JP4392123B2 - 等速ジョイント用外輪部材の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャビティに鍛造用素材が配設され、パンチの加圧作用下に前記鍛造用素材を鍛造成形することにより、等速ジョイント用外輪部材を形成する等速ジョイント用外輪部材の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、互いに接合された上部ダイスおよび下部ダイスに形成されるキャビティに鍛造用素材を装填し、パンチを介して前記鍛造用素材に加圧力を付与することにより、鍛造用素材を所定形状に鍛造成形する金型装置が知られている。
【0003】
この種の金型装置を用いて、例えば、自動車の車輪駆動用の等速ジョイントの外輪部材(アウタカップ)が冷間鍛造成形方法によって製造されている。前記外輪部材は、碗状または筒状のカップ部と、前記カップ部と一体的に形成される軸部とから構成され、前記カップ部の内周面には、軸線方向に沿って延在するボール溝またはトラック溝が形成され、前記ボール溝およびトラック溝に沿ってボールまたはローラが転動するように設けられている。
【0004】
従来技術に係る冷間鍛造成形方法によって等速ジョイントの外輪部材を鍛造成形する工程について以下に概略説明する。
【0005】
先ず、所定長に接続された円柱状のワーク(鍛造用素材)に対して球状化焼鈍処理を施し、続いて、その表面にボンデライト処理によって燐酸塩被膜等の潤滑用化成被膜を形成した後、第1鍛造用金型によって前方押し出し成形を行うことにより軸線方向に沿って延在する軸部が形成される(第1工程)。
【0006】
次に、ワークの未加工部分に対して、第1鍛造用金型とは異なる他の第2鍛造用金型を介して据え込み成形を施す第2工程が行われる。そして、前記据え込み成形がなされた成形品に対し、応力除去等のために低温焼鈍処理、前記低温焼鈍処理の際に発生する酸化スケール等を除去するショットブラスト処理、および、ワークの外表面に潤滑用化成被膜を形成するボンデライト処理をそれぞれ行う。
【0007】
続いて、ワークに対して、カップ部を形成するとともに、その内周面にボール溝またはローラ溝を形成する後方押し出し成形を施す第3工程が行われる。この後方押し出し成形は、前記第1および第2鍛造用金型とは異なる他の第3鍛造用金型によって行われる。前記後方押し出し成形がなされた成形品に対し、低温焼鈍を施してワークを軟化させた後、ショットブラスト処理によって酸化スケール等を除去し、さらに、成形時に潤滑性を得るためにボンデライト処理を行う。
【0008】
最後に、前記第1乃至第3鍛造用金型とは異なる他の第4鍛造用金型によって、最終的な製品形状に仕上げるためのしごき加工(最終サイジング成形)を第4工程として行うことにより、完成品が得られる。
【0009】
このように、従来技術に係る鍛造成形方法では、それぞれ構造が異なる第1乃至第4鍛造用金型を用いて鍛造用素材に対する各種の鍛造成形を行うとともに、鍛造成形工程の間に種々の処理作業がなされる。
【0010】
なお、第4工程のしごき加工を行う前に、低温焼鈍、ショットブラスト処理およびボンデライト処理等を行うのは、後方押し出し成形を行った第3工程の後にしごき加工を連続して行った際、しごき加工中にカップ部の内面に割れが生ずるおそれがあるからである。このため、従来技術に係る鍛造成形方法では、しごき加工を行う前に低温焼鈍等の各種処理が必要となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、等速ジョイント用外輪部材として最終的な製品形状に仕上げるためのしごき加工(最終サイジング成形)である第4工程を省略するとともに、前記しごき加工を行う前の低温焼鈍等の各種の処理をも省略して製造工程を簡素化し、しかも、第4工程で使用される高価な第4鍛造用金型を不要とすることにより製造コストを大幅に削減することが可能な等速ジョイント用外輪部材の成形方法を提供することを目的とする。
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、略円柱状の鍛造用素材に対して前方押し出し成形を施すことにより、等速ジョイント用外輪部材の軸部を成形する工程と、
前記軸部を除いた部分に対して据え込み成形を施すことにより等速ジョイント用外輪部材のカップ部を成形するとともに、前記カップ部の端面に上端凹部を形成する工程と、
前記カップ部の上端凹部にパンチの一端部を挿入して加圧することにより後方押し出し成形を行い、製品完成精度を有する等速ジョイント用外輪部材を成形する工程と、
を有し、
パンチの変位作用下に加圧力が付与されて後方押し出し成形が施される際、型部材のキャビティ面に軸方向に沿って所定間隔離間して配置され、軸方向に円柱面形状で、製品精度を形成する第1成形部および第2成形部と、
