JP4390424B2 - ヒドロキシアミノ化合物及び/又はアミノオキシ化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応によりニトロソ化合物からヒドロキシアミノ化合物及び/又はアミノオキシ化合物を製造する方法や、ニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応用触媒に関し、好ましくは、ヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物を選択的に製造する方法や、ニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
生理活性物質の多くはその分子内にヘテロ原子、とりわけ窒素原子および酸素原子を含んでおり、医薬、農薬、工業薬品等の技術分野において有用な種々の化合物を合成するため、窒素原子および酸素原子を分子内に導入する新しい有機合成反応の開発が活発に行なわれている。求電子的アミノ化反応およびヒドロキシ化反応は発展期を迎え、特に、求核付加反応の求電子剤の中でも、C=O結合を有するカルボニル化合物やC=N結合を有するイミン類については、特徴的な新反応が数多く見出されている。しかしながら、N=O結合に対する求核付加反応についてはほとんど検討がなされていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、分子内に窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を有する生理活性物質の合成へ導くことができる化合物の合成において、N=O結合を有するニトロソ化合物を出発物質として、過酷な条件を必要とせずに容易に目的とするヒドロキシアミノ化合物やアミノオキシ化合物を得ることができる製造方法や、これら化合物のうちいずれか一方の化合物を選択的に得ることができるヒドロキシアミノ化合物及び/又はアミノオキシ化合物の製造方法や、ニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応用触媒を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、独自の方法によりN=O結合に対する求核付加反応について、鋭意研究を行った。まず、式(IV)に示すトリメチルシリルエノールエーテル1aとニトロソベンゼンの混合溶液に、ルイス酸触媒として10mol%のトリエチルシリルトリフラートを作用させ、0℃、1時間撹拌したところ、アミノオキシ化合物2aが94%の収率で得られた。一方、ルイス酸触媒としてトリエチルシリルトリフラートに代わりフッ化銀・(±)BINAPを作用させた場合は、ヒドロキシアミノ化合物3aのみが得られた。
【0005】
【化11】
【0006】
続いて様々なルイス酸を用いて、同様の反応を行ったところ、ルイス酸触媒としてシリルトリフラート、銀トリフラート、銅トリフラート、四塩化チタン、又は、三塩化鉄を用いた場合は、アミノオキシ化合物のみが高収率で選択的に得られるのに対し、フッ化銀、フッ化銅を用いた場合はヒドロキシアミノ化合物が高収率で生成された。また、ルイス酸触媒としてホウ素化合物を用いると、どちらの化合物も得られた。
以上の結果から、ニトロソベンゼンは様々なルイス酸触媒の存在下において、ヒドロキシアミノ化及びアミノオキシ化のいずれの反応に対しても優れた求電子性を示すことが分かった。さらに、特定のルイス酸触媒においては、ニトロソ基に対して、アザフィリック、あるいはオキソフィリックのいずれかに作用し、ヒドロキシアミノケトン化合物、又はアミノオキシケトン化合物のいずれか一方のみを高収率で選択的に得ることに成功した。
【0007】
また、基質一般性についての検討を行ない、アミノオキシ化合物を与える代表的なルイス酸触媒としてシリルトリフラートを、ヒドロキシアミノ化合物を与える触媒としてフッ化銀・BINAPを用いて、基質に対する位置選択性の一般性について検討を行った。その結果、アミノオキシ化合物はシリルトリフラート触媒存在下で、中程度の収率であるものの、種々のシリルエノールエーテルに対して高選択的に得られた。一方、ヒドロキシアミノ化合物はフッ化銀・BINAP触媒を用いて主生成物として与えられるが、収率および選択性については、種々のシリルエノールエーテルに対して若干の違いがみられた。
以上のことから、N=O結合を有するニトロソ化合物に対する求核付加反応では、ルイス酸触媒存在下において、ニトロソ化合物がヒドロキシアミノ化反応又はアミノオキシ化反応に対しても優れた求電子性を示すことに着目し、触媒として特定のルイス酸を用いることにより、どちらか一方の反応のみを選択的に進行させ得ることを見い出した。本発明は、上記知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち本発明は、ニトロソ化合物と、一般式(I)
【0009】
【化12】
【0010】
