JP4394860B2 - 超低温変態溶材を用いた溶接施工方法および高疲労強度継手ならびに超低温変態溶材 - Google Patents

超低温変態溶材を用いた溶接施工方法および高疲労強度継手ならびに超低温変態溶材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼構造物を構築する鋼部材同士の溶接部領域において疲労強度を向上できる溶接施工方法と、溶接施工方法で使用する溶材と、この溶接施工方法で得られる溶接継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、鋼構造物において溶接部がある場合、溶接部に疲労亀裂が発生することが知られている。
この疲労亀裂は、鋼構造物全体の信頼性に重大な影響を与えるため、その疲労特性を向上させるために種々な努力がなされてきた。
【0003】
溶接部に疲労亀裂が発生しやすい理由としては、溶接部には応力集中部が存在していること、引張の残留応力が生じていることなどが挙げられる。
したがって、これらの原因を取り除くことが高疲労強度の溶接部を実現するために有効であり、例えば、グラインディングにより溶接部を応力集中が少ない形状に整形する方法、TIG溶接により化粧溶接を施して応力集中を減らす方法、ピーニングを用いて疲労が発生する部位に圧縮残留応力を導入する方法などが試みられてきた。
しかしこれらの方法は、構造物作製コストを直接に増大させることになるか、もしくは実行上の管理が難しい。
【0004】
最近になって、溶接金属の変態膨張を利用し、引張の残留応力を低減させ、これにより疲労強度を向上させる方法が注目されている。
この方法は、オーステナイトからマルテンサイトに変態開始する温度を周辺の鋼材よりも低くすることにより、変態に伴う膨張で圧縮残留応力を導入して、高疲労強度溶接部を得るというものであるが、実施工に適用可能な簡便な施工方法は確立されていない。
【0005】
例えば特開平11−138290号公報には、通常の溶接後に止端処理や冷却処理を施すことなく“溶接により生成する溶接金属を、溶接後の冷却過程でマルテンサイト変態を起こさせ、室温において該マルテンサイト変態の開始時よりも膨張している状態にする”ことにより、冷却過程で溶接金属に生じた引張残留応力を緩和し、または引張残留応力に変えて残留圧縮力を与えて、室温での溶接部の疲労強度を向上させることが開示されている。
しかし、この方法で用いられる溶接材料(溶接金属)は、例えばマルテンサイト変態点が170〜350℃前後の低温変態溶材であり、溶接時に体積膨張を生じて圧縮力が導入された後に、室温まで温度が低下するために全体に体積が収縮して、溶接材料の変態膨張による圧縮応力が抜けてしまい、室温状態で残存する圧縮の残留応力が小さくなりやすい。
そのため、初期の体積膨張による圧縮応力を大きくすることが最終的に残存する圧縮応力を大きくする唯一の方法となるために、低温変態溶材による疲労強度の向上が期待できるのは、50kgf/mm2 クラス以上の高張力鋼のみである。
【0006】
このような低温変態溶材を用いる溶接継手として、本出願人は特開2000−288728号公報に記載の発明で、“オーステナイトからマルテンサイトに変態を開始する温度が350℃以下170℃以上となる溶接金属が形成される高疲労強度溶接継手を提案しており、この発明中に、例えば図8に示すように、疲労荷重を受ける構造部材と面外ガセット、カバープレート、面内ガセット、あるいはスカーラップなどを、角回しで溶接する際に、応力が集中する溶接止端部において、本溶接ビートに付加ビードを形成して疲労強度を向上させることを開示している。
しかし、低温変態溶材を使用しているのは高張力鋼に適用する場合であり、現在、実績のある低温変態溶材の変態温度は300℃前後で、変態による膨張終了後も200℃程度の降熱があるために、その体積収縮が構造物に一様に起きるため、膨張による体積膨張の効果をキャンセルしてしまうことがあり、付加ビードを形成する場合にも十分な効果が得られないことがある。
その他、高疲労強度溶接部を得る方法として、予熱で部材に反りを出させるなどの方法があるが、これは煩雑で実用的でない。
【0007】
なお、従来の低温変態溶材では、溶接実行後に確実に圧縮応力が導入できたかどうかの判定が困難である。つまり、溶接時の熱で歪みゲージが焼けてしまうため、変態前に歪みゲージを貼って溶接直後の冷却過程での変態状況をモニターするということができない。
バルクハウゼンや磁気歪み等を利用した磁歪計を用いて計測するにしろ、圧縮力を入れる部分は溶接影響部であるために、熱影響によって溶接前後で鋼材組織は変態してしまい、組織依存性のあるこれらの方法では計測が不可能になる可能性が高い。
【0008】
また低温変態溶材は、溶接ビード形状が疲労の観点から良好でないという特徴を持つが、圧縮力の導入の効果が、悪い溶接ビード止端の形状による応力集中の増加という悪影響の効果に勝って、疲労寿命の向上を可能としている。
しかし、悪い止端形状という悪影響は目に容易に見えるのに対して、圧縮応力の導入という良い影響は視認するのは不可能なものであり、確実な検査法が無い現在では管理者に不安を与える要素となっている。さらに、この不安要素である止端形状をグラインディングで整形して取り除こうということも考えられるが、グラインデイングは鋼材表面部分の圧縮応力の導入された部分を、削り取ってしまう可能性があり、そうなると、かえって疲労に対する性能を損ねてしまう可能性もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
低温変態溶材によって圧縮応力が導入され、疲労強度が向上し得ることは既存の知見であるが、これは高強度鋼についてのみ実現されている。また、品質管理にとって重要な低温変態溶材による残留応力の検査は、非破壊的な方法では困難なのが現状である。
一方で、ピーニングやTIG溶接による化粧溶接が行われた従来手法は、実施に技量が必要であるのと、効果のばらつきが大きく品質管理が困難であるという欠点を持っている。簡便な施工で確実に溶接部に圧縮残留応力を導入し、それを用いて疲労長寿命が達成された溶接継手が確立されれば、溶接構造物の信頼性向上の観点からその効果は絶大なものとなる。
【0010】
