JP6740805B2 - 溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手 - Google Patents

溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手 Download PDF

Info

Publication number
JP6740805B2
JP6740805B2 JP2016163123A JP2016163123A JP6740805B2 JP 6740805 B2 JP6740805 B2 JP 6740805B2 JP 2016163123 A JP2016163123 A JP 2016163123A JP 2016163123 A JP2016163123 A JP 2016163123A JP 6740805 B2 JP6740805 B2 JP 6740805B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welding
welded
butt
flat plate
weld bead
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016163123A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018030143A (ja
Inventor
成一郎 堤
成一郎 堤
直樹 大沢
直樹 大沢
英一 村川
英一 村川
平岡 和雄
和雄 平岡
千晃 志賀
千晃 志賀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka University NUC
Original Assignee
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka University NUC filed Critical Osaka University NUC
Priority to JP2016163123A priority Critical patent/JP6740805B2/ja
Publication of JP2018030143A publication Critical patent/JP2018030143A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6740805B2 publication Critical patent/JP6740805B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、鋼構造物の破壊強度を向上させる鋼材の溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手に関する。
船舶、海洋構造物、橋梁等の鋼構造物は、鋼材や溶接部に存在する亀裂等の欠陥が疲労等で成長して許容長さを超えると、想定内の負荷荷重、即ち設計荷重以下の負荷荷重であっても脆性破壊を起こす。また時には、許容長さ以下の小さい欠陥であっても、想定外の負荷荷重、即ち設計荷重を超える荷重が加わると、同様に、脆性破壊を起こす。
そこで、従来より、構造物の製造時にやむなく入り込む欠陥については、検査によって見出し、補修を施すことにより欠陥を無くすようにしているが、小さな欠陥を検出することは容易ではなく、一部小さな欠陥が残ってしまうことが避けられない。
また、製造時に欠陥が残っていない場合でも、鋼構造物は年数を経ると疲労現象によって欠陥が生じ、時々刻々と成長していく。
一方、今日、過去の破壊例や構造応力の解析法が発達したことにより、鋼構造物における脆性破壊位置を予測することが可能になってきており、この予測される脆性破壊位置で脆性破壊が実際に発生することを防止するために、鋼材板厚を増したり補強部材を補足したりして単位面積当たりの応力を低減することや、鋼材や溶接金属の靭性を高めることが行われている。
即ち、存在する欠陥の大きさ、欠陥を拡大させる荷重、欠陥の拡大を抑える材料の靭性値などの因子を考慮した構造設計が行われている。
また、既設の鋼構造物に対しても、脆性破壊の防止のために定期検査を頻繁に行い、欠陥の長さが限界許容長さを超して脆性破壊へ移行する前に補修を行っているが、膨大な補修費用が必要になるという問題がある。そして、欠陥に負荷される応力を低減するための鋼材の厚さ増や、応力集中を低減させるための部材の補足は、鋼構造物の重量増を来たすため、船舶等の輸送用鋼構造物においては燃費等の低下だけでなく、材料コストの増加も招いている。
そこで、このような問題を解決するため、この50年間、鋼の高純度化やミクロ組織の改善により鋼材や溶接材料(以下、単に「溶材」ともいう)の靭性値を向上させることが重点的に行われている(例えば特許文献1〜4参照)。
しかし、これらの技術も頭打ちの状態にあるのが現状であり、鋼構造物の脆性破壊の防止に対して、さらなる技術改良が求められている。特に鋼構造物の最弱部である溶接部の脆性破壊を防止することが求められている。
特開2006−316326号公報 特開2015−189984号公報 特開2016−50350号公報 特開2014−607号公報
本発明は、溶接部の欠陥からの亀裂成長を飛躍的に抑制し、鋼構造物の脆性破壊を十分に防止することを可能とする溶接技術を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
請求項1に記載の発明は、
通常溶接材料を用いて部材と部材とが溶接された既設の鋼構造物において、溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接方法である。
請求項2に記載の発明は、
部材と部材とを通常溶接材料を用いて溶接した後、溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接方法である。
請求項3に記載の発明は、
前記溶接ビードの形成を、前記部材の一面または両面で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接方法である。
請求項4に記載の発明は、
前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向が、90±30°の範囲内の方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の溶接方法である。
請求項5に記載の発明は、
前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向が、略垂直であることを特徴とする請求項4に記載の溶接方法である。
請求項6に記載の発明は、
前記溶接ビードを、一方から他方へ向けて一方向に形成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の溶接方法である。
請求項7に記載の発明は、
運棒法にウィービング法を用いて前記溶接ビードを形成することを特徴とする請求項6に記載の溶接方法である。
請求項8に記載の発明は、
複数の部材を溶接して鋼構造物を構成する溶接継手の製造方法であって、
前記部材同士を通常溶接材料を用いて溶接した後、
溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接継手の製造方法である。
請求項9に記載の発明は、
複数の部材が溶接されて鋼構造物を構成する溶接継手であって、
前記部材同士が溶接された溶接箇所には通常溶接材料が使用されており、
溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて肉盛溶接された溶接ビードが、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手である。
請求項10に記載の発明は、
前記部材として第1と第2の2枚の平板を備え、前記2枚の平板が互いの端面同士が通常溶接材料で突合せ溶接されて平板状をなしていると共に、
前記平板の面上に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手である。
