JP2021054786A - 低感水性レジンセメント - Google Patents
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Abstract
【課題】プライマー前処理をしなくても接着性が良好な歯科用レジンセメントの提供。【解決手段】(a)フィラー、(b)重合触媒、(c)シランカップリング剤、(d)ラジカル重合性モノマー、(e)酸性基含有モノマー、及び、(d)100重量部に対して、0.1〜20重量部の下記モノマーを含む歯科用レジンセメント。【選択図】なし
Description
本発明は、自己接着性レジンセメントに関する。さらに詳しくは、本発明は、従来使用されていた歯質用プライマー、陶材用プライマー、セラミックス用プライマーあるいは金属用プライマーで前処理することなく、生体硬組織の、特に天然歯牙のエナメル質や象牙質等の基体にセラミックス、コンポジットレジンまたは金属材料からなる歯科用補綴修復材を接着させる場合に、各被着体に対して接着性を付与したレジンセメントである。さらに、レジンセメントペーストが優れた物理的特性を有する、コンポジットタイプの自己接着性レジンセメントに関する。
レジンセメントは、審美性を有する歯科用補綴修復材の接着用としての要望が高く、有機質、無機質及びまたは有機無機複合材料からなる充填剤と重合性モノマーやオリゴマーからなり、高い材料強度を達成するため、該フィラーの充填率は、およそ50重量%以上である。また、光の到達しない部位においても重合硬化するため、光重合に加えて、化学重合機能を有するデュアルキュアー型が主流となっている。
齲蝕等により比較的大きな損傷を受けた歯の修復には、セラミックス、コンポジットレジンまたは金属材料からなるクラウン、ブリッジ、インレーまたはアンレー等を、レジンセメントを用いて接着させる手法が一般的である。この時、レジンセメントの歯の硬組織への接着性を強固にするため、いわゆるプライマーと称される前処理材が用いられる。このレジンセメントには十分な接着力とその材料強度が要求される。さもないと過酷な口腔環境下での長期使用により当該修復物が脱落に至る可能性があるのみならず、レジンセメントと歯質の界面で間隙を生じ、そこから細菌が侵入して歯髄に悪影響を与えるおそれがあるためである。
歯の硬組織はエナメル質と象牙質からなり、臨床的には双方へのレジンセメントの接着が要求される。従来、接着性の向上を目的として、レジンセメントの適用に先立ち歯質の表面を前処理するプライマーが用いられてきた。このようなプライマーの働きは、歯の表面を脱灰し、微小な粗造面へ、レジンセメントが浸入することを容易にする。その後、レジンセメントが化学重合や光重合により硬化するという接着機構が考えられる。
一方、レジンセメントは従来、粉液タイプであったが、練和操作の煩雑さを回避するため、予めペースト化し、その2形態を練和するレジンセメントの要求が高まっている。このようなペーストとペーストを練和する操作は粉液練和と比較し、練和時間の短縮や術者の個人差が少ないため、臨床家にとって好ましい形態といえる。さらに、このようなレジンセメントは、歯科用合金などの光透過性の低い補綴修復材料に加え歯科用陶材などの光透過性に富む補綴修復材料にも用いることが出来るよう、光重合に加えて化学重合による、すなわちデュアルキュアーの重合硬化機能を有することが望まれる。
しかしながら、レジンセメントでの接着に先立ち、歯質、セラミックス、コンポジットレジン及び金属の各種被着体に、予め、各々の被着体専用のプライマーで処理しなければならなかった。臨床術式上、かかる種々の被着体に対しても、プライマー処理を必要としない、簡単な接着操作が望まれる。
特許文献1には、酸を含有している少なくとも1つの多官能性のモノマーを約10重量%から約85重量%の濃度範囲で、非反応性の充填剤を約1重量%から約80重量%の濃度範囲で、重合系を約1.5重量%から25重量%の濃度範囲で、ならびに水を約0.1重量%から25重量%の濃度範囲で含んでいる重合可能な複合材料である、プライマーを必要としない自己接着性のレジンセメントが開示されているが、無機成分の多いエナメル質及び有機成分や水分の多い象牙質の双方に十分な接着性を得ることは出来ない。
特許文献2には、酸基を有するモノマーと、酸基を有しないモノマーと微粒子充填剤と還元剤と酸化剤とからなり、2ペーストの自己接着性の歯科用組成物を供給する方法が開示されている。具体的には、2つに分配された、酸性基を有するモノマーの含有量が多いペーストと、酸性基を有するモノマーの含有量が少ないペーストとの比率が1:1より大きいとしている。かかるペーストの割合を変えると、ペーストの供給装置が煩雑となる。
特許文献3及び特許文献5には、液剤と粉剤とからなる自己接着性の歯科用セメント組成物が開示されているが、液剤と粉剤、すなわち粉液タイプのレジンセメントは、ペースト&ペーストタイプよりも練和時の操作性に劣る。
特許文献4には、接着成分として、特殊なカルボン酸基を含有するモノマーとして、芳香族に結合した(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基を各々1個有するカルボン酸化合物を必須とする歯科用接着剤組成物が開示されているが、かかるカルボン酸基を含有するモノマーでは、臨床に耐える十分なエナメル質への接着性を付与することができない。
特許文献6には、バルビツール酸の金属塩と有機過酸化物及びアミンを硬化剤とするレジンセメントが開示されている。しかしながら、このレジンセメントは歯質には予め専用のプライマーで前処理する必要性がある。
近年、歯科用レジンセメントの使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の歯科用レジンセメントは、口腔内のような水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上での硬化性は悪く、そのため十分な接着性が得られないという欠点がある。
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、吸水した被接着体上や、水分が過剰にある状態でもエナメル質及び象牙質の双方の歯質、ジルコニアやアルミナなどのセラミックス、陶材、金属など性質を異にするさまざまな被着体に対して、プライマーで前処理することなく、臨床上許容できる接着性を有する歯科用レジンセメントを提供することを目的とするものである。
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、吸水した被接着体上や、水分が過剰にある状態でもエナメル質及び象牙質の双方の歯質、ジルコニアやアルミナなどのセラミックス、陶材、金属など性質を異にするさまざまな被着体に対して、プライマーで前処理することなく、臨床上許容できる接着性を有する歯科用レジンセメントを提供することを目的とするものである。
本発明の歯科用レジンセメントは、(a)フィラー、(b)重合触媒、(c)シランカップリング剤、(d)ラジカル重合性モノマー、及び、(e)酸性基含有モノマー、を含む歯科用レジンセメントであって、(d)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、(f)式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを0.1〜20重量部更に含む歯科用レジンセメントである。