前記第1成形部と第2成形部との間に周方向に沿って等角度離間して配置され、型部材のたわみ量を見込んだ3つの凹部とによって鍛造用素材の外周面に対して前記後方押し出し成形を行うことにより、外形における製品の完成精度が形成され、
同時に、前記パンチの一端側に形成された成形ランド部によって前記鍛造用素材の前記上端凹部の内壁面に対して後方押し出し成形がなされ、前記成形ランド部によって押し出された前記鍛造用素材の肉が前記成形ランド部に隣接する凹部に沿って流動し、さらに、パンチの他端側に形成された凸部によって歪み矯正がなされることにより、内形における製品の完成精度が形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、予備成形体に対して後方押し出し成形を施す際、前記予備成形体のカップ部に凹部が予め形成されていることにより、後方押し出し成形時における塑性流動性が円滑となり、等速ジョイント用外輪部材の製品完成精度が向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係る等速ジョイント用外輪部材の成形方法について、これを実施する鍛造用金型装置との関連において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0019】
図1において、参照数字10は本発明の実施の形態に係る等速ジョイント用外輪部材の成形方法を実施する鍛造用金型装置を示す。
【0020】
この鍛造用金型装置10は、第1ダイプレート12および第2ダイプレート14を有し、前記第1ダイプレート12上には、厚肉に形成された圧入リング18が図示しない固定部材を介して固定されている。
【0021】
前記圧入リング18の孔部内には、円筒状に形成されたインサート部材20が内嵌されている。この場合、インサート部材20の外径は、圧入リング18の内径よりも若干大きく設定されており、前記インサート部材20は、締まりばめにて圧入リング18の孔部内に嵌入される。
【0022】
前記インサート部材20の内部には、分割して形成された上部ダイス22および下部ダイス24が軸線方向に沿って一体的に結合され、前記上部ダイス22および下部ダイス24の内部には、後述する鍛造用素材が装填されるキャビティが形成されている。なお、前記上部ダイス22および下部ダイス24は、型部材として機能するものである。
【0023】
前記上部ダイス22の上面には、図1に示されるように、パンチ26が挿入される孔部28が形成された第1リング体30が接合され、また、インサート部材20の上面には前記第1リング体30に外嵌される大径な第2リング体32が接合され、さらに、圧入リング18の環状凹部には第2リング体32に外嵌される大径な第3リング体34が一体的に接合される。
【0024】
この場合、第2リング体32を外嵌するように第3リング体34を圧入リング18に対して締結することにより、第3リング体34に形成されたテーパ面34aが第2リング体32に形成された逆テーパ面32aに摺接し、第1リング体30および第2リング体32を下方側に向かって押圧する力が作用する。
【0025】
なお、前記第1リング体30の孔部28の上部には、パンチ26が挿入される際に該パンチ26を案内する環状のガイド溝(図示せず)を形成するとよい。
【0026】
前記上部ダイス22および下部ダイス24によって形成されるキャビティの下部側には、鍛造品を押し出すためのノックアウトピン36が第1ダイプレート12に形成された孔部38に沿って進退自在に配設される。このキャビティには、鍛造用素材として後述する第2次成形品が装填される。
【0027】
前記上部ダイス22の内周面は、軸線方向に沿って所定間隔離間する一組の略円筒面からなり、図2に示されるように、製品精度を形成する第1成形部40aおよび第2成形部40bと、前記第1成形部40aと第2成形部40bとの間に設けられ、鍛造成形するときの上部ダイス22および下部ダイス24のたわみ量を見込んで形成された凹部42a〜42cとから構成される。
【0028】
前記凹部42a〜42cは、第1成形部40aと第2成形部40bとの間に軸線方向に沿って所定長だけ延在している。なお、前記凹部42a〜42cは、前記第1成形部40aおよび第2成形部40bに対して、約0.1mm〜0.7mmだけ凹状に形成されるとよい。
【0029】
図1に示されるように、圧入リング18から所定距離離間する上方には、図示しない機械プレスのラム(図示せず)に連結され、前記機械プレスの駆動作用下にラムと一体的に上下方向に沿って変位する昇降部材44が設けられる。前記昇降部材44には治具46を介してパンチ26が固定され、前記パンチ26の外周部の所定部分には円筒状の金属製材料で形成されたガイドスリーブ48が外嵌される。
【0030】
