JP4392744B2 - 無塗装自動車外板用成形品の成形方法および成形品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は高光沢を有するとともに、耐擦傷性に優れ、表面にクリア塗膜の形成の必要がない、無塗装自動車外板用成形品の成形方法および該方法で得られた成形品に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、自動車部品分野においては、省資源、低燃費などの社会的要請から軽量化が求められている。これらの目的に、数多くの部品において、金属から樹脂への転換が急速に進んでいる。
【0003】
なかでも自動車用部品のなかでもドアパネル、ピラーなどの主要部が板状の成形品には、成形性、強度、剛性などに加えて、リサイクル性、材料の統一の動向などから、各種樹脂製のものが多用されてきている。
【0004】
ところで、自動車用部品の軽量化の要求は、年々厳しくなっており、成形品の軽量化のためには、成形品の肉厚を薄くすることが試みられている。しかしながら、成形品の肉厚を薄くするためには、強度、剛性など樹脂本来の特性に加えて、部品の大型化に対応して成形性、すなわち溶融流動性の向上が必要となる。また樹脂材料の強度、剛性などを向上するために、熱可塑性樹脂を複合化したり、エラストマー、ガラス繊維などの強化剤、タルクなどの充填剤などを添加する手段が数多く提案されている。
【0005】
また、これらの成形品の表面は傷が付きやすく、また、成形品自体の表面も高い外観を有するものではなかった。
【0006】
このため、成形品表面にクリア塗膜を形成したり、さらには、透明フィルムをインモールド成形し、表面にフィルム層を形成するなどの方法が行われてきた。
【0007】
しかしながら、このように塗装やインモールド成形を行うと、工程が余分にかかるため、それに伴う不良率の検出、および工程増に伴うコストアップという問題点があった。
【0008】
また、このように塗装したり、さらにフィルム層を形成したものでは、再利用が難しく、リサイクルしようとすると、塗膜やフィルムを除去するなど、工程が煩雑であり、必ずしもリサイクルできない場合も多く、資源の有効利用という点でも満足しうるものではなかった。
【0009】
また、特開2000−225843号公報(特許文献1)には、熱可塑性樹脂からなる自動車用ドアパネルおよびピラーが開示されている。かかる特許文献1では、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンが使用されることが開示されている。しかしながら、このような自動車用ドアパネルやピラーでは、無塗装であると耐擦傷性に問題があった。
【0010】
そこで、本発明者らはこのような従来技術に伴う問題点を解決すべく鋭意検討した結果、金型温度を特定ヒートサイクルにすることで、高品質外観を有する自動車用成形品が得られ、しかも成形品は耐擦傷性、耐衝撃性がに優れるとともに、薄肉化も可能であり、このため軽量化・コストダウンにも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
さらに樹脂として、特定のものを使用すれば、極めて耐擦傷性・耐衝撃性に優れ、しかも高品質外観に優れたものが得られることを見出した。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−225843号公報
【0013】
【発明の目的】
本発明の目的は、高品質外観を有する無塗装自動車外板用成形品の成形方法および該方法で得られる成形品を提供することである。
【0014】
【発明の概要】
本発明に係る無塗装自動車外板用成形品の成形方法は、
熱可塑性樹脂を含む溶融組成物を、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射出することを特徴としている。また、本発明では、熱可塑性樹脂を含む溶融組成物を、金型内部に射出完了した後または射出しながら金型を高い圧力で閉じ、射出された溶融組成物を圧縮流動させるに際して、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射出することを特徴している。
【0015】
前記熱可塑性樹脂が、脂環族ポリエステル、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る高品質外観を有する無塗装自動車外板用成形品は前記成形方法からなることを特徴としている。このような無塗装自動車外板用成形品としては、ピラー、フェンダー、ドアパネル、スポイラーのいずれかが好適である。
【0017】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る成形方法について具体的に説明する。
【0018】
[成形方法]
熱可塑性樹脂
本発明の成形方法で使用される熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、自動車用成形品に使用可能な熱可塑性樹脂を広く使用することが可能である。
【0019】
