JP2012202947A - 破壊靭性試験片 - Google Patents

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Abstract

【課題】ナゲット部の破壊靭性値の測定に供する破壊靱性試験片を提供する。
【解決手段】ナゲット部の径方向中心を原点として互いに直交するX軸およびY軸を定めて、ナゲット部の径方向に沿って幅W、およびXY面に平行かつナゲット部の径方向に直交する方向に沿って厚みTを有する直方体として、十字形引張疲労試験片から厚みTの中心を通り幅Wに沿って伸びる中心線とY軸とから求まるY切片の大きさがND/4以下の下に切り出した破壊靭性試験片であって、厚みTに対する幅Wは1以上4以下、幅W[mm]に対する破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂の長さa[mm]は0.35以上0.75以下、および、ナゲット部の直径ND[mm]に対する厚みT[mm]は0.1以上1.0未満とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、破壊靭性試験片、特に、スポット溶接された鋼板の溶接継手におけるナゲット部の破壊靭性値の測定に供する、破壊靭性試験片に関するものである。
近年、地球温暖化を防止する措置として、自動車のCO排出ガスを抑制する動きが高まっている。併せて、石油資源の枯渇が危惧されていることから、自動車の燃費向上が求められている。両者の問題を解決するためには、車体重量の軽量化が必須であるため、自動車の主要部材には、590MPa以上の引張強度を有する高強度薄鋼板を使用する頻度が増えている。
一方、自動車構造における溶接の大半はスポット溶接である。上記のような高強度薄鋼板においては、引張強度を向上させるために、C、Si、Mn等の元素の添加量を増加させている。しかし、このような元素の添加量を増加させると、例えば、JIS Z3137に規定される静的な十字引張力(Cross Tension Strength:以下、「CTS」と示す)が低下することが知られている。これは、上記元素の添加量を増加させると、溶接継手のナゲット領域(以下、「ナゲット部」と称する)が硬化し、その破壊靱性値が低下するためと考えられる。このナゲット部の破壊靭性値の低下により界面破断が発生しやすくなり、CTSが低下するのである。このため、ナゲット部の破壊靱性値を定量化する試験方法の確立や、この試験に供するナゲット部の破壊靱性試験片の製造方法の確立が希求されている。
これまで、スポット溶接継手の破壊靭性値については、様々な研究が報告されている。例えば、非特許文献1および2において、疲労強度は、鋼板強度、板厚、ナゲット径および溶接継手の形式に依存せず、混合モードを考慮した折線方向応力最大説を前提としたパラメータ:ΔKθmaxによりほぼ整理される、と結論づけられている。
しかし、非特許文献2に記載されているように、き裂は、必ずしもナゲット部ではなく、溶接継手の熱影響領域(以下、「HAZ部」と示す)や母材に進展している場合が多く、ナゲット部の破壊靭性値の測定に最適な、ナゲット部をほぼ直進するき裂のΔKθmaxについては明らかではない。また、ΔKθmaxは有限要素法(Finite Element Method:以下、「FEM」と示す)に基づく解析により得られる値であり、その計算には膨大な時間とコストがかかる。
一方、特許文献1には、母材の引張強度、試験片幅、板厚、ナゲット径等により破断強度パラメータを求め、有限要素解析(以下、「FEM解析」と示す)により、破断強度パラメータをクライテリオンとして、CTSを予測する方法について記載されている。
しかし、破断強度パラメータは、各種要因(母材の引張強度、試験片幅、板厚、ナゲット径等)のフィッティングにより求めたものであり、多分に経験的なパラメータであると言え、ナゲット部そのものの破壊限界値を求める手法とは言い難い。また、FEM解析には膨大なる時間とコストがかかる。
同様に、特許文献2には、母材引張強度、板厚、全伸び、試験片幅、ナゲット径などから求めた破壊ひずみパラメータをクライテリオンとして、FEM解析によりCTSを予測する方法について記載されている。
しかし、破壊ひずみパラメータを求めるには、経験的に求めた種々の補正係数が必要であり、特許文献1に記載された技術と同様に、ナゲット部そのものの破壊限界値を求める手法とは言い難い。また、FEM解析には膨大なる時間とコストがかかる。
