JP6098406B2 - 溶接接合部および溶接接合方法 - Google Patents

溶接接合部および溶接接合方法 Download PDF

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本発明は、溶接接合部および溶接接合方法に関し、特に、建築や土木分野における柱梁接合構造を構成する鋼構造部材の溶接接合部および溶接接合方法に関するものである。
建築鋼構造部材の地震時における変形性能を決定づける主要素としては、図13(a)に示すように、鋼管柱2−ダイアフラム4間の溶接部5aや、図13(b)に示すように、柱2−梁端フランジ3間の溶接部5bなどの柱梁における溶接接合部1が挙げられる。図13(c)に溶接接合部1の例を示す。なお、図中の符号10は裏当て金である。図13(c)に示すように、一般に、溶接接合により溶接部5(溶接部表層1aと溶接部下層1bとからなる)の周囲に形成される熱影響部(以下、HAZという。)1cにおいては強度・靭性が低下し、亀裂が脆性的に伝播し早期の部材破断(脆性破断)に至る危険性がある。また、建設現場において柱と梁フランジが溶接接合される場合には、例えば図13(a)に示すようにスカラップ7と称する切欠が設けられるが、このスカラップ7には応力が集中し易くその先端より延性亀裂が生じ易いことから、上記の脆性破断の起点となる危険性がある。言うまでもなく、これらの早期の脆性破断を防止することが部材変形性能の向上、すなわち地震時の建築物の安全性確保に繋がることになる。これらの課題に対し、特許文献1〜3では下記の対処法が提案されている。
特許文献1、2では、図14に示すように、溶接部表層1aに対して母材側に張出した溶接ビード8を設けることが提案されている。これは、強度・靭性の劣化したHAZの形状を調整し、溶接部表層のHAZに生じた延性亀裂が母材に流れるように工夫し、溶接部での早期破断を防止するよう配慮したものである。なお、特許文献2では、張出した溶接ビード8とそれ以外の部分とで溶接金属(本明細書での溶接部に相当する)やシールドガスなどを異なるものを使用することが言及されているが、その効果ならびに具体的な適用範囲が言及されているわけではない。
特許文献3では、引張強さ600N/mm級未満の鋼材による部材について、スカラップを有する柱−梁端フランジ溶接部を対象とし、溶接部初層または初層からの複数層にのみ母材より低強度で高延性の溶接材料を使用することが提案されている。これは、初層付近での応力集中を緩和し、スカラップ付近からの脆性破断の危険性を低減すると同時に、初層溶接時の予熱温度低減や溶接割れの防止等の溶接施工性の向上を期待しての処置である。
特許第3711495号公報 国際公開WO00/56498号公報 特許第3820493号公報
日本建築学会:建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2007年2月 塩飽豊明、吉田譲、崎山哲雄、福田多一郎:建築構造用高強度800N/mm2級鋼の機械的性質、日本建築学会大会学術講演梗概集 C−1 構造III、pp.613−614、2008年7月 神戸製鋼所:マグ溶接金属の強度に及ぼす入熱量とパス間温度の影響、溶接学会誌第59巻第6号、p.397、1990年9月 岡本晴仁、片山忠輝、小嶋敏文、平野攻:脆性破断を回避する溶接施工方法(NBFW溶接法)、鉄鋼技術、2003年2月 川畑友弥、有持和茂、大畑充、望月正人、豊田政男:780MPa級高張力鋼における正負交番予歪付与時の有効損傷量の検討 予歪付与後の780MPa級高張力鋼の破壊安全性に関する研究(第3報)、溶接学会論文集第22巻第4号、pp.515−523、2004年11月
上記の特許文献1、2は、溶接部表層HAZからの延性亀裂発生後の事象に対する効果を期待したものであるが、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和し、延性亀裂の発生自体を遅延させることによってさらに部材変形性能の向上が期待できる。しかしながら、特許文献1、2では溶接部表層HAZへの歪集中を緩和することに関しては言及されていない。
一方、特許文献3では、引張強さ600N/mm級未満の鋼材の溶接部についてスカラップでの応力集中を緩和することを目的としているが、昨今多用されているノンスカラップ工法や、非特許文献1で提案されているような改良スカラップ工法が適用されている場合には、溶接部初層での応力集中よりもむしろ溶接部表層HAZでの歪集中を緩和し、延性亀裂の発生を遅延させることの方が部材変形性能の向上にとってより肝要である。また、一般に母材が高強度になるほど脆性破断発生の危険性が高くなる。