JP4818615B2 - X線造影性歯科用接着性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は修復材料、歯冠材料、補綴材料、予防材料、支台築造材料、根管材料等の歯科用材料をセラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント、生体硬組織(天然歯牙のエナメル質や象牙質)等に接着するための歯科分野で用いられる歯科用接着性組成物であり、優れた操作性、接着特性、X線造影性及び色調適合性を有した歯科用接着性組成物に関する。
近年コンポジットレジンが有する長期的な耐久性や機械的特性が飛躍的に向上し、さらにフッ素徐放性やX線造影性等の種々の特性を有してきたこと及びボンディング材がエナメル質・象牙質の両者に対してコンポジットレジンを強固に接着できる特性を有してきたことから、これらの材料を用いた修復処置が日常の臨床において主として行われるようになってきた。これらの材料は可能な限り健全歯質を削らずにう蝕部分のみを最小限に除去した小さな窩洞で修復処置を行うことができることから、健全な歯質をできるだけ保存することができる。また金属材料を用いた場合と比較して、これらの材料は天然歯質と類似の色調を発現させることもできることが特徴であった。
これらの材料が臨床に応用されるに従い、う蝕部除去後の窩洞形態は小さくなってきているものの、窩洞形態や窩洞内部の状態は凹凸部分や狭窄部分がある等、複雑化してきている傾向がある。この形成した複雑な窩洞にボンディング材処理後、ペースト状のコンポジットレジンを填入するが、その時インスツルメント等を用いて十分に圧接し窩洞内壁に密着させなければ、歯質と修復物との界面において間隙が存在する可能性がある。そのため修復処置直後における修復物と窩洞内壁との適合性を確認するための手段としてレントゲン撮影によるX線写真観察が行われている。また、このレントゲン撮影によるX線写真観察は患者が修復処置した部位に咬合痛や冷痛等を訴えて来院した時に修復物と歯質との界面における二次う蝕の発生等を確認する手段としてもしばしば行われている。
以上のように、修復処置直後の窩洞内における修復物の充填状態や修復処置後、一定期間経過した時の二次う蝕の発生状況等を的確に確認及び判断するためには、歯質に充填された修復物とその周囲の歯質がX線写真上で明確に識別できることが必要である。そのためには修復処置を行う時に用いる材料はX線造影性を有していることが必要不可欠であり、その程度も高いレベルが求められる。
コンポジットレジン等の修復材料にX線造影性を付与するためにはその構成成分である重合性単量体等の有機成分及び/又は充填材等の無機成分がX線造影性能を有していなければならず、これらに関する多くの報告が開示されている。
例えば、重合性単量体等の有機成分にX線造影性を付与した修復材料として、特開平8-208417号公報には臭素化又はヨウ素化したアクリレート系又はメタクリレート系モノマーを含む歯科用組成物、特許第2807641号明細書にはヨウ素置換安息香酸エステルまたはアミドである安息香酸誘導体を用いた歯科用材料をそれぞれ開示している。
また、充填材等の無機成分にX線造影性を付与した修復材料として、特公平3-17803号公報には放射線不透過性の成分として希土類金属のフッ化物を含有した歯科用修復材、特許第2572060号明細書にはフッ化ストロンチウムを含有する歯科修復材料、特公第2966018号明細書にはX線造影性元素として酸化バリウムを含有したガラスを含む歯科用複合修復材、特許昭58-21887号公報にはランタン、ハフニウム、ストロンチウム、タンタルの酸化物及び炭酸塩を融成の時点で選択されたガラス充填剤を含む歯科用充填組成物、特開平7-206470号公報にはX線造影性を付与する構成元素としてストトンチウムとバリウムを含み、特定のガラス組成範囲を有したガラスを含む歯科用材料等をそれぞれ開示している。
これらの報告はいずれもX線造影性を有したコンポジットレジン等の修復材料に関するものであり、これらの修復材料をレントゲン撮影によりX線写真観察を行った場合、修復材料がX線造影性を有しているために歯質と同程度に白く写る。しかし、これらの修復材料は歯質接着性を有していないことから、う蝕部分の除去後に修復処置を行うためには必ずボンディング材等の接着材を用いて形成した窩洞内壁を均一に処理した後にコンポジットレジン等の修復材料を充填・硬化させる必要がある。現在市販されているボンディング材等の接着材はX線造影性を有していないことから、修復部位のレントゲン撮影によるX線写真観察において修復材料はX線造影性を有しているために明確に歯質と識別できるものの、X線造影性を有していない接着材の層は黒く抜け落ちて見える状況にある。そのため充填時に発生した圧接不足による間隙の存在や二次う蝕の発生と誤認することもしばしばあり、接着材がX線造影性を有していないことが修復処置直後における修復状況の確認や予後における経過的な診査・診断等を行う上では大きな問題があった。
接着材にX線造影性を付与するためには前述のX線造影性を有する有機成分や無機成分を接着材中に含むことによりX線造影性を付与することは容易に可能である。しかし、接着材に求められる特性はX線造影性だけでなく、修復材料、歯冠材料、補綴材料、予防材料、支台築造材料、根管材料等の歯科用材料であるセラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント等を生体硬組織(天然歯牙のエナメル質や象牙質)に接着するための接着特性や種々の歯科用材料の審美性を阻害しない半透明性等の多くの特性が必要である。
特開平8-208417号公報及び特許第2807641号明細書に記載されているようなX線遮断能を有する元素である臭素又はヨウ素を分子内に含んだモノマーを接着材に配合した場合、ある一定レベルのX線造影性を得ることができるものの、それらの元素の影響により他の重合性モノマーの重合が阻害されるために、確実な接着特性が得られない。そのため配合量を少なくする必要があるが、少ない配合量ではレントゲン撮影後のX線写真観察において明確に識別できるX線造影性の実現は期待できない。
一方、特許平3-17803号公報、特公第2572060号明細書、特公第2966018号明細書、特許昭58-21887号明細書、特開平7-206470号明細書等に記載されているようなX線造影性を有する充填材等の無機成分は高いレベルのX線造影性に発現させるために重金属等の元素を含んでいる。しかし、充填材が重金属を含むことにより、充填材の屈折率が高くなったり、又は充填材が結晶構造を有していたりする傾向がある。これらの充填材を接着材に配合した場合、モノマーと充填材との屈折率差や結晶構造の存在等から接着材内部で光の散乱が生じるために接着材が不透明になる。最近ではMIの概念に基づきう蝕部を除去して形成した窩洞の形態が小さく、そして浅くなってきていることから、修復物の下層に位置する接着材が不透明な場合は意図する修復材料の色調を再現することができず、審美性を阻害する恐れがある。また、これらの充填材を接着材に多量配合した場合は高いレベルのX線造影性を発現するものの、接着材の液粘度が上昇するために容器からの滴下や形成した窩洞内壁への塗布等の操作性に問題が生じ、その結果接着特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
以上のことから、修復材料、歯冠材料、補綴材料、予防材料、支台築造材料、根管材料等の歯科用材料であるセラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント等を生体硬組織(天然歯牙のエナメル質や象牙質)に強固に接着さすことができるとともに、それらの歯科用材料の審美性を阻害することなく審美的な修復を行うことができ、また修復処置直後における修復状況の確認や予後の経過的な検査・診断等を正確に行うことができる高いレベルのX線造影性を有した歯科用接着性組成物が望まれていた。
特開平8-208417号公報 特許第2807641号明細書 特公平3-17803号公報 特許第2572060号明細書 特許第2966018号明細書 特公昭58-21887号公報 特開平7-206470号公報
そこで本発明は修復材料、歯冠材料、補綴材料、予防材料、支台築造材料、根管材料等の歯科分野で用いられる歯科用材料であるセラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント等を生体硬組織(天然歯牙のエナメル質や象牙質)に強固に接着させることができる優れた接着特性とレントゲン撮影後のX線写真観察にて明確に識別することができる高いレベルのX線造影性を有しており、また接着させる種々の歯科用材料の審美性を阻害することなく、審美的な修復に用いることができる歯科用接着性組成物を提供する。
本発明は(a)屈折率が1.50〜1.70の範囲で、且つその平均粒子径が0.01〜10.0μmの範囲にあるX線造影性ガラスフィラー、(b)親水性重合性単量体と(c)疎水性重合性単量体を含む重合性単量体、(d)重合触媒、を含む歯科用接着性組成物であり、
X線造影性ガラスフィラーの屈折率(Nf)と重合性単量体のマトリックス成分の屈折率(Nm)が硬化前において、Nf−0.07≦Nm≦Nf+0.01の状態であり、
硬化後においてコントラスト比(C)が0.10〜0.55の範囲であることを特徴とする歯科用接着性組成物である。
検討した結果、(a-1)屈折率(Nf)が1.50〜1.70の範囲で、且つその平均粒子径が0.01〜10.0μmの範囲にあるX線造影性ガラスフィラー及び/又は
(a-2)屈折率(Nf)が1.50〜1.70の範囲で、且つその平均粒子径が0.01〜10.0μmの範囲にあるX線造影性ガラスフィラーを用いて加工したフィラー
(b)親水性重合性単量体
(c)疎水性重合性単量体
(d)重合触媒
からなる歯科用接着性組成物であり、
X線造影性ガラスフィラーの屈折率(Nf)とマトリックス成分との屈折率(Nm)が硬化前において
Nf−0.07≦Nm≦Nf+0.01の関係にあり、
硬化した歯科用接着性組成物のコントラスト比(C)が0.10〜0.55の範囲であることを特徴とする歯科用接着性組成物を完成するに至った。
本発明は歯科用接着性組成物に(e)水及び/又は(f)有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1記載の歯科用接着性組成物である。
特定のX線造影性ガラスフィラー及び/又はこのガラスフィラーを加工したフィラーを含む歯科用接着性組成物において、硬化前におけるX線造影性ガラスフィラーの屈折率(Nf)とマトリックス成分との屈折率(Nm)がNf−0.07≦Nm≦Nf+0.01の位置関係にあり、硬化した歯科用接着性組成物のコントラスト比(C)が0.10〜0.55の範囲にあることによって、優れた接着特性と高いレベルのX線造影性を有し、且つ接着させる種々の歯科用材料の審美性を阻害することがない、優れた色調適合性をも有することが認められる。
本発明の歯科用接着性組成物はX線造影性を有していることから、レントゲン撮影におけるX線写真観察において明確に歯質等と識別することができ、そのため修復処置直後における修復状況の確認や予後の経過的な検査・診断を正確に行うことができる。
X線造影性ガラスフィラーに含むことができるX線遮断能を有する元素を具体的に例示すると周期律表第四周期のクロム、鉄、及び亜鉛、周期律表第5周期のストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、錫、及びテルル、周期律表第六周期のバリウム、ランタン、イッテリビウム、タンタル、タングステン、及びビスマス等の元素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもX線造影性ガラスフィラーに含まれる好ましいX線遮断能を有する元素としてはストロンチウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、チタン等が挙げられる。