その他、非特許文献3〜5に記載されているように、混合モードの応力拡大係数範囲やJ積分範囲を指標として疲労強度を予測する技術があるが、これらのパラメータは、溶接継手の疲労強度を求める指標であり、非特許文献1および2に記載された方法と同様に、その指標がナゲット部そのものの破壊限界値を示しているとは言い難い。さらに、FEM解析には膨大なる時間とコストがかかる。
上述したように、ナゲット部の破壊靱性値を求めることができれば、自動車の構造安全性を評価でき、多大なる利点があるにも拘わらず、上記の通り、現在までに、ナゲット部の破壊靱性値を直接的に求める方法は存在していないのが実状である。それ以前に、ナゲット部の破壊靱性値を定量的に測定するための破壊靱性試験片についても、その詳細な製造方法は確立されていない。
特許第4150383号公報 特開2007−304005号公報
スポット溶接継手疲労強度データ集、(社)自動車技術会 結城良治 他、「スポット溶接継手の疲労強度の破壊力学的解析・評価」、日本機械学会論文集(A編)、51巻、467号、pp.1772−1779、1985 S.Zhang,"Stress intensities at spot welds", International Journal of Fracture, 88,pp.167−185,1997 M.H.Swellam et al.,"A fatigue design parameter for spot welds",Fatigue & Fracture of Engineering Materials & Structures,Vol.17,No.10,pp.1197−1204,1994 P.C.Wang and K.W.Ewing,"A J−integral approach to fatigue resistance of a tensile−shear spot weld", SAE Technical Paper Series 880373,1988
本発明の目的は、ナゲット部の破壊靭性値の測定に供する破壊靭性試験片を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討を行った結果、ナゲット部の破壊靭性値を適切に測定するためには、ナゲット部内を直進する疲労予き裂が導入された、例えば十字型引張疲労試験片から切り出して作製された破壊靱性試験片につき、その寸法や、破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂の長さ、およびナゲット部の直径が、所定の要件を満足する必要があることを見出し、本発明を完成させるに到った。
即ち、複数枚の鋼板を板厚方向に重ね合わせて鋼板相互をスポット溶接して鋼板厚み方向へ回転体状に連なる溶接継手を形成し、前記鋼板の板厚方向に引張荷重を繰り返し負荷して前記溶接継手のナゲット部に前記鋼板の積層界面から前記ナゲット部の径方向中心に向かって径方向長さaの1/10以上が前記ナゲット部に含まれる疲労予き裂領域を導入した十字形引張疲労試験片において、前記ナゲット部の径方向中心を原点として互いに直交するX軸およびY軸を定めて、前記ナゲット部の径方向に沿って幅W、およびXY面に平行かつ前記ナゲット部の径方向に直交する方向に沿って厚みTを有する直方体として、前記十字形引張疲労試験片から前記厚みTの中心を通り前記幅Wに沿って伸びる中心線と前記Y軸とから求まるY切片の大きさがND/4以下の下に切り出した破壊靭性試験片であって、前記厚みTに対する前記幅Wは1以上4以下、前記幅W[mm]に対する前記破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂の長さa[mm]は0.35以上0.75以下、および、前記ナゲット部の直径ND[mm]に対する前記厚みT[mm]は0.1以上1.0未満であることを特徴とするものである。
また、本発明の破壊靭性試験片において、前記間隔Wに対する前記破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂の長さaは0.40以上0.60以下であり、前記厚みTに対する前記幅Wは2以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、ナゲット部の破壊靭性値の測定に供する破壊靭性試験片を得ることができる。
(a)十字形引張疲労試験片の模式図、および(b)疲労予き裂導入後の溶接継手のナゲット部の断面観察結果である。 溶接継手から疲労予き裂領域を跨いで破壊靱性試験片を切り出す方法を示す図である。 破壊靱性試験片の一例を示す図である。 疲労予き裂がナゲット部の長軸に対して斜行する様子を示す図である。 ナゲット部および母材に対する溶接割れ感受性組成と破壊靱性値との関係を示す図である。 ナゲット部に対する溶接割れ感受性組成と破壊靱性値との関係を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