具体的には、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ゴム成分などによるポリオレフィンの耐衝撃性改質材料、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、衝撃性改良ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリカーボネート−ABS樹脂のアロイポリマー、ポリカーボネート−ポリスチレンのアロイポリマー、ポリカーボネート−ポリエステルのアロイポリマー、ポリカーボネート−ポリアミドのアロイポリマー、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、同ポリスチレンとの混合物、ナイロンなどのポリアミド、ポリアミドを含むアロイポリマー、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、各種の液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0020】
このうち、本発明ではポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、から選択される少なくとも1種であることが好ましい。さらに、脂環族ポリエステルを使用することも可能であり、ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート(以後、PCCDと略す)を使用することもできる。
【0021】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,4-ブタンジオールとの重縮合反応物として公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールとの重縮合反応物として公知のものを特に制限なく使用することが可能である。
【0022】
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)の分子量は、成形品の物性を損なわない範囲であれば制限はなく、また、用いる熱可塑性ポリエステルの種類により最適化される必要があるが、GPCの測定によるポリスチレン換算で表記された重量平均分子量が10,000〜200,000のものが好ましく、特に20,000〜150,000のものが好適である。重量平均分子量が前記範囲内にあれば、成形したときに成形品の機械的特性が高く、また、成形性にも優れている。
【0023】
ポリカーボネート(PC)とポリエチレンテレフタレート(PET)とのアロイまたはポリカーボネート(PC)とポリブチレンテレフタレート(PBT)とのアロイを使用する場合、PC:PET重量比、またはPC:PBT重量比は、特に制限されるものではなく、(1):(99)〜(99):(1)、好ましくは(2):(98)〜(98):(2)の範囲にあることが望ましい。
【0024】
本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとのブロック共重合体、プロピレンと数重量%以下の他のオレフィンとのランダム共重合体、さらに、またはポリプロピレンが不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された酸変性ポリプロピレンを使用することが可能である。
【0025】
脂環式ポリエステル樹脂としては、下記式(I)で表される繰返単位を有するポリエステルが挙げられる。
【0026】
【化1】
Figure 0004392744
【0027】
式中Rはジオールから誘導される二価の残基であり、R1は二価酸(二価カルボン酸)から誘導される2価の残基であり、RまたはR1の少なくとも1つはシクロアルキル環を含む基である。
【0028】
具体的には、Rは6〜20の炭素原子を有するジオールを含むアリール、アルカンまたはシクロアルカン残基であり、RあるいはR1の少なくとも1方が脂環基である。特に、RおよびR1の両方が、脂環基であることが望ましい。
【0029】
このような脂環族ポリエステルとして具体的には、ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCD)が挙げられる。
【0030】
その他成分
本発明に係る成形方法では、上記した熱可塑性樹脂とともに、自動車外板用成形品に配合される公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0031】
耐衝撃改良剤としては、共役ジエンまたはアクリルエラストマーのアクリル酸またはメタクリル酸変性物、またはその芳香族ビニル共重合物が挙げられる。
【0032】
一般に、これらの耐衝撃改良剤は、ブタジエンまたはイソプレン、ブチルアクリレート、または必要に応じて芳香族ビニル化合物から誘導される構成単位を含んでいる。具体的な耐衝撃改良剤としては、エチレン・酢酸ビニル、エチレン・エチルアクリレート共重合体、SEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)、およびSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)ブロック共重合体、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・モノマー)、EPR(エチレン・プロピレン・ゴム)共重合体などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。耐衝撃剤は、全組成物重量に対して20重量%未満の量で含まれていることが好ましい。