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、互いに同じでも異なってもよい。R2は、炭素数2〜6のアルキル基であり、互いに同じでも異なってもよい。)
本発明の歯科用レジンセメントは、式(2)におけるRが全て水素原子であることが好ましい。
本発明の歯科用レジンセメントは、前記式(1)で示されず、かつ、(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まないことが好ましい。
本発明の歯科用レジンセメントは、被着体に特有のプライマーを使用することなく、吸水した試験片や、水分が過剰にある状態でもエナメル質や象牙質などの歯質や歯科用のセラミックス(陶材)、コンポジットレジン及び金属に対して十分な接着性を有する。
本発明の歯科用レジンセメント(以下、「レジンセメント」ともいう)に使用する成分(d)ラジカル重合性モノマー(以下、「成分(d)」ともいう)としては、後述する成分(e)酸性基含有モノマー(以下、「成分(e)」ともいう)に該当せず、かつ、後述する「式(1)で示される(f)(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー」(以下、「成分(f)」ともいう)に該当しないラジカル重合性モノマーが全て用いられ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体やアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジ(メタ)アクリレート類、エポキシジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA―アルキルジ(メタ)アクリレート類、ウレタンジ(メタ)アクリレート類、ウレタントリ(メタ)アクリレート類、ウレタンテトラ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、Si基を有する(メタ)アクリレート類、SH基または―S―S―基を有する(メタ)アクリレート類、スチレン誘導体が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ−2−メタクリロイロキシエチル−2,2,4−トリメチルへキサメチレンジカルバメート、2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、ジ(メタ)アクリロキシイソホロンジカルバメート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、γ―メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。特に好適なラジカル重合性モノマーはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ(メタ)アクリロキシイソホロンジウレタン、2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等であり、中でもとりわけエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ−2−メタクリロイロキシエチル−2,2,4−トリメチルへキサメチレンジカルバメート、2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが特に好適である。これらのラジカル重合性モノマーは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
本発明のレジンセメントにおける成分(d)ラジカル重合性モノマーの配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常13.0〜45.0重量%、好ましくは15.0〜40.0重量%、さらに好ましくは20.0〜35.0重量%であり、13.0重量%未満ではペーストの粘性が高くなりすぎ、一方45.0重量%を超えるとペーストの粘性が低くなりすぎ、レジンセメントとしての使用に適したペースト性状が得られない場合がある。
本発明の歯科用レジンセメントに使用する成分(e)酸性基含有モノマーは、酸性基を有し、かつ、成分(f)に該当しない重合性モノマーであれば、何等制限無く用いることができる。また、(e)酸性基含有モノマーが有する酸性基を具体的に例示すると、リン酸基、ピロリン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、チオリン酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(e)酸性基含有モノマーが有するラジカル重合可能な不飽和基の数(単官能性基または多官能性基)やその種類においても何等制限なく用いることができる。(e)酸性基含有モノマーが有する不飽和基を具体的に例示するとアクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、これら不飽和基の中でもアクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有している酸性基含有モノマーであることが好ましい。
これらの(e)酸性基含有モノマーは、分子内にアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもでき、また(e)酸性基含有モノマーは主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー等も何等制限なく用いることができる。さらに(e)酸性基含有モノマーが有する酸性基を部分的に中和された金属塩やアンモニウム塩または酸塩化物等とした(e)酸性基含有モノマーの誘導体も種々の被着体への接着性に悪影響を与えない程度であれば用いることができる。
本発明の歯科用レジンセメントに用いることができる(e)酸性基含有モノマーを具体的に例示すると次の通りである。なお、本明細書においては、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリロイルをもってアクリロイルとメタクリロイルの両者を包括的に表記するものとする。
