JP4391256B2 - ポリエステルフィルムロールならびに磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

ポリエステルフィルムロールならびに磁気記録媒体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体用フィルムロール、特にデジタルビデオカセットテープやデータストレージテープなどのデジタルデータを記録する磁気記録媒体を製造するために好適な基材フィルムのフィルムロールに関する。更に詳しくは、本発明は、優れた平坦性と巻取り性とを長手方向に均質に有する、磁気記録媒体を製造するために好適な基材フィルムのフィルムロール、ならびに該フィルムロールから供給される基材フィルムを用いた磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
磁気記録媒体の記録密度を向上させるには、磁性層の厚みを薄くすることが有効で、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティング等の薄膜形成手段によって形成される強磁性金属薄膜を磁性層(磁性層の厚みは0.2μm以下)とした磁気記録媒体や、磁性層を塗布する際に非磁性下地層を設けることで従来の塗布型に比べてより薄い磁性層(磁性層の厚みは0.13μm程度)を塗布した磁気記録媒体が提案されてきている。
磁性層が薄くなると、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁性層の表面性に大きな影響を及ぼすため、非磁性支持体の表面はできるだけ平坦でなくてはならない。ただ、フィルムの表面を平坦化すると、ロール状態で放置したときに温度変化などによってしわが発生するという問題がある。そこで、フィルムの層間空隙率を1.5〜2.8%にすることが特開平8−91646号公報(特許文献1)で提案されている。しかしながら、本公報で実際に提案されているフィルムは表面粗さが10nm以上のものに過ぎず、近年の平坦化の要求を満足するものではなかった。
そこで、一方の表面だけ平坦化したフィルムロールが特開2001−243615号公報(特許文献2)で提案されている。本公報によると、一方の表面を平坦化する代わりに他方の表面を表面粗さ12nm以上の粗いものにしかつフィルムの層間空隙率を1.1〜2.2%にすることで、蒸着工程に適したフィルムロールが得られるとある。
しかしながら、近年の磁気記録媒体の製造に用いる機材フィルムへの平坦化の要求はますます厳しくなってきており、特許文献1や2で開示されたようなフィルムロールから供給される基材フィルムでは、粗い方の表面形状が平坦な方の表面に転写し、磁気記録媒体としたときに出力特性を低下させたり、また、基材フィルムの表面が平坦化されるにつれて、新たに巻き長さが10000m以上の長尺ロールとした場合に、フィルムロールの外層側と内層側で表面性状が異なるという問題が発生してきた。具体的にはロールの芯層になるにつれて、フィルムロールの内圧によって、磁気記録媒体の走行性に必要な表面微小突起が低くなってしまうという問題で、表面の平坦性と走行性のバランスが乱れ、大幅な歩留りの低下が発生してきた。
特開平8−91646号公報 特開2001−243615号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の問題を解消し、磁気記録媒体の支持体として用いる基材フィルムの表面を極めて平坦化しても、フィルムロールの内圧によって、磁気記録媒体の走行性に必要な表面微小突起が低くなってしまわず、磁気記録媒体としたときに耐久性ある優れた出力特性を発現できる磁気記録媒体用フィルムロール、ならびに該フィルムロールから供給される基材フィルムを用いた出力特性の優れた磁気記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
本発明によれば、本発明の目的は、厚さが3〜9μmの基材フィルムを円筒状コアに10000〜50000m巻きつけたフィルムロールであって、基材フィルムの表面粗さ(WRa)は、一方の表面(表面A)が1〜2nmで、他方の表面(表面B)が表面Aよりも粗くかつ5nm以上で、表面Aと表面Bの表面粗さの和が高々12nmであること、表面Aは高さ5〜50nmの突起を1〜50個/μmの範囲で有すること、そして該フィルムロールのフィルム層間空隙率が1.5〜3.0%であることを具備する磁気記録媒体用フィルムロールによって達成される。
また、本発明の磁気記録媒体用フィルムロールは、その好ましい態様として、基材フィルムの表面Bが平均粒径0.01〜0.8μmの不活性粒子を含有するポリエステルフィルム層であること、基材フィルムの表面Aが不活性粒子と有機樹脂とからなる皮膜層であること、基材フィルムの表面Bが平均粒径0.01〜0.8μmの不活性粒子を含有するポリエステルフィルム層で、基材フィルムの表面Aが実質的に不活性粒子を含有しないポリエステルフィルム層上に形成された不活性粒子と有機樹脂とからなる皮膜層であること、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートであること、およびデジタル記録方式の磁気記録媒体の製造に用いることのいずれかを具備する磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロールも包含する。
また、本発明によれば、本発明の磁気記録媒体用フィルムロールから供給される基材フィルムと、該基材フィルムの表面A上に設けられた磁性層、好ましくは強磁性金属薄膜層と、該基材フィルムの表面B上に設けられたバックコート層とからなる磁気記録媒体も提供される。
さらにまた、本発明によれば、本発明の磁気記録媒体用フィルムロールから基材フィルムを供給する工程、該供給された基材フィルムの表面A上に磁性層を設ける工程、好ましくは真空蒸着工程、および該基材フィルムの表面B上にバックコート層を設ける工程からなる磁気記録媒体の製造方法も提供される。
