酸エステルにおいても、一般式(2)と同様、余剰セメント除去性や生体への安全性等の見地から、R3’、R3”はメチル基が特に好ましく、R4’、R4”は炭素数1〜15のアルキレン基が特に好ましく、W’、W”は酸素原子が特に好ましい。
【0032】
また本発明においては、上記一般式(2)及び(3)中の基Zや=P(=O)−OH基等が脱水縮合して得られる酸無水物も、一般式(2)及び(3)の化合物と同様、酸モノマー(A)として好適に使用できる。このような酸無水物は、一般式(2)で示される化合物の分子内での脱水縮合により得られるものでもよいし、一般式(2)、(3)で示される化合物、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸及び(メタ)アクリル酸からなる群より選択される2つの化合物の分子間での脱水縮合により得られたものであってもよい。分子間での脱水縮合は、同一の化合物(酸)間での反応であってもよいし、異なる化合物(酸)間での反応であってもよい。合成や入手の容易さから、酸無水物としては、分子内での脱水縮合により得られるもの或いは同一の酸2分子間での脱水縮合により得られるものが好ましい。
【0033】
本発明においては、上記酸性モノマー(A)とともに、(A)以外のラジカル重合性単量体、即ち、非酸性モノマー(B)が使用される。このような非酸性モノマーの使用により、硬化体の機械的強度を高いものとし、接着の信頼性を向上させることができる。
このような非酸性モノマー(B)としては、特に制限されないが、重合性や生体への安全性の点から(メタ)アクリル酸エステル系のラジカル重合性単量体が好適に使用される。
非酸性モノマー(B)の具体例は、以下の通りであり、これらを1種単独で或いは2種以上の組み合わせで使用することができる。
単官能性ラジカル重合性単量体:
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシメチルー3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチルメタクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエチレングリコールモノメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート。
二官能性ラジカル重合性単量体:
(i)芳香族化合物系のもの;2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を有するメタクリレート類、アミノ基を有するメタクリレート類、又はこれらのメタクリレート類に対応するアクリレートとの付加から得られるジアダクト等。(ヒドロキシル基含有メタクリレート類には、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエチレングリコールモノメタクリレート等がある。また、アミノ基含有メタクリレート類には、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、2−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノブチルメタクリレート、5−アミノペンチルメタクリレート、3−アミノペンチルメタクリレート等がある。)
(ii)脂肪族化合物系のもの;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物と、(ヒドロキシル基を有するメタクリレート類、アミノ基を有するメタクリレート類、又はこれらのメタクリレート類に対応するアクリレートとの付加から得られるジアダクト等。ヒドロキシル基含有メタクリレート類及びアミノ基含有メタクリレート類は、前記で例示した通り。)
三官能性ラジカル重合性単量体:
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
四官能性ラジカル重合性単量体:
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。上記のジイソシアネート化合物には、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等がある。
【0034】
本発明において、上述した非酸性モノマー(B)の中では、得られる硬化体の機械的強度が高い点で、複数のラジカル重合性基を有する二、三又は四官能性ラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。また、さらに単官能性ラジカル重合性単量体を併用することにより、接着強度をより高くすることもできる。
【0035】
また、歯冠用修復材料として汎用される貴金属への接着性を向上させるために、特開平10−1409号公報、特開平10−1473号公報、特開平8−113763号公報等に開示されている、硫黄系の官能基を有すラジカル重合性単量体を、非酸性モノマー(B)の一部として使用することもできる。
【0036】
本発明の歯科用接着材において、上述した酸性モノマー(A)と非酸性モノマー(B)とは、質量基準で、
A:B=5:95乃至80:20、特に10:90乃至40:60の量で使用される。即ち、酸性モノマー(A)の使用量が上記範囲よりも少ないと、歯質や歯科用金属、特に歯質エナメル質に対する接着強度が充分なものとはならない。他方、酸性モノマー(A)の使用量が上記範囲よりも多いと硬化体強度が低下し、また、歯質に対する接着強度も若干低下する。