非特許文献2等で報告されているように、建築構造用鋼材として引張強さ780N/mm級鋼材も広く利用されつつある中、引張強さ600N/mm級以上の鋼材に対しても溶接接合部を含む部材変形性能の向上策が重要となる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、引張強さ780N/mm級以下の鋼材を用いた鋼管柱−ダイアフラム溶接部ならびに柱−梁端フランジ溶接部などの鋼構造部材からなる柱梁の溶接接合部を主対象として、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和して延性亀裂の発生を従来技術に比して遅延させることにより、鋼構造部材の変形性能向上に寄与する溶接接合部および溶接接合方法を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る溶接接合部は、引張強さの規格値が780N/mm級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)であって、前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度の80%以上95%以下になるように溶接施工されており、且つ、溶接部断面の平均強度が構造設計で必要となる強度以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る他の溶接接合部は、上述した発明において、前記溶接部(5)全層が同一の溶接材料を用いて溶接施工され、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度を、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度に比して高く設定して溶接施工されていることを特徴とする。
また、本発明に係る他の溶接接合部は、上述した発明において、前記溶接部(5)全層が同一の溶接材料を用いたガスシールドアーク溶接により溶接施工され、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際のシールドガスには100%COガスを用い、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際のシールドガスにはAr−CO混合ガスを用いたものであることを特徴とする。
また、本発明に係る他の溶接接合部は、上述した発明において、前記溶接部表層(1a)は、前記溶接部下層(1b)において使用する溶接材料よりも低強度の溶接材料を用いて溶接施工されていることを特徴とする。
また、本発明に係る溶接接合方法は、引張強さの規格値が780N/mm級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)を形成する溶接接合方法であって、前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度に対して80%以上95%以下となるように溶接施工することを特徴とする。
また、本発明に係る他の溶接接合方法は、上述した発明において、前記溶接部(5)全層を同一の溶接材料を用いて溶接施工するものであり、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度を、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度に比して高く設定して溶接施工することを特徴とする。
また、本発明に係る他の溶接接合方法は、上述した発明において、前記溶接部(5)全層を同一の溶接材料を用いたガスシールドアーク溶接により溶接施工するものであり、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際のシールドガスには100%COガスを用い、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際のシールドガスにはAr−CO混合ガスを用いることを特徴とする。
また、本発明に係る他の溶接接合方法は、上述した発明において、前記溶接部表層(1a)を、前記溶接部下層(1b)において使用する溶接材料よりも低強度の溶接材料を用いて溶接施工することを特徴とする。
本発明に係る溶接接合部によれば、引張強さの規格値が780N/mm級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)であって、前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度に比して低くなるように溶接施工されることで、鋼構造部材の溶接接合部において、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和し、延性亀裂の発生を遅延することにより、部材変形性能の向上が期待でき、特に鋼構造部材からなる建築鋼構造物の地震時の安全性確保に極めて有用であるという効果を奏する。