本発明は、超低温変態溶材を利用し、かつ簡便に鋼材の疲労発生の起点となる溶接部に効率的に圧縮応力を導入し疲労強度を向上でき、かつ、その圧縮応力導入過程をモニターできる溶接施工方法と、この溶接施工方法で得られる鋼構造物と、超低温変態溶材を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の(1)〜()の発明から構成される。
(1) C,Ni,CrおよびMoをそれぞれの成分の質量%とし、下記式で定義されるパラメーターPaの範囲が、1.05以上1.92以下である溶接金属が形成されている超低温変態溶材を用いた鋼部材の溶接施工方法であって、鋼部材同士を前記超低温変態溶材を用いて溶接後、超低温変態溶材による溶着金属近傍の表面温度が室温程度に下がってから、グラインディングで整形して、その溶着金属の近傍に非破壊式の歪計を配設して、溶接により生成したマルテンサイト変態の開始温度が50℃未満、−50℃以上である鉄合金からなる溶着金属を、冷却手段としてドライアイスを用い、ドライアイスを冷却対象領域に直接または間接に接触させて冷却することによってマルテンサイト変態を起こさせ、その後復帰した室温状態において当該マルテンサイト変態の開始以前よりも体積膨張している状態とすることにより引張残留応力を緩和、または、圧縮残留応力を付与することによって、溶接部の疲労寿命を向上させ、その変態による応力の変化を計測することによって引張残留応力の緩和もしくは圧縮残留応力の導入の実現を確認することを特徴とする溶接施工方法。
Pa=C+Ni/12+Cr/24.2+Mo/19.4
(2) C,Ni,CrおよびMoをそれぞれの成分の質量%とし、下記式で定義されるパラメーターPaの範囲が、1.05以上1.92以下である溶接金属が形成されている超低温変態溶材を用いた鋼部材の溶接施工方法であって、溶接により生成したマルテンサイト変態の開始温度が50℃未満、−50℃以上である鉄合金からなる溶着金属に、溶接終了後、グラインディングで整形して、ハンマーピーニング、ショットピーニング、ニードルピーニング、超音波衝撃処理などの各種ピーニングを用い、超低温変態溶材による溶接止端部に打撃を与えてひずみを付与することによってマルテンサイト変態を起こさせ、室温状態において当該マルテンサイト変態の開始以前よりも体積膨張している状態とすることにより引張残留応力を緩和、または、圧縮残留応力を付与することによって、溶接部の疲労寿命を向上させることを特徴とする溶接施工方法。
Pa=C+Ni/12+Cr/24.2+Mo/19.4
【0012】
) 前記(において、鋼部材同士を超低温変態溶材を用いて溶接後、超低温変態溶材による溶着金属近傍の表面温度が室温程度に下がってから、その溶着金属の近傍に非破壊式の歪計を配設して、その後、溶着金属に対してひずみ付与を実施することによりマルテンサイト変態を生じさせると共に、その変態による応力の変化を計測することによって、引張残留応力の緩和もしくは圧縮残留応力の導入の実現を確認することを特徴とする溶接施工方法。
【0013】
) 前記(1)〜()のいずれか1項に記載した溶接施工方法に用いる超低温変態溶材であって、質量%で、
C :0.001〜0.1%、
Si:0.01〜1.5%、
Mn:0.01〜4.0%、
P :0.03%以下、
S :0.02%以下、
Cr:15.0〜23.0%、
Ni:5.0〜13.0%
を含有し、かつ、Ni当量、Cr当量の不等式、
Ni当量>0.891×Cr当量−7.259
を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする超低温変態溶材。
このとき、
Ni当量=30×C+Ni+0.5×Mn
Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si+0.5×Nb
とする。
) 質量%でさらに、
Mo:0.1〜2.0%、
Ti:0.005〜0.3%、
Nb:0.005〜0.3%、
V :0.05〜0.5%、
Cu:0.05〜0.4%
の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記()に記載の超低温変態溶材。
【0014】
) 鋼部材同士の溶接接合に際して、少なくとも疲労が問題となる部分の溶接部に、前記(1)〜()のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
) 鋼部材同士の溶接接合に際して、通常の溶接材で溶接後、その溶接部領域で疲労を生じやすい部位に、超低温変態溶材を用いた付加ビードを形成するに当たり、前記(1)〜()のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
) 面外ガセット、面内ガセット、カバープレート、または、スタッドの1つまたは2つ以上が溶接されている構造部材において、疲労荷重を受ける溶接部に、前記(1)〜()のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用し、室温状態で圧縮応力を残留させ疲労強度を強化したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
スカーラップがまわし溶接で溶接されている構造部材において、疲労荷重を受ける溶接部に、前記(1)〜()のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用し、室温状態で圧縮応力を残留させ疲労強度を強化したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
上記の(4)、(5)は、(1)〜()および()〜()の発明において用いられる、超低温変態溶材の例として位置つけられるものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明においては、基本的には、各種の鋼部材同士を、室温程度(雰囲気温度としては基本的に20℃前後を想定するが、実質的には溶接作業および溶接後に溶接箇所近傍に対して作業を行うに当たって、作業環境上さほど問題が生じない50℃以下5℃以上の対象物の表面温度を意味し、以下この範囲を「室温」という。)以下でマルテンサイト変態を生じる超低温変態溶材(以下「超低温変態溶材」という。)を用いて溶接し、溶接直後に溶接部およびその周辺部を冷却することにより、室温以下の温度でマルテンサイト変態を生じさせて、疲労発生の起点となる溶接部に効率的に圧縮力を付与し室温状態で圧縮応力を十分に残留させ、溶接部での疲労強度を向上させるものである。