まず、ナゲット部に疲労予き裂が導入された、複数枚の鋼板をスポット溶接したスポット溶接継手を用意する。このスポット溶接継手は、破壊靱性値の測定に好適な、ナゲット部を直進する疲労予き裂が導入されていれば特に限定されない。例えば、図1(a)に示すような十字型引張疲労試験片のナゲット部において、図1(b)の断面観察結果に示すような、ナゲット部の長軸方向に直進する疲労予き裂が導入されたものとすることができる。
本発明においては、溶接継手に導入された疲労予き裂がナゲット部に進展していることを担保するために、溶接継手に導入された疲労予き裂長さaに対するナゲット部に含まれる疲労予き裂の長さaは0.1以上とする。
上記要件を満足する疲労予き裂は、例えば以下の方法により導入することができる。即ち、まず、複数枚の鋼板を板厚方向に重ね合わせて鋼板相互をスポット溶接する。
次いで、該スポット溶接継手の板厚方向に引張荷重を繰り返し負荷してナゲット部に疲労予き裂を導入する。その際、引張荷重は、開口モードの応力拡大係数の最大値KImax:15[MPa・m1/2]以下において、下記の式(1)に従うPmax[N]を上限として行う。
ただし、
ここで、ND:ナゲット直径(以下、「ナゲット直径」と示す)[mm]、t:鋼板の厚み[mm]、H:0.05〜0.15の任意の定数である。
上記のスポット溶接継手の板厚方向に引張荷重を繰り返し負荷する方法は、応力拡大係数の最大値Kmax、引張荷重の最大値Pmax、板厚t、およびナゲット直径NDが、上記した式(1)の関係を満足するのであれば、特に限定されない。例えば、JIS Z 3138に準拠した十字形引張疲労試験により行うことができる。
スポット溶接継手に導入される疲労予き裂の径方向の長さ:a[mm]は、任意に設定することができ、以下の式(3)から求まる疲労予き裂を導入する回数:Nだけ繰り返すことにより導入することができる。
ここで、H:0.05〜0.15の任意の定数であり、また、Cおよびmは材料定数であり、それぞれ5×10−14〜1×10−11、0.67〜4.21の範囲の値をとることが明らかになっている。即ち、Cおよびmの値が上記範囲にない場合には、鋼でないことを意味する。
なお、疲労予き裂の径方向長さaは、ナゲット部だけでなく、HAZ部を進展する予き裂の長さも含むことに注意する。
また、疲労予き裂導入回数が極端に増加すると、単位時間当たりの人的あるいは実験コストの増加が顕著となるため、Nの上限は1000万回とする。
Imaxの値は、上述の通り、15[MPa・m1/2]以下とする。後述の式(4)の条件をより確実に満足するKImaxの値として、2[MPa・m1/2]以上10[MPa・m1/2]以下とすることが好ましい。
溶接された鋼板の引張強度は590[MPa]以上であることが好ましい。これは、590[MPa]未満の引張強度を有する鋼板は、従来使用されているように、CTSの低下は深刻ではなく、本発明は590[MPa]以上の引張強度を有する鋼板にとりわけ有効である。また、引張強度の上限は特に限定されないが、実用的に使用可能な2000[MPa]以下で十分である。
また、スポット溶接継手に供する鋼板の枚数は2枚以上とする。上限は特に限定されないが、溶接可能な枚数である5枚以下が好ましい。
なお、疲労予き裂を閉口させないために、応力比(荷重比)(=Pmax/Pmin)に関しては、0以上とすることが好ましい。ここで、Pminは、スポット溶接された継手に負荷される引張荷重の最小値である。また、応力比(荷重比)の上限は特に問わないが、1未満であることが好ましい。
こうして、ナゲット部の破壊靭性値の測定に供するに好適の、径方向長さaを有する疲労予き裂をスポット溶接継手に導入することができる。
次いで、ナゲット部に疲労予き裂が導入された、スポット溶接された複数枚の鋼板から、破壊靱性試験片を切り出す。そのために、図2に示すように、スポット溶接された鋼板、例えば十字形引張疲労試験片のナゲット部を板厚方向から見て、ナゲット部の中心を原点Oとし、互いに直交するX軸およびY軸を設定してXY座標を規定する(Z軸方向は板厚方向)。ここで、ナゲット部は、Z軸方向から見て、回転体状であり、形状は円形である。そのため、X軸およびY軸は、互いに直交している限り、任意の向きに設定することができる。