【0037】
また、非酸性モノマー(B)として二、三又は四官能性ラジカル重合性単量体(多官能性単量体)と単官能性単量体ラジカル重合性単量体(単官能性重合体)とを使用する場合、多官能性単量体は、全モノマー(酸性モノマー(A)と非酸性モノマー(B)との合計)100質量部当たり10〜50質量部、単官能性単量体は40〜80質量部の量で存在しているのがよい。
【0038】
(C)化学重合開始剤:
本発明の歯科用接着材には、(C)化学重合開始剤が配合される。この化学重合開始剤は2種以上の化合物の組み合わせからなり、これらを混合(接触)させることによりレドックス系を形成してラジカルを発生するものである。
代表的な化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン類、有機過酸化物/アミン類/有機スルフィン酸類、有機過酸化物/アミン類/アリールボレート類、アリールボレート類/酸性化合物、及びバルビツール酸誘導体/銅化合物/ハロゲン化合物等の各種の組み合わせからなるものが挙げられる。
【0039】
上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等がある。
【0040】
ケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0041】
ジアシルパーオキサイドは、本発明において最も好適な有機過酸化物であり、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0042】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
パーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート及びt−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0043】
また、化学重合開始剤として使用されるアミン類としては、特に制限されるものではないが、アミノ基がアリール基又はピリジル基に結合した第2級または第3級アミン類が、硬化の加速性の点で好ましい。具体的には、下記一般式(4):
式中、R6は、水素原子又は主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基であり〔該アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基及び炭素数1〜5のアルキル基で置換されてもよい〕、R7は、主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基であり〔該アルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基及び炭素数1〜5のアルキル基で置換されてもよい〕、R8は、環を構成する炭素数が6〜14のアリール基又はピリジル基である〔該アリール基又はピリジル基は、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、炭素数1〜5のアルコキシル基、炭素数2〜5のアシル基、あるいは炭素数2〜5のアシルオキシ基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基で置換されていてもよい〕、で示される第2級アミンもしくは第3級アミンが挙げられる。
【0044】
上記の基R6及びR7において、主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基等が例示され、前記置換基で置換されたアルキル基としては、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、
6−ヒドロキシヘキシル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が例示される。基R6及びR7として好ましいアルキル基は、主鎖の炭素数が1〜5のものである。
【0045】
また、上記の基R8において、環を構成する炭素数が6〜14のアリール基としては、フェニル基、1−又は2−ナフチル基、1−、2−又は9−アントラニル基等が例示され、前記置換基で置換されたアリール基としては、o−,m−又はp−クロロフェニル基、o−,m−又はp−ブロモフェニル基、o−,m−又はp−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシ−2−ナフチル基、
o−,m−又はp−ニトロフェニル基、o−,m−又はp−シアノフェニル基、o−,m−又はp−メチルフェニル基、o−,m−又はp−ブチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、o−,m−又はp−スチリル基、o−,m−又はp−
(2−プロピニル)フェニル基、o−,m−又はp−メトキシフェニル基、o−,m−又はp−エトキシフェニル基、2−,3−又は4−アセチルフェニル基、2−,3−又は4−アセチルオキシフェニル基、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル基、4−メチル−2−ニトロフェニル基等が例示される。上記の基R8として好ましいアリール基は、環を構成する炭素数が6〜10のものである。
【0046】
