JP5700929B2 - 歯科インプラント用セメント - Google Patents

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Description

本発明は歯科インプラント用セメントに関する。
歯科インプラントは、一般的にチタン製のフィクスチャーと呼ばれる歯根部と、チタン、金合金などの金属製またはジルコニアなどのセラミックス製のアバットメントと呼ばれる歯肉縁部を貫通する支台部と、から構成される。さらに、歯科インプラント治療を行う場合、このアバットメントの上には、金銀パラジウム合金やセラミックスなどから作製される内冠となる上部構造体(人工補綴物)が装着される。アバットメントに上部構造体を固定する方法としては、スクリューで固定する機械的固定方式や、歯科用セメントを用いて固定する接着固定方式が挙げられる。
上記固定方式の内、歯科用セメントを利用した接着固定方式(セメント固定方式)は、審美性に優れると共に、アバットメントと上部構造体とを強固に合着することができることから、近時、その需要が増大しつつある。このセメント固定方式としては、具体的には、グラスアイオノマーセメント、カルボキシレートセメント、リン酸亜鉛セメント等の酸―塩基反応(セメント反応)により硬化するセメントを用いる技術や、ラジカル重合性単量体と、無機あるいは有機充填材とからなり、ラジカル重合開始剤によって重合硬化するレジンセメント等とを用いる技術など、2成分硬化型セメントを利用することが提案されている(たとえば、特許文献1〜4参照)。また、アバットメントと上部構造体との接着を主たる目的とした技術として、1成分硬化型セメントを用いる技術(特許文献5、6参照)や、使用直前に2種類の成分を混合することでペースト状として利用される2成分硬化型セメントを用いる技術(特許文献7)も提案されている。しかしながら、口腔内での作業時間や作業の正確性を確保する上では、1成分硬化型セメントは実用性に欠けている。この点では、アバットメントと上部構造体との接着を行う場合は2成分硬化型セメントを利用することが好適であると考えられる。
ここで、グラスアイオノマーセメントを使用する場合は、ポリカルボン酸からなる液成分とフルオロアルミノシリケートガラスからなる粉成分とを練和した混合物を、アバットメントと上部構造体との間に盛り付けた後に、アバットメントと上部構造体とを接着固定する。しかし、グラスアイオノマーセメントを利用する場合、計量、練和等の操作が煩雑となる。このため、ポリカルボン酸およびグラスアイオノマー粉末をペースト化し、両者を使用直前に混和した混合物を、歯に対する補綴物の固定に用いることも提案されている(特許文献2,3参照)。このようなセメントを利用して、歯科インプラントの上部構造体とアバットメントとを接着固定させる場合、通常は、ポリカルボン酸とグラスアイオノマー粉末とを混合したセメント構成成分混合物を接合面に塗布して接着させる。この際、接着界面からはみ出した余剰のセメント構成成分混合物は、5〜10分程度そのまま放置され、半硬化または硬化した後に、探芯等で除去される。このような手順で接着を行う理由は、アバットメントと上部構造体とを接着した場合、接着界面に存在するセメント構成成分混合物が硬化して、アバットメントと上部構造体との密着性を確実に確保する上で、5〜10分程度の間、接着時の状態を維持したまま放置する時間が必要だからである。
また、レジンセメントを使用する場合は、(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む液成分とポリメチルメタクリレート粉末を含む粉成分とを練和したセメント構成成分混合物を、アバットメントと上部構造体との間に盛り付けた後に、両者を圧接することで、アバットメントと上部構造体とを接着固定したり(たとえば、特許文献4参照)、2種類のペーストを練和したセメント構成成分混合物をアバットメントと上部構造体との間に盛り付けた後に、両者を圧接することで、アバットメントと上部構造体とを接着固定する(たとえば、特許文献5参照)。この場合も、上述した場合と同様に、セメントを構成する2種類の成分を混合したセメント構成成分混合物を接着界面からはみ出させるように上部構造体とアバットメントとを接着固定させ、接着界面からはみ出した余剰のセメント構成成分混合物は半硬化または硬化した後に除去される。
一方、歯科インプラントの周辺組織は天然歯の周辺組織と比較して、歯科インプラントの周囲にセメント質や歯根膜組織が存在しない点や、歯科インプラントとその周囲の軟組織に結合組織性付着が存在しないという点で大きく異なっている。そして、歯科インプラントとその周辺組織と境目に形成される微小な溝(いわゆるサルカス)は、天然歯とその周辺組織との境目に形成されるサルカスよりも広く、深い。このため、歯科用セメントを用いて上部構造体とアバットメントとを接着固定した場合、接着界面からはみ出したセメント構成成分混合物がサルカスに入り込み易い。そして、サルカスに入り込んだセメント構成成分混合物が硬化して硬化物となった場合、この硬化物はプラーク細菌が繁殖する温床となり、歯科インプラントの周辺組織の炎症等の問題を引き起こしやすくなる。
また、サルカスの幅は狭く、深い構造を有している。このため、サルカスに入り込んだセメント構成成分混合物が硬化した場合には、この硬化物をサルカスから除去することは非常に困難である。さらに、歯科インプラントの周辺組織は、天然歯の周辺組織と比較して、プラーク細菌に対する感染防御能力が劣っている。このため、上述したサルカス内へのセメント構成成分混合物の侵入やその硬化は、深刻な問題である。それゆえ、このような問題を解決するために、圧排糸によってサルカスを封鎖した状態で、アバットメントと上部構造体との接着固定を行う技術が提案されている(非特許文献1)。
特開2002−275017号公報 特開2003−183112号公報 特開2006−299201号公報 特開2009−1536号公報 特開2005−8522号公報(段落番号0001、0044等参照) 特開2006−136649号公報(請求項8、段落番号0001、段落番号0053等参照) 特開2006−76962号公報(段落番号0001、0039等参照)
中島康ら著、「別冊歯科衛生士 みるみる理解できる 図解 スタッフ向けインプラント入門」、クインテッセンス出版株式会社発行、2007年、第105ページ
しかし、圧排糸を利用してサルカスを封鎖した状態で接着固定する方法は、操作が煩雑であることに加え、アバットメントと上部構造体との接着固定に要する時間も長くなるため、歯科医師や患者への負担が大きくなる。これに加えて、上述した方法を用いた場合においても、セメント構成成分混合物がサルカスに入り込み、硬化することは完全には防げなかった。このため、このセメント構成成分混合物がサルカスに侵入し、硬化することで2次的に発生する歯科インプラントの周辺組織の炎症等の問題を十分に抑制することも困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、歯科インプラントを構成するアバットメントと上部構造体とを2成分硬化型セメントを用いて接着する際に、セメント構成成分がサルカスに侵入して硬化するのを抑制する歯科インプラント用セメントを提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
発明の歯科インプラント用セメントは、歯科インプラントを構成するアバットメントと上部構造体とを接着するために用いられる第一成分および第二成分から構成され、第一成分と第二成分とが混合することで硬化する機能を有し、アバットメントと上部構造体との接着が、第一成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与し、かつ、第二成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与し、これら接合面への第一成分および第二成分の付与を終えた後、アバットメントの接合面と上部構造体の接合面とを接合させることにより、第一成分と第二成分とを混合し、当該混合物を硬化させるプロセスを少なくとも経ることで実施される。
ここで、第一成分および第二成分のうちのいずれか一方の成分の23℃における粘度が0.1〜10Pa・sであり、他方の成分の23℃における粘度が10〜100Pa・sである。
発明の歯科インプラント用セメントの一実施態様は、第一成分および第二成分のうちのいずれか一方の成分が液状成分であり、他方の成分がペースト状成分であることが好ましい。
本発明の歯科インプラント用セメントを用いる治療方法は、歯科インプラント治療において、歯肉中に埋め込まれかつ顎骨に固定されたフィクスチャーの顎骨が配置された側と反対側に固定されたアバットメントに対して、上部構造体を接着する際に、第一成分と第二成分とから構成され、第一成分と第二成分とが混合することで硬化する機能を有する歯科用セメントを用い、接着が、第一成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与する第一成分付与工程と、第二成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与する第二成分付与工程と、第一成分付与工程および第二成分付与工程を経た後に、アバットメントの接合面と上部構造体の接合面とを接合させることにより、第一成分と第二成分とを混合し、当該混合物を硬化させる混合・硬化工程と、を少なくとも経ることにより実施されるものである。
本発明の歯科インプラント用セメントを用いる治療方法の一実施態様は、第一成分および第二成分のうちのいずれか一方の成分が液状成分であり、他方の成分がペースト状成分であることが好ましい。
本発明の歯科インプラント用セメントを用いる治療方法の他の実施態様は、第一成分および第二成分のうちのいずれか一方の成分の23℃における粘度が0.1〜10Pa・sであり、他方の成分の23℃における粘度が10〜100Pa・sであることが好ましい。
本発明の歯科インプラント用セメントを用いる治療方法の他の実施態様は、第一成分が液状成分からなり、第二成分がペースト状成分からなり、第一成分付与工程が、第一成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面の双方に塗布することにより実施され、第二成分付与工程が、第一成分付与工程の実施後に、第二成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に盛り付けることにより実施されることが好ましい。