リン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシブチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキシルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシオクチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシノニルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシデシルハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2´−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ピロリン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、ピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ジ〔3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル〕、ピロリン酸ジ〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ジ〔7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチル〕、ピロリン酸ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ジ〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕、ピロリン酸ジ〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル〕、ピロリン酸テトラ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸トリ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、カルボン酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−クロロ(メタ)アクリル酸、3−クロロ(メタ)アクリル酸、2−シアノ(メタ)アクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、1−ブテン1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン1,2,3−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ−ト、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエ−ト、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸及びこれらの酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、7−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘプタンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ホスホン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネ−ト、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテ−ト、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、スルホン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレ−ト、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの酸性基含有モノマーを単独または複合的に組み合わせて用いることができる。
本発明の歯科用レジンセメントに用いることができる(e)酸性基含有モノマーとしては、特に、ホスホン酸基及び/またはリン酸エステル基を有する重合性モノマーを用いることが好ましい。ホスホン酸基及び/またはリン酸エステル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、一般式〔I〕:
上記一般式〔I〕で示される具体的な化合物としては、例えば、下記のものが挙げられる。
また、本発明のレジンセメントにおいて使用する成分(e)としては、化合物〔I〕に加え、2−(メタクリロキシ)エチルホスフェートやビス〔2−(メタクリロキシ)エチル〕ホスフェートなどのリン酸エステル基を有する重合性モノマーも有効である。
また、本発明の歯科用レジンセメントに用いることができる(e)酸性基含有モノマーとしては、特に、2塩基酸のカルボキシル基を有する重合性モノマーを用いることが好ましい。2塩基酸のカルボキシル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、例えば、1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸、4−アクリロキシブチルトリメリット酸、11−(メタ)アクリロキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等が挙げられるが、特に4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及び4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物が好ましい。
なお、これらの酸性基含有モノマーを単独または複合的に組み合わせて用いることができる。
本発明の歯科用レジンセメントでは、(e)酸性基含有モノマーとして、ホスホン酸基及び/またはリン酸エステル基を有する重合性モノマーと、2塩基酸のカルボキシル基を有する重合性モノマーとを有することが好ましい。
本発明のレジンセメントにおける成分(e)酸性基含有モノマーの配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.4〜12重量%、さらに好ましくは0.6〜7重量%であり、0.1重量%未満ではすべての被着体に対する接着性が低下し、一方8.0重量%を超えると象牙質に対する接着性が低下及び/または重合性モノマーの溶解性の低下が生じうる。
本発明に用いられる(c)シランカップリング剤は特に限定するものではないが、具体的にはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが好適に用いられ、特に好ましくは、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンが用いられる。本発明のレジンセメントにおける(c)シランカップリング剤の配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、0.1-15重量%より好ましくは1-8重量%である。
本発明の歯科用レジンセメントに用いられる(a)フィラーは特に限定されず、公知のフィラー、例えば無機フィラー及び/または有機フィラー及び/または有機−無機複合フィラー等が何等制限なく用いることができる。これらのフィラーの形状は球状、塊状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状でよく特に限定されない。よりペーストの安定性を得るためには、フィラーは球状であることが好ましい。フィラーの球状を示す円形度は、0.7〜1.0の範囲であり、より好ましくは0.9〜1.0の範囲、さらに好ましくは0.95〜1.00の範囲にある。
