JP6813287B2 - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents

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本発明は歯科用硬化性組成物に関する。
近年、硬組織誘導能を有するとされる歯科用硬化性組成物としてMTA(Mineral Trioxide Aggregate)と称される歯科用ポルトランドセメントが市販され、歯髄や根尖歯周組織の疾患に使用され始めている。
MTAはコンクリートなどに使用されているポルトランドセメントを歯科用に微粒子化し、酸化ビスマスなどのX線不透過性を有する無機物を加えて口腔内で使用できるように調製されたものであり、水と混和することで水和反応により硬化する。この硬化体は優れた生体親和性および硬組織誘導能を有し、歯髄や歯根歯周組織に新生硬組織を形成できるとの報告もなされており、覆髄材である水酸化カルシウム製剤の代替として、また、逆根管充填、穿孔封鎖および歯根形成促進法(Apexification)など多彩な臨床応用として用いられている。
MTAが硬組織誘導能を発現する機構として、非特許文献1によると、MTAが水と混和し生じる水和反応時に放出する水酸化カルシウムが硬組織誘導を惹起すると報告されている。
また、MTAは、骨芽細胞におけるオステオカルシン(osteocalcin)またはオステオポンチン(osteopontin)などの骨形成・石灰化関連タンパクの発現亢進が起こりやすく、炎症反応などの組織反応が軽微に抑制されることなどが非特許文献2に記載されており、歯髄周辺や根尖歯周組織の再生治療において注目を集めている。
MTAの臨床術式の一例としては、神経が露出した状況にある露髄歯の場合、該露髄部にMTAを塗布した後、その上に仮封材や補綴物などの上部構造を形成する方法が挙げられる。この時、MTAの水和反応速度は遅く、完全硬化までに数日を必要する。そのため、MTA塗布直後は術部の機械的強度が弱く、MTAが溶解し易い状態にあるといえる。また、該臨床術式の際のポットライフが短すぎて操作性は良いとは言えないという問題もある。
そこで、特許文献1では、MTAをポリマー湿潤体とすることで、低い早期強度および低い表面硬度の問題を解決する手段が提案されている。
また、特許文献2では、ポルトランドセメント成分に分子内に1つ以上の重合性基を有するモノマー、フィラーおよび重合開始剤を加え、操作性と機械的物性の向上、さらに接着性を付与する手段が提案されている。
さらに、特許文献3では、生物活性セメント成分を重合性組成物で内包、重合後に粉末化することで、操作性、機械的物性の向上、さらに接着性を付与する手段が提案されている。
特表2007−528398号公報 特開2012−020983号公報 特開2015−074624号公報
International Journal of Dentistry Volume 2009, Article ID 464280, 12 pages International Endodontic Journal,38:747-754,2006
しかし、前記公知の方法では、長いポットライフ(以下「操作性に優れる」ともいう。)を有しながらも、優れた硬組織誘導能を有する組成物を得ることができなかった。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、操作性と硬組織誘導能とにバランスよく優れ、機械的物性に優れる硬化体を容易に得ることができる歯科用硬化性組成物を提供することを目的としている。
本発明者が鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出した。
[1] 少なくとも1つの水酸基と1つの重合性基とを有する重合性化合物(A)、セメント成分(B)および重合開始剤(C)を含む歯科用硬化性組成物。
[2] 重合性化合物(A)、セメント成分(B)および重合開始剤(C)の合計100重量%に対し、化合物(A)を9〜85重量%、成分(B)を3〜90重量%、重合開始剤(C)を0.01〜40重量%含む、[1]に記載の歯科用硬化性組成物。
[3] 前記重合開始剤(C)が有機ホウ素化合物である、[1]または[2]に記載の歯科用硬化性組成物。
[4] 前記重合開始剤(C)がトリブチルボランまたはその部分酸化物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
[5] 前記水酸基が、前記化合物(A)の末端以外に結合している、[1]〜[4]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
[6] 前記化合物(A)がメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルである、[1]〜[5]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
