JP4173999B2 - 溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法および隅肉溶接継手 - Google Patents

溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法および隅肉溶接継手 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に自動車の足回り部品の製作などに適用される鋼板の重ね隅肉溶接方法およびそれを用いた溶接継手に関し、より詳しくは、引っ張り強度が680MPa以上の鋼板を溶接する際に疲労強度に優れた溶接部が得られる隅肉溶接方法および隅肉溶接継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶接鋼構造物の安全性および信頼性に重大な影響を与える疲労亀裂は、溶接部に発生しやすいため、従来から溶接鋼構造物の溶接部の疲労特性を向上させる方法が種々検討されてきた。
【0003】
従来から溶接部のうちで最も疲労亀裂が発生しやすい部位が溶接止端部であり、その主な原因が溶接止端部で発生しやすい引っ張りの残留応力による応力集中であることが知られている。
【0004】
従って、従来の溶接継手の疲労特性の改善方法として、溶接後にTIGなめ付け溶接(化粧溶接)や研削等の機械加工などにより溶接止端形状を改善する方法、ショットピーニングなどにより溶接止端形状の改善と圧縮残留応力の導入を同時に行う方法などがあった。しかし、これら方法は、溶接終了後に行う、いわゆる後処理に分類できるものであり、作業工程がその分増え、経済的負荷が増加するため、あまり好ましい方法ではなかった。
【0005】
また、最近では、溶接時に溶接金属の変態温度が低くなるように溶接で使用する溶接材料の成分を設計し、溶接時に変態に伴う体積膨張を利用し圧縮残留応力を導入することで溶接止端部の引っ張り残留応力を低減させ、疲労特性を改善する技術が提案されている(以降、このような溶接材料を総称して低温変態溶接材料と呼ぶ)。このような技術として、例えば、特開平11−138290号公報では、低温変態溶接材料を用いて溶接して変態開始温度が170℃〜250℃の低温域で溶接金属をマルテンサイト変態およびそれによる体積膨張させることにより、その後の熱収縮起因の引張応力を相殺し室温での溶接止端部の引っ張り残留応力を低減あるいは圧縮残留応力とする技術が開示されている。
【0006】
このような溶接金属の低温変態膨張を利用した技術は、主に溶接に使用する溶接材料の成分設計を変更するだけで継手の疲労強度が改善できるという点で上述の溶接後の後処理技術に比べて作業工程が少なく、その分人件費が節約できる経済的に優れた方法である。
【0007】
しかし、上記特開平11−138290号公報などで開示される溶接金属の低温変態膨張を利用した技術は、大きく3つの問題がある。
【0008】
つまり、(1)溶接に用いる低温変態溶接材料は、変態温度を低下するために高価な合金元素を多く添加しなければならず、その分溶接材料のコストが高い、(2)同じ合金元素を多く添加した理由により溶接施工時の作業性が悪くなり、作業効率劣化を招きそれだけ工作コストが高い、(3)低温域で変態開始するマルテンサイト変態の体積膨張を利用しているため室温での溶接金属がマルテンサイト主体の硬質組織となり、機械的特性、特に靭性が劣化する、などの点が挙げられる。
【0009】
以上の問題点は、何れも、比較的低い温度域での変態膨張を利用することに起因するため、もっと高い温度域での変態膨張を利用して溶接止端部の引張残留応力を低減できる溶接継手の疲労強度向上技術が強く望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、従来よりも溶接金属の変態温度が高い条件での変態膨張を利用して溶接継手の疲労強度を十分に向上でき、よって、従来低温変態のために必要であった高価な合金元素の添加量を大幅に低減できることに起因し従来よりも経済性および溶接金属の靭性に優れる、薄鋼板の隅肉溶接方法およびそれを用いた高疲労強度隅肉溶接継手を提供することを目的とする

【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の技術的課題を解決するものであり、つまり、その要旨とするところは、次の通りである。
【0012】
(1) 鋼板の隅肉溶接する方法において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の鋼板を用い、該鋼板の溶接部の拘束度が4000N/mm・mm以下、かつ、該溶接部における溶接金属の溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下となるように該溶接部に溶接金属の変態開始温度が475〜550℃、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の溶接金属を形成することを特徴とする溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0013】
(2) 前記溶接金属が、質量%で、C:0.2〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする前記(1)に記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0014】
(3) 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Ni、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする前記(2)記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0015】
(4) 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:2.0〜4.0未満%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする前記(1)に記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0016】
(5) 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする前記(4)記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0017】
(6) 鋼板の隅肉溶接する方法において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の鋼板を用い、該鋼板の溶接部の拘束度が8000N/mm・mm以下、かつ、該溶接部における溶接金属の溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下となるように該溶接部に溶接金属の変態開始温度が400〜475未満℃、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の溶接金属を形成することを特徴とする溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0018】