図1は、本発明に係る溶接接合部および溶接接合方法の例を示す図である。 図2は、シールドガスの種類による溶接部強度の違いの一例を示す図である。 図3は、本発明と従来のNBFW法を組み合わせた一例を示す図である。 図4は、本発明の効果を検証するために実施した継手要素試験の載荷装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。 図5は、本発明の効果を検証するために実施した継手要素試験における歪ゲージ貼付位置を示す図であり、(a)は試験体No.1の図、(b)は試験体No.2の図である。 図6は、本発明の効果を検証するために実施した継手要素試験の結果を示す図であり、溶接部表層HAZでの歪と載荷サイクル数との関係を示す図であり、(1)は歪ゲージε1による歪計測値、(2)は歪ゲージε2による歪計測値である。 図7は、本発明の効果を検証するために実施した継手要素試験の結果を示す図であり、最大耐力と載荷サイクル数との関係を示す図である。 図8は、本発明の効果を検証するために実施したFEM解析における解析モデルの概要を説明するための図である。 図9は、本発明の効果を検証するために実施したFEM解析における各部位での応力−歪曲線を示した図である。 図10は、本発明の効果を検証するために実施したFEM解析における溶接接合部を説明するための図であり、(a)は解析ケース2(本発明に相当)、(b)は解析ケース1および解析ケース3である。 図11は、本発明の効果を検証するために実施したFEM解析の結果を示す図であり、相当塑性歪の大小を比較した図である。 図12は、本発明の効果を検証するために実施したFEM解析の結果を示す図である。 図13は、従来の溶接接合部を説明するための図であり、(a)は鋼管柱−ダイアフラム間の溶接部を示す図、(b)は柱−梁端フランジ間の溶接部を示す図、(c)は(a)、(b)の溶接接合部1の概略拡大図である。 図14は、従来の溶接接合部を説明するための図である。
以下に、本発明に係る溶接接合部および溶接接合方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
本発明に係る溶接接合部および溶接接合方法は、図1(a)に示すように、引張強さ780N/mm級以下の鋼材を用いた鋼管柱2−ダイアフラム4間の溶接部5aや、図1(b)に示すように、柱2−梁端フランジ3間の溶接部5bなどの鋼構造部材からなる柱梁の溶接接合部1を主対象とし、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和して延性亀裂の発生を上記の従来技術に比して遅延させることにより、鋼構造部材の変形性能の向上を図るものである。
図1(c)に溶接接合部1の例を示す。図1(c)に示すように、本発明による溶接接合部1は溶接部5を備え、この溶接部5の表層もしくは最終層1a(以下、溶接部表層と総称する。)の強度が、それ以外の溶接部下層1bの強度の80%以上95%以下となるように施工されることを特徴としている。こうすることで、溶接部表層1aのHAZでの歪集中を緩和して延性亀裂の発生を遅延させることができ、鋼構造部材の変形性能の向上が図られる。以下に、溶接部表層1aと溶接部下層1bとで溶接部の強度差を与えるための接合方法の例を実施形態として説明する。
[実施形態1]
本実施形態1に係る溶接接合部1は、溶接接合部1の溶接部5全層が同一の溶接材料を用いて溶接施工されるものである。ここで、溶接部表層1aを溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度は、溶接部下層1bを溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度に比して高く設定するようにする。
例えば非特許文献3ではソリッドワイヤYGW11による溶接金属部(本明細書での溶接部に相当する)の強度(引張試験で得られる応力)と入熱およびパス間温度の関係が示されている。したがって、こうした関係を考慮すれば、溶接部表層1aと溶接部下層1bとで同一の溶接材料を用いた場合でも、溶接施工時の入熱およびパス間温度を変化させることで、溶接部の強度差を設けることが可能であることがわかる。
[実施形態2]
本実施形態2に係る溶接接合部1は、溶接接合部1の溶接部5全層が同一の溶接材料を用いたガスシールドアーク溶接により溶接施工されるものである。ここで、溶接部表層1aを溶接施工する際のシールドガスには100%COガスを用い、溶接部下層1bを溶接施工する際のシールドガスにはAr−CO混合ガスを用いるようにする。
図2は、同一のソリッドワイヤに対してシールドガスをCOガス100%とした場合と、Arガス80%−COガス20%の混合ガスとした場合での溶接部5の強度(引張試験で得られる応力)の違いを示したものである。なお、ソリッドワイヤは、780N/mm級のものを使用している。したがって、こうした関係を考慮すれば、溶接部表層1aと溶接部下層1bとで同一の溶接材料を用いた場合でも、溶接施工時のシールドガスの構成を変化させることで、溶接部の強度差を設けることが可能であることがわかる。
[実施形態3]
本実施形態3に係る溶接接合部1は、溶接部5の溶接部表層1aが、溶接部5の溶接部下層1bにおいて使用する溶接材料よりも低強度の溶接材料を用いて溶接施工されるものである。このように、使用する溶接材料の強度クラスを溶接部表層1aと溶接部下層1bとで異なるようにすることによって、溶接部に強度差を与えることができる。