X線遮断能を有した元素の含有はX線造影性ガラスフィラーの屈折率に影響を与える。そのためX線造影性ガラスフィラー中に含まれるX線遮断能を有する元素の含有量は10重量部〜50重量部の範囲が好ましく、より好ましくは20重量部〜40重量部の範囲である。X線造影性ガラスフィラー中に含まれるX線遮断能を有する元素の含有量が50重量部を越えると、X線造影性ガラスフィラーの屈折率が高くなるために、歯科用接着性組成物中にX線造影性ガラスフィラーと共に配合されている他の成分との屈折率差が生じて、歯科用接着性組成物が不透明になり、接着させる歯科用材料の審美性を阻害する恐れがある。一方、X線造影性ガラスフィラー中に含まれるX線遮断能を有する元素の含有量が10重量部未満になると、X線造影性ガラスフィラーの屈折率が低くなることから、X線造影性ガラスフィラーを配合した歯科用接着性組成物の透明性には悪影響を与えないものの、X線遮断能を有する元素の含有量が少ないために十分なX線造影性を得ることができない。
十分なX線造影性を歯科用接着性組成物に付与するためには、X線造影性ガラスフィラーの配合量を高める必要がある。しかし、配合量が高くなると歯科用接着性組成物の液粘度が上昇することから、容器からの滴下や形成した窩洞内壁への塗布等の操作性や接着特性に問題が生じる可能性もある。
X線造影性ガラスフィラー中にフッ素を含有させることにより、X線造影性ガラスフィラーの屈折率を減少させる効果があることから、X線造影性ガラスフィラー中にフッ素を含有させることは好ましい態様である。
X線造影性ガラスフィラーを配合した歯科用接着性組成物が歯科用材料の審美性を阻害しない程度の半透明性を維持するためには少なくともX線造影性ガラスフィラーの屈折率が1.50〜1.70の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.60の範囲にあることである。屈折率が1.50未満又は1.70を越えるX線造影性ガラスフィラーを歯科用接着性組成物に配合した場合、歯科用接着性組成物が不透明になり、接着させる種々の歯科用材料の審美性を阻害する原因となる。
X線造影性ガラスフィラーは結晶構造を有していないことがより好ましい態様である。「結晶構造を有していない」という意味はX線回折分析にて結晶構造に基づく結晶ピークが認められないことを示す。透過型電子顕微鏡等を用いた場合には微細的な構造観察により結晶構造を確認できることもある。
X線造影性ガラスフィラーの製造方法は特に限定されないが、溶融法又はゾルーゲル法により製造されたX線造影性ガラスフィラーが好ましい態様である。
X線造影性ガラスフィラーを具体的に例示するとX線遮断能を有する元素を含んだアルミノシリケートガラス、ボロシリケート、アルミノボレート、ボロアルミノシリケートガラス及びシリカガラス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。より好ましいX線造影性ガラスフィラーとしては、フッ素とともにストロンチウム、バリウム、ランタン、ジルコニア、チタンの内の1つ以上を含んだアルミノシリケートガラス、ボロシリケート、アルミノボレート、ボロアルミノシリケートガラス及びシリカガラス等が挙げられる。これらは単独又は複数を組み合わせて歯科用接着性組成物中に配合することもできる。
粉砕方法に関しては特に限定されない。具体的にはハンマーミルやターボミル等の高速回転ミル、ボールミルや振動ミル等の容器駆動媒体ミル、サンドグラインダーやアトライター等の媒体撹拌ミル、ジェットミル等が挙げられ、必要なX線造影性ガラスフィラーの平均粒子径に応じて適宜選定することができる。X線造影性ガラスフィラーの平均粒子径は0.01μm〜10.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5.0μmの範囲である。X線造影性ガラスフィラーの平均粒子径が0.01μm未満の場合、単位重量あたりの表面積が大きくなるために歯科用接着性組成物中への配合量を高めることができず、歯科用接着性組成物に十分なX線造影性を付与することができない。一方、X線造影性ガラスフィラーの平均粒子径が10.0μmを越える場合は、比重との関係もあるが歯科用接着性組成物中で沈降や相分離が起こり、安定した性能を発現できなくなる。
X線造影性ガラスフィラーの形状は特に限定されずに球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状でもよく何等制限なく用いることができる。
また、前述の平均粒子径範囲内にあるX線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行った種々のフィラーも歯科用接着性組成物に何等制限なく配合することができる。これらの二次的な加工を行った種々のフィラーは二次的な加工を行っていないX線造影性ガラスフィラーと組合わせて、歯科用接着性組成物に配合することもできる。
X線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行う方法は特に限定されず、いかなる加工方法により加工された種々のフィラーでも用いることができる。X線造影性ガラスフィラーを用いて加工された種々のフィラーとして具体的に例示するとX線造影性ガラスフィラーを液相中又は気相中等で凝集させ、その後熱処理した凝集フィラー及びX線造影性ガラスフィラーの表面を有機物でのマイクロカプセル化やグラフト化する方法、X線造影性ガラスフィラーの表面に重合性官能基や重合性開始基を導入後ラジカル重合させる方法、X線造影性ガラスフィラーを含む重合体バルクを粉砕する方法等の有機−無機複合フィラー等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、またこれらの種々のフィラーを組合わせて用いることもできる。
これらの二次的な加工を行った種々のフィラーの平均粒子径は特に限定されず、任意の平均粒子径のものが使用することができる。
これらのX線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行った種々のフィラーを配合する歯科用接着性組成物に優れた諸特性を付与する又は他の目的で、これらのフィラーの表面を表面処理剤及び/又は表面処理法により多機能化することも好ましい態様であり、表面処理剤及び/又は表面処理法により多機能化したこれらのフィラーも何等制限なく歯科用接着性組成物に用いることができる。この時に用いることができる表面処理剤として具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ポリシロキサン等が挙げられ、一方表面処理方法を具体的に例示するとフィラーを流動させた状態で上部から表面処理剤を噴霧する方法、表面処理剤を含んだ溶液中にフィラーを分散させる方法及びフィラー表面に数種類の表面処理剤を多層処理する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの表面処理剤や表面処理方法はそれぞれ単独で又は複合的に組み合わせて行うことができる。
これらの表面処理剤及び/又は表面処理方法の中でも、オルガノシラン化合物によりX線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行った種々のフィラーの表面を改質するシラン処理は種々の重合性単量体との濡れ性を向上させて、歯科用接着性組成物中へのフィラー含有量を高充填化し、歯科用接着性組成物の材料強度を高めることができる上で好ましい態様である。
このシラン処理に用いることができるオルガノシラン化合物を具体的に例示すると、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 これらのオルガノシロキサン化合物の中でも歯科分野でシランカップリング剤として公知の化合物であるビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニル(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を用いることが効果的であり、より好ましくはγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。これらのオルガノシラン化合物は単独で、または複数併用して使用することができる。
また、X線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行った種々のフィラーの表面をポリシロキサンによりコーティングするポリシロキサン処理においても歯科用接着性組成物の材料強度を高めることができる上で好ましい態様である。
このポリシロキサン処理に用いることができるシラン化合物を具体的に例示すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)シラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリイソプロポキシクロロシラン、トリメトキシヒドロキシシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン、水酸化ケイ素(酸化ケイ素水和物)及びそれらシラン化合物の低縮合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのシラン化合物の中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのシラン化合物の低縮合体が好ましく、より好ましくはテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランの低縮合体である。これらのシラン化合物は単独で、または複数を併用して使用することができ、またシラン化合物の一部として後で記載するオルガノシラン化合物を使用することもできる。
これらのX線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行った種々のフィラーを歯科用接着性組成物中に多く配合することがX線造影性を付与する観点からは好ましい態様である。しかし、配合量が多すぎると接着性が低下したり、操作性において問題が生じる可能性がある。一方、これらのX線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行った種々のフィラーの配合量が少なすぎると十分なX線造影性が得られない。
そのため、歯科用接着性組成物に求められる諸特性を維持した上で、十分なX線造影性を歯科用接着性組成物に付与するためにはX線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを用いて二次的な加工を行った種々のフィラーの配合量をX線造影性ガラスフィラー換算で歯科用接着性組成物100重量部に対して20〜80重量部の範囲で含んでいることが好ましく、より好ましく30〜70重量部の範囲である。
本発明の歯科用接着性組成物に用いることができる(b)成分の親水性重合性単量体は歯科用接着性組成物に配合することにより、接着する界面に対する浸透性やぬれ性が向上し、接着性を増強させる効果がある。親水性重合性単量体は親水性を示す重合性単量体であれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性又は多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。親水性重合性単量体が有するラジカル重合可能な不飽和基の種類としては(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、特に(メタ)アクリロイル基を不飽和基として有している親水性重合性単量体を用いることが好ましい。さらにこれらの親水性重合性単量体は、親水性を示すものであれば、分子内にカルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基及びスルホン酸基等の酸性基やアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもできる。