請求項11に記載の発明は、
断面T字状で、前記部材として、第1、第2および第3の3枚の平板を備え、
第1と第2の平板は端面で突合せ溶接されて平板状をなしており、
第3の平板は、第1と第2の平板がなす平板の一方の面上に前記面に対して垂直で、第1と第2の平板を跨ぎ、前記突合せ溶接の溶接ビードに対して垂直方向に隅肉溶接されており、
前記突合せ溶接の溶接ビードと前記第3の平板とを跨いで、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記隅肉溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手である。
請求項12に記載の発明は、
第1の平板と第2の平板とが突き合わせ溶接されている第1部材と、
第3の平板と第4の平板とが突き合わせ溶接されている第2部材とを備え、
前記第1の部材に対して前記第1の部材の溶接ビードに直交する方向に、前記第2の部材が垂直に隅肉溶接されており、
前記隅肉溶接の溶接ビード上に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記第1の平板および前記第2の平板同士の突合せ溶接の溶接ビードおよび前記第3の平板および前記第4の平板同士の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手である。
請求項13に記載の発明は、
円筒状で、前記部材として、外径および内径が同じ第1の円筒と第2の円筒の2個の円筒を備え、
前記2個の円筒は、側面に長手方向に沿って突合せ溶接された継ぎ目を有し、
前記継ぎ目の溶接ビードが合致しないようにして、前記第1の円筒と前記第2の円筒が端面で突合せ溶接されており、
前記端面における突合せ溶接の溶接ビードの外周面側に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記継ぎ目の溶接の溶接ビートに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手である。
請求項14に記載の発明は、
円筒状で、前記部材として、外径および内径が同じ第1の円筒と第2の円筒の2個の円筒を備え、
前記2個の円筒は、側面に長手方向に沿って突合せ溶接された継ぎ目を有し、
前記継ぎ目の溶接ビードが合致しないようにして、前記第1の円筒と前記第2の円筒が端面で突合せ溶接されており、
円筒の外周面側に、前記第1の円筒と前記第2の円筒の前記継ぎ目の溶接ビードとを跨いで、肉盛溶接された前記溶接ビードが前記端面の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手である。
請求項15に記載の発明は、
平板の一方の面上に前記面に対して垂直で、かつ前記平板の長手方向に梁が隅肉溶接された断面T字状の部材を2個備え、
2個の部材の端面同士で突合せ溶接され、
前記2個の部材は、前記端面で一方の部材が他方の部材に対して前記梁が設けられていない側に所定の角度で屈折しており、
前記梁が隅肉溶接されていない面上の前記梁の真裏の部分において、肉盛溶接された前記溶接ビードが、2枚の平板の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に前記2枚の平板を跨いで設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手である。
本発明によれば、溶接部の欠陥からの亀裂成長を飛躍的に抑制し、鋼構造物の脆性破壊を十分に防止することを可能とする溶接技術を提供することができる。
LTT溶材および通常溶材を用いて溶接ビードを形成させた際の溶接長と残留応力との関係を示す図である。 図1において使用した溶接ビードの平面図である。 LTT溶材および通常溶材の変位と温度の関係の一例を説明する図である。 LTT溶材の変位と温度の関係の一例を示す図である。 LTT溶材の変位と温度の関係の他の一例を示す図である。 LTT溶材と通常溶材のシャルピー衝撃吸収エネルギーを示す図である。 LTT溶材と通常溶材の延性破面率を示す図である。 ウィービング法による運棒法の一例を示す模式図である。 平板タイプの溶接継手の斜視図である。 T字タイプの溶接継手の一例を示す図である。 T字タイプの溶接継手の他の一例を示す図である。 円筒タイプの溶接継手の一例を示す斜視図である。 円筒タイプの溶接継手の他の一例を示す斜視図である。 屈折タイプの溶接継手の一例を示す図である。 評価用サンプルの作製方法を説明する図である。 破断までの荷重応力の測定方法を説明する斜視図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて、図面を参照しつつ説明する。
1.本発明の背景となる技術
最初に、本発明の背景となる技術について説明する。
本発明者は、上記した欠陥(亀裂)の発生と成長の大きな要因である引張応力に対して材料の靭性を高めることで対処するという従来技術が現状頭打ちの状態にあることに鑑み、従来技術から発想を一転させて、部材と部材との溶接箇所に掛かる引張応力を実質的に低減させることにより、鋼構造物の脆性破壊を防止するという考えに切り替えた。
即ち、部材と部材とが溶接されて構成される鋼構造物で、既に亀裂が発生している溶接箇所においては引張応力により亀裂が成長し、また、将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所においては引張応力により亀裂が発生、成長していくことが分かっている。このため、この溶接箇所に掛かる引張応力を実質的に低減させることができれば、脆性破壊への抵抗性が向上して、亀裂の発生や成長を抑制することができる。
(1)LTT溶材
そして、このような引張応力の低減を図ることができる材料として、本発明者は、マルテンサイト変態を開始する温度(「Ms温度」)が低い溶接材料(以下、低変態温度溶接材料、Low Transformation Temperature:LTT溶材という)に着目した。
このLTT溶材は、溶接後の冷却過程において発生するマルテンサイト変態膨張を活用して圧縮残留応力を生じさせる溶接材料であるが、あまりにもシャルピーの衝撃吸収エネルギー値が低いことに加えて、Ms温度を下げるため溶材合金成分が高成分の溶接金属になり、溶接割れを伴う危険があると考えられていたため、鋼構造物を構成する部材を製造するための溶接材料としての使用は、従来、考えられていなかった。
しかし、本発明者が種々の実験を行ったところ、このLTT溶材を用いた溶接の場合、溶接割れを伴わず、溶接箇所に約−500MPaという極めて大きな圧縮残留応力を形成させることが可能であることが分かった。この結果に基づいて、本発明者は、このような大きな圧縮残留応力を形成可能なLTT溶材を、引張応力を低減させて亀裂の発生や成長を抑制する材料として適用できないかと考えた。
そして、さらに実験を行ったところ、このLTT溶材による大きな圧縮残留応力の形成は特定の溶接方向に限られることが分かった。この結果に基づいて、本発明者は、この大きな圧縮残留応力が形成される方向が引張応力の掛かる方向に対応するように、LTT溶材の溶接ビードを設けた場合、大きな圧縮残留応力が引張応力を低減させて、亀裂の発生や成長を抑制することができると考えた。
ここで、上記したLTT溶材による圧縮残留応力と溶接ビードの形成方向に関する実験について、図1および図2を用いて説明する。本実験においては、LTT溶材にMs点が約200℃の10%Cr−10%Ni鋼成分の材料を、通常溶接材料(通常溶材)にMs点が約500℃の一般市販材料を使用して、種々の長さで溶接ビードを形成させた後、各溶接ビードにおける残留応力を測定した。なお、ここで、通常溶接材料(通常溶材)とは、一般に市販されている高張力鋼用の溶接材料をいう。
図1は、図2に示すように、20mm厚鋼板の中央に溶接ビードを置いた時の各溶接ビードにおける溶接長と残留応力との関係を示す図であり、図2は形成した溶接ビードを示す図である。なお、残留応力の測定に際しては、図2に示すx方向(溶接ビードの長手方向)、y方向(溶接ビードの幅方向)の2方向で行い、測定結果を図1にσx、σyとして示している。
