JP2515144B2 - 等速ジヨイントの成形方法 - Google Patents

等速ジヨイントの成形方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は自動車部品である等速ジョイントの成形方法
に関し、一層詳細には、中空のカップ形状を呈し内周に
ローラベアリングの転動するトラック溝を有した等速ジ
ョイントの転動するトラック溝を有した等速ジョイント
の外輪の予備成形体を押出成形する工程と、前記予備成
形体の外周部をしごくことによって最終形状品を得るサ
イジング工程からなる成形方法であって、成形に用いる
パンチの耐用性を向上させ、また、前記トラック溝の形
状精度を高めることの可能な等速ジョイントの成形方法
に関する。
[発明の背景] 例えば、自動車の車輪駆動部における差動装置と前輪
軸とを連結する等速ジョイント外輪は、ビレットを鍛造
することで第1の予備成形体を形成する冷間鍛造工程
と、前記第1予備成形体から押出金型を用いて第2の予
備成形体を形成する押出成形工程と、前記第2予備成形
体から最終的な仕上げ寸法の完成品を形成するサイジン
グ工程とによって製造されている。
そこで、先ず、第1図に基づき第1の工程である冷間
鍛造工程を説明する。この工程では円柱状のビレット2a
を鍛造することでビレット2bからビレット2cとした後、
その端部に据込部4aを有した第1の予備成形体4を形成
する。次いで、第2の工程である押出成形工程におい
て、前記据込部4aが第2図に示す押出パンチ6によりカ
ップ形状に成形され、第2の予備成形体であるブランク
8が形成される。
ここで、押出パンチ6により形成されるブランク8は
本出願人により既に提案されている等速ジョイントの外
輪の予備成形体である(特願昭62-25098号参照)。すな
わち、第2予備成形体であるブランク8は、第3図に示
すように、その一端部に従動軸10が一体形成され且つ他
端部が開口するカップ形状を呈しており、前記ブランク
8の内部にはその軸線方向に延在して図示しないトラニ
オンを受容する3条のトラック溝12a乃至12cと、各トラ
ック溝12a乃至12c間においてブランク8の中空部に突出
する3条の凸状部14a乃至14cとが形成されている。
各トラック溝12a乃至12cは天井面16a乃至16cと、前記
天井面16a乃至16cの両側部にあってトラニオンを構成す
るスライドローラが転動する転動面18a乃至18fとを有す
る。また、前記転動面18a乃至18fと凸状部14a乃至14cと
の間は中空部に膨出することで夫々突出部20a乃至20fと
なり、この突出部20a乃至20fと前記転動面18a乃至18fと
の間には、当該転動面18a乃至18fを転動するスライドロ
ーラの側方向の動作範囲を規制して等速ジョイントの性
能を向上させるためのアンダカット部22a乃至22fが夫々
形成されている。
一方、ブランク8を形成するための押出パンチ6は前
記ブランク8の内周形状に対応した外周形状を有してお
り、その端部には、主として、押出成形後における押出
パンチ6のブランク8からの離型を容易とするため全周
にわたりランド部24が設けられている(第2図参照)。
ところで、このようにして形成されるブランク8に
は、前述したように、等速ジョイントの性能を向上させ
るためにアンダカット部22a乃至22fが形成されている。
そのため、前記アンダカット部22a乃至22fに隣接する突
出部20a乃至20fは比較的剛性の低い薄肉状となる。従っ
て、押出成形時において前記アンダカット部22a乃至22f
は押圧金型26側へと傾斜して形成される傾向がある(第
2図参照)。なお、この傾向は押出パンチ6によって形
成されるブランク8の軸線方向の長さが長い程大きい。
この結果、押出成形時において、ブランク8の開口部
近傍の中、特に、アンダカット部22a乃至22fが押出パン
チ6に接触する事態が発生し、これによって押出パンチ
6とブランク8との間でかじりが生じる。この場合、押
出パンチ6とブランク8との離型が困難となるばかりで
なく、離型時において押出パンチ6のランド部24により
当該ブランク8の開口部近傍を損壊する虞もある。
そこで、本出願人は実願昭第63-69980号においてブラ
ンク8のアンダカット部22a乃至22fを成形する押出パン
チ6の対応部位にテーパ面を設けることによって前記の
不都合を解消する提案を行った。そして、その後の研究
によりブランク8にあってはトラック溝12a乃至12c両側