ここで言う「親水性重合性単量体」とは23℃の水100重量部に対する溶解性が10重量部以上である重合性単量体を親水性重合性単量体と定義される。つまりサンプル瓶中で23℃に保った水100g中に重合性単量体10gを加えて10分間撹拌した後、放置する。10分間経過後、サンプル瓶中で混合した混合物を観察した時、混合物が均一に透明又は半透明に溶解する重合性単量体を親水性重合性単量体とした。
親水性重合性単量体の中でもラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性重合性単量体を具体的に例示すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリルクロライド、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9以上のもの)等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの親水性重合性単量体は単独で、もしくは複数を組み合わせて使用することができる。
これら親水性重合性単量体の中でも23℃の水100重量部に対する溶解性が20重量部以上であるものが好ましく、より好ましくは23℃の水100重量部に対する溶解性が40重量部以上であるものを用いることである。それらを具体的に例示すると2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9のもの)、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が14のもの)、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が23のもの)等が挙げられる。
これらの親水性重合性単量体が歯科用接着性組成物に配合される量は歯科用接着性組成物中に含まれる(b)成分である親水性重合性単量体と(c)成分である疎水性重合性単量体の合計重量100重量部に対して10〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは20〜60重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
本発明の歯科用接着性組成物に用いることができる(c)成分の疎水性重合性単量体としては疎水性を示す重合性単量体であれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性又は多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。疎水性重合性単量体が有するラジカル重合可能な不飽和基の種類としては(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、特に(メタ)アクリロイル基を不飽和基として有している疎水性重合性単量体を用いることが好ましい。さらにこれらの疎水性重合性単量体は、疎水性を示すものであれば、分子内にカルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基及びスルホン酸基等の酸性基やアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもできる。
ここで言う「疎水性重合性単量体」とは23℃の水100重量部に対する溶解性が10重量部未満である重合性単量体を疎水性重合性単量体と定義する。つまりサンプル瓶中で23℃に保った水100g中に重合性単量体10gを加えて10分間撹拌した後、放置する。10分間経過後、サンプル瓶中で混合した混合物を観察した時、混合物が相分離する重合性単量体を疎水性重合性単量体とした。
疎水性重合性単量体の中でもラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である疎水性重合性単量体を具体的に例示すると
単官能基含有の疎水性重合性単量体としてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等の窒素含有化合物等が挙げられる。
芳香族系二官能基含有の疎水性重合性単量体としては2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
脂肪族系二官能基含有の疎水性重合性単量体としてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート等が挙げられる。
脂肪族系三官能基含有の疎水性重合性単量体としてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂肪族系四官能基含有の疎水性重合性単量体としてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
また、ウレタン系の疎水性重合性単量体として具体的に例示すると
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロー2−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する重合性単量体とメチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能または三官能以上の重合性基を有し、且つウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、(メタ)アクリレート基を含有しているものであれば主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー及びポリマー等も何等制限なく使用することができる。
上記記載の疎水性重合性単量体はこれらに限定されるものではなく、また単独又は複数を組み合わせて用いることもできる。
これらの疎水性重合性単量体の中でも23℃の水100重量部に対する溶解性が5重量部未満であるものが好ましく、より好ましくは23℃の水100重量部に対する溶解性が1重量部未満であり、具体的には2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis‐GMA)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン(D‐2.6E)、ジ(メタクリロイルオキシ)−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジウレタン(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を用いることが好ましい。
これらの疎水性重合性単量体が歯科用接着性組成物に配合される量は歯科用接着性組成物中に含まれる(b)成分である親水性重合性単量体と(c)成分である疎水性重合性単量体の合計重量100重量部に対して10〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは40〜80重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
本発明の歯科用接着性組成物を単独で又は他の処理材と組み合わせて使用する際に、その接着性をさらに増強させるためには酸性基含有重合性単量体を少なくとも1種以上を歯科用接着性組成物に配合することが好ましい態様である。
また、酸性基含有重合性単量体が有する酸性基の種類は特に限定されず、いずれの酸性基を有する酸性基含有重合性単量体であっても用いることができる。酸性基含有重合性単量体が有する酸性基を具体的に例示すると、リン酸基、ピロリン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、チオリン酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、酸性基含有重合性単量体が有するラジカル重合可能な不飽和基の数(単官能性基又は多官能性基)やその種類においても何等制限なく用いることができる。酸性基含有重合性単量体が有する不飽和基を具体的に例示すると(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、これら不飽和基の中でも(メタ)アクリロイル基を有している酸性基含有重合性単量体であることが好ましい。
さらにこれらの酸性基含有重合性単量体は、分子内にアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもできる。
不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した酸性基含有重合体を具体的に例示すると以下の通りである。
リン酸エステルを有する酸性基含有重合性単量体としては、
(メタ)アクリロイルオキシメチルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシブチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキシルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシオクチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシノニルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシデシルハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート等の酸性基含有重合性単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ピロリン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、
ピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ジ〔3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル〕、ピロリン酸ジ〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ジ〔7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチル〕、ピロリン酸ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ジ〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕、ピロリン酸ジ〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル〕、ピロリン酸テトラ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸トリ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の酸性基含有重合性単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、カルボン酸基を有する重合性単量体としては、
(メタ)アクリル酸、2−クロロ(メタ)アクリル酸、3−クロロ(メタ)アクリル酸、2−シアノ(メタ)アクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、1−ブテン1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン1,2,3−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ−ト、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエ−ト、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸
4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸およびこれらの酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等の酸性基含有重合性単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ホスホン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、
5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネ−ト、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテ−ト、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテ−ト等の酸性基含有重合性単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、スルホン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、
2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレ−ト、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等の酸性基含有重合性単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、チオリン酸基を有する酸性基含有重合性単量体としては、
10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンジチオホスフェ−ト等の酸性基含有重合性単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上に酸性基含有重合性単量体を示したが、これらに限定されるものではなく、またこれらの酸性基を有した重合性単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。さらに酸性基含有重合性単量体は主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー、及びポリマー等も何等制限なく用いることができる。
酸性基含有重合性単量体が有する酸性基を部分的に中和された金属塩やアンモニウム塩又は酸塩化物等の酸性基含有重合性単量体の誘導体も種々の被着体への接着性に悪影響を与えない程度であれば用いることができる。
これらの酸性基含有重合性単量体の中でも10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェ−ト、6−メタクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物、4−アクリロイルオキシエチルトリメリット酸およびその無水物等を用いることが好ましい。これらの酸性基含有重合性単量体は歯科用接着性組成物の使用用途又は使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.1〜20.0重量部の範囲である。これら酸性基含有重合性単量体の含有量が10.0重量部を越えると他の重合性単量体の重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、酸性基含有重合性単量体の含有量が0.1重量部未満になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
本発明の歯科用接着性組成物に貴金属に対する接着性を付与するためには、分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体を使用することも本発明にとって有効である。分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体であれば、不飽和基の種類や数及びその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。
不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体を具体的に例示するとトリアジンチオール基を有する(メタ)アクリレート、メルカプト基を有する(メタ)アクリレート、ポリスルフィド基を有する(メタ)アクリレート、チオリン酸基を有する(メタ)アクリレート、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリレート、メルカプトジアチアゾール基を(メタ)アクリレート、チオウラシル基を有する(メタ)アクリレート、チイラン基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。この分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体は本発明の歯科用接着性組成物の使用用途又は使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.1〜10.0重量部の範囲である。これらの分子内に硫黄原子を含有した重合性単量体の含有量が10.0重量部を越えると他の重合性単量体の重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、この重合単量体の含有量が0.1重量部未満になると貴金属に対して十分な接着性を得ることができない。
本発明の歯科用接着性組成物に用いることができる(d)成分の重合触媒は特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。重合触媒の種類としては一般に使用直前に混合することにより重合を開始させるもの(化学重合触媒)、加熱や加温により重合を開始させるもの(熱重合触媒)、光照射により重合を開始させるもの(光重合触媒)に大別されるが、いずれも単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
前述の化学重合触媒としては、有機過酸化物/アミン化合物または有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合触媒系、酸素や水と反応して重合を開始する有機ホウ素化合物類、過硼酸塩類、過マンガン酸塩類、過硫酸塩類等の重合触媒系が挙げられ、さらにスルフィン酸塩類、ボレート化合物類及びバルビツール酸類も水及び/又は酸性基を有する重合性単量体と共存させることにより重合を開始させることもできる。
有機過酸化物を具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記有機過酸化物を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
アミン化合物としては、アミン基がアリール基に結合した第2級または第三級アミンが好ましく、具体的に例示するとN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−β−ヒドロキシエチル−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチル−アニリン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記アミン化合物を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
スルフィン酸塩類として具体的に例示すると、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記スルフィン酸塩類を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
ボレート化合物として具体的に例示すると、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記ボレート化合物を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
バルビツール酸類として具体的に例示すると、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3―ジメチル―バルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸およびチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属類が好ましい)、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウムおよび1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記バルビツール酸類を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
本発明の歯科用接着性組成物を単独で使用する場合はこれらの化学重合触媒を少なくとも二つ以上の包装形態に分割して含ませる必要がある。また、本発明の歯科用接着性組成物を他の処理材ともに使用する場合は歯科用接着性組成物が他の処理材と接触することにより化学重合が開始するように化学重合触媒を本発明の歯科用接着性組成物と他の処理材の両方にそれぞれ含ませることもできる。
これらの化学重合触媒の中でも、スルフィン酸塩類、バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン等をそれぞれ単独又は組合わせて用いることが好ましく、より好ましくは有機過酸化物−第3級アミン、有機過酸化物−第3級アミン−バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン−スルフィン酸塩類を用いることである。
これらの化学重合触媒は歯科用接着性組成物100重量部に対して0〜15.0重量部の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量部の範囲で含有することである。
光重合触媒としては、光増感剤のみの系からなるもの又は光増感剤/光重合促進剤の組み合わせからなるもの等が挙げられる。
また上記光増感剤としては紫外線により重合が開始するものと可視光線により重合が開始するものに大別される。
光重合触媒として用いることができる光増感剤を具体的に例示すると、
ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、アセトインベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2−ベンジル―ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル―ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα-アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル]−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記光増感剤を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
光重合触媒として用いることができる光重合促進剤を具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、
p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン等の第2級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記光重合促進剤を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
さらに、光重合促進能の向上のために、上記光重合促進剤に加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類を添加することが効果的である。