上記一般式(4)で表されるアミン化合物のうち、好適に使用できる第二級アミンとしては、N−メチルアニリン、N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられる。また、好適に使用できる第三級アミンとしては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アニリン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、p−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−トリルジエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン等が挙げられる。
【0047】
化学重合開始剤の一成分として使用される有機スルフィン酸化合物としては、これに限定されるものではないが、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、m−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、2.3−ジメチルベンゼンスルフィン酸、3,5−ジメチルベンゼンスルフィン酸、α―ナフタレンスルフィン酸等のスルフィン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、キノリニウム塩等が挙げられる。
【0048】
化学重合開始剤の一成分として使用されるアリールボレート化合物は、1分子中に1〜4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物であり、好ましくは1分子中に3〜4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物である。
【0049】
具体的には、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するボレートの塩、例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等の金属塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等のアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩等のピリジニウム塩、またはメチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等のキノリニウム塩等を挙げることができる。ここで、1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素を例示することができる。また、1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するボレートとしては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素を例示することができる。尚、上記のボレートにおいて、アルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかである。
【0050】
化学重合開始剤の一成分として使用されるバルビツル酸誘導体としては、例えば、5−ブチル(チオ)バルビツル酸、1,3,5−トリメチル(チオ)バルビツル酸、1−ベンジル−5−フェニル(チオ)バルビツル酸、1−シクロヘキシル−5−メチル(チオ)バルビツル酸、1−シクロヘキシル−5−ブチル(チオ)バルビツル酸等が挙げられる。
【0051】
また、銅化合物としては、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等を具体的に挙げる事ができる
【0052】
さらに、ハロゲン化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に用いられる。
【0053】
上述した各種化合物を組み合わせて用いる化学重合開始剤において、有機過酸化物/アミン類では、有機過酸化物1モル当り、アミン類を0.01乃至4モル、特に0.05乃至3モルの量で使用するのがよい。
【0054】
また、有機過酸化物/アミン類/有機スルフィン酸類では、有機過酸化物1モル当り、アミン類を0.01乃至4モル、特に0.05乃至3モルの量で使用し、有機スルフィン酸を0.01乃至3モル、特に0.05乃至2モルの量で使用するのがよい。
【0055】
有機過酸化物/アミン類/アリールボレート類では、有機過酸化物1モル当り、アミン類を0.01乃至4モル、特に0.05乃至3モルの量で使用し、アリールボレート類を0.01乃至3モル、特に0.05乃至2モルの量で使用するのがよい。
【0056】
さらに、アリールボレート類/酸性化合物では、前述した酸性基含有ラジカル重合性単量体(酸性モノマー(A))が酸性化合物に相当するので、化学重合開始剤の成分として、酸性化合物を特に使用する必要はないが、必要に応じて、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、酢酸、マレイン酸、クエン酸、マロン酸、シュウ酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸を酸性化合物として使用することができる。この場合、必要に応じて使用される酸性化合物の使用量は、アリールボレート類1モル当り、1モル以下とするのがよい。
