JP4038794B2 - 高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管 - Google Patents

高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷間成形加工後に高周波焼入れを施すことにより強度を上げて使用される鋼部品の素材となる高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管に関し、例えば車両部品(自動車部品,二輪車部品,軌道車部品)用として好適な機械構造用電気抵抗溶接鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題やエネルギ−問題等の観点から自動車車体等には厳しい軽量化対策が推し進められており、例えば自動車の足廻り部品等においてはその素材を棒から鋼管へ変換する状況に至っている。
このような自動車用部品(ラックバ−,ドライブシャフト,ステアリングシャフト,アクスルハウジング,ショックアブゾ−バ−,スタビライザ−,ドラッグリンク,タイロッド,バルブロッカ−シャフト等),自動二輪用部品(フロントフォ−ク等),自転車用部品,軌道車用部品,建設機械用部品,各種シリンダ−用部品,家具,その他の機械構造部品等の素材として用いられる機械構造用電気抵抗溶接鋼管(例えば電縫鋼管)は、一般に、目的とする部品形状への成形加工(冷間鍛造加工,転造,スウェ−ジング加工,プレス加工,曲げ加工,ハイドロフォ−ミング,爆発成形等)を施した後、高周波焼入れ処理による必要強度(硬度)の付与を行って使用に供している。
【0003】
冷間成形加工後に高周波焼入れを施すことにより強度を上げて使用する鋼材では、焼入れによる十分な強度確保のためにC(炭素)の含有量を高くすることが必要であるが、C含有量が高くなると鋼材が硬くなって成形性が劣化するという問題があった。
【0004】
なお、一般的に電気抵抗溶接鋼管の成形性を向上させるためにはAc3変態点以上の温度で加熱・保持してから放冷する“焼きならし処理”が実施されるが、鋼の成分系によってはこの方法でも十分な成形性を得られない場合がある。
特に、高炭素を素材とする鋼管では上記焼きならし処理によっても十分な成形性を得られない場合が多く、そのため高炭素鋼の強度を低減する熱処理である球状化熱処理の適用が試みられてもいるが、この方法では熱処理工程に時間がかかり、そのため生産能率の面で著しい不利を伴う。その上、球状化熱処理を施した鋼材はCがほぼ完全に球状化しているので、最終的に焼入れを実施する場合に焼きが入りにくいという問題や被削性が劣化するという問題があった。
【0005】
例えば、特開2001−131702号公報には、加工性に優れた冷間鍛造用電縫鋼管であるとして「C: 0.1〜 0.5%(以降、 成分割合を表す%は質量%とする),Si:0.01〜 0.5%,Mn: 0.1〜 2.0%を含有すると共に、 必要に応じてCr,Mo,W,Ni,Cu,B,Ti,Nb,V,Caの1種以上をも含む化学組成の冷間鍛造用電縫鋼管」が開示されている。
しかし、この電縫鋼管は『組織中の炭化物で炭化物の占める割合が面積率にして30%以下、 炭化物の球状化率が80%以上で』としているように、球状化焼鈍による炭化物の球状化によって変形能に有害な層状炭化物を無くした鋼管であり、炭化物が球状化しているので材料の加工性は向上するが高周波焼入れ時に炭化物が固溶しにくく、そのため高周波焼入れによっては十分な強度を確保することができないので高周波焼入れ部品用としては不適当な材料であった。
【0006】
ところで、特開2001−355047号公報を見ると、冷間加工性と高周波焼入れ性に優れた高炭素電縫鋼管であるとして「C: 0.3〜 0.8%,Si:2%以下,Mn:3%以下を含有すると共に必要に応じてCr,Mo,W,Ni,Cu,B,Ti,Nb,Vの1種以上をも含む電縫鋼管に、 温間での縮径圧延を施すことによってフェライト中に粒径が 1.0μm以下のセメンタイトが微細分散した組織を有せしめて成る高炭素鋼管」が開示されている。
