JP4786930B2 - バルビツール酸塩化合物を含む重合開始剤 - Google Patents
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これらの歯科用材料には無機、有機、有機-無機複合等の充填材、ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性モノマーを重合させる重合開始剤が主成分として含まれており、ラジカル重合性モノマーが重合することによって種々の材料特性を発現している。
歯科用材料において、意図した種々の材料特性を発現させるためには、口腔内でラジカル重合性モノマーが十分に重合することが必要である。したがって、重合開始剤は他の二つの成分に比較して、歯科用材料中の含有量は少ないものの、非常に重要な成分である。
これらの重合開始剤は、修復治療を行う症例や部位に応じて使用する材料の種類によって選択的に用いられている。例えば、光が十分届く歯質表面付近の部位に用いる材料においては光重合開始剤を、また光が届きにくい部位に用いる材料においては化学重合開始剤を、さらに場合によってはこれら両者を用いる場合もある。これらの重合開始剤はラジカル重合性モノマーの種類や共存する成分の環境により重合活性が異なること、また重合前後において重合開始剤が有した色調により材料の審美性を阻害すること、さらに重合後において水分の影響により硬化した材料が変色すること等の問題点に対して改善すべく多くの提案がなされている。
しかし、これらの提案にある重合開始剤は水が共存する組成物系においてはラジカル重合性モノマーの重合が不十分になり、材料特性を発現することができない。また、水分の影響による硬化物の経時的な変色やラジカル重合性モノマーとの共存下における保存安定性等についての問題が依然残されている。
しかし、これらの重合開始剤はラジカル重合性モノマーとの共存下における保存安定性が乏しく、また水を含んだ組成物系においてはラジカル重合性モノマーを重合させる十分な重合活性を有していない。
しかし、このバルビツール酸誘導体はラジカル重合性モノマーとの共存下において、経時的にラジカル重合性モノマーを重合させることから保存安定性に問題があった。そのため、別包装形態であるアプリケーターに含有することが前提となっている。
しかし、これらの重合開始剤は水を含んだ組成物系においてラジカル重合性モノマーを十分に重合させることができない。
レジンセメントは他の歯科用セメントに比較して優れた歯質接着性と機械的特性を有している。しかし、このレジンセメントは適用する被着体に対してエッチング処理やプライマー処理等の煩雑な前処理操作が必要であること及び生体に対する親和性が悪いこと等が短所として挙げられる。また、水分の影響により接着特性の低下も懸念される。
一方、グラスアイオノマーセメントはフッ素やカルシウム等の酸反応性元素を含有したフルオロアルミノシリケートガラスを粉材に、ポリカルボン酸水溶液を液材にそれぞれ主成分として含んでおり、これらを練和することにより酸-塩基反応が起こり硬化する。また、この酸-塩基反応はグラスアイオノマーセメントの硬化に関与するだけでなく、複雑な前処理を必要としないセラミック・金属及び歯質等への自己接着性にも関与している。また、このグラスアイオノマーセメントは歯髄刺激性が少ない生体親和性や優れた透明性を有していること等から、歯科用セメントとしてだけではなく、修復材料やシーラント等の用途にまで使用用途が拡大してきている傾向にある。さらにグラスアイオノマーセメントはそのセメント硬化物から微量のフッ素を持続的に徐放することから二次う蝕の抑制又は防止及び歯質強化等の予防的な効果をも有している。
この短所を改善するために、グラスアイオノマーセメントが硬化するための酸-塩基反応に関与する成分(ポリカルボン酸・水・イオン溶出性ガラス等)に加えて、ラジカル重合性モノマー及びそれを重合させる重合開始剤を配合したハイブリッド型のレジン強化型グラスアイオノマーセメント(特許第2869078号明細書、特開平1‐308855号公報、特公平6‐27047号公報、特許第3288698号明細書、特開平8‐26925号公報、特開平8‐301717号公報、特開2000‐26225号公報、特開2002‐87917号公報)と呼ばれる新しい材料が登場してきた。
また、レジン強化型グラスアイオノマーセメントの中でも操作性を向上させる目的で包装形態を粉-液タイプからペースト-ペーストタイプに移行させた提案(特開平2003‐183112号公報、特開平11‐228327号公報、特表2000‐513339号公報、特表平9−509392号公報)もなされてきている。レジン強化型グラスアイオノマーセメントがこのペースト-ペーストタイプの包装形態にも対応するためには、上記の水、酸性基含有化合物(単量体及び/又は重合体)及び酸反応性フィラーによって起こる酸−塩基反応が共存する特異な環境下においてラジカル重合性モノマーを十分に重合させることができる重合活性と、水を含まない組成物系でのラジカル重合性モノマーとの共存下において、ラジカル重合性モノマーを経時的に重合させることがなく、その重合活性を維持することができる保存安定性とを兼ね備えた重合開始剤が求められている。
