JP4396923B2 - ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンおよび関連タンパク質の突然変異タンパク質 - Google Patents

ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンおよび関連タンパク質の突然変異タンパク質 Download PDF

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Description

本発明は、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ラットα−マイクログロブリン関連タンパク質(A2m)またはマウス24p3/ウテロカリン(24p3)の突然変異タンパク質を産生するための方法に関するものであり、ここで、この突然変異タンパク質は、所定の標的に対して、および、本方法により入手可能なこれらの3つのタンパク質のそれぞれの突然変異タンパク質に対して、検出可能な親和性を持つ。本発明はまた、そのような突然変異タンパク質をコードしている核酸、本発明の突然変異タンパク質を含む薬剤の組成物、ならびに、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ラットα−マイクログロブリン関連タンパク質(A2m)およびマウス24p3/ウテロカリン(24p3)の突然変異タンパク質の種々の使用に関する。
リポカリン類(Pervaiz and Brew、FASEB J.1(1987)、209−214)は、種々の有機体から単離され、その生理学的役割が、異なる標的、例えばレチノールまたはフェロモン類の貯蔵または輸送に、ならびに、味覚および嗅覚またはプロスタグランジン合成のような、より複雑な生物学的機能にある、小さく、しばしば単量体の分泌タンパク質のファミリーである(例えば、Flower、Biochem.J.318(1996)、1−14によって概説されている)。リポカリン類は、比較的わずかな相互配列類似性を有し、タンパク質構造ファミリーとしてのその関係は、X線構造解析によって最初に解明された(Sawyerら、Nature 327(1987)、659)。
リポカリンの典型的な標的は、レチノイド、脂肪酸、コレステロール、プロスタグランジン、ビリベルジン、フェロモン、タスタント(tastants)、およびオドラントのような、低分子量の脂溶性物質である(Flower、Biochem.J.318(1996)、1−14、また、Kjeldsen、Biochimica et Biophysica Acta、1482(2000)272−283を参照のこと)。リポカリンの典型的な標的は、レチノール結合タンパク質(Rbp)の場合ビタミンAであり、また、β−ラクトグロブリンである(Papizら、Nature 324(1986)、383−385)。
抗体、すなわち免疫グロブリンは、非共有性相互作用によって標的に選択的に結合するタンパク質の古典的な例である。これらのタンパク質は、バイオテクノロジー、医療、生物解析学の領域で、ならびに、一般的に生物科学および生命科学にて、試薬として重要な役割を果たしている。リガンド/標的の認識、結合または分離に関連して、結合タンパク質に対する何倍もの必要性が有るにもかかわらず、現在、免疫グロブリンは、ほとんど独占的に、そのような目的にために使用されている。例えばレクチンのような、定義されたリガンド結合特性を持つ他のタンパク質の利用は、特定の場合に制限されたままである。
最近、リポカリンファミリーのメンバーが、定義されたリガンド結合特性を持つタンパク質に関する研究の対象となってきた。ドイツ国出願公開公報(German Offenlegungsschrift)第DE197 42 706号、および国際公開公報第WO99/16873号は、抗体のように、所定のリガンドに対して特異的結合特性を示すポリペプチドである、アンチカリン(登録商標)の類を開示している(Besteら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96(1999)1898−1903も参照のこと)。アンチカリン(登録商標)は、ビリン結合タンパク質(Bbp)のアミノ酸位置28〜45、58〜69、86〜99および114〜129を含む直鎖ポリペプチド配列の配列位置に相当する4つの部分にて変異した、リポカリンファミリーのポリペプチドから開始することにより、入手可能である。
さらに、ドイツ国出願公開公報第DE 199 26 068号、および国際公開公報第WO00/75308号、ならびに、Schlehuberら、J.Mol.Biol.(2000)、1105−1120は、ジゴキシゲニンに特異的に結合する、突然変異タンパク質DigAおよびDigA16のような、ビリン結合タンパク質の突然変異タンパク質を記述している。
アンチカリン(登録商標)技術が、原則として確立されたものであり、おそらく、上記のジゴキシゲニン結合Bbp突然変異タンパク質における有望な実用的適用をもたらしてきているけれども、さらなる改善および実用的適用が望ましい。生命科学の領域における、リガンドまたは標的結合タンパク質に関する種々の潜在的な適用の観点より、他のリポカリン足場に基づくアンチカリン(登録商標)の産生は、単に実用的実現のためにさらなる選択肢を持つという理由のために、望ましい。
したがって、所定の標的に対する結合親和性を持つ、他のリポカリン突然変異タンパク質を提供することが、本発明の目的である。
この目的は、本発明の独立した請求項に記載の特徴を持つ方法および突然変異タンパク質によって解決される。
そのような方法は、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ラットα−マイクログロブリン関連タンパク質(A2m)およびマウス24p3/ウテロカリン(24p3)からなる群より選択される、タンパク質の突然変異タンパク質を産生するための方法であって、前記突然変異タンパク質が、所定の標的に対して検出可能な親和性を持ち、hNGALの配列位置33〜54、66〜83、94〜106および123〜136に相当する1つまたはそれ以上の配列位置においてタンパク質を突然変異誘発させる段階(a)を含み、結果としてタンパク質の1つまたはそれ以上の突然変異タンパク質となる、方法である。
本方法は好ましくは、1つまたはそれ以上の突然変異タンパク質から、所定の標的に対する結合親和性を持つ、結果として得られる少なくとも1つの突然変異タンパク質を、前記少なくとも1つの突然変異タンパク質を選別および/または単離することによって濃縮する、さらなる段階(b)を含む。好ましくは、突然変異誘発の結果、タンパク質の多数の突然変異タンパク質、すなわち2つまたはそれ以上の突然変異タンパク質が得られる。
このことは、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ならびにラット(A2m)およびマウス(24p3)からのその相同タンパク質が、対象となる所定の標的に対して結合活性を持つタンパク質の産生のために、好適な足場を提供するという発見に、本発明が基づいていることを意味する。hNGALは、リポカリンファミリーのメンバーとして同定され、その三次元構造は、NMR(Colesら、J.Mol.Biol.289(1999)、139−157)およびX線結晶学(Goetzら、Biochemistry、39(2000)、1935−1941)によって解決されたが、現在まで、その生理学的機能もその天然の標的も、明らかには同定されていない(Kjeldsenら、上記)。したがって、本発明は、はじめて、hNGALについてのみでなく、その相同物A2mおよび24p3についても、可能性のある実用的適用を提供する。
本発明の方法において突然変異誘発させる、タンパク質A2mおよび24p3におけるアミノ酸の位置は、hNGAL、A2mおよび24p3のアミノ酸配列のアラインメントから得られる。hNGALと同一のアミノ酸残基数(178)を持つタンパク質A2mにおいて、突然変異誘発のために使用される配列位置は、hNGALにて選択された位置と同一であり、すなわち、hNGALの配列位置33〜54、66〜83、94〜106および123〜136である。24p3に関しては、相当する配列位置は、33〜54、66〜85、96〜108および125〜138である。したがって、突然変異誘発させるアミノ酸位置は、hNGAL、A2mおよび24p3の三次元構造における4つのループに相当する、4つの配列部分にわたって分布している。
突然変異誘発のために使用する、上記に定義した部分(ループ)の数は、変化しうる。例えば、協調的な突然変異誘発において、これらのループの4つすべてを完全に突然変異させる必要はないが、2または3つのループのみについて、所定の標的に対する検出可能な親和性を持つ突然変異タンパク質を産生させることもまた可能である。
本発明にしたがった方法の好ましい実施形態において、それぞれのタンパク質、すなわちhNGAL、A2mまたは24p3は、hNGALの配列位置40〜50、70〜79、101〜103および125〜132に相当する、1つまたはそれ以上の配列位置において、突然変異誘発される。例えば、hNGALが、突然変異タンパク質の産生のために選択される場合、hNGALは、1つまたはそれ以上の配列位置40〜50、70〜79、101〜103および125〜132において、突然変異誘発される。
本方法のより好ましい実施形態において、それぞれのタンパク質を、hNGALの配列位置40、42、44、46、47、49、50、70、72、73、77、79、101、102、103、125、127、128、130および132に相当する、1つまたはそれ以上の配列位置で、突然変異誘発させる。
とりわけ好ましい実施形態において、hNGALまたはA2mの、または24p3の相当する位置の、配列位置40、42、44、46、47、49、50、70、72、73、77、79、101、102、103、125、127、128、130および132の、少なくとも10、より好ましくは少なくとも15の位置で、突然変異誘発される。もっとも好ましい実施形態において、これらの20の配列位置のすべてをランダム化し、そこで、20のすべての天然に生ずるアミノ酸を、これらの位置においてポリペプチド配列内に組み込ませるのが好ましい。
このことは、本発明が、所定の標的に対する検出可能な親和性を持つ、hNGALまたはその相同物A2mおよび24p3の突然変異タンパク質を、合計20のアミノ酸残基、すなわち、hNGALの配列位置40、42、44、46、47、49、50、70、72、73、77、79、101、102、103、125、127、128、130および132の突然変異誘発によって、より好ましくはランダムな突然変異誘発によって、入手可能であるという発見に基づいていることを、意味している。この発見は、いくつかの理由でとりわけ驚くべきことである。
第WO98/16873号で言及されているように、本発明の方法のこの好ましい実施形態において、合計20のアミノ酸の組をランダム化し、すなわち突然変異誘発させたが、合計16のアミノ酸のみが突然変異した。ランダムなNNSまたはNNKコドン突然変異誘発が、これらの20のアミノ酸位置の完全なランダム化のために使用される場合(すなわち、20の天然のアミノ酸のそれぞれが、これらの選択された20の位置のそれぞれにおいて許容される)、3220の可能性のあるコドンの組み合わせが存在する。16のアミノ酸位置がランダム化のために使用される場合、3216の可能性のあるコドンの組み合わせが存在する。したがって、ランダムに突然変異誘発されるアミノ酸の数が4つ(16から20に)増加すると、結果として、組み合わせの複雑さは32≒10増加する。しかしながら、相当するDNAに基づくライブラリーにおいて物理的に実現できる突然変異体の数は、実験上の限界のため、意図的に増加させることはできず、本技術の状況にしたがい、通常、およそ1・10〜1・1010の値に制限される(Fitzgerald、Drug Discov.Today 5(2000)、253−258)。本発明の1つの例において、ちょうどおよそ1・10の配列変異体(突然変異タンパク質)を含む、コンビナトリアルDNAに基づくライブラリーを使用した。
コンビナトリアル配列空間の小さな接近可能部分が、およそ10の因子によってさらに減少することを考えると、a)可溶性タンパク質に折りたたまれないだけでなく、b)それどころか新規リガンド/標的特性を持つ、hNGAL(またはA2mまたは24p3)の突然変異タンパク質のような、ちょうど1・10を含むコンビナトリアルライブラリーから単離することがほんとうに可能であることは、驚くべきことである。
これに関して、本明細書で取られたアプローチは、第WO99/16873号の教示と対照的であることに気づくべきである。本参考文献にしたがえば、突然変異誘発によって得られた変異体の集団、すなわちライブラリーが、その全体としてまたは少なくともそれからの代表的な選別において、可能な限り完全に実現されうるように、単一の実験内における変異アミノ酸位置の総数をできるだけ低く維持することが、有用であるべきである。
最後に、本アプローチが、タンパク質エピトープに対する特異的結合活性を持つ突然変異タンパク質の産生に関して、うまく使用されることも驚くべきことであることに、注目すべきである(例えば、実施例5、15を参照)。
本発明はまた、所定の標的に対する検出可能な親和性を持つ、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ラットα−マイクログロブリン関連タンパク質(A2m)またはマウス24p3/ウテロカリン(24p3)の突然変異タンパク質を指向し、これは、hNGALの配列位置33〜54、66〜83、94〜106および123〜136に相当するこれらの配列位置にて、それぞれのタンパク質の突然変異誘発によって入手可能である。突然変異タンパク質は、それぞれのタンパク質を、hNGALの配列位置40〜50、70〜79、101〜103および125〜132に相当する位置で、突然変異誘発させることによって入手可能であるものが好ましい。
好ましくは、そのような突然変異タンパク質は、選択された20の配列位置の5〜10にて、より好ましくは8〜12にて、もっとも好ましくは10〜18にて、または10〜20にて、アミノ酸置換を持つ。
1つの好ましい実施形態において、突然変異タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列を持つ。この突然変異タンパク質はまた、TlpcAと呼ばれる。
本発明の突然変異タンパク質は、検出可能な親和性で、すなわち、好ましくは少なくとも10−1の親和定数にて、所望の標的と結合可能である。これより低い親和性は、一般的に、ELISAのような一般的な方法ではもはや測定可能ではなく、したがって、実際の適用に関しては、二次的に重要である。とりわけ好ましいのは、1μMの複合体に関する解離定数に相当する、少なくとも10−1の親和性で、所望の標的に結合する突然変異タンパク質である。所望の標的に対する突然変異タンパク質の結合親和性は、多くの方法、例えば蛍光滴定によって、競合ELISAによって、または表面プラズモン共鳴技術によって、当業者により測定可能である。
突然変異タンパク質が結合する標的(リガンド)は、例えばまた、免疫グロブリンによって認識され、および結合されうる、任意の化学部位である。したがって、標的は、ハプテン、ステロイドホルモンのようなホルモン、または任意のバイオポリマーまたはその断片、例えばペプチド、タンパク質またはタンパク質ドメイン、ペプチド、オリゴデオキシヌクレオチド、核酸、オリゴサッカライドおよびポリサッカライドまたは他の高分子またはこれらの共役物の特徴を示している、遊離型または共役型での化学化合物であり得る。本発明の好ましい実施形態において、標的はタンパク質である。
本発明の突然変異タンパク質は、変異部分、すなわち、hNGALの場合、アミノ酸位置33〜54、66〜83、94〜106および123〜136の領域以外では、hNGAL、A2mまたは24p3の天然のアミノ酸配列を持ちうる。一方、本明細書で開示された突然変異タンパク質はまた、そのような変異が突然変異タンパク質の結合活性および折りたたみを妨害しない限り、野生型タンパク質と比較すると、突然変異誘発させた位置以外でアミノ酸変異を含みうる。このことは、例えば、アミノ酸残基の変異、置換、欠損、挿入ならびにN−および/またはC−末端付加が、hNGAL、A2mまたは24p3の天然のアミノ酸配列内に導入可能であることを含んでいる。
選択した結合領域内または領域外における、選択したタンパク質のアミノ酸配列のそのような改変には、例えば、特定の制限酵素に関する開裂部位の組み込みによる、変異リポカリン遺伝子またはその部分のサブクローニングを単純化するための、単一のアミノ酸位置の指向突然変異誘発が含まれる。例えば、変異Glu28からHis、および/またはThr145からAlaは、これらの位置における2つの新規なBstXI制限部位を介した、変異遺伝子部分のクローニングを単純化するために、hNGAL遺伝子内に導入可能である。さらに、変異は、足場として選択したタンパク質の突然変異タンパク質の特定の特徴、例えばその折りたたみ安定性、または折りたたみ効率、またはそのプロテアーゼに対する抵抗性を改善するために、4つのペプチドループ内または外に導入可能である。
好ましい実施形態において、例えば、hNGALのCys87は、SerまたはAlaに変換され、それによって、ゼラチナーゼBのような他のタンパク質へのその共有結合の架橋(突然変異タンパク質のインビボ適用において起こりうる)が防止され、その単量体の構造が安定化されうる。同様に、本発明の突然変異タンパク質の突然変異誘発および選別の結果として生じうる、Cys残基は、所定の標的の結合に関して必ずしも重要とは限らず、チオール基の共有結合形成または酸化を防止するために、SerまたはAlaによって置換されうる。
hNGALの好ましい変異タンパク質において、Cys87は置換され、および/または突然変異タンパク質は、hNGALと比較して、一方または両方の、アミノ酸置換Glu(28)→His、Thr(145)→Alaを持つ。これに関して、本発明がまた、Cys87だけが他の任意の好適なアミノ酸に置換された、天然のアミノ酸配列を持つ、(組換え型の)hNGALを指向していることに、注目すべきである。このhNGALポリペプチドは、例えばベクターpHNGAL7の使用によって、本発明の他の突然変異タンパク質の産生に関して、本明細書に記述した方法を用いて(実施例4を参照のこと)、産生可能である。
本発明の方法は、好ましくは、(段階(b)にて)、(i)免疫学的ハプテン、ペプチド、タンパク質または他の高分子の特徴を示している、遊離型または共役型の化学化合物からなる群より選択される化合物を、所定の標的として提供すること、(ii)前記標的と、前記標的に対する結合親和性を持つ突然変異タンパク質との間の複合体を形成させるために、多数の突然変異タンパク質を、前記標的と接触させること、および(iii)結合親和性がないか、または実質的な結合親和性をもたない、突然変異タンパク質を除去すること、を含む。
結合親和性がないか、または実質的な結合親和性がないということは、使用する条件下において、複合体が、標的とその標的に接触させた多数の突然変異タンパク質との間で形成されないことを意味する。複合体形成が、結合相手の濃度、競合剤として働く化合物の濃度、緩衝液のイオン強度などのような多くの因子に依存していることは、当業者には明らかである。選別および濃縮は、一般的に、標的に対して少なくとも10−1の親和定数を持つ突然変異タンパク質を単離および濃縮させる条件下で実施される。しかしながら、洗浄および溶出段階は、種々の逼迫性の下で実施可能である。例えば、少なくとも10−1の親和定数を持つ突然変異タンパク質が単離されるべきである場合、洗浄および溶出は、さらに大きな逼迫性、すなわちより逼迫した条件下で実施可能である。速度論的特徴による選別もまた可能である。例えば、選別は、標的の、前記標的(レセプター)からのゆっくりとした解離、言い換えれば低Koff速度を示す突然変異タンパク質との複合体形成が好まれる条件下で、実施可能である。
本明細書で使用するところの語句「多数(plurality)」は、そのアミノ酸配列において互いに異なる、少なくとも2つの突然変異タンパク質が存在することを意味する。突然変異誘発によって産生される突然変異タンパク質の上限は、通常、実験条件によって制限され、一般的に10〜1012である。
本明細書で使用するところの語句「突然変異誘発(mutagenesis)」は、hNGAL、A2mまたは24p3の配列位置において天然に存在するアミノ酸が、それぞれの天然のポリペプチド配列におけるこの特定の位置において存在しない、少なくとも1つのアミノ酸によって置換可能であるように、実験条件が選択されることを意味する。語句「突然変異誘発」にはまた、1つまたはそれ以上のアミノ酸の欠損または挿入による、配列部分の長さを(さらに)改変することが含まれる。したがって、例えば、選択した配列位置における1つのアミノ酸は、3つのランダム突然変異の伸張によって置換され、野生型タンパク質の(それぞれの部分の)長さに比較して2つのアミノ酸残基の挿入が導かれることは、本発明の範囲内である。語句「ランダム突然変異誘発(random mutagenesis)」は、あらかじめ決めた単一のアミノ酸(変異)が、特定の配列位置に存在しないが、少なくとも2つのアミノ酸が、ある一定の可能性を持って、突然変異誘発の間に、選択した配列位置内に組み込まれうる、ということを意味する。
そのような実験条件は、例えば、変異されうる位置で、例えばhNGALに関する構造遺伝子において、縮重塩基組成物をもつコドンを挿入することによって、達成可能である。例えば、コドンNNKまたはNNSを使用することによって、突然変異誘発の間にすべての20のアミノ酸+アンバー終止コドンの取り込みが可能になり、一方で、コドンVVSは、ポリペプチド配列の選択した位置への組み込みから、アミノ酸Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、Valを除外するので、組み込まれる可能性のあるアミノ酸の数を14に制限し;コドンNMSを使用すると、例えば、選択した配列位置における組み込みから、アミノ酸Arg、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Valを除外するので、選択した配列位置において、可能性のあるアミノ酸の数を11に制限する。本発明の方法の好ましい実施形態において、ランダム突然変異誘発が実施され、そこで、少なくとも4、好ましくは6、より好ましくは8〜12または8〜15のアミノ酸が、hNGAL、A2mまたは24p3の選択した配列位置へ組み込まれることを可能にする。とりわけ好ましい実施形態において、少なくとも1つの配列位置が完全にランダム化され、すなわち、すべての20のアミノ酸が、突然変異誘発の間に、この位置において組み込まれることを可能にする。上記より、hNGALのようなそれぞれのタンパク質の特定の配列位置において天然に存在するアミノ酸がまた、この位置を突然変異誘発させた後、突然変異タンパク質内に存在しうることもまた、明らかである。
本発明の方法の好ましい実施形態において、標的はタンパク質である。タンパク質は、遊離型または共役型のいずれかで、または突然変異タンパク質の選別のための融合タンパク質として、提供可能である。
本発明の方法の好ましい実施形態において、hNGAL、A2mおよび24p3より選択されるそれぞれのタンパク質の多数の突然変異タンパク質をコードしている核酸が用いられる。この核酸は、突然変異誘発の結果として生じるものであり、そして、所定の標的の結合のための、少なくとも1つの突然変異タンパク質を選別するために、M13−ファミリーの線状バクテリオファージのコートタンパク質pIIIまたはこのコートタンパク質の断片をコードしている遺伝子と、3’末端において動作可能に融合する。