【0007】
しかしながら、この鋼管は「Si:2%以下,Mn:3%以下」と規定されているものの、その「実施例」欄や「添加量の説明」欄からも明らかなように焼入れ性を高めるために比較的高い添加量でSi及びMnを含有させることを必要としたものである。そのため、高周波焼入れ前の材料強度が高くなるのを否めず、良好な加工性を確保するには温間{(Ac1変態点−50℃)〜(Ac1変態点)の温度域}で縮径圧延を実施してフェライト中に粒径が 1.0μm以下のセメンタイトが微細分散した組織を実現するという面倒な処理が不可欠となる。
【0008】
その上、このような温間で縮径圧延を施すという処理だけでは電縫溶接部の硬化が残ってしまい、冷間成形加工用として満足できる材料であるとは言えなかった。
しかも、電縫溶接部の硬化を解消するためにAc3変態点以上の温度域で後熱処理を実施すると、当該電縫鋼管ではその加工性が劣化してしまうという問題があった。
【0009】
更に、この鋼管は「冷間加工性と高周波焼入れ性に優れた高炭素鋼管」であるとしているものの、その「実施例」欄の「表3-1」や「表3-2」からも確認できるように、高周波焼入れ性は「比較例(焼準)」の場合と同等か、むしろ「比較例(焼準)」の方が良好となる場合(製品管No.7と9、 13と15、 36と38の比較)もあるので、必ずしも加工性と高周波焼入れ性が共に優れたものであるとは言い難かった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、本発明が目的としたのは、冷間加工時には良好な成形性を示すと共に、高周波焼入れにより車両部品等として満足できる高い強度を安定付与することができる高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管の提供手段を確立することであった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく多くの試験を繰り返しながら研究を行った結果、次の知見を得ることができた。
a) 電気抵抗溶接鋼管を例えば車両部品に適用する場合には硬度でHv550相当以上の強度が必要であり、焼入れによって鋼管にこのような高い強度を確保するためには相応量のCを添加しなければならないが、C含有量が増量するにつれて鋼は硬くなって成形性は劣化し、焼入れ後の硬度Hv550以上が確保されるほどにC含有量を高めた場合には、焼入れ前の鋼管において、車両部品等への冷間成形を安定に実施できる“硬度Hv200未満”の達成が困難となる。
【0012】
b) しかし、C含有量が比較的高い鋼材であっても、フェライト強化元素であるSi,Mnの含有量を抑制して鋼材の強度そのものを低減した場合には、“炭化物の球状化による強度低減”や“集合組織の調整によるr値の向上”に頼ることなく鋼材の成形性を改善することができる。
【0013】
c) なお、Mn含有量の低減はMn偏析の抑制にもつながり、Mn偏析に起因した加工性(縮径,拡管等の加工性)の劣化はMn含有量の低減によって顕著に軽減される。
即ち、熱間圧延鋼板を素材とした電気抵抗溶接鋼管(電縫溶接鋼管等)では、実用されている通常化学組成の機械構造用鋼材のものであるとフェライト強化元素であるMnの偏析が強く生じ、これによって加工性が劣化するだけでなく、Mn偏析はCやSiの場合と比較すると高周波焼入れ時の加熱によっては拡散しにくいのでMnの負偏析部において局所的に焼入れ硬さが低下して高周波焼入れ後に硬さばらつきが発生し易い。なお、偏析を軽減するためには球状化焼鈍を施す必要があるが、球状化焼鈍を施したものはその後の焼入れ処理に“高周波焼入れ”を適用すると加熱が短時間であるので炭化物が完全に固溶せず、そのため焼入れ後に硬度低下が発生してしまう。
しかしながら、Mn含有量を低減すると、Mn偏析に起因した上記の問題が解決される上、溶接のままあるいは焼ならし後又は焼鈍後のフェライト+パ−ライト組織でも軟質でかつ成形性に優れた鋼管が得られる。
【0014】
d) ところで、鋼材のMn含有量を低減すると一般に焼入れ性が劣化するが、B添加あるいは必要により更にCr添加をも実施することによってこの焼入れ性の低下を補償することが可能になる。