(7) 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:4.0〜7.5%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする前記(6)に記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0019】
(8) 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする前記(7)記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
【0020】
(9) 溶接部を有する鋼鈑の隅肉溶接継手において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である鋼板と、溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下であり、オーステナイトからマルテンサイト又はベイナイトに変態を開始する温度が475〜550℃であり、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である溶接金属を有する溶接部からなることを特徴とする疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0021】
(10) 前記溶接金属が、質量%で、C:0.2〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする前記(9)に記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0022】
(11) 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Ni、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする前記(10)記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0023】
(12) 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:2.0〜4.0未満%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする前記(9)に記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0024】
(13) 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする前記(12)記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0025】
(14) 溶接部を有する鋼鈑の隅肉溶接継手において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である鋼板と、溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下であり、オーステナイトからマルテンサイト又はベイナイトに変態を開始する温度が400〜475未満℃であり、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である溶接金属を有する溶接部からなることを特徴とする疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0026】
(15) 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:4.0〜7.5%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする前記(14)に記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0027】
(16) 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする前記(15)記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明は、従来の低温変態溶材を用いた溶接方法、つまり、溶接時に低温域での溶接金属の変態膨張を利用して溶接止端部に圧縮応力を発生させ、その圧縮応力を室温まで維持させることにより溶接止端部の引張残留応力を低減する方法と比べて、溶接金属の変態膨張を利用して溶接止端部に圧縮応力を発生させる点では同じであるものの、その変態開始温度が従来に比べて高い点が大きく異なる。
【0030】
溶接における溶接部の残留応力の発生過程を考察すると、溶接後、溶接金属が凝固、冷却されてその変態開始温度になると、溶接金属は変態により体積膨張し、その周囲の母材熱影響部の反力との関係で溶接止端部に圧縮応力が発生する。
【0031】
この際、溶接金属の変態開始温度が高い場合は、溶接金属の変態による体積膨張が高温で発生するために、変態膨張終了後の冷却過程での熱収縮により溶接止端部には引っ張り応力が発生し、室温まで冷却された時点での溶接止端部の残留応力は引っ張り応力状態となる。そのため、従来の低温変態溶接材料を用いる溶接技術は、溶接金属の変態開始温度をできるだけ低温側(250℃以下)にすることにより、溶接金属の変態膨張終了時点から室温までの温度差を小さしてこの間の冷却・熱収縮量を低減し、室温で溶接止端部の残留応力を圧縮応力側に移行させることを技術思想とするものである。
【0032】
これに対し、本発明では、従来のように溶接金属の変態開始温度を低温域(250℃以下)にしなくても、つまり、変態開始温度が400℃〜550℃と非常に高い温度域で溶接金属の変態膨張を行っても、その変態膨張終了から室温までの冷却・熱収縮に起因して溶接止端部に発生する引っ張り応力自体を抑制することにより、変態膨張時に溶接止端部で発生した圧縮応力を維持し、室温での溶接止端部の残留応力を圧縮応力側に移行させるものである。
【0033】
さらに、詳述すると、本発明は、(1)高温域での溶接金属の変態膨張開始から変態膨張終了までで、その変態に伴う体積膨張を利用して溶接止端部に圧縮応力を発生させるために、溶接金属および母材の引っ張り強度を所定値以上確保するとともに、溶接金属の溶け込み深さを所定値以下に制限することにより、溶接金属の変態膨に伴う体積膨張を溶接金属の下および周囲にある熱影響部を含む母材部で押さえ付け、溶接金属にはその変態膨張の拘束力により、また、溶接止端部には溶接金属の変態膨張の拘束力のため発生する反力として、圧縮の残留応力を導入する、(2)上記(1)のメカニズムにより圧縮応力が導入されて溶接金属の変態膨張が終了し、その後室温までの冷却・熱収縮過程において、熱収縮部分を拘束することなく自由収縮させることにより、熱収縮による溶接止端部での引っ張り応力の発生を抑制する。これにより上記(1)により導入された圧縮応力が室温まで冷却しても保持される。そのために、板厚を所定値以下に薄くすることにより溶接金属の変態膨張終了までにその下部の熱影響部を含む母材に溶接熱の熱伝導を完了させるとともに、ほぼ板厚と継手形状で決まる溶接部の拘束度を所定値以下に低下させ、溶接金属の変態膨張終了から室温までの熱収縮と同時に、その下部および周囲の母材熱影響部も一緒に熱収縮させる、ものである。