したがって、上記の実施形態1〜3によれば、引張強さ780N/mm級以下の鋼材を用いた鋼管柱−ダイアフラム溶接部ならびに柱−梁端フランジ溶接部などの鋼構造部材からなる柱梁の溶接接合部において、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和して延性亀裂の発生を従来技術に比して遅延させることにより、鋼構造部材の変形性能の向上が期待でき、地震時の建築鋼構造物の安全性確保に極めて有用である。
また、特許文献2および非特許文献4で提示されている溶接法(以下、NBFW法という。ただし「NBFW」は登録商標である。)に対して本発明を適用することもできる。この場合、例えば図3に示すように、溶接部表層1aで母材9側に張出した溶接ビード8を設けるようにし、かつ、溶接部表層1aの強度が溶接部下層1bの強度の80%以上95%以下となるように施工することが考えられ、このようにしても、上記の実施形態1〜3と同様の作用効果を奏することができる。
なお、溶接部全層にわたって低強度の溶接とせず、溶接部表層の強度下限を決めているのは、一般的には母材に比して延性に劣る溶接部での破断を防止するためであり、仮に溶接部表層に微細な亀裂が生じた場合でも下層に進展しないよう考慮したものである。また、溶接部での破断を防止するために、溶接部断面の平均強度が構造設計で必要となる強度以上とすることとした。さらに、溶接部表層の強度下限を80%としたのは、溶接部下層と表層において急激な強度差を設けることで、その境界において歪が集中して早期にき裂が発生することを避けることと、なるべく溶接部断面の平均強度が接合される母材強度を上回る方が構造設計では経済的であるので、これを達成しやすくすることを意図したものである。
ところで、本発明で期待する効果は、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和し、延性亀裂の発生を緩和することにある。建築鋼構造部材で地震時に想定される曲げ変形に対して部材表層に生ずる延性亀裂については、相当塑性歪によりその発生限界が決定付けられることが非特許文献5で実証されていることから、以下では、溶接部表層HAZでの歪集中に着目し、本発明の効果を検証するために実施した溶接継手要素による繰返し曲げ試験、および、鋼管柱−ダイアフラム溶接部の曲げ試験を模擬したFEM解析の概要について説明する。なお、繰返し曲げ試験、FEM解析のいずれも上記のNBFW法を適用している。
(実施例)
本発明の効果を示す為に、本発明例と比較例とを比較した結果を、実施例として示す。まず、本発明の効果を検証するために実施した溶接継手要素による繰返し曲げ試験について説明する。
母材(供試鋼)には引張強さ780N/mm級の鋼材を使用した。試験体No.1は、全層とも780N/mm級ソリッドワイヤにて入熱、パス間温度、シールドガスをほぼ一定の条件下で施工したものであり、比較例に当たる。一方、試験体No.2は、溶接部表層の強度が溶接部下層の強度に比して80%以上95%以下となるように、溶接部表層に低強度の溶接ワイヤを使用して施工したものであり、本発明の実施形態3に当たる。試験体は板厚25mmの突合せ溶接継手であり、開先角度は45°、ルートギャップは8mmとした。表1に、試験体を作成するのに用いた溶接条件を示す。
試験体を作成後、図4に示す載荷装置を用い、両端の支持点は単純支持として試験体中央を油圧ジャッキによって繰り返し載荷する、繰返し曲げ試験を行った。
繰返し試験とは別に、同様に作成した試験体を使って、JIS Z 3111に従い、溶接部の機械的性質、具体的には、降伏強度YS(MPa)、引っ張り強度TS(MPa)および破断伸びEL(%)を調べた。表2に、試験体No.1の溶接部、試験体No.2の溶接部下層および試験体No.2の溶接部表層それぞれの機械的性質を示す。
繰返し曲げ試験に用いた載荷装置には、図4に示すような装置を用い、4点曲げの正負交番の繰返し載荷とし、載荷振幅は試験体中央に生じる曲げモーメントが母材の全塑性モーメントに達するときの載荷点変位dpを基準として、1dp、2dp、3dp、4dpで2サイクルずつ載荷を繰り返した後、5dpで耐力が大幅に低下して終局を迎えるまで載荷を繰り返した。また、各試験体に対して歪ゲージを図5に示すような位置に貼付した。歪ゲージは、溶接部中心を起点とし、27mm離れた位置にε1を、41mmはなれた位置にε2を左右対称となるように貼り付けた。
図6に、試験体の溶接部表層のHAZ付近に貼付した歪ゲージによる歪計測値と載荷サイクル数との関係を、図7に、最大耐力と載荷サイクル数との関係を示す。図6の縦軸の歪計測値は歪ゲージε1、ε2による歪計測値をそれぞれ母材の降伏歪εyで無次元化した値で示している。一方、図7は各サイクルでの最大耐力−載荷サイクル数関係をプロットしたものであり、縦軸は各サイクルでの最大耐力(載荷荷重)を全サイクルでの最大耐力で基準化している。
図6および図7に示されるように、本発明に相当する試験体No.2の方が発生した歪の値が小さく、最大耐力の低下量も少ないことが確認され、本発明による部材変形性能の向上効果が発揮されていることがわかる。