【0015】
e) また、一般に鋼材の焼入れでは昇温時間,均熱時間が長くなるほど熱歪による材料の変形が顕著となって元の寸法精度が損なわれやすく、そのため寸法精度が重視される部材では極く短時間で急速加熱して急冷する“高周波焼入れ”が有効であるが、急速加熱であって均熱時間も極めて短い場合には炭化物の拡散が十分になされずにオ−ステナイトへの炭化物の固溶が不十分となって炭化物が溶け残りやすくなり、結局は焼入れ後の強度が十分に得られないという問題が生じがちである。
しかし、予め焼ならし熱処理等により鋼材のフェライト面積率を下げてパ−ライトの面積率を上げておくと、高周波焼入れのような短時間の急速加熱,均熱によっても炭化物がオ−ステナイトに固溶しやすくなって、炭化物の溶け残りに起因した“焼入れ後の強度不足”の問題は解消される。
【0016】
本発明は、上記知見事項等を基にして完成されたものであり、次の 1)〜 4)項に示す高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管を提供するものである。
1)質量割合にて
C:0.30〜0.60%,
Si:0.10%以下,
Mn: 0.1〜 0.5%,
Al: 0.005〜0.05%,
N: 0.005%以下,
B:(11/14)N* +0.001 〜(11/14)N* +0.005 ,
Ti: 0.005〜0.05%
を含有すると共に残部はFe及び不可避的不純物から成る鋼帯から製造された電気抵抗溶接鋼管であって、高周波焼入れ前の段階で鋼管断面の全肉厚においてフェライト面積率が65%以下のフェライト・パ−ライトを主体とした組織を有して成り、高周波焼入れ前の段階での硬さがHv200以下であって高周波焼入れ後の硬さがHv550以上であることを特徴とする、高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管。
ここで、N* は、N* =N−(14/48)Ti {但し、N−(14/48)Ti≦0の場合にはN* =0}とする。
2)質量割合にて更にCr:0.02〜 3.0%をも含有する鋼帯から製造されて成ることを特徴とする、前記 1)項記載の高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管。
3 前記 1)又は 2 )項に記載の高周波焼入れ用高炭素電気抵抗溶接鋼管であって、車両部品に適用するための高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管。
【0017】
さて、本発明に係る高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管(電縫鋼管等)は、造管に続いて、例えば「Ac3変態点+30℃〜Ac3変態点+200℃」の温度域に加熱・保持してから放冷する“焼ならし熱処理”を施す等といった簡易な手立てによって得ることができ、これにより鋼管の金属組織は“フェライト面積率が65%以下のフェライト・パ−ライトが主体の組織”となって、硬さ(強度)をHv200以下にまで低下させることができる。
一般に、鋼の成形性はその強度(硬さ)が低いほど良好になることが知られているが、電気抵抗溶接鋼管を素材として車両部品等の構造部品を冷間で安定に成形加工するには鋼管の硬さ(強度)は少なくともHv200以下であることが望まれる。従って、硬さ(強度)がHv200以下の本発明に係る電気抵抗溶接鋼管は、成形加工に供する“構造部品の製造素材”として好ましい材料であると言える。
【0018】
一方、本発明に係る高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管は、C含有量が0.20%以上であり、また特定量のB及びTi並びに必要に応じて更にCrをも含有しているため、高周波焼入れ処理によって容易に高強度化することができる。
因みに、本発明に係る電気抵抗溶接鋼管を高周波焼入れすると、その硬さ(強度)は安定してHv 550以上を示すようになり、車両部品等といった構造部品としての強度や耐摩耗性は十分となる。