突然変異誘発の結果として生じる核酸は、PCRを使用して入手可能である。本発明の方法の好ましい実施形態において、それぞれのタンパク質の変異部分をコードしている核酸の産生には、以下の2段階が含まれる。第一に、そのそれぞれが変異タンパク質の一部分をコードしている、2つの核酸断片は、これらの断片が部分的に重複するように、PCRによって産生される。これらの断片は、完全な変異構造遺伝子を含む核酸を得るために、第二増幅段階において、2つのフランキングプライマーとともに使用する(この二段階手順を説明している、図2および実施例1を参照のこと)。重複することから、全長PCR産物は、任意の追加の核酸を必要とすることなしに、この反応の間に増幅される。2つの断片は、好適なプライマーの対または対群にて、2つの別々の増幅反応で得ることができる(また、そのような2つの断片がPCR反応AおよびBにて産生されることを示している、図2および実施例1を参照のこと)。
いくつかの適用に関して、標識した形態で、hNGAL、A2mまたは24p3の本発明の突然変異タンパク質を使用することが有用である。したがって、本発明はまた、酵素標識、放射活性標識、蛍光標識、色素標識、ルミネセンス標識、ハプテン、ビオチン、ジゴキシゲニン、金属錯体、金属および金コロイドからなる群より選択された標識と共役する、本明細書で足場として使用される、3つのタンパク質のそれぞれの突然変異タンパク質にも言及する。突然変異タンパク質はまた、有機分子に共役可能である。本明細書で使用するところの語句「有機分子」は、好ましくは、100〜2000ダルトン、好ましくは1000ダルトンの分子量を持つ、少なくとも2つの炭素原子を含むが7つ未満の回転可能な炭素結合を含む有機分子、および1つまたは2つの金属原子を含む分子を意味する。
一般的に、直接的または間接的に、化学的、酵素的または物理的反応において、検出可能な化合物または検出に使用可能であるシグナルを産生する、任意の適切な化学物質または酵素で、突然変異タンパク質を標識することが可能である。物理的反応の例は、放射線を用いた励起後の蛍光発光、または放射活性標識によるX線の放射であり;アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはβ−ガラクトシダーゼが、その後検出可能な色素(着色)化合物の形成を触媒する酵素標識の例である。一般的に、免疫グロブリンのFc部位内の糖部分とともに排他的に使用するものを除いて、抗体について使用されるすべての標識もまた、本発明の突然変異タンパク質への共役のために使用可能である。これらの共役物は、当業者に知られた方法によって調製可能である。
本明細書で開示した突然変異タンパク質の実際の適用に関して、特に利点である1つの選択肢は、融合タンパク質の形態での突然変異タンパク質の使用である。そのような融合タンパク質の好ましい実施形態において、酵素、タンパク質またはタンパク質ドメイン、ペプチド、例えばシグナル配列および/またはアフィニティタグのようなペプチドは、突然変異タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端に、動作可能に融合する。
融合パートナーは、突然変異タンパク質における新規の特徴、例えば、酵素活性、またはタンパク質、高分子または低分子量標的のような他の分子に対する親和性を与えるのに、好適でありうる。例えば、色素反応または蛍光反応を触媒する酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、または細胞毒性薬剤の放出のために役立つ酵素との融合が可能である。実際に利点のある可能性のある融合パートナーのさらなる例は、タンパク質Gのアルブミン結合ドメイン、タンパク質A、抗体断片、オリゴマー形成ドメイン、毒素、または本発明の突然変異タンパク質、または、異なるまたは同一の標的特異性を持つアンチカリン(登録商標)のような、結合ドメインである。後者の特別の例は、本発明のhNGAL突然変異タンパク質、およびドイツ国特許第DE199 26 068号に開示されたジゴキシゲニン結合突然変異タンパク質DigA16を含む、融合タンパク質であり得る。アフィニティクロマトグラフィーによる精製のために、および/または検出のために使用可能である(例えばStrep−Tag(登録商標)の、ストレプトアビジンに対する特異的親和性を用いる)、Strep−Tag(登録商標)またはStrep−Tag(登録商標)II(Schmidtら、J.Mol.Biol.255(1996)、753−766)またはオリゴヒスチジンタグ(例えばHis6−タグ)のようなアフィニティタグ、または、グルタチオン−S−トランスフェラーゼのようなタンパク質が、好ましい融合パートナーのさらなる例である。グリーン蛍光タンパク質(GFP)のような、色素特性または蛍光特性を持つタンパク質もまた、好適な融合パートナーである。
本明細書で使用するところの語句、融合タンパク質にはまた、例えば、シグナル配列を備えた、hNGALの突然変異タンパク質のような、本発明の突然変異タンパク質も含まれる。本発明にしたがったポリペプチドのN−末端でのシグナル配列は、生合成の間、例えば大腸菌(E.coli)のペリプラズマ内へ、または真核細胞の内腔へ、または細胞を取り囲む培地へ、といった特定の細胞画分へポリペプチドを指向させるのに好適であり得る。そのようにした場合、シグナル配列は、シグナルペプチダーゼによって開裂する。ポリペプチドのN−末端に必ずしも位置しない、そして、特定の細胞画分においてその局在化が許容される、他の標的配列またはシグナル配列を使用することも可能である。大腸菌のペリプラズム内への分泌に関する好ましいシグナル配列は、OmpA−シグナル配列である。多数のさらなるシグナル配列が、本技術分野で知られている。
本発明はまた、本発明にしたがった突然変異タンパク質またはその融合タンパク質をコードしている配列を含む核酸分子を指向している。好ましい実施形態において、核酸分子は、配列番号12の突然変異タンパク質をコードしているヌクレオチド配列を含む。
遺伝的コードの縮重が、同一のアミノ酸を特定する他のコドンによる、特定のコドンの置換を許容し、したがって同一のタンパク質を生じさせるので、本発明は、特定の核酸分子に限定はされず、本発明にしたがったアミノ酸配列を持つ突然変異タンパク質をコードしているヌクレオチド配列を含む、すべての核酸分子を含む。
本明細書にて開示したような、hNGAL、A2mまたは24p3の任意の突然変異タンパク質をコードしているヌクレオチド配列を含む核酸分子は、宿主細胞(インビボ)における核酸分子の発現、または細胞フリー系(インビトロ)におけるその転写および翻訳ができるように、制御配列に動作可能に結合しうる。
DNAのような核酸分子は、それが転写情報または翻訳情報が含まれるヌクレオチド配列を含む場合に、および、そのような配列がポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列に「動作可能に結合(operably linked)」する場合に、「核酸分子またはコードするヌクレオチド配列の発現が可能である」または「ヌクレオチド配列を発現させること」が可能であると考えられる。動作可能な結合は、調節DNA配列および発現させようとするDNA配列が、遺伝子発現を許容するような方法にて連結する、結合である。遺伝子発現に必要な調節領域および要素の正確な性質は、生物によって変化しうるが、しかし、一般に、例えば原核生物においては、細胞内での転写領域機能性および細胞内での転写終止領域機能性を含みうるプロモーター調節配列の両方を含む、プロモーター領域が含まれるであろう。転写または翻訳で使用する要素は、プロモーター、エンハンサー、リーダー配列、転写開始部位および転写終止部位、ポリアデニル化シグナル、Shine−Dalgarno配列のようなリボソーム結合部位などである。これらの調節配列および/または本発明の突然変異タンパク質は、ベクターの一部分であり得る。したがって、本発明はまた、本明細書で開示したような、hNGAL、A2mまたは24p3の突然変異タンパク質をコードしている核酸配列を含むベクターにも、言及する。
さらなる実施形態において、本発明はまた、本発明の突然変異タンパク質またはその融合タンパク質の産生のための方法にも関する。この方法において、突然変異タンパク質または融合タンパク質は、細菌または真核宿主生物内で、遺伝子工学的方法によって、突然変異タンパク質をコードしている核酸から開始して産生され、この宿主生物またはその培養液より単離される。本目的のために、好適な宿主細胞は、通常まず、例えば本発明のNGAL突然変異タンパク質をコードしている核酸分子を含むベクターを用いて形質転換される。任意の原核または真核宿主細胞でありうる宿主細胞は、ついで、ポリペプチドの生合成を可能にする条件下で培養される。ついで、ポリペプチドは、通常、細胞または培養培地のいずれかから回収される。ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、A2mおよび24p3のそれぞれは、1つの構造ジスルフィド結合を含んでいるので、好適なシグナル配列を用いることによって、酸化チオール/ジスルフィドレドックス環境を持つ細胞画分内に、ポリペプチドを指向することが好ましい。そのような酸化環境は、大腸菌のような細菌のペリプラズムにおいて、または真核細胞の小胞体の内腔に存在し、通常、ジスルフィド結合の正確な形成を支持する。しかしながら、宿主細胞、好ましくは大腸菌の細胞質ゾルにおいて、本発明のポリペプチドを産生することも可能である。この場合、ポリペプチドは、例えば、封入体の形態で産生され、続いてインビトロで再生されうる。さらなる選択肢としては、細胞質ゾル中に酸化環境を持ち、したがって細胞質ゾル中にて天然のタンパク質の産生を可能にする、特異的に変異した系統の使用があげられる。
以上の開示から明らかなように、本発明の突然変異タンパク質、または、その融合体もしくは共役物は、多くの適用で使用可能である。一般的に、本明細書で開示した突然変異タンパク質は、Fc部位の糖付加にとりわけ依存するものを除いて、抗体が使用されるすべての適用において使用可能である。
突然変異タンパク質の好ましい使用は、本発明の突然変異タンパク質またはその融合タンパク質による標的の検出であり、好適な条件下で、突然変異タンパク質を所定の標的を含んでいると思われる試料と接触させること、それによって、突然変異タンパク質と所定の標的との間の複合体の形成を可能にすること、および、好適なシグナルによって、複合体突然変異タンパク質を測定すること、の段階が含まれる。このシグナルは、以上で説明したように、蛍光または色素標識のような標識によって引き起こされうる。このシグナルはまた、結合、すなわち複合体形成それ自身によって引き起こされる、物理的特性の変化によって引き起こされうる。そのような特性の例は、表面プラズモン共鳴であり、その値は、金箔のような表面上に1つが固定された、結合パートナーの結合の間に変化する。
以上で記したように、本明細書で開示した突然変異タンパク質およびその誘導体は、抗体またはその断片と同様の多くの領域で使用可能である。突然変異タンパク質は、固体相への結合のために好ましく使用され、突然変異タンパク質の標的、またはこの標的の共役物または融合タンパク質は、固定化または分離可能である。さらに好ましいのは、酵素、抗体または放射活性物質、または生化学的活性もしくは定義された結合特性を持つ他の群で標識化するために、突然変異タンパク質を使用することであり、突然変異タンパク質の標的、またはこの標的の共役物または融合タンパク質が、検出可能であるか、またはそれに接触させることが可能である。本発明の突然変異タンパク質は、例えば、ELISAまたはウエスタンブロットのような確立された生物解析方法による化学構造の検出において、顕微鏡にて、または免疫センサーにて、役に立ちうる。ここで、検出シグナルは、好適な突然変異タンパク質の共役物または融合タンパク質を用いて直接的に、またはそれに対する抗体を使用することにより、または例えばアフィニティタグを用いることにより、結合した突然変異タンパク質の検出で間接的に、のいずれかで生じうる。
hNGAL、A2mまたは24p3の突然変異タンパク質に関する多くの可能性のある適用が、医療においてなされている。診断におけるその使用に加えて、例えば組織−または腫瘍−特異的細胞表面分子に結合する、本発明の突然変異タンパク質ポリペプチドを調製することができる。そのような突然変異タンパク質は、例えば、「腫瘍イメージング」のために、共役型または融合タンパク質として、あるいは癌治療に関して直接的に使用可能である。
本明細書で開示した、他の関連する、そして好ましい突然変異タンパク質の使用は、標的の検証、すなわち、疾患または疾病の進展に関与すると考えられるポリペプチドが、確かに、疾患または疾病のいくらかの原因であるかどうかを試験すること、である。薬理学的な薬物標的として、タンパク質の検証のためにこのように使用することは、その本来の構造をしたタンパク質の表面領域を特異的に認識する、本発明の突然変異タンパク質の能力、すなわち、天然のエピトープに結合する、本明細書で開示した突然変異タンパク質の能力を利用するものである。これに関して、天然のエピトープに結合するこの能力が、Koehler and Milstein(Nature 256(1975)、495−497)の古典的な免疫プロトコールによって、またはファージディスプレイのようなコンビナトリアル技術によって、産生されたかどうかに関わりなく、限られた数の組換え抗体に関してのみ報告されてきた、ということに注目すべきである。薬物標的の検証のための、突然変異タンパク質の使用には、タンパク質である標的の検出のみでなく、タンパク質ドメイン、ペプチド、核酸分子、有機分子または金属錯体である標的の検出も含まれる。
さらなる観点において、本発明は、本発明にしたがった、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ラットα−マイクログロブリン関連タンパク質(A2m)、またはマウス24p3/ウテロカリン(24p3)の突然変異タンパク質、またはその融合タンパク質および医薬上許容可能な担体を含む、薬剤の組成物に言及する。
医薬上の対象の、例えばhNGAL突然変異タンパク質のような突然変異タンパク質は、例えば、腫瘍特異的細胞表面に結合している突然変異タンパク質でありうる。それはまた、特定の薬剤に結合する、および、この薬剤に関して「徐放性放出(sustained release−release)」型として、または患者の体内における薬物の長期貯蔵として役立つ、突然変異タンパク質でもありうる。そのような突然変異タンパク質は、タンパク質性薬剤に関して、任意の治療的に効果的な経路、例えば、非経口、鼻腔内、直腸内、バッカルにより、または、スプレーもしくはエアロゾルを用いた呼吸管への吸入によって、投与可能である。投与は、望むような、従来の非毒性の医薬上許容可能な担体、アジュバントおよび賦形剤を含む、用量ユニット処方(dosage unit formulations)にてなされうる。語句「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、動脈内注射および注入技術のような、送達方法を含む。低い分子量のため、吸入は、本発明の医薬上有用な突然変異タンパク質を投与するための好ましい方法の1つである。
したがって、本発明の突然変異タンパク質は、既知の医薬上許容可能な成分および調製方法の両方を使用して、組成物の中に処方可能である。例えば、Remingtonら、Pharmaceutical Sciences、15th Ed.、Mack Pub.、Easton(1975)を参照のこと。
吸入のために、本発明の突然変異タンパク質はまず、微粒子分散型にすることができる。これは、それぞれのポリペプチドを含む、水性エアロゾルまたは固体粒子を調製することによって達成可能である。通常、水性エアロゾルは、所望のポリペプチドの水溶液または懸濁液を、従来の医薬上許容可能な担体および安定剤とともに処方することによって、産生される。担体および安定剤は、各ポリペプチドに関する要求に依存して変化し、これらには、非イオン性界面活性剤(例えばTweens、Pluronicsまたはポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害のタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンのようなアミノ酸、緩衝液、塩、糖または糖アルコールが含まれうる。処方はまた、気管支拡張剤を含みうる。処方は無菌でなされる。エアロゾルは一般的に、等張液から調製される。粒子は任意に、正常な肺の界面活性タンパク質を含む。タンパク質の吸入のための例示的処方は、例えば、米国特許第6、099、517号にて開示されている。本発明の突然変異タンパク質の吸入のための乾燥粉末組成物の投与もまた可能である。好適な乾燥粉末処方は、例えば、米国特許第6、123、936号にて記述されている。
吸入に関して好適な薬剤の組成物を調製するための1つの選択肢は、水性または非水性の、例えば過フッ化炭化水素高圧ガスの、懸濁液中に、粒子のエアロゾルを形成することが含まれる。そのような粒子には、例えば、ポリペプチドまたは、リポソームもしくはマイクロカプセルに封入したポリペプチドの分子内凝集体が含まれる。エアロゾルは、肺刺激物、すなわち、急性気管支狭窄、咳、肺水腫または組織破壊の原因となる物質を、含まないようにすべきである。しかしながら、非刺激性吸収増強剤は、本明細書での使用のために好適である。
非経口投与のために好適な組成物には、医薬上許容可能な無菌の水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルション、ならびに、使用の直前における、無菌の注射可能溶液または分散液への再構築のための無菌粉末が含まれる。好適な水性および非水性担体、希釈液、溶媒または賦形剤の代表的な例には、水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびこれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油、オレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが含まれる。流動性は、レシチンのようなコーティング物質の使用、必要な粒子サイズ(分散液の場合)および界面活性剤の維持を含む、種々の方法によって維持されてよい。
組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤のようなアジュバント、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸のような抗菌および抗真菌剤、糖、塩化ナトリウムのような等張剤、または、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる薬剤も含まれうる。突然変異タンパク質は、ポリマーマトリックス、リポソームおよびミクロスフィアのような、遅放出または徐放、または標的指向送達システムに組み込んでよい。
注射可能な処方は、細菌除去フィルターを介した濾過を含む種々の方法によって、または、使用の直前において無菌水または他の無菌の注射可能な溶媒中に溶解または分散可能な、無菌固体組成物の形態で、滅菌剤を組み込むことによって、滅菌可能である。
本明細書で足場として使用される各タンパク質に関するコード配列は、本発明において選択されたペプチド部分の突然変異誘発のための開始点として働きうる。hNGALのコード配列は、Bundgardら、Biochem.Biophys.Res.Commun.202(1994)、1468−1475によって記述された。A2mおよび24p3のコード配列はそれぞれ、例えばChanら、Nucleic Acid Res.16(1988)11638、およびStoeszら、Oncogene 11(1995)、2233−2241によって発行された。4つのペプチドループにおけるアミノ酸の突然変異誘発に関して、当業者は、部位特異的突然変異誘発またはポリメラーゼ連鎖反応を用いた突然変異誘発のための、種々の既知の方法を自由に使うことができる。突然変異誘発方法は、例えば、所望の位置において縮重塩基組成物をもつ、合成オリゴデオキシヌクレオチドの混合物が、突然変異の導入のために使用可能であるということで、特徴づけられる。例えばイノシンのように、塩基対特異性が減少した、ヌクレオチド構築ブロックの使用もまた、選択した配列部分またはアミノ酸位置への突然変異の導入のための選択肢である。hNGALに関して、4つの上記に引用したペプチドループに相当する、6つの代わりに4つの配列部分のみが、この目的のために処理されなければならないので、標的結合部位の突然変異誘発のための手順は、抗体と比較して単純化される。さらなる可能性は、いわゆる三重突然変異誘発と呼ばれるものである。この方法は、コード配列内への組み込みのために、それぞれが1つのアミノ酸をコードしている、異なるヌクレオチドトリプレットの混合液を使用する。
本明細書で使用する足場タンパク質の4つの選択したペプチドループの領域において(すなわちhNGALの場合、配列位置33〜54、66〜83、94〜106および123〜136において)、突然変異を導入するための種々の適用可能な方法の1つは、それぞれが、突然変異されるべき4つの相当する配列部分の1つに部分的に由来する、4つのオリゴデオキシヌクレオチドを使用することに基づいている。これらのオリゴデオキシヌクレオチドの産生において、コドンまたはアンチコドンが、すべてのアミノ酸のために、または遺伝的コードおよびこの混合物の組成物にしたがって、この位置での所望のアミノ酸の選別のために、ランダムに生じるように、当業者は、突然変異されるべきアミノ酸位置に相当するそれらのヌクレオチドトリプレットの合成に関して、核酸構築ブロックの混合液を使用可能である。
例えば、第一オリゴデオキシヌクレオチドは、その配列において、突然変異した位置から離れて、少なくとも部分的に、ペプチドループのコード鎖に相当し、ほとんどN−末端部位において、hNGALのポリペプチド配列内に局在している。したがって、第二オリゴデオキシヌクレオチドは、ポリペプチド配列において続く第二配列部分に関する非コード鎖に、少なくとも部分的に相当する。第三のオリゴデオキシヌクレオチドは、第三配列部分に相当するコード鎖に、少なくとも部分的に相当する。最後に、第四のオリゴデオキシヌクレオチドは、第四配列部分に対する非コード鎖に、少なくとも部分的に相当する。ポリメラーゼ連鎖反応は、鋳型として、足場タンパク質および/またはその相補的な鎖をコードしている核酸を使用することによって、それぞれ第一および第二オリゴデオキシヌクレオチドで実施可能であり、必要ならば別々に、第三および第四オリゴデオキシヌクレオチドにて実施可能である。
これらの反応の両方の増幅産物は、種々の既知の方法によって、第一から第四配列部分からの配列を含み、選択したアミノ酸位置において突然変異を持つ核酸内に、結合可能である。最後に、両方の産物は、例えば、プライマーとしてフランキングオリゴデオキシヌクレオチドを、および、第二および第三配列部分間の配列に寄与する1つまたはそれ以上の仲介核酸分子を使用して、新しいポリメラーゼ連鎖反応にかけられうる。この手順を、図1において略図的に再現している。使用するタンパク質の遺伝子配列内での、突然変異誘発およびその配置のために使用するオリゴデオキシヌクレオチドの数の選択においては、当業者はさらに、多くの代案を自由に行うことができる。