本発明の磁気記録媒体用フィルムロールは、厚さが3〜9μmの基材フィルムを円筒状コアに10000〜50000m巻きつけたフィルムロールであって、基材フィルムの表面粗さ(WRa)は、一方の表面(表面A)が0.5〜5nmで、他方の表面(表面B)が表面Aよりも粗くかつ5nm以上で、表面Aと表面Bの表面粗さの和が高々12nmであること、表面Aは、高さ5〜50nmの突起を1〜50個/μmの範囲で有すること、そして該フィルムロールのフィルム層間空隙率が1.5〜3.0%であることから、基材フィルムの表面Bが基材フィルムの表面Aへ転写することによる磁気記録媒体としたときの出力低下がなく、しかも フィルム表面が平坦化させつつ巻き長さが10000m以上の長尺ロールとした場合にも、フィルムロールの内圧によって、磁気記録媒体の走行性に必要な表面微小突起が低くならず、結果として耐久性ある優れた出力特性を具備できる磁気記録媒体を製造でき、その工業的価値はきわめて高い。
本発明のフィルムロールは、それぞれの表面のWRa値による表面粗さが異なる基材フィルムを円筒状コアに巻きつけたものであり、説明の便宜上、基材フィルムの表面粗さが小さい方の表面を表面A、基材フィルムの表面粗さが大きい方の表面を表面Bと称する。
本発明のフィルムロールを構成する基材フィルムは、表面AがWRa0.5〜5nmで、表面Bが表面AよりもWRaにおいて粗くかつWRa値で5nm以上で、表面Aと表面BのWRa値の和が高々12nmで、表面Aが平均高さ5〜50nmの突起を1〜50個/μmの範囲で有するものであれば、特に制限されない。したがって、基材フィルムはポリエステルフィルムでも、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面に皮膜層を形成したものでもよい。また、ここでいうポリエステルフィルムは、単一のポリエステル組成物からなる単層フィルムでも、組成を異にするポリエステル組成物からなるフィルム層を積層した積層フィルムでもよい。それらの中でも、基材フィルムの表面Bの表面粗さを5nm以上にしやすいことから、基材フィルムの表面Bは平均粒径0.01〜0.8μmの不活性粒子を含有するポリエステルフィルム層または該ポリエステルフィルム層の表面に形成された有機樹脂からなる皮膜層であることが好ましい。また、基材フィルムの表面Aに1〜50個/μmの範囲で高さ5〜50nmの突起を形成しやすいことから、基材フィルムの表面Aは、不活性粒子と有機樹脂からなる皮膜層であることが好ましい。さらにまた、基材フィルムの表面Aに1〜50個/μmの範囲で高さ5〜50nmの突起を形成しつつ表面Aの表面粗さを5nm以下とし、かつ表面Bの表面粗さを5nm以上にしやすいことから、基材フィルムの表面Bは平均粒径0.01〜0.8μmの不活性粒子を含有するポリエステル層または該ポリエステル層の表面に形成された有機樹脂からなる皮膜層で、基材フィルムの表面Aは、実質的に不活性粒子を含有しないポリエステル層の表面に形成された不活性粒子と有機樹脂からなる皮膜層であることが好ましい。
本発明において、基材フィルムの厚さは、3〜9μm、好ましくは4.0〜6.5μmである。厚さが下限を下回るとフィルムの剛性が低下し、磁気テープとしてビデオテープレコーダー内の磁気ヘッドと接触させたときに、磁気テープの位置がずれやすくなり、結果として磁気テープの電磁変換特性、特に出力が低下する。一方、厚さが上限を上回ると、磁気テープ厚みが厚くなりすぎ、例えばカセットに収納できるテープ長さが結果として短くなり、十分な磁気記録容量が得られない。
本発明におけるポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルが挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などを例示できる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
これらのポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがコポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(但しポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(但しポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、本発明の効果を損なわない限り、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。さらに該コポリエステルは、トリメリット酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトールなどの3官能以上のを共重合させたものであってもよい。その場合、多官能化合物の共重合量は、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下であるのが良い。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のコポリエステルである場合についても、上記のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートと同様に共重合成分について考えられることは理解されるであろう。
もちろん、本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、本発明の効果を損なわない程度であれば、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、酸化チタン等)の如き添加剤を必要に応じて含有させることができる。
また、ポリエステルフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合、それぞれのポリエステルフィルム層は同じポリエステルからなるのが好ましいが、異なるポリエステルからなってもよい。例えば、全てのポリエステルフィルム層が共にポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムが好ましいが、あるポリエステルフィルム層がポリエチレンテレフタレートからなり、他のポリエステルフィルム層がポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムであっても良い。