また、光重合触媒を用いる場合は一つの包装形態又は二つ以上に分割された包装形態であっても特に制限はない。これらの光重合触媒の中でも、α−ジケトンと第三級アミン又はα−ジケトンとスズ化合物類の組み合わせが好ましく、より好ましくはカンファーキノンとp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミノ基がベンゼン環に直結した芳香族第三級アミン又はN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の分子内に二重結合を有した脂肪族第三級アミン等の組み合わせ、さらにはカンファーキノンとジブチルスズジラウレートやジオクチルスズジラウレート等のスズ化合物類の組み合わせである。これらの光重合触媒の含有量はそれぞれの歯科用接着性組成物100重量部に対して0.1〜15.0重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量部の範囲で含有することである。最も好ましくは0.1〜8.0重量部の範囲で含有することである。
また加熱や加温による熱重合触媒としては、上記有機過酸化物の他にアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用されるが、これに限定されるものではない。また、これらの熱重合触媒を単独又は数種を組み合わせて用いることもできる。
さらに、使用用途に応じて他に、クマリン系、シアニン系、チアジン系等の増感色素類、ハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体、ジフェニルヨードニウム塩化合物等の光照射によりブレンステッド酸またはルイス酸を生成する光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等も適宜使用することができる。
本発明の歯科用接着性組成物には(a)X線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを加工したフィラー、(b)親水性重合性単量体、(c)疎水性重合性単量体及び(d)重合触媒の成分以外に、(e)水及び/又は(f)有機溶媒を含むことができる。
(e)成分である水が歯科用接着性組成物中において酸性基含有重合性単量体と共に配合される場合、水の存在によって酸性基含有重合性単量体の分子内にある酸性基がイオン解離及び活性化し、歯質に存在するカルシウム等の金属元素や他の被着体に含まれる金属元素とキレート結合して接着性を向上又は増強させることができる。
さらに(e)成分である水が歯科用接着性組成物中において酸性基含有重合性単量体と共に酸反応性フィラーも配合される場合は、水の存在によって酸性基含有重合性単量体の分子内にある酸性基がイオン解離及び活性化し、前述した歯質や被着体に対して接着性を向上又は増強させるだけでなく、酸反応性フィラーに含まれる金属元素である酸反応性元素ともキレート結合(酸−塩基反応)して、重合触媒とともに歯科用接着性組成物の硬化性を向上させることができる。
そのため水は歯科用接着性組成物の重合性(硬化性)や歯質又は被着体への接着性に対して悪影響を及ぼすような不純物を含有していないものであれば何等制限なく使用することができる。好ましくは蒸留水又はイオン交換水を使用することである。
上記に記載した酸性基含有重合性単量体は既に記載したものと同一であっても、又は異なっていても特に問題はなく、歯科用接着性組成物中に配合することができる。また歯科用接着性組成物が有する諸特性に悪影響を及ぼさない程度であれば、酸性基含有重合性単量体の代わり、又はその一部として酸性基含有重合性単量体の重合体も配合することもできる。
上記に記載した酸反応性フィラーはそのフィラー中に周期律表第1族、第2族及び第3族に属する金属元素である酸反応性元素を少なくとも1種又は2種以上を含んでいるものであれば何等制限なく用いることができ、またこれらの含有量も特に限定されない。その酸反応性フィラーに含まれる酸反応性元素を具体的に例示するとナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、ランタン、アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに酸反応性フィラーに含まれる酸反応性元素以外の元素の種類及び含有量についても特に制限はない。つまり、酸反応性フィラーは酸反応性元素を含むものであれば、その酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硅酸塩、フッ化物、窒化物、鉱物、ガラス等であっても何等制限されることなく用いることができる。これらの酸反応性フィラーを具体的に例示すると、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム、ガラス(溶融法によるガラス、気相反応により生成したガラス、ゾルゲル法による合成ガラスなどを含む)、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、チッ化アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの酸反応性フィラーは水に対して不溶性、難溶性、易溶性等のいずれの性質を示すものであっても何等問題なく、また酸反応性フィラーの形状も特に限定されずに球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状のものを何等制限なく用いることができる。さらに酸反応性フィラーは単独又は数種を組み合わせて用いることができる。
また、(f)成分である有機溶媒は歯科用接着性組成物中に配合される酸性基含有重合単量体を含む種々の重合性単量体、重合触媒及びその他の配合成分を任意の割合で相溶させる溶解促進材的な役割があるとともに、歯科用接着性組成物の液粘度を低下させ、容器からの滴下や接着させる部位への塗布等の操作性を向上させることができる。歯科用接着性組成物中に配合されるこの有機溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノ−ル等のアルコール類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物類等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではなく何等制限なく使用することができる。また、これらの有機溶媒は単独又は数種を組み合わせて用いることができる。
これらの有機溶媒の中でも水溶性の有機溶媒であるメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン等が好ましく、より好ましくはアセトン、エタノールである。
しかし、これらの水及び有機溶媒は歯科用接着性組成物に存在すると、歯科用接着性組成物に含まれる重合性成分の重合を阻害して、接着性や機械的特性の低下を引き起こす原因となる。そのため歯科用接着性組成物を修復する部位に適用後、重合前及び/又は重合過程において気銃等により十分乾燥して水及び有機溶媒を揮発させる必要がある。そのため硬化後の歯科用接着性組成物中おいては実質的に水及び有機溶媒を含んでいないことから、後述するマトリックス成分としての構成成分には含まれない。
歯科分野において歯質、人工歯、ポーセレン、硬質レジン等の歯科用材料の色調を測色して数値化する方法として種々の表色系が用いられている一方で、歯科用材料における不透明性を数値化する方法としてはJISZ8701に規定されたXYZ表色系における三刺激値の中の明るさに関するY値を用いたコントラスト比(C)がある。
コントラスト比(C)はある一定厚みの円板状試験体を標準白色背景又は標準黒色背景上にそれぞれ置き、一定条件下(光源、照射面積等)で照明して、白色背景の明るさ(Yw)及び黒色背景の明るさ(Yb)をそれぞれ測定し、特定の式からコントラスト比(C)を算出している。コントラスト比(C)は試験体厚みの影響を受けることから、より正確なコントラスト比(C)を求めるために試験体の厚み補正を加えた、歯科材料・器械Vol.14 Special Issue 26(1995)に記載されている式(2)を本発明の歯科用接着性組成物に採用してコントラスト比(C)を算出している。
コントラスト比(C)=1-(1-Yw/Yb)^(1/L) (2)
このコントラスト比(C)の値が1に近いほど不透明な材料であり、0に近いほど透明な材料である。
コントラスト比(C)の値が0.10〜0.55の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.50の範囲である。コントラスト比(C)が0.55を越える場合の歯科用接着性組成物は不透明すぎるために、接着させる歯科用材料の審美性を阻害する恐れがある。一方、コントラスト比(C)が0.10未満である場合の歯科用接着性組成物は透明すぎるために、窩洞壁等の背景色を遮蔽することができず、その背景色の影響を受けて歯科用材料の審美性を阻害する原因となる。
本発明の歯科用接着性組成物が前述のコントラスト比(C)の範囲を維持するためには、X造影性ガラスフィラーと硬化前のマトリックス成分における屈折率の位置関係が重要な用件となる。本発明におけるマトリックス成分とは重合によって屈折率が移動する成分、例えば親水性重合性単量体、疎水性重合性単量体及びその他の重合性単量体の混合物を意味している。重合前及び/又は重合過程で意図的に揮発させる水及び/又は有機溶媒や重合触媒は本発明においてはマトリックス成分には含まない。本発明の歯科用接着性組成物において硬化後におけるコントラスト比(C)、いわゆる不透明性に影響を与える因子としてはX造影性ガラスフィラーとマトリックス成分の屈折率以外に、後で述べる第2フィラーの屈折率もある。しかし、本発明の歯科用接着性組成物に高いレベルのX線造影性を付与するためにX造影性ガラスフィラーを多量配合させなければならないことから、第2フィラーが配合された場合においても、その配合量は少なくなる傾向がある。そのために本発明においては硬化前のX造影性ガラスフィラーとマトリックス成分の屈折率における位置関係のみに着目し、第2フィラーの屈折率における位置関係は除外している。
歯科用接着性組成物が接着させる歯科用材料の審美性を阻害することなく、適度な半透明性を有するためには本発明の歯科用接着性組成物におけるX線造影性ガラスフィラー(Nf)とマトリックス成分(Nm)との硬化前における屈折率の位置関係がNf−0.07≦Nm≦Nf+0.01の関係にあることが好ましく、より好ましくはNf−0.05≦Nm≦Nf−0.01の関係にあることである。X線造影性ガラスフィラーの屈折率(Nf)とマトリックス成分との屈折率(Nm)において上記の位置関係が成立しない場合は、歯科用接着性組成物が不透明になり、接着させる歯科用材料の審美性に悪影響を与える。歯科用接着性組成物に2種類以上のX線造影性ガラスフィラーが配合されている場合は、少なくと1種類のX線造影性ガラスフィラーが上記の位置関係を満足していれば何等問題はない。また歯科用接着性組成物にX線造影性ガラスフィラーを加工したフィラーが配合されている場合はフィラーを加工するのに用いたX線造影性ガラスフィラーとマトリックス成分との硬化前における屈折率の位置関係が重要な用件となる。さらに本発明の歯科用接着性組成物が二つ以上の包装形態を混合して使用する場合は混合後の混合マトリックス成分と少なくともいずれか一方に配合されているX線造影性ガラスフィラーにおける硬化前の屈折率の位置関係が重要な用件となる。
X線造影性の測定方法は国際規格であるISO4049「歯科−ポリマー系充填、修復及び合着材料」に記載されている。牛歯に形成した窩洞の内壁に本発明の歯科用接着性組成物を用いて均一に処理した後、コンポジットレジンを充填・重合させる臨床的な使用方法を想定したX線造影性評価と国際規格に準じたX線造影性評価との相関性を確認した結果、本発明の特定の配合組成からなる歯科用接着性組成物においては国際規格に準じたX線造影性評価で歯科用接着性組成物がアルミニウム板換算で0.70〜20.0mmのX線造影性を有していれば、臨床的な使用方法である薄い層で、且つコンポジットレジンと共に用いた場合のレントゲン撮影後のX線写真観察において明確に識別することができ、また修復処置直後の窩洞内における修復物の充填状態や修復処置後、一定期間経過した時の二次う蝕の発生状況等を的確に確認及び判断することができること見い出した。より好ましくは本発明の歯科用接着性組成物が有するX線造影性がアルミニウム板換算で1.0〜10.0mmであることである。