次に、本発明の効果を検証するために実施した、鋼管柱−ダイアフラム溶接部の曲げ試験を模擬したFEM解析について説明する。
表3に、FEM解析の解析ケース一覧を示す。
図8に、鋼管柱−ダイアフラム溶接部の曲げ試験を模擬したFEM解析における解析モデル概要を示す。鋼管柱およびダイアフラム(母材)は780N/mm級鋼を想定しており、断面サイズは□500mm×25mm、全長は3000mmとし、部材端部(図中では右端)を単純支持とした3点曲げ試験をモデル化したものである。図9に、解析に用いた各部の応力−歪曲線を示す。
ここで、解析ケース1の溶接部表層1aおよび溶接部下層1bは、図9の点線で示される母材の曲線と同じ曲線となる。解析ケース2の溶接部下層1b、解析ケース3の溶接部表層1aおよび溶接部下層1bは、図9の実線で示される溶接部下層1bの曲線と同じ曲線となる。図9の一点鎖線で示される溶接部表層1aの曲線は解析ケース2の溶接部表層1aの曲線である。なお、HAZは全ての解析ケースで共通となる。
また、図10に、解析ケース1〜3の溶接部の模式図を示す。ここで、解析ケース2は本発明による溶接部を模擬したものである。図10(a)に示すように、溶接部下層1bの強度に対して溶接部表層1aの強度がちょうど90%(つまり、表層1aの強度=下層1bの強度×0.9)となるように設定している。斜線でハッチングしてある箇所が、溶接部下層1bとは強度が低い箇所を示している。
他方、解析ケース1と3が、比較例となる溶接接合部を模擬している。図10(b)に示すように、解析ケース1は溶接部表層1aと溶接部下層1bとで強度差を設けず、かつ、材料特性が表層1aと下層1b共に母材と同じとした場合である。また、解析ケース3は解析ケース1と同様に溶接部表層1aと溶接部下層1bとで強度差を設けず、かつ、母材よりも溶接部5(表層1aと下層1b)の強度を高く設定した場合である。なお、解析ケース3の溶接部下層1bは解析ケース2の溶接部下層1bと強度が同じである。
図11に解析結果を示す。この図では、解析対象の部材が曲げ変形し、柱部材端(柱−ダイアフラム境界)がちょうど全塑性モーメントに達した時点における表層HAZ(最大歪発生点)に生じた相当塑性歪を比較している。ただし、図11の縦軸は解析ケース1による結果で無次元化してある。本解析結果によれば、本発明に相当する解析ケース2の最大の相当塑性歪が他の解析ケース1、3のものよりも小さいことが確認され、本発明による部材変形性能の向上効果が発揮されていることがわかる。
さらに、溶接部表層と溶接部下層の強度比が、表層HAZでの歪集中に及ぼす影響を検証するために、溶接部下層の強度は前記解析ケース2と同じとして、溶接部表層の強度をパラメータとして、前記と同様の解析を実施した。その結果を図12に示す。図12の縦軸は図11と同様であり、横軸は溶接部表層と溶接部下層の強度比とした。図12より、表層HAZでの歪集中に有意差が生じるのは強度比がおおよそ95%以下となる。
以上説明したように、本発明に係る溶接接合部によれば、引張強さの規格値が780N/mm級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)であって、前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度に比して低くなるように溶接施工されることで、鋼構造部材の溶接接合部において、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和し、延性亀裂の発生を遅延することにより、部材変形性能の向上が期待でき、特に鋼構造部材からなる建築鋼構造物の地震時の安全性確保に極めて有用であるという効果を奏する。
以上のように、本発明に係る溶接接合部および溶接接合方法は、建築や土木分野における柱梁接合構造を構成する鋼構造部材の溶接接合部および溶接接合方法に有用であり、特に、引張強さ780N/mm級以下の鋼材を用いた鋼管柱−ダイアフラム溶接部ならびに柱−梁端フランジ溶接部などの鋼構造部材からなる柱梁の溶接接合部を主対象として、溶接部表層HAZでの歪集中を緩和して延性亀裂の発生を従来技術に比して遅延させることにより、鋼構造部材の変形性能向上に寄与するのに適している。
1 溶接接合部
1a 溶接部表層
1b 溶接部下層
1c 熱影響部(HAZ)
2 柱および鋼管柱
3 梁フランジ
4 ダイアフラム
5 溶接部
5a 鋼管柱−ダイアフラム溶接部
5b 柱−梁端フランジ溶接部
7 スカラップ
8 母材側に張出した溶接ビード
9 母材
10 裏当て金

Claims (6)

  1. 引張強さの規格値が780N/mm 級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)であって、
    前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、