の転動面18a乃至18fと押出パンチ6とのかじり付が無視
出来ないことが判明した。
また、本出願人はこのような押出工程に続くサイジン
グ工程において、同様にしごきパンチにテーパ面を設け
ることによってブランク8と当該しごきパンチとのかじ
り付を防止し、その離型性を向上させたサイジング方法
を特願昭第63-129958号において提案している。この場
合、離型性と加工精度との調和を図る必要が生じた。
[発明の目的] 本発明は前記の出願に関連してなされたものであっ
て、ブランクのトラック溝の転動面およびアンダカット
部の軸方向端部に当接するテーパ面を有する押出パンチ
によって押出成形を行い、次いで、前記テーパ面と同一
のテーパ面を有するしごきパンチでブランクを規制しな
がらしごき成形を施すことによりパンチの耐久性を向上
し得ると共に、特に、トラック溝の転動部の加工精度を
向上させることを可能とする等速ジョイントの成形方法
を提供することを目的とする。
[目的を達成するための手段] 前記の目的を達成するために、本発明は中空のカップ
状を呈し軸方向に延びるトラック溝と中空部に膨出する
部位にアンダカット部を有した等速ジョイントの外輪の
成形方法であって、前記アンダカット部に沿ったトラッ
ク溝の側面並びにアンダカット部の軸線方向端部をテー
パ面で規制する第1のパンチを挿入して押出加工を加え
ることにより予備成形品を成形する第1の工程と、前記
予備成形品の内周面のアンダカット部並びにトラック溝
側面の軸方向端部を第2のパンチで規制しつつその外周
面をダイを用いて軸方向に指向してしごき成形を加える
第2の工程とからなることを特徴とする。
[実施態様] 次に、本発明に係る等速ジョイントの成形方法につい
て好適な実施態様を挙げ、添付の図面を参照しながら以
下詳細に説明する。
先ず、第4図に基づき本発明に係る成形方法にあって
押出工程を実施するための押出パンチについて説明す
る。この場合、押出成形の対象としては第1図に示した
第1予備成形体4を用い、この第1予備成形体4から第
3図に示した等速ジョイントを構成する外輪の第2予備
成形体であるブランク8を形成するものとする。
そこで、第4図において、押出パンチ30は外周形状が
ブランク8の内周面形状に略対応して形成されている。
すなわち、ブランク8の3条のトラック溝12a乃至12cに
対応する部位には3条の角柱部32a乃至32cが膨出形成さ
れ、また、各角柱部32a乃至32c間にはブランク8の凸状
部14a乃至14cに対応した長溝34a乃至34cが夫々形成され
る。
角柱部32a乃至32cはトラック溝12a乃至12cの天井面16
a乃至16cを形成する平面部36a乃至36cと、前記平面部36
a乃至36cの両側にあって転動面18a乃至18fを形成する側
面部38a乃至38fと、各長溝34a乃至34cと前記各側面部38
a乃至38fとの間にあってアンダカット部22a乃至22fを形
成する顎状部40a乃至40fとを含む。各顎状部40a乃至40f
には基端部側より段部41a乃至41f、第1のテーパ面42a
乃至42fおよび逃げ部43a乃至43fが連接される。また、
側面部38a乃至38fにあっては前記顎状部40a乃至40fの第
1テーパ面42a乃至42fの同一高さ位置に第2のテーパ面
44a乃至44fが形成され、この第2テーパ面44a乃至44fを
介して逃げ面46a乃至46fが連続する。なお、第1予備成
形体4側の先端部にはランド部48が形成される。前記ラ
ンド部48は押出パンチ30の全周を周回するように形成さ
れている。
次に、以上のような押出パンチ30による押出加工の次
段の工程であるサイジング工程に用いられるサイジング
装置について説明する。
そこで、第5図において、サイジング装置50は第1の
金型52と第2の金型54とを含み、当該第1金型52および
第2金型54は、図中、矢印で示すように、図示しないア
クチュエータの駆動作用下に互いに接近および離間する
方向に相対的に変位可能である。第1金型52の上面部に
はパンチ56が取着される。前記パンチ56はその外形が等
速ジョイントの外輪の内周形状に対応して形成されてい
るものであって、ブランク8の3条のトラック溝12a乃
至12cに夫々対応する3条の角柱部58a乃至58cが膨出形
成されると共に、これら角柱部58a乃至58cの間にはブラ
ンク8の凸状部14a乃至14cに対応した長溝60a乃至60cが
夫々形成される。
ここで、角柱部58a乃至58cはトラック溝12a乃至12cの