【0057】
バルビツール酸誘導体/銅化合物/ハロゲン化合物では、バルビツール酸誘導体1モル当り、銅化合物を0.000001乃至0.01モル、特に0.00001乃至0.002モルの量で使用し、ハロゲン化合物を0.0001乃至1モル、特に0.001乃至0.2モルの量で使用するのがよい。
【0058】
上述した各種組み合わせの化学重合開始剤は、それぞれ単独で使用することができるし、また2種以上の化学重合開始剤を組み合わせて使用することもできる。
【0059】
本発明においては、高い歯質接着強度が得られ、また取扱いが容易な理由から、有機過酸化物/アミン類からなる化学重合開始剤が好適である。特に有機過酸化物/アミン類の化学重合開始剤では、アミンの一部が酸性モノマー(A)によって中和されるため、この結果、硬化速度が適度に遅延され、余剰セメントの除去作業が容易となるという利点もある。また、このようなタイプの化学重合開始剤を用いた場合には、既に述べた通り、硬化物の変色(黄変)が問題となるが、本発明では、後述するスチレン誘導体(E)の使用により、このような変色の問題も有効に回避することができ、これは本発明の大きな利点である。
【0060】
本発明において、化学重合開始剤の配合量は、全モノマー(酸性モノマー(A)と非酸性モノマー(B)との合計)100質量部当り、0.05〜15質量部、特に0.5〜8質量部である。上記範囲よりも多量に使用すると、硬化速度が必要以上に速くなってしまい、余剰セメントの除去が困難となってしまう。また、硬化物の変色を生じることもある。さらに、化学重合開始剤の配合量が上記範囲よりも少量の場合には、硬化速度が著しく遅くなってしまったり、硬化物の物性、例えば機械的強度等が不満足となってしまう。
【0061】
なお、化学重合開始剤は2種以上の化合物の組み合わせからなっているため、化学重合開始剤の配合量は、各化合物の合計量とするが、アリールボレート類/酸性化合物では、酸性モノマー(A)が酸性化合物としても機能するため、アリールボレート類の量を化学重合開始剤の量とする。
【0062】
本発明においては、上述した化学重合開始剤の保存安定性を向上させる目的で、化学重合開始剤を高分子化合物等で化学重合開始剤をコーティングして使用することもできる。コーティングに用いられる高分子化合物としては、エチルセルロース、ポリエチルメタクリレート、ポリエチレングリコール等が挙げられる。コーティング方法は特に制限されず、それ自体公知のコーティング方法を採用することができるが、転動流動造粒コーティング装置を用いて行う方法が好適である。かかるコーティング装置は、例えば株式会社パウレック社により、MP−10の名称で市販されている。
【0063】
(D)充填剤:
本発明の歯科用接着剤においては、全モノマー(モノマー(A)と(B)との合計)100質量部当り、2020〜1000質量部、特に70〜400質量部の充填剤(D)が配合される。充填材の配合量が上記範囲よりも少ないと、ペースト状態の接着剤の粘度が低すぎ(流動性が高すぎ)、例えば、該接着剤を用いての歯質と歯冠用修復材料の接着作業が難しくなり、また余剰セメントの除去も困難になってしまうばかりか、得られる硬化体の機械的強度も低くなる。一方、充填剤の配合量が上記範囲よりも多量になると、接着剤の粘度が高くなり、やはり接着作業が困難となってしまう。また、場合によっては接着剤のペーストそのものが調製困難となる。
【0064】
このような充填剤は、通常、有機充填剤と無機充填剤に大別される。
有機充填剤としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上の混合物として用いることができる。
【0065】
無機充填剤としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独でまたは二種以上を混合して用いられる。
【0066】
本発明においては、無機充填剤を用いることが好適であり、無機充填剤の中でも、フッ素徐放性を付与する目的で、フルオロアルミノシリケートガラスを用いることがより好ましい。
【0067】
このようなフルオロアルミノシリケートガラスとしては、アルミニウム及び珪素の酸フッ化物ガラスのフィラーであれば特に限定されず、歯科用接着剤等において酸反応性フィラー、イオン溶出性フィラーとして一般に使われているものが使用できる。本発明においては、その組成が、イオン質量%で、珪素10〜33質量%;アルミニウム4〜30質量%;アルカリ土類金属5〜36質量%;アルカリ金属0〜10質量%;リン0.2〜16質量%;フッ素2〜40質量%;残量が酸素であるものが好適に使用される。なお、上記アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが好ましい。また、上記アルカリ金属としてはナトリウム、リチウム、カリウムが好適であり、中でもナトリウムが特に好適である。更に必要に応じて、上記アルミニウムの一部をチタン、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ランタン等で置き換えたものも使用可能である。
【0068】
このようなフルオロアルミノシリケートガラスは、例えば、シリカ、アルミナ、フルオライト、クリオライト、フッ化アルミニウム等の金属化合物を混合し、1100〜1300℃で焼結し、次いで粉砕する方法、或いはゾルゲル法などにより製造できる。
【0069】