[7] 無機フィラー、有機フィラーおよび有機無機複合化フィラーからなる群より選ばれる少なくとも1種のフィラー(D)を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
本発明によれば、操作性と硬組織誘導能とにバランスよく優れ、機械的物性に優れる硬化体を容易に得ることができる歯科用硬化性組成物を提供することができ、特に、従来の歯科用ポルトランドセメントの有する硬組織誘導能を維持しつつ、かつ、操作性に優れ、機械的物性に優れる硬化体を容易に得ることができる歯科用硬化性組成物を提供することができる。
このような本発明によれば、歯科用セメント、歯科用ボンディング材などの歯科用接着性組成物、覆髄材および根管充填材等として好適に使用できる歯科用硬化性組成物を提供することができる。
図1は、疑似体液に浸漬する前の比較例6の硬化体表面のSEM写真である。 図2は、比較例6の硬化体を疑似体液に浸漬することで得られた試験体表面のSEM写真である。 図3は、実施例1の試験体表面のSEM写真である。 図4は、比較例1の試験体表面のSEM写真である。 図5は、比較例3の試験体表面のSEM写真である。
≪歯科用硬化性組成物≫
本発明に係る歯科用硬化性組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、少なくとも1つの水酸基と1つの重合性基とを有する重合性化合物(A)(以下「(A)成分」ともいう。)、セメント成分(B)(以下「(B)成分」ともいう。)および重合開始剤(C)(以下「(C)成分」ともいう。)を含む。
前記(B)成分と共に、特定の(A)および(C)成分を用いることで初めて、本組成物は前記効果を奏する。
<重合性化合物(A)>
前記重合性化合物(A)は、分子内に少なくとも1つの水酸基と1つの重合性基とを有する化合物であり、これらの基を有していれば特に制限されず、分子内に亜鉛やジルコニアなどの金属原子を含んでいてもよい。
(A)成分は、水酸基を有することと、1つの重合性基を有することを特徴とするため、本組成物は前記効果を奏するのであり、(A)成分を用いず、水酸基を有さない重合性化合物や重合性基を2つ以上有する化合物を用いた場合には、前記目的を達成できないことが本発明者の研究で初めてわかり、そこでなされたのが本発明である。
本組成物は、1種の(A)成分を用いてもよく、2種以上の(A)成分を用いてもよい。
前記重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、ビニル基、シアン化ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基などが挙げられる。
(A)成分としては、特に制限されないが、例えば、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、1,2−、1,3−または2,3−ジヒドロキシプロパン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、N,N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニルグリシン(NPG−GMA)等の水酸基含有の(メタ)アクリレート類;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(5−ヒドロキシペンチル)(メタ)アクリルアミド、N−(6−ヒドロキシヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N−(10−ヒドロキシデシル)(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイル−1,2−ジヒドロキシプロピルアミン、N−(メタ)アクリロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミン、N−(メタ)アクリロイル−2,3−ジヒドロキシプロピルアミン等の水酸基含有の(メタ)アクリルアミド類;
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ナフトキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル(メタ)アクリレート(GMA)と脂肪族もしくは芳香族ポリオール(フェノールを含む)との付加生成物が挙げられる。
特に本発明では、(A)成分として、人体への刺激性が比較的低いメタクリレートが好ましい。
また、(A)成分としては、より機械的強度に優れる硬化体を得ることを目的とした場合、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)以外の化合物を用いることが好ましい。