しかし、これらの重合開始剤は水を含まない組成物系においてラジカル重合性モノマーと共存した場合、ラジカル重合性モノマーを経時的に重合させる等の保存安定性に問題があり、そのため包装形態が粉‐液タイプに限られていた。また、組成物中でラジカル重合性モノマーと共存せることができる保存安定性を付与することを目的として重合開始剤のマイクロカプセル化や金属錯体化等の新しい提案もあるが、マイクロカプセル化や金属錯体化はラジカル重合性モノマーに対する重合活性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
さらに、水の存在下で酸性基を有したラジカル重合性モノマー及び/又はその重合体と酸反応性フィラーによって起こる酸‐塩基反応とラジカル重合性モノマーの重合反応とが共存するレジン強化型グラスアイオノマーセメント、ボンディング剤、プライマー、歯面処理剤、歯面コート材等において有用な重合開始剤を提供する。
このバルビツール酸塩化合物を含む重合開始剤は水分の影響による硬化物の変色を防止することができることも認められた。このバルビツール酸塩化合物を含む重合開始剤は従来から用いられている有機過酸化物及び/又はアミン化合物や他の重合開始剤と併用することもできるが、特に水の存在下で酸性基を有したラジカル重合性モノマー及び/又はその重合体と酸反応性フィラーによって起こる酸‐塩基反応と共存した組成物系において、機械的特性、歯質接着性及び色調安定性等の優れた材料特性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明の重合開始剤は水を含む組成物系においてもラジカル重合性モノマーを十分に重合させる重合活性を有している。そのため、硬化した組成物に優れた材料特性を発現させることができる。特に本発明の重合開始剤は水存在下で酸性基含有化合物(単量体及び/又は重合体)と酸反応性フィラーによって起こる酸−塩基反応が共存している組成物系においてもラジカル重合モノマーの重合を開始させることができる有用な重合開始剤である。
一般式(I):
R4はアルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子;及び
Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
で示される(1)(チオ)バルビツール酸塩化合物を含むことを特徴とする。
本発明においては上記(チオ)バルビツール酸塩化合物の中でも、(チオ)バルビツール酸のアルカリ金属塩としてはナトリウム、カリウム塩化合物を用いることが好ましく、またアルカリ土類金属塩としてはカルシウム、ストロンチウム、バリウム塩化合物を用いることが好ましい。これらの(チオ)バルビツール酸塩化合物は単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
本発明の重合開始剤である(チオ)バルビツール酸塩化合物の配合量は組成物中に含まれるラジカル重合性モノマー100重量部に対して0.05〜5.0重量部、好ましくは0.2〜2.0重量部の範囲である。
本発明に用いることができる過硫酸化合物を具体的に例示すると過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの過硫酸塩化合物のなかでも、過硫酸カリウムを用いることが好ましい。これらの過硫酸塩化合物は単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
本発明の重合開始剤である過硫酸塩化合物の配合量は組成物中に含まれるラジカル重合性モノマー100重量部に対して0.03〜5.00重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部の範囲である。
本発明の重合開始剤に(3)有機過酸化物及び/又は(4)アミン化合物の重合開始剤を併用することによって機械的特性や歯質接着性をさらに向上させることができる。
(3)有機過酸化物及び/又は(4)アミン化合物の配合量が上記の範囲未満の場合は本発明の重合開始剤と併用する効果がほとんど認められない。一方、それぞれの配合量が上記の範囲を越える場合は操作性や硬化性及び色調安定性等の材料特性において問題が生じる。
他の重合開始剤として具体的に例示すると、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のボレート化合物、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、アセトインベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2−ベンジル―ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル―ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα-アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル]−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン等の第二級アミン類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら上記の重合開始剤は単独で又は複数を組み合わせて配合することができる。