円形度の算出方法は光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)の撮影像を画像解析装置で処理することにより求めることができる。画像処理するサンプル数はフィラー50個以上とし、フィラーの面積とフィラーの周囲長から算出する。算出する計算式は円形度e=(4・π・S)/(L2)であり、画像処理で得られたフィラーの面積S、及びシラン処理前のフィラーの周囲長Lから算出する。
円形度の算出方法は光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)の撮影像を画像解析装置で処理することにより求めることができる。画像処理するサンプル数はフィラー50個以上とし、フィラーの面積とフィラーの周囲長から算出する。算出する計算式は円形度e=(4・π・S)/(L2)であり、画像処理で得られたフィラーの面積S、及びシラン処理前のフィラーの周囲長Lから算出する。
無機フィラーとして具体的に例示すれば、石英、無定形シリカ、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、種々のガラス類(溶融法によるガラス、ゾルーゲル法による合成ガラス、気相反応により生成したガラスなどを含む)、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、チッ化ケイ素、チッ化アルミニウム、チッ化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト等が挙げられる。これらの中でもナトリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン等の重金属及び/またはフッ素を含むアルミノシリケートガラス、ボロシリケート、アルミノボレート、ボロアルミノシリケートガラス等が好ましい。
例えば、公知の無機質フィラーであるフルオロアルミノシリケートガラスフィラーは公知のガラス製造法により製造することができるが、好ましくは溶融法またはゾル−ゲル法により製造する。
溶融法としては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硅酸アルミニウム、ムライト、硅酸カルシウム、硅酸ストロンチウム、硅酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ストロンチウム、リン酸アルミニウム、リン酸ナトリウム等から選択されたガラス原料を1000℃以上の高温で溶解し冷却後、粉砕して製造することができる。
本発明のレジンセメントに使用し得るフルオロアルミノシリケートガラスとして好ましい組成は次のものである:
これらのガラス中に含まれるフッ素量は好ましくは5から60モル%である。
上記組成物においては酸化カルシウムとしているが、いずれのアルカリ土類金属の酸化物も使用できる。アルカリ土類金属の少なくとも一部はランタン、ガドリニウムまたはイッテルビウム等のランタニド金属で置き換えてもよい。さらに、これらのガラスのうち、一部またはすべてのアルミナをアルミニウム以外のIII族の金属で置き換えてもよい。同様にして、ガラス中のシリカの一部を酸化ジルコニウムまたは酸化チタニウムで置き換えてもよい。ガラスにストロンチウム、ランタン、ガドリニウム、イッテルビウムまたはジルコニウムを含有する場合、ガラスはX線不透過性となる。
上記組成物においては酸化カルシウムとしているが、いずれのアルカリ土類金属の酸化物も使用できる。アルカリ土類金属の少なくとも一部はランタン、ガドリニウムまたはイッテルビウム等のランタニド金属で置き換えてもよい。さらに、これらのガラスのうち、一部またはすべてのアルミナをアルミニウム以外のIII族の金属で置き換えてもよい。同様にして、ガラス中のシリカの一部を酸化ジルコニウムまたは酸化チタニウムで置き換えてもよい。ガラスにストロンチウム、ランタン、ガドリニウム、イッテルビウムまたはジルコニウムを含有する場合、ガラスはX線不透過性となる。
また、ゾル−ゲル法としては、例えば、可溶性アルミニウム化合物と可溶性シリコン化合物とを含有する第1溶液を、II族金属の可溶性化合物を含有する第2溶液と反応させ、得られたゲルを熱乾燥または凍結乾燥により乾燥させて回収する方法が挙げられる。この方法を使用すると、フラックス剤のごとき通常のガラスの製造に用いられる添加剤の使用を避け、比較的低い温度を用いることができることになる。このため、今までより透明度の高いガラスが得られる。
また、有機金属類または無機塩のアルコール溶液のごとき他の化合物をゾルの段階で添加して2価または3価金属イオンを含むガラスを得てもよい。
また、ゲル化速度を速めるために、酸性または塩基性溶媒をこのゾル−ゲル反応混合物へ添加してもよい。この方法により比較的低温にて均質な耐火性ガラスが得られる。
また、有機金属類または無機塩のアルコール溶液のごとき他の化合物をゾルの段階で添加して2価または3価金属イオンを含むガラスを得てもよい。
また、ゲル化速度を速めるために、酸性または塩基性溶媒をこのゾル−ゲル反応混合物へ添加してもよい。この方法により比較的低温にて均質な耐火性ガラスが得られる。
このゾル−ゲル法は、特にガドリニウムを導入したガラスの製造及び以下の5成分の製造に特に適している:
XnOm−CaO−Al2O3−SiO2−F(式中XnOmはX線不透過性物質の酸化物、例えばGd2O3である)
このような5成分ガラスは製造するのが難しい。しかしながらゾル−ゲル法によればガラスを容易に製造することが可能となる。CaO源としてイソブチルアルコールとエタノール中のアルミニウム第2ブトキシド(Asb)、SiO2源としてテトラエチルシリケート、F源として40%フッ化水素酸、Gd2O3源としてエタノール易溶性のGd(NO3)3またはメタノール溶液と置換してもよい。
XnOm−CaO−Al2O3−SiO2−F(式中XnOmはX線不透過性物質の酸化物、例えばGd2O3である)
このような5成分ガラスは製造するのが難しい。しかしながらゾル−ゲル法によればガラスを容易に製造することが可能となる。CaO源としてイソブチルアルコールとエタノール中のアルミニウム第2ブトキシド(Asb)、SiO2源としてテトラエチルシリケート、F源として40%フッ化水素酸、Gd2O3源としてエタノール易溶性のGd(NO3)3またはメタノール溶液と置換してもよい。
さらに、酸化カルシウムは50℃でエタノールに溶解させた無水Ca(NO3)2と置換してもよい。これらの溶液は50℃でかきまぜながら混合する。これをその後70℃で還流してもよい。乾燥後、物質を柔らかいうちに粉砕し、その後400から500℃の温度で乾燥させる。これを必要なサイズとなるようさらに粉砕する。
成分(a)フィラーは、平均粒径が0.1〜10μmのものが使用できる。好ましくは0.1〜5μmのものである。
また、有機フィラーとしては重合性基を有するモノマーを重合することによって得ることができ、その種類は特に限定されない。有機フィラーを具体的に例示すると、ポリメチルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等の不飽和芳香族類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;ブタジエン、イソプレン等の重合性基を有するモノマーを単独でまたは複数で(共)重合させたものが挙げられる。特に好ましくは、歯科分野で既に公知である重合性基を有するモノマーを重合させたものである。有機フィラーの製造方法においても特に制限はなく、重合性基を有するモノマーの乳化重合、懸濁重合及び分散重合等のいずれの方法でもよく、また、予め生成した重合体バルクを粉砕する方法でも行なう事ができる。