【0034】
以下に、本発明の隅肉溶接方法およびそれを用いた隅肉溶接継手の構成およびその限定理由について説明する。
【0035】
(母材板厚1.0〜4.0mmの限定)
母材板厚を限定した理由について述べる。
【0036】
本発明では、溶接時に溶接熱がすぐに被接合材の裏面まで伝達させるために、鋼材の板厚を薄くする。これは、溶接熱が裏面まで達した後では溶接金属は鋼材裏面から拘束を受けず、溶接金属の熱収縮と板裏面の熱収縮が同時に発生させるためである。鋼材の板厚が厚くなるほど、溶接熱の伝達に時間がかかり、溶接金属が変態終了しても裏面まで溶接熱が伝わらないため、その変態終了後から室温まで冷却され熱収縮する過程で溶接金属はその下部の鋼材から拘束を受け、溶接止端部に引っ張り応力が発生してしまう。
【0037】
本発明では、従来の低温変態溶材の変態温度に比べて200℃近く高い変態開始温度を有する溶接材料を用い、溶接金属の変態開始温度が550℃〜400℃と高く、その変態膨張が終了する温度も高いため、このような高い温度領域から室温までの冷却で生じる溶接金属の熱収縮を抑制し、溶接金属の変態膨張により生成した溶接止端部での圧縮残留応力を室温まで保持しつづけるためには、少なくとも溶接金属の変態膨張が終了時点で熱が裏面まで伝達していなければならない。
【0038】
また、変態開始温度のコントロールを低コストで実現するために高価な合金元素を減らしCを高めに添加した成分系の溶接材料を用いて溶接する場合には、溶接金属中のC量が高くなり、特に、鋼材板厚が厚い場合の突合せ凝固時に凝固割れが発生しやすい。
【0039】
この凝固割れの原因となる突合せ凝固は、鋼材板厚が厚くなると、鋼材そのものの熱容量が大きくなるため溶接熱が溶接ビードの幅方向に伝達されやすくなることによって発生するため、高Cの成分系の溶接材料を用いて溶接する場合には、溶接金属の凝固割れ防止の意味からも鋼材板厚を薄くする必要がある。
【0040】
さらに、鋼材の板厚は、後述する拘束度を低下させる観点からも薄い方が有利である。溶接金属の熱収縮が受ける拘束は、鋼材の裏面からの拘束の他に、溶接継手の構造全体からも拘束を受けるが、この拘束を低減するためにも鋼材板厚を薄くすることは意味がある。
【0041】
鋼材の板厚が4.0mmを上回る場合は、溶接熱の裏面への伝達が遅くなり、溶接金属の変態終了時点で溶接熱が裏面まで伝わらず、その後の室温までの冷却、熱収縮過程で溶接金属が鋼材下部から拘束を受け、溶接止端部に引っ張り応力が発生するため溶接継手の疲労強度が低下する。また、高Cの成分系の溶接材料を用いて溶接する場合には、溶接金属の凝固割れが発生する危険が高くなる。さらには、溶接継手の構造との関係で決まる拘束度が高くなり、十分低い拘束度が得られない。
【0042】
一方、鋼材板厚が1.0mm未満に薄くなると、後述する溶接金属の溶け込み深さを板厚に対する相対値で制限しても溶接金属の変態膨張時に反力として作用する溶接金属直下の母材部分が少なくなり、溶接止端部への圧縮応力の導入が難しくなる。従って、本発明では、鋼材の板厚の上限を4.0mm、その下限を1.0mmとする。
【0043】
(拘束度4000N/mm・mm以下又は8000N/mm・mm以下の規定)
溶接継手の拘束度を限定した理由について述べる。
【0044】
溶接継手の拘束度は、従来は、溶接時に溶接部に生じる割れを評価するために一般に用いられていたパラメータであるが、本発明では、溶接金属の変態膨張終了後の冷却、熱収縮過程で溶接金属がその周囲からどれだけ強く拘束されているかを定量的にあらわす指標として採用した。
【0045】
一般に、拘束度(RF)は、溶接開先を単位長さだけ縮めるために必要な溶接線方向の単位長さあたりの荷重と定義され、中央に開先部を作製した試験片の両端を固定した場合の両固定端間の長さ(L)と、板厚(H)と、ヤング率(E)との関係から、開先幅が固定端間の距離(L)に対して十分小さい場合には、以下の(1)式で与えられる。
F(N/mm・mm)=E(N/mm2)・H(mm)/L(mm)・ ・ ・(1)
なお、拘束度(RF)の単位は、慣例上N/mm・mmと表現されている。
【0046】
(1)式の関係から、拘束度(RF)は、溶接時の鋼材の板厚(H)が薄くするか、又は、溶接継手構造によって決まる固定端間の距離(L)を長くすることにより低下させられる。実際の溶接施工において拘束度(RF)を調整する方法としては、拘束冶具を工夫してその固定端の距離を変化させる方法や、溶接部材の設計に工夫を加え鋼板の板厚Hを変化させる方法などが考えられる。
【0047】
本発明では、溶接金属の変態膨張終了から室温までの冷却・熱収縮過程において、溶接金属の熱収縮が自由収縮に近い状態にし、溶接止端部での引っ張り応力の発生を抑制するために、上述のように鋼材板厚の上限を4mm以下に規制するとともに、溶接金属の熱収縮時の周囲からの拘束状態の指標として拘束度(RF)の上限を以下のように規制する。
【0048】
先に述べた通り、溶接継手の疲労強度を向上することを目的とし、室温時の溶接止端部の残留応力を圧縮側に保持するためには、(1)溶接金属の変態膨張開始から変態膨張終了までの体積膨張時において、その膨張が拘束されることにより発生する応力とその周囲の母材熱影響部に生じる反力を確保し、溶接止端部に圧縮応力を発生させるとともに、(2)溶接金属の変態膨張終了から室温までの熱収縮時において、溶接金属の周囲からの拘束を小さくし自由収縮させることで溶接止端部での引っ張り応力の発生を抑制することが必要である。このうち、拘束度の上限規制は、上記(2)の溶接金属の熱収縮における溶接止端部での引っ張り応力の発生を抑制する作用を有し、溶接金属の変態開始温度が同じ条件では、拘束度の上限を低くすることにより、室温時の溶接止端部の残留応力は圧縮側に移行し、溶接継手の疲労強度は向上する。
【0049】
しかし、溶接金属の変態開始温度が高くなるとともに、上記(1)の溶接金属の変態膨張時の溶接金属に発生する応力と、その周囲の母材熱影響部に発生する反力が低下するため、溶接止端部で発生する圧縮応力は低下し、かつ、変態終了温度も高くなり室温との温度差が大きくなるため、上記(2)の溶接金属の熱収縮による溶接止端部での引っ張り応力も増加し、その結果、上記(2)の作用により室温時の残留応力を圧縮側にするためには、溶接金属の変態開始温度の増加に応じて拘束度をより低下する必要がある。
【0050】
本発明では後述するように実用上、2種類の成分系の溶接材料を用いて溶接することにより、溶接金属の変態開始温度が475〜550℃と、400℃〜475未満℃の異なる2種類の変態開始温度条件で溶接を行うため、これらの変態開始温度に応じて拘束度の上限値を以下のように規定する。