図1より、通常溶材では溶接長が長くなっても、x方向、y方向のいずれも残留応力は0より小さくなり難く、残留応力が引張応力であることが分かる。これに対して、LTT溶材では、y方向の残留応力は0より大きく引張応力であるのに対して、x方向の残留応力は0より小さく圧縮残留応力となっていることが分かる。また、LTT溶材では、溶接長が長くなるにつれて圧縮残留応力が大きくなっていることが分かる。そして、300mmの溶接長では、前記した約−500MPaという極めて大きな圧縮残留応力が形成されていることが分かる。
この結果より、LTT溶材の溶接ビードを、引張応力の掛かる方向に対応する方向(亀裂の成長方向に対応)に対して垂直方向に形成させた場合、LTT溶材により形成された大きな圧縮残留応力が引張応力を低減させることができると期待できることが分かった。
LTT溶材を使用して、上記のような大きな圧縮残留応力を得るためには、通常溶材のMs温度を低下させるために、NiやCr等の合金成分を添加して、マルテンサイトを多く生成させ、変態膨張量、即ち変位を大きくすることが必要であるが、Ms温度の低下はその一方で、溶材合金成分の増加を伴うため、高温割れや低温割れが増加し、これらの割れが破壊起点となって応力が集中するため、破壊靭性値が不足し、その結果、前記したように、鋼構造物を構成する部材を製造するための溶接材料としては不適切であると考えられていた。
そして、実験を行ったところ、後述する実施例に示すように、亀裂の成長方向に対して垂直方向にLTT溶材を肉盛溶接して溶接ビードを形成した場合には、靱性に劣るLTT溶材を使用しているにも拘らず、鋼構造物を構成する部材の靱性が向上し、耐脆性が向上するという驚くべき結果を得ることができ、本発明を完成するに至った。
次に、本発明において好ましく使用できるLTT溶材について説明する。具体的には、本発明においてはMs温度が400℃以下であるLTT溶材を使用する。
図3はLTT溶材の一例および通常溶材の一例における変位と温度の関係の一例を説明する図であり、縦軸は変位(μm)、横軸は温度(℃)である。また、LTT溶材、通常溶材をそれぞれ実線および破線で示している。そして、図4は図3からLTT溶材だけを抜き出して示した図である。
図3に示すように、LTT溶材は、冷却の過程で、一般的に約400℃以下のMs温度以下で変位が減少から増大、即ち収縮から膨張に転じ、十分な大きさの変態膨張量が得られている。しかし、Ms温度が50℃以下の場合、室温までの膨張量が小さく、変態の効果が少なくなる。
一方、通常溶材では図3に示すように400℃以下での膨張は認められず、圧縮応力の形成が期待できない。これに対して、図4に示すように、LTT溶材では約170℃のMs温度で変態膨張が開始しており、使用環境温度で膨張量が略ピークに達している。このように、LTT溶材が置かれる使用環境温度で膨張がピークに達するようにすると最も大きな圧縮応力が得られるため好ましい。
このように、使用環境温度で膨張がピークに達するようなLTT溶材として、図4に示すように変位が温度変化する10%Cr+10%Ni鋼成分の材料を挙げることができる。なお、高価な10%Cr+10%Ni鋼成分の材料に替えて、図6に示すように変位が小さく温度変化する安価な6%Mn鋼成分の材料を使用して、小さいなりの変位を利用することもできる。
図6はLTT溶材と通常溶材のシャルピー衝撃吸収エネルギーと温度との関係を示す図であり、図7は延性破面率と温度との関係を示す図である。図6、図7の縦軸はそれぞれシャルピー衝撃吸収エネルギー(J)、延性破面率(%)であり、横軸はどちらも温度(℃)である。
図6に示すようにLTT溶材はシャルピー衝撃吸収エネルギーが小さく、例えばハンマーによる打撃のような衝撃に対して弱い。しかし、図7に示すように−40℃以下の低温において、延性破面率が通常溶材よりもはるかに大きいため、引張応力が加わる状況下においては耐脆性破壊に優れることを示している。具体的には−80℃において50%の延性破面率を呈することが好ましいが、LTT溶材の場合は90%を超えている。
このようなLLT溶材を用いることにより、圧縮残留応力により亀裂に加わる引張荷重を低減し、亀裂の発生および成長を抑制することができる。
(2)通常溶材との組み合わせ
上記知見に基づき、本発明者は、部材と部材の溶接に際しては通常溶材を用いることにより、割れがなく、延性や耐脆性に優れた溶接部を形成した上で、LTT溶材を用いて肉盛溶接することにより、大きな圧縮残留応力を形成させることを考えた。
即ち、通常溶材による延性や耐脆性と、LTT溶材による大きな圧縮残留応力とによって、割れ解消と大きな圧縮残留応力の形成という2つの課題を解決して、鋼構造物における亀裂の発生や成長へ十分に抵抗させて、脆性破壊を防止することができると考えた。
具体的には、破壊起点箇所は応力集中部であるので、他の場所と同じく、部材と部材の溶接には従来と同様に通常溶材を使用して溶接し、割れ問題の発生を避けて、延性や耐脆性に優れた溶接部(通常溶材層)を作成する。そして、作成された通常溶材層の上にLTT溶材を使用して、LTT溶材(低変態温度溶接材料)の溶接ビードを、引張応力の掛かる方向に対応する方向(亀裂の成長方向に対応)に対して垂直方向に肉盛溶接して、大きな圧縮残留応力が形成される溶接部(LTT溶材層)を形成させる。
これにより、延性や耐脆性に優れた溶接部の上に、大きな圧縮残留応力を形成させることができるため、引張応力を低減させて、溶接部の欠陥からの亀裂成長を飛躍的に抑制し、鋼構造物の脆性破壊を十分に防止することができる。
また、従来の技術のような、鋼材板厚の増加や部材の補足による応力集中の緩和手段または鋼材や溶接金属の靭性値を高める材料特性の向上を必要としないため、鋼構造物の重量の増加や材料コストの増加を招かない。
(3)溶接ビードの形成
なお、本発明の実施にあたって、溶接ビードを肉盛溶接により形成する際には、前記したように、亀裂の成長方向に対応に対して垂直方向に形成させることが好ましいが、溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向であればよい。
交差する方向に溶接ビードを形成することにより形成された圧縮残留応力は、亀裂の成長方向に対して平行な方向の力と直角な方向の力とに分解することができ、この直角な方向の力が引張荷重を小さくさせる方向に働くため、引張荷重の大きさが低減されて、亀裂の派生や成長を抑制することができる。
具体的には、LTT溶材による引張荷重を低減する圧縮残留応力、即ち、直角な方向に分解される力は、亀裂の成長方向に対して交差する角度に対してサインカーブを描いて変化することになるため、この交差角度は、上記したように、垂直(90°)に近いほどより大きな低減効果が得られ好ましい。具体的に好ましい角度としては、90±30°の範囲内であれば、90°で得られる圧縮残留応力の70%以上が得られ、亀裂の発生および成長を効果的に抑制することができる。
そして、この溶接ビードは、形成にあたって一方から他方へ向けて一方向となるように溶接する。即ち、溶接を往復してLTT溶材による既設の溶接ビードの上に、新たにLTT溶材による溶接ビードを形成した場合には、既設の溶接ビードが焼鈍されて圧縮応力が消失してしまうため、Ms温度以下に冷却される前に溶接ビードの形成を完了させる。
なお、幅広に溶接ビードを形成させる場合には、運棒法にウィービング法を用いて一度の肉盛溶接で幅広の溶接ビードを形成することが好ましい。図8にウィービング法による運棒法の例を示す。なお、図8でxは伸長ビードの伸長の方向を示す。
(4)本発明がもたらす効果
本発明の技術は、鋼構造物の脆性破壊を十分に防止することを目的として、鋼構造物に潜む内部欠陥の成長を遅くし、脆性破壊への発生及び伝播を妨げることを主旨としているが、同時に疲労亀裂の発生も抑止する効果を併せ持っている。この結果、鋼構造物の弱点箇所の破壊強度は大きく上昇し、この上昇効果によって、鋼構造物は以下に記載するような利点を得ることが可能となる。
まず、既設、新設を問わず、通常の鋼構造物に本発明のLTT肉盛処理を施すことによって、破壊に対する安全性を著しく向上させることができる。