【0016】
すなわち本発明では、鋼材同士を、室温以下でマルテンサイト変態を生じる超低温変態溶材を用いて溶接し、溶接により生成した溶接金属を、例えばドライアイス、液体窒素、氷などの冷却剤(以下「超低温化剤」という。)を用いて冷却することによって、室温以下の温度でマルテンサイト変態を起こさせ、その後、室温まで温度上昇させるようにするもので、室温以下でマルテンサイト変態により体積膨張を生じた後、室温まで温度上昇する過程で、さらに体積膨張が加わることにより、室温状態において溶接部に圧縮応力を効率的に残留させるものである。
なお、単に超低温変態溶材により本ビードまたは付加ビードを形成しても、冷却しない場合には効果が得られない。
【0017】
以下に、従来の低温変態溶材(特開平11−138290号、本出願人の出願になる特開2000−288728号などで開示されているマルテンサイト変態点が150〜300℃レベルの溶材を以下「低温変態溶材」という。)を用いた場合と、本発明の超低温変態溶材を用いた場合の違いについて、図1および図2に基づいて説明する。
図1は、歪(伸び)と温度、マルテンサイト変態の関係を概念的に示したものであり、普通鋼を破線、従来の低温変態溶材を実線、本発明の超低温変態溶材を一点鎖線で示す。
この図から、前2者ではマルテンサイト変態点が室温以上にあり、マルテンサイト変態後から供用時にかけて温度が下がるのに対して、本発明の超低温変態溶材では、室温以下でマルテンサイト変態し、変態後から供用時にかけて温度上昇する。この違いは、発生する応力に大きな影響を与えることになる。
【0018】
図2は、温度と応力の関係を概念的に示したものであり、普通鋼溶材を破線、従来の低温変態溶材を実線、本発明の超低温変態溶材を一点鎖線で示す。
一般に、マルテンサイト変態が起きると、その時点で鋼材の降伏応力σy まで圧縮応力σが入る。その後、温度が下がれば圧縮力が減り、温度が上がれば圧縮力が増える(ただし既に降伏応力に達していれば一定)ことになる。
普通鋼溶材、従来の低温変態溶材の場合には、室温より高い温度でマルテンサイト変態を生じるために、マルテンサイト変態によって圧縮力が導入された後に室温まで温度が低下するために、全体に体積が収縮して圧縮応力が抜けてしまい、圧縮の残留応力が小さくなる。そして、マルテンサイト変態によって導入される圧縮力の上限値は、鋼材の降伏応力に規定される。そのため、変態が生じた直後の状態で導入された圧縮応力が少ない、強度の比較的小さな鋼材では残留する圧縮応力が小さくなりすぎてしまい、疲労強度が上がらなくなってしまう場合がある。
【0019】
本発明の超低温変態溶材の場合には、室温より低い温度でマルテンサイト変態するために、マルテンサイト変態によって圧縮力が導入された後に室温まで温度が上昇するために、体積の膨張が全体的に生じ、むしろ圧縮の残留応力が変態直後よりも大きくなる。この現象が疲労強度をより効率的に向上させるために重要である。
一方、このような冷却をしてマルテンサイト変態を生じるような溶接材料は、室温においても不安定な存在であり、冷却をせずとも室温の状態でひずみを外部から与えることによって、同様にマルテンサイト変態の発生を誘起することが可能である。この場合、冷却した場合と異なって、マルテンサイト変態膨張後の昇温過程による更なる体積膨張の恩恵は受けられないが、ひずみを与える時と同時に溶接止端部が応力集中の少ない形状に整形することができるため、疲労向上効果としては同等程度が得られる。
【0020】
本発明は、上記の現象を利用するものであり、室温以下の温度でマルテンサイト変態する超低温変態溶材を溶接材料として用い、溶接により生成した溶接金属を超低温化剤を用いて冷却し、室温以下でマルテンサイト変態を生じさせ、室温状態で圧縮応力を残留させる溶接施工方法、もしくは溶接により生成した溶接金属を室温でひずみを与えてマルテンサイト変態を生じさせて圧縮応力を残留させる溶接施工方法であるが、この溶接施工方法は、溶接部全てにおいて適用することは不可欠ではなく、施工作業負荷、コスト負荷等を軽減するために、残留引張応力や応力集中があり疲労に関する負荷が大きい領域に局部的に適用することも考慮する。
【0021】
例えば図3に示すように、鋼部材1に面外ガセット2を溶接wして形成した鋼構造部材では、引張荷重Wを受けた場合、面外ガセット2の端部のまわし溶接部A,Bにおいて応力集中が大きく疲労が発生することが知られている。
このような場合には、図4に示すように、本発明の溶接施工方法を、応力集中が大きく疲労が発生しやすい端部のまわし溶接部のみに適用して本溶接ビード3a、3bを形成することもでき、また図5に示すように、普通鋼溶材により全周の本溶接wを行った後に端部のまわし溶接部A,Bにのみ、その外側領域に本発明の溶接施工方法を適用して付加ビード4a,4bを形成することもできる。
【0022】
面外ガセット2の本ビードwの止端部に付加ビード4a,4bを形成した場合の局部的な応力状態は、図6に示すように、付加ビード4a(4b)がマルテンサイト変態して膨張し、それに対して周りの鋼部材の反力(弾性歪み量)が小さいと圧縮歪みが十分に入らないので、この反力、すなわち止端部に残る応力を大きくするように本ビード3a,3b,付加ビードを形成することが有効である。
【0023】
本発明の溶接施工方法では、溶接により生成した溶接金属を室温以下で冷却するが、この冷却手段に用いる超低温化剤としては、溶接金属を室温以下に容易に冷却できるものであればよく、工業的、環境的、衛生的見地から、現状では取扱いが簡便で冷却能力が高いドライアイス(沸点−75℃)が適性が高い。ただし、その目的とする変態点によっては、他の冷却剤、例えば氷や液体窒素など使用することもできる。
例えば超低温化剤としてドライアイスや氷を使用する場合では、直接接触させてもよいし、耐熱性を持つ材料からなる袋に充填して袋を介して間接接触させるようにしてもよい。
いずれの方法を採用する場合にも、溶接金属を含む溶接部領域について、十分な冷却効果が得られるようにするものである。
【0024】