【0051】
つまり、本発明では2種類の変態開始温度のうちで、溶接金属の変態開始温度がより高い方である変態開始温度が475〜550℃の場合は、拘束度の上限値を4000N/mm・mmとより低くし、もう一方の変態開始温度が400℃〜475℃の場合は、拘束度の上限値を8000N/mm・mmとする。いずれの変態開始温度の上限値を超えた場合も、溶接金属の変態膨張終了後の熱収縮によって溶接止端部で発生する引っ張り応力を低減する効果が不十分となり、室温時の残留応力を圧縮側にすることは困難となり、溶接継手の疲労強度を十分に向上できない。
【0052】
(溶接金属および鋼材の引っ張り強度680MPa以上の規定)
溶接金属および鋼材の引っ張り強度を限定した理由について述べる。
【0053】
本発明では、溶接金属の変態開始温度が従来よりもかなり高い条件で溶接を行うため、溶接金属の変態膨張開始温度から変態膨張終了温度までの体積膨張過程における溶接金属およびその周囲の母材熱影響部の引っ張り強度は、従来よりも相当低いものと考えられる。また、従来の低温変態溶接材料を用いた溶接では、溶接金属中の合金成分が多く焼入れ性が高い成分系であり、マルテンサイト変態による体積膨張を利用するものであるため、溶接金属の変態膨張時にはマルテンサイトの硬質組織に起因して、変態膨張時に溶接金属の強度を十分確保することができる。しかし、本発明の高温変態溶接材料を用いた溶接では、低温変態溶接材料の場合に比べて、溶接金属は合金成分が少なく焼入れ性が低い成分系であり、マルテンサイト変態に比べて硬さの低い、ベイナイト変態等による体積膨張を利用するものであるため、低温変態溶接材料を用いた場合に比べて変態膨張時の溶接金属の強度は低い。
【0054】
本発明では板厚および拘束度の条件を制限することにより溶接金属の変態膨張終了から室温までの熱収縮時において発生する溶接止端部での引っ張り応力を低減することが可能であることは先に述べた通りである。さらに、室温時の溶接止端部の残留応力を圧縮応力側にするためには、これに加えて、溶接金属の変態膨張開始から変態膨張終了までの体積膨張を利用し溶接止端部に十分な圧縮応力を発生させるための、溶接金属の膨張が拘束されることにより発生する応力とその周辺の母材熱影響部に生じる反力を確保する必要がある。そのためには、それらに相当する溶接金属および鋼材の引っ張り強度が確保されていなければならない。例えば、もし溶接金属の変態膨張時の温度域での溶接金属の引っ張り強度が0となった場合には、溶接金属の変態膨張時には溶接金属は塑性変形し単に変態膨張が塑性歪に変化するだけであり溶接止端部での圧縮応力は0のままであり、仮に、その後、室温に冷却されるまで溶接金属の熱収縮を抑制し、この状態が保持されたとしても、溶接止端部を圧縮残留応力とすることはできない。
【0055】
以上のことを踏まえて、本発明では、溶接金属の変態による体積膨張を利用し溶接止端部に十分な圧縮応力を発生するための最低限の溶接金属に生じる応力とその周辺の母材熱影響部の反力を確保するため、溶接金属および鋼材の引っ張り強度をそれぞれ680MPa以上とした。
【0056】
なお、本発明では、鋼材および溶接金属の引っ張り強度の上限は特に規定する必要はなく、特に溶接金属はその変態開始温度の下限の規定によりその引っ張り強度も制約される。しかし、鋼材および溶接金属の引っ張り強度高くする場合には、鋼材および溶接金属に相当量の合金元素を添加する必要があるため、溶接部の靱性向上や製造コスト低減の観点から、好ましくは、鋼材および溶接金属の引っ張り強度の上限値を980MPaとすることが望ましい。
【0057】
(溶接金属の溶け込み深さが鋼板の板厚の1/3以下の規定)
溶接金属の溶け込み深さを限定した理由について述べる。
【0058】
溶接金属の溶け込み深さが過度に大きい場合は溶接金属の変態膨張時にその下部の熱影響部を含む鋼材の反力が十分に得られず、溶接止端部での圧縮残留応力が小さくなるため疲労強度は十分に改善しない。例えば、図1に示すように溶接金属Wの溶け込み深さが大きい場合は、溶接金属の変態膨張時にAで示された未溶融部分が少なくなるため溶接金属の膨張をほとんど拘束することができず塑性変形し、溶接金属はほとんど自由に膨張してしまい、溶接止端部には圧縮残留応力が発生しない。これに対して、Aの未溶融部分の拘束に頼らずに、溶接継手の構造や拘束具などの拘束により、拘束度を高く維持して溶接する方法を用いると、溶接金属の変態膨張時には溶接止端部は圧縮応力状態になるものの、溶接金属の変態終了後から室温までの冷却による熱収縮で溶接止端部に引っ張り応力が発生し、変態膨張時の圧縮応力を相殺する結果となるため有効な方法とはいえない。
【0059】
鋼材板厚が比較的厚い条件での溶接では、このような溶接金属の溶け込み深さによる溶接金属下部の母材拘束低下の問題はなくなるが、先に述べた理由で本発明では溶接金属下部の母材の熱伝導性を確保するために鋼材板厚を4mm以下に制限するため、このような板厚の薄い場合は溶接金属の溶け込み深さを制限しなければ溶接金属下部の熱影響部を含む母材の拘束が低下し溶接止端部の圧縮残留応力を十分に発生できず、その結果、溶接継手の疲労強度を向上させることができない。
【0060】
本発明では、上記と同様な溶接金属の変態膨張時の下部未溶融部分の拘束を十分に確保するために溶接金属の溶け込み深さを鋼材板厚の1/3以下に規定する。ここで、溶け込み深さとは、溶接金属のうちで最も溶け込み深さが大きい、溶け込み深さの最大値示すものであり、鋼材板厚とは、溶接する前の板厚である。
【0061】
(溶接金属の変態開始温度475〜550℃又は400〜475℃未満の規定)
溶接金属の変態開始温度の範囲を限定した理由について述べる。
【0062】
本発明における溶接金属の変態開始温度は、従来の溶接金属の変態に伴う体積膨張を利用した溶接継手の疲労強度向上技術とは、大きく異なる点であり、溶接金属の変態開始温度が従来に比べて200℃以上高い条件での溶接金属の変態膨張を利用するものである。本発明では、溶接金属の変態開始温度が非常に高いため、従来のような変態開始温度が低い条件でのマルテンサイト変態ではなく、ベイナイト変態等による体積膨張を利用するものである。本発明の溶接継手の溶接金属は従来のマルテンサイト主体の硬質組織よりも硬さが低いベイナイト主体の組織となり、靭性が高い溶接金属が得られる。また、本発明では、溶接金属の変態開始温度が従来の低温変態溶接材料を用いた溶接に比べて非常に高いため、溶接材料中に溶接金属の変態開始温度を低下させるために必要な高価な合金成分の添加量を低減できるため、従来に比べ溶接材料の製造コストを低減できる。
【0063】