さらに、(A)成分としては、より優れた硬組織誘導能と操作性とを同時に達成でき、かつ、機械的物性により優れる硬化体を得ることができる等の点から、鎖状化合物が好ましく、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基が末端以外に結合している化合物がより好ましく、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルが特に好ましい。
本組成物中の(A)成分の含有量は、(A)〜(C)成分の合計100重量%に対し、好ましくは9〜85重量%、より好ましくは10〜85重量%、さらに好ましくは15〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%である。
(A)成分の含有量が前記範囲にあると、より操作性に優れる組成物が得られるため好ましい。
<セメント成分(B)>
前記セメント成分(B)は、セメントを含めば特に制限されず、好ましくはポルトランドセメント成分であり、一般的に土木建築用途に用いられているポルトランドセメントを歯科用途に使用できるように適宜リファインしたものであってもよい。
(B)成分と、(A)成分と、(C)成分とを混合することで、(A)成分および(C)成分による重合反応と、(B)成分および本組成物を適用する部位に残存する水分等の水分による水和反応とが同時に生じ、本組成物を歯の根管などの部位に適用後、本組成物を直ちに硬化させることが可能となる。
本組成物は、1種の(B)成分を用いてもよく、2種以上の(B)成分を用いてもよい。
前記セメント(生セメント)は、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄等を微粉砕混合し、例えばロータリーキルン等を用いて、最高1450℃にて焼成し、1200℃までは徐冷、それ以降は急冷してクリンカーを作成し、これに石膏3〜4重量%を加えて微粉砕して得ることができる。
歯科用途としては、審美性の観点から、着色を抑えるために、鉄等の含有量の少ないセメントが好ましい。また、前記セメントには、粘度調整などのために、ヒュームドシリカ等を添加してもよい。
(B)成分としては、三酸化カルシウム、二酸化ケイ素および硫酸カルシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の無機成分を含有することが好ましく、三酸化ミネラルアグリゲイトを含有することがより好ましい。
本組成物中の(B)成分の含有量は、(A)〜(C)成分の合計100重量%に対し、好ましくは3〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは20〜75重量%である。
(B)成分の含有量が前記範囲にあると、硬組織誘導能と操作性とによりバランスよく優れる組成物が得られるため好ましい。
<重合開始剤(C)>
前記重合開始剤(C)としては、有機過酸化物、無機過酸化物、酸化還元性金属化合物、ジアゾ系化合物、光重合開始剤、有機ホウ素化合物等が挙げられる。
本組成物は、1種の(C)成分を用いてもよく、2種以上の(C)成分を用いてもよい。
有機過酸化物としては、例えば、イソブチルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドなどのアルキルパーオキサイド;アセチルパーオキサイドなどの過酸化カルボン酸無水物;ベンゾイルパーオキサイドなどの芳香族系過酸化カルボン酸無水物;コハク酸パーオキサイドなどのポリカルボン酸の過酸化無水物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネートなどの直鎖状または分枝状脂肪族系および/または芳香族系パーオキシジカーボネート;tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネートなどの直鎖状または分枝状脂肪族系および/または芳香族系過酸化エステル;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシドなどのカルボン酸とスルホン酸の過酸化無水物等が挙げられる。
無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウム等が挙げられる。
酸化還元性金属化合物としては、銅、鉄、コバルトなど遷移金属の硝酸塩、塩化塩、アセチルアセト塩等が挙げられる。
ジアゾ系化合物としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等が挙げられる。
光重合開始剤としては、可視光または紫外光照射によって励起されて重合を開始する公知の化合物が挙げられ、具体的には、α−ジケトン化合物、カンファーキノンなどのカンファーキノン系化合物;α−ナフチルなどのナフチル系化合物;ベンジル、p,p'−ジメトキシベンジルなどのベンジル系化合物;ペンタジオンなどのβ−ジケトン系化合物;1,4−フェナントレンキノン、ナフトキノンなどのキノン系化合物;ジフェニルトリメチルベンゾイルフォスフィンオキシドなどのアシルフォスフィンオキシド系化合物等が挙げられる。これらの中では、カンファーキノンが好ましく使用される。