そして、鋼構造物の通常レベルの安全基準を踏襲した場合、鋼構造物の板厚の減肉を図ることができるため、鋼構造物の軽量化が可能となる。また、使用鋼材料の減量は、鋼構造物の製作コストの低下に繋がる。
また、このとき、LTT溶材による圧縮残留応力の形成に合わせて、靭性値が高いとは言えない安価な鋼材や通常溶材を使用することも可能となるため、鋼構造物の製作コストの低下に結びつく。
また、LTT溶材による溶接ビードを設けることによる圧縮残留応力形成は脆性破壊に大きな抑制効果を達成することができるが、この技術は局所的な処理技術であるため、処理に際して必要なLTT溶材は少量でよく、また、処理時間も短時間でよいため、従来の技術に比べて大きなコストの増加を招く恐れがない。
さらに、本発明の技術は、既存の鋼構造物の補修・補強にも適用可能で、大きな効果を見込める技術であるため、本発明の技術を既存の鋼構造物の補修・補強に適用することにより、鋼構造物の安全性を向上させることができるだけでなく、補修メインテナンス費用も大きく削減させることが可能となる。
2.本発明に係る溶接方法の実施の形態
次に、本発明に係る溶接方法の実施の形態について説明する。
本発明の一実施の形態に係る溶接方法は以下の通りである。即ち、
通常溶接材料を用いて部材と部材とが溶接された既設の鋼構造物において、溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接方法である。
上記は、既設の鋼構造物における補修について本発明を適用した技術であり、既設の鋼構造物に本発明を適用することにより、前記したように、鋼構造物の安全性を向上させることができるだけでなく、補修メインテナンス費用も大きく削減させることができる。
また、本発明の他の実施の形態に係る溶接方法は以下の通りである。即ち、
部材と部材とを通常溶接材料を用いて溶接した後、溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接方法である。
上記は、新設の鋼構造物における補強について、本発明を適用した技術であり、新設の鋼構造物に本発明を適用することにより、前記したように、破壊に対する安全性が著しく向上する。また、鋼構造物の板厚の減肉を図ることができるため、鋼構造物の軽量化が可能となり、鋼構造物の製作コストの低下に繋がる。また、この技術は局所的な処理技術であるため、処理に際して必要なLTT溶材は少量でよく、また、処理時間も短時間でよいため、従来の技術に比べて大きなコストの増加を招く恐れがない。
また、本発明の他の実施の形態に係る溶接方法は以下の通りである。即ち、
前記溶接ビードの形成を、前記部材の一面または両面で行うことを特徴とする溶接方法である。
前記した各溶接方法は、溶接ビードの形成を部材の一面または両面で行うことが好ましい。部材の一面でもよいが、両面とすることにより、より安全性が増し好ましい。
また、本発明の他の実施の形態に係る溶接方法は以下の通りである。即ち、
前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向が、90±30°の範囲内の方向であることを特徴とする溶接方法である。
また、本発明の他の実施の形態に係る溶接方法は以下の通りである。即ち、
前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向が、略垂直であることを特徴とする溶接方法である。
溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向として、90±30°の範囲内の方向に溶接ビードを形成することが好ましく、略垂直(90°)であると特に好ましい。
また、本発明の他の実施の形態に係る溶接方法は以下の通りである。即ち、
前記溶接ビードを、一方から他方へ向けて一方向に形成することを特徴とする溶接方法である。
これにより、形成された溶接ビードの全てに十分な圧縮応力を形成させることができる。
また、本発明の他の実施の形態に係る溶接方法は以下の通りである。即ち、
運棒法にウィービング法を用いて前記溶接ビードを形成することを特徴とする溶接方法である。
運棒法にウィービング法を用いて溶接ビードを形成することにより、幅広に溶接ビードを一方向に形成することができる。
3.溶接継手
上記した溶接方法は多様な鋼構造物の製造および保守に用いることができるが、特に溶接継手の製造に用いることが好適である。
(1)溶接継手の製造方法
鋼構造物に用いられる溶接継手として、後述する(a)平板タイプ、(b)T字タイプ1、(c)T字タイプ2、(d)円筒状タイプ1、(e)円筒状タイプ2および(f)屈折タイプが挙げられる。これらの溶接継手は以下の方法で製造することができる。
即ち、
複数の部材を溶接して鋼構造物を構成する溶接継手の製造方法であって、
前記部材同士を通常溶接材料を用いて溶接した後、
溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接継手の製造方法である。
上記した溶接継手は鋼を母材とする複数の部材が溶接されて製造される。本実施の形態では、部材同士を通常溶材を用いて溶接し、溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、前記した肉盛溶接によりLTT溶材で溶接ビード(以下、突合せ溶接や隅肉溶接の溶接ビードと区別するために、「伸長ビード」という)を形成する。
本実施の形態では、部材同士の溶接部分に通常溶材とLTT溶材との複合溶接金属層を形成することで割れの問題を解消するとともに圧縮残留応力を形成できる。この結果、一般的に応力が集中しやすい溶接部分の割れの発生と亀裂の発生および成長を同時に抑制することができる。
(2)溶接継手の具体例
次に、上記した溶接継手について具体的に説明する。
本発明の一実施の形態の溶接継手は以下の通りである。即ち、
複数の部材が溶接されて鋼構造物を構成する溶接継手であって、
前記部材同士が溶接された溶接箇所には通常溶接材料が使用されており、
溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて肉盛溶接された溶接ビードが、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手である。
溶接継手は、複数の部材が突合せ溶接または隅肉溶接を用いて溶接されているが、前記のように、突合せ溶接または隅肉溶接の溶接ビードの形成には通常溶材が用いられる。一方、伸長ビードの形成には、LTT溶材が用いられる。また、LTT溶材の選択、伸長ビードの溶接長および巾の設定は、溶接継手に加わる荷重の大きさ等に応じて適宜行われる。
本実施の形態の溶接継手は、溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により伸長ビードを形成している。交差する方向に伸長ビードを形成することにより形成された圧縮残留応力は、引張荷重を小さくさせる方向に働くため、引張荷重の大きさが低減されて、亀裂の発生や成長を抑制することができる。その結果、鋼材および溶材の欠陥の成長を飛躍的に抑制し、鋼構造物の脆性破壊を十分に防止することを可能とすることができる。このような効果は、以下の各種の溶接継手からも得ることができる。
また、図9〜図14において説明する各種の溶接継手において、荷重と記載された矢印の方向に荷重が掛かるものとし、細い矢印が亀裂の成長方向を示すものとする。また、以下の説明において、「一方向」とはワンパスで伸長ビードを形成することを意味する。LTT溶材による既設の溶接ビードの上に、新たにLTT溶材による溶接ビードを形成した場合には、既設の溶接ビードが焼鈍されて圧縮応力が消失してしまうため、Ms温度以下に冷却される前に溶接ビードの形成を完了させる必要がある。
(a)平板タイプ
図9は平板タイプの溶接継手の斜視図であり、(a)、(b)図はそれぞれLTT製の伸長ビード形成前と形成後の状態を示す。
本発明の一実施の形態の溶接継手は以下の通りである。即ち、
前記部材として第1と第2の2枚の平板を備え、前記2枚の平板が互いの端面同士が通常溶接材料で突合せ溶接されて平板状をなしていると共に、
前記平板の面上に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手である。