しかし、(1)一般に溶接金属や母材の強度は、温度が高くなるに従って低くなるため、本発明のように溶接金属の変態開始温度が高い条件で溶接を行う場合には、その分強度が低くなるため、溶接金属の変態膨張時にその膨張が拘束されることにより発生する応力とその周囲の熱影響部を含む母材に生じる反力が低下するため変態膨張時に溶接止端部で発生する圧縮応力は低下することとなり、(2)さらには、変態終了温度と室温との温度差が大きくなるため、その温度間での冷却による溶接金属の熱収縮で生じる溶接止端部での引っ張り応力も増加することとなり、その結果として、室温時の溶接止端部の残留応力を圧縮側にし溶接継手の疲労強度を向上させることが困難になる。従って、本発明では、先に述べたように、溶接における拘束度のレベルに応じて溶接金属の変態開始温度を規定することにより、溶接金属の変態終了後の熱収縮時に自由収縮させて溶接止端部での引っ張り応力の増加を抑制させる。
【0064】
本発明では、溶接における溶接金属の変態開始温度条件を以下のように変態開始温度が高い475〜550℃と、それよりも低い400℃〜475未満℃の異なる2つの変態開始温度レベルに分類する。
【0065】
溶接金属の変態開始温度が475℃〜550℃となる条件で溶接する場合は、より高温で溶接金属の変態が開始するため、溶接継手の溶接金属がベイナイト主体の組織でかつより硬度が低くより靭性に優れた溶接継手が得られ、溶接材料中に変態開始温度を低下させるために添加する高価な合金成分の添加量をより低減でき、溶接継手の製造コストもより低減できる。なお、溶接金属の変態開始温度が475℃〜550℃の条件で溶接止端部に圧縮応力を導入して室温時の残留応力圧縮応力側にすることで溶接継手の疲労強度を十分確保するためには、先に述べた通り、拘束度を4000N/mm・mm以下に規定する必要がある。しかし、このような低い拘束度条件で溶接した場合でも、溶接金属の変態開始温度が550℃を上回ると、溶接止端部の残留応力を圧縮応力側にすることが困難となり溶接継手の疲労強度が十分に向上できないため、溶接金属の変態開始温度の上限値を550℃とした。一方、溶接金属の変態開始温度の下限値は、変態開始温度が475℃より低い場合には溶接継手の疲労強度の改善効果は得られるが、変態開始温度の低下に伴う上記の理由で溶接継手の製造コストおよび溶接部の靭性が低下するため、経済性および製造コストの観点から溶接金属の変態開始温度の下限値を475℃とした。
【0066】
溶接金属の変態開始温度が400℃〜475未満℃となる条件で溶接する場合は、溶接継手の溶接金属がベイナイト主体の組織となるものの、上記の溶接金属の変態開始温度が高い溶接条件に比べて硬度が少し高くなり溶接部の靭性は若干低下し、かつ溶接材料中に溶接金属の変態開始温度を低下させるために添加する高価な合金成分の添加量も増加し溶接継手の製造コストも少し増加するが、拘束度が8000N/mm・mm以下の高い拘束条件で溶接しても、溶接止端部の残留応力を圧縮応力側にすることができ、溶接継手の疲労強度を十分に確保することが可能である。従って、溶接継手の構造上、拘束度を十分に低下した施工条件で溶接することが困難な場合の溶接で、特に有効となり、溶接施工条件の自由度を向上させることができる。
【0067】
この溶接条件では比較的拘束度が高く、溶接金属の変態膨張終了後の熱収縮の影響が比較的大きくなりやすいため、溶接金属の変態開始温度の上限を475未満℃と低く規制しなければ、溶接金属の変態膨張終了後の熱収縮過程で収縮部が拘束されることにより溶接止端部の残留応力が引っ張り応力側に移行してしまい、十分な疲労強度の向上が得られなくなるため、溶接金属の変態開始温度の上限を475未満℃とする。一方、溶接金属の変態開始温度の下限値は、変態開始温度が400℃より低い場合でも溶接継手の疲労強度の改善効果は得られるが、変態開始温度の低下に伴う溶接継手の製造コストおよび溶接部の靭性が低下するため、経済性および製造コストの観点から溶接金属の変態開始温度の下限値を400℃とした。
【0068】
(溶接金属の成分の規定)
溶接金属の成分を限定した理由について述べる。
【0069】
本発明の溶接金属の成分系の実施形態として、上記の変態開始温度が比較的高い475〜550℃と、それよりも低い400℃〜475未満℃の異なる2つの変態開始温度レベルに応じて、以下の2種類の成分系が用いられる。
【0070】
変態開始温度が比較的高い475〜550℃の溶接金属の成分系としては、主としてCを比較的多く添加することにより溶接金属の変態開始温度を下げる成分系(以下、C系とする。)と主としてNiを添加することにより変態開始温度を下げる成分系(以下、Ni系とする。)を用いた。また、変態開始温度が比較的低い400℃〜475未満℃の溶接金属の成分系としては、主としてNiを添加することにより変態開始温度を下げる成分系(以下、Ni系成分とする。)を用いた。
【0071】
これらのうち、C系の溶接金属は、高価な合金元素の添加量が少ないため、その溶接金属を得るための溶接材料の製造コストが低減でき、溶接金属の靭性はやや劣るものの疲労特性に優れた溶接継手を製造する際に経済性の観点から有利である。一方、Ni系の溶接金属は、高価なNi合金元素を比較的多く添加するため、溶接継手の経済性の観点からは不利であるが、溶接金属の変態開始温度が同じ条件においてさらにNiの作用を用いて靭性を向上できるため、疲労特性とともに高い靭性レベルが要求される溶接継手を製造する際に有効である。これらの溶接金属の成分系およびそれを実現する溶接材料の選択は、それぞれの特徴を踏まえて、選択されるものである。
【0072】
(C系溶接金属の成分規定)
C系溶接金属の成分およびその含有量の限定理由について説明する。
【0073】
Cは、焼入れ元素で、溶接金属の強度向上および変態温度低減の両方の点から有効な元素である。C含有量の下限0.2%は、これを下回る添加量では、C系溶接金属の変態開始温度を475〜550℃の範囲内に調整することができないばかりではなく、溶接金属の強度を確保する上でも問題が生じてくるためこの値を設定した。一方、Cの含有量が高くなると特に鋼材板厚が厚い場合の突合せ凝固時に溶接金属に凝固割れを発生させる危険性が高まるため、Cの添加量の上限を0.4%とした。
【0074】
Siは、主として脱酸元素として添加し、溶接中の空気の混入などによる溶接金属の酸素濃度の上昇時にもその酸素レベルを下げる効果がある。Si含有量の下限は、0.1%を下回る添加量では脱酸効果が不十分で溶接金属中の酸素を十分低減できなくなり、溶接金属の機械的特性、特に靭性の劣化を招くためその含有量の下限を0.1%とした。一方、Siが0.8%を上回る量添加し場合にも靱性劣化を招くためその含有量の上限を0.8%とした。
【0075】
Mnは、焼入れ元素であり、溶接金属の強度を向上し、かつその変態温度を下げる作用を持つ。溶接金属の強度の確保は、本発明における溶接止端部の残留引っ張り応力低減のメカニズムである溶接金属の変態膨張時に降伏強度を確保し溶接止端部に十分な圧縮応力を発生させる点から重要となる。
【0076】
Mn含有量の下限は、溶接金属の強度確保の点からその最低限の添加量として0.4%とした。溶接金属の変態温度を下げるという観点からは、Cの補完成分としてMnの添加量を調整するが、その添加量が過度に多くなると、溶接材料の製造コストが高くなり経済性の観点から好ましくないためMnの添加量の上限を2.0%とした。
【0077】
PおよびSは、不可避的不純物元素であり、本発明では、これら元素が溶接金属中に多く存在するとその靭性が劣化するため、PおよびSの含有量の上限をそれぞれ0.03%、0.02%とした。