本発明の歯科インプラント用セメントを用いる治療方法の他の実施態様は、混合・硬化工程を経た後に、アバットメントの接合面と上部構造体の接合面との間に形成された接着層の厚み方向に対して、第一成分の未反応成分、および、第二成分の未反応成分から選択される少なくとも1種の成分が、濃度勾配を有することが好ましい。
本発明によれば、歯科インプラントを構成するアバットメントと上部構造体とを2成分硬化型セメントを用いて接着する際に、セメント構成成分がサルカスに侵入して硬化するのを抑制する歯科インプラント用セメントを提供することができる。
第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントは、歯科インプラントを構成するアバットメントと上部構造体とを接着するために用いられる第一成分および第二成分から構成され、第一成分と第二成分とが混合することで硬化する機能を有するものである。ここで、アバットメントと上部構造体との接着は、第一成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与し(第一成分付与工程)、かつ、第二成分を、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与し(第二成分付与工程)、これら接合面への第一成分および第二成分の付与を終えた後、アバットメントの接合面と上部構造体の接合面とを接合させることにより、第一成分と第二成分とを混合し、当該混合物を硬化させるプロセス(混合・硬化工程)を少なくとも経ることで実施される。なお、歯科インプラント治療において、アバットメントは、歯肉中に埋め込まれかつ顎骨に固定されたフィクスチャーの顎骨が配置された側と反対側に固定されているものである。
第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントでは、この歯科インプラント用セメントを構成する2種類のセメント構成成分;すなわち、第一成分および第二成分は、アバットメントと上部構造体とを接着する際に、接着前に予め混合せずに、アバットメントの接合面および上部構造体の接合面に各々別々に付与される。そして、これら2種類の成分は、アバットメントの接合面と上部構造体の接合面とが接合される際に、アバットメントと上部構造体との接合界面において始めて混合される。ここで接合界面における第一成分と第二成分との混合は、アバットメントと上部構造体とを接合させて微妙な位置合わせやフィッティングを行うなどの際に、接合界面に対して垂直な方向に作用する押圧力(第一の物理的混合力)や、接合界面の面内方向における微小なスライド運動(第二の物理的混合力)により促進される。このため、接合直前までは分離した状態にある第一成分および第二成分は、接合後は速やかに混合されるため、これら成分が混合された混合物が速やかに硬化し、アバットメントと上部構造体とが接着される。
一方、アバットメントと上部構造体との接着強度を十分に確保するめには、実質的に接合界面全面において第一成分と第二成分との混合物が存在することが必要である。このため、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントを使用する場合、アバットメントと上部構造体とを接合した際に、接合界面から第一成分や第二成分がはみ出る程度にアバットメントの接合面や上部構造の接合面に、第一成分や第二成分が余剰に付与される。このため、アバットメントと上部構造体とを接合した場合、接合界面から第一成分や第二成分がはみ出し、サルカス内に侵入することになる。
しかしながら、接合界面からはみ出した第一成分や第二成分には、接合界面において発生する上述の第一の物理的混合力や上述の第二の物理的混合力などの物理的混合力が作用する余地は殆どない。また、サルカス内に侵入した第一成分や第二成分には、これら成分を構成する各々の分子の濃度勾配に起因した分子拡散による化学的混合力が作用することで混合が促進されると考えられるが、このような化学的混合力は、第一の物理的混合力や第二の物理的混合力と比べると非常に弱い。このため、サルカス内に侵入した第一成分および第二成分は、接合界面内に存在する第一成分および第二成分と比べて、実質的に硬化反応を招くほどに混合しない状態を維持し続けるか、硬化反応を招く程に混合するとしても極めて長時間を要することになる。
このため、接合界面に存在する第一成分および第二成分が混合し硬化が終了し終えた時点においても、サルカス内に侵入した第一成分および第二成分は、実質的に硬化反応が起こる程に混合せず、未硬化状態が維持される。すなわち、アバットメントと上部構造体との接着固定作業が完了した後に、サルカス内に存在する未硬化状態の第一成分および第二成分を、探針によるかき出しや、水銃等により容易かつ確実に除去することができる。このため、従来の2成分硬化型の歯科用セメントを用いてアバットメントと上部構造体との接着固定を行う場合と比較して、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントを用いて同様の接着固定を行う場合は、サルカス内でのセメント構成成分の硬化に起因する歯科インプラントの周辺組織の炎症等の2次的問題の発生も抑制できる。
第一成分や第二成分は、アバットメントや上部構造体の接合面に付与することが容易であれば、たとえば、液状成分や、ペースト状成分の形態を取り得る。また、これら液状成分やペースト状成分には粉末状物質が分散して含まれていてもよい。但し、第一成分や第二成分の取り得る形態として、粉末状物質のみから構成される粉末状成分であることは除かれる。粉末状成分は、溶媒やバインダー、増粘剤、分散剤等と混合して用いなければ、接合面へ付与しても脱落しやすいため、接着強度の確保が困難となるからである。また、第一成分や第二成分は、他方の成分との反応により硬化する物質(硬化性物質)のみから構成されていてもよく、硬化性物質と、溶媒、バインダー、添加剤などの硬化性物質以外のその他の物質とから構成されていてもよい。なお、第一成分や第二成分が、硬化性物質とその他の物質とから構成される場合は、第一成分や第二成分は、硬化性物質が内包されたマイクロカプセルを分散させた液状成分やペースト状成分であってもよい。この場合、アバットメントと上部構造体との接合時において、接合界面に印加される押圧力等を利用してマイクロカプセルを機械的に破壊することにより、第一成分と第二成分との実質的な混合および硬化反応を引き起こすことができる。
ここで、第一成分および第二成分は、双方が液状成分からなる組み合わせ(第一の組み合わせ)であってもよく、双方がペースト状成分からなる組み合わせ(第二の組み合わせ)であってもよく、いずれか一方が液状成分で他方がペースト状成分からなる組み合わせ(第三の組み合わせ)であってもよい。第一成分に含まれる硬化性物質や第二成分に含まれる硬化性物質が同じものであっても、第一の組み合わせから第三の組み合わせを使い分けることにより、アバットメントと上部構造体との接着強度を制御することが容易となる。この理由は、接合界面における第一成分および第二成分の混合物からなる層(接着層)の厚みや、第一成分および第二成分の混合度合が、いずれの組み合わせを選択するかによって異なってくるからである。
第一成分および第二成分が、液状成分同士からなる第一の組み合わせでは、双方の成分共に流動性が高いため、接合界面における混合性に優れるが、接合面に厚く塗布するのはやや難しい。このため、接合界面に形成される接着層は、均質性は高いが厚みは薄くなる傾向にある。一方、第一成分および第二成分が、ペースト状成分同士からなる第二の組み合わせでは、双方の成分共に流動性が低いため、接合界面における混合性にはやや劣るが、接合面に厚く盛り付けるのは容易である。このため、接合界面に形成される接着層は、厚みを厚くすることは容易であるが、均質性は低くなりやすい。これらに対して、第一成分および第二成分が、液状成分とペースト状成分とからなる第三の組み合わせでは、第一の組み合わせと第二の組み合わせとの中間的な特性を得ることができ、接着強度を確保する観点から接着層の均質性と接着層の厚みとのバランスを両立させることがより容易である。これらの点を考慮すれば、第一〜第三の組み合わせのうち、第三の組み合わせが最も好ましい。
第一成分や第二成分の23℃における粘度(以下、単に「粘度」と略す場合がある)としては特に限定されないが、第一成分や第二成分の接合面への付与の容易性を確保する観点では、0.1〜100Pa・s程度の範囲内が好ましい。また、第一成分の粘度と第二成分の粘度とは同程度であってもよいが、異なっていることが好ましい。後者の場合、一方の成分(低粘度成分)の粘度が0.1〜10Pa・sの範囲内であることが好ましく、1〜5Pa・sの範囲内であることがより好ましく、他方の成分(高粘度成分)の粘度が10〜100Pa・sの範囲内であることがより好ましく、20〜70Pa・sの範囲内であることがより好ましい。低粘度成分の粘度と高粘度成分の粘度とを、上述した範囲内とすることにより、第一成分および第二成分の接合面への付与をより容易とすることができると共に、接合した際に接合界面内における第一成分と第二成分との混合をより確実なものとすることができる。また、第一成分と第二成分との組み合わせが、上述した低粘度成分と高粘度成分との組み合わせである場合、接合面への付与順序は、先に低粘度成分を接合面に付与し、その後に高粘度成分を接合面に付与することが好適である。
また、第一成分および第二成分の粘度が共に低粘度域である0.1Pa・s未満である場合、これら成分の流動性は、極めて高くなる。このため、第一の物理的混合力や第二の物理的混合力の有無や程度に関係なく、第一成分と第二成分との間の相互分子拡散に起因する化学的混合力のみによっても、両成分の混合が十分に促進されやすくなる。すなわち、このような場合、サルカス内に侵入した第一成分および第二成分は、速やかに混合して硬化体を形成しやすくなる場合がある。よって、第一成分および第二成分の粘度を共に比較的低粘度域である10Pa・s以下程度の範囲とする場合には、双方の粘度の下限値は、0.1Pa・s以上であることが好ましく、1Pa・s以上であることがより好ましい。