本発明においては、破壊靭性試験片として、ナゲット部の径方向に沿って幅:W[mm]、XY面に平行かつ前記径方向に直交する方向に沿って厚み:T[mm]、板厚方向に長さ:L[mm]を有する直方体として切り出す。W、Tの値に関しては、後述の式(4)の条件を満足することが必要である。Lの値に関しては、特に制約は設けないが、図3に示すような引張型の破壊靱性試験を作製する場合には、引張治具に装着できるようなつかみ部を設けることのできる長さとすることが好ましい。
上記のようにXY座標が規定された鋼板の溶接継手から破壊靭性試験片を切り出す際には、以下の4つの要件を満足するように行うことが肝要である。即ち、
(要件1)破壊靱性試験片の中心線とY軸との交点から求まるY切片の大きさが、ナゲット直径NDに対して1/4以下であること。
(要件2)ナゲット直径NDに対する破壊靭性試験片の厚みTは、0.1以上1.0未満であること。
(要件3)幅Wに対する破壊靭性試験片中の予き裂長さ:a[mm]は、0.35以上0.75以下であること。および、
(要件4)厚みTに対する幅Wは、1以上4以下であること。
以下、上記各要件について説明する。
(要件1について)
まず、要件1は、例えば十字形引張疲労試験片から破壊靱性試験片を採取する向きを規定するものである。本発明においては、破壊靭性試験片の切り出しは、破壊靭性試験片の厚みTの中心を通り幅Wに沿って伸びる中心線とY軸とから求まるY切片の大きさがND/4以下の下に行う。ここで、「中心線」は、十字形引張疲労試験片から厚みTの中心を通り幅Wに沿って伸びる線を意味する。中心線とY軸とから求まるY切片の大きさがND/4以下とする理由は、Y切片がND/4を超えると、試験片表裏面(図2の破壊靭性試験片において、幅W方向に平行かつ厚みT方向に垂直な2つの面)をそれぞれ横切る疲労予き裂の幅方向の長さが著しく異なり、a(破壊靱性試験片の表裏面をそれぞれ横切る疲労予き裂の幅W方向の長さを平均した値とする)の値に信頼性が欠け、破壊靭性値が得られなくなるためである。
(要件2について)
また、要件2は、ナゲット直径NDに対する破壊靭性試験片の厚みTを規定するものであり、0.1以上1.0以下となるようにする。これは、0.1未満の場合には、ナゲット部の局所的な破壊靱性値を求めてしまい、信頼性に欠けるためである。また、1.0を超える場合には、厚みTの大きさがナゲット直径NDの大きさを超えることを意味しており、図2において、厚み方向全体に亘って疲労予き裂を含む破壊靱性試験片を切り出すことができず、破壊靱性試験片自体が加工できないためである。
(要件3について)
要件3は、破壊靭性試験片の幅Wに対する破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂長さaを規定するものである。これは、a/Wが0.35未満の場合あるいは0.75を超える場合には、後述の式(4)の条件を満足しなくなるためである。なお、a/Wが0.35未満の場合にはき裂先端で平面ひずみ状態を満足せずに、破壊靱性値が得られない。一方で、a/Wが0.75を超えると、き裂先端が大規模降伏状態となり、小規模降伏状態が前提の破壊靱性値を求めることができない。好ましくは、0.40以上0.60以下である。
(要件4について)
要件4は、破壊靭性試験片の厚みTに対する幅Wを規定するものであり、1以上4以下とする。これは、1未満の場合には、後述の式(4)に示す、平面ひずみ条件を満足せずに、破壊靱性値が求めることができないためである。一方、4を超える場合には、試験片の厚みTに対して幅Wが過度に大きくなることを意味している。例えばT=NDとした場合に、W/Tが4を超えると、図2からも明らかなようにW>4NDとなり、疲労予き裂が小型破壊靱性試験片に2つ含まれることになり、破壊靱性値を求めることができない。好ましくは、1以上2以下である。
以上の要件1〜4を満足するように破壊靭性試験片を切り出す方法は、特に限定されない。好ましくは放電加工により行う。
なお、破壊靱性試験片に残存する疲労予き裂長さa、破壊靭性試験片の厚さ:Tおよび幅:Wは、破壊力学的に、それぞれ以下の式を満足することが必要である。
ここで、HV,HVおよびσyMは、それぞれナゲット部のビッカース硬さ、母材である鋼板のビッカース硬さ、および母材である鋼板の降伏応力である。発明者らは、鋭意検討した結果、本発明による破壊靭性試験片は、上記式(4)の条件を満足することを確認している。