また、有機重合体中に無機粒子を含有した有機−無機複合フィラーを用いることもできる。有機重合体中に含有させる無機粒子としては、特に制限はなく公知のものが使用でき、例えば上述した無機フィラー等が挙げられる。有機−無機複合フィラーの製造方法においても、特に制限はなく、いずれの方法を採用することもできる。例えば、無機粒子の表面を有機物でのマイクロカプセル化やグラフト化する方法及び無機粒子の表面に重合性官能基や重合性開始基を導入後ラジカル重合させる方法、予め生成した無機粒子を含む重合体バルクを粉砕する方法等が挙げられる。これらの無機、有機及び有機−無機複合フィラーはそれぞれ単独で、または数種を組み合わせて用いることもできる。
また、有機重合体中に無機粒子を含有した有機−無機複合フィラーを用いることもできる。有機重合体中に含有させる無機粒子としては、特に制限はなく公知のものが使用でき、例えば上述した無機フィラー等が挙げられる。有機−無機複合フィラーの製造方法においても、特に制限はなく、いずれの方法を採用することもできる。例えば、無機粒子の表面を有機物でのマイクロカプセル化やグラフト化する方法及び無機粒子の表面に重合性官能基や重合性開始基を導入後ラジカル重合させる方法、予め生成した無機粒子を含む重合体バルクを粉砕する方法等が挙げられる。これらの無機、有機及び有機−無機複合フィラーはそれぞれ単独で、または数種を組み合わせて用いることもできる。
無機、有機及び有機−無機複合フィラー等のフィラーは公知の方法により、その粒子表面を表面処理して、歯科用レジンセメントに用いることができる。例えば界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ポリシロキサン等による表面処理が挙げられる。これらの表面処理法はレジン成分とフィラー表面の濡れ性を向上させ、歯科用レジンセメントに優れた諸特性を付与する点で好ましく、その要求特性に応じて適宜表面処理を選択することができる。また、それらフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
また、フィラーは、重合性モノマーなどのレジン成分との親和性を向上させる目的から、常法によりシラン処理を施すことが望ましい。用いるシラン処理剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが好適に用いられ、特に好ましくは、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンが用いられる。
本発明のレジンセメントにおける成分(a)フィラーの配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常54.725〜80.0重量%、好ましくは57.0〜77.0重量%である。54.725重量%未満ではフィラーの沈降を生じ、いわゆる液浮き現象を生じ、一方80.0重量%を超えると、該ペーストの流動性が著しく乏しくなり、セメントとしての機能が低下する場合がある。
本発明のレジンセメントに使用する成分(b)重合触媒は、(g)重合促進剤と(h)重合開始剤とからなり、さらに重合開始剤は、化学重合開始剤と光重合開始剤とからなる。
このうち(g)重合促進剤としては、例えば、バルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩及び芳香族第二級アミンまたは第三級アミン等が挙げられる。
バルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、例えば、5−n−ブチルバルビツール酸ナトリウム塩、5−n−ブチルバルビツール酸カルシウム塩、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸ナトリウム塩、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸カルシウム塩、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム塩、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム塩等が挙げられる。
本発明のレジンセメントにおける(g)重合促進剤としてのバルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩の配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常0.025〜3.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.7〜1.5重量%である。0.025重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方3.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
このうち(g)重合促進剤としては、例えば、バルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩及び芳香族第二級アミンまたは第三級アミン等が挙げられる。
バルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、例えば、5−n−ブチルバルビツール酸ナトリウム塩、5−n−ブチルバルビツール酸カルシウム塩、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸ナトリウム塩、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸カルシウム塩、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム塩、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム塩等が挙げられる。
本発明のレジンセメントにおける(g)重合促進剤としてのバルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩の配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常0.025〜3.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.7〜1.5重量%である。0.025重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方3.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
また、本発明のレジンセメントにおける(g)重合促進剤としての芳香族第二級アミンまたは第三アミンとしては、例えば、N−ジメチルアニリン、N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられる。