【0033】
また組成物には、離型剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、などが含まれていてもよい。
【0034】
離型剤としてはメチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーン系離型剤、ペンタエリスリトールテトラステアレートやグリセリンモノステアレート、モンタン酸ワックスなど多価アルコールのカルボン酸エステル、ポリα-オレフィンもしくはその誘導体などのオレフィン系離型剤などが挙げられる。
【0035】
安定剤として好適に用いられるものとしては、少なくとも1個の水素又はアルキル基をもつ酸性ホスファイト、アルキルホスファイト、アリールホスファイト又は混合ホスファイト、第IB族又は第IIB族金属のリン酸塩、リンのオキソ酸、酸性ピロリン酸金属塩又はそれらの混合物が挙げられる。使用すべき割合の決定はポリエステル成分、ポリカーボネート成分個々の使用量に対して最適化される必要がある。
【0036】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤などが用いられる。また、エポキシ系安定剤も用いるができる。
【0037】
さらに、無機及び有機燐系もしくはチオエステル系の安定剤、チオール系、金属塩系などの安定剤を用いることもできる。
【0038】
樹脂組成物には、その物性を損なわない限り、目的に応じて樹脂組成物の混合時または成形時に、公知の添加剤、たとえば着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、染料)、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ケプラー繊維、ポリアリレート繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズなど)、滑剤、可塑剤、難燃剤、流動性改良剤などが、添加されていてもよい。
【0039】
これらの添加剤の添加量は、樹脂成分など使用量に応じて適宜選択される。
【0040】
なお、成形品の耐衝撃性を向上させるため、特にガラス繊維を配合することが望ましい。ガラス繊維としては、各種繊維長のものが用いられ、本発明では成形品中の平均繊維長が1〜15mm、特に2〜12mm程度の範囲となる範囲にあればよい。したがって、成形品中のガラス繊維の平均繊維長が確保されれば、成形原料としては特に制限はない。しかしながら、成形品中のガラス繊維長をあるレベルに保つため、一般的には、全長が2〜100mm好ましくは3〜50mmであり、この全長と等しい長さのガラス繊維が互いに平行に配列され、ガラス繊維の含有率が20〜80重量%であるガラス繊維強化ポリプロピレン系樹脂ペレットを用いることが好ましい。ガラス繊維としては、E−ガラス、S−ガラスなどのガラス繊維であって、その平均繊維径が25μm以下のもの、好ましくは3〜20μmの範囲のものが、成形しやすく、また流れ性にも優れているので好適である。ガラス繊維は、樹脂との混和性を向上させるためにカップリング剤で表面処理してもよい。カップリング剤としては、いわゆるシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤として従来からあるものの中から適宜選択することができる。
【0041】
さらに、本発明では、必要に応じて、発泡剤を含んでいてもよい。発泡剤としては、特に限定されるものではなく、それぞれの樹脂原料の溶融温度における熱による分解などによってガスを発生する化学発泡剤や物理発泡剤がある。化学発泡剤としては、シュウ酸誘導体、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド、アジド化合物、ニトロソ化合物、トリアゾール、尿素およびその関連化合物、亜硝酸塩、水素化物、炭酸塩ならびに重炭酸塩等が採用できる。物理発泡剤としては、ペンタン、ブタン、フッ素化合物、水、炭酸ガス、窒素ガスなどがあげられる。
【0042】
成形方法
本発明に係る無塗装自動車外板用成形品の成形方法は、
前記した熱可塑性樹脂を含む組成物を溶融し(溶融組成物という)、該組成物を、加熱時の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射出することを特徴としている。このようなヒート・クールサイクルとなるように金型温度を調整すると得られた成形品表面に模様が生じたりすることがなく、表面性状が高品質であり、金型から離型することも容易である。
【0043】
また、射出成形時に、溶融組成物を金型内部に射出完了した後または射出しながら金型を高い圧力で閉じ、射出された溶融組成物を圧縮流動させてもよい。
【0044】
本発明で使用する金型温度制御システムは、昇温時には冷水、冷却油を止めて熱水、加熱油あるいは電熱ヒーターを単独もしくは併用して使用し、降温時には熱水、加熱油あるいは電熱ヒーターの通電を止め、冷水、冷却油を同一の金型温調用管路あるいは別々の金型温調用管路に回すものである。このような金型システムは、図1に示される(後述)。この際、昇温に使用する熱水、加熱油の温度は高い程、降温に使用する冷水、冷却油の温度は低い程、また、その流量は多いほど成形サイクルの短縮が可能になる。電熱ヒーターについては、電力密度が高い程好ましい。金型温調管路について、金型強度上問題の無い範囲で数多く設けるほど、効率は良くなり成形サイクルの短縮ができる。