前記ガイドスリーブ48には、図3に示されるように、複数の孔部を介してグラファイト49が埋設され、第1リング体30の孔部28に対して圧入される際の潤滑特性を良好に保持することができる。この場合、パンチ26に外嵌されたガイドスリーブ48の外周側の直径は、第1リング体30の孔部28の内周側の直径よりも若干大きく設定されている。
【0031】
なお、ガイドスリーブ48を、例えば、ロックウェル硬さHRC58〜60からなるSKD11等の金属製材料によって形成し、また、第1リング体30を、ガイドスリーブ48よりも硬質な金属製材料によって形成すると好適である。
【0032】
パンチ26は、第1ダイプレート12に立設された複数の図示しないガイド手段の案内作用下に昇降部材44と一体的に上下方向に沿って変位自在に設けられ、例えば、ロックウェル硬さHRC62〜64からなるSKH51等の金属製材料によって形成されると好適である。
【0033】
このパンチ26の一端部には、図4および図6に示されるように、周方向に沿って約120度の離間角度をおいて3個の突条部50a〜50cが設けられ、各突条部50a〜50cは、該パンチ26の軸線方向に沿って所定長だけ延在するように形成される。3個の突条部50a〜50cは、等速ジョイントを構成するカップ部の内壁面に形成された図示しない案内溝(トラック溝)に対応するものであり、前記パンチ26の突条部50a〜50cによってカップ部の軸線方向に沿って延在し且つ周方向に沿って等角度離間する3個の案内溝が形成される。前記突条部50a〜50cの一端側であるパンチ26の先端面には、複合曲線状に面取りされた面取り部52が全周にわたって形成されている。
【0034】
図5は、1つの突条部50a(50b、50c)を上方側から見た一部省略拡大平面図であり、この突条部50a(50b、50c)の一端側(パンチ26の先端側)には、所定幅Bの凸部からなる成形ランド部54がパンチ26の周方向に沿って形成されている。この成形ランド部54は、3個の突条部50a〜50cおよび隣接する突条部50a〜50c間の溝部56a〜56cを含む全周にわたって形成されている。
【0035】
ガイドスリーブ48に近接するパンチ26の中間部分には、図5に示されるように、前記成形ランド部54よりも大きな所定幅Cを有する凸部58が形成され、前記凸部58は、該成形ランド部54と同様に、3個の突条部50a〜50cおよび隣接する突条部50a〜50c間の溝部56a〜56cを含む全周にわたって形成されている。
【0036】
前記成形ランド部54と前記凸部58との間には、3個の突条部50a〜50cおよび隣接する突条部50a〜50c間の溝部56a〜56cを含む全周にわたって凹部60が形成され、前記凹部60は、成形ランド部54によって鍛造用素材を鍛造成形するときの歪み量を見込んだ凹部として製品精度をだすために機能するものである。
【0037】
なお、前記凹部60は、成形ランド部54および凸部58に対して、約0.1mm〜0.7mmだけ凹状に形成されるとよい。
【0038】
この場合、3個の突条部50a〜50cおよび隣接する突条部50a〜50c間の溝部56a〜56cを含む全周にわたって形成された凹部60および凸部58は、上型であるパンチ26の歪みを素材に転写するとともに、製品精度を形成する精度矯正部62を構成するものである。
【0039】
本発明の実施の形態に係る等速ジョイント用外輪部材の成形方法を実施する鍛造用金型装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0040】
先ず、鍛造用素材に対する鍛造成形の工程について図8A〜8Dに基づいて説明する。
【0041】
図8Aに示される円柱状のビレット(鍛造用素材)70に対して図示しない第1鍛造用金型によって第1次鍛造成形(前方押し出し成形)を施すことにより、中間部の段部を介して直径がそれぞれ異なる第1次成形品72が得られる(図8B参照)。
【0042】
続いて、前記第1次成形品72に対して予備成形を施して予備成形品74(図8C参照)を得た後、さらに、図示しない他の第2鍛造用金型によって前記予備成形品74に対して第2次鍛造成形(据え込み成形)を行うことにより、カップ部76aと軸部76bとからなる第2次成形品78が得られる(図8D参照)。
【0043】
この場合、第2次成形品78は予備成形体として機能するものであり、そのカップ部76aの上面部には、断面略半球状の凹部80が形成されている。なお、前記凹部80の形状は、断面略半球状に限定されるものではなく、カップ部76aの肉がパンチ26の外周面に沿って軸部76bと反対側の後方に向かって塑性変形して容易に押し出される形状であればよい。
【0044】
鍛造用金型装置10は、この第2次成形品78を鍛造用素材78としてさらに第3次鍛造成形を施すことにより、最終製品形状に仕上げるものである。
【0045】