具体的には以下の通りである。平板タイプの溶接継手1は第1の平板11と第2平板12の2枚の平板からなっており、前記2枚の平板は互いの端面同士が通常溶接材料で突合せ溶接されて平板状になっている。なお、13は、突合せ溶接ビードである。
この突合せ溶接された平板の面上に、肉盛溶接された溶接ビード(伸長ビード)14が、突合せ溶接の溶接ビード13に対して交差する方向に設けられている。
この平板タイプの溶接継手1は、鋼構造物に組み込まれたときに、第1の平板11と第2の平板12とが互いに離反する方向の荷重がかかる。このとき、突合せ溶接ビード13には第1の平板11および第2の平板12に対して垂直方向に引張荷重が加わる。そして、HAZ位置は靭性劣化位置で応力集中が大きい場所のため、突合せ溶接部でも止端部に溶接欠陥(溶接割れやスラグ巻き込み)が発生するとこの溶接欠陥が矢印の方向に進展する。このため、突合せ溶接ビード13には、突合せ溶接ビード13に沿う方向に進展する亀裂が発生すると予測される。
上記の予測に基づき、溶接継手1では予め両面に、突合せ溶接ビード13の伸長方向と略垂直に交差する伸長ビード14を形成している。即ち、伸長ビード14は第1の平板11から第2の平板12に向けて伸長させる。
なお、図9に示した例では伸長ビード14は溶接継手1の表裏両側に形成されているが、本発明では溶接継手1の片面にのみ形成しても良く、このような場合でも、鋼材および溶材の欠陥の成長を抑制し、鋼構造物の脆性破壊を十分に防止することが可能である。
(b)T字タイプ1
図10はT字タイプ1の溶接継手を示す図であり、(a)、(b)図はそれぞれ斜視図および横断面図である。
本発明の一実施の形態の溶接継手は以下の通りである。即ち、
断面T字状で、前記部材として、第1、第2および第3の3枚の平板を備え、
第1と第2の平板は端面で突合せ溶接されて平板状をなしており、
第3の平板は、第1と第2の平板がなす平板の一方の面上に前記面に対して垂直で、第1と第2の平板を跨ぎ、前記突合せ溶接の溶接ビードに対して垂直方向に隅肉溶接されており、
前記突合せ溶接の溶接ビードと前記第3の平板とを跨いで、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記隅肉溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手である。
T字タイプ1の溶接継手2は、図10に示すように、第1の平板21と、第2の平板22と、第3の平板24とからなる断面T字状の溶接継手である。具体的には、第1の平板21と第2の平板22は、端面同士で突合せ溶接されて平板状をなしている。なお、23は、突合せ溶接ビードである。
そして、第3の平板24は、第1の平板21と第2の平板22を跨ぐようにして、第1の平板21と第2の平板22の上面に対して垂直に溶接されている。この第3の平板24の溶接方法は隅肉溶接であり、突合せ溶接ビード23に対して垂直方向に隅肉溶接ビード25が形成されている。
このようなT字タイプ1の溶接継手2では、突合せ溶接ビード23と隅肉溶接ビード25が重なり合う部分に溶接欠陥や割れ等が発生しやすい。このような溶接継手2が、鋼構造物に組み込まれたときに、突合せ溶接ビード23に対して平行方向の引張荷重が加わる場合、隅肉溶接ビード25に、欠陥等の亀裂27が存在するとその伸長方向に沿って亀裂が進展すると予測される。
上記の予測に基づき、T字タイプ1の溶接継手2では、第1の平板21と第2の平板22との間の突合せ溶接ビード23と、第3の平板24とを跨ぐようにして、隅肉溶接ビード25に交差する伸長ビード26を形成する。なお、この伸長ビード26は、図10(b)に示すように、第3の平板24の側面から第1および第2の平板21、22の上面に向かって、あるいはその逆方向のどちらかの一方向に形成される。
(c)T字タイプ2
図11はT字タイプ2の溶接継手を示す図であり、(a)、(b)図はそれぞれ斜視図および横断面図である。
本発明の一実施の形態の溶接継手は以下の通りである。即ち、
第1の平板と第2の平板とが突き合わせ溶接されている第1部材と、
第3の平板と第4の平板とが突き合わせ溶接されている第2部材とを備え、
前記第1の部材に対して前記第1の部材の溶接ビードに直交する方向に、前記第2の部材が垂直に隅肉溶接されており、
前記隅肉溶接の溶接ビード上に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記第1の平板および前記第2の平板同士の突合せ溶接の溶接ビードおよび前記第3の平板および前記第4の平板同士の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手である。
具体的には以下の通りである。T字タイプ2の溶接継手3は、第1の平板33と第2の平板35とが突き合わせ溶接されている第1の部材31と、第3の平板34と第4の平板36とが突き合わせ溶接されている第2の部材32とを備えている。
そして第1の部材31に対して第1の部材31の突合せ溶接ビード38に直交する方向に、第2の部材32が垂直に隅肉溶接されて、断面T字状に構成されている。
なお、37は隅肉溶接ビードであり、38は突合せ溶接ビードである。
隅肉溶接ビード37と突合せ溶接ビード38が重なり合う部分に溶接欠陥や割れ等が発生しやすい。このような溶接継手3が、鋼構造物に組み込まれたときに、隅肉溶接ビード37に対して平行方向の引張荷重が加わる場合、隅肉溶接ビード37に、欠陥等の亀裂27が存在するとその伸長方向に沿って亀裂が進展すると予測される。
上記の予測に基づき、T字タイプ2の溶接継手3では予め両側の隅肉溶接ビード37上に、伸長ビード39を、第1および第2の平板33、35同士の突合せ溶接の溶接ビードおよび第3および第4の平板34、36同士の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に一方向に形成する。
(d)円筒状タイプ1
図12は円筒状タイプ1の溶接継手の斜視図である。
本発明の一実施の形態の溶接継手は以下の通りである。即ち、
円筒状で、前記部材として、外径および内径が同じ第1の円筒と第2の円筒の2個の円筒を備え、
前記2個の円筒は、側面に長手方向に沿って突合せ溶接された継ぎ目を有し、
前記継ぎ目の溶接ビードが合致しないようにして、前記第1の円筒と前記第2の円筒が端面で突合せ溶接されており、
前記端面における突合せ溶接の溶接ビードの外周面側に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記継ぎ目の溶接の溶接ビートに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手である。
具体的には以下の通りである。円筒状タイプ1の溶接継手4は外径および内径が同じで側面に長手方向に沿って突合せ溶接された継ぎ目を有する第1の円筒部材41と第2の円筒部材42からなり、これら2つの円筒部材41、42は、継ぎ目の溶接ビードが合致しないようにして、端面で突合せ溶接ビード44で溶接されている。
溶接継手4は、鋼構造物に組み込まれたときに、内側から外側に広がる圧力、即ち内圧が加わり、交叉するビード部では溶接欠陥や割れあるいは応力集中の可能性が高まる。このため、突合せ溶接ビード43に沿って進展する亀裂が発生すると予測される。
上記の予測に基づき、溶接継手4では予め、突合せ溶接ビード43と44の交点を中心として、第2の円筒部材上の突合せ溶接ビード44に対して直交する方向、即ち突合せ溶接ビード44に沿った方向に延長された伸長ビード45を形成している。
(e)円筒状タイプ2
図13は円筒状タイプ2の溶接継手の斜視図である。
本発明の一実施の形態の溶接継手は以下の通りである。即ち、
円筒状で、前記部材として、外径および内径が同じ第1の円筒と第2の円筒の2個の円筒を備え、
前記2個の円筒は、側面に長手方向に沿って突合せ溶接された継ぎ目を有し、
前記継ぎ目の溶接ビードが合致しないようにして、前記第1の円筒と前記第2の円筒が端面で突合せ溶接されており、
円筒の外周面側に、前記第1の円筒と前記第2の円筒の前記継ぎ目の溶接ビードとを跨いで、肉盛溶接された前記溶接ビードが前記端面の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手である。