有機ホウ素化合物としては、トリエチルホウ素、トリ(n−プロピル)ホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリ(n−ブチル)ホウ素、トリ(s−ブチル)ホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリオクチルホウ素、トリデシルホウ素、トリドデシルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素、ブチルジシクロヘキシルボランなどのトリアルキルホウ素;ブトキシジブチルホウ素などのアルコキシアルキルホウ素;ジイソアミルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンなどのジアルキルボラン;テトラフェニルホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩、テトラフェニルホウ素ジメチル−p−トルイジン塩、テトラフェニルホウ素ジメチルアミノ安息香酸エチルなどのアリールボレート化合物;部分酸化トリブチルホウ素などの部分酸化トリアルキルホウ素等が挙げられる。
前記部分酸化トリアルキルホウ素は、トリアルキルホウ素1モルに対して、好ましくは0.3〜0.9モル、より好ましくは0.4〜0.6モルの酸素を付加させた部分酸化物である。
前記有機ホウ素化合物の中では、トリブチルホウ素(TBB)および/または部分酸化トリブチルホウ素を用いると、前記本発明の効果がより効果的に発揮されるため好ましい。
(C)成分として、有機過酸化物または光重合開始剤を使用する場合、有機還元剤や無機還元剤などの還元性化合物を併用することができるが、これら自体レドックス系などで(C)成分として用いることも可能である。還元性化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
有機還元剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジエタノール−p−トルイジン(DEPT)、N,N−ジメチル−p−tert−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチル−p−クロルアニリン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)およびそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド(DMABAd)などの芳香族アミン類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基含有アミン類;N−フェニルグリシン(NPG)およびその塩、N−トリルグリシン(NTG)などのアミン類等が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中では、DMPT、DEPT、DEABA,DMABAd、NPG、NTGが好ましく使用できる。
また、有機還元剤として、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタレンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸またはその塩;バルツール酸誘導体等を用いることもできる。
無機還元剤としては、水または水系溶媒などの媒体中でラジカル重合性単量体を重合させる際に使用できるレドックス重合開始剤が好ましく、亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオン酸、1,2チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸およびこれらの塩等が挙げられる。このうち亜硫酸塩が好ましく用いられ、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましい。
本組成物の硬化を速やかに終了させるための、有機過酸化物と還元性化合物との組み合わせの好適例としては、ベンゾイルパーオキサイドと、NPGおよび/またはNTGとの組み合わせが挙げられる。当該組合せの重量比率としては、好ましくは5:1〜1:5、より好ましくは3:1〜1:3、特に好ましくは1:1.5〜1.5:1である。
また、本組成物の硬化を速やかに終了させるための、光重合開始剤と還元性化合物との組み合わせの好適例としては、カンファーキノンと、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸−2−n−ブトキシエチル等の芳香環に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンのエステル化合物との組み合わせが挙げられる。
(C)成分としては、より優れた硬組織誘導能と操作性とを同時に達成でき、かつ、機械的物性により優れる硬化体を得ることができる等の点から、有機ホウ素化合物であることが好ましく、トリブチルボランまたはその部分酸化物であることがより好ましい。