なお、本発明に係る電気抵抗溶接鋼管では、「Ac3変態点+30℃〜Ac3変態点+200℃」の温度域に加熱・保持してから放冷する焼ならし熱処理が施されても、その焼き入れ性に何ら悪影響が及ぶものでないことは言うまでもない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明において高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管の化学組成や金属組織を前記の如くに限定した理由を説明する。
〔A〕電気抵抗溶接鋼管の化学組成
a)C
Cは電気抵抗溶接鋼管の強度確保に有効な元素であり、焼き入れ後のマルテンサイト組織での強度(硬さ)はC含有量でほぼ決まる。そして、焼き入れ後のマルテンサイト組織において車両部品等といった構造部品として十分な強度や耐摩耗性を発揮するHv 550以上の硬さ(強度)を確保するためには 0.30%以上のC含有量が必要である。一方、C含有量が高すぎると造管時の電気抵抗溶接部が硬くなり過ぎて製造が困難となるので、より安定した電気抵抗溶接を行うためにC含有量は0.60%以下とした
【0020】
b) Si
Siはフェライトを固溶強化して鋼管の成形性を劣化させる元素であるため、良好な成形性を確保するためSi含有量の上限を0.10%として強度の上昇を抑える。好ましくは、Si含有量は0.05%以下に低減するのが良い。
【0021】
c)Mn
Mnは鋼管の靱性・焼入れ性を改善する作用を有しているので、高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管に必要な靱性・焼入れ性を確保すべくMnを 0.1%以上含有させることとしたが、Siと同様、Mnにはフェライトを固溶強化する作用もあるので多すぎると材料の変形抵抗が大きくなる。従って、鋼管強度をより低くして成形性を改善し、またMn偏析を極力低減するために、Mn含有量は 0.5%以下とした
【0022】
d) Al(sol.Al)
Alは脱酸に必要な元素である上、鋼中のNを固定して固溶Nによる降伏点伸びの回復を抑える作用を有しているので 0.005%以上含有させることとしたが、過剰に添加すると鋼中にアルミナが増えて非金属介在物による溶接不良の原因となることから、その上限を0.05%と定めた。
【0023】
e) N
Nは鋼材の耐時効性を最も劣化させる元素であって、少ないほど好ましい不純物元素であるが、鋼材の製造コストと悪影響の程度を考慮してN含有量の上限を0.005 %と定めた。
【0024】
f) B
Bは鋼材の焼入れ性を向上させるのに有効な元素であるが、鋼中のNと結合すると焼入れ性の改善には寄与しなくなる。そのため、本発明ではNと優先的に結合するTiの添加が共になされる。
Tiと結合するNの量は「 (14/48)Ti」となるので、「N* =N−(14/48)Ti 」とした場合に「N* >0」のときはTiと結合していないNの量(N* )とBとが結合して焼入れに有効なBが減少する。従って、焼入れ性に有効となるBを確保するためにB含有量の下限は「 (11/14)N* +0.001 」と定めた。
また、B含有量が「 (11/14)N* +0.005 」を超えると鋼管の靱性が劣化することから、B含有量の上限は「 (11/14)N* +0.005 」と定めた。
なお、「N−(14/48)Ti ≦0」のときはTiと結合していないNは実質上0となるので「N* =0」で表されることは言うまでもない。
【0025】
g) Ti
上述したように、TiはNとの親和性が強いためB添加を行った場合にBNが析出するのを抑制し、その結果としてBが鋼中に固溶して焼き入れ性向上効果を発揮するのを助ける作用を発揮する。但し、Ti含有量が 0.005%以下であるとTi添加の効果が顕著でなく、一方、0.05%を超えてTiを含有させてもTi添加の効果は飽和してコスト高を招く。従って、Ti含有量は 0.005〜0.05%と定めたが、強度が上がり過ぎるのを防ぐにはTi含有量を0.03%以下に抑えるのが望ましい。
【0026】