【0078】
以上が、本発明におけるC系溶接金属の基本成分であり、これらの成分規定により溶接金属の疲労強度は十分得られるが、さらに、溶接金属の強度および靭性をより向上させるために、それらの要求特性に応じて、Ni、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有させても良い。この含有量の合計値の下限は、溶接金属の強度および靭性を向上させるために最低限必要な含有量であり、その上限は、過度に合金元素の含有量を増加させことにより溶接継手の製造コストが増加するためにその上限を1.5%としたが、1.0%とすることが好ましい。
【0079】
(Ni系溶接金属の成分規定)
Ni系溶接金属の成分およびその含有量の限定理由について説明する。
【0080】
Cは、焼入れ元素であり、溶接金属の強度向上および変態温度の低減の点から有効な元素であるが、Ni系成分では、溶接金属の変態開始温度を主としてNi添加により実現し、Cは、Niの溶接金属の変態温度低下効果を補完しかつその強度を十分得るために最低限の含有量としてその下限を0.03%と規定する。一方、Cの過度の添加は、溶接金属の靱性劣化を引き起こすため、その含有量の上限を0.2%未満とした。
【0081】
Siは、主として脱酸元素として添加し、溶接中の空気の混入などによる溶接金属の酸素濃度の上昇時にもその酸素レベルを下げる効果がある。Si含有量の下限は、Si量が0.1%に満たない場合、脱酸効果が低下し溶接金属中の酸素レベルが高くなりすぎ、溶接金属の機械的特性、特に靭性の劣化を引き起こす危険性があるため、その含有量の下限を0.1%とした。一方、Siの過度の添加も靱性劣化を発生させるため、その含有量の上限を0.8%とした。
【0082】
Mnは、焼入れ元素であり、溶接金属の強度を向上し、かつその変態温度を下げる作用を持つ。溶接金属の強度の確保は、本発明における溶接止端部の残留引っ張り応力低減のメカニズムである溶接金属の変態膨張時に降伏強度を確保し溶接止端部に十分な圧縮応力を発生させる点から重要となる。
【0083】
Mn含有量の下限は、溶接金属の強度確保の点からその最低限の添加量として1.0%とした。溶接金属の変態温度を下げるという観点からは、Niの補完成分としてMnの添加量を調整するが、その添加量が過度に多くなると、溶接金属の靱性劣化を引き起こすためその上限を2.0%とした。
【0084】
PおよびSは、不可避的不純物元素であり、本発明では、これら元素が溶接金属に多く存在するとその靭性が劣化するため、PおよびSの含有量の上限をそれぞれ0.03%、0.02%とした。
【0085】
Niは、オーステナイト構造(面心構造)を有する金属元素であり、高温域での溶接金属のオーステナイト状態をより安定化し、低温域でのフェライト(体心構造)への変態を遅らせるため、その変態温度を低下させる元素である。また、Niは、同じ含有量を添加しても、Cに比べて溶接金属の凝固割れの危険性を高めないため、溶接金属の靭性を維持しつつさらに変態温度を低下させるために有効な元素である。
【0086】
本発明において、Ni系溶接金属の変態開始温度を475〜550℃の範囲に調整する場合には、C添加量を低減しても、C系溶接金属と同様に溶接継手の疲労強度の向上ができるとともに、C系溶接金属に比べてさらに靭性も向上させることができる。そのためのNi含有量の下限は、溶接継手の疲労強度の向上のために2.0%とする。一方、Ni含有量の上限は、溶接継手の経済性、靭性および溶接性を十分に維持するために4.0%未満とする。
【0087】
本発明において、Ni系溶接金属の変態開始温度を400〜475未満℃の範囲に調整する場合には、C系溶接金属では、C含有量の増加による溶接金属の凝固割れ発生の問題が生じやすいが、Ni含有量を4.0〜7.5%とすることで凝固割れを抑制しつつ溶接金属の変態開始温度を低くして400〜475未満℃に調整できる。また、NiはCと異なり、多少添加量を増やしても靱性劣化は必ずしも生じないため、この場合でもC系溶接金属と同等以上の靭性を確保できる。Ni含有量の下限は、溶接継手の疲労強度の向上のために4.0%とした。一方、Ni含有量の上限は、7.5%を超えて添加すると、溶接継手の経済性の悪化とともに、靭性および溶接凝固割れなどの溶接性が劣化する可能性が生じるためその含有量の上限を7.5%と規定した。
【0088】
以上が、本発明におけるNi系溶接金属の基本成分であり、これらの成分規定により溶接金属の疲労強度は十分得られるが、さらに、溶接金属の強度および靭性をより向上させるためには、それらの要求特性に応じて、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有させても良い。この含有量の合計値の下限は、溶接金属の強度および靭性を向上させるために最低限必要な含有量であり、その上限は、過度に合金元素の含有量を増加させことにより溶接継手の製造コストが増加するためにその上限を1.5%としたが、1.0%とすることが好ましい。
【0089】
以上、C系およびNi系の溶接金属の成分およびその含有量の限定理由について説明したが、溶接金属の成分含有量の調整は、溶接に用いる、溶接ワイヤ、溶接ワイヤと充填フラックスとの組み合わせ、又は溶接棒の心線および被覆フラックスのうちの何れかを用いて溶接する際の溶接金属中への成分歩留まりを考慮してそれぞれの溶接材料の成分設計を行うことで実現可能となる。
【0090】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0091】
図2に本実施例で用いた疲労試験法の概念図を示す。実際の溶接時の部材の拘束度は、有限要素法などの数値計算やあるいは溶接前の開先部に荷重を負荷しそのときの開先幅の変化を測定することにより決定する方法が考えられる。しかし、このような方法では、必ずしも任意に拘束度を制御できるわけではなく、また、試験費用が膨大になるという問題もある。これらの試験法の問題に鑑みて、本実施例では、図2に示すように疲労試験片を溶接により作製する際に、その拘束度を任意に定められるために考案した疲労試験方法である。疲労試験片1の作製は、溶接前に高張力ボルト3を用いて、疲労試験片1に比べて十分板厚が厚く剛性が高い試験具4に固定した後、溶接金属(溶接ビード)止端部2が試験片中央部になるように重ね隅肉溶接を行うことで行った。なお、疲労試験片の重ね隅肉溶接は、ワイヤを用いCO2溶接により行い、その溶接条件は、電流125A、電圧17Vを一定とし、溶接時の入熱量は溶接速度を変化させることにより調整した。また、実際の溶接継手の製造時には、溶接のスタート部およびエンド部は何らかの方法で荷重付加の受けにくい位置に設ける本疲労試験片も溶接ビードに残存した溶接スタート部およびエンド部の部位から疲労亀裂が発生して実際に則した正しい疲労強度の評価ができなくなることを避ける必要がある。そこで、疲労試験片の作製時の溶接では、試験片に溶接ビードのスタートおよびエンド部分が残らないように、図3に示すように溶接のスタートおよびエンドの位置にタブ板6を設けて溶接した後、タブ板を切りとり溶接ビードのスタート部およびエンド部を切除した。