天井面16a乃至16cの仕上げを行う平面部62a乃至62cと、
前記平面部62a乃至62cの両側にあって転動面18a乃至18f
の仕上げを行う側面部64a乃至64fと、各長溝60a乃至60c
と前記各側面部64a乃至64fとの間にあってアンダカット
部22a乃至22fの仕上げを行う顎状部66a乃至66fとを含
む。この場合、各顎状部66a乃至66fにはパンチ56をブラ
ンク8の中空部に挿入した際に当該ブランク8の開口端
近傍において前記アンダカット部22a乃至22fに当接する
第1のテーパ面68a乃至68fが夫々形成される。
また、前記各側面部64a乃至64fには前記顎部66a乃至6
6fに形成した第1テーパ面68a乃至68fと同一高さ位置に
第2テーパ面70a乃至70fが形成される。なお、これら第
1テーパ面68a乃至68fと第2テーパ面70a乃至70fの傾斜
角度は第4図に示した押出パンチ30の顎状部40a乃至40f
の第1テーパ面42a乃至42fおよび側面部38a乃至38fの第
2テーパ面44a乃至44fと同一である。
次に、このような第1金型52およびパンチ56に対し
て、第2金型54は略円筒状を呈し、その下端部にはダイ
72が取着されている。第7図に示すように、前記ダイ72
は略リング状を呈するものであって、その内周にはパン
チ56側にテーパ部74を有した周回する膨出部76が形成さ
れる。
本発明に係る等速ジョイントの成形方法を実施するた
めの装置は基本的には以上のように構成されるものであ
り、次に、このような装置を用いて等速ジョイントの最
終形状を成形する工程につき説明する。
先ず、第4図に示すように、鍛造によって所定形状に
成形された第1予備成形体4に対して押出加工を施す。
すわなち、前記第1予備成形体4の据込部4aに押出パン
チ30のランド部48側を当接させ、前記押出パンチ30を第
4図に示す矢印方向に変位させることで押出成形加工を
開始する。押出パンチ30のランド部48は第1予備成形体
4に対して徐々に中空部を画成し、最終的に前記ランド
部48の外周形状に対応した形状の中空部を有する第2予
備成形体であるブランク8を形成する。
ここで、押出パンチ30を第1予備成形体4の据込部4a
に押し込むことでブランク8を形成した際、前記押出パ
ンチ30の顎状部40a乃至40fに形成された第1テーパ面42
a乃至42fと側面部38a乃至38fの第2テーパ面44a乃至44f
はブランク8の開口部近傍を押圧する。これによって、
特に、ブランク8の転動面18a乃至18fには開口側へ拡開
するテーパ面が形成される。従って、前記転動面18a乃
至18fの開口側端部は押出パンチ30の引き抜き方向へ大
きく拡開するため、離型時に当該ブランク8が押出パン
チ30に対してかじり付くことがなく、円滑な離型作業を
遂行することが出来る(第6図参照)。
また、離型時における押出パンチ30にかかる負担が軽
減され、その耐用寿命を延ばすことが出来る。
次に、こうして押出加工が施されたブランク8に対し
て外周しぼりによるサイジング工程を行い当該ブランク
8を最終形状たる等速ジョイントの外輪に成形する。
そこで、第5図に示すように、ブランク8の中空部に
対して第1金型52の上面部に固定されたパンチ56を挿入
する。この時、ブランク8の内周面と当該内周面の各部
に対応するパンチ56の長溝60a乃至60c、平面部62a乃至6
2c、側面部64a乃至64fおよび顎状部66a乃至66fとの間に
は所定のクリアランスが画成される。
次に、第2金型54に装着されたダイ72をパンチ56に指
向して変位させ、ブランク8の外周部のしごき成形を行
う。この時、ダイ72の内周部に形成された膨出部76はブ
ランク8の外周部を第1金型52側に指向して伸長させる
と共に、当該ブランク8の内周面をパンチ56の外周面に
倣わせる作用をなす。
実際、ダイ72をパンチ56側に変位させていくと、ブラ
ンク8の外周部がダイ72のテーパ部74によって第1金型
52側へと伸長される一方、当該ブランク8の内周面にお
いて、アンダカット部22a乃至22fに沿った転動面18a乃
至18fの端部がパンチ部56の第2テーパ面70a乃至70fに
よりブランク8の従動軸10側へと押圧されるに至る。同
様に、アンダカット部22a乃至22fの端部が第1テーパ面
68a乃至68fに押圧される。そして、サイジングが完了し
た時点において、転動面18a乃至18fおよびアンダカット
部22a乃至22fがパンチ56に対してクリアランスのない状