h) Cr
Crも鋼材の焼入れ性を向上させるのに有効な元素であるので、本発明では必要に応じて含有させることとしたが、その含有量が0.02%未満では焼入れ性向上効果は顕著化しない。一方、Cr含有量が多すぎると酸化物となって溶接不良が発生しやすくなるので、Cr含有量の上限を 3.0%と定めたが、より安定した電気抵抗溶接を行うためにはCr含有量は 1.0%以下に抑えることが望ましい。
【0027】
[B] 電気抵抗溶接鋼管の金属組成
先にも述べたように、高周波焼入れは寸法精度が重視される“鋼管を素材とする構造部材”に有効な焼入れ法であるが、炭化物の拡散が十分になされずにオ−ステナイトへの炭化物の固溶が不十分となって炭化物が溶け残りやすくなり、結局は焼入れ後の強度が十分に得られないという問題が生じがちである。しかしながら、本発明に係る鋼管のようなフェライト・パ−ライトを主体とした組織の鋼材(化学組成からして造管のままではフェライト・パ−ライトを主体とした組織となる)では、フェライト面積率を65%以下に調整すると高周波焼入れにおけるような短時間の加熱でも炭化物の固溶が促進され、炭化物の溶け残りに起因した焼入れ後の強度不足を防止することができる。
従って、本発明に係る高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管は「鋼管断面の全肉厚においてフェライト面積率が65%以下のフェライト・パ−ライトを主体とした組織」を有するものと定めた。しかし、加熱開始から冷却完了までの時間が60秒以下となるような急速加熱・急速冷却の高周波焼入れを実施する場合には、フェライト面積率を50%以下に調整することが望ましい。
【0028】
ここで、本発明で言う「フェライト・パ−ライトを主体とした組織」とは組織全体に占める「フェライト+パ−ライト」の面積率が大半の組織であり、フェライト及びパ−ライト以外に面積率で0〜10%程度のセメンタイト,0〜1%程度のベイナイト,0〜1%程度のマルテンサイトが含まれていても差し支えはない。
【0029】
なお、「フェライト面積率が65%以下のフェライト・パ−ライトを主体とした組織」が例えば「Ac3変態点+30℃〜Ac3変態点+200℃」の温度域に加熱して5〜30分間保持してから放冷する“焼ならし熱処理”等の手立てによって実現できることは、先に説明した通りである。
なお、上記焼ならし熱処理は電気抵抗溶接部の硬化を解消する上でも有効な手段であり、この処理によれば鋼の強度がより低い状態であるフェライト,パ−ライト等が混在した組織状態が得られて中のC含有量が0.60%以下であればHv250以下を確保することができる。
【0030】
また、鋼管強度の更なる低減を図るためには、成形加工前の段階で「Ac1変態点〜(Ac1変態点+Ac3変態点) /2」の温度領域で1〜20分間均熱した後空冷する熱処理を実施することが望ましい。
ところで、本発明に係る電気抵抗溶接鋼管は、高周波焼入れを施すことなく使用することも当然可能である。
続いて、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
【0031】
【実施例】
まず、表1に示す化学組成の鋼帯を準備し、これらの鋼帯から外径が38.1mmで肉厚が5.3mm の電縫鋼管を造管した。
【0032】
【表1】
Figure 0004038794
【0033】
そして、造管後は、焼ならし及び高周波焼入れ等の次に示す2通りの処理を実施した。
工程1: 造管→焼ならし→高周波焼入れ,
工程2: 造管→焼ならし→抽伸(抽伸後の寸法:外径が30mmで肉厚が 4.8mm )→焼なまし→高周波焼入れ。
【0034】
ここで、工程1及び工程2では共に、高周波焼入れ前に実施される車両部品等への冷間成形を想定し、造管後に焼ならし熱処理(Ac3変態点+30℃〜Ac3変態点+200℃の温度域に加熱して所定時間保持してから放冷)を実施して組織の調整を行うと同時に電縫溶接部の硬化の影響を消去した。