本発明において、無機充填剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理して使用に供することもできる。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルエトキシシラン、γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0070】
また、無機充填剤としてフルオロアルミノシリケートガラスを用いる場合には、粉と液の練和性を向上させる目的で、該フルアオロアルミノシリケートガラスを高分子化合物等でコーティングしても何等差し支えない。
【0071】
本発明において使用し得る各種充填剤の形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られる様な不定形の粒子形状を有するものであってもよいし、球状粒子であってもよい。
【0072】
また、充填剤の粒径は特に限定されないが、粒径が大きいほど同一の充填量で粘度が低くなり、歯質と歯冠用修復材料の圧接の際に流動性の優れた接着剤のペーストとすることができ、他方、粒径の小さいほど圧接した後の被膜厚さが薄くなり、歯質と歯冠用修復材料が密着した状態での修復が可能となる。これらを考慮して、本発明では、充填剤の平均粒径は0.01〜100μm、特に0.1〜50μmであることが好ましい。
【0073】
(E)スチレン誘導体:
本発明の歯科用接着剤には、下記一般式(1):
式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である、で表される化合物
(スチレン誘導体)が配合される。
【0074】
上記一般式(1)において、当該炭素数1〜3のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はi−プロピル基である。
【0075】
本発明に用いるスチレン誘導体は、上記一般式(1)で表される限り特に制限はないが、入手のし易さの点で、R1およびR2がともにメチル基である2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンであることが好ましい。また、必要に応じて、R1やR2が互いに異なる複数のスチレン誘導体を併用することもできる。
【0076】
本発明によれば、上記のスチレン誘導体を配合することにより、接着強度をほとんど低下させることなく余剰レジンの除去性を向上させることが可能となる。例えば、上記スチレン誘導体が配合された本発明の歯科用接着剤では、硬化が始まり、流動性が低下し始めてから、硬化が終了するまでの時間を延長することが可能となり、よって、余剰レジンを除去するための操作余裕時間が従来の歯科用接着剤に比して長く確保でき、しかも、得られる硬化物の機械的強度、歯質や歯冠用修復物に対する接着強度等の特性にも優れているのである。
【0077】
本発明における余剰レジン(セメント)除去効果を説明するための図1を参照されたい。図1は、歯科用レオメーターB型(セイキ社製)を37℃に1時間放置して恒温に保った後、試料台間距離を0.15mmに調節し、そこへ0.2gの歯科用接着剤のペーストを、練和開始から1分後に試料台にセットし、該セット後から該接着剤の流動性変化を測定したものを示しており、縦軸が経過時間、横軸がペーストの流動性(幅が狭いほど流動性が低い)を示す。上記歯科用レオメーターは一定時間毎に左右逆の回転を一定トルクで付加して回転させ、その時の回転距離(回転角度)を測定するものである。
【0078】
即ち、化学重合開始剤を含む成分とモノマー成分を含む成分とを練和すると、練和開始後しばらくは流動性が極めて高く、ほぼ完全に回転する。この間は流動性が高すぎて短針にて除去することが困難である。練和後しばらくすると、重合が進行して流動性の低下がおき始め(硬化開始)、同一トルクでの回転距離が徐々に小さくなっていく。そして最終的にはほとんど回転しないほど流動性が低下する(硬化終了)。硬化が終了してしまうと、余剰レジンの機械的強度が高くなり、また歯質や歯冠用修復材料にも強固に接着してしまうため、該余剰レジンの除去が極めて困難になる。
【0079】
余剰レジンの除去性は、接着性や最終的に得られる硬化体の機械的物性にも左右されるが、一般には上記歯科用レオメーターで測定した硬化開始から硬化終了までの時間が長いほど除去のための操作余裕時間が長くなり、よって除去性に優れた歯科用接着剤であることを意味している。
【0080】
後述する実施例で示されているように、本発明の歯科用接着剤は、上記歯科用レオメーターで測定された硬化開始から硬化終了までの時間を1.0乃至5.0分とすることが可能であり、余剰レジンを除去するのに十分な時間で且つ患者に負担を与えない程度の速さで硬化が進行する。また、硬化体の象牙質に対する接着強度は6乃至10MPaとすることが可能であり、エナメル質に対する接着強度は8乃至15MPaとすることが可能であり、さらに圧縮強度は140乃至230MPaとすることが可能であり、接着性及び機械的強度の何れにも優れている。
【0081】
一般に知られている重合禁止剤や重合調整剤を配合した場合には、単に硬化開始時間を遅くするだけであったり、あるいは、接着強度や機械的強度を低下させてしまうものであり、本発明のように接着剤の本来有する各種性質に影響を与えることなく、操作余裕時間のみを延長できるというのは、前記一般式(1)で示されるスチレン誘導体の有する特異的な効果である。
【0082】