【0045】
金型温度を熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くしておく時間は、熱可塑性樹脂を金型内部に射出開始してから完了する迄の少なくとも一部の期間であればよく、それ以外の時間は特に制限されない。
【0046】
成形時に5〜120℃/分の温度勾配で急加熱および/または急冷することが好ましい。このため、金型には、加熱用の電熱ヒーターが内蔵されていてもよく、また、成形サイクルの間に金型温度を昇温、降温を開始するタイミングは、任意に制御可能であることが望ましい。具体的には、金型内に埋め込まれた温度センサーもしくはあらかじめ設定されたタイマーによって温度を感知し、次の冷却工程に移せばよい。また、このときタイマーにより冷却工程に移る時間を遅延制御することも可能である。
【0047】
金型を加熱するために使用される加熱媒体としては、熱水、水蒸気、加熱油などが挙げられる。金型の降温のために使用される冷却媒体としては、冷水または冷却油の少なくとも一方を使用することが好ましい。
【0048】
前記金型の昇温または降温を制御する系と金型温調系とが少なくとも一部共用されていてもよく、また、前記金型の昇温または降温を制御する系と金型温調系とが別個の系統として形成されていてもよい。
【0049】
本発明では、上記熱可塑性樹脂を含む溶融組成物は、射出成形機のシリンダーに供給される。
【0050】
射出成形機のシリンダーとしては、スクリュー、シリンダーを具備し、加温・加圧の制御が可能なものが使用される、
図1は本発明に係る成形品の成形法を実施するに適する金型温度制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0051】
この金型温度制御系は、熱水用温調機1と冷却水用チラー2を配設し、それぞれ切替えユニット3に接続してある。切替え制御ユニット3には、金型4に冷水、温水を供給するための出口5と回収するための戻り口6がある。所望の金型温度を達成するために、装置内の各切替えバルブVIN、VRが適宜状態となるように切替え制御ユニット3の制御を行う。
【0052】
図2は、金型の断面図である。この金型は、固定側7と可動側8との合せ面にキャビティ9が形成され、固定側7にはキャビティ7内に溶融樹脂を充填させるためのスプルー10とゲート11が設けられている。金型内のキャビティ部は所望の成形品形状となるように空間が構成されている。
【0053】
本発明によれば、溶融樹脂の射出時に金型温度を熱変形温度よりも高くすることにより、溶融樹脂は急激に冷却されること無く、十分な溶融状態のまま充填することができる。このように溶融状態のまま充填することにより、ジェッティングやウエルドラインを解消することができ、金型の転写率も飛躍的に改善され、成形品の光沢が向上すると共に、無機フィラーが充填されていてもフィラーの浮きは全く無くなり、無充填材料と同等の優れた外観品質の成形品を得ることができる。また、樹脂の流動性も向上させることができる。さらに、表面の耐擦傷性が高くなり、さらに配合剤が含まれている場合には極めてランダムに分散させることができるので、耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。
【0054】
また、本発明では、必要に応じて、射出時に発泡ガスを吹き込んだり、あるいはあらかじめ溶融組成物中に発泡剤を配合しておき、成形品を発泡させてもよい。
【0055】
成形品
本発明に係る無塗装自動車外板用成形品は、前記方法からなるものであり、樹脂製の自動車構成部品であり、なおかつ主要部が板状の部品に適用される。
【0056】
このような成形品としては、ピラー、フェンダー、ドアパネル、スポイラー等として好適である。
【0057】
このような無塗装自動車外板用成形品は、上記したような特定の製造方法で成形されているため、表面の耐擦傷性が高く、傷が付きにくいという特長を有している。また、外観品質も高いので、クリア塗膜を設ける必要もない。
【0058】
ドアパネルは、通常金属製の外板に対応する面積を有し、中間に機能部品などが挿入可能な空間ができるような形状を有している。また、主要部の板状部の他に、肘掛けなどの凸部が形成される場合が一般的である。一方ピラーとしては、フロントピラー、センターピラー、リアークォーターピラーなどがあり、自動車本体が天井部分を支える金属製の外板に装着される。また、フェンダーは車輪の泥よけの覆いである。またスポイラーは、後部上方に設け、空気流を利用して駆動力を増すための安定翼であり、または前部下方に設け、高速時の車体の浮上を防止する固定板である。
【0059】
これらは、主要部が板状を有し、主としてあるレベル以上の曲げ強度、曲げ剛性、さらには衝撃強度、耐熱性が要求されるとともに、外観に優れることなど、共通の特性を求められるものである。
【0060】
また、本発明ではクリア塗膜を形成する必要がないので、廃成形品や規格外成形品は溶融すればリサイクル可能であり、資源の有効利用という点でも好ましい。
【0061】