本発明のレジンセメントにおける(g)重合促進剤としての芳香族第二級アミンまたは第三アミンの配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常0.025〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.8重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%である。0.025重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方1.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
本発明のレジンセメントにおける(g)重合促進剤としての芳香族第二級アミンまたは第三アミンの配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常0.025〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.8重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%である。0.025重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方1.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
また、本発明のレジンセメントにおける(h)重合開始剤のうち化学重合開始剤としては、例えば、下記の有機過酸化物:過酸化ベンゾイル、4,4’−ジクロロ過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロ過酸化ベンゾイル、ジラウリルペルオキシド、過酸化メチルエチルケトン、t−ブチルペルオキシマレイン酸及びコハク酸及びペルオキシド等が挙げられるが、特に好適なものはt−ブチルペルオキシマレイン酸、ペルオキシコハク酸、及び4,4’−ジクロロ過酸化ベンゾイルである。
また、本発明のレジンセメントにおける(h)重合開始剤のうち光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアルミニウムクロリド、9,10−アントラキノン、カンファーキノン、ベンジル、4,4′−ジシクロベンジル、ジアセチル、(ビス)アシルホスフィンオキシド、モノアシルホスフィンオキシド類等の紫外線増感剤または可視光線増感剤等が挙げられる。
本発明のレジンセメントにおける(h)重合開始剤の配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常0.05〜2.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%である。0.05重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方2.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
本発明の歯科用レジンセメントに用いられる成分(f)は、硬化性、特に口腔内のような高湿潤の状況である水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上における硬化性を向上させるための必須の成分であり、下記式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーであれば何等制限なく用いることができる。成分(f)の配合量は、(d)ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、0.1〜20重量部であり、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の割合で含まれる。
本発明の歯科用レジンセメントは、(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーとして、2官能以下の(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まないことが好ましく、3官能以下の(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まないことがより好ましく、式(1)で示されず、かつ、(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まないことが最も好ましい。
式(1)で示される成分(f)を具体的に例示すると、下記式(2)及び(8)で示されるものがある。
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、互いに同じでも異なってもよい。)
(式中、Rは水素原子である。)
これらの中でも、上記式(2)で示される化合物であることが最も好ましい。
本発明のレジンセメントは、例えば第一のペーストと第二のペーストを混合して使用するが、混合した後、好ましくは100〜600秒で硬化するものである。硬化時間が100秒未満では作業に必要な時間がとれず、一方600秒を超えると患者の負担が大きくなる。
本発明のレジンセメントは、棚寿命安定剤として、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンまたはブチル化ヒドロキシトルエン等を含んでもよい。
本発明のレジンセメントが棚寿命安定剤を含む場合の配合量は、成分(f)以外の成分の全量に対して、通常0.02〜0.2重量%、好ましくは0.03〜0.06重量%である。0.02重量%未満の場合はペーストの棚寿命が不十分となり、一方0.2重量%を超えると十分な硬化が得られない。
本発明のレジンセメントは、ツーペースト型とすることができるものであり、第一のペーストと第二のペーストからなり、使用時に両者を混合することによってレジンセメントの効果を奏功し得るものである。第一のペーストと第二のペーストとの混合比は重量比にて通常1:7〜7:1、好ましくは1:4〜4:1、より好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは1:1である。
本発明のレジンセメントは、(b)重合触媒が(g)重合促進剤と(h)重合開始剤とからなる場合は、(g)重合促進剤と(h)重合開始剤とが混合すると硬化が始まるため、使用するまで分離したツーペースト形態とする必要がある。
よって、前記した成分を第一または第二のいずれかまたは両者に配合する場合は、両者の混合比に応じた割合の前記した配合量を配合することができる。
本発明のレジンセメントは、(b)重合触媒が(g)重合促進剤と(h)重合開始剤とからなる場合は、(g)重合促進剤と(h)重合開始剤とが混合すると硬化が始まるため、使用するまで分離したツーペースト形態とする必要がある。
よって、前記した成分を第一または第二のいずれかまたは両者に配合する場合は、両者の混合比に応じた割合の前記した配合量を配合することができる。
したがって、本発明は、1の形態において、
第一のペーストが(a)フィラー、(c)シランカップリング剤、及び(g)重合促進剤を含み、
第二のペーストが(e)酸性基含有モノマー、(a)フィラー及び(h)重合開始剤を含み、