つまり、水を含む組成物系において、本発明の重合開始剤によるラジカル重合性モノマーの重合反応と酸−塩基反応が共存するためには、組成物系に(5)酸性基を有したラジカル重合性モノマー及び/又はそれらの重合体と(6)酸反応性フィラーを含んでいなければならない。組成物系に水が含まれることによって本発明の重合開始剤がラジカル重合性モノマーの重合を開始することができるが、組成物系にラジカル重合性モノマーの重合反応と酸−塩基反応が共存する場合においては、組成物系に含まれる水は、酸−塩基反応にも関与している。
さらに、酸性基を有したラジカル重合性モノマーと酸性基を有したラジカル重合性モノマーの重合体が共存した状態であっても何等制限なく用いることができる。
本発明の実施例において用いる材料の略号は以下の通りである。
KPS:過硫酸カリウム
AsA:アスコルビン酸
TMB:1,3,5−トリメチルバルビツール酸
TMBNa:1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム塩
TMBCa:1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム塩
TMBSr:1,3,5−トリメチルバルビツール酸ストロンチウム塩
TMBZn:1,3,5−トリメチルバルビツール酸亜鉛塩
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BPO:過酸化ベンゾイル
DEPT:N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
Bis-GMA:2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
UDMA:ジ(メタクリロイルオキシ)−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジウレタン
PEGDMA:ポリエチレングリコールジメタクリレート(オキシエチレン基の数が14のもの)
R-972:アエロジルR−972
6-MHPA:(6-メタアクリロキシ)ヘキシルホスホノアセテート
シリカ29重量%、酸化アルミニウム5重量%、リン酸アルミニウム17重量%、フッ化アルミニウム20重量%、及び炭酸ストロンチウム29重量%の割合でそれぞれの原料を十分に混合後、1350℃の高温エレマ炉中で溶融させ、その溶融液を冷却することによりガラスを得た。そのガラスをボールミル及び媒体撹拌ミルを用いて粉砕し、酸反応性フィラーであるストロンチウム含有フルオロアルミノシリケートガラスフィラー(FASG)を得た。この得られたFASGについて粒度測定(マイクロトラックHRA 日機装社製)及び蛍光X線分析装置(ZSX100e 理学電機工業社製)を行った結果、このFASGの平均粒子径は2.5μmであり、また、酸反応性元素としてストロンチウム及びアルミニウムがFASG中に含まれていることが認められた。
イソプロピルアルコール100gを入れた1Lフラスコ内を窒素雰囲気下90℃に保ち、予め調製したアクリル酸50g、過硫酸アンモニウム2.5g、水80gの混合液を滴下ロートを介してそのフラスコ内に滴下し、5時間で重合を完了させた。このアクリル酸重合体の重量平均分子量を高速液体クロマトフラフィー(GPC−900 日本分光社製:カラムGF−510HQ 昭和電工社製)にてGPC分析を行った結果、重量平均分子量は45000であった。このアクリル酸重合体溶液に含まれるイソプロピルアルコールを水に置換して10%アクリル酸重合体水溶液を調製した後、スプレードライにより白色の粉末を得た。この得られた粉末を真空乾燥後、乳鉢による粉砕を行った。JIS標準篩(125メッシュ及び250メッシュ)を用いて、この粉砕物を篩過し、125メッシュを通過して250メッシュを通過しない粉末をポリアクリル酸重合体(PA)とした。
HEMA50重量部及びTEGDMA50重量部からなる水を実質的に含まない混合モノマーAを調製した。その調製した混合モノマーA 8重量部を採取した透明サンプル瓶中に種々の重合開始剤を各0.048重量部添加して均一に混合後、50℃に保った恒温器中にそのサンプル瓶を放置して保存安定性の評価を行った。なお、重合開始剤を添加していない混合モノマーAのみのものをコントロール(参考例1−1)とした。一定期間放置後、種々の重合開始剤を添加した混合モノマーAが入っているサンプル瓶を傾けた時、サンプル瓶中の混合モノマーAが流動しなくなる時点をゲル化時間として求め、そのゲル化時間を表1に示した。