本発明の歯科用接着性組成物に配合されるX線造影性ガラスフィラー以外に第2フィラーを含むことができる。第2フィラーとしてはX線遮断能を有していないものであれば特に限定されることなく、用いることができる。第2フィラーとしては歯科用フィラーとして公知なもの、例えば無機フィラー及び/又は有機フィラー及び/又は有機−無機複合フィラー等が挙げられ、これらは1種又は数種を組み合わせても何等制限なく用いることができる。また、これらの第2フィラーの形状は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状で良く特に限定されない。
無機充填材として具体的に例示すれば、石英、無定形シリカ、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム、X線遮断能を有した元素を含まない種々のガラス類(溶融法によるガラス、ゾルーゲル法による合成ガラス、気相反応により生成したガラスなどを含む)、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、チッ化ケイ素、チッ化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、水酸化カルシウム等が挙げられる。これら無機フィラーの平均粒子径は特に制限はないが、0.001〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5μmの範囲である。上記無機フィラーの中でも、超微粒子である気相法により生成したアエロジル又は超微粒子シリカ複合粒子であるゾル−ゲル反応等の溶液中から生成したシリカージルコニア酸化物粒子等は歯科用接着性組成物中に配合することにより増粘剤として働くために、本発明にとっては効果的である。アエロジルを具体的に例示するとアエロジル200、アエロジルOX50、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR8200、アエロジルR711、アエロジルDT4、酸化アルミニウムC、二酸化チタンP25等が挙げられる。
また、意図的にそれらの超微粒子を含む第2フィラーを凝集させた凝集性無機フィラー等を用いても何等問題はない。
また、有機フィラーとしては不飽和基を有する重合性単量体を重合することによって得ることができるものであれば何等制限なく使用することができ、又その種類は特に限定されない。有機フィラーを具体的に例示すると、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等の不飽和芳香族類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、ブタジエン、イソプレン等の重合性単量体等を単独で重合又は数種を共重合させたものが挙げられる。特に好ましくは、歯科分野で既に公知として用いられている種々の重合性単量体を重合させたものである。有機フィラーの製造方法においても特に制限はなく、重合性単量体の乳化重合、懸濁重合および分散重合等のいずれの方法でもよく、また、予め生成した重合体バルクを粉砕する方法でも行なう事ができる。これらの有機フィラーの平均粒子径は1〜100μmの範囲が好ましい。より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μmである。
また、有機重合体中に無機粒子を含有した有機−無機複合フィラーを用いることもできる。有機重合体中に含有させる無機フィラーとしては、特に制限はなく公知のものが使用でき、例えば前述した第2フィラーとして用いることができる無機フィラー等を用いることができる。有機−無機複合フィラーの製造方法においても、特に制限はなく、いずれの方法も採用することができる。例えば、無機フィラーの表面を有機物でのマイクロカプセル化やグラフト化する方法および無機フィラーの表面に重合性官能基や重合性開始基を導入後ラジカル重合させる方法、予め生成した無機フィラーを含む重合体バルクを粉砕する方法等が挙げられる。
これらの有機−無機複合フィラーの平均粒子径は1〜100μmの範囲が好ましい。より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μmである。
種々の重合性単量体や水との濡れ性等を向上させる目的又は他の目的で、第2フィラーである無機フィラー、有機フィラー、有機−無機複合フィラー等のそれぞれのフィラー表面を表面処理剤及び/又は表面処理方法により表面処理を行い、本発明の歯科用接着性組成物に用いることもできる。
表面処理に用いることができる表面処理剤を具体的に例示すると、例えば界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、表面処理に用いることができる表面処理方法も特に限定されず、公知の方法を用いることができる。さらに表面処理剤及び/又は表面処理方法はそれぞれ単独で又は組み合わせて用いることができる。
これらの第2フィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/又は特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
歯科用接着性組成物中におけるこれらの第2フィラーの配合量は歯科用接着性組成物に求める材料特性の要求に応じて任意に設定することができるが、高いレベルのX線造影性を歯科用接着性組成物に発現させるためにはX線造影性ガラスフィラー及び/又はX線造影性ガラスフィラーを加工したフィラーを主に配合する必要がある。そのため第2フィラーの配合量はできるだけ少ない方が好ましい態様である。第2フィラーの配合量は歯科用接着性組成物100重量部に対して0.01〜20.0重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10.0重量部の範囲である。
また、歯科用接着性組成物の中には、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジタ−シャリ−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加できる。
本発明の歯科用接着性組成物における使用方法は特に制限されずに、単独での使用だけでなく、エッチング材、プライマー、ボンディング材、セルフエッチングプライマー、セラミックプライマー、メタルプライマー、貴金属プライマー等のその他の処理材やボンディング材等と適宜組み合わせて使用することができる。
本発明の歯科用接着性組成物における包装形態は、特に限定されず、歯科用接着性組成物の保存安定性、歯科用接着性組成物に配合される成分割合、重合触媒の種類、使用方法又は使用目的等により、単一又は二つ以上の複数包装でも何等制限なく、用途に応じて適宜選択することができる。
以下の製造例にて製造したX線造影性ガラスフィラー又は比較フィラーの特性を評価する試験方法、並びに実施例及び比較例において採用した組成物の性能を評価する試験方法は次の通りである。
(1)フィラーのX線回折分析
評価目的:
X線造影性ガラスフィラー又は比較フィラーにおける結晶構造の有無を確認。
評価方法:
X線造影性ガラスフィラー又は比較フィラーをX線回折分析装置Multi Flex(理学電機株式会社製)を用いて所定の条件(X線:Cu、40KV、40mA;走査軸:2θ/θ;走査範囲:10.0〜60.0°)にてX線回折分析を行い結晶構造の有無を調べる。
(2)フィラーの粒度測定
評価目的:
X線造影性ガラスフィラー又は比較フィラーにおける平均粒子径の測定。
評価方法:
X線造影性ガラスフィラー又は比較フィラーをレーザー回折式粒度測定機であるマイクロトラックHRA(日機装株式会社製)を用いて水溶媒中での平均粒子径を測定する。
(3)フィラーの屈折率測定
評価目的:
X線造影性ガラスフィラー又は比較フィラーにおける屈折率の測定。
評価方法:
トリクレジルホスヘート及びジオクチルアジペート(いずれも大八化学工業製)を用いて任意の屈折率を有する数種類の屈折率測定用浸液を予め調製する。スライドガラス上にX線造影性ガラスフィラー又は比較フィラーを少量採取した後、調製した浸液を数滴滴下して均一に混合後、カバーガラスを被せて測定用試料とする。その測定用試料を偏向顕微鏡(ニコン社製:400倍)のステージに乗せて、ベッケ線法により屈折率(23℃)を測定する。なお、測定は同一測定試料内での異なるそれぞれの粒子10個について行い、その平均値を求める。
(4)マトリックス成分混合物の屈折率測定
評価目的:
1液型又は2液混合型のそれぞれの組成物に配合されているマトリックス成分の配合割合で別途マトリックス成分混合物を調製し、そのマトリックス成分混合物における屈折率の測定。
評価方法:
1液型組成物においては、その組成物中に配合されるマトリックス成分の配合割合で別途、マトリックス成分混合物を、又2液混合型組成物においては、2液混合後の組成物中に配合されるマトリックス成分の配合割合で別途、マトリックス成分混合物をそれぞれ調製し、アッベ屈折率計(アタゴ社製:2T型)を用いてそれぞれのマトリックス成分の混合物における屈折率(23℃)を測定した。
(5)X線造影性試験
評価目的:
組成物硬化体におけるX線造影性の評価。
評価方法:
(揮発成分を含まない組成物の場合)
調製した1液型の組成物又は調製した2液混合型の組成物を混和した混和物をそれぞれステンレス製金型(15φ×1mm:円盤状)に満たした後、上部からカバーガラスを置きガラス板を用いて圧接する。その後、カバーガラス上から光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて1分間、光照射を行い硬化させた。硬化後、金型から硬化物を取り出し、厚さが1±0.1mmの範囲内となるように研磨を行ったものを試験体とした。
(揮発成分を含む組成物の場合)
調製した1液型の組成物又は調製した2液混合型の組成物を混和した混和物をそれぞれステンレス製金型(15φ×1mm:円盤状)に填入した後、気銃等により揮発成分を除去する。この操作を繰り返してステンレス製金型を満たした後、上部からカバーガラスを置きガラス板を用いて圧接する。その後、カバーガラス上から光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて1分間、光照射を行い硬化させた。硬化後、金型から硬化物を取り出し、厚さが1±0.1mmの範囲内となるように研磨を行ったものを試験体とした。
(共通)
その試験体および厚さの異なるアルミニウムステップウェッジ(10mm×10mm:厚さ0.5mm〜2.5mmまで0.5mm間隔)を歯科用X線フィルム(ニューインスタントフィルム:阪神技術研究所製)の中央にそれぞれ置き、X線撮影装置(朝日レントゲン製:DCX−100N)を用いて所定の照射条件(10mA、0.4秒間)にてX線撮影を行った。そのフィルムを現像定着後、濃度計(コニカ社製:PDA-100)を使用して、試験体及び厚みの異なるアルミニウムステップのそれぞれの像における光学濃度を測定した。厚みの異なるアルミニウムステップにおける個々の光学濃度を各厚みに対してプロットして検量線を作成し、その検量線から試験体の光学濃度に対応するアルミニウムステップの厚さを求めた。
(6)不透明性試験
評価目的:
組成物硬化体における不透明性(コントラスト比)の評価。
評価方法:
(揮発成分を含まない組成物の場合)
調製した1液型の組成物又は調製した2液混合型の組成物を混和した混和物をそれぞれステンレス製金型(15φ×1mm:円盤状)に満たした後、上部からカバーガラスを置きガラス板を用いて圧接する。その後、カバーガラス上から光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて1分間、光照射を行い硬化させ、金型から取り出した硬化物を試験体とする。その後、マイクロメーターを用いてその試験体の厚みを5点測定して、その平均値を試験体厚みとする。