また、工程2では、焼ならし熱処理後に抽伸(冷間抽伸)を実施したことによって加工硬化が生じるので、抽伸後に焼なまし熱処理で材料を軟化させた。この際の焼なまし熱処理の条件は、材料の強度低減を図るのに効果的となる「Ac1変態点〜(Ac1変態点+Ac3変態点)/2」の温度領域で10分間均熱してから放冷する条件とした。
【0035】
なお、前記高周波焼入れ処理の直前の電縫鋼管から試験片を切り出し、その横断面について組織観察を行うと共に、組織観察で使用した試験片断面につきビッカ−ス硬さ(Hv10kg)の測定も実施した。更に、高周波焼入れ処理後にも電縫鋼管から採取した試験片(横断面)についてビッカ−ス硬さ(Hv10kg)を測定した。
表2に、造管から高周波焼入れまでの処理工程と組織観察並びに硬さ測定の結果を示す。
【0036】
【表2】
Figure 0004038794
【0037】
表2に示される結果からも、本発明に係る電縫鋼管(高周波焼入れ前の電縫鋼管)は、焼入れ前には良好な冷間成形性の目安であるHv200以下の硬さ(強度)を示すものの、高周波焼入れによって車両部品等に望まれるHv550以上を安定して確保できることが明らかである。
【0038】
特に、試験番号2,5,9及び12では、焼ならし時の均熱時間を長くしたためにフェライト面積率の減少が著しく、そのため焼入れ性が目立って向上し、高周波焼入れ後の硬さ上昇が際立っている。
また、試験番号3,6,10及び13では、抽伸後に焼なましを実施したことで高周波焼入れ前の硬さ低下が著しく、より優れた冷間成形性を示すことが明らかである。
【0039】
これに対して、比較例である試験番号1516及び17では、電縫鋼管の化学組成が本発明の規定条件を満たしておらず、また焼入れ前の電縫鋼管におけるフェライト面積率も高いので、高周波焼入れ後の硬さが十分でない。
更に、比較例である試験番号18及び19では、電縫鋼管の化学組成が本発明の規定条件を満たしていないために高周波焼入れ前の硬さが高く、そのため冷間成形性が十分でないことは明らかである。
一方、比較例である試験番号20では、化学組成は本発明の規定条件を満たしているものの、焼入れ前の電縫鋼管におけるフェライト面積率も高いので高周波焼入れ後の硬さが十分でない。
【0040】
【発明の効果】
以上に説明した如く、この発明によれば、車両部品等といった機械構造部品への成形加工が容易で、加工後には高周波焼入れにより十分な強度上昇がなされる高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管を提供することが可能になるなど、産業上有用な効果がもたらされる。

Claims (3)

  1. 質量割合にて
    C:0.30〜0.60%,
    Si:0.10%以下,
    Mn: 0.1〜 0.5%,
    Al: 0.005〜0.05%,
    N: 0.005%以下,
    B:(11/14)N* +0.001 〜(11/14)N* +0.005 ,
    Ti: 0.005〜0.05%
    を含有すると共に残部はFe及び不可避的不純物から成る鋼帯から製造された電気抵抗溶接鋼管であって、高周波焼入れ前の段階で鋼管断面の全肉厚においてフェライト面積率が65%以下のフェライト・パ−ライトを主体とした組織を有して成り、高周波焼入れ前の段階での硬さがHv200以下であって高周波焼入れ後の硬さがHv550以上であることを特徴とする、高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管。
    ここで、N * は、N * =N−( 14 48 Ti {但し、N−( 14 48 Ti ≦0の場合にはN * =0}とする
  2. 質量割合にて更にCr:0.02〜 3.0%をも含有する鋼帯から製造されて成ることを特徴とする、請求項1記載の高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管。
  3. 請求項1又は2に記載の高周波焼入れ用高炭素鋼電気抵抗溶接鋼管であって、車両部品に適用するための高周波焼入れ用電気抵抗溶接鋼管。
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