本発明において、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、従来からそれ自体知られている方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで反応生成物を重縮合せしめることで製造できる。
上記のような方法(溶融重合)により得られたポリエステルは、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとすることができる。
上記の重合においては公知の触媒を用いることができ、溶融重合でのエステル交換触媒としてはマンガン、カルシウム、マグネシウム、チタンの酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が好ましく、特に酢酸塩即ち、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸チタンが好ましく挙げられる。
また、上記の重合における重縮合触媒としては、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物を挙げることができる。前記アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン等が好ましく挙げられる。前記チタン化合物としては、有機チタン化合物が好ましく挙げられ、例えば特開平5−298670号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、チタンのアルコラートや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応物等を例示でき、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。さらにまた、前記ゲルマニウム化合物としては、例えば特許2792068号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、(イ)無定形酸化ゲルマニウム、(ロ)結晶性ゲルマニウム、(ハ)酸化ゲルマニウムをアルカリ金属又はアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解した溶液、および(ニ)酸化ゲルマニウムを水に溶解し、これにグリコールを加え水を留去して調整した酸化ゲルマニウムのグリコール溶液、等を挙げることができる。
また、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、熱安定性を維持するために、従来からポリエステルの製造工程で添加されるリン化合物を含有することが好ましい。このリン化合物は特に限定されないが、正リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェートが好ましく挙げられる。
ところで、基材フィルムの表面A側に位置するポリエステルフィルム層は、実質的に不活性粒子を含有しないことが好ましい。粒子が含まれてしまうと、ドロップアウトや電磁気変換特性の面で問題が生じることがある。ここでいう実質的に不活性粒子を含有しないとは、積極的に触媒残渣を析出させたり、不活性粒子を添加したりしていないことを意味し、具体的には、粒径0.05μm以上の不活性粒子の含有量が、ポリエステルフィルム層の重量を基準として、高々0.001重量%であることが好ましい。
また、基材フィルムの表面B側に位置するポリエステルフィルム層は、基材フィルムに巻取り性などの優れた取扱い性を発現するために不活性粒子を含有することが好ましい。
該基材フィルムの表面B側に位置するポリエステルフィルム層に含有される不活性粒子は、平均粒径が0.01〜0.8μmの範囲であることが好ましい。該不活性粒子の平均粒径が下限未満であると巻取り性が不足し、一方、該不活性粒子の平均粒径が上限を超えると基材フィルムの表面Aの平坦性を低下させ、磁気記録媒体としたときに電磁気変換特性が大きく低下しやすい。含有させる不活性粒子としては、例えば、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)、および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる微粒子が挙げられる。これらの中で特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カオリン及びクレーが好ましい。これらの不活性粒子は、2種類以上を併用してもよい。不活性粒子の含有量は、目的とする表面粗さに応じて、適宜調整すればよい。
さらにまた、基材フィルムの表面B側に位置するポリエステルフィルム層は、炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスを0.001〜1重量%含有しても構わない。ここで、エステルワックスとは、エステルワックスと部分的にケン化させた部分ケン化エステルワックスとを包含するものである。
本発明において、ポリエステルフィルムが2つのポリエステルフィルム層を積層した積層ポリエステルフィルムである場合、基材フィルムの表面A側に位置するポリエステルフィルム層と基材フィルムの表面B側に位置するポリエステルフィルム層の厚み構成は、好ましくは後者のポリエステルフィルム層の厚みが、積層ポリエステルフィルム全体の厚みに対して、1/50〜1/2、さらに好ましくは1/30〜1/2.5である。