使用するタンパク質の4つのペプチドループを含む配列領域をコードしている、および、上記において定義した選択した部分において突然変異を含む、核酸分子は、例えばhNGALをコードしている核酸の欠損5’−および3’−配列、および/またはベクターと結合することによって連結可能であり、既知の宿主生物内でクローン化可能である。多数の手順は、結合およびクローニングに関して、当業者が自由に利用可能である。例えば、増幅の経過において、またhNGALに関する核酸配列における相当する位置で存在する、制限エンドヌクレアーゼ認識配列を持つ合成核酸分子は、相当する制限酵素での加水分解の後、結合を可能にするように、クローン化されるべき核酸の両末端において結合可能である。本発明で使用するそれぞれのリポカリンをコードしている核酸の欠損5’−および3’−配列はまた、PCRを介して、突然変異した配列位置を含む核酸分子に結合可能である。
突然変異誘発に関して選択したタンパク質をコードしている遺伝子内のより長い配列部分はまた、例えば、エラー率が増加する条件下でのポリメラーゼ連鎖反応の使用によって、化学的突然変異誘発によって、または細菌突然変異誘発遺伝子株によって(Lowら、J.Mol.Biol.260(1996)、359−368)、既知の方法を介して、ランダム突然変異誘発させることが可能である。そのような方法はまた、すでに産生された突然変異タンパク質の標的親和性または標的特異性のさらなる最適化のために使用可能でもある。例えば、hNGAL配列位置の33〜54、66〜83、94〜106および123〜136の部分の外に存在する可能性のある突然変異は、しばしば許容可能であるか、または、例えば、突然変異タンパク質の折りたたみ効率または折りたたみ安定性を改善することに寄与する場合に、利点でさえありうる。
突然変異誘発させたコード核酸配列を発現させた後、所定の標的に結合する多数のそれぞれの突然変異タンパク質に関する遺伝情報を持つクローンは、得られたライブラリーから選択できる。既知の発現戦略および選別戦略を、これらのクローンの選別のために使用可能である。この種類の方法は、「ファージディスプレイ(phage display)」技術(Hoess、Curr.Opin.Struct.Biol.3(1993)、572−579;Wells and Lowman、Curr.Opin.Struct.Biol.2(1992)、597−604)、または「コロニースクリーニング(colony screening)」法(Skerraら、Anal.Biochem.196(1991)、151−155)、または「リボソームディスプレイ(ribosome display)」(Roberts、Curr.Opin.Chem.Biol.3(1999)268−273)のような、組換え抗体断片の産生または遺伝子工学関連で、記述されてきた。
「ファージディスプレイ」技術(Hoess、上記;Wells and Lowman、上記;Kayら、「ペプチドおよびタンパク質のファージディスプレイ−ラボラトリーマニュアル(Phage Display of Peptides and Proteins − A Laboratory Manual)」(1996)、Academic Press)の実施形態は、所望の結合特性を持つ突然変異タンパク質に関する、本発明にしたがった選別方法の例として、本明細書であげられている。「ファージディスプレイ」技術の種々の他の可能性のある実施形態は、参考文献にて、本開示に組み込まれている。例示的な選別方法に関して、N−末端にシグナル配列、好ましくはOmpA−シグナル配列を持ち、C−末端において、ファージコート内に組み込まれる、ファージM13(Model and Russel、「バクテリオファージ(The Bacteriophages)」、Vol.2(1988)、Plenum Press、New York、375−456)のコートタンパク質pIIIまたはこのコートタンパク質の断片を持つ、融合タンパク質として、突然変異したhNGAL構造遺伝子の発現に影響を与えるファスミドが、産生される。天然のコートタンパク質pIIIのアミノ酸217〜406のみを含む、ファージコートタンパク質のC−末端断片△pIIIは、融合タンパク質を産生するために好ましく使用される。とりわけ好ましいのは、位置201のシステイン残基が欠損しており、または他のアミノ酸によって置換された、pIIIからのC−末端断片である。
融合タンパク質は、例えば、融合タンパク質またはその部分の固定化またはその後の精製を可能にする、抗体に対するアフィニティタグまたはエピトープ配列のような、他の構成成分を含みうる。さらに、終止コドンは、hNGALまたはその突然変異タンパク質をコードしている領域と、コートタンパク質またはその断片に関する遺伝子部分の間に局在することができ、終止コドン、好ましくはアンバー終止コドンが、好適なサプレッサー株における翻訳の間に、少なくとも部分的にアミノ酸に翻訳される。
本明細書でのファスミドは、例えばM13K07、VCS−M13またはR408のようなヘルパーファージによる、細菌細胞のスーパー感染の間、環状ファスミドDNAの1つの鎖が、コートタンパク質でパッケージされ、いわゆるファージミドとして培地内に放出されるように、例えばM13またはf1(Beck and Zink、Gene 16(1981)、35−58)のような線状バクテリオファージまたはその機能的部分の遺伝子内領域を持つプラスミドを記述している。一方では、このファージミドは、その表面内に、コートタンパク質pIIIまたはその断片との融合として組み入れられた、それぞれのファスミドによってコードされたhNGAL突然変異タンパク質を持ち、融合タンパク質のシグナル配列は、通常開裂する。他方、それは、ヘルパーファージからの天然のコートタンパク質pIIIの1つまたはそれ以上のコピーをもち、したがって、一般的にF−またはF’−プラスミドを持つ細菌株であるレシピエントに感染可能である。この方法で、それぞれのhNGAL突然変異タンパク質に関する遺伝情報を含むパッケージされた核酸と、ファージミドの表面上に少なくとも部分的に機能的形態で存在するコードされたタンパク質との間で、物理的結合が達成される。
ベクターphNGAL5(図1)は、hNGAL突然変異タンパク質をコードしている配列を持つファスミドの構築において、例えば使用可能である。ペプチドループをコードしている核酸は、例えば、両方のBstXI−制限部位を介して、ベクターphNGAL5内に挿入されうる。組換えファスミドは、大腸菌株、例えばXL1−blue(Bullockら、BioTechniques 5(1987)、376−379)またはTG1に形質転換することによって組み込まれる。この方法において、融合タンパク質として多くの異なるhNGAL突然変異タンパク質を産生可能であるクローンが、作られる。
このライブラリー、すなわち得られたクローンのコレクションを、続いて、M13−ヘルパーファージを用いて、既知の方法にしたがって、液体培養液中でスーパー感染させる。この感染の後、培養液のインキュベーション温度を、ファージミドの産生のために減少させることが出来る。好ましいインキュベーション温度は、ファージコートタンパク質またはその断片を持つ融合タンパク質の構成成分として、hNGAL突然変異タンパク質の最適な折りたたみが予想されるようなものである。感染期の間または後に、hNGAL突然変異タンパク質との融合タンパク質に対する遺伝子の発現は、例えば、無水テトラサイクリンの添加によって、細菌細胞内で誘導可能である。誘導条件は、産生されたファージミドの実質的な画分が、少なくとも1つのhNGAL突然変異タンパク質をもたらすように選択される。ファージミドは、例えば6〜8時間の培養液インキュベーション期の後に単離される。例えばポリエチレングリコールによる沈殿のような、種々の方法が、ファージミドの単離に関して既知である。
単離したファスミドを、所望の標的とのインキュベーションによる選別にかけることができ、そこで、標的は、そのコート中に、融合タンパク質として所望の結合活性を持つ突然変異タンパク質を持つファージミドの、少なくとも一時的な固定を許容する形態で存在する。当業者に既知の種々の実施形態の中で、標的は例えば、血清アルブミンのような担体タンパク質と共役し、例えばポリスチレンのように、タンパク質結合表面へこの担体タンパク質を介して結合しうる。ELISA技術に好適なマイクロタイタープレート、またはいわゆる「免疫−スティック(immuno−sticks)」は、この標的固定のために好ましく使用される。あるいは、標的の共役物はまた、例えばビオチンのような他の結合群と実行可能である。ついで標的は、例えばマイクロタイタープレートまたはストレプトアビジンまたはアビジンでコートされた常磁性粒子のような、この群に選択的に結合する表面上に固定可能である。
標的によってチャージされた表面上に存在する、残余タンパク質−、またはファージミド−結合部位は、ELISA法に関して既知のブロッキング溶液で飽和可能である。ファージミドは、例えば、続いて、表面上に固定した標的と、生理学的緩衝液中で接触させる。非結合のファージミドは、複数回の洗浄で除去される。続いて、表面上に残っているファージミド粒子を溶出する。溶出に関して、遊離標的を溶液として加えることが可能である。しかし、ファージミドはまた、プロテアーゼの添加によって、または例えば、酸、塩基、界面活性剤またはカオトロピック塩の存在下、または穏やかな変性条件下で、溶出可能である。好ましい方法は、pH2.2の緩衝液を用いた溶出であり、ここで、溶出液を続いて中和する。
その後、大腸菌細胞を、一般的に知られた方法を用いて、溶出したファージミドに感染させる。核酸はまた、溶出したファージミドから抽出し、他の様式にて、細胞内に組み込むこともできる。この方法で得た大腸菌クローンから開始して、ファージミドは、上記の方法にしたがって、M13−ヘルパーファージでのスーパー感染によって順に産生され、この方法で増殖したファージミドを再び、固定化標的を持つ表面上での選別にかける。濃縮形態で本発明の突然変異タンパク質を持つファージミドを得るために、多数の選別サイクルが、しばしば必要である。選別サイクルの回数は、好ましくは、続く機能解析において、研究した少なくとも0.1%のクローンが、所定の標的に対して検出可能な親和力を持つ突然変異タンパク質を産生するように、好ましく選択される。大きさに依存して、すなわち使用したライブラリーの複雑さに依存して、2〜8サイクルが、一般的にこのために要求される。
選別された突然変異タンパク質の機能的解析のために、大腸菌株を、選別サイクルから得たファージミドに感染させ、相当する二本鎖ファスミドDNAを単離する。このファスミドDNAから、またはファージミドから抽出した一本鎖DNAから開始して、本発明の選択した突然変異タンパク質の核酸配列は、この目的のために一般的である方法によって決定可能であり、アミノ酸配列は、それより誘導可能である。変異領域または全hNGAL突然変異タンパク質の配列は、他の発現ベクター内でサブクローン化し、好適な宿主生物にて発現可能である。phNGAL7は、例えば、発現ベクターとして使用可能であり(図3を参照のこと)、phNGAL7誘導体による発現は、大腸菌株、例えば大腸菌−TG1にて実施可能である。遺伝子工学により産生された、hNGALの突然変異タンパク質は、種々のタンパク質化学方法によって精製可能である。例えばphNGAL7で産生されたhNGAL突然変異タンパク質は、そのC−末端に、アフィニティペプチドStrep−TagII(Schmidtら、上記)を持ち、したがって、ストレプトアビジン アフィニティークロマトグラフィーによって好ましく精製可能である。
選別はまた、他の方法によって実施可能である。多くの相当する実施形態が、当業者に知られており、文献に記述されている。方法の組み合わせもまた適用可能である。例えば、「ファージディスプレイ」によって選別し、または少なくとも濃縮されたクローンは、さらに「コロニースクリーニング」にかけることができる。この手順は、個々のクローンが、標的に対する検出可能な結合親和性を持つhNGALの産生に関連して、直接単離可能である。
「ファージディスプレイ」技術または「コロニースクリーニング」法において、宿主生物として大腸菌を使用することに加えて、他の細菌株、酵母または昆虫細胞または哺乳動物細胞は、例えばこの目的のために使用可能である。突然変異タンパク質に関するコード核酸配列から開始して産生された初期ライブラリーからの、hNGAL突然変異タンパク質の選別に加えて、そのコード核酸配列の繰り返した、任意に制限した突然変異誘発によって、所望の標的に対する親和性または特異性に関して、突然変異タンパク質を最適化するために、類似の方法がまた適用可能である。
本発明の方法の使用によって、所定の標的に対する検出可能な親和性を示すhNGAL突然変異タンパク質が、単離可能であることは、驚くべきことである(実施例4、5を参照のこと)。
産生した突然変異タンパク質を、さらに、そのようにして得た新規のライブラリーからの、さらにより高い親和性を有する変異体を選別するために、任意に部分的なランダム突然変異誘発に適用することが、さらに可能である。相当する手順は、「抗体親和性増強(affinity maturation)」(ドイツ国特許第DE 199 26 068号、国際公開第WO00/75308号;Schlehuberら、上記)の目的のために、ビリン−結合タンパク質の、ジゴキシゲニン結合突然変異タンパク質の場合に関して、すでに記述されており、当業者によって、相当する様式で、本明細書で開示する突然変異タンパク質に適用可能である。
本発明はさらに、以下の非限定的な実施例および添付する図面によって例示されている。
図1は、phNGAL5の概略図である。このベクターは、OmpAシグナル配列、3つのアミノ酸が置換した(Gln28がHisへ、Leu137がIleへ、Thr145がAlaへ)改変hNGAL、Strep−TagIIアフィニティタグ、およびアミノ酸217〜406(pIII)からなるM13コートタンパク質の短縮型pIIIからなる、融合タンパク質をコードしている。全構造遺伝子は、テトラサイクリンプロモーター/オペレーター(tetp/o)により転写制御し、リポタンパク質転写ターミネーター(tlpp)にて終止する。ベクターのさらなる要素は、複製開始点(ori)、線状バクテリオファージflの遺伝子間領域(fl−IG)、β−ラクタマーゼをコードしているアンピシリン耐性遺伝子(bla)、およびテトラサイクリンリプレッサー遺伝子(tetR)である。SupEアンバーサプレッサー宿主菌株で部分的にGlnに翻訳されるアンバー終止コドンは、切断ファージコートタンパク質のコード領域と同様、OmpAシグナル配列およびStrep−TagIIを持つhNGALのコード領域の間に位置する。突然変異遺伝子カセットのクローニングに用いられる2つのBstXI制限部位、および構造遺伝子の側面の制限部位の両方が、標識される。phNGAL5の核酸配列由来の関連する部分は、配列番号7として配列表中にあるコードされたアミノ酸配列とともに再生される。その部分はXbaI制限部位で始まり、HindIII制限部位で終わる。この領域の外にあるベクターの要素は、ベクターpASK75のものと同一であり、その完全なヌクレオチド配列は、ドイツ国特許第DE 44 17 598 A1号で得られる。
図2は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)の繰り返しによる、hNGALにおける20の選択されたアミノ酸位置の協調的な突然変異誘発に関する戦略を示す。アミノ酸を突然変異させようとしている、4つのペプチドループのそれぞれに対し、オリゴデオキシヌクレオチドが合成され(配列番号1、配列番号2、配列番号3、および配列番号4)、配列表にあるヌクレオチドのそれぞれの混合物が、突然変異部位で使われた。組成物の選択により、全体で3つの可能な終止コドンのうち、アンバー終止コドン、TAGのみが、変異コドンにて可能であるが、これは、遺伝子発現に用いられる大腸菌 supE株 XL1−blue(Bullockら、BioTechniques 5(1987)、376〜378)またはTG1(Sambrookら、Molecular Cloning.A Laboratory Manual(1989)、Cold Spring Harbor Press)において、グルタミンに翻訳される。特定の適用については、例えば他の細菌株または生物における発現については、そのようなナンセンスコドンは、選択されたhNGAL突然変異タンパク質の構造遺伝子にて生じる際、当業者は、例えば部位特異的突然変異誘発によってグルタミンをコードするコドンにより置換してよい。168塩基対をもつ核酸断片は、配列番号1および配列番号2のプライマーを用いて、クローン化したhNGALのcDNAを含むphNGAL3−プラスミド−DNA(配列番号8)を鋳型として用いて、増幅された(1.PCR、PCR A)。他のPCRでは、179塩基対の核酸断片が、配列番号3および配列番号4のプライマーを用い、やはり鋳型としてphNGAL3を用いて、増幅された(1.PCR、PCR B)。phNGAL3は、283および630の位置で2つのBstXI制限部位を欠失し、675の位置においてさらに1つのBstXI制限部位を欠失していることによってのみ、phNGAL5と違っており、hNGAL野生型配列を示す。両方のPCR産物の混合物は、部分的に重複するが、2つのフランキングPCRプライマー、配列番号5および配列番号6を用いた別の増幅(2.PCR)において鋳型として用い、386塩基対の遺伝子断片を得た。この断片は、20の変異コドンをすべて含み、続いてベクターphNGAL5上の2つのBstXI制限部位を用いてクローンした。制限消化中に2つの一致しない、張り出したDNA末端を誘導する特別な配置である、これら2つの制限部位の利用により、特に有効な結合が可能になる。hNGAL構造遺伝子中に両方のBstXI制限部位を導入するために、phNGAL5の構築の間において、Ser156のコドンのサイレント変異と同様、もとの配列に関してGln28からHisへ、およびThr145からAlaへのアミノ酸の置換が、あらかじめ起こる。
図3は、phNGAL7を示す。phNGAL7は、OmpAシグナル配列、図1に従った改変hNGAL、Strep−Tag(登録商標)IIアフィニティタグ、およびストレプトコッカス(Streptococcus)由来のGタンパク質のアルブミン結合ドメイン(abd)(Kraulisら、FEBS Lett.378(1996)、190〜194)からなる、融合タンパク質をコードしている。すべてのさらなる遺伝的要素はphNGAL5と同一である。phNGAL7の核酸配列からの関連部分は、配列番号9として配列表にある、コードされたアミノ酸配列とともに再生される。この断片はXbaI制限部位で始まり、HindIII制限部位で終わる。この領域の外にあるベクター要素はベクターpASK75と同一であり、その完全なヌクレオチド配列は、ドイツ国特許第DE 44 17 598 A1号から得られる。
図4は、pTLpc3を示す。pTLpc3は、OmpAシグナル配列、Cys97をSerへアミノ酸置換している改変ヒト涙リポカリン、Strep−Tag(登録商標)IIアフィニティタグからなる、融合タンパク質をコードしている。すべてのさらなる遺伝的要素はphNGAL5と同一である。pTLpc3の核酸配列由来の関連部分は、配列表で配列番号9である、コードされたアミノ酸配列とともに再生される。この断片はXbaI制限部位で始まり、HindIII制限部位で終わる。この領域の外にあるベクター要素はベクターpASK75と同一であり、その完全なヌクレオチド配列は、ドイツ国特許第DE 44 17 598 A1号から得られる。
図5は、酵素免疫測定法(ELISA)により、hNGAL突然変異タンパク質TlpcAの結合測定を行なった実施例5で得られたデータを図解したものである。TlpcAと涙リポカリンの結合(四角形で図示)を、hNGALと涙リポカリンの相互作用(白丸で図示)と比較した。TlpcAは涙リポカリンに対し、濃度依存的に結合する。hNGALは有意な結合シグナルを示さない。
図6は、phNGAL12の概略図である。このベクターは、OmpAシグナル配列、4つのアミノ酸が置換した(Gln28がHisに、Cys87がSerに、Leu137がIleへ、Thr145がAlaへ)改変hNGAL、Strep−Tag(登録商標)IIアフィニティタグ、およびアミノ酸217〜406(pIII)からなるM13コートタンパク質の短縮型pIIIからなる、融合タンパク質をコードしている。さらに、phNGAL12は、EcoK12制限部位を取り除くために、OmpAシグナル配列のコード領域内で2つのサイレント変異を起こしている。全構造遺伝子は、テトラサイクリンプロモーター/オペレーター(tetp/o)により転写制御され、リポタンパク質転写ターミネーター(tlpp)において終止する。ベクターのさらなる要素は、複製開始点(ori)、線状バクテリオファージflの遺伝子間領域(fl−IG)、β−ラクタマーゼをコードしているアンピシリン耐性遺伝子(bla)、およびテトラサイクリンリプレッサー遺伝子(tetR)である。SupEアンバーサプレッサー宿主菌株にて部分的にGlnに翻訳されるアンバー終止コドンは、OmpAシグナル配列およびStrp−Tag(登録商標)IIと融合しているhNGALのコード領域と、切断pIIIファージコートタンパク質のコード領域との間に位置する。変異遺伝子カセットのクローニングに用いられる2つのBstXI制限部位、および構造遺伝子の側面の制限部位が、標識される。phNGAL12の核酸配列の関連断片は、配列表で配列番号19である、コードされたアミノ酸配列とともに再生される。その断片はXbaI制限部位で始まり、HindIII制限部位で終わる。この領域の外にあるベクターの要素はベクターpASK75のものと同一であり、その完全なヌクレオチド配列は、ドイツ国特許第DE 44 17 598 A1号で得られる。
図7は、phNGAL15の概略図である。phNGAL15は、図6に従った改変hNGALを持つOmpAシグナル配列、およびStrep−Tag(登録商標)IIアフィニティタグからなる、融合タンパク質をコードしている。phNGAL15は、OmpAシグナル配列のコード領域内に、phNGAL12と同じサイレント変異を起こしている。phNGAL15の核酸配列の関連断片は、配列表で配列番号21である、コードされたアミノ酸配列とともに再生される。その断片はXbaI制限部位で始まり、HindIII制限部位で終わる。この領域の外にあるベクターの要素はベクターpASK75のものと同一であり、その完全なヌクレオチド配列は、ドイツ国特許第DE 44 17 598 A1号で得られる。
図8は、hNGAL突然変異タンパク質とトロンボスポンディンペプチドの結合測定を酵素免疫測定法(ELISA)によりおこなった、実施例10で得られたデータを図解したものである。hNGAL突然変異タンパク質RFY−B(円形で図示)、RFY−C(四角形で図示)、およびRFY−E(ひし形で図示)のトロンボスポンディンペプチドへの結合を、hNGAL(三角形で図示)とトロンボスポンディンペプチドとの相互作用と比較した。トロンボスポンディンペプチドは、そのC末端に結合するビオチン基を介してアビジン被覆マイクロタイタープレートに固定した。hNGAL突然変異タンパク質はトロンボスポンディンペプチドに対し濃度依存的に結合するが、hNGALは有意な結合シグナルを生じない。ペプチドの非存在下では、hNGAL突然変異タンパク質とアビジンとの間において、低いレベルの交差反応が見られた(白抜きのしるしで図示)。