このとき、溶接時の雰囲気の温度を最初から低く押さえて、溶接直後の最初の冷却過程において、これまでの低温変態溶材と同様にマルテンサイト変態を起こすことも、溶接完了後の冷却のプロセスを減らすということから考えることもできるが、これは通常の溶接手順と同様で、5℃以下の状況での溶接作業は溶接面における結露などに起因した水素割れ防止の観点から好ましくない。つまり、プロセスを増やしてまで溶接後の冷却を行ってマルテンサイト変態を得ることには必然性がある。
施工時の効率を考えると、超低温変態溶材による溶接が終了してから、その対象部の温度が想定する雰囲気温度(20℃)と同じになるまで、冷却やひずみ付与を実施するのを待つのは非効率であり、上記作業や、計測のためのひずみゲージなどを設置するなどの作業を行うことに環境的に支障のなくなる50℃に超低温変態溶材のマルテンサイト変態点の上限値を設定し、同時にマルテンサイト変態を起こす温度帯は100度程度であることと、ドライアイスによる冷却を効率よく実施することを考え合わせ、その下限値は−50℃に設定することが好ましい。
また、溶接部にひずみを与えてマルテンサイト変態を生じさせ、圧縮残留応力を導入する手法としては、ハンマーピーニング、ショットピーニング、ニードルピーニング、超音波衝撃処理などの各種のピーニング手法が工業的見地から容易かつ確実である。
【0025】
本発明は、基本的には、例えば各種の鋼部材を組み立てて得られる建築構造物、橋梁、クレーンガーダー、船舶、その他の鋼構造物において、鋼部材同士の溶接施工に適用して効果を奏するものである。
本発明を適用して得られる鋼構造物において、鋼部材同士の溶接部領域の近傍の荷重作用領域、例えば図5に示すように、本ビードwの止端部の外側に形成した付加ビード4a、4bの外側近傍領域に、非破壊式歪計、例えばひずみゲージ5を配設することにより、溶接部にマルテンサイト変態による圧縮応力もしくは引張応力の低減が付与されたこと、その後温度上昇による応力変化を容易に確認することができ、さらにその後の供用時の応力変化を把握することもできる。
この歪計5は、接着(貼着)により容易に配設することができる。
また、この超低温変態溶材による付加ビードは、低温変態溶材による付加ビードと異なり、グラインディングなどで整形して応力集中を低減することができる。冷却前にひずみ付与前の状態でまず整形し、その後、冷却またはひずみ付与により圧縮応力を導入すれば、グラインディングは圧縮応力の導入に悪影響を及ぼさない。
【0026】
本発明では、鋼部材同士を室温以下でマルテンサイト変態を生じる超低温変態溶材を用いて溶接するものであるが、この超低温変態溶材としては、例えば以下のようなものが適性がある(この超低温変態溶材では、Ni,Crを比較的多量に含有させ、マルテンサイト変態点を室温以下に低下させたものである)。
基本的には、C,Ni,CrおよびMoをそれぞれの成分の質量%とし、下記式で定義されるパラメーターPaの範囲が、1.05以上1.92以下である溶接金属を形成するものである。
Pa=C+Ni/12+Cr/24.2+Mo/19.4
【0027】
より具体的には、例えば、
▲1▼ 質量%で、
C :0.001〜0.1%、 Si:0.01〜1.5%、
Mn:0.01〜4.0%、 P :0.03%以下、
S :0.02%以下、 Cr:15.0〜23.0%、
Ni:5.0〜13.0%
を含有し、かつ、Ni当量、Cr当量の不等式、
Ni当量>0.891×Cr当量−7.259
を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなる超低温変態溶材。
このとき、
Ni当量=30×C+Ni+0.5×Mn
Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si+0.5×Nb
とする。
▲2▼ また前記▲1▼において、質量%でさらに、
Mo:0.1〜2.0%、 Ti:0.005〜0.3%、
Nb:0.005〜0.3%、 V :0.05〜0.5%、
Cu:0.05〜0.4%
の1種または2種以上を含有する超低温変態溶材。
などが適性がある。
【0028】
これらの超低温変態溶材の成分と含有量について、以下に説明する。
まず、本発明で使用する超低温変態溶材について、下記(i)式で定義されるパラメーターPaを導入し、その範囲を限定した理由を以下に述べる。
Pa=C+Ni/12+Cr/24.2+Mo/19.4……(i)
パラメーターPaは、C,Ni,CrおよびMoの成分値(質量%)で計算される。これら成分は、溶接金属に含有させることにより強度を向上させ、かつマルテンサイト変態温度を低下させる働きを持つ。特にマルテンサイト変態温度を下げる元素という意味では、C,Ni,CrおよびMoは最も有効利用すべきものである。
強度を向上させるという観点からは、Ti,NbおよびVなどのような炭化物を形成する元素の有効利用も考えられるが、Ti,NbおよびVなどでマルテンサイト変態温度が十分に下がるほど添加すると、溶接継手特性上大きな問題が生じ好ましくない。
【0029】
一方、C,Ni,CrおよびMoのマルテンサイト変態温度を下げ残留応力を下げる働きは、必ずしも同一ではないため、それぞれの働きに応じた係数を定め、4つの元素全体としてその効果を表す指標を作成することは工業的価値が高いと判断し、前記(i)式で示すようなパラメーターPaを作成したものである。
ただし、Paの値にもその適正範囲がある。例えばPaが小さすぎるとマルテンサイト変態温度を下げることは難しく、例え他の元素を添加することにより可能になったとしても、溶接継手特性の確保の点から好ましくない。逆にPaが大きいことは、マルテンサイト変態温度がより低くなることを意味するが、Paが大きすぎると、それだけ合金元素の添加を増加させなければならず不経済である。
以上のことより、Paの範囲を1.05以上1.92以下とした。なお、より高疲労強度を確実にするためには、Paの下限を1.09に設定することが望ましい。また本発明においては、溶接金属に残留オーステナイトが存在する可能性や経済性の観点から、Paの上限は好ましくは1.66に設定することが望ましい。
【0030】
次に超低温変態溶材で成分範囲を限定した理由を述べる。
Cは、それを鉄に添加することによりMs温度を下げる働きをする。しかしその一方で、過度の添加は溶接金属の靱性劣化および溶接金属割れの問題を引き起こすため、その上限を0.1%とした。