なお、歯科インプラント治療において、アバットメントと上部構造体とを接着して固定する場合、「合着」と呼ばれる固定方法と「仮着」と呼ばれる固定方法とがある。ここで、「合着」は、アバットメントと上部構造体を永久的に固定する方法である。これに対して、「仮着」は、アバットメントと上部構造体をと、数ヶ月から数年の間だけ、一時的に固定し、その後メンテナンス等のために取り外すことを想定した固定方法である。それゆえ合着する場合には、上部構造体とアバットメントを強固に固定することが好ましいが、仮着する場合には、通常の咬合等では上部構造体がアバットメントから外れないが、歯科医院で上部構造体をアバットメントから取り外す場合には、外れやすい程度の強度を有することが好ましい。
一方、歯科インプラントの周辺は汚れがたまりやすく、炎症が起こりやすい傾向にある。これに加えて、長年の歯科インプラントの使用により歯槽骨の退化等で咬合の変化が生じることは避け難い。それゆえ、近年の歯科インプラント治療においては、アバットメントと上部構造体とを、仮着により固定しておき、定期的にメンテナンスを行うことが好ましいと考えられている。よって、歯科用セメントとしては、仮着に適した接着強度を有していることが好ましい。それゆえ、上述した事情に鑑みると、仮着に適した接着強度は、引張接着強度で1〜10MPaの範囲内が好ましく、3〜7MPaの範囲内がより好ましいといえる。また、合着に適した接着強度は、引張接着強度で10MPaを超えていることが好ましく、引張接着強度は大きければ大きいほどよいといえる。
なお、アバットメントと上部構造体との接着強度は、接着に使用する歯科用セメントの構成材料や、接着条件などに左右されるため、原理的には、仮着に適した接着強度となる場合もあれば、合着に適した接着強度になる場合もあると考えられる。しかしながら、従来の2成分硬化型の歯科用セメントでは、通常、接着作業を行う前に2種類の成分を十分に混合して利用することを想定している。このため、従来の2成分硬化型の歯科用セメントを用いてアバットメントと上部構造体との接着を行った場合、2種類の成分が十分に混合されるため合着に適した接着強度を得ることは容易であるが、仮着に適した接着強度を得ることは困難であった。しかしながら、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントでは、第一成分および第二成分が、アバットメントと上部構造体とを接着する前に予め十分に混合されるのではなく、接着時に混合される。このため接着強度を左右する接着時における2種類の成分の混合具合に関しては、従来の2成分硬化型の歯科用セメントと比べて、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントの方がやや劣る傾向がある。このため、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントでは、接着強度を、仮着に適した範囲に制御しやすい。
次に、第一成分付与工程、第二成分付与工程および混合・硬化工程についてより詳細に説明する。これら3つの工程を実施する場合、第一成分付与工程と第二成分付与工程とは、同時に実施してもよく、一方を先に実施してから他方を実施してもよい。また、第一成分付与工程や第二成分付与工程は、2つの接合面のうち、少なくとも一方の接合面に対して実施できるが、双方の接合面に対して実施してもよい。さらに、1つの接合面に対して第一成分付与工程を実施した後、更に第二成分付与工程を実施してもよく、これらの工程の実施順を逆順とすることもできる。第一成分付与工程および第二成分付与工程を実施する場合の具体例としては、たとえば、一方の接合面に第一成分を付与し、他方の接合面に第二成分を付与する実施態様(2回付与方式)、双方の接合面に第一成分(または第二成分)を付与した後、いずれか一方の接合面に第二成分(または第一成分)を付与する態様(3回付与方式)、および、双方の接合面に第一成分(または第二成分)を付与した後、さらに双方の接合面に第二成分(または第一成分)を付与する態様(4回付与方式)などが挙げられる。なお、3回付与方式の変形例としては、双方の接合面に第一成分(または第二成分)を付与した後、第二成分(または第一成分)をこれら2つの接合面で挟み込みつつ接合し、混合・硬化工程を実施する場合も挙げられる。この場合、第二成分(または第一成分)が双方の接合面に付与されると同時に接合が行われる。
ここで、2回付与方式、3回付与方式および4回付与方式のいずれにおいても、第一成分と第二成分との組み合わせが、液状成分とペースト状成分の組み合わせ、または、粘度が0.1〜10Pa・sの範囲内の低粘度成分と10〜100Pa・sの範囲内の高粘度成分との組み合わせであることが好ましい。また、3回付与方式や4回付与方式の場合では、2種類の成分を混合した後の硬化性をより高めることができるという観点で、双方の接合面に液状成分(または低粘度成分)を付与した後、ペースト状成分(または高粘度成分)を付与することが好ましい。
なお、接合面に第一成分(または第二成分)を付与する場合、第一成分(または第二成分)が液状成分または低粘度成分である場合は、筆や綿棒などで接合面に塗布することができ、第一成分(または第二成分)がペースト状成分または高粘度成分である場合は、ヘラなどで接合面に盛り付けることができる。また、接合面に第一成分(または第二成分)を付与した後、さらに第二成分(または第一成分)を付与する場合、2番目の付与処理は、最初に付与処理された成分との混合が起こらないように実施することが好ましい。さらに、このような1つの接合面に2種類の成分を順次付与する場合は、1番目に付与される成分および2番目に付与される成分が、液状成分とペースト状成分との組み合わせ(または低粘度成分と高粘度成分との組み合わせ)であることが好適である。このような組み合わせを採用することで、第一成分付与工程および第二成分付与工程を実施する場合には、2種類の成分の混合を抑制でき、アバットメントと上部構造体とを接合した際には、接合界面に作用する物理的混合力により、2種類の成分を適度に混合することができるためである。
接合面に付与される第一成分や第二成分の量は特に限定されないが、通常は、接合界面面内での均一な接着性を確保するという観点から、接合面全面に付与できる量であることが好ましい。また、接合面に付与される第一成分および第二成分の総量は、接合界面に、第一成分と第二成分との混合物が硬化することにより形成される接着層の厚みが30〜50μm程度の範囲内となるように選択されることが好ましい。これにより、適度な接着強度を確保しつつも、接合時に接合界面からはみ出す第一成分および第二成分の量を極小化できる。
また、接合界面からはみ出して、サルカス内に侵入した第一成分および第二成分の硬化反応をより一層抑制・遅延させるためには、いずれか一方の成分の接合面への付与量を接合面全面に付与できる必要最少量に留め、他方の成分の接合面への付与量は、一方の成分の付与量に対して過剰量とすることが好ましい。このような態様での第一成分および第二成分の接合面への付与は、特に、第一成分および第二成分が共に液状成分である場合に好適である。この理由は、以下の通りである。まず、第一成分および第二成分が共に流動性の高い液状成分である場合、物理的混合力が殆ど作用しないサルカス内に侵入した第一成分および第二成分は、相互の分子拡散による化学的混合力のみによっても混合が促進される。しかしながら、一方の成分の付与量に対して、他方の成分の付与量を過剰とすることにより、第一の成分と第二の成分との混合比率をアンバランスにすれば、サルカス内で第一成分および第二成分が混合したとしても、混合比率が偏っているために硬化反応が抑制または阻止されるためである。
なお、各々の接合面に対して付与する第一成分の付与量および第二成分の付与量をアンバランスなものとしても、接合時に接合界面からはみ出る第一成分および第二成分の量は、各々の付与量に比例せず、過剰に付与した成分の方が優先的にはみ出る。このため、接合界面内においては、第一成分と第二成分との混合比率は、多少のアンバランスは生じても、硬化反応に適した範囲内に維持され、接着層を形成することができる。
第一成分付与工程および第二成分付与工程を終えた後は、混合・硬化工程を実施する。この混合・硬化工程では、各成分の付与処理を終えたアバットメントの接合面と上部構造体の接合面とを接合させる。そして接合時に接合界面に作用する物理的混合力を利用して、各々の接合面上に付与された第一成分および第二成分を混合する。このようにして接合界面内にて、第一成分および第二成分が混合した混合物は、その内部で硬化反応が進行し硬化することで接着層を形成する。これによりアバットメントと上部構造体との接着が完了する。
以上に説明したように第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントを用いたアバットメントと上部構造体との接着作業では、従来のように接着前に第一成分と第二成分とを混合しておく必要が無い。一方、第一成分および第二成分は、混合した直後から硬化反応が開始され、その硬化速度は、第一成分や第二成分を構成する材料やその組み合わせにより支配される。このため、従来のように接着前に第一成分と第二成分とを混合し、この混合物を用いてアバットメントと上部構造体とを接着する場合、第一成分と第二成分との混合物をアバットメントと上部構造体との間に付与して両者の圧着作業が完了した時点においては、混合から圧着作業完了までの間の作業性を確保するために、ある程度硬化反応が不十分な状態である必要がある。この理由は、硬化速度が速すぎる場合は、アバットメントに対して、上部構造体が歪んだ位置に接着されてしまい易くなるためである。よって、従来の歯科用セメントを用いてアバットメントと上部構造体とを接着する場合は、作業性を確保するために、適度な硬化速度が得られるように第一成分や第二成分を構成する材料やその組み合わせにはある程度の制限がある。しかしながら、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントを用いてアバットメントと上部構造体とを接着する場合は、第一成分および第二成分の混合と圧着作業とは略同時に実施されるため、従来よりも硬化速度が速くても、アバットメントに対して、上部構造体が歪んだ位置に接着されてしまう可能性は非常に小さい。それゆえ、硬化速度の調整という観点では、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントに用いられる第一成分や第二成分を構成する材料やその組み合わせの自由度は、従来より大きくすることができる。