図9は、hNGAL突然変異タンパク質のトロンボスポンディンペプチドへの結合測定を表面プラズモン共鳴分光法(SPR)によりおこなった、実施例11で得られたデータを図解したものである。hNGAL突然変異タンパク質RFY−B(円形で図示)、RFY−C(四角形で図示)、およびRFY−E(ひし形で図示)のそれぞれとトロンボスポンディンペプチドとの分子間相互作用を、hNGALとトロンボスポンディンペプチドとの間の相互作用(三角形で図示)と比較した。hNGAL突然変異タンパク質は、トロンボスポンディンペプチドに濃度依存的に結合するが、hNGALは有意な結合シグナルを生じない。hNGAL突然変異タンパク質のセンサーチップSAとの交差反応は、見られなかった(図示なし)。
図10は、hNGAL突然変異タンパク質N4の結合測定を酵素免疫測定法(ELISA)によりおこなった、実施例15で得られたデータを図解したものである。インターロイキン8は、そのリジン残基に結合するビオチン基を介してアビジン被覆マイクロタイタープレートに固定した。hNGAL突然変異タンパク質N4のインターロイキン8への結合(黒丸)を、hNGAL突然変異タンパク質N4とアビジンのみとの相互作用(白丸)と比較した。hNGAL突然変異タンパク質N4はインターロイキン8に対し濃度依存的に結合するが、アビジンのみでは有意な結合シグナルは見られない。
図11は、プラスミドpTNFαの概略図である。pTNFαは、腫瘍壊死因子α(TNFα)の成熟型およびそのN末端のヘキサヒスチジンタグからなる、融合タンパク質をコードしている。すべてのさらなる遺伝的要素は、プラスミドpRSET(Schoepfer、Gene 124(1993)、82〜85)と同一である。pTNFαの核酸配列由来の関連断片は、配列表で配列番号31である、コードされたアミノ酸配列とともに再生される。この断片はNdeI制限部位で始まり、HindIII制限部位で終わる。この領域の外にあるベクター要素はベクターpRSET5aと同一であり、その完全なヌクレオチド配列はEMBLのもとで、アクセス番号:X54202で得られる。
図12(A)は、TNFα三量体の、hNGALの固定化突然変異タンパク質への結合を試験した、実施例18のコロニースポットアッセイの結果を示す。下記のABD融合タンパク質を発現している大腸菌TG1−F細胞を、(B)にしたがって親水性膜上に4回又は5回スポットした。(B):hNGAL、ビリン結合タンパク質(BBP)、実施例6に記載されたライブラリー由来の、関連のない突然変異タンパク質2つ、実施例17に記載されたコロニースクリーニングアッセイで単離した9つのクローン、およびコントロールとしてタンパク質なし。それぞれのコロニーから分泌された突然変異タンパク質は、実施例18に記載のようにHSA被覆疎水性膜上に固定した。ジゴキシゲン標識したTNFαを、抗ジゴキシゲニンFabアルカリホスファターゼ共役体(conjugate)を用いて視覚化した。(B)は膜状でそれぞれのクローンがスポットされた位置を示す。
実施例
実施例1:hNGAL突然変異タンパク質に関するライブラリーの産生
他に示さない限り、例えばSambrookら(上記)で記述されたような、当業者に知られた遺伝子工学的方法を使用した。
PCRを、hNGALの4つのペプチドループ内における、計20の選択したアミノ酸位置の協調的な突然変異誘発のために、図2にしたがい、多段階にて適用した。PCR反応は、第一増幅段階の両方において100μlの容量で実施され、従来のホスホルアミダイト法にしたがって合成したそれぞれのプライマー(それぞれ、配列番号1および配列番号2、または配列番号3および配列番号4)各50pmolとともに、20ng phNGAL3プラスミドDNAを鋳型として使用した。さらに、反応混合物は、10μlの10×Taq緩衝液(100mM Tris/HCl pH9.0、500mM KCl、15mM MgCl、1%v/v Triton X−100)、10μlのdNTP−Mix(2mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を含んだ。水で容量を合わせた後、5uのTaq DNA−ポリメラーゼ(5u/μl、プロメガ(Promega))を加え、94℃で1分間、60℃で1分間、および72℃で1.5分間の20温度サイクルを、ヒートリッド付サーモサイクラー(エッペンドルフ(Eppendorf))によって実施し、続いて60℃にて5分間インキュベートした。所望の増幅産物は、Jetsorb DNA抽出キット(ゲノメド(Genomed))を用いて、ロー メルティング ポイント アガロース(Low Melting Point Agarose(ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics))からのプレパラティブ アガロースゲル電気泳動によって単離した。
次の増幅段階もまた、100μl混合液で実施され、そこでは、プライマー配列番号5および配列番号6のそれぞれ50pmolの存在下で、およそ6ngの、これらのそれぞれの断片の両方を鋳型として使用した。PCR混合物の残りの成分は、先の増幅段階においてと同様の量で加えた。PCRは、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1.5分間の20温度サイクルで実施し、続いて60℃にて5分間インキュベートした。PCR産物は、E.Z.N.A.Cycle−Pure Kit(ペックラボ(PeqLab))を用いて精製した。
核酸型でhNGAL突然変異タンパク質のライブラリーを表している、この断片のクローニングのために、それはまず、取扱説明書にしたがって、制限酵素BstXI(New England Biolabs)を用いて切断し、E.Z.N.A.Cycle−Pure Kitを用いて精製した。BstXIでの第二制限消化の後、核酸断片は、プレパラティブ アガロースゲル電気泳動にて精製し、大きさにして347ヌクレオチドの二本鎖DNA断片を得た。ベクターphNGAL5のDNAを、同一の様式でBstXIにて切断し、2つの得られた断片の大きい方(3971bp)を単離した。
結合のために、2.75μg(12pmol)のPCR断片、および31.45μg(12pmol)のベクター断片を、180 Weiss Units T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)の存在下で、総容量600μl(50mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP、50μg/ml BSA)にて、16℃で4日間インキュベートした。続いてDNAを、120μlの結合混合液あたり、50μgの酵母由来tRNA(Boehringer Mannheim)、125μlの5M酢酸アンモニウムおよび500μlのエタノールを加えることにより、沈殿させた。−20℃で3日間のインキュベーションの後、遠心分離(30分間、16000g、4℃)をおこなった。各沈殿物を、750μlのエタノール(70%v/v、−20℃)にて洗浄し、遠心分離(5分間、16000g、4℃)し、吸引下で乾燥させた(2分間)。DNAは、最終的に200μlのTE/10(1mM Tris/HCl pH8.0、0.1mM EDTA pH8.0)中に溶解させ、水を加えて、最終容量を260μlに合わせた。
大腸菌K12株XL1−blue(Bullockら、上記)のエレクトロコンピテント細胞の調製は、Tung and Chow(Trends Genet.11(1995)、128−129)により、およびHengen(Trends Biochem.Sci.21(1996)、75−76)により記述された方法にしたがって実施した。1lのLB培地を、静止XL1−blueの一晩培養した培養液を添加することにより、600nmにおける光学密度、OD600=0.08に調製し、200rpm、26℃にて、2lのエルレンマイヤーフラスコ内でインキュベートした。OD600=0.6に達した後、培養液を30分間、氷上で冷却し、続いて、4000g、4℃にて15分間遠心した。細胞沈殿物を、それぞれ500mlの氷冷した10%w/vグリセロールで2回洗浄し、最終的に、2mlの氷冷したGYT−培地(10%w/vグリセロール、0.125%w/v酵母抽出物、0.25%w/vトリプトン)中に再懸濁させた。
Micro Pulserシステム(BioRad)は、エレクトロポレーションのために、同じ供給メーカーからのキュベットとともに使用された(電極間隔2mm)。すべての段階を、4℃にて、低温室で実施した。上記の各5μlのDNA溶液を、40μlの細胞懸濁液と混合させ、1分間氷上にてインキュベートし、最終的にキュベットに移した。エレクトロポレーションの後、懸濁液をただちに、2mlの氷冷したSOC−培地(2%w/vトリプトン、0.5%w/v酵母抽出物、10mM NaCl、10mM MgSO、10mM MgCl)中に希釈し、そして60分間、37℃、200rpmにて振盪した。培養液を、100μg/mlアンピシリンを含む2lの2×YT−培地(2YT/Amp)中で希釈し、複製する細胞によって引き起こされるOD550が0.64に達するまで培養した。計34.2μgの結合DNAを使用することによって、7×10の形質転換体が、49回のエレクトロポレーションによるこの方法により、得られた。形質転換体をさらに実施例2にしたがって使用した。
実施例2:ファージミドの提示およびヒト涙リポカリン(Tear Lipocalin)に対するhNGAL突然変異タンパク質の選別
融合タンパク質としてリポカリン突然変異タンパク質のライブラリーをコードしているphNGAL5と同様のファスミドベクターを形質転換した細胞を含む、200mlの培養液を、無菌エルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコに移した。およそ10の感染多重度にて、VCS−M13ヘルパーファージ(Stratagene)を感染させた後、培養液を、さらに30分間、37℃、160rpmにて振盪させた。カナマイシン(70μg/ml)を続いて加え、インキュベーター温度を30℃まで低下させ、10分後、遺伝子発現を誘導するために、無水テトラサイクリン(ACROS Organics)を100μg/l(ジメチルホルムアミド、DMF中100μg/mlの保存溶液を200μl)で加えた。インキュベーションを、30℃、160rpmにてさらに5時間続けた。
50mlをこの培養液より除去し、細胞を遠心(15分間、12000g、4℃)によって沈殿させた。ファージミド粒子を含む上清を滅菌濾過し(0.45μm)、1/4容量(12.5ml)の20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合し、4℃にて一晩インキュベートした。遠心(20分間、18000g、4℃)後、沈殿したファージミド粒子を、2mlの冷PBS(4mM KHPO、16mM NaHPO、115mM NaCl、pH7.4)中に溶解させた。溶液を、氷上で30分間インキュベートし、2つの1.5ml反応容器内に分配した。不溶の成分の遠心(5分間、18500g、4℃)の後、各上清を、新しい反応容器に移した。
1/4容量の、20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合し、氷上で30〜60分間インキュベートして、ファージミド粒子を再沈殿させた。遠心(20分間、18500g、4℃)の後、上清を除去し、沈殿したファージミド粒子を、合計400μlのPBS中に溶解し、混合した。氷上で30分間インキュベートした後、残余凝集物を除去するために遠心(5分間、18500g、4℃)し、上清を直接アフィニティ濃縮のために使用した。
免疫−スティック(NUNC)を、hNGAL突然変異タンパク質融合タンパク質を含む、組換えファージミドのアフィニティ濃縮のために使用した。これらを、PBS中の800μlのヒト涙リポカリン(Tlpc)(450μg/ml)によって、一晩コートした。
組換えTlpcの産生のために、大腸菌JM83(Yanisch−Perronら、Gene 33(1985)、103−119)の細胞を、TlpcのcDNAを含む発現プラスミドpTLpc3(TlpcのcDNAに関して、Holzfeind and Redl、Gene 139(1994)、177−183を参照のこと)で形質転換し、実施例3にしたがって、タンパク質産生および精製のために使用した。タンパク質収量は、1lの培養液容量あたり、およそ2.2mgであった。
免疫−スティックの表面上の占有されていない結合部位を、室温にて2時間、PBST(0.1%v/vのTween 20を含むPBS)中で、1.2mlの2%w/v BSAとインキュベートして飽和させた。その後、免疫−スティックを、250μlのファージミド溶液と、500μlのブロッキング緩衝液(PBST中3%w/v BSA)の混合液で、室温にて1時間インキュベートした。
結合していないファージミドの除去のために、洗浄を8回、各回950μlのPBSTにて2分間行った。吸着ファージミドを、最終的に、950μlの0.1M グリシン/HCl pH2.2にて、免疫−スティックを10分間処理することにより溶出させ、続いて、150μlの0.5M Trisと混合することで、溶出画分のpHをすぐに中和した。
増幅のために、このファージミド溶液(1.1ml、選別サイクルに依存して、10〜10コロニー−形成ユニット(Colony−forming Units)を含む)を手短に37℃まで温め、3mlの、大腸菌XL1−blueの指数関数的に増殖する培養液(OD550=0.5)と混合し、37℃、200rpmにて、30分間インキュベートした。続いて、ファージミドが感染した細胞を、沈殿させ(2分間、4420g、4℃)、600μlの培養培地中に再懸濁させ、100μg/mlのアンピシリンを含むLB−培地(LB/Amp;140mm直径)の3枚の寒天プレート上にまいた。
32℃にて14時間のインキュベーションの後、細胞を、それぞれ10mlの2×YT/Amp−培地を加えて、寒天プレートより掻き取り、無菌エルレンマイヤー(Erlenmeyer)フラスコに移し、完全に懸濁させるために、37℃、200rpmにて、20分間振盪した。37℃まで先に温めた200mlの2×YT/Amp−培地に、適切な容量のこの懸濁液を、OD550=0.08まで接種した。
ファージミド粒子の繰り返し産生およびアフィニティ濃縮のために、本実施例の最初に記述したのと同様の手順を使用した。これらの場合、50mlの2×YT/Amp−培地に、寒天プレート上で増殖した細胞の懸濁液を0.2〜1ml接種し、ファージミドを、30℃にて、5時間の代わりに7時間、産生させた。Tlpcでの4回のさらなる選別サイクルをこの方法で実施した。
実施例3:「コロニースクリーニング」方法の使用による、ヒト涙リポカイン−結合hNGAL突然変異タンパク質の同定
Strep−Tag(登録商標)IIおよびアルブミン結合ドメインを持つ融合タンパク質として、hNGAL突然変異タンパク質の分析的な産生、ならびにコロニースクリーニングによるその特徴解析のために、2つのBstXI開裂部位間の遺伝子カセットを、phNGAL7上の、ベクターphNGAL5からサブクローンした。
この目的のために、ファスミドDNAを、Perfectprep Plasmid Midi Kit(Eppendorf)を用いて、最後の選別サイクルの結果として溶出した、実施例2からのファージミドを用いた感染により得られた、大腸菌クローンの混合物から単離した。DNAを制限酵素BstXIにて切断し、2つの断片の小さい方(347bp)を、実施例1にて記述したように、プレパラティブアガロース−ゲル電気泳動によって精製した。ベクターphNGAL7のDNAを、BstXIにて切断し、2つの断片のうち大きい方(3971bp)を、同じ方法で単離した。
結合のために、各100fmolの、2つのDNA断片を、総容量20μl(30mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP)で、1.5 Weiss Units T4 DNAリガーゼ(Promega)と混合し、続いて、16℃で一晩インキュベートした。大腸菌TG1−F(大腸菌K12 TG1、非選別条件下で、繰り返し培養し、そのエピソームを欠損している)を、CaCl−法(Sambrookら、上記)にしたがって、2μlのこの結合混合液にて形質転換した。
1つの位置を標識化し大きさを合わせて切った親水性PVDF膜(Millipore、GVWP型、孔径0.22μm)を、LB/Amp寒天プレート上にのせた。遠心(5000g、2分間、4℃)し、および500μlの培養培地中に再懸濁させた、150μlの形質転換バッチからの細胞懸濁液を、この膜上に、均一にまいた。寒天プレートを、コロニーがおよそ0.5mmの大きさに達するまで、7.5時間、37℃にて、インキュベートした。
その間に、これも大きさをあわせて切った、疎水性膜(Millipore、Immobilon P、孔径 0.45μm)を、取扱説明書にしたがって、PBSでしめらせた。続いて、PBS中、10mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA、Sigma)の溶液中で、室温にて4時間かき混ぜた。膜上に残っている結合部位を、PBS中3%w/vのBSA、0.5%v/vのTween20を用い、室温にて2時間インキュベートすることにより、飽和させた。膜を、それぞれ20mlのPBSにて10分間、2回洗浄し、その後、10mlのLB/Amp培地中で10分間かき混ぜ、200μg/lの無水テトラサイクリンを加えた。続いて、1つの位置に印を付け、200μg/lの無水テトラサイクリンをさらに含んだ、LB/Amp寒天の培養プレート上にのせた。コロニーが増殖した親水性膜を、両方の印が重なるように、疎水性膜上にのせた。培養プレートを、両方の膜とともに、22℃にて15時間インキュベートした。この期の間、それぞれのhNGAL突然変異タンパク質がコロニーより分泌され、下層膜上のHSA上におけるアルブミン結合ドメインを介して固定化される。
この後、コロニーを含む上層を、新鮮なLB/Amp寒天プレート上に移し、4℃にて保存した。疎水性膜を除去し、それぞれ20mlのPBSTにて5分間、3回洗浄し、続いて、10mlの、PBST中の涙リポカリンとビオチンからの共役物(10μg/ml)の溶液中で、1時間インキュベートした。共役物の産生のために、9μlのDMSO中の0.285mgのD−ビオチノイル−ε−アミドカプロン酸−N−ヒドロキシサクシンイミド エステル(Roche)の溶液を、ゆっくりと、5%w/v NaHCO(pH8.2)中の450μg/ml Tlpc、2.5mlに加えた。室温にて1時間の撹拌の後、過剰な反応物を、ランニング緩衝液としてPBSを用いて、PD−10ゲル濾過カラム(Pharmacia)によって除去した。
共役物とのインキュベーションの後、膜を、PBSTにて3回洗浄し、続いて、10mlのアビジン−アルカリ−ホスファターゼ共役物(Sigma、PBST中で1:40000希釈)とともに、1時間インキュベートした。続いて膜を、PBSTにて2回、PBSにて1回、5分間洗浄し、AP−緩衝液(0.1M Tris/HCl pH8.8、0.1M NaCl、5mM MgCl)中で10分間かき混ぜた。発色反応のために、膜を10ml AP−緩衝液中でインキュベートし、識別可能な色シグナルがコロニーのいくつかの位置で認識されるまで、30μlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル ホスフェート4−トルイジン塩(Roth、ジメチルホルムアミド中50μg/ml)および5μlのニトロブルーテトラゾリウム(Roth、70%v/vジメチルホルムアミド中75μg/ml)に加えた。このようにして、これらのコロニーによって産生されたhNGAL突然変異タンパク質の、タンパク質リガンド、すなわちTlpcへの結合活性が検出された。
発色スポットを示した12のコロニーを、第一膜より培養した。これらのプラスミドDNAを単離し、hNGAL遺伝子カセットを、プライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチド配列番号11を用いて、取扱説明書にしたがって、Genetic Analyzer 310システム(Applied Biosystems)を用いる配列解析にかけた。12の配列決定したクローンは、ただ8つの異なる配列を示し、TlpcA、TlpcB、TlpcC、TlpcD、TlpcE、TlpcF、TlpcG、TlpcHと命名された。クローンTlpcAが5回観察された。クローンのヌクレオチド配列を、アミノ酸配列に翻訳し、hNGALから逸脱したこれらのアミノ酸を、表1に示す。突然変異タンパク質TlpcAのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列も、配列番号12および配列番号13として示す。配列決定により、すべての選別した変異体の異なる位置で、使用した大腸菌株中で抑制された、アンバー終止コドンが明らかになった。
実施例4:hNGAL突然変異タンパク質の産生
hNGALおよびその突然変異タンパク質の予備産生のために、1つの選択したコロニー、およびコントロールとしてphNGAL7上に本来コードされているhNGALを、大腸菌株TG1−F中で産生させた。
この目的のために、それぞれのプラスミドを持つTG1−F形質転換細胞の単一コロニーを、100mlのLB/Amp−培地に接種し、200rpm、30℃にて一晩インキュベートした。ついで5lのエルレンマイヤーフラスコ中の2lのLB/Amp−培地に、それぞれ40mlのこのプレ培養液を接種し、OD550=0.5まで、22℃、200rpmにて振盪した。インキュベーションを、200μg/lの無水テトラサイクリン(DMF中、2mg/mlの保存溶液を200μl)を添加し、続いて、さらに3時間、22℃、200rpmにて振盪させて実施した。
1つのフラスコからの細胞を遠心し(15分間、4420g、4℃)、上清をデカントした後、氷上で30分間冷却しながら、20mlのペリプラズム放出緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.0、500mM スクロース、1mM EDTA)中に再懸濁させた。続いて、スフェロプラストを、2回の連続遠心段階(15分間、4420g、4℃、および15分間、30000g、4℃)にて除去した。ペリプラズマタンパク質抽出物を含む上清を、CP−緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA)に対して透析し、滅菌濾過し、クロマトグラフィー精製に供給した。
精製を、hNGAL変異体とアルブミン結合ドメイン間に存在する、Strep−Tag(登録商標)II−アフィニティタグ(Schmidtら、上記)によって実施した。この場合、ストレプトアビジン突然変異タンパク質「1」を使用し(ドイツ国特許第196 41 876.3号、Voss and Skerra、Protein Eng.10(1997)、975−982)、これは、マトリックスのベッド容量と比例して、NHS−活性化セファロース(Pharmacia)に結合し、5mg/ml固定化ストレプトアビジンを産生する。
本物質を満たした、4mlベッド容量クロマトグラフィーカラムを、40ml/hの流速で、4℃にて、20ml CP−緩衝液で平衡化した。クロマトグラフィーを、フロースルー光度計中で、溶出液の280nmの吸収を測定することでモニターした。ペリプラズマタンパク質抽出物の適用後、カラムを、基準線に達するまでCP−緩衝液で洗浄し、結合したhNGAL突然変異タンパク質を、続いて、CP−緩衝液中の2.5mM D−デスチオビオチン(Sigma)の10ml溶液で溶出した。精製したhNGAL突然変異タンパク質を含む画分を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Fling und Gregerson、Anal.Biochem.155(1986)83−88)を介して確認し、保存した。タンパク質収量は、1lの培養液あたり30μg〜70μgであった。