    前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度の80%以上95%以下になるように溶接施工されており、且つ、溶接部断面の平均強度が構造設計で必要となる強度以上であり、
    前記溶接部(5)全層が同一の溶接材料を用いて溶接施工され、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度を、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度に比して高く設定して溶接施工されていることを特徴とする溶接接合部。
  2. 引張強さの規格値が780N/mm 級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)であって、
    前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、
    前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度の80%以上95%以下になるように溶接施工されており、且つ、溶接部断面の平均強度が構造設計で必要となる強度以上であり、
    前記溶接部(5)全層が同一の溶接材料を用いたガスシールドアーク溶接により溶接施工され、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際のシールドガスには100%COガスを用い、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際のシールドガスにはAr−CO混合ガスを用いたものであることを特徴とする溶接接合部。
  3. 引張強さの規格値が780N/mm 級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)であって、
    前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、
    前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度の80%以上95%以下になるように溶接施工されており、且つ、溶接部断面の平均強度が構造設計で必要となる強度以上であり、
    前記溶接部表層(1a)は、前記溶接部下層(1b)において使用する溶接材料よりも低強度の溶接材料を用いて溶接施工されていることを特徴とする溶接接合部。
  4. 引張強さの規格値が780N/mm 級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)を形成する溶接接合方法であって、
    前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、
    前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度に対して80%以上95%以下となるように溶接施工するとともに、
    前記溶接部(5)全層を同一の溶接材料を用いて溶接施工するものであり、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度を、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際の平均入熱およびパス間温度に比して高く設定して溶接施工することを特徴とする溶接接合方法。
  5. 引張強さの規格値が780N/mm 級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)を形成する溶接接合方法であって、
    前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、
    前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度に対して80%以上95%以下となるように溶接施工するとともに、
    前記溶接部(5)全層を同一の溶接材料を用いたガスシールドアーク溶接により溶接施工するものであり、前記溶接部表層(1a)を溶接施工する際のシールドガスには100%COガスを用い、前記溶接部下層(1b)を溶接施工する際のシールドガスにはAr−CO混合ガスを用いることを特徴とする溶接接合方法。
  6. 引張強さの規格値が780N/mm 級以下の鋼材からなる鋼構造部材の溶接接合部(1)を形成する溶接接合方法であって、
    前記溶接接合部(1)は溶接部(5)を備え、
    前記溶接部(5)の表層である溶接部表層(1a)の強度が、前記溶接部表層(1a)以外の溶接部下層(1b)の強度に対して80%以上95%以下となるように溶接施工するとともに、
    前記溶接部表層(1a)を、前記溶接部下層(1b)において使用する溶接材料よりも低強度の溶接材料を用いて溶接施工することを特徴とする溶接接合方法。
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