Cが無添加の場合は、マルテンサイトが得られ難く、また他の高価な元素のみで残留応力低減を図らなければならず経済的とはいえない。Cの下限は、安価な元素であるCを利用し、その経済メリットが出る最低限の値として0.001%に設定した。
なおCの上限は、溶接金属割れの観点から、好ましくは0.08%に設定することが望ましい。
【0031】
Siは、脱酸元素として知られる。Siは溶接金属の酸素レベルを下げる効果がある。特に溶接施工中においては、溶接中に空気が混入する危険性があるため、Si量を適切な値にコントロールすることは極めて重要である。
溶接金属に添加するSi量が0.01%に満たない場合、脱酸効果が薄れ溶接金属中の酸素レベルが高くなりすぎ、機械的特性、特に靭性の劣化を引き起こす危険性がある。そのため、溶接金属についてはその下限を0.01%とした。一方、過度のSi添加も靭性劣化を発生せしめるため、その上限を1.5%とした。
【0032】
Mnは、強度を上げる元素として知られる。そのため、本発明における残留応力低減メカニズムである変態膨張時の降伏強度確保という観点から有効利用すべき元素である。Mnの下限は、強度確保という効果が得られる最低限の値として0.01%に設定した。上限は4.0%とするが、過度の添加は母材および溶接金属の靭性劣化を引き起こすため、好ましくは2.0%以下に設定することが望ましい。
【0033】
PおよびSは、本発明では不純物である。これら元素は溶接金属に多く存在すると靭性が劣化するため、上限をそれぞれ0.03%、0.02%とした。
【0034】
Niは、単体でオーステナイトすなわち面心構造をもつ金属であり、溶接金属に添加することによりオーステナイトの状態をより安定な状態にする元素である。
鉄そのものは高温域でオーステナイト構造になり、低温域でフェライトすなわち体心構造になる。Niは、それを添加することにより、鉄の高温域における面心構造をより安定な構造にするため、無添加の場合に比べ、より低温度域においても面心構造となる。このことは体心構造に変態する温度が低くなることを意味する。
Niの下限5%は、残留応力低減効果が現われる最低限の添加量という意味で決定した。Niの上限を13%にしたのは、これ以上添加しても残留応力低減の観点からはあまり効果が変わらない上、かえって構造が安定し過ぎるために、冷却やひずみによる刺激によって変態が生じ難くなり、さらに、これ以上添加するとNiが高価であることから経済的デメリットが生じてくるためである。
【0035】
Crは、Niと異なりフェライトフォーマーである。しかし、Crはそれを鉄に添加すると、高温度域ではフェライトを形成するものの、中温度域ではオーステナイトを形成し、さらに温度が低くなると再びフェライトを形成する。溶接部の場合、溶接入熱量による熱履歴で、低い温度側ではフェライトは一般的に得られず、マルテンサイトが得られることになる。これはCrを添加することによる利点で、焼き入れ性が増加することを意味する。すなわちCrを添加した場合のマルテンサイト変態では、焼入性が増加することによりフェライト変態が生じない効果と、Ms温度そのものが低くなるという効果が存在する。
これら両方の効果を満たしながら残留応力を低減するための変態膨張を有効利用できる、Cr添加範囲として下限15%を設定した。上限を23%にしたのは、これを上回る量を添加してもその効果が大きくならない上、かえってMs温度が下がりすぎ、冷却やひずみ付与の刺激による変態が生じ難くなり、さらに経済的にもデメリットが大きくなるためである。
【0036】
Cuは、溶接ワイヤにメッキすることにより通電性をよくする効果があるため、溶接作業性を改善するために有効な元素である。また、Cuは焼入性元素でもあるため、溶接金属に添加することによりマルテンサイト変態を促進させるという効果も期待できる。
Cuの下限0.05%は、作業性改善やマルテンサイト変態促進のために必要な最低限の値として設定した。しかし、過度の添加は作業性改善の効果がないだけでなく、溶接ワイヤの製造コストを上げるため産業上も好ましくはない。Cuの上限0.4%はこのような理由により設定した。
【0037】
Nbは、溶接金属中においてCと結合して炭化物を形成する。Nb炭化物は少量で溶接金属の強度を上げる働きがあり、従って有効利用することの経済メリットは大きい。しかし一方で、過度の炭化物形成は靭性劣化が発生するため、自ずと上限が設定される。Nbの下限は、炭化物を形成せしめ、強度増加効果が期待できる最低の値として0.005%を設定した。上限は靭性劣化による溶接部の信頼性が損なわれない値として0.3%とした。
【0038】
VもNbと同様な働きをする元素である。しかしNbと異なり、同じ析出効果を期待するためには、Nbより添加量を多くする必要がある。V添加の下限0.05%は、添加することにより析出硬化が期待できる最低値として設定した。Vの上限は、これより多く添加すると析出硬化が顕著になりすぎ、靭性劣化を引き起こすために0.5%とした。
【0039】
Tiも、Nb,Vと同様に炭化物を形成し析出硬化を生じせしめる。しかし、Vの析出硬化がNbのそれと違っていたように、Tiの析出硬化もまたNb,Vと異なる。そのため、Tiの添加量の範囲もNb,Vと異なった範囲が設定される。Ti添加量の下限0.005%は、その効果が期待できる最低量として、上限の0.3%は靭性劣化を考慮して決定した。
【0040】
Moも、Nb,V,Tiと同様に析出硬化が期待できる元素である。しかしMoは、Nb,V,Tiと同等な効果を得るためには、Nb,V,Ti以上に添加する必要がある。Mo添加量の下限0.1%は、析出硬化による降伏強度増加が期待できる最低値として設定した。また、上限の2.0%はNb,V,Ti同様に靭性劣化を考慮して決定した。
【0041】
以上、溶接金属の成分について、その範囲限定理由について述べたが、その範囲に溶接金属成分を制御する方法として、溶接ワイヤの成分を制御する方法や、溶接ワイヤおよびフラックスの成分を制御する方法、あるいは溶接心線および被覆フラックスの成分を制御する方法などがあるが、本発明においてはこれらの方法によらず、前述のパラメーターpaを満足する溶接金属が形成されている超低温変態溶材を用いて溶接することにより高疲労強度溶接継手が実現できる。