Figure 0004396923

実施例5:hNGAL突然変異タンパク質の、涙リポカリンに対する親和性の測定
ELISA(酵素免疫測定法(Enzyme−linked Immunosorbent Assay))における、結合の検出のために、マイクロタイタープレート(Micro Test III Flexible Assay Plate;Falcon)のウェルを、それぞれ、100μlの、PBST中HSAの20mg/ml溶液で満たし、室温(RT)にて1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、50μlの、実施例3からのhNGAL突然変異タンパク質TlpcAおよびhNGALの精製融合タンパク質の1μM溶液を、タンパク質が、abdとHSAとの間の複合体形成を介して固定化されるように、ウェルを充たした。1時間後、溶液を除去し、PBSTにて3回洗浄した。ついで、PBST中の希釈系列を、140μg/mlで開始して、PBST中、涙リポカリンおよびビオチンの共役物で調製し(実施例3)、続いて室温にて1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄したのち、PBSTにて1:10000に希釈したアビジン−アルカリホスファターゼ共役物(Sigma)をウェルに満たした。室温にて1時間、インキュベーションを実施し、続いてPBSTで2回、PBSで2回洗浄した。したがって、固定化hNGAL突然変異タンパク質に結合した涙リポカリンの検出を、アルカリホスファターゼによって触媒される、p−ニトロフェニルホスフェートの加水分解を介して実施した。この目的のために、AP−緩衝液(100mM NaCl、5mM MgCl、100mM Tris/HCl pH8.8)中の0.5mg/ml p−ニトロフェニルホスフェート(Amresco)の100μl溶液を、ウェル中に満たし、産物の形成を、SpectraMax250光度計(Molecular Devices)にて、405nmの吸収を測定することによってモニターした。
実施例6:100億より多い独立したhNGAL突然変異タンパク質を含むライブラリーの調製
多様性の増した、hNGALのランダムライブラリーを、図2にしたがった多重段階でのPCRを用いて、4つのペプチドループにおける、合計20の選択したアミノ酸位置の協調的な突然変異誘発によって調製した。PCR反応を、第一増幅段階の両方で、100μlの容量で実施し、そこで、従来のホスホルアミダイト法にしたがって合成した、50pmolの各プライマー対(それぞれ、配列番号1および配列番号2、または配列番号3および配列番号4)とともに、10ng phNGAL5(図1)プラスミドDNAを鋳型として使用した。さらに、反応混合液は、10μlの10×Taq緩衝液(100mM Tris/HCl pH9.0、500mM KCl、15mM MgCl、1%v/v Triton X−100)および10μl dNTP−Mix(2mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を含んだ。水によって容量を満たした後、5uのTaq DNA−ポリメラーゼ(5u/μl、Promega)を加え、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1.5分間の20温度サイクルを、ヒートリッド付サーモサイクラー(Eppendorf)にて実施し、ついで60℃にて5分間、最終インキュベーションした。所望の増幅産物を、それぞれの場合に、Jetsorb DNA抽出キット(Genomed)を用いて、GTQ Agarose(Roth)からのプレパラティブアガロースゲル電気泳動によって単離した。
続く増幅段階も、100μlの混合液にて実施し、そこで、50pmolの各プライマー、配列番号5および配列番号6の存在下、およそ6ngの2つのDNA断片を鋳型として使用した。実施例1とは対照的に、これらのプライマーの両方が、その5’末端にビオチン基を持った。PCR混合液の残りの構成成分を、先の増幅段階と同様の量で加えた。PCRを、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1.5分間の20温度サイクルで実施し、続いて、60℃にて5分間インキュベーションをした。PCR産物を、E.Z.N.A.Cycle−Pure Kit(PeqLab)を用いて精製した。
核酸型での、hNGAL突然変異タンパク質のライブラリーを表しているDNA断片のクローニングのために、5’−ビオチン化PCR産物を、取扱説明書にしたがって、制限酵素BstXI(Promega)にて切断し、大きさにして347ヌクレオチドの得られた断片を、上述したように、プレパラティブアガロースゲル電気泳動によって精製した。消化されなかったか、または不完全に消化された残余DNA断片を、その溶液を、ストレプトアビジンでコートした常磁性ビーズ(Dynal)とともにインキュベートすることによって、その5’−ビオチンタグを介して除去し、これによって、続く結合反応のために好適な二重に切断されたDNA断片が得られた。
この目的のために、10mg/mlの濃度での、100μlの市販されている常磁性粒子の懸濁液を、100μlのTE−緩衝液で3回洗浄した。続いて、常磁性粒子を濾し、100μlのTE−緩衝液中の11〜22pmolのDNA断片とともに、室温にて15分間混合した。常磁性粒子を、磁石の助けを借りて、エッペンドルフ容器の壁に回収し、精製DNA断片を含む上清を、以下の結合反応でのさらなる使用のために回収した。
ベクターphNGAL12(図6)のDNAを、上述のように、BstXIで切断し、2つの得られた断片の大きい方(3971bp)を、プレパラティブアガロースゲル電気泳動によって単離した。結合のために、6.85μg(30pmol)のPCR断片および78.65μg(30pmol)のベクター断片を、855Weiss UnitsのT4 DNAリガーゼ(Promega)の存在下で、総量8550μl(50mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP、50μg/ml BSA)にて、16℃で4日間インキュベートした。ついでDNAを、350μlの結合混合液あたり、110μgの酵母からのtRNA(Boehringer Mannheim)、350μlの5M 酢酸アンモニウム、および1300μlエタノールを添加することによって沈殿させた。−20℃での2日間のインキュベーションの後、遠心した(30分間、16000g、4℃)。各沈殿物を、750μl エタノール(70%v/v、−20℃)で洗浄し、遠心し(5分間、16000g、4℃)、吸引下で乾燥させた(2分間)。最終的に、DNAを、総容量427.5μlの水に溶解して、最終濃度200μg/mlとした。
大腸菌K12株XL1−blueのエレクトロコンピテント細胞の調製(Bullockら、上記)を、実施例1で記述した方法にしたがって実施した。
エレクトロポレーションのために、Micro Pulserシステム(BioRad)を、同じ製造業者のキュベットと併せて使用した(電極間隔2mm)。すべての段階を、4℃にて低温室で実施した。上記からの各10μlのDNA溶液(2μg)を、100μlの細胞懸濁液と混合し、氷上で1分間インキュベートし、あらかじめ冷却したキュベットに移した。ついで、エレクトロポレーションを実施し(5ms、12.5kV/cm)、懸濁液をすぐに2mlの氷冷したSOC−培地中で希釈し、続いて、37℃、200rpmにて、60分間振盪した。培養液を、1.5lの、100μg/mlアンピシリンを含む2×YT−培地(2YT/Amp)中に、OD550が0.5になるまで希釈し、複製する細胞によってOD550が0.7に上昇するまで、37℃にて培養した。合計85.5μgの結合したDNAを使用することにより、合計43回のエレクトロポレーションの実施によって、この様式で1.8・1010の形質転換細胞を得た。形質転換細胞をさらに、実施例7にしたがって使用した。
実施例7:ファージミドの提示、およびヒトトロンボスポンディン1の細胞結合ドメインからの8アミノ酸ペプチド(「トロンボスポンディン ペプチド」)に対するhNGAL突然変異タンパク質の選別
phNGAL12に相当するファスミドベクターで形質転換した細胞を含むが、融合タンパク質としてリポカリン突然変異タンパク質のライブラリーをコードしている、1500mlの培養液に、およそ10の感染多重度にて、VCS−M13ヘルパーファージ(Stratagene)を感染させた。この培養液を、37℃、160rpmにてさらに30分間、振盪した。ついで、インキュベーターの温度を、26℃まで低下させ、カナマイシン(70μg/ml)を加えた。10分後、遺伝子発現を誘導するために、無水テトラサイクリンを、25μg/l(DMF中、20μg/mlの保存溶液、1875μl)で加えた。インキュベーションを、26℃、160rpmにて、さらに15時間続けた。
細胞を、遠心(60分間、12500g、4℃)により沈殿させた。ファージミド粒子を含む上清を、滅菌濾過(0.45μm)し、1/4容量(375ml)の、氷冷した20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合させ、4℃にて1時間インキュベートした。遠心(30分間、18500g、4℃)の後、沈殿したファージミド粒子を、60mlの冷PBS中に溶解させた。この溶液を氷上で60分間インキュベートし、2つのSS34遠心チューブ内に分配した。不溶の成分の遠心(5分間、18500g、4℃)の後、各上清を、新しい遠心チューブに移した。
ファージミド粒子を、1/4容量の、20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合することにより再沈殿させ、続いて、氷上で60分間インキュベートした。ファージミドを等分し(2ml)、1mM EDTAおよび50mM ベンズアミジン(Sigma)を、−20℃での長期保存のために加えた。
ヒトトロンボスポンディン1の細胞結合ドメインに由来するビオチン化合成トロンボスポンディンペプチド(Tulasneら、Blood 98(2001)、3346−3352;HN−Arg−Phe−Tyr−Val−Val−Met−Trp−Lys−Aca−Aca−Lys−Biotin−COOH、配列番号18、Aca:アミノカプロン酸)を、hNGAL突然変異タンパク質を提示しているファージミドのライブラリーからのアフィニティ濃縮のために、標的として、ストレプトアビジンでコートされた常磁性粒子(Dynal)と一緒に使用した。
この目的のために、上記からの沈殿したファージミドの2ml分液を遠心し(20分間、18500g、4℃)、上清を除去し、沈殿したファージミド粒子を、1ml PBS中に溶解した。氷上での30分間のインキュベーションの後、溶液を遠心し(5分間、18500g、4℃)、残余凝集物を除去し、上清を、アフィニティ濃縮のために、直接使用した。
ペプチド結合ファージミドを濃縮するために、PBS中のビオチン化トロンボスポンディンペプチド(DMF中の合成ペプチドの10μM溶液、100μlを1112μl PBSと混合して調製した)の825nM溶液(33pmol)、40μlを、260μlの新鮮に調製したファージミド(2・1012〜5・1012コロニー形成ユニット、cfu)の溶液と混合し、そして、ペプチドと、ファージミドによって提示された突然変異タンパク質との間の複合体形成が起こりうるように、室温にて1時間インキュベートした。ついで、PBS中100μlの8%w/v BSA、0.4%v/v Tween20の溶液を加えた。
これと並行して、100μlの、市販されたストレプトアビジン−常磁性粒子の懸濁液(Dynal)を、100μlのPBSで3回洗浄した。ここで、粒子を、1.5mlのエッペンドルフ容器を回転させることによって1分間懸濁させたままにし、ついで磁石の助けを借りて、容器の壁に回収し、上清を取り除いた。非特異的結合部位を飽和させるために、常磁性粒子を、室温にて1時間、100μlの、PBST中2%w/v BSAとともにインキュベートした。
上清を除去した後、ビオチン化トロンボスポンディンペプチドとファージミドの混合液を、常磁性粒子に加え、この粒子を再懸濁させ、室温にて10分間インキュベートした。最後に、ストレプトアビジンの遊離のビオチン結合部位を、10μlの、PBS中の4mM D−デスチオビオチン(Sigma)溶液を混合液に加え、前記混合液を室温で5分間インキュベートすることによって、飽和させた。この段階を、突然変異タンパク質の融合タンパク質、およびファージコートタンパク質pIII断片の部分として、Strep−tag(登録商標)IIが、ストレプトアビジンとの複合体を形成することを防止するために使用した。
結合しなかったファージミドを、1mM D−デスチオビオチンを含む新鮮なPBST、1mlで8回、常磁性粒子を洗浄することによって除去した。各回で、粒子を磁石の助けを借りて回収し、上清を取り除いた。最終的に、結合したファージミドは、950μlの0.1M グリシン/HCl pH2.2中に粒子を再懸濁させ、15分間インキュベートすることによって、溶出した。磁石での粒子の回収の後、上清を回収し、すぐに150μlの0.5M Trisの添加によって中和した。
増幅の目的のために、このファージミド溶液(1.1ml、選別サイクルに依存して、10〜1010cfuを含む)を、37℃まで短時間であたため、3mlの、大腸菌XL1−blueの指数関数的に増殖する培養液(37℃にてOD550=0.5)と混合し、37℃、200rpmにて30分間インキュベートした。ファージミドを感染させた細胞を、続けて沈殿させ(2分間、4420g、4℃)、600μlの培養培地中に再懸濁させ、100μg/mlのアンピシリンを含むLB−培地(LB/Amp;直径140mm)を用いた3枚の寒天プレート上にまいた。
32℃にて14時間のインキュベーションの後、細胞を、それぞれ10ml 2×YT/Amp−培地を加えて、寒天プレートから掻きとり、滅菌エルレンマイヤーフラスコに移し、完全に再懸濁するために、37℃、200rpmにて20分間、振盪した。
ファージミド粒子の産生およびアフィニティ濃縮の他のサイクルのために、細胞密度がOD550=0.08であるように、あらかじめ37℃まで温めた、50mlの2×YT/Amp培地に、0.2〜1mlの前記懸濁液を接種した。この培養液を、37℃、160rpmにて、OD550=0.5の細胞濃度まで、インキュベートした。ついで、培養液に、およそ10の感染多重度にて、VCS−M13ヘルパーファージ(Stratagene)を感染させ、この培養液を、さらに30分間、37℃、160rpmにて振盪した。続いて、カナマイシン(70μg/ml)を加え、インキュベーター温度を26℃まで低下させ、遺伝子発現を誘導するために、10分後、無水テトラサイクリンを、25μg/lまで加えた。インキュベーションを、26℃、160rpmにて、さらに15時間続けた。
細胞を遠心(15分間、12000g、4℃)によって沈殿させた。ファージミド粒子を含む上清を、滅菌濾過(0.45μm)し、1/4容量(12.5ml)の20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合し、氷上で1時間インキュベートした。遠心(20分間、18000g、4℃)後、沈殿したファージミド粒子を、2mlの冷PBS中に溶解した。溶液を、氷上で30分間インキュベートし、2つの1.5ml反応容器に分配した。不溶の成分の遠心(5分間、18500g、4℃)の後、各上清を、新しい反応容器に移した。
ファージミド粒子を、1/4容量の20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合することによって再沈殿させ、続いて氷上で60分間インキュベーションした。遠心(20分間、18500g、4℃)の後、上清を除去し、沈殿したファージミド粒子を、1ml PBS中に溶解した。氷上で30分間のインキュベーション後、溶液を遠心し(5分間、18500g、4℃)、上清を、アフィニティ濃縮のために直接使用した。トロンボスポンディンペプチドを用いた5回のさらなる選別サイクルを、この方法で実施した。
実施例8:「コロニースクリーニング」方法の使用による、トロンボスポンディンペプチド結合hNGAL突然変異タンパク質の同定
Strep−Tag(登録商標)IIとアルブミン結合ドメインとの融合タンパク質としての、hNGAL突然変異タンパク質の解析的産生のために、2つのBstXI開裂部位間の遺伝子カセットを、phNGAL7上のベクターphNGAL12よりサブクローン化した。
この目的のために、ファスミドDNAを、実施例7からのファージミドを用いた感染により得られた大腸菌クローンの混合物から単離し、Plasmid Midi Kit(Qiagen)を用いて、第4および第5選別サイクルの結果として溶出した。両方の調製物のDNAを、制限酵素BstXIで切断し、それぞれの場合において、2つの断片の小さい方(347bp)を、実施例6で記述したように、プレパラティブアガロースゲル電気泳動によって精製した。ベクターphNGAL7のDNAを、BstXIにて切断し、2つの断片の大きい方(3971bp)を同様の方法で単離した。
結合のために、それぞれ100fmolの単離されたDNA小断片を、総容量20μl(30mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP)中、100fmolの大きいDNA断片と、および1.5 Weiss Units T4 DNAリガーゼ(Promega)と混合し、続いて、16℃にて一晩インキュベーションした。大腸菌TG1−F(非選別条件下で、繰り返し培養することを通して、そのエピソームを欠損した、大腸菌K12 TG1)を、CaCl−法(Sambrookら、上記)にしたがって、この結合混合液、各2μlで形質転換して、2.0mlの細胞懸濁液を得た。100μlのこの懸濁液を、LB/Amp培地を含む寒天プレート上にまき、14時間、37℃にてインキュベートした。
1つの位置において標識化し、大きさを合わせて切った、2枚の親水性PVDF膜(Millipore、GVWP型、孔径0.22μm)を、LB/Amp寒天プレート上にのせた。遠心(5000g、2分間、4℃)し、500μlの培養培地中に再懸濁させた、150μlの形質転換バッチからの細胞懸濁液を、この膜上に、均一にまいた。寒天プレートを、コロニーがおよそ0.5mmの大きさに達するまで、7.5時間、37℃にて、インキュベートした。
その間に、これも大きさをあわせて切った、2枚の疎水性膜(Millipore、Immobilon P、孔径0.45μm)を、取扱説明書にしたがって、PBSでしめらせた。ついで、PBS中、10mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA、Sigma)の溶液、10ml中で、室温にて4時間かき混ぜた。膜上に残っている結合部位を、PBS中3%w/v BSA、0.5%v/v Tween20とともに、室温にて2時間インキュベートすることにより、飽和させた。膜を、それぞれ20ml PBSにて 10分間、2回洗浄し、その後、10ml LB/Amp培地中に10分間浸し、200μg/l無水テトラサイクリンを加えた。
最後に、これらを1つの位置に印を付け、さらに200μg/lの無水テトラサイクリンを含む、LB/Amp寒天の培養プレート上にのせた。上記からの、コロニーが増殖した親水性膜を、両方の印が重なるように、疎水性膜上にのせた。培養プレートを、重ねた両方の膜とともに、22℃にて15時間インキュベートした。この期の間、それぞれのhNGAL突然変異タンパク質が、上層膜上のコロニーより分泌され、下層膜上のHSA上のアルブミン結合ドメインを介して固定化される。
この後、コロニーを含む上層膜を、新鮮なLB/Amp寒天プレート上に移し、4℃にて保存した。疎水性膜を除去し、それぞれ20ml PBSTにて5分間、3回洗浄した。
固定化hNGAL突然変異タンパク質の結合活性の解析のために、ついで、膜を1時間、10mlの、PBST中のビオチン化トロンボスポンディンペプチドの10μg/ml溶液中でインキュベートした(DMF中のビオチン化ペプチドの1mM保存溶液を、したがって、PBST中で1:100希釈した)。膜を、PBSTにて3回洗浄し、続いて、そのビオチン基を介して結合したペプチドの検出のために、10ml アビジン−アルカリホスファターゼ共役物(Sigma、PBST中で1:40000希釈)とともに、1時間インキュベートした。この膜を、PBSTにて2回、PBSにて1回、それぞれ5分間洗浄し、AP−緩衝液(0.1M Tris/HCl pH8.8、0.1M NaCl、5mM MgCl)中で10分間かき混ぜた。発色反応のために、膜を10ml AP−緩衝液中でインキュベートし、識別可能な色シグナルが、コロニーのいくつかの位置で認識されるまで、30μl 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル ホスフェート 4−トルイジン塩(Roth、ジメチルホルムアミド中50μg/ml)および5μl ニトロブルーテトラゾリウム(Roth、70%v/v ジメチルホルムアミド中75μg/ml)を加えた。
疎水性膜上で強い発色スポットを示した19のコロニー(第4選別サイクルから9個、第5サイクルより10個単離)を、相当する親水性膜より培養した。これらのプラスミドDNAを単離し、hNGAL遺伝子カセットを、取扱説明書にしたがって、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit付きのGenetic Analyzer 310システム(Applied Biosystems)を用い、プライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチド配列番号11を用いて、配列解析にかけた。
19の配列決定したクローンは、ただ12つの異なる配列を示し、RFY−A、RFY−B、RFY−C、RFY−D、RFY−E、RFY−F、RFY−G、RFY−H、RFY−I、RFY−J、RFY−KおよびRFY−Lと命名された。クローンRFY−Bが2回、クローンRFY−Cが6回観察された。クローンRFY−Jは、3つのヌクレオチドの欠損を示し、結果として、位置125におけるペプチド第四ループ内に位置する1つのアミノ酸の欠損となる。supEサプレッサー株において、アミノ酸グルタミンに翻訳される、アンバー終止コドンが、クローンRFY−Lにて同定された。
クローンのヌクレオチド配列を、アミノ酸配列に翻訳し、本来のhNGALタンパク質から逸脱したこれらのアミノ酸を、表2a、bに示す。突然変異タンパク質RFY−B、RFY−CおよびRFY−Eのヌクレオチド配列はまた、配列番号23、配列番号25および配列番号27として、配列表内で示す。これらの突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、配列表内で、配列番号24、配列番号26および配列番号28として示す。
それぞれ2回および6回観察された、突然変異タンパク質RFY−BおよびRFY−Cを、これらの結合活性の詳細な特徴解析のために選択した。さらに、ランダム化された領域におけるそのアミノ酸組成が非常に独特であるように見えたので、突然変異タンパク質RFY−Eを選択した。