なお、以上に説明した第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントの変形例としては、以下に示す実施形態も挙げられる。すなわち、第二の本実施形態の歯科インプラント用セメントは、歯科インプラントを構成するアバットメントと上部構造体とを接着するために用いられる第一成分および第二成分から構成され、第一成分と第二成分とが混合することで硬化する機能を有する。これに加えて、アバットメントと上部構造体とを接着させた後において、アバットメントの接合面と上部構造体の接合面との間に接着により形成された接着層の厚み方向に対して、第一成分の未反応成分、第二成分の未反応成分、および、第一成分と第二成分との反応成分から選択される少なくとも1種の成分が、濃度勾配を有することを特徴とする。なお、当該濃度勾配は、接着層の厚み方向すべてにおいて形成されている必要はなく、部分的に形成されているだけでもよい。
ここで、「未反応成分」とは、第一成分と第二成分との混合に伴う硬化反応により接着層が形成された際に、接着層の厚み方向に対する硬化反応に不均一性があることを直接または間接的に示す証拠物質を意味し、具体的には、第一成分および/または第二成分中に含まれる物質のうち、硬化反応に伴う消費、分解、変性等により反応系中の存在量が減少する物質(以下、「第一の証拠物質」と称す)を意味する。また、「反応成分」とは、第一成分と第二成分との混合に伴う硬化反応により接着層が形成された際に、接着層の厚み方向に対する硬化反応に不均一性があることを直接または間接的に示す証拠物質を意味し、具体的には、第一成分と第二成分との硬化反応に伴い新たに生成し、反応系中の存在量が増加する物質(目的とする生成物のみならず、副生成物も含む。以下、「第二の証拠物質」と称す)を意味する。
たとえば、歯科インプラント用セメントが後述するラジカル重合型セメントである場合、上述した第一の証拠物質の具体例としては、ラジカル重合性単量体のような硬化体を形成する反応性物質や、硬化反応の開始や促進などを目的として添加される各種の添加剤(化学重合開始剤、アミン類など)などが挙げられる。また、第二の証拠物質の具体例としては、ラジカル重合性単量体の重合により生成した重合体が挙げられる。
なお、接着層中には、通常、複数種類の証拠物質が残留していると予想される。それゆえ接着層の厚み方向に対して、第一成分の未反応成分、第二成分の未反応成分、および、第一成分と第二成分との反応成分から選択される少なくとも1種の成分が、濃度勾配を有するか否かの判断は、少なくともいずれか1種の証拠物質、特に、分析・検出の容易な証拠物質について、接着層の厚み方向に対する濃度勾配の有無を調べればよい。また、証拠物質の分析・検出方法としては特に限定されず、公知の分析・検出方法が利用できる。
第二の本実施形態の歯科インプラント用セメントも、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントと同様に、その使用に際しては第一成分付与工程、第二成分付与工程および混合・硬化工程を経て、アバットメントと上部構造体とを接着するものである。このため、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントとほぼ同様の効果を得ることができる。
ここで、これら3つの工程を経てアバットメントと上部構造体とを接着する場合、接合前までは、第一成分と第二成分とは分離した状態で存在しており、接合後に、接合界面に作用する物理的混合力により混合される。しかし、接合界面に作用する物理的混合力は、接合前に接合界面の外部で2種類の成分を混合する際に作用する物理的混合力と比べると非常に小さい。それゆえ、(a)第一成分および/または第二成分の粘性が高い場合や、(b)接合面に付与された第一成分および第二成分の総量が多い場合、(c)接合に際して、アバットメントに取り付けた上部構造体をフィティング等のためにあまり動かすことなく直ぐに放置した場合、言い換えれば物理的混合力を付与する時間が短い場合には、特に接合面近傍に存在する第一成分(または第二成分)が、他の成分と十分に混合されず、未反応のまま接着層中に残存し易くなる傾向がある。このような場合には、接着層の厚み方向において、第一成分の未反応成分や第二成分の未反応成分が、濃度勾配を有することになる。すなわち、接合界面に形成される接着層は傾斜構造を有することになる。このように第二の本実施形態の歯科インプラント用セメントは、その利用により形成された接着層がその厚み方向に対して傾斜構造を有する点に特徴がある。なお、この点を考慮すれば、接着層がその厚み方向に対して均一な構造を有する場合;すなわち、第一成分および第二成分を完全に混合して硬化させた場合と比べると、第二の本実施形態の歯科インプラント用セメントでは、仮着に適した接着強度を実現することがより容易であると言える。
さらに、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントの他の変形例としては、以下に示す実施形態も挙げられる。すなわち、第三の本実施形態の歯科インプラント用セメントは、歯科インプラントを構成するアバットメントと上部構造体とを接着するために用いられる第一成分および第二成分から構成され、第一成分と第二成分とが混合することで硬化する機能を有し、第一成分および第二成分のいずれか一方の成分の23℃における粘度が0.1〜10Pa・sであり、他方の成分の23℃における粘度が10〜100Pa・sであることを特徴とする。ここで、第三の本実施形態の歯科インプラント用セメントも、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントと同様に、その使用に際しては第一成分付与工程、第二成分付与工程および混合・硬化工程を経て、アバットメントと上部構造体とを接着するものである。このため、第一の本実施形態の歯科インプラント用セメントとほぼ同様の効果を得ることができる。しかしながら、第三の本実施形態の歯科インプラント用セメントでは、粘度が0.1〜10Pa・sの範囲内の低粘度成分と、10〜100Pa・sの範囲内の高粘度成分とを組み合わせて用いていることから、既述したように、接合界面の接着強度を確保しやすいと言える。
次に、第一、第二および第三の本実施形態の歯科インプラント用セメントを構成する第一成分および第二成分の詳細について説明する。第一、第二および第三の本実施形態の歯科インプラント用セメントとしては、公知の2成分硬化型セメントが利用でき、代表的には、(1)酸塩基硬化型セメント、(2)ラジカル重合型セメント、(3)上記(1)および(2)の混合型セメントが利用できる。
(1)酸塩基硬化型セメント
酸塩基硬化型セメントとしては、リン酸亜鉛セメント、グラスアイオノマーセメント、ポリカルボキシレートセメント、酸化亜鉛ユージノールセメントなどが挙げられ、いずれも従来公知のものが利用できる。以下にこれらセメントの詳細について説明する。
−リン酸亜鉛セメント−
リン酸亜鉛セメント(ZnO−HPO系セメント)は、第一成分が主成分としてリン酸を含み、その含有量は、たとえばセメント全体に対して45〜63質量%程度とすることができる。また、第二成分が主成分として酸化亜鉛を含み、さらに酸化マグネシウムが含まれていることが好ましく、その他に、酸化ストロンチウムや二酸化珪素、酸化第二鉄、酸化イットリウム等の金属酸化物が含まれていてもよい。第二成分に用いられるこれら金属酸化物成分は、一般的には、70〜90質量%の酸化亜鉛と、10〜30質量%の酸化マグネシウム等のその他の金属酸化物とを混合したものを700℃以上の高温で焼結して得られた焼結体をボールミル等で粉砕した粉末状のものが利用される。また、第一成分や、第二成分には、上記成分以外に水などの水溶性溶媒を含み、さらに、必要に応じて増粘剤などのその他の添加剤が添加されてもよい。
ここで、増粘剤は、第一成分や第二成分の粘度や、第一成分や第二成分を液状とするかペースト状とするかの調整に利用される。増粘剤としては、無機系,有機系のいずれでも使用でき、たとえば、平均粒子径が5〜40nmのヒュームドシリカ等の無機系の増粘剤や、カルボキシメチルセルロースカルシウム,カルボキシメチルセルロースナトリウム,デンプン,デンプングリコール酸ナトリウム,デンプンリン酸エステルナトリウム,メチルセルロース,ポリアクリル酸ナトリウム,アルギン酸,アルギン酸ナトリウム,アルギン酸プロピレングリコールエステル,カゼイン,カゼインナトリウム,ポリエチレングリコール,エチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,グルテン,ローカストビーンガム,ゼラチン等の有機系の増粘剤を挙げることができる。これらの増粘剤は2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの増粘剤は、以下に説明する各種のセメントを構成する第一成分や第二成分の粘度や、第一成分や第二成分を液状とするかペースト状とするかの調整にも利用できる。
−グラスアイオノマーセメント−
グラスアイオノマーセメントは、第一成分が主成分としてポリカルボン酸を含み、第二成分が主成分としてフルオロアルミノシリケートガラスを含むものである。さらに、これら第一成分および第二成分には、水などの水溶性溶媒が含まれ、必要に応じて増粘剤などのその他の添加剤を添加してもよい。
ここで、第一成分を構成するポリカルボン酸は、一般的な歯科用グラスアイオノマーセメントに使用されているポリカルボン酸であればいずれも利用でき、代表的には、α-β不飽和モノカルボン酸あるいはα-β不飽和ジカルボン酸の重合体が挙げられる。この重合体は、具体的にはアクリル酸,メタアクリル酸,2-クロロアクリル酸,3-クロロアクリル酸,アコニット酸,メサコン酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸,グルタコン酸,シトラコン酸等の重量平均分子量が5000〜40000の共重合体または単独重合体である。