本組成物中の(C)成分の含有量は、(A)〜(C)成分の合計100重量%に対し、好ましくは0.01〜40重量%、より好ましくは0.05〜35重量%、特に好ましくは0.1〜30重量%である。
(C)成分の含有量が前記範囲にあると、本組成物の重合硬化速度を適度な範囲にすることができ、操作性に優れる組成物を容易に得ることができ、さらに、機械的物性等の物性に優れる硬化体を得ることができるため好ましい。
<フィラー(D)>
本組成物は、フィラー(D)(以下「(D)成分」ともいう。)を含んでもよい。なお、(D)成分は、前記(B)成分以外の成分である。
(D)成分を用いることで、(B)成分のみを用いる場合に比べ、本組成物の粘度を高粘度化することができ、本組成物の使用時の操作性を向上させることができる。また、(D)成分を用いることで、機械的強度に優れる硬化体を容易に得ることができ、さらに、フィラー自身の有する効果が発揮される硬化体を得ることができる。これらの点から、本組成物は(D)成分を用いることが好ましい。
(D)成分としては、特に制限されないが、無機フィラー(D1)、有機フィラー(D2)および有機無機複合化フィラー(D3)が挙げられる。
本組成物は、1種の(D)成分を用いてもよく、2種以上の(D)成分を用いてもよい。
無機フィラー(D1)としては、チタン、亜鉛、ジルコニウム、ストロンチウム、錫、バリウム、タングステン、ビスマス、イットリウム、イッテルビウム等のX線不透過性である重原子を有するフィラーが挙げられる。
無機フィラー(D1)としては、為害性、溶出性、着色性等が低いフィラーであることが好ましく、酸化物、ハロゲン化物、硼化物、炭化物、窒化物、燐化物、硫化物、塩、錯塩、複塩、金属間化合物、固溶体、ガラス体等特に限定されないが、その具体例としては、ジルコニウム酸化物、ビスマス酸化物、チタン酸化物、酸化亜鉛などの金属酸化物粉末、炭酸ビスマス、リン酸ジルコニウムおよび硫酸バリウムなどの金属塩粉末、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラスおよびジルコニウムシリケートガラスなどのガラスフィラーが挙げられる。
また、無機フィラー(D1)として、銀徐放性を有するフィラー、フッ素徐放性を有するフィラーなども挙げることができる。
無機フィラー(D1)としては、無機フィラー(D1)と(A)成分との間に強固な結合を得ることを目的として、シラン処理、ポリマーコートなどの表面処理を施した無機フィラーを使用することが好ましい。
有機フィラー(D2)としては、ポリマー粒子が挙げられ、好ましくは、ポリ(メタ)アクリレート粒子が挙げられる。
このポリマー粒子はモノマーを重合することで得ることができ、該モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。
また、前記ポリマー粒子は、必要に応じて少量の架橋性モノマーを前記モノマーと共重合させてもよい。
該架橋性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタジエンなどの多官能モノマーが挙げられる。
前記多官能モノマーの配合率は、ポリマー粒子を形成する全モノマーを100重量%とした場合、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
多官能モノマーの配合率を前記範囲とした場合に得られるフィラーを用いると、本組成物の粘度や重合速度を容易に調整することができる。
有機フィラー(D2)として好適に使用されるポリ(メタ)アクリレート粒子のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、5万〜30万の範囲内にあることが好ましい。
重量平均分子量が前記範囲にあるフィラーを用いることで、本組成物の粘度や重合速度を容易に調整することができる。
有機無機複合化フィラー(D3)としては、有機成分と無機成分とが複合化されたフィラーであれば特に制限されない。
該有機成分としては、ポリマーが挙げられ、該ポリマーは、前記(A)成分により実質上膨潤・溶解しないポリマーであることが好ましい。このため、該ポリマーは、多官能モノマーを主体として形成されることが好ましく、このポリマーを形成する全モノマーを100重量%とした場合、該多官能モノマーの配合率は、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%である。
有機無機複合化フィラー(D3)としては、TMPTフィラー(トリメチロールプロパントリメタアクリレートとシリカフィラーとを混和し、該アクリレートを重合させた後に粉砕したもの)などが好ましい。
本組成物が(D)成分を含む場合、該(D)成分の含有量は、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対し、好ましくは1〜900重量部、より好ましくは5〜850重量部である。