先ず、準備作業として、上部ダイス22および下部ダイス24によって形成されるキャビティに対してパンチ26が予め位置決めされているものとする。そして、図示しない機械プレスの駆動作用下にラム(図示せず)に連結された昇降部材44と一体的にパンチ26が下降し、図1に示す状態となることにより鍛造成形が開始される。
【0046】
なお、パンチ26が昇降部材44と一体的に下降する際、前記昇降部材44と第1ダイプレート12との間に設けられた複数の図示しないガイド手段によって横方向の荷重が好適に吸収され、前記パンチ26が第1リング体30の孔部28の中心に円滑に圧入される。
【0047】
鍛造成形を開始する際、パンチ26の外周面の一部に外嵌されたガイドスリーブ48は、第1リング体30の孔部28の上端部に形成された環状のガイド溝(図示せず)の案内作用下に進入し、さらに、パンチ26が下降することにより、パンチ26およびガイドスリーブ48は、第1リング体30の孔部28内に圧入された状態で一体的に変位する。
【0048】
このようにしてパンチ26が下降し、図1に示される成形開始位置から図7に示される成形終了位置に到達することにより、このパンチ26と上部ダイス22および下部ダイス24を介して鍛造用素材78に対して鍛造成形が施され、前記鍛造用素材78がキャビティの形状に沿って塑性流動する。
【0049】
すなわち、下降するパンチ26の一端部が鍛造用素材78のカップ部76aの上面部に当接して加圧されることにより、前記パンチ26の一端側に形成された成形ランド部54によって鍛造用素材78の内壁面に対して後方押し出し成形がなされる。鍛造用素材78に対して後方押し出し成形が施される際、前記鍛造用素材78のカップ部76aの上面部に断面略半球状の凹部80が予め形成されていることにより、後方押し出し成形時における塑性流動性が円滑となり、製品完成精度を向上させることができる。
【0050】
そして、前記成形ランド部54によって押し出された鍛造用素材78の肉は、パンチ26の凹部60に沿って流動し、さらに、ガイドスリーブ48側に形成された凸部58によって据え込み成形が施される。
【0051】
換言すると、鍛造成形時におけるパンチ26の歪みが成形ランド部54によって鍛造用素材78に対して転写される場合であっても、前記パンチ26のたわみ量を見込んだ凹部60がその逃げとして許容され、終局的には、前記凹部60に連続する凸部58によって案内溝(トラック溝)等の形状を含む製品(完成製品)の内形精度が確保される。
【0052】
同時に、上部ダイス22に形成された第1成形部40a、第2成形部40bおよび凹部42a〜42cによって鍛造用素材78の外周面に対して据え込み成形および後方押し出し成形がなされる。
【0053】
すなわち、鍛造成形時における上部ダイス22および下部ダイス24の歪みが鍛造用素材78に転写される場合であっても、前記上部ダイス22および下部ダイス24のたわみ量を見込んだ凹部42a〜42cがその逃げとして許容され、終局的には、凹部42a〜42cに隣接して設けられた第1成形部40aおよび第2成形部40bによって製品の外形精度が形成される。
【0054】
このようにして鍛造成形が終了した後、図示しない機械プレスの駆動作用下にラム(図示せず)に連結された昇降部材44と一体的にパンチ26が所定位置まで上昇することにより、該パンチ26およびガイドスリーブ48が第1リング体30の孔部28から離間し、次なる工程の待機状態となる。そして、ノックアウトピン36の変位作用下に完成製品精度を有する等速ジョイント用外輪部材(鍛造品)82が取り出される(図9参照)。
【0055】
本実施の形態では、鍛造用素材78のカップ部76aの上面部に予め断面略半球状の凹部80を形成して後方押し出し成形時における塑性流動性の円滑化を図り、しかも、パンチ26に形成された成形ランド部54および精度矯正部62(凹部60および凸部58)と、上部ダイス22に形成された第1成形部40a、第2成形部40bおよび凹部42a〜42cとの共働作用下に、製品の内形精度および外形精度が同時に確保される。
【0056】
従って、本実施の形態では、従来において最終的な製品形状に仕上げるためのしごき加工(最終サイジング成形)である第4工程を省略することができるとともに、前記しごき加工を行う前の低温焼鈍等の各種の処理をも省略して製造工程を簡素化することができる。