本発明において、基材フィルムの表面AのWRa値は、0.5〜5nm、好ましくは1〜4nmである。表面AのWRa値が下限未満であると、ロール状態にした際に特に巻芯部がブロッキングを起こし易い。一方、表面AのWRa値が上限を超えると、磁気記録媒体としたときに、得られる磁気記録媒体の出力特性が低下する。このような表面粗さは、前述の通り、基材フィルムの表面側に位置するポリエステルフィルム層に、実質的に不活性粒子を含有させないことなどによって達成できる。
また、本発明において、基材フィルムの表面Aは、平均高さが5〜50nm、好ましくは10〜40nmの突起を、1〜50個/μm、好ましくは5〜30個/μmの頻度で有することが必要である。突起の平均高さまたは頻度が下限未満であると、フィルムロール状態としたときにブロッキングや表面Bの表面形状が転写易かったり、また表面Aの外側に形成される磁性層が平滑になりすぎて、例えばビデオテープになった後のデジタルビデオテープレコーダーで記録、再生を繰り返したときに、ビデオヘッドにより磁性層が磨耗し易い。一方、突起の平均高さまたは頻度が上限を超える場合は、突起が削り取られて脱落したり、磁気記録媒体にしたときに出力特性が低下する。
このような突起を形成する方法が特に限定されないが、不活性粒子、有機樹脂からなる皮膜層を、基材フィルムの表面A側に位置するポリエステルフィルムの表面に、さらに基材フィルムの表面A側に位置する実質的に不活性粒子を含有しないポリエステルフィルム層の表面に設けることが好ましい。
皮膜層に含有される不活性粒子としては、特に限定されないが、例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどの有機粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどからなる粒子が好ましく挙げられる。なかでも、架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が特に好ましい。
また、皮膜層を形成する有機樹脂としては、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。
皮膜層を形成する水性ポリエステル樹脂としては、酸成分が、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウム、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびp−ヒドロキシ安息香酸などの多価カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種で、グリコール成分が、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などの多価ヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
また、該水性ポリエステル樹脂は、ポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマーまたはブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな粒子内で特定の物理的構成(IPN(相互侵入高分子網目)型、コアシェル型など)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。また、これらは親水性を付与するため、分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位などが導入されていてもよい。
この皮膜層には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、所望により他の成分、例えば界面活性剤、安定剤、分散剤、UV吸収剤、増粘剤、離型剤などを含有させてもよい。皮膜層の厚みは、通常1〜50nm、好ましくは2〜30nm、さらに好ましくは3〜10nmである。
本発明において、基材フィルムの表面Bは、そのWRa値が5nm以上、好ましくは7nm以上である。表面BのWRa値が上限より小さいと5nmより小さいと表面Aと表面Bとの間の摩擦係数が高くなりすぎて滑りにくく、ロールに巻き取った際にしわが発生し、蒸着時の熱負けなどを惹起する。
また、本発明において、基材フィルムの表面の表面粗さは、冒頭で述べたとおり、粗いほどハンドリング性の観点から好ましいが、表面Bの粗い表面形状が表面Aに転写したりするため、表面Aと表面BのWRa値の和は、高々12nm、好ましくは高々10nmである。このような表面粗さは、前述の通り、例えば基材フィルムの表面側に位置するポリエステルフィルム層に含有させる不活性粒子の粒径や添加量などによって調整できる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、表面B側に位置するポリエステルフィルムの表面に、滑剤等を含む塗液を塗布して皮膜層を設けてもよい。表面Bに位置する皮膜層は表面A側に形成する皮膜層と同じものでも異なるものであってもよい。もちろん、基材フィルムの表面粗さは、ポリエステルフィルムに含有させる不活性粒子による調整だけでなく、該皮膜層の塗液の組成や濃度の調整によっても調整できる。
表面Bに位置する皮膜層を形成する有機樹脂としてはポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等、或いはこれらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。また、該皮膜層は不活性粒子を含有してもよく、具体的にはシリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等の微粒子を含有させてもよい。さらにまた、該皮膜層は、シリコーン、フッ素化合物、ワックス等の離型剤を含有していてもよい。
本発明のフィルムロールは、基材フィルムが円筒状コアーの周りに巻かれており、フィルム長さは10000〜50000mであり、フィルム層間空隙率が1.5〜3.0%である。基材フィルムの幅は特に制限されないが、500mm以上が磁気記録媒体とする工程での生産性から好ましい。特にフィルム長さは10000m以上であることが、高い生産性で生産しテープ製造原価を十分に抑制するために有効である。ロールに巻かれるフィルム長さは長い方が好ましいが、50000mを超えるとフィルムを巻姿良く巻くことが難しくなり、工業生産上からは実用的でない。