また、疲労予き裂は、図1(b)に示すように、ナゲット部の長軸方向に直線的に進展していることが好ましいが、疲労予き裂を導入する際の条件によっては、図4に示すように、疲労予き裂の先端が、ナゲット部内を長軸方向に対して斜行する角度(以下、「斜行角度」と示す):γにて進展する場合がある。発明者らは、鋭意検討した結果、この斜行角度γが45°以下であり、斜行する疲労予き裂の長軸方向へ投影した長さ(以下、「斜行投影長さ」と示す):βが、破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂長さaの50%以下であれば、破壊靱性値の測定に悪影響を与えないことを確認している。
上述のようにして得られた破壊靭性試験片に対して、更に、図3に例示するような破壊靭性試験に適した形状に加工することもできる。その際、加工後の破壊靭性試験片の幅Wや破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂長さaが、上記4つの要件を満足するようにする。
なお、上述した本発明の要件を満足するものであれば、3点曲げや4点曲げなどの各種曲げ試験片、あるいはCT(コンパクトテンション)試験片などを採用することもできる。
こうして、ナゲット部の破壊靱性値の測定に供する壊靭性試験片を得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1に示す、種々の引張強度:TSおよび板厚:tを有する高強度薄鋼板を用いて、ナゲット直径を2t1/2〜7t1/2の間で変化させて、図3(a)に示すような、2枚重ねのJIS Z 3138に準拠する十字引張疲労試験片を作製し、室温、大気中にて、溶接継手のナゲット部に疲労予き裂を導入した。
まず、疲労予き裂を導入するためのKImaxを設定し、式(1)から、十字引張疲労試験片に負荷する引張荷重の最大値:Pmaxを求めた。
次いで、疲労予き裂の長さ:aを設定し、表1に示した材料定数Cおよびmを用いて、上記式(3)から疲労予き裂の導入回数:Nを求めた。
その後、Pmaxを十字引張疲労試験片にN回繰り返して負荷し、溶接継手のナゲット部に疲労予き裂を導入した。ここで、Nは1000万回を上限とした。
なお、疲労予き裂導入後の疲労予き裂長さの実測値:a を、図1(b)に示したように、ナゲット部の中央で切断した断面観察から求めた。そして、a /aが0.7以上1.3以下の場合に、所望の疲労予き裂長さaが得られたものとして○と判定し、上記範囲を超える場合を×と判定した。得られた結果を表2に示す。
以上の条件に従って予き裂を導入したところ、試験片T1〜T29の全てについて、所望の長さa(0.7≦a /a≦1.3)を有する疲労予き裂を導入することができた。
続いて、ナゲット部に疲労予き裂が導入された十字型引張疲労試験片に対して放電加工処理を施し、図3に示した形状を有する破壊靱性試験片を作製した。この破壊靱性試験片の寸法、および疲労予き裂長さは、表3の通りである。
こうして得られた破壊靱性試験片を、大気中や液体窒素、アルコール等により脆性破壊が発生する環境におき、破壊靱性試験片に荷重を与えて破壊し、以下の式(5)で定義される破壊靱性値:Kを求めた。
ただし、
である。ここで、P:最高到達荷重(N)、W:試験片の幅、T:試験片の厚み、a:試験片における疲労予き裂長さである。また、F(a/W)は、以下の式(7)で与えられる。得られた破壊靱性値を表3に示す。
得られた破壊靱性値の値を、厚板母材の破壊靱性値とともに図5に示す。なお、厚板母材の破壊靱性値はWES1108やASTM−E399に代表される規格に準じて求めた。
なお、母材の引張試験は、元厚のJIS Z 2201の5号試験片を、圧延方向と直角方向に採取したあと、JIS Z 2241に準拠して行い、母材の降伏応力:σyMおよび引張張力:TSを求めた。また、母材およびナゲット部のビッカース硬さを測定した。このビッカース硬さの測定は、圧痕押しつけ荷重:2.94N(300gf)の下で行った。ここで、横軸の溶接割れ感受性組成(以下、PCMと示す)は、鋼板の成分組成(質量%)に応じて、以下の式(8)から求めることができる。
(発明例1〜22)
図5には、比較のため、厚板母材のPCMと破壊靱性値との関係も示している。この図から、厚板母材およびナゲットの破壊靱性値は、PCMの上昇により低下することが分かる。また、本発明による破壊靭性試験片を用いて測定された破壊靱性値は、母材の値よりもやや低いものの、同程度の値を示していることが分かる。
なお、本発明による破壊靭性試験片を用いて測定された破壊靱性値が厚板母材と比較して低い理由は、ナゲット部は溶解後に急速凝固しているために硬化しており、同一のPcmで比較した時に破壊靭性値が低下したためと考えられる。
以上から、本発明による破壊靭性試験片を用いて測定された破壊靱性値は妥当であると言える。