(D)成分の含有量が前記範囲にあると、本組成物の重合硬化速度を適度な範囲にすることができ、操作性に優れる組成物容易に得ることができ、さらに、機械的物性等の物性に優れる硬化体を容易に得ることができるため好ましい。
また、本組成物が(D)成分を含む場合、(A)〜(D)成分の合計100重量%に対する(B)および(D)成分の合計含有量は、好ましくは3〜93重量%、より好ましくは7〜85重量%である。
(B)および(D)成分の合計含有量が前記範囲にあると、本組成物の重合硬化速度を適度な範囲にすることができ、操作性に優れる組成物容易に得ることができ、さらに、機械的物性等の物性に優れる硬化体を容易に得ることができるため好ましい。
<その他の成分>
本組成物には、前記(A)〜(D)成分以外の成分として、歯科用組成物に従来用いられてきた従来公知の成分、安定剤(E)、色素および/または顔料(F)、水中においてフッ化物イオンを放出する化合物(G)等のその他の成分を、所望の用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
〈安定剤(E)〉
本組成物には、所望により安定剤(E)を添加してもよい。安定剤(E)としては、重合禁止剤が好ましく、具体的には、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンなどのハイドロキノン化合物類;ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのフェノール類等が挙げられる。これらの中では、特に、ハイドロキノンモノメチルエーテルおよび2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの組み合わせが好ましい。
安定剤(E)は単独でまたは2種以上を使用することができる。
〈色素および/または顔料(F)〉
本組成物には、所望により色素および/または顔料(F)を添加してもよい。かかる色素および/または顔料(F)としては、フロキシンBK、アシッドレッド、ファストアシッドマゲンタ、フロキシンB、ファストグリーンFCF、ローダミンB、塩基性フクシン、酸性フクシン、エオシン、エリスロシン、サフラニン、ローズベンガル、ベーメル、ゲンチアナ紫、銅クロロフィリンナトリウム、ラッカイン酸、フルオレセインナトリウム、コチニール、シソニン、タルク、チタンホワイト等が挙げられる。
色素および/または顔料(F)は単独でまたは2種以上を使用することができる。
〈水中においてフッ化物イオンを放出する化合物(G)〉
本組成物には、所望により水中においてフッ化物イオンを放出する化合物(G)(以下「(G)成分」ともいう。)を添加してもよい。(G)成分を添加することにより、耐酸性に優れる硬組織を得ることができる傾向にある。
(G)成分としては、可溶性の有効フッ素イオンを組成物中に放出可能な化合物であれば、いずれの化合物も使用することができ、例えば、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ケイ素ナトリウム、フルオロアルミノシリケ−トガラス、フッ化アンモニウム等が挙げられるが、中でもフッ化ナトリウム、フッ化カルシウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズが好ましい。
(G)成分は単独でまたは2種以上を使用することができる。
(G)成分の配合量は、本組成物の使用量と適用頻度、および、耐酸性や再石灰化の有効性と人体への影響とを考慮して適宜設定すればよい。
(G)成分の配合量は、具体的には、本組成物中のフッ素イオン濃度が、好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.001〜2重量%、特に好ましくは0.01〜1重量%となるような範囲が好ましい。
(G)成分の配合量が前記範囲にあると、(G)成分の添加効果、具体的には、歯質の耐酸性効果や再石灰化効果が充分に表れ、生体への為害性が低いと考えられるため好ましい。
<本組成物>
本組成物は、前記(A)〜(C)成分、好ましくはさらに前記(D)成分、および、所望により前記その他の成分を混合することで得ることができるが、貯蔵性などの点から、前記(C)成分は、使用直前に他の成分と混合することが好ましい。
また、前記(B)成分および該(B)成分を含む混合物は、水分の存在しないまたは水分量の少ない混合物であること、水分の存在しないまたは水分量の少ない環境下で保存することが好ましい。
本組成物のE型粘度計により、温度25℃、回転数50rpm、大気圧下で測定した粘度は、本組成物を歯の根管などの部位に塗布する際の塗布性に優れる等の点から、好ましくは0.1〜100,000mPa・sであり、より好ましくは0.3〜20,000mPa・sである。