なお、本発明における前述の条件を満足する溶接金属が形成されている超低温変態溶材は、溶接棒(手棒)、溶接ワイヤ、溶接ワイヤとフラックスの組み合わせ、または溶接心線と被覆フラックスの組み合わせなどの使用形態で用いることができる。
【0042】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
この実施例は、図3に示すように、鋼構造物の構造部材である鋼部材1に一般構造用の面外ガセット2を溶接ビードwにより接合する継手構造において、図5に示すように、溶接止端部に本発明の超低温変態溶材を用いて付加ビード4a,4bを形成する本発明の溶接施工方法を適用した場合の実験例を、比較例と共に説明する。
この各実験例では、付加ビード形成後に、溶接(溶着)金属に冷却またはひずみを付与してマルテンサイト変態を起こさせる実験を行い、室温状態での残留応力と疲労強度を評価した。各実験例での付加ビードによる残留応力を図7に、また疲労強度を図8(a)、(b)に示す。
【0043】
[実験条件]
鋼部材1(厚板)
材質:一般構造用鋼(規格 SM570Q,SM400)
厚み: 15mm
長さ:500mm
幅 : 70mm
面外ガセット2(厚板)
材質:一般構造用鋼(規格 SM570Q,SM400)
厚み: 12.5mm
長さ:100 mm
幅 : 60mm
従来溶材本ビードw
材質(金属):表1参照
溶接方法:CO2 溶接 1.2φ
入熱:250A−31V−30cpm (17kJ/cm)
付加ビード4a,4b
材質(金属):表1参照
溶接方法:手棒アーク溶接 4.0φ
入熱:145A−25V−12cpm (17kJ/cm)
【0044】
[実験例1]
図3に示すように、一般構造用の鋼部材1の中央部に、面外ガセット2を当接し、従来の一般的な溶材を用い、全周溶接して本ビードwを形成した後、図5に示すように、応力集中の大きい面外ガセット2端部のまわし溶接部A、Bにおいて、その外側部位に本ビードwに一部重なるように、本発明の超低温変態溶材 (成分組成と特性は表1に示す)を用いて溶接して付加ビード4a,4bを形成後、この付加ビードとその近傍の領域を十分な量のドライアイスを用いて冷却し、室温以下でマルテンサイト変態を生じさせる実験を行った。
【0045】
[実験例2]
図3に示すように、一般構造用の鋼部材1の中央部に、面外ガセット2を当接し、従来の一般的な溶材を用い全周溶接して本ビードwを形成した後、図5に示すように、応力集中の大きい面外ガセット2端部のまわし溶接部A,Bにおいて、その外側部位に本ビードwに一部重なるように、本発明による超低温変態溶材(成分組成は表1に示す)を用いて溶接して付加ビード4a,4bを形成後、この付加ビードとその近傍の領域をピーニングによって打撃を与え、溶接止端部を応力集中が少なくなるような形状に整形して常温でマルテンサイト変態を生じさせる実験を行った。
【0046】
[比較例1]
図3に示すように、一般構造用の鋼部材1の中央部に、面外ガセット2を当接し、従来の一般的な溶材を用い、全周溶接して本ビードwを形成した後、図5に示すように、応力集中の大きい面外ガセット2端部のまわし溶接部A,Bにおいて、その外側部位に本ビードwに一部重なるように、NiおよびCr成分が少なく本発明で定義するパラメーターPaが本発明の超低温変態溶材の下限値以下の溶材(成分組成は表1に示す)を用いて溶接して付加ビード4a,4bを形成後、この付加ビードとその近傍の領域を十分な量のドライアイスを用いて冷却する実験を行った。
【0047】
[比較例2]
図3に示すように、一般構造用の鋼部材1の中央部に、面外ガセット2を当接し、従来の一般的な溶材を用い全周溶接して本ビードwを形成した後、図5に示すように、応力集中の大きい面外ガセット2端部のまわし溶接部A,Bにおいて、その外側部位に本ビードwに一部重なるように、NiおよびCr成分が多く本発明で定義するパラメーターPaが本発明の超低温変態溶材の上限値以上の溶材(成分組成は表1に示す)を用いて溶接して付加ビード4a,4bを形成後、この付加ビードとその近傍の領域を十分な量のドライアイスを用いて冷却する実験を行った。
【0048】
【表1】
Figure 0004394860
【0049】
[比較例3]
図3に示すように、従来の一般的な溶材を用い全周溶接して本ビートwを形成した場合の付加ビードなしものである。
[比較例4]
図5に示すように、従来の一般的な溶材を用い、全周溶接して本ビートwを形成した後、応力集中の大きい面外ガセット2端部のまわし溶接部A,Bにおいて、その外側部位に本ビードwに一部重なるよう、従来の一般的な溶材(成分組成は表1に示す)で付加ビート4a、4bを形成した場合のものである。
【0050】
[比較例5]
図5に示すように、従来の一般的な溶材を用い、全周溶接して本ビートwを形成した後、応力集中の大きい面外ガセット2端部のまわし溶接部A,Bにおいて、その外側部位に本ビードに一部重なるよう、特願平11−100548号に記載の発明による低温変態溶材(成分組成は表1に示す)で付加ビート4a,4bを形成した場合のものである。
[比較例6]
図5に示すように、従来の一般的な溶材を用い、全周溶接して本ビートwを形成した後、応力集中の大きい面外ガセット2端部のまわし溶接部A,Bにおいて、その外側部位に本ビードwに一部重なるよう、本発明による超低温変態溶材(成分組成は表1に示す)で付加ビート4a,4bを形成した場合のものであるが、その後、この付加ビードとその近傍領域に対して冷却またはひずみ付与を行わなかった場合のものである。
【0051】
上記の各実験例の圧縮残留応力の測定は、図3に示すように、ガセット2端部のまわし溶接部で付加ビード4a,4bを形成後に、図5に示すように、付加ビート4a,4bの端部近傍にひずみゲージ5を貼り付けることによって行った。
実験例1、比較例1では、ひずみゲージ5を貼り付けた後、付加ビード4a,4bの冷却を行い、また実験例2と比較例2では、ひずみゲージ5を貼り付けた後、ピーニング打撃によりひずみを付与し、そのときの温度変化の過程を計測し、その後、試験体の切断法による残留応力の測定を実施した。
比較例3〜6は、付加ビード4a,4b形成後にひずみゲージ5を貼り付けて、その後、試験片の切断法による残留応力の測定を実施した。
また疲労強度の評価は、実験例、比較例ともに面外ガセット2の長手方向に疲労荷重を付加する疲労試験によって行った。