なお、任意の鋼板母材およびナゲット部において、圧痕押しつけ荷重を98.1N(10kgf)まで変化させたが、ビッカース硬さはほとんど変わらないことを確認している。
また、本実施例に用いた鋼板は、いずれも表面処理を施していないが、亜鉛めっき処理などの表面処理を施していても、スポット溶接が適正に行われていれば、上記の試験方法で、裸材とほぼ同程度の破壊靱性試験片および破壊靱性値が得られることを確認している。
(比較例1〜7)
比較例1では、破壊靱性試験片を切り出す際の、Y切片が本発明において規定した上限を超えている。このため、試験片を採取した際に、疲労予き裂が短くなり、a/Wが本発明において規定した下限を下回る。その結果、この試験片を用いて破壊靱性試験を行ったところ、Kの値が発明例よりもかなり大きな値となり、適正な破壊靱性値を得ることができなかった。
比較例2では、a/aが0.1を下回っている。このため、破壊靱性試験片を加工しても、式(4)の判定条件を満たさなかった。その結果、この試験片を用いて破壊靱性試験を行ったところ、Kの値が発明例よりもかなり大きな値となり、適正な破壊靱性値を得ることができなかった。
比較例3では、破壊靱性試験片の厚さTが本発明範囲を下回っており、式(4)の判定条件を満たさなかった。その結果、この試験片を用いて破壊靱性試験を行ったところ、Kの値が発明例よりもかなり大きな値となり、適正な破壊靱性値を得ることができなかった。
比較例4では、破壊靱性試験片の厚さTが本発明において規定した上限を上回っている。その結果、破壊靱性試験片に加工しても、試験片中に疲労予き裂を導入できずに、a/Wが0となり、破壊靱性試験を行うことができなかった。
比較例5では、a/Wが本発明において規定した上限を上回っている。その結果、この試験片を用いて破壊靱性試験を行ったところ、Kの値が発明例よりもかなり小さい値となり、適正な破壊靱性値を得ることができなかった。
比較例6では、破壊靱性試験片の幅Wが本発明において規定した下限を下回っており、式(4)の判定条件を満たさなかった。その結果、この試験片を用いて破壊靱性試験を行ったところ、Kの値が発明例よりもかなり大きな値となり、適正な破壊靱性値を得ることができなかった。
比較例7では、破壊靱性試験片の幅Wが本発明において規定した上限を上回っている。その結果、Wがナゲット直径を超えていたため、破壊靱性試験片を採取することができなかった。
以上の発明例1〜7に対する破壊靱性値を、発明例1〜22に対する破壊靱性値とともに図6に示す。この図から明らかなように、比較例1〜7の破壊靱性値は、発明例1〜22、ひいては母材の破壊靭性値と大きく相違していることが分かる。

Claims (2)

  1. 複数枚の鋼板を板厚方向に重ね合わせて鋼板相互をスポット溶接して鋼板厚み方向へ回転体状に連なる溶接継手を形成し、前記鋼板の板厚方向に引張荷重を繰り返し負荷して前記溶接継手のナゲット部に前記鋼板の積層界面から前記ナゲット部の径方向中心に向かって径方向長さaの1/10以上が前記ナゲット部に含まれる予き裂領域を導入した十字形引張疲労試験片において、
    前記ナゲット部の径方向中心を原点として互いに直交するX軸およびY軸を定めて、前記ナゲット部の径方向に沿って幅W、およびXY面に平行かつ前記ナゲット部の径方向に直交する方向に沿って厚みTを有する直方体として、前記十字形引張疲労試験片から、前記厚みTの中心を通り前記幅Wに沿って伸びる中心線と前記Y軸とから求まるY切片の大きさがND/4以下の下に切り出した破壊靭性試験片であって、
    前記厚みTに対する前記幅Wは1以上4以下、
    前記幅W[mm]に対する前記破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂の長さa[mm]は0.35以上0.75以下、および、
    前記ナゲット部の直径ND[mm]に対する前記厚みT[mm]は0.1以上1.0未満、
    である破壊靭性試験片。
  2. 前記間隔Wに対する前記破壊靭性試験片に残存する疲労予き裂の長さaは0.40以上0.60以下であり、前記厚みTに対する前記幅Wは2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の破壊靭性試験片。
JP2011070447A 2011-03-28 2011-03-28 破壊靭性試験片 Expired - Fee Related JP5754203B2 (ja)

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