本組成物のポットライフ(操作時間)は、本組成物を歯の根管などの部位に塗布する際の操作の容易性に優れる等の点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上である。なお、ポットライフは長い方が好ましいため、その上限は特に制限されないが、好ましくは240分、より好ましくは180分、さらに好ましくは120分である。
該ポットライフは、具体的には、下記実施例の「操作時間の測定」の欄に記載の方法で測定される。
本発明組成物は、前記効果を奏するため、歯科用セメント、歯科用ボンディング材などの歯科用接着性組成物、覆髄材および根管充填材等として好適に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
以下の実施例などで表記の略号の意味は次のとおりである。
「HPMA」:メタクリル酸2−ヒドロシキプロピル
「MMA」:メタクリル酸メチル
「GDMA」:2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン
「D−2.6E」:2,2−ビス[4−メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン
「Bis−GMA」:2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン
「ZrO2」:酸化ジルコニウム
「セメント」:太平洋セメント(株)製ホワイトセメント
「MTA」:三酸化ミネラルアグリゲイト(ProRootMTA/Dentsply Tulsa Dental製)
「Cata」:トリブチルボラン部分酸化物(キャタリストV/サンメディカル(株)製)
(実施例1および比較例1〜6)
以下に各実施例および比較例の組成物の含有成分と含有量(重量比)を示す。
下記実施例1および比較例1〜4の組成物は、Cataを除く成分を室温(23℃)にて10分間混合した後、下記試験直前にCataを混合したものである。なお、比較例5および6の組成物は下記試験直前にセメント成分と精製水とを混合したものである。
[実施例1]
HPMA/セメント/ZrO2/Cata=48.8/39.0/9.8/2.4
[比較例1]
MMA/セメント/ZrO2/Cata=48.8/39.0/9.8/2.4
[比較例2]
GDMA/セメント/ZrO2/Cata=48.8/39.0/9.8/2.4
[比較例3]
D−2.6E/セメント/ZrO2/Cata=48.8/39.0/9.8/2.4
[比較例4]
Bis−GMA/セメント/ZrO2/Cata=48.8/39.0/9.8/2.4
[比較例5]
セメント/精製水=73.5/26.5
[比較例6]
MTA/精製水=73.5/26.5
(硬組織誘導能の試験)
本発明における硬組織誘導能とは歯の石灰化(リン酸カルシウム)を促す能力のことをいう。本試験では、その能力を疑似体液中に浸漬した硬化体表面に析出されるリン酸カルシウムの結晶度合いにて評価した。
実施例・比較例の各組成物をφ4mm、厚み3mmのテフロン製型枠に填入し、37℃の恒温槽内で24時間静置して硬化させた。型枠から取り出した硬化体表面を#2000エメリーペーパーで研磨して新鮮面を露出させた後に、疑似体液に浸漬した。次いで、浸漬試料を37℃の恒温槽内で1週間静置した後、疑似体液から硬化体を取り出し、室温にて乾燥したものを試験体とした。
各試験体表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、試験体表面のリン酸カルシウムの結晶の析出度合いから以下の指標にて評価した。なお、本試験におけるリン酸カルシウム結晶の同定および析出度合いは、図1〜5のSEM写真のように判断した。
リン酸カルシウムの特定は、試験体表面に析出した結晶の形状とエネルギー分散X線分光法(EDS)による元素分析によって行った。
比較例6の組成物を用いた場合を基準とし、実施例1および比較例1〜5の組成物を用いた場合のリン酸カルシウム結晶の析出度合いが比較例6の組成物を用いた場合の析出度合いと比較して、同程度の場合を「○」とし、析出度合いが少ない場合を「△」とし、析出しない場合を「×」とした。結果を表1に示す。
図1は、疑似体液に浸漬する前の比較例6の硬化体表面のSEM写真であり、該硬化体を前記のように疑似体液に浸漬することで得られた試験体表面のSEM写真を図2に示す。図2の「A」の部分の結晶をEDSにより分析したところ、リン酸カルシウムの結晶であることを確認した。また、図1の写真と比較すると、図2では、リン酸カルシウムの結晶が積み重なっていることが分かった。
図3は、実施例1の試験体表面のSEM写真であり、リン酸カルシウムの結晶の析出度合いが図2と同程度であることが分かった。なお、図3の「A」の部分の結晶をEDSにより分析したところ、リン酸カルシウムの結晶であることを確認した。
また、比較例5の試験体表面のSEM写真も図3と同様であった。
図4は、比較例1の試験体表面のSEM写真であり、図4の「A」の部分の結晶をEDSにより分析したところ、リン酸カルシウムの結晶であることを確認し、「B」の部分の結晶をEDSにより分析したところ、酸化カルシウムの結晶であることを確認した。