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実施例9:hNGAL突然変異の産生
実施例8から得た、hNGAL突然変異タンパク質RFY−B、RFY−CおよびRFY−Eの予備産生のために、2つのBstXI開裂部位間の突然変異誘発コード領域を、発現プラスミドphNGAL15上のphNGAL7ベクターよりサブクローン化した(図7)。そのようにして得られたプラスミドは、アミノ末端にOmpAシグナル配列を、そしてカルボキシ末端にStrep−Tag(登録商標)IIアフィニティタグを持つ、突然変異タンパク質の融合タンパク質をコードしていた。
サブクローニングのために、関連する突然変異タンパク質をコードしているプラスミドDNAを、制限酵素BstXIで切断し、2つの断片の小さい方(347bp)を、実施例6で記述したように、プレパラティブアガロースゲル電気泳動によって精製した。同様の様式で、phNGAL15ベクターDNAを、BstXIにて切断し、2つの断片の大きい方(3398bp)を単離した。
1.5 WeissユニットのT4 DNAリガーゼ(Promega)を、総量20μl(30mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP)中の、2つのDNA断片各50fmolに加え、結合のために、この混合物を、16℃にて16時間インキュベートした。ついで、5μlの結合混合液を使用して、CaCl法にしたがって、大腸菌JM83(Yanisch−Perronら、Gene 33(1985)、103−119)を形質転換し、2.0mlの細胞懸濁液を得た。100μlのこの懸濁液を、LB/Amp培地を含む寒天プレート上にまき、37℃にて14時間インキュベートした。
大腸菌JM83形質転換細胞の単一コロニーを、100mlのLB/Amp培地を接種するために使用し、続いて、30℃、200rpmにて一晩インキュベーションした。ついで5lのエルレンマイヤーフラスコ中の2lのLB/Amp培地に、40mlのこのプレ培養液を接種し、22℃、200rpmにて、OD550=0.5まで振盪した。200μg/lの無水テトラサイクリン(DMF中2mg/ml保存溶液、200μl)を加え、続いて、さらに3時間、22℃、200rpmにて振盪させることにより、誘導した。
1つのフラスコからの細胞を遠心し(15分間、4420g、4℃)、上清を取り除いた後、20mlのあらかじめ冷却したペリプラズム放出緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.0、500mM スクロース、1mM EDTA)中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。ついで、スフェロプラストを、2つの連続遠心段階(15分間、4420g、4℃、および15分間、30000g、4℃)にて除去した。ペリプラズムタンパク質抽出物をふくむ上清を、CP−緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA)に対して透析し、滅菌濾過し、hNGAL突然変異タンパク質のクロマトグラフィー精製のために使用した。
精製方法は、C−末端のStrep−Tag(登録商標)II−アフィニティタグ(Schmidtら、上記)に基づいた。この場合、NHS−活性化セファロース(Pharmacia)に連結させた、ストレプトアビジン突然変異タンパク質「1」を使用し(ドイツ国特許第196 41 876.3号;Voss and Skerra、上記)、1mlのマトリックスベッド容量あたり、5mg/mlの固定化ストレプトアビジンを得た。
この物質を満たした、4mlベッド容量のクロマトグラフィーカラムを、40ml/hの流速で、4℃にて20mlのCP−緩衝液で平衡化した。クロマトグラフィーを、フロースルー光度計にて、溶出液の280nmでの吸収を測定することによりモニターした。ペリプラズムタンパク質抽出物の適用後、カラムを、基準線に到達するまでCP−緩衝液で洗浄し、ついで、結合したhNGAL突然変異タンパク質を、CP−緩衝液中の2.5mM D−デスチオビオチン(Sigma)の10ml溶液で溶出した。精製したhNGAL突然変異タンパク質を含む画分を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Fling and Gregerson、上記)を介して確認し、保存した。さらなる適用のために、好適なタンパク質濃度および緩衝液条件を得るために、突然変異タンパク質のプールを、限外濾過のためにセントリコンチューブYM10(MW−カットオフ1000、Millipore)を用いて、約500μlの最終容量まで濃縮し、続いて、HBS−緩衝液(150mM NaCl、10mM HEPES pH7.4、3mM EDTA)に対して透析した。RFY−B、RFY−C、およびRFY−Eに関するタンパク質収量は、1lの培養液あたり、それぞれ70μg、60μgおよび200μgであった。この様式で、本来のhNGALおよびその突然変異タンパク質RFY−B、RFY−C、およびRFY−Eの両方が調製された。
実施例10:ELISAによるhNGAL突然変異タンパク質の、トロンボスポンディンペプチドに対する親和性の測定
ELISA(酵素免疫測定法(Enzyme−linked Immunosorbent Assay))における結合の検出のために、マイクロタイタープレート(Maxisorb、Nunc)のウェルを、それぞれ、50μlのPBS中50μg/ml アビジン(Fluka)で充たし、室温(RT)にて一晩インキュベートした。PBSTにて3回洗浄した後、50μlの、PBST中のビオチン化トロンボスポンディンペプチド、配列番号18の1μM溶液でウェルを充たし、ペプチドを、ビオチンと先に吸着したアビジンとの間の複合体形成を介して固定化した。1時間のインキュベーションの後、この溶液を除去し、マイクロタイタープレートのウェルをPBSTにて3回洗浄した。非特異的結合部位を飽和させるために、ウェルを、100μlのPBST中4%w/vBSAで充たし、室温にて1時間インキュベートし、続いて、PBSTにて3回洗浄した。
ついで、実施例9からの突然変異タンパク質の希釈系列を、100nM濃度から開始して、産生し、続いて1時間、室温にてインキュベートした。アビジンへの非特異的結合についてのコントロールとして、hNGALおよびその突然変異タンパク質の同様な希釈液列を、トロンボスポンディンペプチドを省いたウェルに適用した。PBSTでの3回の洗浄の後、PBSTにて1:8000で希釈した抗−strepII−抗体−HRP−共役物(IBA)を、ウェルに適用した。インキュベーションを、室温にて1時間実施し、続いて、PBSTにて3回、PBSにて2回洗浄した。
結合したhNGAL突然変異タンパク質の検出を、ホースラディッシュ−ペルオキシダーゼに対する基質として、3、3’、5、5’−テトラメチルベンジジンおよびHを使用して実施した。この目的のために、100μlの既製のHRP−基質溶液(Biochem Immunosystems)をウェルに充たし、発色を、100μlの0.3M硫酸を加えることにより、数分後に停止させた。産物形成を、SpectraMax 250光度計(Molecular Devices)で、450nmのエンドポイント吸収を介して測定した。
曲線を、式[P・L]=([P][L])/(K+[P])にしたがって、コンピュータプログラムKaleidagraph(Synergy software)を使用して、非線形最小二乗回帰に適合させた。ここで、[P]は、(A450ユニットでの)固定化したトロンボスポンディンペプチドの総濃度であり、[L]は、それぞれ適用した突然変異タンパク質またはhNGALの濃度であり、[P・L]は、(A450ユニットでの)形成された複合体の濃度であり、Kは、見かけの解離定数である。
得られた結合曲線を、図8に描写している。hNGAL突然変異タンパク質とトロンボスポンディンペプチドとの間の複合体の、見かけの解離定数に関して得られた値を以下の表で要約している。

Figure 0004396923

実施例11:SPRを用いた、hNGAL突然変異タンパク質の、トロンボスポンディンペプチドに対する親和性の測定
hNGAL突然変異タンパク質の、トロンボスポンディンペプチド、配列番号18に対する結合親和性を、BIAcore Xシステム(BIACORE)を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。最初に、(DMF中200μg/mlペプチド溶液1μlを、150mM NaCl、10mM HEPES pH7.4、3mM EDTAを含むHBS緩衝液199μlと、混合することによって調製した)1μg/mlの濃度での、35μlのビオチン化トロンボスポンディンペプチドを、取扱説明書にしたがって、ストレプトアビジンでコートされたセンサーチップSA(BIACORE)の1つのフローチャンネルの表面に固定化し、約400応答ユニット(RU)を得た。ついで、hNGAL突然変異タンパク質の結合曲線を、500nM〜25nMの濃度でのHBS緩衝液中の、実施例9からのそれぞれの精製突然変異タンパク質、35μlを、ランニング緩衝液としてHBS−EP(0.005%界面活性剤P20を含むHBS)を用い、5μl/分の連続流速によって、測定した。
安定状態共鳴値を、適用した各タンパク質濃度に対して、固定化トロンボスポンディンペプチドでのチャンネルに対する注入相の終わりにて測定した。ごくわずかな緩衝液効果が、コントロールとして使用した、センサーチップの第二チャンネルで検出された。これらの値を、hNGAL突然変異タンパク質の濃度に対して、直接プロットした。
曲線を、式[P・L]=([P][L])/(K+[P])にしたがって、コンピュータプログラムKaleidagraph(Synergy software)を使用して、非線形最小二乗回帰に適合させた。ここで、[P]は、固定化したトロンボスポンディンペプチドの総濃度(単位:RU)であり、[L]は、それぞれ適用した突然変異タンパク質またはhNGALの濃度であり、[P・L]は、形成された複合体の濃度(単位:RU)であり、Kは、平衡条件下における解離定数である。
得られた結合曲線を、図9に描写している。hNGAL突然変異タンパク質とトロンボスポンディンペプチドとの間の複合体の解離定数に関して、SPR測定から得られた値を以下の表で要約している。