また、第二成分を構成するフルオロアルミノシリケートガラスとしては、一般的に歯科用グラスアイオノマーセメントに使用されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末等が使用可能である。フルオロアルミノシリケートガラス粉末は、主成分としてAl3+,Si4+、F-,O2-を含み、更にSr2+および/またはCa2+を含むことが好ましい。また、フルオロアルミノシリケートガラス粉末としては、その主な組成として、ガラスの総重量に対してAl3+:10〜25重量%、Si4+:5〜30重量%、F:1〜30重量%、Sr2+:0〜20重量%、Ca2+:0〜20重量%、アルカリ金属イオン(Na、K等):0〜10重量%であり、これらを含む原料を混合・溶融した後、冷却・粉砕し平均粒径0.02〜20μm程度の粉末に調製して作製されたものがより好ましい。
−ポリカルボキシレートセメント−
ポリカルボキシレートセメントは、第一成分が主成分としてポリカルボン酸を含む。このポリカルボン酸としては、アクリル酸の重合物や、アクリル酸とアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルあるいは不飽和カルボン酸(たとえばマレイン酸、イタコン酸、アコニット酸等)との共重合物などが挙げられる。また、第一成分としては、ポリカルボン酸と共に、低分子のカルボン酸(たとえば、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等)が含まれていてもよい。また、第二成分は主成分として酸化亜鉛を含み、その他にも酸化マグネシウムが含まれていてもよい。さらに、第二成分には、酸化珪素、酸化アルミニウム、弗化カルシウム、燐酸アルミニウム、氷晶石などのその他の金属酸化物が含まれていてもよい。さらに、これら第一成分および第二成分には、水などの水溶性溶媒が含まれ、必要に応じて増粘剤などのその他の添加剤を添加してもよい。
−酸化亜鉛ユージノールセメント−
酸化亜鉛ユージノールセメントは、第一成分が主成分として油状液体であるユージノール(eugenol、オイゲノールともいう)を含み、第二成分が主成分として酸化亜鉛を含むものである。なお、第二成分には、硬化反応促進剤として酢酸や、酢酸亜鉛を添加することも好ましい。また、第一成分には、必要に応じて増粘剤やその他の添加剤を添加することができる。また、第二成分には、水などの水溶性溶媒が含まれ、必要に応じて増粘剤やその他の添加剤を添加することができる。
以上に説明した各種の酸塩基硬化型セメントにおいて、第一成分および第二成分は、液状成分(または低粘度成分)と液状成分(または低粘度成分)との組み合わせ、液状成分(または低粘度成分)とペースト状成分(または高粘度成分)との組み合わせ、ペースト状成分(または高粘度成分)と液状成分(低粘度成分)との組み合わせ、および、ペースト状成分(または高粘度成分)とペースト状成分(または高粘度成分)との組み合わせ、のいずれであってもよい。しかしながら、これらの組み合わせの中でも、有機成分を主成分とする第一成分が液状成分(または低粘度成分)であり、無機成分を主成分とする第二成分がペースト状成分(または高粘度成分)であることが好ましい。なお、第二成分をペースト状成分(または高粘度成分)とする理由は、無機成分そのものは基本的に粉末状であるため、この無機粉末を接合面に対して脱落させることなく均一に付与できるからである。
(2)ラジカル重合型セメント(レジンセメント)
ラジカル重合型セメントは、第一成分および第二成分の各々の成分が、ラジカル重合性単量体と化学重合開始剤の一成分とを含むものである。なお、各々の成分には、粘度の調整や、液状またはペースト状のいずれの態様に調整するか等を目的として充填剤を添加してもよく、必要に応じてその他の添加剤も添加してもよい。また、第一成分や第二成分は、通常、接着強度と硬化速度とをバランスよく両立させる観点から、ラジカル重合性単量体100質量部に対して、化学重合開始剤の一成分が0.05〜15質量部の範囲で含まれていることが好ましく、0.5〜8質量部の範囲内で含まれていることがより好ましい。さらに、充填剤を用いる場合は、第一成分や第二成分には、ラジカル重合性単量体100質量部に対して、充填剤が20〜1000質量部の範囲で含まれていることが好ましく、70〜400質量部の範囲内で含まれていることがより好ましい。これにより接着作業に適した適度な粘性に加え、十分な接着強度の確保がより容易となる。以下に、ラジカル重合型セメントに用いられる重合性単量体や化学重合開始剤、また、必要に応じて用いられる充填剤等の各成分について説明する。
−重合性単量体−
重合性単量体としては、ラジカル重合可能な公知の重合性単量体であれば特に制限されないが、重合性や生体への安全性の点から(メタ)アクリル酸エステル系のラジカル重合性単量体が好適に使用される。重合性単量体の具体例としては、下記に例示するものが利用でき、これらを1種単独で或いは2種以上の組み合わせで使用することができる。
<単官能性ラジカル重合性単量体>
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチルメタクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエチレングリコールモノメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート。
<二官能性ラジカル重合性単量体>
(i)芳香族化合物系の二官能性ラジカル重合性単量体;
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を有するメタクリレート類、アミノ基を有するメタクリレート類、または、これらのメタクリレート類に対応するアクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
なお、上述したヒドロキシル基含有メタクリレート類としては、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエチレングリコールモノメタクリレート等がある。また、アミノ基含有メタクリレート類には、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、2−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノブチルメタクリレート、5−アミノペンチルメタクリレート、3−アミノペンチルメタクリレート等が挙げられる。
(ii)脂肪族化合物系の二官能性ラジカル重合性単量体;
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を有するメタクリレート類、アミノ基を有するメタクリレート類、または、これらのメタクリレート類に対応するアクリレートとの付加から得られるジアダクト等。なお、ヒドロキシル基含有メタクリレート類、および、アミノ基含有メタクリレート類は、前記で例示した通りである。
<三官能性ラジカル重合性単量体>
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート、および、これらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
<四官能性ラジカル重合性単量体>
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、ジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
なお、上記のジイソシアネート化合物には、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる
以上に列挙した重合性単量体の中でも、得られる硬化体の機械的強度が高い点で、複数のラジカル重合性基を有する二、三または四官能性ラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。
<酸性基含有重合性単量体>
なお、以上に説明した重合性単量体は、酸性基を含まない重合性単量体(酸性基非含有重合性単量体)であるが、酸性基を含有する重合性単量体(酸性基含有重合性単量体)を用いることもできる。この場合、重合性単量体としては、酸性基含有重合性単量体を単独で用いてもよく、酸性基含有重合性単量体と酸性基非含有重合性単量体とを併用してもよい。
酸性基含有重合性単量体は、少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基とを有する化合物である。ここで酸性基とは、この基を有するラジカル重合性単量体の水溶液または水懸濁液が酸性を呈するものであり、代表的には、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}等のヒドロキシル基を有するものが例示される。また、このようなヒドロキシル基含有酸性基以外にも、2つのヒドロキシル含有酸性基が脱水縮合した構造の酸無水物基、ヒドロキシル基含有酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基等を挙げることができる。また、ラジカル重合性不飽和基も特に限定されず、公知のものであってよい。たとえば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基等の(メタ)アクリロイル系基、ビニル基、アリル基、スチリル基等が例示される。
酸性基含有重合性単量体としては、たとえば、以下の(i)〜(v)に例示するものが挙げられる。
(i)分子内に1つのカルボキシル基を有すラジカル重合性単量体
(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートおよび上記ラジカル重合性単量体の酸無水物或いは酸ハロゲン化物等。
(ii)分子内に複数のカルボキシル基あるいはその酸無水物基を有するラジカル重合性単量体
11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸および上記ラジカル重合性単量体の酸無水物或いは酸ハロゲン化物等。
(iii)分子内にホスフィニコオキシ基又はホスホノオキシ基を有すラジカル重合性単量体(ラジカル重合性酸性リン酸エステルと呼ぶことがある)
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス(10−(メタ)アクリロイルオキシデシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル}ハイドロジェンフォスフェート等、および、上記ラジカル重合性酸性リン酸エステルの酸無水物、酸ハロゲン化物等。