図4は、リン酸カルシウムの結晶が積み重なっている部分の厚みが薄く、リン酸カルシウムの結晶の析出度合いが図2に比べ少ないことが分かった。
図5は、比較例3の試験体表面のSEM写真であり、リン酸カルシウムの結晶は確認できなかった。
また、比較例2および4の試験体表面のSEM写真も図5と同様であった。
(操作時間の測定)
JIS T6522:2015に規定されている操作時間の測定条件を基に、以下の操作手順で試験を行った。
目盛付シリンジを用いて、実施例・比較例の各組成物0.050±0.005mLを、ガラス板1の中央に置いた。その後、別のガラス板2の略中央が該組成物の上になるように、組成物を置いたガラス板1の上に載せ、さらに、ガラス板2の上に、ガラス板2との合計重量が120±2gになるようにおもりを載せた。次いで、略楕円板状に圧縮された組成物の長径および短径を測り、その平均を算出した。なお、この試験は、温度23±2℃、相対湿度50±5%環境下で行った。
Cataとその他の成分とを混合した時間、または、セメントもしくはMTAと水とを混合した時間を0分とし、前記平均の値が17mm未満になるまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
(曲げ強さの測定)
JIS T6518:2011に規定されている曲げ強度の測定条件を基に、以下の操作手順で試験を行った。
ガラス板にポリエステルフィルムを載せ、その上に厚さ(25±2)mm×縦(2.0±0.1)mm×横(2.0±0.1)mmの試験片が作製できる型を置いた。Cataとその他の成分とを混合した後、または、セメントもしくはMTAと水とを混合した後、直ちに前記型の中に各組成物をやや過剰に填入した。填入した組成物の上に、ポリエステルフィルムを置き、さらに透明ガラス板を載せた。得られた積層体を加圧器具を用いて加圧し、余分な組成物を型から押し出した。型中の組成物を硬化させた後、型から硬化体を取り出し、研磨紙を用いて、バリを除去した。このとき、バリ以外の面に研磨紙が触れないようにした。次いで、37℃±1℃に設定した水中に硬化体を24時間保存した。保存後の硬化体を水中から取り出すことで得られた試験片の、幅および厚さを0.01mmの精度まで測定した。その後、曲げ装置で、クロスヘッドスピード1.0±0.3mm/minで該試験片が破断するまで荷重を加えた。
曲げ強さは、次の式によって求めた。結果を表1に示す。なお、表1の結果は、3個の試験片の曲げ強さの平均値である。
σB=3FL/2bh2
[σB:曲げ強さ(MPa)、F:最大荷重(N)、L:支点間距離(mm)、b:試験片の幅(mm)、h:試験片の厚さ(mm)]
各評価結果から、少なくとも1つの水酸基と1つの重合性基とを有する化合物、セメント成分および重合開始剤を混合することで、歯科用ポルトランドセメントの硬組織誘導能を維持しつつ、かつ長い操作時間を有し、機械的強度(曲げ強さ)に優れる硬化体を容易に製造することができる組成物が得られた。

Claims (7)

  1. メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル以外の化合物である、少なくとも1つの水酸基と1つの重合性基とを有する重合性化合物(A)、
    ポルトランドセメント(B)および
    重合開始剤(C)
    を含む歯科用硬化性組成物。
  2. 重合性化合物(A)、ポルトランドセメント(B)および重合開始剤(C)の合計100重量%に対し、化合物(A)を9〜85重量%、ポルトランドセメント(B)を3〜90重量%、重合開始剤(C)を0.01〜40重量%含む、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. 前記重合開始剤(C)が有機ホウ素化合物である、請求項1または2に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. 前記重合開始剤(C)がトリブチルボランまたはその部分酸化物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
  5. 前記化合物(A)が鎖状化合物であり、前記水酸基が、該化合物(A)の末端以外に結合している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
  6. 前記化合物(A)がメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
  7. 無機フィラー、有機フィラーおよび有機無機複合化フィラーからなる群より選ばれる少なくとも1種のフィラー(D)(但し、フィラー(D)はポルトランドセメント(B)以外の成分である。)を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。

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