【0052】
上記の測定によって得られた各実験例と、各比較例における残留応力を図7に示す。
本発明の超低温変態溶材を用いた実験例1においては、常温状態での付加ビード形成領域の残留圧縮応力は、約12〜15MPa 程度であり、冷却により生じたマルテンサイト変態膨張による圧縮応力の導入が認められた。
また、本発明の超低温変態溶材を用いた実験例2では、残留圧縮応力は約5〜10MPa 程度であり、こちらもひずみ付与によって生じたマルテンサイト変態膨張による圧縮応力の導入が認められた。
一方、NiおよびCr成分が多く、本発明で定義するパラメーターPaが本発明の超低温変態溶材の下限値以下の溶材を用いた比較例1、およびNiおよびCr成分が多く、本発明で定義するパラメーターPaが本発明の超低温変態溶材の上限値以上の溶材を用いた比較例2では、常温状態での付加ビード形成領域の残留応力は引張で20〜40MPa 程度であり、ほとんど残留応力の低減はなされていないことから、冷却によって室温以下でマルテンサイト変態が生じていないと考えられる。
【0053】
比較例3では、常温状態でのまわし溶接部での残留応力は、引張で30〜50MPa 程度の範囲である。また比較例4では、常温状態での付加ビード形成領域の残留応力は、引張で30〜40MPa 程度の範囲であり、ほとんど残留応力の低減はなされていない。
しかし比較例5では、常温状態での付加ビード形成領域の残留応力は、SM570Qで圧縮10MPa 程度、SM400で引張5MPa 程度であり、強度の高い鋼材に対しては圧縮力が導入された。比較例6では、常温状態での溶接端部領域の残留応力は、やはり引張で約30〜50MPa の範囲とほとんどAS WELDと比較して低減が無かった。
【0054】
この中で、圧縮力が導入された実験例1および実験例2と、各比較例3〜6について疲労実験を行い、S−Nの関係を図8(a),(b)に示す。図8(a)は鋼材がSM570Qの場合を示し、図8(b)は鋼材がSM400の場合を示す。
実験例1の疲労限はSM570Qで180MPa 、SM400で120MPa であり、疲労設計上十分な値を示した。また、実験例2の疲労限はSM570Qで160MPa 、SM400で120MPa であり、こちらも疲労設計上十分な値を示した。
【0055】
これに対して、比較例3では、疲労限は55〜60MPa 程度であり、通常、疲労設計で想定する程度の疲労寿命を示した。また比較例4では、疲労限は70〜80MPa 程度の範囲で、付加ビードの形成によるまわし部の曲率が大きくなることによって、多少応力集中が減った程度の向上と考えられる。
比較例5では、疲労限はSM570Qで180MPa 、SM400で90MPa と、強度の高い鋼材に対しては十分な疲労性能の向上を発揮したが、低強度の鋼材に対しては効果が十分でなかった。比較例6では、疲労限は60〜70MPa とほとんど改善されていなかった。これは付加ビードの形成によるまわし部の曲率が大きくなることによって、多少応力集中が減った程度のみの向上と考えられる。
【0056】
上記のことから、応力集中の大きいまわし溶接部に、本発明で定義するパラメーターPaを満足する本発明の超低温変態溶材による付加ビードを形成して、冷却またはひずみを付与した本発明の実験例1および実験例2では、常温状態で圧縮応力を十分に残留させることができ、疲労寿命を通常の溶接ディテールと比較して大幅に改善できることを確認できた。また、従来の低温変態溶材を用いた場合と比較しても、また従来の低温変態溶材の効果を及ぼし得ない低強度の鋼材に対しても、十分に疲労寿命を疲労設計上で十分な値まで向上させることができることも確認できた。
【0057】
なお、上記の実施例は、本発明を厚鋼板による鋼部材に一般構造用の面外ガセットを溶接する継手構造において適用した場合のものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば鋼部材に、図9(a)〜(e)に示すような、面内ガセット、面外ガセット、カバープレート、スタッド、スカラップや補強材などを溶接する場合においても適用が可能であり、適用部位としては、まわし溶接部などの応力集中部位(領域)が主になるが、その他の部位においても、本ビード形成、付加ビード形成のいずれの場合にも適用が可能である。
また、本発明による本ビード、付加ビードを形成する場合、それ以外の本ビード形成材として、従来の一般的な溶材に代えて従来の低温変態溶材を用いてもよい。
その他、使用する各種の溶材、冷却手段などの実施(実験)条件については、鋼構造部での適用部位(溶接部位)およびその材質、発生応力、要求される強度などに応じて、上記請求項を満足する範囲内で変更のあるものである。
【0058】
【発明の効果】
本発明の溶接施工方法は、各種の溶接部位を有する鋼構造物を構築する際に、例えば応力集中を生じやすいまわし溶接部に、室温以下でマルテンサイト変態する、本発明の超低温変態溶材を用いて本溶接、または付加ビード溶接を実施し、その後、その超低温変態溶材による溶接部を冷却することにより室温以下の温度でマルテンサイト変態を生じさせるか、もしくはその超低温変態溶材による溶接部にひずみを与えることによって室温でマルテンサイト変態を生じさせて、疲労発生の起点となる溶接止端部に効率的に圧縮力を導入することができ、溶接部での疲労寿命を大幅に向上させることができる。
また、本発明の超低温変態溶材を溶接した直後、その溶接部の近傍に非破壊式の歪み計を貼着することにより、応力の変化過程を実測により容易に把握・管理することができる。
さらに、本発明の超低温変態溶材による溶接部はグラインディング等により応力集中を減らす形状に整形することが容易に可能であり、さらなる疲労寿命の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】荷重を受けたときの鋼材における歪み(伸び)と温度、マルテンサイト変態の関係を概念的に示す説明図。
【図2】荷重を受けたときの鋼材における温度と応力の関係を概念的に示す説明図。
【図3】鋼構造物での鋼部材と面外ガセットの溶接継手構造例を示す立体説明図。
【図4】鋼構造物での本発明による鋼部材と面外ガセットの他の溶接継手構造例を示す立体説明図。
【図5】鋼構造物での本発明による鋼部材と面外ガセットの他の溶接継手構造例を示す立体説明図。