(d)ラジカル重合性モノマー及び上記式(1)で示される(f)(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを、第一のペースト及び第二のペーストの一方または両方にそれぞれ含む、レジンセメントも提供する。
第一のペーストが(a)フィラー、(c)シランカップリング剤、及び(g)重合促進剤を含み、
第二のペーストが(e)酸性基含有モノマー、(a)フィラー及び(h)重合開始剤を含み、
(d)ラジカル重合性モノマー及び上記式(1)で示される(f)(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを、第一のペースト及び第二のペーストの一方または両方にそれぞれ含む、レジンセメントも提供する。
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例中に示した略称、略号、接着強さ測定方法は以下の通りである。
〔ラジカル重合性モノマー〕
・UDMA: ジ−2−メタクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルへキサメチレンジカルバメート
・3G: トリエチレングリコールジメタクリレート
・Bis-GMA: 2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
・2−HEMA
〔酸性基含有モノマー〕
・下記の一般式〔I〕で示される、ホスホン酸基を含む重合性単量体
〔ラジカル重合性モノマー〕
・UDMA: ジ−2−メタクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルへキサメチレンジカルバメート
・3G: トリエチレングリコールジメタクリレート
・Bis-GMA: 2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
・2−HEMA
〔酸性基含有モノマー〕
・下記の一般式〔I〕で示される、ホスホン酸基を含む重合性単量体
・2−MEP: 2−(メタクリロキシ)エチルホスフェート
・4−AET: 4−アクリロキシエチルトリメリット酸
・4−MET: 4−メタクリロキシエチルトリメリット酸
〔フィラー〕
・FASGフィラー: フルオロアルミノシリケートガラスフィラー
平均粒径1.8μm、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン8%シラン処理フィラー
・R−711: 超微粒子シリカフィラー
〔シランカップリング剤〕
・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
〔重合促進剤〕
・BBA・Na: 5−n−ブチルバルビツール酸ナトリウム塩
・DEPT: N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
〔重合開始剤〕
・BPO:過酸化ベンゾイル
・CQ: カンファーキノン
〔棚寿命安定剤〕
・BHT: ブチル化ヒドロキシトルエン
〔(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー〕
・FAM−401(富士フイルム株式会社製)
・FAM−201(富士フイルム株式会社製)
・4−AET: 4−アクリロキシエチルトリメリット酸
・4−MET: 4−メタクリロキシエチルトリメリット酸
〔フィラー〕
・FASGフィラー: フルオロアルミノシリケートガラスフィラー
平均粒径1.8μm、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン8%シラン処理フィラー
・R−711: 超微粒子シリカフィラー
〔シランカップリング剤〕
・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
〔重合促進剤〕
・BBA・Na: 5−n−ブチルバルビツール酸ナトリウム塩
・DEPT: N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
〔重合開始剤〕
・BPO:過酸化ベンゾイル
・CQ: カンファーキノン
〔棚寿命安定剤〕
・BHT: ブチル化ヒドロキシトルエン
〔(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー〕
・FAM−401(富士フイルム株式会社製)
・FAM−201(富士フイルム株式会社製)
(1)接着強度の測定方法
(i)エナメル質及び象牙質接着強度測定
歯質は人歯に換えて新鮮抜去牛前歯を用い、その歯根部を除去後エポキシ樹脂包埋して用いた。同牛歯の唇面を、耐水研磨紙を用いて流水下にて研磨し、エナメル質及び象牙質を露出させ、SiC600番研磨後、水洗後1週間水中保存を行った。一方、接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.15mm)は、その接着面を粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理し、水洗後、金属用プライマー「メタルリンク」〔株式会社松風製〕を塗布、10秒間自然乾燥させたものを用いた。SULZURMIXPAC社製ダブルシリンジに各々等量充填されたレジンセメントの第一のペーストと第二のペーストは、付属のスタティックミキサーを通過させることにより、練和されて押し出される。押し出されたペーストを歯質とステンレスロッドの間に介在させ、200gの荷重を加え接着させる。余剰ペーストを、マイクロブラシを用いて除去後、セメントラインに沿って、10秒間光照射を行う。光照射器は「グリップライトII」〔株式会社松風製〕を用いた。光照射の10分後荷重を除去し、同接着試験体(n=6)を37℃蒸留水中24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/minにて、歯質に対する剪断接着強度の測定を行った。
(i)エナメル質及び象牙質接着強度測定
歯質は人歯に換えて新鮮抜去牛前歯を用い、その歯根部を除去後エポキシ樹脂包埋して用いた。同牛歯の唇面を、耐水研磨紙を用いて流水下にて研磨し、エナメル質及び象牙質を露出させ、SiC600番研磨後、水洗後1週間水中保存を行った。一方、接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.15mm)は、その接着面を粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理し、水洗後、金属用プライマー「メタルリンク」〔株式会社松風製〕を塗布、10秒間自然乾燥させたものを用いた。SULZURMIXPAC社製ダブルシリンジに各々等量充填されたレジンセメントの第一のペーストと第二のペーストは、付属のスタティックミキサーを通過させることにより、練和されて押し出される。押し出されたペーストを歯質とステンレスロッドの間に介在させ、200gの荷重を加え接着させる。余剰ペーストを、マイクロブラシを用いて除去後、セメントラインに沿って、10秒間光照射を行う。光照射器は「グリップライトII」〔株式会社松風製〕を用いた。光照射の10分後荷重を除去し、同接着試験体(n=6)を37℃蒸留水中24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/minにて、歯質に対する剪断接着強度の測定を行った。