本発明のフィルムロールは、フィルム層間空隙率が1.5〜3.0%、より好ましくは1.8〜2.5%である。層間空隙率が上限を超えると、このような平坦なフィルムの場合には巻取り直後は問題ないものの、経時でロールにしわが発生し、真空蒸着時にクーリングキャンからフィルムが浮いて熱負けを起こしやすくなる。一方、空隙率が下限を下回るとロールの内圧により、ロール芯層になるにつれて表面Aに形成している突起の高さが低くなってしまい、表面Aの外側に形成される強磁性薄膜が平滑になりすぎて、ビデオテープになった後のデジタルビデオテープレコーダー内の記録、再生時にビデオヘッドにより強磁性薄膜が磨耗し易い。
次に、本発明のフィルムロールおよび磁気記録媒体の製造方法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、基材フィルムが二軸配向ポリエステルフィルムである場合、ポリエステルを口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度で、40〜90℃の冷却ロール上にフィルム状に押し出して急冷固化し、未延伸フィルムを得る。その後、該未延伸ポリエステルフィルムを常法に従い、一軸方向(製膜方法または製膜方法に直交する方法)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記一軸方向に直交する方向(一段目延伸が製膜方向の場合は製膜方法に直交する方法、一段目延伸が製膜方向に直交する方向の場合は製膜方法にとなる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。なお、説明の便宜上、製膜方向を長手方向または縦方向、製膜方向を幅方向または横方向と称する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。縦方向と横方向の延伸倍率を掛け合わせた全延伸倍率は、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
さらに、前記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定結晶化する時間は1〜60秒が好ましい。
本発明において、ポリエステルフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合、未延伸フィルムを製造する際に、それぞれの層を構成するポリエステルをそれぞれ溶融状態とし、口金から吐出するまでに溶融状態のそれぞれのポリエステルを重ね合わせ、積層された状態で冷却ドラムの上に押し出せばよい。その後は、上記二軸配向ポリエステルフィルムの説明と同様な操作を行えばよい。
本発明において、基材フィルムの表面Aまたは表面Bを皮膜層とする場合、皮膜層の形成は、水性塗液を塗布する方法で行うのが好ましい。塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステルフィルム層の表面に行い、塗布後にはポリエステルフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で皮膜は乾燥される。具体的には、未延伸フィルムまたは縦(一軸)延伸フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに塗液を塗布して皮膜層を形成するのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。前記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。
本発明において、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性をはじめとする各種性能を向上させ、かつ得られる磁気記録媒体の薄膜化を達成するには、基材フィルムの縦方向および横方向ヤング率を、それぞれ4500N/mm以上および6000N/mm以上、さらに4800N/mm以上および6800N/mm以上、よりさらに5500N/mm以上および8000N/mm以上、特に5500N/mm以上および10,000N/mm以上とすることが好ましい。このようなヤング率は、前述の延伸倍率などの条件や熱固定結晶化する条件によって調整できる。
このようにして得られた基材フィルムをスリッターにより所定の幅にスリットし、円筒状コアに所定の長さ巻き取る。この際、フィルム層間空隙率を前述の範囲とするには、例えば巻き取る時に、基材フィルムを小径のコンタクトロールで円筒状コアに押し付けるように押えながら巻取り、そのときの基材フィルムの張力やコンタクトロールの接圧などを調整すればよい。
このようにして得られた本発明のフィルムロールは、極めて平坦性に優れた基材フィルムを安定して、磁性層を設ける工程に供給することができ、特に基材フィルムの平坦性が求められるデジタルビデオテープやデータストレージテープなどの磁気記録媒体を製造する際に、極めて好適である。
本発明の磁気記録媒体は、基材フィルムの表面A上に磁性層、好ましくは強磁性金属薄膜層を真空蒸着により設けてなることを特徴とする。使用する金属薄膜としては公知のものを使用でき、特に限定されない。具体的な金属薄膜としては、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金の強磁性体からなるものが好ましい。金属薄膜層の厚さは100〜300nmが好ましい。
本発明の磁気記録媒体では、基材フィルムの表面B上にバックコート層が設けられることが好ましい。該バックコート層としては、微粒子、潤滑剤、有機高分子からなる結合材からなる層を有機溶媒を用いた溶液の塗布、乾燥により設けることが好ましい。バックコート層の厚さは0.5〜1.5μm程度が好ましい。微粒子としてはカーボンブラック、アルミナ等が、潤滑剤としてはシリコーン、フッ素化合物などが、結合材としてはポリウレタン、エポキシ樹脂などが好ましく用いられ、これらに限定されない。