Figure 0004396923

実施例12:ヒトインターロイキン−8(IL−8)に対するhNGAL突然変異タンパク質の選別
組換えヒトサイトカイン インターロイキン−8(Baggiolini and Clark−Lewis、FEBS Lett.397、(1992)、97−101;HN−AVLPRSAKELRCQCIKTYSKPFHPKFIKELRVIESGPHCANTEIIVKLSDGRELCLDPKENWVQRVVEKFLKRAENS−COOH;配列番号29)を、ビオチン基と共役させ、ストレプトアビジンでコートされた常磁性粒子(Dynal)の存在下で、hNGAL突然変異タンパク質を提示しているファージミドのライブラリーからのアフィニティ濃縮のための標的として使用した。
共役物は、3.4μlのHOに溶解させた、5.6nmol(12.5μg)のスルホサクシンイミジル−2−(ビオチンアミド)エチル−1、3−ジチオプロピオン酸(NHS−SS−Biotin、Pierce)を、50μlHO中に溶解した、1.4nmol(12.5μg)ヒト組換えIL−8(Promocell)、36.6μl HOと、および10μlの10×濃縮PBS/NaOH pH8.5と混合することによって、調製した。この混合物を、1時間、室温(RT)にて撹拌下で、インキュベートした。ついで、過剰な試薬を、ランニング緩衝液としてPBS/NaOH pH8.5を用いて、取扱説明書にしたがって、PD−10ゲル濾過カラム(Pharmacia)を用い、IL−8共役物から除去した。PD−10カラムから溶出したビオチン化IL−8を、同一の緩衝液で、最終濃度1μMに合わせ、合計容量1.24mlを得た。標識化したIL−8を、−80℃にて分液して保存し、使用の直前に解凍した。
IL−8に対する親和性を持つ突然変異タンパク質を提示しているファージミドの単離のために、実施例7で得た、長期保存のために−20℃で保存した、沈殿ファージミドの1つの分液を解凍し、ファージミドをペレットとした(20分間、18500g、4℃)。上清の除去の後、沈殿ファージミド粒子を、270μlのPBS中に溶解し、氷上で30分間インキュベートし、最後に遠心(5分間、18500g、4℃)して、残余凝集物を除去した。
IL−8結合ファージミドを濃縮するために、30μlの、ビオチン化インターロイキン−8の1μM溶液(30pmol)を、PBS中の270μlのファージミド(約1013cfu)と混合し、サイトカインと、ファージミドによって提示された突然変異タンパク質との間の複合体形成が起こることが可能になるように、室温にて1時間インキュベートした。ついで、100μlの、PBS中8%w/v BSA、0.4%v/v Tween20の溶液を加えた。
これと並行して、100μlの、市販されたストレプトアビジン−常磁性粒子の溶液(Dynal)を、1mlのPBSで3回洗浄した。ここで、粒子を、1.5mlのエッペンドルフ容器を回転させることによって1分間懸濁させたままにし、ついで磁石の助けを借りて、容器の壁に回収し、上清をピペットで取り除いた。非特異的結合部位を飽和させるために、常磁性粒子を、室温にて1時間、1mlの、PBST中の2%(w/v)BSAとともにインキュベートした。
上記のように上清を除去した後、ビオチン化IL−8とファージミドとの混合液を、常磁性粒子に加え、この粒子を再懸濁させ、室温にて10分間インキュベートした。最後に、ストレプトアビジンの遊離のビオチン結合部位を、10μlの、PBS中の4mM D−デスチオビオチン(Sigma)溶液を混合液に加えることによって、飽和させた。この段階は、突然変異タンパク質の融合タンパク質、およびファージコートタンパク質pIII断片の部分として、Strep−tag(登録商標)IIが、ストレプトアビジンとの複合体を形成することを防止するために使用した。
結合しなかったファージミドを、1mM D−デスチオビオチンを含む新鮮なPBST、1mlで1分間を8回、常磁性粒子を洗浄することによって、除去した。各回で、粒子を磁石の助けを借りて回収し、上清をピペットで取り除いた。最終的に、結合したファージミドを、1mM デスチオビオチンおよび100mM DTTを含む1mlのPBST中に粒子を再懸濁させることにより、還元条件下で溶出した。37℃にて1時間、この溶液をインキュベートして、インターロイキン−8とビオチンとの間のリンカー分子内に含まれるジスルフィド結合を減少させ、したがって、ビーズからの、IL−8に特異的に結合したファージミドを放出させた。
増幅の目的のために、この溶出ファージミド溶液(1.0ml、選別サイクルに依存して、10〜10cfuを含む)を、短時間で37℃にし、3mlの、大腸菌XL1−blueの指数関数的に増殖する培養液(37℃にてOD550=0.5)と混合し、37℃、200rpmにて30分間、振盪した。感染した細胞を沈殿させ(2分間、4420g、4℃)、600μlの培養培地中に再懸濁させ、100μg/mlのアンピシリンを含むLB−培地(LB/Amp;直径140mm)を用いた、3枚の寒天プレート上にまいた。
32℃にて14時間のインキュベーション後、コロニーの菌叢を、それぞれ10ml 2×YT/Amp−培地を加えて、寒天プレートから掻きとった。懸濁液を滅菌エルレンマイヤーフラスコに移し、37℃、200rpmにて20分間、振盪した。
ファージミド粒子の産生およびアフィニティ濃縮の他のサイクルのために、細胞濃度がOD550=0.08であるように、あらかじめ37℃まで温めた、50mlの2×YT/Amp培地に、0.2〜1mlの前記懸濁液を接種した。この培養液を、37℃、160rpmにて、OD550=0.5の細胞濃度まで、インキュベートした。ついで、培養液に、およそ10の感染多重度にて、VCS−M13ヘルパーファージ(Stratagene)を感染させ、この培養液を、さらに30分間、37℃、160rpmにて振盪した。続いて、カナマイシン(70μg/ml)を加え、インキュベーター温度を26℃まで低下させ、遺伝子発現を誘導するために、10分後、無水テトラサイクリンを、25μg/lまで加えた。インキュベーションを、26℃、160rpmにて、さらに15時間続けた。
細胞を遠心(15分間、12000g、4℃)によって沈殿させた。ファージミド粒子を含む上清を、滅菌濾過(0.45μm)し、1/4容量(12.5ml)の20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合し、氷上で1時間インキュベートした。遠心(20分間、18000g、4℃)後、沈殿したファージミド粒子を、2mlの冷PBS中に溶解した。溶液を、氷上で30分間インキュベートし、2つの1.5ml反応容器に分配した。不溶の成分の遠心(5分間、18500g、4℃)の後、各上清を、新しい反応容器に移した。
ファージミド粒子を、1/4容量の20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合することによって再沈殿させ、続いて氷上で60分間インキュベーションした。遠心(20分間、18500g、4℃)の後、上清を除去し、沈殿したファージミド粒子を、270μl PBS中に溶解した。氷上で30分間のインキュベーション後、溶液を遠心し(5分間、18500g、4℃)、上清を、アフィニティ濃縮のために直接使用した。IL−8でのさらなる4回の選別サイクルをこの方法で実施した。
実施例13:「コロニースクリーニング」法の使用による、インターロイキン−8に結合するhNGAL突然変異タンパク質の同定
実施例3で記述したように、Strep−Tag(登録商標)IIとアルブミン結合ドメインとの融合タンパク質としての、hNGAL突然変異タンパク質の解析的産生のために、2つのBstXI開裂部位間の遺伝子カセットを、phNGAL7上のベクターphNGAL12よりサブクローン化した。
この目的のために、ファスミドDNAを、実施例12からのファージミドでの感染により得た大腸菌クローンの混合物から単離し、Plasmid Midi Kit(Qiagen)を用いて、第5選別サイクルの後に溶出した。DNAを、制限酵素BstXIで切断し、2つの断片のうち小さい方(347bp)を、実施例6で記述したように、プレパラティブアガロースゲル電気泳動によって精製した。ベクターphNGAL7のDNAを、BstXIにて切断し、2つの断片の大きい方(3971bp)を同様の方法で単離した。
結合のために、100fmolの単離されたDNA小断片を、100fmolの大きなDNA断片と混合し、総量20μl(30mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP)中で、1.5Weiss Unit T4 DNAリガーゼ(Promega)とともにインキュベートし、続いて、16℃にて一晩インキュベーションした。大腸菌TG1−F(非選別条件下で、繰り返し培養することを通して、そのエピソームを欠損した、大腸菌K12TG1)を、CaCl−法(Sambrookら、上記)にしたがって、4μlのこの結合混合液で形質転換し、2.0mlの細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を遠心(5000g、2分間、4℃)し、100μlの培養培地に再懸濁し、LB/Amp培地を含む寒天プレート上にまき、14時間、37℃にてインキュベートして、形質転換効率を決定した。
1つの位置で標識化し、大きさを合わせて切った、親水性PVDF膜(Millipore、GVWP型、孔径0.22μm)を、LB/Amp寒天プレート上にのせた。上記の結合混合液5〜10μlで形質転換した、新鮮な形質転換バッチからの細胞懸濁液を、遠心(5000g、2分間、4℃)し、100μlの培養培地中に再懸濁させ、400〜500コロニーを得るために、この膜上に均一にまいた。寒天プレートを、コロニーがおよそ0.5mmの大きさに達するまで、7.5時間、37℃にて、インキュベートした。
その間に、これも大きさをあわせて切った、疎水性膜(Millipore、Immobilon P、孔径0.45μm)を、取扱説明書にしたがって、PBSでしめらせた。PBS中、10mg/ml HSA(Sigma)の溶液10ml中で、室温にて4時間かき混ぜることにより、HSAでコーティングした。膜上に残っている結合部位を、PBS中20mlの3%(w/v)BSA、0.1%(v/v)Tween20とともに室温にて2時間インキュベートすることにより、飽和させた。膜を、20ml PBSにて 10分間、2回洗浄し、その後、10ml LB/Amp培地中に10分間浸し、200μg/l無水テトラサイクリンを加えた。
最後に、これを1つの位置に印を付け、さらに200μg/lの無水テトラサイクリンを含む、LB/Amp寒天の培養プレート上にのせた。上記からの、コロニーが増殖した親水性膜を、両方の印が重なるように、疎水性膜上にのせた。培養プレートを、重ねた両方の膜とともに、22℃にて15時間インキュベートした。この期の間、それぞれのhNGAL突然変異タンパク質が、上層膜上のコロニーより分泌され、下層膜上のHSAを介したそのアルブミン結合ドメインを介して固定化される。
この後、コロニーを含む上層膜を、新鮮なLB/Amp寒天プレート上に移し、4℃にて保存した。疎水性膜を除去し、それぞれ20ml PBSTにて5分間、3回洗浄した。
固定化hNGAL突然変異タンパク質の結合活性の解析のために、膜を、3.5mlの、100nM ジゴキシゲニン化IL−8溶液中で1時間、インキュベートした。
共役物は、2.3μlのDMSO中に溶解した14nmol(9.2μg)の、ジゴキシゲニン−3−O−メチルカルボニル−ε−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシサクシンイミドエステル(DIG−NHS、Roche)を、50μl HO中に溶解した1.4nmol(12.5μg)ヒト組換えIL−8(Promocell)、37.7μl HO、および10μlの10×濃縮PBS/NaOH pH8.5と混合することによって、調製した。この混合液を、室温にて1時間、撹拌しながらインキュベートした。過剰な薬剤を、ランニング緩衝液としてPBS/NaOH pH8.5を用いて、PD−10ゲル濾過カラム(Pharmacia)によって、IL−8共役物から除去した。PD−10カラムから溶出したジゴキシゲニン化IL−8を、同一の緩衝液にて、1μMの最終濃度に調整し、全容量1.56mlを得た。標識化IL−8を、−80℃にて、分液して保存し、使用の直前に解凍した。
膜を、PBSTにて3回洗浄し、そのジゴキシゲニン基を介して結合したIL−8の検出のために、続いて、PBST中に1:1000希釈した、10ml抗ジゴキシゲニンFab−アルカリホスファターゼ共役物とともに、1時間インキュベートした。この膜を、PBSTにて2回、PBSにて1回、それぞれ5分間洗浄し、AP−緩衝液中で10分間かき混ぜた。発色反応のために、膜を10ml AP−緩衝液中でインキュベートし、識別可能な色シグナルがコロニーのいくつかの位置で認識されるまで、30μl 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート 4−トルイジン塩(Roth、ジメチルホルムアミド中50μg/mlで溶解)および5μlニトロブルーテトラゾリウム(Roth、70%v/vジメチルホルムアミド中75μg/ml)を、それに加えた。
膜上に見られた200コロニーから、疎水性膜上で、9つが強い発色スポットを示し、これを、相当する親水性膜から培養した。これらのプラスミドDNAを単離し、hNGAL遺伝子カセットを、取扱説明書にしたがって、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を備えたGenetic Analyzer 310システムを使用し、プライマーとしてオリゴデオキシヌクレオチド配列番号5を用いて、配列解析にかけた。
9つのクローンすべてが同一の配列を示し、このことは、単一の突然変異タンパク質が、選別手順の間に優先的に濃縮されたことを示している。この突然変異タンパク質を、変異体N4と名付けた。
クローンN4のヌクレオチド配列をそのアミノ酸配列に翻訳し、本来のhNGALタンパク質から逸脱したこれらのアミノ酸残基を、表3に示す。突然変異タンパク質N4のヌクレオチド配列および完全アミノ酸配列はまた、配列番号30および配列番号34として示す。