態で好適に密着し、高精度の内周面の形状精度を有する
外輪が得られることになる。
すなわち、押出工程において、ブランク8の開口側に
はテーパ面が形成されており、パンチ56の軸心について
対称的な位置にあると共にブランク8側のテーパ面と傾
斜の等しいパンチ56の各テーパ面によってブランク8が
センタリングされるため、開口部付近においてアンダカ
ット部22a乃至22fおよびトラック溝12a乃至12cがパンチ
56側に傾斜するような事態は生じない。従って、特に、
前記アンダカット部22a乃至22fに沿って形成される転動
面18a乃至18fはブランク8の軸線方向に沿って極めて高
精度に形成される(第7図参照)。
[発明の効果] 以上のように、本発明によれば、中空部に軸線方向に
延在するアンダカット部を有した等速ジョイントの外輪
の予備成形品の仕上げ加工を行う際、前記アンダカット
部並びにトラック溝の転動面の軸線方向端部をパンチに
形成したテーパ面によって規制し押出加工および外周部
のしごき成形を行っている。この場合、押出加工にあっ
ては、テーパ面によって押出パンチの離型が容易化し、
押出パンチに作用する負荷が軽減されることからその耐
用性を向上させることが可能となる。また、特に、しご
き成形時において予備成形品のパンチに対する位置が前
記テーパ面によって制御されるため、位置決め精度が向
上し、一層加工精度の良好な製品が得られる。
以上、本発明について好適な実施態様を挙げて説明し
たが、本発明はこの実施態様に限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良
並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
第1図a乃至dはビレットから第1予備成形体を形成す
る鋳造工程の説明図、 第2図は従来技術に係る押出成形説明図、 第3図aおよびbは等速ジョイントの外輪となるブラン
クの構成を示す一部省略縦断面並びに断面図、 第4図は本発明に係る成形方法に用いる押出パンチ並び
にそれによって成形される予備成形体の構成斜視図、 第5図は本発明に係る成形方法に用いるサイジング装置
の一部省略斜視説明図、 第6図は第4図における押出パンチの押出成形説明図、 第7図は第5図におけるサイジング装置のしごき成形説
明図である。 8……ブランク 12a〜12f……トラック溝 22a〜22f……アンダカット部 30……押出パンチ、32a〜32c……角柱部 42a〜42c、44a〜44f……テーパ面 50……サイジング装置、52、54……金型 68a〜68f、70a〜70f……テーパ面
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−83734(JP,A) 特開 平2−30348(JP,A) 特開 平2−34242(JP,A) 特開 平1−299733(JP,A) 特開 平1−192442(JP,A) 特開 昭54−86471(JP,A) 特公 平6−98433(JP,B2) 特公 平7−113379(JP,B2) 実公 平6−41704(JP,Y2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】中空のカップ状を呈し軸方向に延びるトラ
    ック溝と中空部に膨出する部位にアンダカット部を有し
    た等速ジョイントの外輪の成形方法であって、前記アン
    ダカット部に沿ったトラック溝の側面並びにアンダカッ
    ト部の軸線方向端部をテーパ面で規制する第1のパンチ
    を挿入して押出加工を加えることにより予備成形品を成
    形する第1の工程と、前記予備成形品の内周面のアンダ
    カット部並びにトラック溝側面の軸方向端部を第2のパ
    ンチで規制しつつその外周面をダイを用いて軸方向に指
    向してしごき成形を加える第2の工程とからなることを
    特徴とする等速ジョイントの成形方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の方法において、第1パンチ
    および第2パンチには予備成形品のアンダカット部並び
    にトラック溝側面の軸方向端部に相当する部位に同一の
    傾斜角度のテーパ面を有することを特徴とする等速ジョ
    イントの成形方法。
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