具体的には以下の通りである。円筒状タイプ2の溶接継手5は、基本的には円筒状タイプ1と同じ構造を有している。
そして、この円筒状タイプ2の溶接継手5が鋼構造物に組み込まれ、円筒部材51、52の長手方向に引張荷重が加わったときには、前記同様交叉するビード部では溶接欠陥や割れあるいは応力集中の可能性が高まり、第1の円筒部材51と第2の円筒部材52との突き合わせ溶接部分である突合せ溶接ビード54に、周方向に沿って亀裂が発生すると予測される。
上記の予測に基づき、円筒状タイプ2の溶接継手5では、第1の円筒部材51と、第2の円筒部材52の突合せ溶接ビード53とを跨ぐようにして、伸長ビード55が設けられており、この伸長ビード55が円筒部材51、52同士の突合せ溶接ビード54と交差している。
(f)屈折タイプ
図15は屈折タイプの溶接継手を示す図であり、(a)図は斜視図、(b)図は屈折部分の縦断面図である。
本発明の一実施の形態の溶接継手は以下の通りである。即ち、
平板の一方の面上に前記面に対して垂直で、かつ前記平板の長手方向に梁が隅肉溶接された断面T字状の部材を2個備え、
2個の部材の端面同士で突合せ溶接され、
前記2個の部材は、前記端面で一方の部材が他方の部材に対して前記梁が設けられていない側に所定の角度で屈折しており、
前記梁が隅肉溶接されていない面上の前記梁の真裏の部分において、肉盛溶接された前記溶接ビードが、2枚の平板の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に前記2枚の平板を跨いで設けられていることを特徴とする溶接継手である。
具体的には以下の通りである。図14に示すように、屈折タイプの溶接継手6は、断面T字状の第1および第2の部材61および62を備えている。
第1の部材61は、第1の平板63の下面に長手方向に第1の梁64が隅肉溶接されて構成されている。第2の部材62は、第2の平板65の下面に長手方向に第2の梁66が隅肉溶接されて構成されている。
屈折タイプの溶接継手6は、第1、第2の部材61、62が、第1、第2の平板63、65同士、および第1、第2の梁64、66同士が端面で突合せ溶接されて構成されている。そして、第1、第2の部材61、62は、端面で第2の部材62が第1の部材に対して第1の梁64が設けられていない上面側に角度θで屈折している。
なお、67は隅肉溶接ビードであり、68、69は突合せ溶接ビードである
この屈折タイプの溶接継手6は鋼構造物に組み込まれたときに、角度θが小さくなる方向に引張荷重が加わる。このため、第1の平板63と第2の平板65との突合せ溶接ビード68に第1、第2の梁64、66の真裏(突合せ溶接ビード69の真裏)を中心として突合せ溶接ビード68に沿って進展する亀裂が発生すると予測される。
上記の予測に基づき、屈折タイプの溶接継手6では予め第1、第2の梁64、66が隅肉溶接されていない面上で第1、第2の梁64、66の真裏に第1、第2の平板63、65を跨いで、伸長ビード70を、第1、第2の平板63、65の突合せ溶接ビード68に対して交差する方向に、一方向に形成している。
なお、本実施の形態の溶接継手は、亀裂が発生する箇所を予測して伸長ビードを形成したが、既に亀裂が発生している溶接継手に対して伸長ビードを形成しても、鋼材および溶材の欠陥の成長を飛躍的に抑制し、鋼構造物の脆性破壊を十分に防止することを可能とすることができる。
次に、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。
本実施例では、図9に示した平板タイプの溶接継手を試作し、LTT溶材による伸長ビード14を形成した部分の残留応力および破断までの荷重応力(破断強度)を計測した。また、比較のために、LTT溶材に替えて通常溶材を用いて肉盛溶接を行った場合(比較例1)および肉盛溶接を行わない場合(比較例2)についても残留応力および破断までの荷重応力を計測した。
1.評価用のサンプルの作製
(1)実施例
図15は評価用サンプルの作製方法を説明する図である。まず、(a)図に示す溶接継手1を作製後、溶接継手1を図の破線に沿って切断して評価用サンプルを作製した。(b)図は、評価用のサンプルの正面図である。
具体的には、サイズ(幅)200×(長さ)300×(厚み)20mmの高張力綱AH400平板2枚の端面同士を、通常溶材(神鋼製MX−Z200)を用いて両面から突合せ溶接(幅15mm)し、その後、亀裂の発生が予測される箇所の両面に、LTT溶材(10Cr+10Ni)を用いて、突合せ溶接部に対して垂直の方向に肉盛溶接を行い、伸長ビード14を形成させることにより、平板タイプの溶接継手1を試作した。
形成した伸長ビード14の仕様は以下の通りである。
肉盛 :2mm
幅 :20mm
溶接長 :80mm
溶け込み深さ:2mm
次に、試作した溶接継手1を破線に沿って切断して評価用サンプルを作製した。
(2)比較例1、2
比較例1:伸長ビードの形成に通常溶材を用いたこと以外は実施例と同じ方法で評価用のサンプルを作製した。
比較例2:伸長ビードを形成しなかったこと以外は実施例と同じ方法で評価用サンプルを作製した。
2.評価方法
(1)残留応力の測定
実施例、比較例1、2のそれぞれについてひずみゲージによる弛緩法により評価用サンプルの正面のビード表面の位置で長手方向の残留応力を測定した。
(2)破断までの荷重応力の測定
図16は破断までの荷重応力の測定方法を説明する斜視図である。実施例、比較例1、比較例2のそれぞれのサンプルSの正面の溶金部(突合せ溶接ビード13のセンター)、HAZ部および母材部のそれぞれの部位に切欠きノッチを設けた後、試験温度−10℃において矢印で示す方向の3点に荷重を加えてそれぞれの部位の破断までの荷重応力を測定した。
3.評価結果
実施例、比較例1、2の評価結果をまとめて表1に示す。なお、残留応力は圧縮応力に「−」を付した。
Figure 0006740805
表1より、伸長ビードを設けていない比較例2では引張残留応力が形成されているのに対して、LTT溶材で伸長ビードを形成した実施例では−400MPaの大きな圧縮残留応力が形成されていることが分かる。一方、通常溶材を用いて伸長ビードを形成した比較例1では、200MPaから500MPaへと増加した引張残留応力が形成されていることが分かる。
また、通常溶材で伸長ビードを設けた比較例1では、伸長ビードを設けていない比較例2に比べて破断までの荷重応力がHAZ部および母材部において低下しており、却って、靱性が低下していることが分かる。これに対して、実施例では、溶金部、HAZ部および母材部のいずれの部位においても破断までの荷重応力が増大しており、靱性が向上していることが分かる。このような結果が得られたのは、実施例では伸長ビード14を設けることにより、大きな圧縮残留応力を形成することができた結果である。
上記試験は、試験温度−10℃において行ったが、−10℃においては、図7から明らかなように、通常溶材のシャルピーの衝撃吸収エネルギーが約90Jであるのに対して、LTT溶材のシャルピーの衝撃吸収エネルギーが約40Jであり、LTT溶材のシャルピーの衝撃吸収エネルギーが通常溶材の半分以下である。このため、前記したように、従来は、このような靭性の低いLTT溶材を溶接継手に用いることは不可能であるというのが当業者の常識であった。
しかしながら、LTT溶材を用いた実施例では、溶金部、HAZ部および母材部のいずれの部位においても破断までの荷重応力が増大して、靱性が向上するという驚くべき結果が得られた。このことは、本発明が、当業者の常識を打ち破る如何に革新的な発明であるかを示している。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1、2、3、4、5、6 溶接継手
11、12、21、22、24 平板
33、34、35、36、63、65 平板
13、23、38、43、44、53 突合せ溶接ビード
54、68、69 突合せ溶接ビード
14、26、39、45、55、70 伸長ビード
25、37、67 隅肉溶接ビード
27 亀裂
31、32、61、62 部材
41、42、51、52 円筒部材
64、66 梁
S サンプル
θ 角度