(iv)ビニルホスホン酸、p−ビニルベンゼンホスホン酸等の分子内にホスホノ基を有すラジカル重合性単量体。
(v)2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸等の分子内にスルホ基を有すラジカル重合性単量体。
さらに、上述した(i)〜(v)に示す酸性基含有重合性単量体以外にも、特開昭54−11149号公報、特開昭58−140046号公報、特開昭59−15468号公報、特開昭58−173175号公報、特開昭61−293951号公報、特開平7−179401号公報、特開平8−208760号公報、特開平8−319209号公報、特開平10−236912号公報、特開平10−245525号公報等に開示されている歯科用接着性組成物中の成分として記載されている酸性基含有のラジカル重合性単量体も、酸性基含有重合性単量体として好適に使用できる。
−化学重合開始剤−
第一成分および第二成分に用いられる化学重合開始剤は2種以上の化合物の組み合わせからなり、これらを混合(接触)させることによりレドックス系を形成してラジカルを発生するものである。このため、2種類以上の化合物のうちの少なくとも1種を第一成分に、残りを第二成分に配合する。化学重合開始剤を構成する2種類以上の各成分の組み合わせとしては、下記表1中の(1)〜(6)が挙げられる。なお、表1中、括弧内の数値は、相対的な配合割合の好適な範囲を示したものであり、(1)に示す例であれば、第二成分に含まれる有機過酸化物1モルを基準として、第一成分に含まれるアミン化合物が0.01〜4モルの割合であることが好ましいことを意味する。なお、表1中に示される第一成分として示される化合物が第二成分に含まれ、表1中に示される第二成分に示される化合物が第一成分に含まれていてもよい。
Figure 0005700929
表1の(1)〜(6)に例示されるような2種類以上の化合物の組み合わせからなる化学重合開始剤は、それぞれ単独で使用することができるし、また2種以上の化学重合開始剤を組み合わせて使用することもできる。なお、これらの化学重合開始剤の中でも、高い接着強度が得られ、また取扱いが容易な理由から、上記(1)に示す組み合わせからなる化学重合開始剤が好適である。以下、化学重合開始剤を構成する表1に示した各成分について具体例を挙げて説明する。
<有機過酸化物>
有機過酸化物は特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等がある。
ケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、および、シクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、および、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、および、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、および、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、および、4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。パーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、および、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、および、t−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、および、ジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
<アミン類>
アミン類としては、特に制限されるものではないが、アミノ基がアリール基、または、ピリジル基に結合した第2級または第3級アミン類が、硬化の加速性の点で好ましい。アミン類としては、具体的には、下記一般式(1)に示される第2級アミンもしくは第3級アミンが挙げられる。
Figure 0005700929
ここで、一般式(1)中、Rは、水素原子、または、主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基である。なお、このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基、および、炭素数1〜5のアルキル基で置換されてもよい。また、Rは、主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基である。なお、このアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基、および、炭素数1〜5のアルキル基で置換されてもよい。さらに、Rは、環を構成する炭素数が6〜14のアリール基、または、ピリジル基である。なお、このアリール基、または、ピリジル基は、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ホルミル基、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、炭素数1〜5のアルコキシル基、炭素数2〜5のアシル基、あるいは炭素数2〜5のアシルオキシ基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基で置換されていてもよい。
また、RおよびRにおいて、主鎖の炭素数が1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基等が例示され、前記置換基で置換されたアルキル基としては、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、6−ヒドロキシヘキシル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が例示される。RおよびRとして好ましいアルキル基は、主鎖の炭素数が1〜5のものである。
また、Rにおいて、環を構成する炭素数が6〜14のアリール基としては、フェニル基、1−または2−ナフチル基、1−、2−または9−アントラニル基等が例示され、前記置換基で置換されたアリール基としては、o−,m−またはp−クロロフェニル基、o−,m−またはp−ブロモフェニル基、o−,m−またはp−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシ−2−ナフチル基、o−,m−またはp−ニトロフェニル基、o−,m−またはp−シアノフェニル基、o−,m−またはp−メチルフェニル基、o−,m−またはp−ブチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、o−,m−またはp−スチリル基、o−,m−またはp−(2−プロピニル)フェニル基、o−,m−またはp−メトキシフェニル基、o−,m−またはp−エトキシフェニル基、2−,3−または4−アセチルフェニル基、2−,3−または4−アセチルオキシフェニル基、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル基、4−メチル−2−ニトロフェニル基等が例示される。上記の基Rとして好ましいアリール基は、環を構成する炭素数が6〜10のものである。
上記一般式(1)で表されるアミン化合物のうち、好適に使用できる第二級アミンとしては、N−メチルアニリン、N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられる。また、好適に使用できる第三級アミンとしては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アニリン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、p−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−トリルジエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン等が挙げられる。
<有機スルフィン酸化合物>
有機スルフィン酸化合物としては、たとえば、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、m−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、2.3−ジメチルベンゼンスルフィン酸、3,5−ジメチルベンゼンスルフィン酸、α−ナフタレンスルフィン酸等のスルフィン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、キノリニウム塩等が挙げられる。
<アリールボレート化合物>
アリールボレート化合物は、1分子中に1〜4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物であり、好ましくは1分子中に3〜4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物である。具体的には、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するボレートの塩、たとえばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等の金属塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等のアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩等のピリジニウム塩、またはメチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等のキノリニウム塩等を挙げることができる。ここで、1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素を例示することができる。また、1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するボレートとしては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素を例示することができる。なお、上記のボレートにおいて、アルキルはn−ブチル、n−オクチルまたはn−ドデシルのいずれかである。