【図6】まわし溶接部に付加ビードを形成した場合の応力発生状態例を示す説明図。
【図7】図5の鋼部材と面外ガセットの溶接継手構造における本発明の実施例での各実験例、各比較例での付加ビード形成領域の残留応力を示す説明図。
【図8】図7の実験例、比較例の一部についての疲労強度を示す説明図で、(a)図は鋼材がSM570Qの場合を示し、(a)図は鋼材がSM400の場合を示す。
【図9】本発明を適用可能な鋼構造物での鋼部材の他の溶接継手構造例の基本構造例を示す立体説明図で、(a)図は面内ガセットの場合、(b)図はカバープレートの場合、(c)図は面内ガセット、(d)図はスタッド、(e)はスカーラップを持つ溶接継手の場合をそれぞれ示す。
【符号の説明】
1:厚鋼板
2:面外ガセット
A:溶接先端部
w:本ビード(一般の溶材)
3a,3b:本ビード(超低温変態溶材)
4a,4b:付加ビード
5:歪みゲージ

Claims (9)

  1. C,Ni,CrおよびMoをそれぞれの成分の質量%とし、下記式で定義されるパラメーターPaの範囲が、1.05以上1.92以下である溶接金属が形成されている超低温変態溶材を用いた鋼部材の溶接施工方法であって、鋼部材同士を前記超低温変態溶材を用いて溶接後、超低温変態溶材による溶着金属近傍の表面温度が室温程度に下がってから、グラインディングで整形して、その溶着金属の近傍に非破壊式の歪計を配設して、溶接により生成したマルテンサイト変態の開始温度が50℃未満、−50℃以上である鉄合金からなる溶着金属を、冷却手段としてドライアイスを用い、ドライアイスを冷却対象領域に直接または間接に接触させて冷却することによってマルテンサイト変態を起こさせ、その後復帰した室温状態において当該マルテンサイト変態の開始以前よりも体積膨張している状態とすることにより引張残留応力を緩和、または、圧縮残留応力を付与することによって、溶接部の疲労寿命を向上させ、その変態による応力の変化を計測することによって引張残留応力の緩和もしくは圧縮残留応力の導入の実現を確認することを特徴とする溶接施工方法。
    Pa=C+Ni/12+Cr/24.2+Mo/19.4
  2. C,Ni,CrおよびMoをそれぞれの成分の質量%とし、下記式で定義されるパラメーターPaの範囲が、1.05以上1.92以下である溶接金属が形成されている超低温変態溶材を用いた鋼部材の溶接施工方法であって、溶接により生成したマルテンサイト変態の開始温度が50℃未満、−50℃以上である鉄合金からなる溶着金属に、溶接終了後、グラインディングで整形して、ハンマーピーニング、ショットピーニング、ニードルピーニング、超音波衝撃処理などの各種ピーニングを用い、超低温変態溶材による溶接止端部に打撃を与えてひずみを付与することによってマルテンサイト変態を起こさせ、室温状態において当該マルテンサイト変態の開始以前よりも体積膨張している状態とすることにより引張残留応力を緩和、または、圧縮残留応力を付与することによって、溶接部の疲労寿命を向上させることを特徴とする溶接施工方法。
    Pa=C+Ni/12+Cr/24.2+Mo/19.4
  3. 鋼部材同士を超低温変態溶材を用いて溶接後、超低温変態溶材による溶着金属近傍の表面温度が室温程度に下がってから、その溶着金属の近傍に非破壊式の歪計を配設して、その後、溶着金属に対してひずみ付与を実施することによりマルテンサイト変態を生じさせると共に、その変態による応力の変化を計測することによって、引張残留応力の緩和もしくは圧縮残留応力の導入の実現を確認することを特徴とする請求項2に記載の溶接施工方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載した溶接施工方法に用いる超低温変態溶材であって、質量%で、
    C :0.001〜0.1%、
    Si:0.01〜1.5%、
    Mn:0.01〜4.0%、
    P :0.03%以下、
    S :0.02%以下、
    Cr:15.0〜23.0%、
    Ni:5.0〜13.0%
    を含有し、かつ、Ni当量、Cr当量の不等式、
    Ni当量>0.891×Cr当量−7.259
    を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする超低温変態溶材。
    このとき、
    Ni当量=30×C+Ni+0.5×Mn
    Cr当量=Cr+Mo+1.5×Si+0.5×Nb
    とする。
  5. 質量%でさらに、
    Mo:0.1〜2.0%、
    Ti:0.005〜0.3%、
    Nb:0.005〜0.3%、
    V :0.05〜0.5%、
    Cu:0.05〜0.4%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項に記載の超低温変態溶材。
  6. 鋼部材同士の溶接接合に際して、少なくとも疲労が問題となる部分の溶接部に、請求項1〜のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
  7. 鋼部材同士の溶接接合に際して、通常の溶接材で溶接後、その溶接部領域で疲労を生じやすい部位に、超低温変態溶材を用いた付加ビードを形成するに当たり、請求項1〜のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
  8. 面外ガセット、面内ガセット、カバープレート、または、スタッドの1つまたは2つ以上が溶接されている構造部材において、疲労荷重を受ける溶接部に、請求項1〜のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用し、室温状態で圧縮応力を残留させ疲労強度を強化したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
  9. スカーラップがまわし溶接で溶接されている構造部材において、疲労荷重を受ける溶接部に、請求項1〜のいずれか1項に記載の溶接施工方法を適用し、室温状態で圧縮応力を残留させ疲労強度を強化したことを特徴とする高疲労強度溶接継手。
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