Figure 0004396923

実施例14:hNGAL突然変異タンパク質N4の産生
実施例13から得た、hNGAL突然変異タンパク質N4の予備産生のために、BstXIカセットを、phNGAL7中の変異体より単離し、発現プラスミドphNGAL15よりサブクローン化した(図7)。得られたプラスミドは、アミノ末端にOmpAシグナル配列を、そしてカルボキシ末端にStrep−Tag(登録商標)IIアフィニティタグを持つ、突然変異タンパク質N4の融合タンパク質をコードしている。
サブクローニングのために、関連する突然変異タンパク質をコードしているphNGAL7プラスミドDNAを、制限酵素BstXIで切断し、2つの断片の小さい方(347bp)を、実施例6で記述したように、プレパラティブアガロースゲル電気泳動によって精製した。同様の様式で、phNGAL15ベクターDNAを、BstXIにて切断し、2つの断片の大きい方(3398bp)を単離した。
1.5WeissユニットのT4 DNAリガーゼ(Promega)を、総量20μl(30mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP)中の、2つのDNA断片各50fmolに加え、結合のために、この混合物を、16℃にて16時間インキュベートした。ついで、5μlの結合混合液を使用して、CaCl法にしたがって、大腸菌JM83(Yanisch−Perronら、上記)を形質転換し、2.0mlの細胞懸濁液を得た。100μlのこの懸濁液を、LB/Amp培地を含む寒天プレート上にまき、37℃にて14時間インキュベートした。
大腸菌JM83形質転換細胞の単一コロニーを、100mlのLB/Amp−培地に接種するために使用し、つづいて、30℃、200rpmにて一晩インキュベーションした。ついで5lエルレンマイヤーフラスコ中の2lのLB−Amp−培地に、40mlのこのプレ培養液を接種し、22℃、200rpmにて、OD550=0.5に達するまで振盪した。突然変異タンパク質N4の発現を、200μg/l無水テトラサイクリン(DMF中2mg/ml保存溶液、200μl)を加えることにより誘導し、続いて、インキュベーションをさらに3時間続けた。
1つのフラスコからの細胞を遠心し(15分間、5571g、4℃)、上清を取り除いた後、20mlのあらかじめ冷却したペリプラズム放出緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.0、500mM スクロース、1mM EDTA)中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。ついで、スフェロプラストを、2つの連続遠心段階(15分間、2988g、4℃および15分間、25000g、4℃)にて除去した。ペリプラズムタンパク質抽出物をふくむ上清を、CP−緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.0、150mM NaCl、1mM EDTA)に対して透析し、滅菌濾過し、hNGAL突然変異タンパク質のクロマトグラフィー精製のために使用した。
精製方法は、Strep−Tactin(登録商標)Superflow−物質(IBA)を用い、C−末端のStrep−Tag(登録商標)II−アフィニティタグ(Schmidtら、上記)に基づいた。この物質を満たした、4mlベッド容量クロマトグラフィーカラムを、2ml/分の流速で、4℃にて20mlのCP−緩衝液で平衡化した。クロマトグラフィーを、フロースルー光度計にて、280nmでの吸収を測定することによりモニターした。ペリプラズムタンパク質抽出物の適用後(流速0.8ml/分)、カラムを、基準線に到達するまで、2ml/分の流速で、CP−緩衝液で洗浄した。結合したhNGAL突然変異タンパク質を、1ml/分の流速で、CP−緩衝液中の2.5mM D−デスチオビオチン(Sigma)の溶液で溶出した。精製したhNGAL突然変異タンパク質を含む画分(各2.5ml)を保存し、YM10セントリコンチューブ(MW−カットオフ 10kDa、Millipore)を用いて、およそ500μlの最終容量まで濃縮し、15%SDS−ポリアクリルアミドゲル(Fling and Gregerson、上記)上で解析した。最後に、この物質を、濾過(0.22μm)によって滅菌し、4℃にて保存した。
実施例15:ELISAアッセイにおける、IL−8に対するhNGAL突然変異タンパク質の親和性の測定
ELISAにおける結合の検出のために、96のマイクロタイタープレート(Maxisorb、Nunc)の2列(各12ウェル)を、50μlの、PBS中50μg/ml アビジン溶液(Fluka)で、4℃にて一晩コートした。PBSTにて3回洗浄した後、1つの列を、PBST中ビオチン化IL−8の1μM溶液、50μl/ウェルにて処理し、一方、第2の列は、コントロールとしてPBSTとともにインキュベートした。室温にて1時間後、すべてのウェルをPBSTにて3回洗浄し、非特異的結合部位を、100μlの、PBST中4%w/vスキムミルク粉末にて、室温で1時間、飽和させた。
IL−8に対する突然変異タンパク質N4のK値を決定するために、実施例14からのN4タンパク質の希釈系列を、1μMの濃度で開始し、PBSTにて調製した。アビジンに対する非特異的結合のためのコントロールとして、突然変異タンパク質N4の同様な希釈系列を、IL−8を省いたウェルに適用した。複合体形成を、室温にて1時間で可能にし、続いてPBSTにて3回洗浄し、PBSTにて1:8000で希釈した、抗−strepII−抗体−HRP−共役物(IBA)とともに、室温にて1時間インキュベートした。
結合した突然変異タンパク質N4の検出を、ホースラディッシュ−ペルオキシダーゼに対する基質として、3、3’、5、5’−テトラメチルベンジジンおよびHを使用して実施した。この目的のために、100μlの既製のHRP−基質溶液(Biochem Immunosystems)をすべてのウェルに充たした。発色を、100μlの0.3M硫酸を加えることにより、数分後に停止させた。産物形成を、SpectraMax 250光度計(Molecular Devices)中で、450nmのエンドポイント吸収を介して測定した。
曲線を、実施例10にしたがって、コンピュータプログラムKaleidagraph(Synergy software)を使用して、非線形最小二乗回帰に適合させた。得られた結合曲線を、図10に描写している。hNGAL突然変異タンパク質N4とIL−8との間の複合体の、見かけの解離定数に関して得られた値は、300±34nMである。
実施例16:ビオチン化TNFαに対する、hNGAL突然変異タンパク質の選別
組換えヒト腫瘍壊死因子α(TNFα、配列番号31、配列番号35)を、ビオチン基と共役させ、ストレプトアビジンでコートされた常磁性粒子(Dynal)の存在下で、実施例7で記述したように得られたhNGAL突然変異タンパク質を提示しているファージミドのライブラリーからのアフィニティ濃縮のための標的として使用した。
組換えTNFαを産生するために、大腸菌BL21[DE3]の細胞を、N末端Arg−Gly−Ser−His(6)−Gly(3)−タグを用いて、サイトカインTNFαをコードしている発現プラスミドpTNFα(Wangら、Science 228(1985)、149〜154)で形質転換させた。組換えサイトカインを30℃にて4時間インキュベートしたことを除いては、SchmidtおよびSkerraによって記述されたように(Schmidt and Skerra、J.Chromatogr.676(1994)、103〜119)、TNFαの発現を行なった。これらの条件下では、TNFαは可溶性タンパク質として細胞質に蓄積し、その後の、30mlの溶解緩衝液(50mM NaHPO/NaOH pH8.0、300mM NaCl、10mM イミダゾール)に、1lの培養培地の細胞ペレットを凍結および解凍することにより、放出されうる。続いて固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC;Porathら、Nature 258、(1975)598〜599)およびサイズ排除クロマトグラフィーにより、TNFαをその溶液から、三量体型にて精製した(Lohrengelら、Cytokine 12(1999)、573〜577)。タンパク質の収量は、1lの培地容量に対しおよそ1.5mgであった。
25μlのHOに溶解させた40nmol(24.3μg)のNHS−SS−ビオチン(Pierce)を、235μlPBS/NaOH pH8.5に溶解して総量1ml PBS/NaOH pH8.5にしたヒト組換えTNFαと反応させることにより、共役物を調製した。混合物を室温(RT)にて1時間、攪拌しながらインキュベートした。次に、PBSをランニング緩衝液として、PD−10ゲル濾過カラム(Pharmacia)を取扱説明書にしたがって使用することにより、TNFα共役物から余剰な試薬を取り除いた。
TNFαに親和性をもつ突然変異タンパク質を提示しているファージミドを単離するために、実施例7のように得られる、長期間−20℃で保存されていた沈殿したファージミドの1つの分液を解凍して、ファージミドをペレット化した(20分間、18500g、4℃)。上清を取り除いた後、沈殿したファージミド粒子を270μlのPBSに溶解し、氷上にて30分間インキュベートし、最後に遠心分離にかけて(5分間、18500g、4℃)、残余凝集物を取り除いた。
ビオチン標識したTNFαの1μM溶液(PBS中ビオチン標識したサイトカインの2.5μM溶液200μlを、300μlのPBSと混合することにより、調製した)30μl(30pmol)を、PBS中ファージミド、270μl(およそ1013cfu)と混合し、室温にて1時間インキュベートし、サイトカインとファージミドを提示する突然変異タンパク質との複合体を形成させた。ついで、8%w/v BSA、0.4%Tween20のPBS溶液100μlを加えた。
それと平行して、市販されている、ストレプトアビジン常磁性粒子(Dynal)の懸濁液100μlを、1mlのPBSで3回洗浄した。ここでは、粒子を1分間、1.5mlのエッペンドルフ容器で回転させて懸濁を続けてから、磁石の助けを借りて容器の壁面に集め、上清をピペットで取り除いた。非特異的な結合部位を飽和させるために、常磁性粒子を、PBST中2%(w/v)のBSA1mlで、室温にて1時間インキュベートした。
上記のように上清を取り除いた後、ビオチン標識したTNFαとファージミドの混合物を常磁性粒子に加え、粒子を再懸濁させて、室温にて10分間インキュベートした。最後に、4mMのD−デスチオビオチン(Sigma)のPBS溶液10μlを混合物に加え、前記混合物を室温にて5分間インキュベートすることにより、ストレプトアビジンの遊離のビオチン結合部位を飽和させた。この工程は、突然変異タンパク質の融合タンパク質およびファージコートタンパク質pIII断片の一部であるStrep−Tag(登録商標)IIが、ストレプトアビジンと複合体形成するのを防ぐために行なう。
常磁性粒子を、1mMのD−デスチオビオチンを含む、新鮮なPBST1mlで1分間、8回洗浄することにより、結合していないファージミドを取り除いた。各回粒子を磁石の助けを借りて集め、上清をピペットで取り除いた。最後に、1mMのデスチオビオチンおよび100mMのDTTを含むPBST1ml中に粒子を再懸濁させることにより、結合したファージミドを還元条件下で溶出した。その溶液を37℃にて1時間インキュベートすることにより、TNFαとビオチンとの間のリンカー分子中にあるジスルフィド結合を還元し、それによって、ビーズからTNFαに特異的に結合したファージミドを放出させた。
増幅のために、溶出したファージミド溶液(1.0ml、10〜10cfu含有、選択サイクルに依存する)を一気に37℃にし、大腸菌XL1−blueの指数関数的に増殖している培養液(37℃でOD550=0.5)3mlと混合し、37℃にて30分間、200rpmで振盪した。感染細胞を沈殿させ(2分間、4420g、4℃)、600μlの培養培地中に再懸濁させ、100μg/mlのアンピシリンを含むLB倍地の3枚の寒天プレート上に塗布した(LB/Amp;直径140mm)。
32℃にて14時間インキュベートした後、それぞれ10mlの2×YT/Amp培地を加え、寒天プレートからコロニーの菌叢をかき取った。懸濁液を、滅菌したエルレンマイヤーフラスコに移し、37℃にて20分間、200rpmで振盪した。
ファージミド粒子の産生およびアフィニティー濃縮の他のサイクルのために、細胞濃度がOD550=0.08であるように、あらかじめ37℃に温めておいた50mlの2×YT/Amp培地に、0.2〜1mlの前記懸濁液を接種した。この培養液を、細胞濃度OD550=0.5になるまで、37℃、160rpmにてインキュベートした。ついで、培養液にVCS−M13ヘルパーファージ(Stratagene)を約10回の感染多重度で感染させ、その培養液を37℃、160rpmにて30分間振盪した。続いてカナマイシン(70μg/ml)を加え、インキュベーターの温度を26℃に下げ、10分後に無水テトラサイクリンを25μg/l加えて、遺伝子発現を誘導した。26℃、160rpmにてさらに15時間インキュベートした。
遠心分離により細胞を沈殿させた(15分間、12000g、4℃)。ファージミド粒子を含む上清を滅菌濾過し(0.45μm)、1/4容量(12.5ml)の20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合して、氷上で1時間インキュベートした。遠心分離後(20分間、18000g、4℃)、沈殿したファージミド粒子を2mlの冷却したPBS中に溶解させた。その溶液を氷上で30分間インキュベートし、2つの1.5ml反応容器に分配した。不溶の成分を遠心分離した後(5分間、18500g、4℃)、それぞれの上清を新しい反応容器に移した。
ファージミド粒子を、1/4容量の20%w/v PEG8000、15%w/v NaClと混合することにより再沈殿させ、続いて氷上で60分間インキュベートした。遠心分離後(20分間、18500g、4℃)、上清を取り除いて、沈殿したファージミド粒子を270μlのPBS中に溶解させた。氷上で30分間インキュベートした後、溶液を遠心分離し(5分間、18500g、4℃)、上清を直接アフィニティー濃縮に用いた。TNFαペプチドを用いたさらに4つの選別サイクルを、このようにして行なった。
実施例17:「コロニースクリーニング」法による、TNFα結合hNGAL突然変異タンパク質の同定
実施例3に記載のように、Strep−Tag(登録商標)IIおよびアルブミン結合ドメインを持つ融合タンパク質としてのhNGAL突然変異タンパク質を分析的に生産するために、2つのBstXI開裂部位間の遺伝子カセットを、phNGAL7上のベクターphNGAL12からサブクローン化した。
この目的のために、実施例16からのファージミドを感染させることにより得られる大腸菌クローンの混合物から、ファスミドDNAを単離し、第5回の選別サイクルの後、Plasmid Midi Kit(Qiagen)を用いて溶出した。DNAを制限酵素BstXIで切断し、2つの断片のうち小さい方(347bp)を、実施例6に記載のようにプレパラティブアガロースゲル電気泳動により精製した。ベクターphNGAL7のDNAをBstXIで切断し、2つの断片のうち大きい方(3971bp)を同様に単離した。
結合のために、単離した小さいDNA断片の100fmolを大きいDNA断片100fmolと混合し、全体量が20μl(30mM Tris/HCl pH7.8、10mM MgCl、10mM DTT、1mM ATP)の1.5Weiss UnitのT4 DNAリガーゼ(Promega)と一緒にインキュベートし、続いて16℃にて一晩インキュベートした。大腸菌TG1−F(大腸菌K12 TG1、非選択的条件下で繰り返し培養している間に自身のエピソームを欠失したもの)を、CaCl法(Sambrookら、上記)に従って、4μlのこの結合混合物で形質転換させ、2.0mlの細胞懸濁液を得た。その細胞懸濁液を遠心分離し(5000g、2分間、4℃)、100μlの培養培地に再懸濁させ、LB/Amp培地を含む寒天プレート上に塗布して、37℃にて14時間インキュベートして形質転換効率を測定した。
1つの位置に印を付け、大きさを合わせて切った、親水性のPVDF膜(Millipore、GVWP型、孔径0.22μm)を、LB/Amp寒天プレート上に置いた。上記の結合混合物の3〜6μlを形質転換した、新鮮な形質転換バッチからの細胞懸濁液を、遠心分離し(5000g、2分間、4℃)、100μlの培養培地中に再懸濁させて、400〜500コロニーを得るために、この膜上に均等に塗布した。寒天プレートを、コロニーの大きさがおよそ0.5mmになるまで、37℃にて7.5時間インキュベートした。
その間に、これも大きさをあわせて切った、疎水性膜(Millipore、Immobilon P、孔径0.45μm)を、取扱説明書にしたがって、PBSでしめらせた。PBS中10mg/ml HSA(Sigma)の溶液10ml中で、室温にて4時間かき混ぜることにより、HSAでコーティングした。膜上に残っている結合部位を、PBS中20mlの4%(w/v)スキムミルク粉末、0.1%(v/v)Tween20とともに、室温にて2時間インキュベートすることにより、飽和させた。膜を、20ml PBSにて10分間、2回洗浄し、その後10ml LB/Amp培地中に10分間浸し、200μg/l無水テトラサイクリンを加えた。
最後に、これを1つの位置に印を付け、さらに200μg/lの無水テトラサイクリンを含む、LB/Amp寒天の培養プレート上にのせた。上記からの、コロニーが増殖した親水性膜を、両方の印が重なるように、疎水性膜上にのせた。培養プレートを、重ねた両方の膜とともに、22℃にて15時間インキュベートした。この期の間、それぞれのhNGAL突然変異タンパク質が、上層膜上のコロニーより分泌され、下層膜上のHSAを介したアルブミン結合ドメインを介して固定化された。
この後、コロニーを含む上層膜を、新鮮なLB/Amp寒天プレート上に移し、4℃にて保存した。疎水性膜を除去し、それぞれ20ml PBSTにて5分間、3回洗浄した。
固定化hNGAL突然変異タンパク質の結合活性の解析のために、ついで、膜を1時間、0.5%w/vスキムミルク粉末を含む、PBST中100nMのジゴキシゲニン化TNFαの溶液3.5ml中において、インキュベートした。
27μlのDMSO中に溶解した40nmol(27.5μg)のDIG−NHS(Roche)を、235μlのPBS/NaOH pH8.5に溶解して総量1mlのPBS/NaOH pH8.5とした10nmol(187.7μg)のTNFαと反応させることにより、共役物を調製した。この混合液を、室温(RT)にて1時間、撹拌しながらインキュベートした。その後、過剰な薬剤を、ランニング緩衝液としてPBSを用いた取扱説明書にしたがって、PD−10ゲル濾過カラム(Pharmacia)を使用することにより、TNFα共役物から除去した。
膜を、PBSTにて3回洗浄し、ついで、そのジゴキシゲニン基を介した結合TNFαの検出のために、PBSTにて1:1000に希釈した、抗ジゴキシゲニンFab−アルカリホスファターゼ共役物10mlとともに、1時間インキュベートした。膜を、PBSTにて2回、PBSにて1回、それぞれ5分間洗浄し、AP−緩衝液中で10分間かき混ぜた。発色反応のために、膜を10ml AP−緩衝液中でインキュベートし、識別可能な色シグナルがコロニーのいくつかの位置で認識されるまで、30μl 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート4−トルイジン塩(Roth、ジメチルホルムアミド中50μg/ml)および5μl ニトロブルーテトラゾリウム(Roth、70%v/vジメチルホルムアミド中75μg/ml)を、それに加えた。
多様コロニースクリーニング試験で膜上に現れた1800のコロニーから、疎水性膜上に強い発色を表わした14コロニーを、相当する親水性膜から培養した。それらのプラスミドDNAを単離し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を備えたGenetic Analyzer 310システムを取扱説明書にしたがって用い、オリゴデオキシヌクレオチド配列番号5をプライマーとして用いて、hNGAL遺伝子カセットについて配列分析した。
これらの14の突然変異タンパク質のうち、13は同じ配列を示し、TNF−V1と命名され、一方、第14の配列は違うもので、TNF−V2と命名された。
クローンTNF−V1およびTNF−V2のヌクレオチド配列をそのアミノ酸配列に翻訳し、本来のhNGALタンパク質から逸脱したこれらのアミノ酸残基を表4に示した。突然変異タンパク質TNF−V1およびTNF−V2のヌクレオチド配列はまた、それぞれ配列番号32および配列番号33である。これらの2つの突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号36および配列番号37である。

Figure 0004396923

実施例18:「コロニースポットアッセイ」を用いた、TNFαに対する選択されたhNGAL突然変異タンパク質の結合活性の確認
コロニースポットアッセイは、形質転換細胞の懸濁液をプレートにスポットする代わりに、対応する発現プラスミドを持つ大腸菌の単一コロニーを、グリッドで印をつけた親水性膜上に、マスタープレートからスポットすることを除いては、実施例17で概略を述べたコロニースクリーニングアッセイと同様に行なった。それぞれのクローンを、LB/Amp寒天の培養プレート上においた親水性膜(Millipore、GVWP型、孔径0.22μm)上に4回または5回、滅菌した楊枝を用いてスポットした。37℃にて5時間、細胞を増殖させた。
その間に、疎水性膜(Millipore、Immobilon P、孔径0.45μm)を取扱説明書にしたがって、PBSで湿らせた。HSA(Sigma)の10mg/mlPBS溶液10mlを、室温にて4時間攪拌することにより、HSAでコートした。膜上に残っている結合部位を、20mlの、PBS中3%(w/v)BSA、0.1%(v/v)のTween20で、室温にて2時間インキュベートした。膜を20mlのPBSで10分間、2回洗浄し、その後、200μg/lの無水テトラサイクリンを加えたLB/Amp培地10mlに10分間浸した。
最後に、これを1つの位置に印を付け、さらに200μg/lの無水テトラサイクリンを含む、LB/Amp寒天の培養プレート上にのせた。上記からの、コロニーが増殖した親水性膜を、両方の印が重なるように、疎水性膜上にのせた。培養プレートを、重ねた両方の膜とともに、22℃にて15時間インキュベートした。この期の間、それぞれのhNGAL突然変異タンパク質が、上層膜上のコロニーより分泌され、下層膜上のHSA上のアルブミン結合ドメインを介して固定化される。
この後、コロニーを含む上層膜を新鮮なLB/Amp寒天プレート上に移し、4℃にて保存した。疎水性膜を除去し、それぞれ20ml PBSTにて5分間、3回洗浄した。
次に、スポットされた突然変異タンパク質のTNFαに対する結合活性を確認するために、膜を、0.5%w/vスキムミルク粉末を含む100nMのジゴキシゲニン化TNFαのPBST溶液3.5ml中で、1時間インキュベートした(したがって、PBS中のジゴキシゲニン化TNFαの1.5μM保存溶液を、スキムミルク粉末を含むPBST1:15に希釈した)。
膜をPBSTで3回洗浄し、続いて、そのジゴキシゲニン基を介した結合TNFαを検出するために、PBSTで1:1000に希釈した抗ジゴキシゲニンFab−アルカリホスファターゼ共役物10mlとともに、1時間インキュベートした。膜をPBSTで2回、PBSで1回、それぞれ5分間洗浄し、AP緩衝液中で10分間攪拌した。発色反応のために10mlのAP緩衝液でインキュベートし、30μlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート4−トルイジン塩(Roth、ジメチルホルムアミド中に50μg/mlで溶解)および5μlのニトロブルーテトラゾリウム(Roth、70%v/vジメチルホルムアミド中75μg/ml)を加えた。突然変異タンパク質TNF−V1およびTNF−V2がスポットされた位置では、はっきりした色素シグナルが確認できたが、一方、野生型hNGAL(phNGAL7にコードされている)、ビリン結合タンパク質(ベクターpBBP22にコードされている;Schlehuberら、J.Mol.Biol.297(2000)、1105〜1120)、実施例6に記載のhNGAL突然変異タンパク質ライブラリー由来の関連しない2つの突然変異タンパク質(どちらもphNGAL7にサブクローン化される)、およびタンパク質を発現していないクローン(pBluescript(Stratagene)をプラスミドとしてもつ)については、結合シグナルが観察されず、TNF−V1およびTNF−V2のTNFαへの結合活性が確かめられた(図12)。
図1は、ファスミドベクターphNGAL5を概略的に描写している。 図2は、核酸レベルでのリポカリン突然変異タンパク質のライブラリーの産生を概略的に描写している。 図3は、発現ベクターphNGAL7を概略的に描写している。 図4は、発現ベクターpTLpc3を概略的に描写している。 図5は、ELISA法による、涙リポカリンへの突然変異タンパク質TlpcAの結合、およびhNGALを用いた相当する対照実験を描写している。 図6は、ファスミドベクターphNGAL12を概略的に描写している。 図7は、発現ベクターphNGAL15を概略的に描写している。 図8は、ELISA法による、トロンボスポンディンペプチド(配列番号18)への、突然変異タンパク質RFY−B、RFY−C、およびRFY−E、またコントロールとしてhNGALの結合を描写している。 図9は、表面プラズモン共鳴分光法(SPR)を用いた、トロンボスポンディンペプチド(配列番号18)への、突然変異タンパク質RFY−B、RFY−C、およびRFY−E、またコントロールとしてhNGALの結合を描写している。 図10は、ELISAによる、インターロイキン8への、hNGAL突然変異タンパク質N4の結合を描写している。 図11は、発現ベクターpTNFαを概略的に描写している。 図12は、コロニースポットアッセイによる、hNGAL突然変異タンパク質TNF−V1およびTNF−V2、またコントロールとしてhNGALへの、TNFαの結合を描写している。
配列表
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Claims (14)

  1. ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ラットα−マイクログロブリン関連タンパク質(A2m)およびマウス24p3/ウテロカリン(24p3)からなる群より選択したタンパク質の突然変異タンパク質を産生するための方法であって、前記突然変異タンパク質が所定の標的への検出可能な親和性を有し、前記方法が、hNGAL(配列番号:7)の配列位置40〜50、70〜79、101〜103、および125〜132に相当する1つ以上の配列位置においてタンパク質を突然変異誘発させ、その結果としてタンパク質の1つ以上の突然変異タンパク質(群)を生じる段階(a)を含む、方法。
  2. 所定の標的に対する結合親和性を有する、少なくとも1つの得られた突然変異タンパク質を、1つ以上の突然変異タンパク質から、前記少なくとも1つの突然変異タンパク質を選別および/または単離することによって濃縮する段階(b)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 段階(a)での突然変異誘発によって、前記タンパク質の多数の突然変異タンパク質が生じる、請求項1または2に記載の方法。
  4. hNGAL(配列番号:7)の配列位置40、42、44、46、47、49、50、70、72、73、77、79、101、102、103、125、127、128、130および132に相当する1つ以上の配列位置において、タンパク質を突然変異誘発させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記タンパク質の1つ以上の突然変異タンパク質(群)をコードしている核酸(突然変異誘発によって生じる核酸)が、所定の標的の結合に関して、少なくとも1つの突然変異タンパク質を選択するために、M13−ファミリーの線状バクテリオファージのコートタンパク質pIIIまたはこのコートタンパク質の断片をコードしている遺伝子と、3’末端にて動作可能に融合している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ラットα−マイクログロブリン関連タンパク質(A2m)およびマウス24p3/ウテロカリン(24p3)に由来する突然変異タンパク質であって、前記突然変異タンパク質が、hNGAL(配列番号:7)の配列位置40〜50、70〜79、101〜103、および125〜132に相当する1つ以上の配列位置において突然変異を含み、所定の標的への検出可能な結合親和性を有する、突然変異タンパク質。
  7. 前記突然変異タンパク質が、hNGAL(配列番号:7)の配列位置40、42、44、46、47、49、50、70、72、73、77、79、101、102、103、125、127、128、130および132に相当する1つ以上の配列位置において突然変異を含む、請求項6に記載の突然変異タンパク質。
  8. Cys87が置換され、および/または、前記突然変異タンパク質が、hNGAL(配列番号:7)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換Glu28→His、Thr145→Alaを有する、請求項6または7に記載のhNGALの突然変異タンパク質。
  9. 配列番号17、配列番号24、配列番号26、または配列番号28のアミノ酸配列を有する、請求項6または7に記載のhNGALの突然変異タンパク質。
  10. 有機分子、酵素標識、放射活性標識、蛍光標識、色素標識、ルミネセンス標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、および金コロイドからなる群より選択される標識に結合した、請求項6〜9のいずれか1項に記載の突然変異タンパク質。
  11. 請求項6〜10のいずれか1項に記載の、hNGAL、A2mまたは24p3の突然変異タンパク質を含む融合タンパク質であって、酵素、タンパク質もしくはタンパク質ドメイン、ペプチド、シグナル配列、および/またはアフィニティタグが、前記突然変異タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端に動作可能に融合している、融合タンパク質。
  12. 請求項6〜11のいずれか1項に記載の、hNGAL、A2mもしくは24p3の突然変異タンパク質、またはその融合タンパク質をコードしている配列を含む、核酸分子。
  13. 請求項6〜11のいずれか1項に記載の、hNGAL、A2mもしくは24p3の突然変異タンパク質、またはその融合タンパク質を産生するための方法であって、前記突然変異タンパク質またはその融合タンパク質が、細菌または真核細胞の宿主生物中で、遺伝子工学的方法によって、突然変異タンパク質をコードしている核酸から開始して産生され、この宿主生物またはその培養液より単離される、方法。
  14. 請求項6〜11のいずれか1項に記載の、hNGAL、A2mもしくは24p3の突然変異タンパク質、またはその融合タンパク質の、所定の標的を検出するための使用であって、前記使用が、前記突然変異タンパク質を、好適な条件下で、所定の標的を含むと思われる試料と接触させ、それによって突然変異タンパク質と所定の標的との間の複合体の形成を可能にする段階と、好適なシグナルによって複合体突然変異タンパク質を測定する段階とを含む使用。
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