<酸性化合物>
酸性化合物としては、公知の無機酸や有機酸が利用でき、具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、マレイン酸、クエン酸、マロン酸、シュウ酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸を挙げることができる。また、これら酸性化合物以外にも酸性基含有重合性単量体も利用できる。
<バルビツール酸誘導体>
バルビツール酸誘導体としては、たとえば、5−ブチル(チオ)バルビツール酸、1,3,5−トリメチル(チオ)バルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニル(チオ)バルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−メチル(チオ)バルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−ブチル(チオ)バルビツール酸等が挙げられる。
<銅化合物>
銅化合物としては、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等を具体的に挙げることができる。
化学重合開始剤の配合量は、全重合性単量体(酸性基含有重合性単量体と非酸性重合性単量体との合計)100質量部当り、0.1〜15質量部の範囲内が好ましく、0.5〜8質量部の範囲内がより好ましい。配合量を15質量部以下とすることにより、硬化速度が必要以上に速くなるのを抑制でき、接合時の作業性をより向上させることができる。これに加えて、硬化物の変色も確実に抑制できる。また、配合量を0.1質量部以上とすることにより、硬化速度が著しく遅くなるのを抑制でき、硬化物として適切な物性(たとえば、機械的強度等)を容易に確保できる。なお、化学重合開始剤は2種以上の化合物の組み合わせからなっているため、化学重合開始剤の配合量は、各化合物の合計量とするが、アリールボレート類/酸性化合物では、酸性基含有重合性単量体が酸性化合物としても機能するため、アリールボレート類の量を化学重合開始剤の量とする。
−充填剤−
充填剤としては、有機充填剤および無機充填剤が利用できる。有機充填剤としては、たとえばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上の混合物として用いることができる。無機充填剤としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独でまたは二種以上を混合して用いられる。
充填剤としては、無機充填剤を用いることが好適であり、無機充填剤の中でも、フッ素徐放性を付与する目的で、フルオロアルミノシリケートガラスを用いることがより好ましい。このようなフルオロアルミノシリケートガラスとしては、アルミニウムおよび珪素の酸フッ化物ガラスのフィラーであれば特に限定されず、歯科用セメント等において酸反応性フィラー、イオン溶出性フィラーとして一般に使われているものが使用できる。フルオロアルミノシリケートガラスの好適な組成としては、イオン質量%で、珪素10〜33質量%;アルミニウム4〜30質量%;アルカリ土類金属5〜36質量%;アルカリ金属0〜10質量%;リン0.2〜16質量%;フッ素2〜40質量%;残量が酸素である。なお、上記アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが好ましい。また、上記アルカリ金属としてはナトリウム、リチウム、カリウムが好適であり、中でもナトリウムが特に好適である。更に必要に応じて、上記アルミニウムの一部をチタン、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ランタン等で置き換えたものも使用可能である。
このようなフルオロアルミノシリケートガラスは、たとえば、シリカ、アルミナ、フルオライト、クリオライト、フッ化アルミニウム等の金属化合物を混合し、1100〜1300℃で焼結し、次いで粉砕する方法、或いはゾルゲル法などにより製造できる。無機充填剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理して使用に供することもできる。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。また、無機充填剤としてフルオロアルミノシリケートガラスを用いる場合には、他の成分との練和性を向上させる目的で、該フルアオロアルミノシリケートガラスを高分子化合物等でコーティングしてもよい。
充填剤の形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られる様な不定形の粒子形状を有するものであってもよいし、球状粒子であってもよい。また、充填剤の粒径は特に限定されないが、粒径が大きいほど同一の充填量で粘度が低くなる性質を有する。このため、充填剤が添加された第一成分や第二成分の粘度は、充填剤の添加量以外にも粒径を選択することで、所望の粘度に制御できる。なお、アバットメントと上部構造体との接合作業に適した粘度が得やすい観点からは、充填剤の平均粒径は0.01〜100μm、特に0.1〜50μmであることが好ましい。
(3)酸塩基硬化型セメントおよびラジカル重合型セメントの混合型セメント
混合型セメントとしては、酸塩基硬化反応およびラジカル重合反応の双方の重合メカニズムを利用したセメントであれば特に限定されないが、たとえば、ラジカル重合型セメントにおいて、第一成分に用いられる化学重合開始剤の一成分として銅化合物およびハロゲン化合物を用い、第二成分に用いられる化学重合開始剤の一成分としてバルビツール酸を用いたものが挙げられる。ここで、ハロゲン化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に用いられる。また、バルビツール酸1モルに対して、銅化合物は0.000001〜0.01モルの範囲内で用いることが好ましく、ハロゲン化合物は0.0001〜1モルの範囲内で用いることが好ましい。
また、その他の混合型セメントとしては、レジン強化型グラスアイオノマーセメントが挙げられる。このセメントは、第一成分に酸性基含有重合性単量体、化学重合開始剤の一成分が含まれ、第二成分にフルオロアルミノシリケートガラスおよび/または酸化亜鉛、ならびに、化学重合開始剤の一成分が含まれる。また、第一成分および第二成分には、粘度や、液状/ペースト状の調整のために、必要に応じて水などの水溶性溶媒や増粘剤を添加することができる。なお、化学重合開始剤を構成する2種類以上の各成分の組み合わせとしては、たとえば、表1に例示した(1)〜(6)が挙げられる。
以下に、本発明を実施例等を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等にのみ限定されるものではない。
まず、後述する各実施例および各比較例で使用した化合物の略称を以下に示す。
<重合性単量体>
・D−2.6E:2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン
・UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン
・PM:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート(PM1)とビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート(PM2)とを、質量比で2:1の割合で含む混合物
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
<充填剤>
・F−1:球状シリカ−ジルコニアのγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物;平均粒子径0.4μm
・F−2:球状シリカ−チタニアのγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物;平均粒子径0.07μm
・F−3:ヒュームドシリカ;平均粒子径0.01μm
・F−4:フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー、トクヤマデンタル社製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイミル、三井鉱山社製)を用いて平均粒径0.5μmまで粉砕した粉末
<重合開始剤の一成分>
・BPO:過酸化ベンゾイル
・PBTEOA:テトラフェニルホウ素のトリエタノールアンモニウム塩
・DEPT:N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−p−トルイジン
<増粘剤>
・CPC:カルボキシメチルセルロース
<酸性ポリマー>
・PA:ポリアクリル酸(重合度1000)
(実施例1)
PMを20質量部、UDMAを80質量部、DEPTを0.6質量部、F−1を8質量部、F−2を5質量部混合し、均一になるまで撹拌し、第一成分を調製した。D−2.6Eを50質量部、UDMAを50質量部、PBTEOAを1.4質量部、BPOを7.0質量部、F−1を100質量部、F−2を60質量部混合し、均一になるまで混練し、第二成分を調整した(表2)。
そして、これら第一成分および第二成分からなるセメントを用いて、2cm角の純チタン平板と2cm角の歯科用金銀パラジウム合金板との接着サンプルを作製する際には、2つの板を接合する直前までは、実質的に第一成分および第二成分を分離した状態とし、接合に際して第一成分および第二成分を混合した。