この結果、本実施の形態では、従来において第4工程で使用していた高価な第4鍛造用金型(図示せず)が不要となり製造コストを大幅に削減することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、鍛造用素材78のカップ部76aの上面部に予め断面略半球状の凹部80を形成して後方押し出し成形を行うときの鍛造用金型装置10に対する負荷を軽減することにより、上部ダイス22および下部ダイス24等の型部材の耐久性を向上させることができる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、上部ダイス22の内周面に周方向に沿って所定角度離間する凹部42a〜42cを形成し、前記凹部42a〜42cを除いた円周面が鍛造用素材78との接触面となるため、鍛造成形時における成形負荷を低減し、上部ダイス22および下部ダイス24の耐久性を向上させることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、完成品としてトリポートタイプの等速ジョイント用外輪部材82(図9参照)に基づいて説明しているが、カップ内にボール転動溝84a、84bが形成されたバーフィールドタイプの等速ジョイント用外輪部材86(図10参照)にも適用することができることは勿論である。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0061】
すなわち、鍛造用素材に対して後方押し出し成形が施される際、前記鍛造用素材のカップ部に凹部が予め形成されていることにより、前記凹部によって成形の際の型部材に付与される負荷を低減させて前記型部材の寿命を延ばし、また、成形性を向上させて高い寸法精度が得られ、しかも、後方押し出し成形時における塑性流動性が円滑となり、製品完成精度を向上させることができる。
【0062】
しかも、パンチに形成された成形ランド部、凹部および凸部と、型部材に形成された第1成形部、第2成形部および凹部との共働作用下に製品の内形および外形精度が同時に確保されるため、従来行われていた最終的な製品形状に仕上げるためのしごき加工(最終サイジング成形)である第4工程を省略するとともに、前記しごき加工を行う前の低温焼鈍等の各種の処理をも省略して製造工程を簡素化することができる。
【0063】
従って、本発明では、従来において第4工程で使用される高価な第4鍛造用金型を不要とすることにより製造コストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る等速ジョイント用外輪部材の成形方法を実施する鍛造用金型装置の一部省略縦断面図である。
【図2】前記鍛造用金型装置を構成する上部ダイスの内壁面を示す部分拡大図である。
【図3】前記鍛造用金型装置を構成するパンチの縦断面図である。
【図4】前記パンチの一部省略斜視図である。
【図5】前記パンチの一部省略拡大平面図である。
【図6】図3の矢印A方向からみた矢視図である。
【図7】パンチが降下して鍛造成形が終了した状態を示す動作説明図である。
【図8】図8A乃至図8Dは、それぞれ鍛造用素材に対する鍛造成形の工程を示す説明図である。
【図9】前記鍛造用金型装置によって鍛造成形された等速ジョイント用外輪部材の一部切欠断面図である。
【図10】バーフィールドタイプの等速ジョイント用外輪部材の一部切欠断面図である。
【符号の説明】
10…鍛造用金型装置 12、14…ダイプレート
18…圧入リング 20…インサート部材
22…上部ダイス 24…下部ダイス
26…パンチ 30、32、34…リング体
40a、40b…成形部 42a〜42c、60、80…凹部
48…ガイドスリーブ 50a〜50c…突条部
52…面取り部 54…成形ランド部
56a〜56c…溝部 58…凸部
62…精度矯正部 76a…カップ部
76b…軸部 78…鍛造用素材
82、86…等速ジョイント用外輪部材
Claims (1)
- 略円柱状の鍛造用素材に対して前方押し出し成形を施すことにより、等速ジョイント用外輪部材の軸部を成形する工程と、
前記軸部を除いた部分に対して据え込み成形を施すことにより等速ジョイント用外輪部材のカップ部を成形するとともに、前記カップ部の端面に上端凹部を形成する工程と、
前記カップ部の上端凹部にパンチの一端部を挿入して加圧することにより後方押し出し成形を行い、製品完成精度を有する等速ジョイント用外輪部材を成形する工程と、
を有し、
パンチの変位作用下に加圧力が付与されて後方押し出し成形が施される際、型部材のキャビティ面に軸方向に沿って所定間隔離間して配置され、軸方向に円柱面形状で、製品精度を形成する第1成形部および第2成形部と、
前記第1成形部と第2成形部との間に周方向に沿って等角度離間して配置され、型部材のたわみ量を見込んだ3つの凹部とによって鍛造用素材の外周面に対して前記後方押し出し成形を行うことにより、外形における製品の完成精度が形成され、
同時に、前記パンチの一端側に形成された成形ランド部によって前記鍛造用素材の前記上端凹部の内壁面に対して後方押し出し成形がなされ、前記成形ランド部によって押し出された前記鍛造用素材の肉が前記成形ランド部に隣接する凹部に沿って流動し、さらに、パンチの他端側に形成された凸部によって歪み矯正がなされることにより、内形における製品の完成精度が形成されることを特徴とする等速ジョイント用外輪部材の成形方法。
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