【0092】
また、疲労試験片作成時の溶接における拘束度(RF)は、高張力ボルト3で固定された試験片の両端のボルト間の距離(図2のL)を変化させることにより、下記の(1)式を用いて計算させれる拘束度を任意に設定した。
F(N/mm・mm)=E(N/mm2)・H(mm)/L(mm)・ ・ ・(1)
但し、RF:拘束度、E:ヤング率、H:試験材板厚、L:固定端間の距離(L)
【0093】
溶接して作製した疲労試験片は、図2に示す試験片裏面の一定間隔の2箇所の荷重支点5に対し荷重が繰り返し負荷されることにより疲労試験を行った。疲労強度は、500万回荷重を負荷しても破断しない付加応力を示し、例えば、疲労強度が350MPaであるということは、応力比が0.1で、負荷応力が38.9〜388.9MPaの間で500万回繰り返し負荷しても破断せず、それを上回る応力範囲では、500万回より少ない繰り返し数で破断してしまうことを意味する。なお、負荷応力は、試験片の表面に歪ゲージを貼り付け計測した値であり、負荷応力は、図2の疲労試験において疲労試験片のたわみ量を制御することでコントロール可能である。
【0094】
また、疲労試験片の溶接金属の溶け込み深さは、疲労試験を終了後に試験片から断面マクロ試験片を採取して測定した。
【0095】
表1には、同じ溶接条件で作製した複数の疲労試験片の溶接金属部から試験片を採取し測定した溶接金属の成分組成、変態開始温度、引っ張り強度および0℃シャルピー吸収エネルギーを示す。溶接金属の変態開始温度は、フォーマスター試験を用いて測定し、0℃シャルピー吸収エネルギーは、JIS Z3111に従って、270A−30V−25cm/minの溶接条件でオールデポ試験を実施して求めた。但し、表1に示す本発明が規定するC系溶接金属に相当する溶接金属No.1および2については、C含有量が高く、高温割れが発生する可能性が高いためこれを防ぐ目的で疲労試験片の作製時の溶接条件、すなわち125A−17V−40cm/minでオールデポ試験を行った。
【0096】
表1において、溶接金属No.1、2、5および6は、本発明で規定する溶接金属の変態開始温度:475〜550℃の範囲を満足するものであり、そのうち、溶接金属No.1および2が本発明で規定するC:0.2〜0.4%のC系溶接金属に該当し、溶接金属No.5および6が本発明で規定するNi:2.0〜4.0未満%(C:0.03〜0.2未満%)のNi系溶接金属に該当するものである。溶接金属No.8および9は、本発明で規定する溶接金属の変態開始温度:400〜475未満℃の範囲を満足するものであり、本発明で規定するNi:4.0〜7.5%(C:0.03〜0.2未満%)のNi系溶接金属に該当するものである。また、溶接金属No.3、4および7は、本発明で規定する溶接金属の変態開始温度範囲を高く外れるものである。溶接金属No.1、2、5、6、8および9のそれぞれの機械特性を比べると、何れも同レベルの引っ張り強度を有するが、溶接金属No.5、6、8および9の本発明規定のNi系溶接金属の0℃のシャルピー吸収エネルギーは100Jを上回り、溶接金属No.1および2の本発明規定のC系溶接金属のそれ(vE0:70から75J)に比べてより高かった。
【0097】
表2には、表1に示す溶接金属No.の溶接金属が得られた場合の溶接条件および疲労試験結果を示す。
【0098】
本発明の規定範囲内で溶接して疲労試験片を作製した試験No.1、9、10および11の本発明例は、何れも疲労強度が450MPa以上と高く、疲労強度に優れた溶接金属が得られた。
【0099】
一方、本発明の規定範囲から外れた条件で溶接した試験No.2〜8、および12の比較例は、何れも疲労強度が350MPaに達していない結果となった。
【0100】
試験No.2の比較例は、溶接金属の変態開始温度、溶接金属および鋼材の引っ張り強度、鋼材板厚、および、溶接時の拘束度は本発明の規定範囲内であるが、溶接金属の溶け込み深さが大きすぎたため、溶接金属の変態膨張時に鋼材裏面からの反力が小さく溶接止端部に十分な圧縮残留応力が導入されなかったために、溶接継手の疲労強度が低下した。試験No.7の比較例は、試験No.2の比較例と同様に溶接金属の溶け込み深さが大きすぎるとともに、鋼材板厚も薄すぎて本発明の規定範囲外であったために試験No.2の比較例と同様の理由で溶接継手の疲労強度が低下した。
【0101】
試験No.4および8の比較例はいずれも、溶接金属の変態開始温度が高すぎたため溶接金属の変態終了温度と室温との温度差が大きくなり、変態膨張終了後から室温までの熱収縮量が大きくなったため、それに加え、試験No.8は溶接金属強度が不十分であったため溶接止端部の圧縮残留応力の導入が十分になされず疲労強度が向上しなかった。
【0102】
また、試験No.3および5の比較例はいずれも、鋼材の強度が低いために溶接金属の変態膨張時に溶接金属周囲の母材熱影響部からの反力が不十分となり、それに加えて、試験No.3は、溶接金属の変態開始温度が高すぎたためにその変態終了温度と室温との温度差が大きく変態膨張終了後から室温までの熱収縮量が大きくなったため、溶接止端部に圧縮残留応力の導入が十分になされず疲労強度が向上しなかった。
【0103】
試験No.6の比較例は、溶接時の拘束度が高すぎたため溶接金属の変態膨張時に溶接止端部に圧縮応力が導入されたが、その後の室温までの熱収縮によって溶接止端部により大きな引っ張り応力が導入された結果、溶接止端部の残留応力が圧縮応力状態側にならず疲労強度が向上しなかった。ちなみに、試験No.9および11の発明例は、試験No.6の比較例より拘束度が高い7350N/mm・mmで溶接した例であるが、溶接金属の変態温度がそれぞれ430および440℃と、試験No.6の530℃に比べて90〜100℃程度低い条件で溶接を行ったため、溶接止端部が圧縮残留応力となり疲労強度が改善した。試験No.12の比較例は、溶接金属の変態温度は、試験No.9および11の発明例と同じ程度に十分低くものの、溶接金属の溶け込み深さが大きすぎたため、溶接金属の変態膨張時に鋼材裏面からの反力が小さく溶接止端部に十分な圧縮残留応力が導入されず溶接継手の疲労強度が低下した。
【0104】
【表1】
Figure 0004173999
【0105】
【表2】
Figure 0004173999
【0106】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、従来よりも溶接金属の変態温度が高い条件での変態膨張を利用して溶接継手の疲労強度を確実に向上させることができるため、従来の低温変態のために必要とした高価な合金元素の添加量を大幅に低減でき、かつ、靭性に優れた溶接金属組織が得られ、よって、経済性と靭性に優れる高疲労強度の溶接継手が得られる鋼板の隅肉溶接方法を提供できる。従って、本発明は工業的価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、重ね隅肉溶接部の断面形状を示した概念図である。
【図2】 図2は、疲労試験片を作製するための冶具、および疲労試験方法を説明するための概念図である。