また、本発明の磁気記録媒体は、本発明のフィルムロールから供給される基材フィルムの表面A上に、Co等の強磁性金属薄膜を真空蒸着により膜厚み100〜300nmで形成し、この金属薄膜上に10nm程度の厚みのダイヤモンド状カーボン膜をコーティングし、更にその上に潤滑剤塗布により潤滑剤層を設け、さらに基材フィルムの表面B上に、固体微粒子および結合材(有機高分子)からなり必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布・乾燥して微粒子と結合材からなる層を設けることでも好ましく製造することができる。強磁性金属薄膜厚みは100〜300nmと極めて薄膜のため磁性層表面はベースフィルム表面形状をそのまま反映できる。バックコート層の厚さは0.5〜1.5μm程度が好ましい。
本発明をさらに実施例を用いて詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例における各特性は、以下の方法で測定または評価したものである。また、実施例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、「重量部」および「重量%」である。
(1)皮膜層中の不活性粒子の平均粒径
基材フィルムの皮膜層の表面に、白金スパッター装置により白金薄膜蒸着層を厚み2〜3nmで設け、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジース S−4700)により倍率10万倍程度で観測し、少なくとも100個の粒子について面積円相当径を求め、それらの平均値を平均粒径とした。
(2)ポリエステルフィルム中の不活性粒子の平均粒径
ポリエステルフィルムを製膜方向に直交する方向にカッティングして、0.2μm厚みの超薄切片にとし、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製JEM2010)で超薄切片を観察し、それぞれの表面を形成する層中の100個の粒子について、面積円相当径(μm)を算出し、それらの平均値を平均粒径(μm)とした。
(3)フィルム厚み
基材フィルムを層間の空気を排除しながら10枚重ね、JIS規格のC2151に準拠し、(株)ミツトヨ製ダイヤルゲージMDC−25Sを用いて、10枚重ね法にて厚みを測定し、1枚当りのフィルム厚みを計算する。この測定を10回繰り返して、その平均値を1枚あたりのフィルム厚みとした。
(4)表面粗さ(WRa)
WYKO社製非接触式三次元粗さ計(NT―2000)を用いて測定倍率25倍、測定面積246.6μm×187.5μm(0.0462mm)の条件にて、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより、下記式から中心面平均粗さ(WRa)を求める。なお、得られた値は、測定回数(n)10回での平均値である。
Figure 0004391256
ここで、Zjkは測定方向(246.6μm)、それと直交する方向(187.5μm)をそれぞれm分割、n分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における三次元粗さチャート上の高さである。
(5)突起の高さ、頻度
Digital Instruments 社製の原子間力顕微鏡(商品名:NanoScopeIII)およびAFMのJスキャナーを使用し、以下の条件で2μm×2μmの範囲を10ケ所測定し、AFM像より高さが1nm以上の突起の数をカウントし、その平均値を面積換算により個/mm当たりの突起個数として算出する。またカウントした各々の突起の高さを測定し、その平均値をもって突起の平均高さとする。
深針:単結晶シリコンナイトライド
走査モード:タッピングモード
面素数:256×256 データポイント
スキャン速度:2.0Hz
測定環境:室温、大気中
(6)フィルムロールの層間空隙率
円筒状コアと得られたフィルムロールの径は、それぞれの軸方向において、一方の端から10mmの位置と他方の端から10mmの位置と両者の間を等間隔で9つに分けたときのそれぞれの区分点との合計10点の外径をそれぞれ測定し、それらの平均値をそれぞれ円筒状コアと得られたフィルムロールの径とした。そして、上記(3)で測定した基材フィルムの厚みを用いて、下記式よりフィルムロールの層間空隙率を算出した。
Figure 0004391256
T:基材フィルム厚み(μm)
L:基材フィルム巻取長(m)
Rd:フィルムロール径(mm)
Cd:円筒状コア径(mm)
(7)蒸着時熱負け
得られたフィルムロールから供給されるフィルムを用い、その表面A上に真空蒸着(真空度:10−2Pa(10−4Torr)、張力:8kg/m(4.96kg/620mm幅))によりコバルト−酸素薄膜を形成する際に、クーリングキャンの温度を10℃、蒸着速度を100m/分とし、長さ18000mのフィルムロールを蒸着した際に、フィルムがクーリングキャンから浮いて熱負けを起こした個数で判定を行う。
0個 :○
1個 :△
2個以上:×
(8)磁気テープ特性
(8−1)出力
得られた磁気記録テープをスリッターにより幅6.35mmにスリットしリールに巻き取り磁気記録テープ(DVCビデオテープ)を作成した。上記、磁気記録テープの特性評価は、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーを改造したものを用いてビデオS/N比を求めた。S/N比の測定には、TV試験信号発生器から信号を供給し、ビデオノイズメーターを用い、市販のDVC−LPテープ(ソニー(株)製、商品名:DVM80R3)を0デシベル(dB)として比較測定し、次の基準で評価した。なお、走行条件は25℃、60%RHである。
○:+0.5dB以上
△:−0.5dB以上、+0.5dB未満
×:−0.5dB未満
ここでいう、○は蒸着型の高密度記録磁気テープ用途として、優れたレベルであることをいい、△は使用可能であり、×は不十分なレベルであることをいう。