(ii)陶材接着強度測定
歯科用陶材「ヴィンテージハロー」〔株式会社松風製〕焼成物(φ11mm×8.5mm)の片方の平面をSiC600番研磨後、水洗し、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.1〜0.2MPa)後、水洗後1週間水中保存した。一方、接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.55mm)は、接着面を粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理し、水洗後、金属用プライマー「メタルリンク」〔株式会社松風製〕を塗布、10秒間自然乾燥させたものを用いた。接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.55mm)を用い、以下、(i)と同様の方法で、陶材に対する引張接着強度の測定を行った。
歯科用陶材「ヴィンテージハロー」〔株式会社松風製〕焼成物(φ11mm×8.5mm)の片方の平面をSiC600番研磨後、水洗し、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.1〜0.2MPa)後、水洗後1週間水中保存した。一方、接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.55mm)は、接着面を粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理し、水洗後、金属用プライマー「メタルリンク」〔株式会社松風製〕を塗布、10秒間自然乾燥させたものを用いた。接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.55mm)を用い、以下、(i)と同様の方法で、陶材に対する引張接着強度の測定を行った。
(iii)ジルコニア接着強度測定
日本ファインセラミックス株式会社製ジルコニア平板(15mm×15mm×1.8mm)の片方の平面をSiC600番研磨後、水洗後1週間水中保存、その後、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.2〜0.3MPa)後、水洗した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同一の方法にて、ジルコニアに対する引張接着強度の測定を行った。
日本ファインセラミックス株式会社製ジルコニア平板(15mm×15mm×1.8mm)の片方の平面をSiC600番研磨後、水洗後1週間水中保存、その後、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.2〜0.3MPa)後、水洗した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同一の方法にて、ジルコニアに対する引張接着強度の測定を行った。
(iv)コンポジットレジン接着強度測定
カバーグラス上に内径15mm、高さ2mmの金枠を置き、コンポジットレジン「セラマージュ」〔株式会社松風製〕のペーストを充填し、上下両面にカバーグラスを介して圧接後、一方のカバーグラス面を上にし、「ツイン重合器」〔株式会社松風製〕にて、3分間光照射した。底面をサンドブラスト処理(0.1〜0.2MPa)後、水洗後1週間水中保存した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同一の方法で、コンポジットレジンに対する引張接着強度の測定を行った。
カバーグラス上に内径15mm、高さ2mmの金枠を置き、コンポジットレジン「セラマージュ」〔株式会社松風製〕のペーストを充填し、上下両面にカバーグラスを介して圧接後、一方のカバーグラス面を上にし、「ツイン重合器」〔株式会社松風製〕にて、3分間光照射した。底面をサンドブラスト処理(0.1〜0.2MPa)後、水洗後1週間水中保存した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同一の方法で、コンポジットレジンに対する引張接着強度の測定を行った。
(v)金合金接着強度測定
金合金「スーパーゴールドタイプ4」〔株式会社松風製〕の平板(15mm×15mm×2.1mm)片面をSiC600番研磨後、水洗し、その後、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.4〜0.5MPa)し、水洗後1週間水中保存した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同様の方法にて、金合金に対する引張接着強度の測定を行った。
金合金「スーパーゴールドタイプ4」〔株式会社松風製〕の平板(15mm×15mm×2.1mm)片面をSiC600番研磨後、水洗し、その後、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.4〜0.5MPa)し、水洗後1週間水中保存した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同様の方法にて、金合金に対する引張接着強度の測定を行った。
(1)レジンセメントの製造
表2の組成に基づき、第一のペースト及び第二のペーストからなる実施例1〜5及び比較例1〜4のツーペースト型のレジンセメントを製造した。
表2の組成に基づき、第一のペースト及び第二のペーストからなる実施例1〜5及び比較例1〜4のツーペースト型のレジンセメントを製造した。
(2)レジンセメントの特性評価
〔接着強度〕
各レジンセメントについて、エアー乾燥していない歯牙(エナメル質及び象牙質)試験体に対する剪断接着強度及びジルコニア、陶材、コンポジットレジン及び金合金の各試験体に対する引張接着強度を測定した。測定結果を表2に示す。
〔接着強度〕
各レジンセメントについて、エアー乾燥していない歯牙(エナメル質及び象牙質)試験体に対する剪断接着強度及びジルコニア、陶材、コンポジットレジン及び金合金の各試験体に対する引張接着強度を測定した。測定結果を表2に示す。
表2に示すように実施例1〜5では、全ての剪断接着試験及び全ての引張接着試験において優れた結果となり、口腔内のような水分が過剰にある状態や、吸水した試験片上においても十分な硬化性を発揮し、臨床上使用できることが認められた。一方、比較例1〜4では、いずれの試験においても十分な結果が得られず、口腔内のような水分が過剰にある状態や、吸水した試験片上での実用性が認められなかった。
本発明によれば、種々の被着体に応じたプライマーで処理することなく、吸水した試験片や、水分が過剰にある状態でも接着強度に優れた歯科材料を提供することができる。
Claims (4)
- 式(2)におけるRが全て水素原子である請求項2の歯科用レジンセメント。
- 前記式(1)で示されず、かつ、(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まない請求項1〜3のいずれかの歯科用レジンセメント。
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