なお、これらの成形品の肉厚としては、車種やその成形品が使用される部品の規格に応じて適宜選択される。
【0062】
【発明の効果】
本発明の成形方法によれば、金型に特定のヒートサイクル処理を施しているので、極めて表面外観品質の優れた自動車外板用成形品を得ることができる。このような成形品は、クリア塗膜を形成しなくともよい。また、かかる成形方法によれば、耐衝撃性、耐擦傷性にも優れた成形品を得ることができる。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、より詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
なお、実施例、比較例では、以下の樹脂材料を使用した。
【0065】
脂環族ポリエステル
脂環族ポリエステルとしては、ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCD)を使用した。
【0066】
ポリカーボネート (PC)
PCとして、日本ジーイープラスチックス(株)製、レキサン105を使用した。
【0067】
脂環族ポリエステル樹脂組成物
脂環族ポリエステル組成物として、前記PCCD:30重量部、前記PC(レキサン105):70重量部とを、溶融混練して得られた組成物を使用した。
【0068】
ポリエステルアロイ
PC/PETアロイとして、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートとの70:30重量比の混合組成物を使用した。
【0069】
PC/PBTアロイとして、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートとの70:30重量比の混合組成物を使用した。
【0070】
【実施例1、参考例2および3
成形
上記各樹脂(実施例1、参考例2および3)を加熱して溶融した後、前記図2に示す制御システムを有する成形装置内の金型に充填した。
【0071】
加熱時の金型温度(Th)を140℃にし、冷却後、取り出し時の金型温度(Tc)を40℃にして、射出成形を行った。樹脂組成物を射出開始後に、可動金型を前進させ、金型キャビティ内に充填した。射出後、可動金型を後退させ、冷却、金型を開放して成形品を得た。
【0072】
成形条件
成形品形状;箱型 150x8x12mm
成形樹脂温度;260℃
射出速度;中速
色相評価
色相評価は色差計又は光沢度計を用いて100mm×100mm×3mmの各板サンプルにおける耐擦傷性テスト前後の彩度C、明度L、光沢度Gおよび外観を評価した。
【0073】
なお耐擦傷性は、上記したサンプルの表面にポリプロピレン製ブラシを2分間一定の速さでこすりつけることを2回繰り返すことによってテスト前後のサンプルの表面状態を比較することによって評価した。
【0074】
耐擦傷性の指標は以下のとおり。
【0075】
優 ・・・○
良 ・・・△
不可・・・×
外観
外観は以下の指標で目視評価した。
【0076】
優 ・・・○
良 ・・・△
不可・・・×
結果を表1に示す。
【0077】
【比較例1〜3】
成形
上記実施例1、参考例2および3の各樹脂を溶融した後、前記図1に示す制御システムを有する成形装置内の金型に充填し、加熱時の金型温度(Th)を50℃にし、冷却後、取り出し時の金型温度(Tc)を50℃にして、実施例と同様に射出成形を行った。
【0078】
得られた成形品について評価した。
【0079】
結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
Figure 0004392744

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る成形法を実施するに適した金型温度制御系の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る成形法を実施するに適した金型の実施例の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 熱水温調機
2 冷水用チラー
3 切り替えユニット
4 金型
5 金型への熱冷水供給口
6 金型からの熱冷水戻り口
7 固定金型
8 可動金型
9 キャビティ
10 スプルー
11 ゲート

Claims (3)

  1. ポリカーボネートと脂環族ポリエステルとのアロイからなる熱可塑性樹脂を含む溶融組成物を射出成形するに際して、前記溶融組成物を金型内部に射出開始してから完了する迄の少なくとも一部の期間の金型温度(Th)が射出する熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃高くなるように設定され、冷却後の取出し時の金型温度(Tc)が熱可塑性樹脂の熱変形温度より0℃〜100℃低くなるように設定された金型(ただしTh>Tc)に射出することを特徴とする無塗装自動車外板用成形品の成形方法。
  2. 前記溶融組成物を、金型内部に射出完了した後または射出しながら金型を高い圧力で閉じ、射出された溶融組成物を圧縮流動させる工程を含む請求項1に記載の成形方法。
  3. 前記請求項1または2に記載の成形方法からなる無塗装自動車外板用成形品
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