Claims (15)

  1. 通常溶接材料を用いて部材と部材とが溶接された既設の鋼構造物において、溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接方法。
  2. 部材と部材とを通常溶接材料を用いて溶接した後、溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接方法。
  3. 前記溶接ビードの形成を、前記部材の一面または両面で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接方法。
  4. 前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向が、90±30°の範囲内の方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の溶接方法。
  5. 前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向が、略垂直であることを特徴とする請求項4に記載の溶接方法。
  6. 前記溶接ビードを、一方から他方へ向けて一方向に形成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の溶接方法。
  7. 運棒法にウィービング法を用いて前記溶接ビードを形成することを特徴とする請求項6に記載の溶接方法。
  8. 複数の部材を溶接して鋼構造物を構成する溶接継手の製造方法であって、
    前記部材同士を通常溶接材料を用いて溶接した後、
    溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に、肉盛溶接により溶接ビードを形成することを特徴とする溶接継手の製造方法。
  9. 複数の部材が溶接されて鋼構造物を構成する溶接継手であって、
    前記部材同士が溶接された溶接箇所には通常溶接材料が使用されており、
    溶接欠陥あるいは割れが発生しやすい溶接箇所、または既に亀裂が発生している溶接箇所、もしくは将来亀裂が発生すると予測される溶接箇所の表面に、マルテンサイト変態開始点が400℃以下の低変態温度溶接材料を用いて肉盛溶接された溶接ビードが、前記溶接箇所の亀裂の成長方向に対して交差する方向に設けられていることを特徴とする溶接継手。
  10. 前記部材として第1と第2の2枚の平板を備え、前記2枚の平板が互いの端面同士が通常溶接材料で突合せ溶接されて平板状をなしていると共に、
    前記平板の面上に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手。
  11. 断面T字状で、前記部材として、第1、第2および第3の3枚の平板を備え、
    第1と第2の平板は端面で突合せ溶接されて平板状をなしており、
    第3の平板は、第1と第2の平板がなす平板の一方の面上に前記面に対して垂直で、第1と第2の平板を跨ぎ、前記突合せ溶接の溶接ビードに対して垂直方向に隅肉溶接されており、
    前記突合せ溶接の溶接ビードと前記第3の平板とを跨いで、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記隅肉溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手。
  12. 第1の平板と第2の平板とが突き合わせ溶接されている第1部材と、
    第3の平板と第4の平板とが突き合わせ溶接されている第2部材とを備え、
    前記第1の部材に対して前記第1の部材の溶接ビードに直交する方向に、前記第2の部材が垂直に隅肉溶接されており、
    前記隅肉溶接の溶接ビード上に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記第1の平板および前記第2の平板同士の突合せ溶接の溶接ビードおよび前記第3の平板および前記第4の平板同士の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手。
  13. 円筒状で、前記部材として、外径および内径が同じ第1の円筒と第2の円筒の2個の円筒を備え、
    前記2個の円筒は、側面に長手方向に沿って突合せ溶接された継ぎ目を有し、
    前記継ぎ目の溶接ビードが合致しないようにして、前記第1の円筒と前記第2の円筒が端面で突合せ溶接されており、
    前記端面における突合せ溶接の溶接ビードの外周面側に、肉盛溶接された前記溶接ビードが、前記継ぎ目の溶接の溶接ビートに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手。
  14. 円筒状で、前記部材として、外径および内径が同じ第1の円筒と第2の円筒の2個の円筒を備え、
    前記2個の円筒は、側面に長手方向に沿って突合せ溶接された継ぎ目を有し、
    前記継ぎ目の溶接ビードが合致しないようにして、前記第1の円筒と前記第2の円筒が端面で突合せ溶接されており、
    円筒の外周面側に、前記第1の円筒と前記第2の円筒の前記継ぎ目の溶接ビードとを跨いで、肉盛溶接された前記溶接ビードが前記端面の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手。
  15. 平板の一方の面上に前記面に対して垂直で、かつ前記平板の長手方向に梁が隅肉溶接された断面T字状の部材を2個備え、
    2個の部材の端面同士で突合せ溶接され、
    前記2個の部材は、前記端面で一方の部材が他方の部材に対して前記梁が設けられていない側に所定の角度で屈折しており、
    前記梁が隅肉溶接されていない面上の前記梁の真裏の部分において、肉盛溶接された前記溶接ビードが、2枚の平板の突合せ溶接の溶接ビードに対して交差する方向に前記2枚の平板を跨いで設けられていることを特徴とする請求項9に記載の溶接継手。
JP2016163123A 2016-08-23 2016-08-23 溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手 Active JP6740805B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016163123A JP6740805B2 (ja) 2016-08-23 2016-08-23 溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016163123A JP6740805B2 (ja) 2016-08-23 2016-08-23 溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018030143A JP2018030143A (ja) 2018-03-01
JP6740805B2 true JP6740805B2 (ja) 2020-08-19