しかも、後述する実施例から理解されるように、上記のスチレン誘導体が配合された本発明の歯科用接着剤では、有機過酸化物/アミン類等の化学重合開始剤を用いた場合の硬化体の黄変も有効に防止されている。
【0083】
本発明において、上述した一般式(1)で表されるスチレン誘導体は、全モノマー(モノマー(A)及び(B)の合計)100質量部当り0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜2質量部、最も好ましくは0.5〜2質量部の範囲で配合される。かかる量で配合されることにより、最終的に得られる硬化体の機械的強度や接着強度に影響を与えることなく、当該硬化開始から硬化終了までの時間(操作余裕時間)を長くすることが可能となる。例えば、その配合量が少なすぎると操作余裕時間の延長および黄変の抑制という効果が充分に得られない。他方、配合量が多いほど操作余裕時間が長くなるが、硬化が終了するまで修復(治療)そのものが完了しないため、多すぎても問題を生じる。また、あまりに多量に配合すると最終的に得られる硬化体の機械的強度や接着強度にも影響を及ぼし始める。
【0084】
その他の配合剤:
本発明の歯科用接着剤には、性能を低下させない範囲で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、重合禁止剤、酸化防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、水、有機溶媒、増粘剤等が挙げられる。
【0085】
使用方法:
本発明の歯科用接着剤の使用方法は特に限定されないが、例えば次のような方法で好適に使用することが出来る。
【0086】
本発明の歯科用接着剤を混合して得られたペーストを種々の歯科用歯冠用修復材料に塗布後、硬化開始前に歯質に圧接し、そこで接着剤を重合硬化させることにより、歯質と修復物とを接着する事ができる。また、歯面は接着性を更に向上させる目的で、事前に歯面処理剤で処理しても良いし、歯冠用修復材料が貴金属やセラミックス等の場合は、各々、貴金属プライマーやセラミックスプライマーと称される歯科用の表面処理剤で処理するのも好適である。これらの表面処理剤は、公知のものがなんら制限なく使用できる。
【0087】
さらに、本発明の歯科用接着剤の包装形態は特に限定されないが、例えば次のような包装形態で好適に使用することが出来る。
【0088】
即ち、充填剤(D)と、化学重合開始剤(C)の少なくとも1成分とで粉成分を調製し、酸性モノマー(A)、非酸性モノマー(B)、スチレン誘導体(E)および化学重合開始剤(C)の残りの成分からなる液成分を調製し、使用時にこれら粉成分と液成分を所定の割合で混合して本発明の歯科用接着剤とする。この場合、化学重合開始剤(E)の成分として、アリールボレート類やスルフィン酸塩類等の酸により分解する成分が含まれている場合、あるいは、有機過酸化物の如く、加熱により分解し単独でもラジカル重合開始能を有す成分が含まれている場合には、これらは粉成分の方に配合することが好ましい。むろん必要に応じて上記以外の包装形態を採用することも可能である。
【0089】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0090】
1.実施例で使用した化合物の略称を以下に示す。
(A)酸性基含有ラジカル重合性単量体(酸性モノマー)
PM;2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
PM2;ビス(2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
MAC−10;11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸
(B)(A)以外のラジカル重合性単量体(非酸性モノマー)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
UDMA:1.6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2,4,
−トリメチルヘキサン
MMA:メチルメタクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
(C)化学重合開始剤
BPO:過酸化ベンゾイル
PBTEOA:テトラフェニルホウ素のトリエタノールアンモニウム塩
PTSNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
DEPT:N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−p−トルイジン
DMPT:N,N−ジメチルアミノ−p−トルイジン
(D)充填剤
FASG:フルオロアルミノシリケートガラスフィラー{トクソーグラスアイオノマー
セメントパウダー(トクヤマ社製)}
SE−1:平均粒径1μmの球状シリカ(エクセリカSE−1;トクヤマ社製)
Si−Zr:平均粒径10μmの球状のシリカ−ジルコニアフィラー
Si−Ti:平均粒径15μm不定形のシリカ−チタニアフィラー
PMMA:平均粒径20μm、分子量300000のポリメチルメタクリレート
(E)一般式(1)で示される化合物
Me−Me:2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン
Me−Et:2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ヘキセン