(8−2)耐久性
耐久性は上記テープにおいて、40℃、相対湿度90%の環境下にて300回再生を実施し、出力特性を測定し以下の基準で判断した。
○:初期出力特性との差が1dB未満
△:初期出力特性との差が1dB以上3dB未満
×:初期出力特性との差が3dB以上
[実施例1]
実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度(オルソクロロフェノール溶媒、35℃)0.61のポリエチレンー2,6−ナフタレートである樹脂原料Aと、固有粘度(オルソクロロフェノール溶媒、35℃)0.61の実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンー2,6−ナフタレートに平均粒径300nmのシリコーン粒子を0.1重量%、平均粒径120nmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた樹脂原料Bとを、厚み比3:1の割合で、口金を通して共押出しし冷却ドラムに密着させシート化して未延伸フィルムを得た。このとき、樹脂原料Aからなる層が基材フィルムの表面A側、樹脂原料Bからなる層が基材フィルムの表面B側となる。この未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度135℃にて3.5倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムの樹脂原料Aからなる表面上に、下記組成の水性塗液(全固形分濃度1.0%)を塗布した。
表面A側への塗布水溶液:
・バインダー(アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製、商品名:SH−551A))83%
・不活性粒子(アクリルフィラー(平均粒径30nm、日本触媒株式会社製、商品名:エポスター))7%
・界面活性剤(三洋化成社製、商品名ナロアクティーN−70)10%
皮膜層厚み(乾燥後):8nm
続いてステンターに供給し、155℃にて横方向に5.5倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを200℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み4.7μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを基材フィルムとして得た。
この基材フィルムをスリッターを用いて幅620mm、長さ18000mのスリット状とし、円筒状コアに巻き取って、フィルムロールとした。ロールの巻取り条件は、張力80N/m、接圧900N/m、速度100m/分として実施した。なお、巻取りコアは、天龍工業株式会社製FWP10(6インチ径、厚み7.2mm、幅720mm)を用いた。
得られたフィルムロールを20℃、50%RH環境下で10日間保管後、100m/分の速度で巻出し、フィルム表面A上に真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を形成した。蒸着時後、巻き取った蒸着膜付きのフィルムロールはしわもなくきれいであった。次にコバルト−酸素薄膜上にスパッタリング法により、ダイヤモンド状カーボン保護膜を10nmの厚みで常法で形成させ、フッ素含有脂肪酸エステル系潤滑剤を3nmの厚みで塗布した。続いて、B層側の表面に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を500nmの厚みで設け、スリッターにより幅6.35mmにスリットしリールに巻取り磁気記録テープ(DVCビデオテープ)を作成した。得られたフィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。尚、テープ特性は、ロール表層側から500mの位置(A部)と巻芯端部から500mの位置(B部)の2箇所について評価を行った。
[実施例2]
実施例1の基材フィルムの製造において、ポリエチレン−2,6−ナフタレートをポリエチレンテレフタレートと変更し、縦延伸温度、倍率を105℃で3.3倍とし、横延伸温度、倍率を110℃、4.2倍とし、その後220℃で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmのポリエステルフィルムを得た。尚厚みは吐出量で調整した。その他は同様にして幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気記録テープの特性を表1に示す。
[実施例3]
実施例1の基材フィルムの製造において、樹脂原料Bに添加したシリコーンを、平均粒径0.2μmのシリカに変更し、含有量は0.1%のままとした。その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
[実施例4]
実施例1の基材フィルムの製造において、樹脂原料Aと樹脂原料Bの厚み比を5:1の割合に変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
[実施例5]
実施例1の基材フィルムの製造において、表面Aに塗布する水溶液を下記のように変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
表面A側への塗布水溶液:
・バインダー(アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製、商品名:SH−551A))84%
・不活性粒子(シリカフィラー(平均粒径15nm、日産化学工業株式会社製、商品名:スノーテックスC))6%
・界面活性剤(三洋化成社製、商品名ナロアクティーN−70)10%
被膜層厚み(乾燥後):8nm
[実施例6]