表1に示す様に50℃においてはTMB(比較例1−1)が37.5時間及びAsA(比較例1−2)が13.5時間で混合モノマーAが重合(ゲル化)していることが認められた。一方、TMBNa、TMBCa、TMBSr又はTMBZn等の(チオ)バルビツール酸塩化合物を単独混合した系(実施例1−1〜1−4)及びTMBNaとKPS又はTMBCaとKPS等の(チオ)バルビツール酸塩化合物と過硫酸化合物を組み合わせて複合配合した系(実施例1−5及び1−6)は、50℃にて10日間放置しても混合モノマーAが重合(ゲル化)している状態は観察されずに良好な保存安定性が認められた。なお、これらの状況はコントロール(参考例1−1)と同じ程度であった。
HEMA45重量部、TEGDMA45重量部及び水10重量部からなる水を含む混合モノマーBを調製した。その調製した混合モノマーB 8重量部を採取した透明サンプル瓶中に種々の重合開始剤を各0.048重量部添加して均一に混合後、50℃に保った恒温器中にそのサンプル瓶を放置して重合活性の評価を行った。なお、重合開始剤を添加していない混合モノマーBのみのものをコントロール(参考例2−1)とした。一定期間放置後、種々の重合開始剤を添加した混合モノマーBが入っているサンプル瓶を傾けた時、サンプル瓶中の混合モノマーBが流動しなくなる時点をゲル化時間として求め、そのゲル化時間を表2に示した。
表2に示す様に、TMB(実施例2−1)及びAsA(実施例2−1)は共に50℃において13.5時間で混合モノマーBを重合(ゲル化)させることが認められた。実施例1で得られた水を含有しない混合モノマーAでの結果と比較すると、TMB及びAsAは水共存の有無には関係なく、同程度にラジカル重合性モノマーを重合(ゲル化)させることが認められた。
一方、TMBNa、TMBCa、TMBSr又はTMBZn等の(チオ)バルビツール酸塩化合物を単独混合した系(実施例2-1〜4)においては50℃約2〜3日で混合モノマーBを重合(ゲル化)させることが認められた。この結果は実施例1で得られた水を含有しない混合モノマーAでの結果と比較すると、水が共存することによりラジカル重合性モノマーに対する重合活性が向上している。また、TMBNaとKPS又はTMBCaとKPS等の(チオ)バルビツール酸塩化合物と過硫酸化合物を組み合わせた複合混合した系(実施例2‐5及び6)においては50℃8〜10時間で混合モノマーBを重合(ゲル化)させることが認められた。この結果においても、実施例1で得られた水を含有しない混合モノマーAでの結果と比較すると、水が共存することによりラジカル重合性モノマーに対する重合活性が向上している。さらにTMBNa、TMBCa、TMBSr又はTMBZn等の(チオ)バルビツール酸塩化合物を単独混合した系と比較しても重合活性は高いレベルであった。
混合モノマーB〜Fの調整
表3に示す配合比率で、HEMA、TEGDMA、6-MHPA及び水のいずれかの組合せにより水を実質的に含まない混合モノマーCと水を含む混合モノマーD及びEの合計3種類を調製した。
表4に示した配合比率にてそれぞれの重合開始剤を配合して、合計8種類の重合開始剤配合粉末を調製した。
表5に示した組み合わせにて重合開始剤配合粉末(1〜8)及び混合モノマー(C〜E)を重合開始剤配合粉末/混合モノマー液=0.2g/0.1gの割合にて練板紙上に採取して、30〜40秒間練和を行う。練和後、練板紙上で練和物を一つの塊に形取り、スパチュラを用いて練和物の硬化性を評価する。練板紙上でスパチュラを用いて外部から力を掛けた時に練和物の形が崩れなくなった時の練和終了からの時間をゲル化時間として測定した。
また、組成物中にシリカ系フィラー(Yv-Si)を含んだ組成物1〜12(実施例3−1〜12)においては、水が共存する場合でも酸性基含有ラジカル重合性モノマー配合の有無によって重合活性に影響が認められ、酸性基含有ラジカル重合性モノマーと共存することによって重合が遅延されてことが認められる。しかし、組成物中に酸反応性フィラー(FASG)を含んだ組成物13〜24(実施例3−13〜24)においては、水共存下における酸性基含有ラジカル重合性モノマー配合の有無に関係なく重合活性への影響はほとんど認められず、同程度の重合活性を示している。これは、本発明の重合開始剤である(チオ)バルビツール酸塩化合物又は(チオ)バルビツール酸塩化合物と過硫酸化合物によるラジカル重合性モノマーの重合反応と水、酸性基含有ラジカル重合性モノマー及び酸反応性フィラーによる酸‐塩基反応が共存しているためである。
水非含有ペースト(PA1〜PA5)の調整
表6に示す配合比率で、水を実質的に含まない水非含有ペースト(PA1〜PA5)の合計5種類を調製した。
表7に示す配合比率で、水を含む水含有ペースト(PB1〜PB3)の合計3種類を調製した。
表8に示した組み合わせにて水非含有ペースト(PA1〜PA5)及び水含有ペースト(PB1〜PB3)を水非含有ペースト/水含有ペースト=0.10g/0.12gの割合にて練板紙上に採取して、30〜40秒間練和を行い、硬化性、圧縮強度、歯質引張接着性及び色調安定性等について検討を行った。その検討結果を表8に示した。