(揮発成分を含む組成物の場合)
調製した1液型の組成物又は調製した2液混合型の組成物を混和した混和物をそれぞれステンレス製金型(15φ×1mm:円盤状)に填入した後、気銃等により揮発成分を除去する。この操作を繰り返してステンレス製金型を満たした後、上部からカバーガラスを置きガラス板を用いて圧接する。その後、カバーガラス上から光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて1分間、光照射を行い硬化させ、金型から取り出した硬化物を試験体とする。その後、マイクロメーターを用いてその試験体の厚みを5点測定して、その平均値を試験体厚みとする。
(共通)
その試験体を標準白色板(D65/10°X=81.07、Y=86.15、Z=93.38)又は標準黒色板(D65/10°X=0.0、Y=0.0、Z=0.0)の背景上にそれぞれ置き、カラーガイド分光色彩計(ビックケミー社製)を用いて所定の一定条件下(光源:C、視野角:2°、測定面積:11mm)に照明して、白色背景の明るさ(Yw)及び黒色背景の明るさ(Yb)をそれぞれ測定し、式(2)からコントラスト比(C)を算出する。
(7)歯質接着性試験
評価目的:
組成物における歯質接着性の評価。
評価方法:
屠殺後、抜去した牛歯下顎永久歯中切歯を24時間以内に冷凍保存したものを解凍後、歯根部の除去及び歯冠部の切断を行って牛歯細片を作製し、その牛歯細片をエポキシ樹脂にて包埋を行う。その包埋牛歯を注水下、#600番の耐水研磨紙にてエナメル質又は象牙質を露出させて水洗・乾燥する。
(コンポジットレジンを用いての歯質接着性試験の場合:歯質接着性試験1)
この露出したエナメル質又は象牙質に直径4mmの穴の空いた両面テープを貼って接着面を規定する。その規定した接着面に実施例又は比較例で指定された接着術式により接着処理を行う。その後、その接着処理した面にプラスチックモールド(内径4mm、高さ2mm)を固定して、光重合型コンポジットレジン「ビューティフィル」をそのモールド内部に填入し、光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて30秒間光照射を行い硬化させる。硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。
(硬質レジン硬化体を用いての歯質接着性試験の場合:歯質接着性試験2)
この露出したエナメル質又は象牙質に実施例又は比較例で指定された術式により前処理を行う。また、実施例又は比較例で指定された術式により2種類の組成物の混和を行い、その混和物を硬質レジン「セラマージュ」硬化体の接着面に塗りエナメル質又は象牙質に押し当てた後、一定荷重下で圧接して余剰分の除去後、硬質レジン硬化体の側面方向から対角上の2個所において光照射を20秒間づつ光照射を行い接着試験体を作製した。その圧接した状態で接着試験片を温度37℃、湿度100%の雰囲気中に1時間放置して組成物を硬化させた。
(共通)
この接着試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/min.にて剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。試料数は6個としその平均値を求めた。
(X線造影性ガラスフィラー(A‐1)の製造例1)
シリカ25重量%、酸化アルミニウム15重量%、酸化ホウ素13重量%、氷晶石8重量%、フッ化ストロンチウム24重量%および炭酸ストロンチウム15重量%の割合でそれぞれの原料を十分混合後、1400℃の高温エレマ炉中で溶融させ、その溶融液を冷却することによりガラスを得た。そのガラスをボールミル及び振動ミルを用いて粉砕し、X線造影性ガラスフィラー(A‐1)を得た。このX線造影性ガラスフィラー(A‐1)に関してX線回折分析、粒度測定、屈折率測定を行った結果、X線造影性ガラスフィラー(A‐1)は結晶構造を有しておらずブロードなX線回折パターンが認められ、また平均粒子径は3.08μm及び屈折率は1.525であった。
(X線造影性ガラスフィラー(A‐2)の製造例2)
シリカ23重量%、酸化アルミニウム8重量%、リン酸アルミニウム13重量%、フッ化アルミニウム14重量%、および炭酸ストロンチウム42重量%の割合でそれぞれの原料を十分混合後、1400℃の高温エレマ炉中で溶融させ、その溶融液を冷却することによりガラスを得た。そのガラスをボールミル及び媒体撹拌ミルを用いて粉砕し、X線造影性ガラスフィラー(A‐2)を得た。このX線造影性ガラスフィラー(A‐2)に関してX線回折分析、粒度測定、屈折率測定を行った結果、X線造影性ガラスフィラー(A‐2)は結晶構造を有しておらずブロードなX線回折パターンが認められ、また平均粒子径は5.56μm及び屈折率は1.507であった。
(X線造影性ガラスフィラー(A‐3)の製造例3)
シリカ25重量%、酸化アルミニウム20重量%、リン酸アルミニウム5重量%、フッ化アルミニウム7重量%、酸化ランタン21重量%、およびフッ化カルシウム22重量%の割合でそれぞれの原料を十分混合後、1400℃の高温エレマ炉中で溶融させ、その溶融液を冷却することによりガラスを得た。そのガラスをボールミル及び媒体撹拌ミルを用いて粉砕し、X線造影性ガラスフィラー(A‐3)を得た。このX線造影性ガラスフィラー(A‐3)に関してX線回折分析、粒度測定、屈折率測定を行った結果、X線造影性ガラスフィラー(A‐3)は結晶構造を有しておらずブロードなX線回折パターンが認められ、また平均粒子径は1.82μm及び屈折率は1.553であった。
(X線造影性ガラスフィラー(A‐4)の製造例4)
結晶構造を有しておらず、平均粒子径が3.08μm及び屈折率が1.525であるX線造影性ガラスフィラー(A‐1)を58g及び水107.5gを万能混合攪拌機に投入して均一混合した後、シラン化合物の低縮合物「MS51SG1」(SiO含量16%、重合度2〜6;三菱化学社製)を2.37g添加してポリシロキサン処理を行った。得られた処理スラリーを熱風乾燥機中で熟成及び熱処理を行った後、ヘンシェルミキサーにてその熱処理物を解砕し、フルイ後X線造影性ガラスフィラー(A‐4)を得た。このX線造影性ガラスフィラー(A‐4)に関してX線回折分析、粒度測定、屈折率測定を行った結果、X線造影性ガラスフィラー(A‐4)は結晶構造を有しておらずブロードなX線回折パターンが認められ、また平均粒子径は3.61μm及び屈折率は1.525であった。
(比較フィラー1及び比較フィラー2の評価)
市販されている硫酸バリウム(堺化学工業社製:比較フィラー1)及び石英ガラスフィラー(龍森社製ヒューズレックスZA-30:比較フィラー2)のそれぞれに関してX線回折分析、粒度測定、屈折率測定を行った結果、硫酸バリウム(比較フィラー1)については結晶構造の存在に基づく結晶ピークが認められ、また屈折率も1.646と非常に高く、平均粒子径は1.14μmであった。一方石英ガラスフィラー(比較フィラー2)については結晶構造を有しておらずブロードなX線回折パターンが認められ、また屈折率も1.459と非常に低く、平均粒子径は6.74μmであった。
本発明の実施例及び比較例において歯科用接着性組成物における各組成の調製に用いた材料の略号は以下の通りである。
Bis-GMA:2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
UDMA:2,2−ビス(4メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン
2.6E:ビスメタクリロイルエトキシフェニルプロパン
TGDM:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CQ:カンファーキノン
Tin:ジブチルチンジラウリレート
BPO:過酸化ベンゾイル
DEPT:N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
p-TSNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
TMBA:トリメチルバルビツール酸
R-972:アエロジルR−972
MHPA:(6-メタアクリロキシ)ヘキシルホスホノアセテート
META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
AET:4−アクリロイルオキシエチルトリメリット酸
〔1液型組成物(組成物1〜27)の調製〕
Table 1に示した調合組成にて1液型組成物(組成物1〜27)をそれぞれ調製し、実施例及び比較例に用いた。また、それぞれ調製した組成物(組成物1〜27)に配合したマトリックス成分の配合割合で別途マトリックス成分混合物のみを調製して、硬化前におけるマトリックス成分混合物の屈折率測定を行い、その屈折率及びX線造影性フィラーとの屈折率における位置関係をそれぞれTable 3に示した。
〔2液混合型組成物(組成物28〜34)の調製〕
Table 2に示した調合組成にて2液混合型組成物(組成物28〜34)をそれぞれ調製し、実施例及び比較例に用いた。また、それぞれ調製した2液混合型組成物(組成物28〜34)において、2液混合後の組成物中に配合されているマトリックス成分の配合割合で別途、マトリックス成分混合物のみをそれぞれ調製し、硬化前におけるマトリックス成分混合物の屈折率測定を行い、その屈折率及びX線造影性フィラーとの屈折率における位置関係をそれぞれTable 4に示した。
〔実施例1〜17〕
調製した1液型組成物1〜17(実施例1〜17)を用いて不透明性試験及びX線造影性試験、並びに市販されてインパーバフルオロボンドの構成品であるFBプライマー(A:lot.090386 、B:lot.090307)を前処理材(セルフエッチングプライマー)として用いた歯質接着性試験1(プライマー等量混合後塗布・処理⇒10秒放置⇒乾燥⇒組成物塗布⇒10秒光照射⇒コンポジットレジン填入・30秒光照射)をそれぞれ実施し、その結果をそれぞれTable3に示した。Table3に示す様に組成物1〜17は硬化前においてマトリックス混合成分とX線造影性ガラスフィラーとの屈折率における位置関係が適正な範囲内にあることから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲:0.10〜0.55)を適度に有しており、接着させる歯科用材料の審美性には悪影響を与えないことが認められた。また、いずれの組成物においてもアルミニウム相当で0.7mm以上の優れたX線造影性が認められ、さらにエナメル質及び象牙質のいずれに対しても優れた歯質接着性を有していることが認められた。
〔比較例1〜5〕
調製した1液型組成物18〜22(比較例1〜5)を用いて実施例1〜17と同様にそれぞれの試験を実施し、その結果をそれぞれTable3に示した。
組成物18(比較例1)は組成物中にX線造影性ガラスフィラーが配合されておらず、フィラー成分として超微粒子のシリカフィラーであるアエロジルR-972のみが配合された組成物である。この組成物18(比較例1)は優れた歯質接着性を有しているものの、X線造影性ガラスフィラーが組成物中に配合されていないことから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲より低い:0.10未満)が低く硬化体が透明すぎるために、窩洞壁等の背景色を遮蔽することができず、その背景色の影響を受けて接着させる歯科用材料の審美性を阻害することが認められた。また、X線造影性を全く有していなかった。
組成物19(比較例2)及び組成物20(比較例3)は結晶構造を有し、且つ高い屈折率をも有した硫酸バリウム(比較フィラー1)がX線造影性フィラーとして配合された組成物である。組成物19(比較例2)及び組成物20(比較例3)は優れた歯質接着性及びX線造影性を有しているものの、組成物中に配合された硫酸バリウムが結晶構造を有していること及び硬化前における硫酸バリウムとマトリックス混合成分との屈折率差(屈折率の位置関係が不適正)が大きいことから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲より高い:0.55を越える)が高く硬化体が不透明になりすぎるために、接着させる歯科用材料の審美性を阻害することが認められた。