Et−Et:2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ヘキセン
【0091】
2.実施例・比較例における各物性の評価方法を以下に示す。
(接着強度の測定)
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、注水下、
#800のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質または象牙質平面を削り出した。次にこれらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、この平面に直径3mmの孔のあいた両面テープを固定した。この穴に使用直前に調整した接着剤を塗布し、さらにその上にステンレス製アタッチメントを圧接した。
【0092】
上記接着試験片を37℃、湿度100%に1時間、
37℃の水中に24時間浸漬した後、引っ張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引っ張り、歯牙との引っ張り接着強度(単に「接着強度」ともいう。)を測定した。
【0093】
尚、それぞれ同一条件で作製した8本の試験片について引っ張り接着強度を測定し、その時の引っ張り接着強度の平均値を以って接着性組成物の接着強度とした。
【0094】
(硬化時間の測定)
歯科用レオメーターB型(セイキ製)を37℃に1時間放置して恒温に保ち、試料台間距離を0.15mmに調節した。試料の歯科用接着剤0.2gを練和し、練和開始から1分後試料台にセットした。試料台にセット後から、接着剤の流動性の変化を測定し、流動性に変化の出始める時間(硬化開始時間)と変化がなくなる時間(硬化終了時間)を算出した。同一試料について2回測定を行い、その平均値から、硬化開始時間・硬化終了時間を算出した。
【0095】
(余剰セメントの除去の評価)
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、注水下、
#800のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質を削り出した。次にこれらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、37℃・100%の湿度下に1時間放置した。接着剤0.2gを練和し、エナメル質に塗布し、その上から5mm×5mmのアルミニウム板をのせ、練和開始から2分経過後に該試料を、37℃・100%の湿度下に保存した。その後30秒毎に短針を用いて該試料における余剰レジンの除去性を評価した。硬化が進行して短針では除去不能になるまでに経過した時間から、初めて容易に余剰レジンが除去できるようになるまでに経過した時間を差し引き、この時間を除去可能時間として評価した
【0096】
(色調)
直径7mm,高さ3mmの孔を有するポリアセタール製の型に試料の接着剤を充填し、ポリプロピレンフィルムで圧接、37℃・湿度100%の恒温室に1時間保持後、37℃の水中に24時間浸漬して硬化体を得た。硬化体の色調を色査計(東京電色社製:TC-1800MK白バック)を用いてJIS Z8729に準じて測定した。試験は2個の試験片の各々上下、計4点について行い、硬化体における黄色の色調を表すb*の平均で評価した。b*が小さいほど黄色味が小さい。
【0097】
(硬化体強度)
直径4mm,高さ3mmの孔を有するポリアセタール製の型に接着性組成物を充填し、ポリプロピレンフィルムで圧接、37℃・湿度100%の恒温室に1時間保持後、37℃の水中に24時間浸漬して硬化体を得た。
圧縮試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード10mm/minにて圧縮し、硬化体の圧縮強度を測定した。同一の条件で作製した4個の試験片について圧縮強度を測定し、その時の平均値をもって硬化体強度の値とした。
【0098】
実施例1
PMを7質量部、PM2を13質量部、HEMAを50質量部、UDMAを30質量部、DEPTを0.3質量部、Me−Meを1質量部混合し、均一な溶液とした液成分を得た。別途、FASGを160質量部、SE−1を70質量部、BPOを3.5質量部、PBTEOAを0.7質量部混合し、均一な粉末とした粉成分とした。
液成分と粉成分を上記質量比で均一になるまで練和した後、歯質接着強度、硬化時間、除去可能時間、硬化体のb*、及び硬化体の圧縮強度を評価した。その結果、象牙質接着強度が7.6MPa、エナメル質接着強度が10.2MPaと高い歯質接着強度を有していた。硬化開始時間は3.8分、硬化終了時間は6.3分であり、半硬化状態である時間が2.5分であり、実際に余剰セメントの除去が可能な時間は180秒であった。また硬化体の黄色硬化体の黄色度を表すb*は10.1であり着色も少なかった。硬化体の圧縮強度は210MPaであった。これらの結果は表2にまとめて示す。
【0099】
実施例2〜20
接着剤組成を表1に示すように変化させた以外は、実施例1と同様にして各種物性を評価した。これらの評価結果は表2に示した。
【0100】
比較例1
実施例1において、E成分であるスチレン誘導体(Me−Me)の1質量部に代えて、重合禁止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT)を0.1質量部用いる他は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製し、各種性能を評価した。