Family

ID=61302871

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016163123A Active JP6740805B2 (ja) 2016-08-23 2016-08-23 溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6740805B2 (ja)

Family Cites Families (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4624402A (en) * 1983-01-18 1986-11-25 Nutech, Inc. Method for applying an overlay weld for preventing and controlling stress corrosion cracking
JPS61279392A (ja) * 1985-06-05 1986-12-10 Ishikawajima Harima Heavy Ind Co Ltd 厚肉長尺管の製造方法
JPH07278728A (ja) * 1994-04-06 1995-10-24 Nippon Steel Corp 疲労き裂伝播特性に優れた構造用鋼板
JP2002321059A (ja) * 1996-12-27 2002-11-05 Kawasaki Steel Corp 溶接方法
JP3350726B2 (ja) * 1996-12-27 2002-11-25 川崎製鉄株式会社 溶接方法および溶接材料
JP4394860B2 (ja) * 2002-04-08 2010-01-06 新日本製鐵株式会社 超低温変態溶材を用いた溶接施工方法および高疲労強度継手ならびに超低温変態溶材
JP2005111513A (ja) * 2003-10-07 2005-04-28 Toshiba Corp 残留引張応力緩和方法および溶接装置
JP4790364B2 (ja) * 2005-10-05 2011-10-12 新日本製鐵株式会社 耐脆性き裂伝播性に優れた溶接構造体
KR101197884B1 (ko) * 2009-04-29 2012-11-05 주식회사 포스코 용접 구조물
KR20120111436A (ko) * 2011-03-31 2012-10-10 주식회사 포스코 용접 구조물 및 그 제작방법
JP5881055B2 (ja) * 2011-11-09 2016-03-09 国立大学法人大阪大学 溶接方法および溶接継手
EP2839918B1 (en) * 2012-04-17 2020-11-18 Nippon Steel Corporation Fillet arc welded joint and method for forming same
JP6061809B2 (ja) * 2013-08-07 2017-01-18 株式会社神戸製鋼所 付加溶接用フラックス入りワイヤ及び溶接方法
US10092982B2 (en) * 2015-02-13 2018-10-09 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Fillet welded joint and method of production of same

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018030143A (ja) 2018-03-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7748596B2 (en) Welded structure having excellent resistance to brittle crack propagation and welding method therefor
Koçak Structural integrity of welded structures: process-property–performance (3P) relationship
JP5881055B2 (ja) 溶接方法および溶接継手
Borrego et al. Mould steels repaired by laser welding
KR101163350B1 (ko) 내취성 균열 전파성이 우수한 용접 구조체
JP5052918B2 (ja) 耐き裂発生伝播特性に優れた溶接継手、溶接構造体及び耐き裂発生伝播特性の向上方法
CN102712063B (zh) 具有抗脆性裂纹扩展性的焊接结构体
Borrego et al. Fatigue behaviour of laser repairing welded joints
JP4837428B2 (ja) 溶接止端部の超音波衝撃処理方法
JP6740805B2 (ja) 溶接方法、溶接継手の製造方法および溶接継手
Pańcikiewicz et al. Cracking of high-strength steel welded joints
JP5052976B2 (ja) 耐脆性き裂伝播特性に優れた多層盛突合せ溶接継手及び溶接構造体
JP5935395B2 (ja) 溶接組立四面箱形断面部材の角溶接用開先部
TWI771066B (zh) 離岸水下基礎用高強度鋼板銲接層裂之模擬試驗方法
Akyel et al. Fatigue strength of repaired cracks in base material of high strength steels
JP4580220B2 (ja) 継手溶接部の疲労性能向上構造及び疲労性能向上方法
Brätz et al. Load‐carrying capacity of MAG butt and fillet welded joints on high‐strength structural steels of grade S960QL and S960MC
KR101185979B1 (ko) 내취성 균열 전파성이 우수한 용접 이음부 및 용접 구조체
JP4751027B2 (ja) 溶接部脆化割れ特性に優れた高強度溶接鋼管
JP6319027B2 (ja) 溶接継手、溶接継手の製造方法
CN114813416B (zh) 一种管线钢管服役阶段环焊接头软化合于使用性评价方法
JP6380672B2 (ja) 溶接接合部およびその製造方法
Nussbaumer Course on fatigue and fracture mechanics: influence of residual stresses and post-welding improvement methods
US20070000968A1 (en) Weld structure having excellent resistance brittle crack propagation resistance and method of welding the weld structure
JP6098406B2 (ja) 溶接接合部および溶接接合方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190627

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200526

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200615

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200706

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6740805

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150