【図3】 図3は、疲労試験片を溶接にて作製する時のタブ板取り付け位置と試験片の位置関係を示した概念図である。
【符号の説明】
1 疲労試験片
2 溶接金属止端部
3 高張力ボルト
4 試験
5 荷重支点
6 タブ板W溶接金属A未溶融部分

Claims (16)

  1. 鋼板の隅肉溶接する方法において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の鋼板を用い、該鋼板の溶接部の拘束度が4000N/mm・mm以下、かつ、該溶接部における溶接金属の溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下となるように該溶接部に溶接金属の変態開始温度が475〜550℃、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の溶接金属を形成することを特徴とする溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  2. 前記溶接金属が、質量%で、C:0.2〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  3. 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Ni、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする請求項2記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  4. 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:2.0〜4.0未満%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  5. 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする請求項4記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  6. 鋼板の隅肉溶接する方法において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の鋼板を用い、該鋼板の溶接部の拘束度が8000N/mm・mm以下、かつ、該溶接部における溶接金属の溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下となるように該溶接部に溶接金属の変態開始温度が400〜475未満℃、かつ、引っ張り強度が680MPa以上の溶接金属を形成することを特徴とする溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  7. 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:4.0〜7.5%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする請求項6に記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  8. 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする請求項7記載の溶接部の疲労強度に優れた鋼板の隅肉溶接方法。
  9. 溶接部を有する鋼鈑の隅肉溶接継手において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である鋼板と、溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下であり、オーステナイトからマルテンサイト又はベイナイトに変態を開始する温度が475〜550℃であり、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である溶接金属を有する溶接部からなることを特徴とする疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
  10. 前記溶接金属が、質量%で、C:0.2〜0.4%、Si:0.1〜0.8%、Mn:0.4〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする請求項9に記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
  11. 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Ni、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする請求項10記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
  12. 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:2.0〜4.0未満%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする請求項9に記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
  13. 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする請求項12記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
  14. 溶接部を有する鋼鈑の隅肉溶接継手において、板厚が1.0〜4.0mmで、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である鋼板と、溶け込み深さが前記鋼板の板厚の1/3以下であり、オーステナイトからマルテンサイト又はベイナイトに変態を開始する温度が400〜475未満℃であり、かつ、引っ張り強度が680MPa以上である溶接金属を有する溶接部からなることを特徴とする疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
  15. 前記溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.2未満%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Ni:4.0〜7.5%を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなることを特徴とする請求項14に記載の疲労強度に優れた隅肉溶接継手。
  16. 前記溶接金属が、さらに、質量%で、Cr、Mo、Cu、V、Nb、Ti、Ca、BおよびMgのうちの1種又は2種以上を合計量で0.001〜1.5%含有することを特徴とする請求項15記載の高疲労強度隅肉溶接継手。
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