その結果、象牙質接着強度が3.1MPa、エナメル質接着強度が5.0MPaと実施例1に比較して低い歯質接着強度であった。硬化開始時間は4.7分、硬化終了時間は5.3分であり、半硬化状態である時間が0.6分であり、実際に余剰セメントの除去が可能な時間は50秒であり、実施例1に比較して短かった。また硬化体の黄色度を表すb*は12.8であり着色は多かった。硬化体の圧縮強度は197MPaであった。これらの結果は表2にまとめて示す。
【0101】
比較例2
E成分のスチレン誘導体(Me−Me)0.8質量部に代えて、重合禁止剤であるハイドロキノン(HQ)を0.005質量部用いる他は、実施例3と同様にして硬化性組成物を調製し、各種性能を評価した。
【0102】
その結果、象牙質接着強度が2.7MPa、エナメル質接着強度が4.4MPaと実施例3に比較して低い歯質接着強度であった。硬化開始時間は5.8分、硬化終了時間は6.6分であり、半硬化状態である時間が0.8分であり、実際に余剰セメントの除去が可能な時間は60秒であり、実施例3に比較して短かった。また硬化体の黄色度を表すb*は14.3であり着色は多かった。硬化体の圧縮強度は201MPaであった。これらの結果は表2にまとめて示す。従って、重合禁止剤の使用により硬化時間の遅延は観察されるものの、余剰セメント除去可能時間の延長は見られず、また、歯質接着強度の低下が確認された。
【0103】
比較例3〜10
接着剤組成を表1に示すように変化させた以外は、実施例1と同様にして各種物性を評価した。これらの評価結果は表2に示した。
【0104】
比較例3〜5は、それぞれ、実施例1、3及び4において(A)成分の酸性モノマーが欠如した場合であり、象牙質接着強度2.1MPa、1.6MPa及び2.8MPa、エナメル質接着強度4.1MPa、3.8MPa及び4.9MPaと歯質に対する接着強度がかなり低かった。また、半硬化状態である時間も1.1分、1.4分及び1.5分であり、それに伴い、除去可能時間も100秒、120秒及び120秒であり、各々実施例1、3及び4と比較して短くなった。さらに、b*は12.9、13.9及び12.1であり、各々実施例1、3及び4と比較して着色は多かった。
以上のことから、本発明の歯科用接着剤において、酸性モノマー(A)は、歯質接着性の向上のみならず、除去可能時間の延長及び着色度合いの低下を導くものであることがわかる。
【0105】
比較例6及び8は、(E)成分のスチレン誘導体を配合しなかった接着剤の例である。歯質接着強度は実施例と同等であったが、半硬化状態である時間(硬化終了時間−硬化開始時間)がいずれも0.6分以下であり、また、実際の除去性をみても、除去可能時間が30秒未満しかなかった。さらに、着色度合いを示すb*も13.1及び13.5であり、実施例1及び3と比較して明らかに黄色味を帯びていた。
【0106】
比較例7及び9は、(E)成分のスチレン誘導体を、本発明の配合範囲を大幅に上回る10質量部配合されている接着剤の例である。歯質接着強度が実施例と比較して明らかに低く、また、硬化体の圧縮強度も90MPa程度に過ぎず歯科用セメントして充分なものではなかった。
【0107】
比較例10は、本発明の必須成分である非酸性モノマー(B)が配合されていない接着剤の例であり、硬化体の圧縮強度が120MPaと低かった。また、象牙質、エナメル質共に接着強度が若干低下する傾向があった。
【0108】
比較例11
表1に示す組成の歯科用接着剤を調製したが、(C)成分の化学重合開始剤を配合しなかったため、この接着剤は硬化しなかった。従って、接着強度も0であった。
【0109】
比較例12
表1に示す組成の歯科用接着剤を調製したが、(D)成分である充填剤量が少ないため、得られた接着剤ペーストの粘度が極めて低く、除去性の評価サンプルを作製すると、該化合物は流れて薄く広がってしまい、短針で除去することは不可能であった。
【0110】
比較例13
表1に示す組成の歯科用接着剤を調製しようとしたが、充填剤量が多すぎてペースト状の均一な組成物とすることができなかった。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1は、歯科用レオメーターの測定結果から、硬化開始時間と硬化終了時間の算出方法を示す図である。
Claims (7)
- 前記(A)以外のラジカル重合性単量体(B)が、多官能性の(メタ)アクリル酸系のラジカル重合性単量体を含有している請求項1に記載の歯科用接着剤。
- 前記(A)以外のラジカル重合性単量体(B)が、多官能性の(メタ)アクリル酸系ラジカル重合性単量体と単官能性の(メタ)アクリル酸系ラジカル重合性単量体とからなる請求項1に記載の歯科用接着剤。
- 前記充填剤(D)が、フルオロアルミナシリケートガラスである請求項1に記載の歯科用接着剤。
- 前記一般式(1)で示される化合物が、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンである請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
- 37℃にセットされた歯科用レオメータで測定した0.2g当りの硬化開始から硬化終了までの時間が1.0乃至5.0分である請求項1に記載の歯科用接着剤。
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