実施例1のフィルムロールの巻取りにおいて、ロールの巻取り条件を張力70N/m、接圧700N/m、速度90m/分と変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の基材フィルムの製造において、樹脂原料Aと樹脂原料Bの厚み比を1:3の割合に変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
[比較例2]
実施例1の基材フィルムの製造において、樹脂原料Bに添加する不活性粒子を平均粒径120nmのシリカ粒子を0.15重量%のみに変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
[比較例3]
実施例1の基材フィルムの製造において、樹脂原料Bに添加する不活性粒子を平均粒径600nmのシリコーン粒子を0.1重量%、120nmのシリカ粒子を0.12重量%に変更し、さらに樹脂原料Aと樹脂原料Bの厚み比を6:1の割合に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
[比較例4]
実施例1の基材フィルムの製造において、表面Aに塗布する水溶液を下記のように変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
表面A側への塗布水溶液:
・バインダー(アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製、商品名:SH−551A))89%
・不活性粒子(アクリルフィラー(平均粒径30nm、日本触媒株式会社製、商品名:エポスター))1%
・界面活性剤(三洋化成社製、商品名:ナロアクティーN−70)10%
被膜層厚み(乾燥後):8nm
[比較例5]
実施例1の基材フィルムの製造において、表面Aに塗布する水溶液を下記のように変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
表面A側への塗布水溶液:
・バインダー(アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製、商品名:SH−551A))82%
・不活性粒子(アクリルフィラー(平均粒径60nm、日本触媒株式会社製、商品名:エポスター))8%
・界面活性剤(三洋化成社製、商品名:ナロアクティーN−70)10%
被膜層厚み(乾燥後):14nm
[比較例6]
実施例1のフィルムロールの巻取りにおいて、ロールの巻取り条件を張力100N/m、接圧1600N/m、速度70m/分と変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他は実施例1と同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
[比較例7]
実施例1のフィルムロールの巻取りにおいて、ロールの巻取り条件を張力40N/m、接圧500N/m、速度150m/分と変更し、その他は実施例1と同様にして厚さ4.7μm、幅620mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。その他同様にして幅6.35mmの磁気テープを製造した。得られた基材フィルム、フィルムロール及び磁気テープの特性を表1に示す。
Figure 0004391256

Claims (10)

  1. 厚さが3〜9μmのポリエステルフィルムからなる基材フィルムを円筒状コアに10000〜50000m巻きつけたフィルムロールであって、
    基材フィルムの表面粗さ(WRa)は、一方の表面(表面A)が1〜2nmで、他方の表面(表面B)が表面Aよりも粗くかつ5nm以上で、表面Aと表面Bの表面粗さの和が高々12nmであること、
    表面Aは、高さ5〜50nmの突起を1〜50個/μmの範囲で有すること、そして
    該フィルムロールのフィルム層間空隙率が1.5〜3.0%であることを特徴とする磁気記録媒体用フィルムロール。
  2. 基材フィルムの表面Bが平均粒径0.01〜0.8μmの不活性粒子を含有するポリエステルフィルム層である請求項1記載の磁気記録媒体用フィルムロール。
  3. 基材フィルムの表面Aが、ポリエステルフィルムの表面に形成された不活性粒子と有機樹脂とからなる皮膜層である請求項1記載の磁気記録媒体用フィルムロール。
  4. 基材フィルムの表面Bが、平均粒径0.01〜0.8μmの不活性粒子を含有するポリエステルフィルム層で、基材フィルムの表面Aが、実質的に不活性粒子を含有しないポリエステルフィルム層の表面に形成された不活性粒子と有機樹脂とからなる皮膜層である請求項1記載の磁気記録媒体用ポリエステルフィルムロール。
  5. ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートである請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体用フィルムロール。
  6. デジタル記録方式の磁気記録媒体の製造に用いる請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用フィルムロール。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用フィルムロールから供給される基材フィルムと、該基材フィルムの表面A上に設けられた磁性層と、該基材フィルムの表面B上に設けられたバックコート層とからなることを特徴とする磁気記録媒体。
  8. 磁性層が強磁性金属薄膜層である請求項7記載の磁気記録媒体。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の磁気記録媒体用フィルムロールから基材フィルムを供給する工程、該供給された基材フィルムの表面A上に磁性層を設ける工程および該基材フィルムの表面B上にバックコート層を設ける工程からなることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  10. 磁性層を設ける工程が、真空蒸着である請求項9記載の磁気記録媒体の製造方法。
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