なお、接着サンプルの作製は、具体的には以下の手順で実施した。まず、2cm角平板の歯科用純チタン((株)モリタ製歯科用純チタン)および2cm角平板の歯科用金銀パラジウム合金(ジーシー社製キャストウェルMC12)の表面を、#600シリコンカーバイド紙(三共理化学(株)製)で研磨の後、歯科用アルミナサンドブラスト処理し、残存アルミナ粒子を洗浄後、温度37℃、湿度100%の環境下に放置した。次に、第一成分を純チタン平板および歯科用金銀パラジウム合金板の片面全面に盛り付け、続いて、圧縮空気にて10秒乾燥させた。続いて、純チタン平板の第一成分が盛り付けられた面の上に、さらに0.2gの第二成分を盛り付けた後、歯科用金銀パラジウム合金板の第一成分が盛り付けられた面と接合し、200gの荷重で押し付けた。この状態で温度37℃、湿度100%の環境下に10分間放置することにより接着サンプルを得た。この際、第一成分の接合面への付与量は、接合の際に、貼り合わせ界面から余剰な第一成分がはみ出る量となるように十分な量を付与した。また、第二成分の付与量を0.2gとしたのも同様の理由による。なお、純チタン平板はアバットメントを模したものであり、歯科用金銀パラジウム合金板は上部構造体を模したものである。
(実施例2〜5、比較例6〜11、実施例12〜13、比較例14〜16)
実施例1と同様に、表2に示す組成表にしたがって、第一成分、第二成分を調製し、実施例1と同様にして接着サンプルを作製した。
(比較例1〜5)
実施例1と同様に、表1に示す組成表にしたがって、第一成分、第二成分を調製した。そして、これら第一成分および第二成分からなるセメントを用いて、2cm角の純チタン平板と2cm角の歯科用金銀パラジウム合金板との接着サンプルを作製する際には、第一成分および第二成分をあらかじめ練和紙上で混合し、この混合物を2枚の板で挟むことで接着した。また、これ以外の条件については実施例1と同様にして接着サンプルを作製した。なお、接合に際して使用した第一成分および第二成分の使用量は、貼り合わせ界面から、余剰な第一成分および第二成分の混合物がはみ出る量となるように十分な量とした。
<評価>
表2に各実施例および比較例の接着サンプルを作製する際に用いた第一成分および第二成分の組成、粘度、形態、および、接合前における第一成分および第二成分の混合の有無を示す。また、表3に、各実施例および比較例の接着サンプルの接着強度、接着サンプルを作製する際に発生した余剰セメントの除去性および余剰セメント除去率を評価した結果を示す。
表3に示されるように、実施例1〜5、比較例6〜11、実施例12〜13、比較例14〜16においては、仮着に適した接着強度が得られたのに対し、比較例1〜3では合着に適した接着強度が得られた。また、実施例1〜5、比較例6〜11、実施例12〜13、比較例14〜16では、接合後も長期にわたって、余剰成分が硬化せず、除去も容易であるが、比較例1〜5では余剰成分が早期に硬化して除去が困難となった。
Figure 0005700929
Figure 0005700929
なお、表3に示す粘度の測定方法、ならびに、表3に示す接着強度、余剰セメント除去性および余剰セメント除去率の評価方法・評価基準は以下の通りである。
<粘度測定>
粘度測定装置(BOHLIN社製CSレオメーター CVO120HR)に調製したサンプル0.1gを載せ、23℃で保持しながら粘度の測定を開始し、測定開始から60秒後の粘度をサンプルの粘度とした。なお、粘度測定装置の測定条件は、コーン直径が2cm、コーンの傾斜角度が1°、ショアレート10s−1とした。
<接着強度>
接着サンプルを構成する歯科用金銀パラジウム合金板側の外面に瞬間接着剤(東亞合成社製、アロンアルファ、ゼリー状)を塗布し、その上から直径8mmのステンレス製アタッチメント(接着試験片)を圧接して接着試験評価用サンプルを準備した。次いで、この接着試験評価用サンプルを、37℃、湿度100%の環境下で24時間静置した後、引張試験機(島津製作所製オートグラフ)を用い、クロスヘッドスピード2mm/minにて、接着サンプルの接着強度を測定した。なお、1試験当り、4つの試験片について、引張強度を上記方法で測定し、その平均値を接着強度として評価した。
<余剰成分除去性>
接着サンプルの作製時に、歯科用純チタン板と歯科用金銀パラジウム合金板との接合界面からはみ出した余剰成分を、温度37℃、湿度100%の環境下に静置し、接合直後(0分)から10分目までの期間において、1分毎に探針を用いて余剰成分を引っ掻くことで、余剰成分の除去性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:余剰成分が硬化しておらず、探針により引っ掻いた箇所から余剰成分を容易に除去できる。
△:余剰成分がやや硬化していたが、探針により引っ掻いた場合に、塊状として余剰成分を除去できる。
×:余剰成分が硬化しており、探針により引っ掻いても、余剰成分を除去できない。
<余剰成分除去率>
接着サンプルの作製時に、接着に用いる歯科用純チタン板および歯科用金銀パラジウム合金板とは別に、もう一枚の歯科用金銀パラジウム合金板を準備し、この板を貼り合わせに用いる歯科用金銀パラジウム合金板と並べて配置した。この際、2枚の歯科用金銀パラジウム合金板は、その端面同士が向き合うように配置すると共に端面間の隙間が100μmとなるようにした。この状態で接合することにより、接合界面からはみ出た余剰成分が隙間に流れ込んだ。この隙間に流れ込んだ余剰成分は、接合から5分間の間、温度37℃、湿度100%の環境下に静置した。その後、この隙間に対して水銃により十分に洗浄を行い、洗浄後に隙間に残った余剰セメントの除去率を、拡大鏡による目視観察にて評価した。評価基準は以下の通りである。
○:隙間部分全て(長さ2cm、幅100μm)において、余剰成分が残存していない。
△:隙間の一部分に、余剰成分が若干残存している(隙間部分の全面積に対する面積割合で約10%以下の割合で残存)。
×:隙間に余剰成分が残存しているのが容易に確認される(隙間部分の全面積に対する面積割合で約10%を超える割合で残存)。
<電子線マイクロアナライザによる接着層厚み方向の定量分析>
実施例1〜5、比較例6〜11および比較例1〜3で用いたセメントについては、このセメントを用いて形成された接着層の厚み方向について、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による定量分析を以下の手順で実施した。
まず、縦横3cm角の平板状のポリエステルフィルムの片面に、厚さ100μm、直径20mmの孔を有するテフロン(登録商標)製モールドを配置した後、この孔の内部に第一成分を付与し、圧縮空気にて10秒乾燥させた。続いて、もう一枚のポリエステルフィルムの片面に0.2gの第二成分を付与した後、各々のポリエステルフィルム表面に付与された第一成分および第二成分が互いに接触して混合するように、2枚のポリエステルフィルムを圧接した。そして、圧接後は、接合部分が十分に硬化するまで温度37℃、湿度100%の環境下に放置した。なお、第一成分の接合面への付与量は、接合の際に、貼り合わせ界面から余剰な第一成分がはみ出る量となるように十分な量を付与した。また、第二成分の付与量を0.2gとしたのも同様の理由による。なお、比較例1〜3のセメントについては、予め第一成分および第二成分を混合後に、孔の内部にこれら2つの成分を混合した混合組成物を付与し、その後、2枚のポリエステルフィルムを圧接した。
次に、2枚のポリエステルフィルム間に形成されたセメント硬化体(接着層)を、各ポリエステルフィルムを手で引き剥がすことにより取り出した。そして、5.4mlのエポキシ樹脂(EPON812RESIN)と、6.0mlの硬化剤(EpoxyHardnerMNA)とを計量し、へらで5分間攪拌することにより得られた樹脂組成物中に、セメント硬化体を入れ、さらに攪拌した。その後、セメント硬化体を含む樹脂組成物に重合触媒(DMP‐30)を8滴加えて、均一に混合するまで攪拌した。その後、セメント硬化体を含む樹脂組成物を、ミクロトーム用のモールドに大きな気泡を巻き込まないようにへらを用いて充填し、温度60℃で2日間硬化させた。このようにして、マトリックス中にセメント硬化体が包埋された樹脂硬化物を得た。
次いで、ウルトラミクロトーム「MT‐XL」(RMC社)にダイヤモンドナイフを取り付け、上記方法で作製した樹脂硬化物の断面だしを行うことで、樹脂硬化物中に包埋されたセメント硬化体の断面を露出させる処理を行った。なお、この断面だしは、ポリエステルフィルム間に形成させ取り出したセメント硬化体(接着層)を包埋した樹脂硬化物に対して実施したが、アバットメントと金属やセラミックス製部材からなる人工補綴物との間に形成されたセメント硬化体であっても、この接合体は上記手法により直接に切断可能であり、接着層は同様に断面だしできる。
続いて、スパッタコーター(CC‐40F、メイワフォーシス社製)を用いて、セメント硬化体の断面に対しカーボン蒸着を行い観察試料を作製した。その観察試料について、EPMA JAX‐8800(日本電子社製)を用い、WDS方式によってセメント硬化体の断面を横切るように、すなわち、接着層の厚み方向に対して定性多点(5点)分析を行った。測定は第一成分を付与した面から第二成分を付与した面に向かって等間隔になるように5点測定し、各点におけるリン元素含有率を求めた。結果を表4に示す。なお、表4中、”測定点1”は、第一成分を付与した面に最も近い測定点を意味し、測定点の番号が増加するに伴い、測定点が第二成分を付与した面に近づくことを意味する。また、5点の測定点のうち、最もリン元素含有率の高い測定点を100%とした。
Figure 0005700929

Claims (1)

  1. 歯科インプラントを構成するアバットメントと上部構造体とを接着するために用いられる第一成分および第二成分から構成され、
    上記第一成分と上記第二成分とが混合することで硬化する機能を有し、
    上記アバットメントと上記上部構造体との接着が、
    上記第一成分を、上記アバットメントの接合面および上記上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与し、かつ、
    上記第二成分を、上記アバットメントの接合面および上記上部構造体の接合面から選択される少なくとも一方の接合面に付与し、
    これら接合面への上記第一成分および上記第二成分の付与を終えた後、上記アバットメントの接合面と上記上部構造体の接合面とを接合させることにより、上記第一成分と上記第二成分とを混合し、当該混合物を硬化させるプロセスを少なくとも経ることで実施され、
    上記第一成分および上記第二成分のうちのいずれか一方の成分の23℃における粘度が0.1〜10Pa・sであり、他方の成分の23℃における粘度が10〜100Pa・sであることを特徴とする歯科インプラント用セメント。
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