上記の練和割合にて水非含有ペーストと水含有ペーストの練和(30〜40秒間)を行い、練和終了後に練板紙上で練和物を一つの塊に形取る。その練和物の塊上に400kgfの荷重を掛けて硬化状況を確認する。練和物の塊上に荷重を掛けた時、練和物の塊の中に荷重の先端部が貫通しなくなる練和終了時からの時間を硬化時間として測定する。
上記の練和割合にて水非含有ペーストと水含有ペーストの練和(30〜40秒間)を行い、練和終了後に練和物を専用の圧縮強度試験用金型(直径4×高さ6mm:円柱型)に満たし加圧器にて圧接する。練和終了から1分経過後、圧接した状態で温度37℃、湿度100%の雰囲気中に1時間放置して練和物を硬化させる。1時間放置後、金型から硬化物を取り出し、それを試験体とする。その試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用いてクロスヘッドスピード1mm/分の条件下にて圧縮強さ試験を行う。試験は試験体数10個で行い、その平均値を算出する。
屠殺後、抜去した牛歯下顎永久中切歯を24時間以内に冷凍保存したものを解凍後、歯根部の除去及び歯冠部の切断を行って牛歯細片を作製し、その牛歯細片をエポキシ樹脂にて包埋を行った。その包埋牛歯を注水下、600番の耐水研磨紙にて象牙質を露出させて水洗し、乾燥した。
上記の練和割合にて水非含有ペーストと水含有ペーストの練和(30〜40秒間)を行い、練和終了後に練和物をステンレス棒の接着面(耐水研磨紙により600番研磨)に塗り象牙質に押し当てた後、一定荷重下で圧接した。その後、余剰分を除去して接着試験片を作製した。その圧接した状態で、温度37℃、湿度100%の雰囲気中に接着試験片を1時間放置して硬化させた。1時間経過後、その接着試験片を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分にて引張り接着試験を行った。試料数は6個としその平均値を算出した。
上記の練和割合にて水非含有ペーストと水含有ペーストの練和(30〜40秒間)を行い、練和終了後に練和物をカバーガラスの上に置いたステンレス製金型(直径15φ×高さ1mm)に満たした後、上部からカバーガラスを置きガラス板を用いて圧接した。練和終了から1分経過後、圧接した状態で、温度37℃、湿度100%の雰囲気中に練和物を1時間放置して硬化させた。1時間放置後、金型から硬化物を取り出し、それを試験体とした。その試験体を標準白色板(D65/10°X=81.07、Y=86.15、Z=93.38)の背景上に置き、ミノルタ分光色彩計(CM‐2002:ミノルタ社製)を用いて所定の一定条件下(光源:C、視野角:2°、測定面積:11mm)に照明して、色調を測定した。その試験体を50℃蒸留水中に1週間浸漬後、再度同様の条件で色調を測定して、色差(ΔC=√(Δa2+Δb2))を算出した。
セメント組成物26は(チオ)バルビツール酸塩化合物(TMBCa)のみの単独配合系(実施例4−1)、セメント組成物27は(チオ)バルビツール酸塩化合物(TMBCa)と過硫酸化合物(KPS)からなる複合配合系(実施例4−2)、セメント組成物28は複合配合系に有機過酸化物(BPO)、セメント組成物29は複合配合系にアミン化合物(DEPT)、セメント組成物30は複合配合系に有機過酸化物(BPO)とアミン化合物(DEPT)を併用配合した系(実施例4−3〜4−5)である。また、対照としてセメント組成物25は重合開始剤を配合していない系(比較例4−1)、セメント組成物31は重合開始剤として従来から用いられている有機過酸化物(BPO)とアミン化合物(DEPT)のみを配合した系(比較例4−2)をそれぞれ用いた。
また、これらの重合開始剤の中でも(チオ)バルビツール酸塩化合物(TMBCa)のみの単独配合系<(チオ)バルビツール酸塩化合物(TMBCa)と過硫酸化合物(KPS)からなる複合配合系<複合配合系に有機化酸化物(BPO)及び/又はアミン化合物(DEPT)の併用配合系の順に重合活性が高くなることが認められる。
Claims (5)
- 前記水を含まない包装が、さらに、過硫酸塩化合物を含むことを特徴とする、請求項1の硬化性組成物。
- 前記水を含まない包装が、さらに、有機過酸化物およびアミン化合物を含むことを特徴とする、請求項1の硬化性組成物。
- 前記水を含まない包装及び/又は前記水を含む包装が、さらに、ガラスフィラーを含むことを特徴とする、請求項1の硬化性組成物。
- 前記水を含まない包装及び/又は前記水を含む包装が、さらに、酸性基を有したラジカル重合性モノマー及び/又はそれらの重合体ならびに酸反応性フィラーを含むことを特徴とする、請求項1の硬化性組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005126753A JP4786930B2 (ja) | 2005-04-25 | 2005-04-25 | バルビツール酸塩化合物を含む重合開始剤 |
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