組成物21(比較例4)及び組成物22(比較例5)は非結晶で低屈折率のX線遮断能を有する元素を含有していない石英ガラスフィラー(比較フィラー2)がフィラーとして配合された組成物である。組成物21(比較例4)及び組成物22(比較例5)は優れた歯質接着性を有しているものの、それぞれの組成物中に配合されている石英ガラスフィラー(比較フィラー2)がX線遮断能を有する元素を含有していないことから、いずれの組成物においてもX線造影性はアルミニウム相当で0.7mm未満であり、レントゲン撮影によるX線写真観察で識別できない程度であった。
組成物21(比較例4)においては、組成物中にX線造影性ガラスフィラーではないが、第2フィラーとして配合している石英ガラスフィラー(比較フィラー2)とマトリックス混合成分の硬化前におけるそれぞれの屈折率の位置関係が離れていることから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲より高い:0.55を越える)が高く硬化体が不透明になりすぎるために、接着させる歯科用材料の審美性を阻害することが認められた。
組成物22(比較例5)においては、組成物中にX線造影性ガラスフィラーではないが、第2フィラーとして配合している石英ガラスフィラー(比較フィラー2)とマトリックス混合成分の硬化前におけるそれぞれの屈折率の位置関係が近似していることから、硬化後においては適度な不透明性(コントラスト比が適正な範囲:0.10〜0.55)を有しており、接着させる歯科用材料の審美性には悪影響を与えないことが認められた。
〔実施例18〕
調製した1液型組成物23(実施例18)を用いて不透明性試験及びX線造影性試験、並びに市販されているインパーバボンドの構成品であるエッチングゲル(lot.05033)及びデンチンプライマー(lot.110151)を前処理材として用いた歯質接着性試験1(エナメル質:エッチング処理30秒⇒水洗・乾燥、象牙質:プライマー塗布・処理⇒10秒放置⇒乾燥 それぞれ操作後、組成物塗布⇒10秒光照射⇒コンポジットレジン填入・30秒光照射)をそれぞれ実施し、その結果をそれぞれTable3に示した。Table3に示す様に組成物23は硬化前においてマトリックス混合成分とX線造影性ガラスフィラーとの屈折率における位置関係が適正な範囲内にあることから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲:0.10〜0.55)を適度に有しており、接着させる歯科用材料の審美性には悪影響を与えないことが認められた。また、組成物23はアルミニウム相当で0.7mm以上の優れたX線造影性が認められ、さらにエナメル質及び象牙質のいずれに対しても優れた歯質接着性を有していることが認められた。
〔実施例19及び20〕
調製した1液型組成物24及び25(実施例19及び20)を用いて不透明性試験及びX線造影性試験、並びに他の処理材を用いず単独使用での歯質接着性試験1(組成物塗布・処理⇒10秒放置⇒乾燥⇒10秒光照射⇒コンポジットレジン填入・30秒光照射)をそれぞれ実施し、その結果をそれぞれTable3に示した。Table3に示す様に組成物24及び25は硬化前においてマトリックス混合成分とX線造影性ガラスフィラーとの屈折率における位置関係が適正な範囲内にあることから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲:0.10〜0.55)を適度に有しており、接着させる歯科用材料の審美性には悪影響を与えないことが認められた。また、いずれの組成物においてもアルミニウム相当で0.7mm以上の優れたX線造影性が認められ、さらにエナメル質及び象牙質のいずれに対しても優れた歯質接着性を有していることが認められた。
〔比較例6及び7〕
調製した1液型組成物26〜27(比較例6及び7)を用いて実施例19及び20と同様にそれぞれの試験を実施し、その結果をそれぞれTable3に示した。
組成物26(比較例6)は組成物中にX線造影性ガラスフィラーが配合されておらず、フィラー成分として超微粒子のシリカフィラーであるアエロジルR-972のみが配合された組成物である。この組成物(比較例6)は優れた歯質接着性を有しているものの、X線造影性ガラスフィラーが組成物中に配合されていないことから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲より低い:0.10未満)が低く硬化体が透明すぎるために、窩洞壁等の背景色を遮蔽することができず、その背景色の影響を受けて接着させる歯科用材料の審美性を阻害することが認められた。また、X線造影性を全く有していなかった。
一方、組成物27(比較例7)は優れた歯質接着性及びX線造影性を有しているものの、組成物中に配合されているX線造影性ガラスフィラーとマトリックス混合成分との屈折率差(屈折率の位置関係が不適正)が大きいことから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲より高い:0.55を越える)が高く硬化体が不透明になりすぎるために、接着させる歯科用材料の審美性を阻害することが認められた。
〔実施例21及び22〕
調製した2液混合型組成物28及び29(実施例21及び22)を用いて不透明性試験及びX線造影性試験、並びに市販されているインパーバフルオロボンドの構成品であるFBプライマー(A:lot.090386、B:lot.090307)を前処理材(セルフエッチングプライマー)として用いた歯質接着性試験1(実施例21:プライマー等量混合後塗布・処理⇒10秒放置⇒乾燥⇒組成物等量混合・塗布⇒10秒光照射⇒コンポジットレジン填入・30秒光照射)又は歯質接着性試験2(実施例22:プライマー等量混合後塗布・処理⇒10秒放置⇒乾燥⇒組成物等量混合⇒硬質レジン硬化体の接着面に塗布後圧接⇒側方の2個所から20秒づつ光照射)をそれぞれ実施し、その結果をそれぞれTable4に示した。Table4に示す様に組成物28及び29は硬化前におけるマトリックス混合成分とX線造影性ガラスフィラーとの屈折率における位置関係が適正な範囲内にあることから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲:0.10〜0.55)を適度に有しており、接着させる歯科用材料の審美性には悪影響を与えないことが認められた。また、いずれの組成物においてもアルミニウム相当で0.7mm以上の優れたX線造影性が認められ、さらにエナメル質及び象牙質のいずれに対しても優れた歯質接着性を有していることが認められた。
〔実施例23〜25〕
調製した2液混合型組成物30〜32(実施例23〜25)を用いて不透明性試験及びX線造影性試験、並びに他の処理材を用いず単独使用での歯質接着性試験1(組成物特定量混合・塗布・処理⇒10秒放置⇒乾燥⇒10秒光照射⇒コンポジットレジン填入・30秒光照射)をそれぞれ実施し、その結果をそれぞれTable4に示した。Table4に示す様に組成物30〜32は硬化前におけるマトリックス混合成分とX線造影性ガラスフィラーとの屈折率における位置関係が適正な範囲内にあることから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲:0.10〜0.55)を適度に有しており、接着させる歯科用材料の審美性には悪影響を与えないことが認められた。また、いずれの組成物においてもアルミニウム相当で0.7mm以上の優れたX線造影性が認められ、さらにエナメル質及び象牙質のいずれに対しても優れた歯質接着性を有していることが認められた。
〔比較例8及び9〕
調製した2液混合型組成物33〜34(比較例8及び9)を用いて実施例23〜25と同様にそれぞれの試験を実施し、その結果をそれぞれTable3に示した。
組成物33(比較例8)は組成物中にX線造影性ガラスフィラーが配合されておらず、フィラー成分として超微粒子のシリカフィラーであるアエロジルR-972のみが配合された組成物である。この組成物(比較例8)は組成物中にX線造影性ガラスフィラーが配合されていないにも関わらず、硬化後において適度な不透明性(コントラスト比が適正な範囲:0.10〜0.55)を有していることが認められ、また優れた歯質接着性をも有していた。しかし、組成物中にX線造影性ガラスフィラーが配合されていないことから、X線造影性はアルミニウム相当で0.7mm未満であり、レントゲン撮影によるX線写真観察で識別できない程度であった。
一方、組成物34(比較例9)は優れた歯質接着性及びX線造影性を有しているものの、硬化前において組成物中に含まれるX線造影性ガラスフィラーとマトリックス混合成分との屈折率差(屈折率の位置関係が不適正)が大きいことから、硬化後における不透明性(コントラスト比が適正な範囲より高い:0.55を越える)が高く硬化体が不透明になりすぎるために、、接着させる歯科用材料の審美性を阻害することが認められた。
〔参考例1〜2〕
現在、市販されているトクヤマデンタル社製ワンナップボンドF(A:lot.076、B:lot.569)及びクラレメディカル社製クリアフィルメガボンド(プライマー:lot.00507A、ボンディング材:lot.00710A)を用いて、硬化後における不透明性試験及びX線造影性試験、並びに歯質接着性試験をそれぞれ実施し、その結果をTable 3に示した。Table 3に示す様にクラレメディカル社製クリアフィルメガボンドのボンディング材はエナメル質及び象牙質に対して優れた歯質接着性を有しているものの、X線造影性はほとんど有していなかった。そのため、このボンディング材を用いて修復処置した直後における修復状況の確認や予後における経過的な診査・診断等に行われるレントゲン撮影によるX線写真観察において正確な識別性をもたらすことができない。また硬化後におけるコントラスト比(C)も0.09と非常に低く透明すぎることから、窩洞壁等の背景色を遮蔽することができず、その背景色の影響を受けて歯科用材料の審美性を阻害する。
一方、トクヤマデンタル社製ワンナップボンドFはエナメル質及び象牙質に対して優れた歯質接着性を有し、且つコントラスト比(C)も0.14である等の適度な不透明性をも有していることが認められた。しかし、X線造影性をほとんど有していないことから、このボンディング材を用いて修復処置した直後における修復状況の確認や予後における経過的な診査・診断等に行われるレントゲン撮影によるX線写真観察において正確な識別性をもたらすことができない。
Figure 0004818615
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Claims (2)

  1. (a)屈折率が1.50〜1.70の範囲で、且つその平均粒子径が0.01〜10.0μmの範囲にあるX線造影性ガラスフィラー、
    (b)親水性重合性単量体と(c)疎水性重合性単量体を含む重合性単量体、
    (d)重合触媒、
    を含む歯科用接着性組成物であり、
    X線造影性ガラスフィラーの屈折率(Nf)と重合性単量体のマトリックス成分の屈折率(Nm)が硬化前においてNf−0.07≦Nm≦Nf+0.01の状態であり、硬化後においてコントラスト比(C)が0.10〜0.55の範囲であり、
    (b)親水性重合性単量体は歯科用接着性組成物中に含まれる(b)成分である親水性重合性単量体と(c)成分である疎水性重合性単量体の合計重量100重量部に対して10〜90重量部であり、
    修復材料、歯冠材料、補綴材料、予防材料、支台築造材料、根管材料の歯科用材料をセラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント、生体硬組織に接着するために用いることを特徴とする歯科用接着性組成物。
  2. (e)水及び/又は(f)有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1 記載の歯科用接着性組成物。
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