[式中、R1は、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R2は、水素原子又はメチル基を表し、R3は、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R1とR3とは結合してC5〜C8の環を形成してもよく、R4、R5、R6は、独立して、C1〜C3のアルキル基を表す。]で示されるシリルエノールエーテル化合物とを、
ルイス酸触媒としてのフッ化銀及びフッ化銅から選ばれる金属フッ化物の存在下に反応させ、一般式(II)
【0011】
【化13】
【0012】
[式中、R1、R2、R3は、一般式(I)におけるR1、R2、R3と同じものを表し、R7は、炭化水素基を表す。]で示されるヒドロキシアミノ化合物を、
又は、ルイス酸触媒としてのシリルトリフラート、銀トリフラート、及び銅トリフラートから選ばれるトリフラート又は四塩化チタン及び三塩化鉄から選ばれる金属塩化物の存在下に反応させ、一般式(III)
【0013】
【化14】
【0014】
[式中、R1、R2、R3は、一般式(I)におけるR1、R2、R3と同じものを表し、R7は、炭化水素基を表す。]で示されるアミノオキシ化合物を、合成することを特徴とするヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法に関し(請求項1)、好ましくは、一般式(I)〜(III)におけるR1が、C4〜C6の非環状炭化水素基を表すことを特徴とする請求項1記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法(請求項2)や、一般式(I)〜(III)におけるR3が、水素原子を表すことを特徴とする請求項1または2記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法(請求項3)や、ニトロソ化合物が、置換基を有していてもよいニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法(請求項4)や、ニトロソ化合物が、ニトロソイソブタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法(請求項5)や、一般式(I)におけるR4、R5、R6が、メチル基を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法(請求項6)や、金属フッ化物が、BINAP錯体であることを特徴とする請求項1記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法(請求項7)に関する。
【0015】
また、本発明は、ニトロソ化合物と、一般式(I)
【化15】
[式中、R 1 は、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R 2 は、水素原子又はメチル基を表し、R 3 は、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R 1 とR 3 とは結合してC5〜C8の環を形成してもよく、R 4 、R 5 、R 6 は、独立して、C1〜C3のアルキル基を表す。]で示されるシリルエノールエーテル化合物とをルイス酸触媒の存在下に反応させ、一般式(II)
【化16】
[式中、R 1 、R 2 、R 3 は、一般式(I)におけるR 1 、R 2 、R 3 と同じものを表し、R 7 は、炭化水素基を表す。]で示されるヒドロキシアミノ化合物を位置選択的に合成する反応におけるルイス酸触媒が、フッ化銀及びフッ化銅から選ばれる金属フッ化物を有効成分として含有することを特徴とするニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応用触媒(請求項8)や、金属フッ化物が、BINAP錯体であることを特徴とする請求項8記載のニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応用触媒(請求項9)や、ニトロソ化合物と、一般式(I)
【化17】
[式中、R 1 は、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R 2 は、水素原子又はメチル基を表し、R 3 は、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R 1 とR 3 とは結合してC5〜C8の環を形成してもよく、R 4 、R 5 、R 6 は、独立して、C1〜C3のアルキル基を表す。]で示されるシリルエノールエーテル化合物とをルイス酸触媒の存在下に反応させ、一般式(III)
【化18】
[式中、R 1 、R 2 、R 3 は、一般式(I)におけるR 1 、R 2 、R 3 と同じものを表し、R 7 は、炭化水素基を表す。]で示されるアミノオキシ化合物を位置選択的に合成する反応におけるルイス酸触媒が、シリルトリフラート、銀トリフラート、及び銅トリフラートから選ばれるトリフラート又は四塩化チタン及び三塩化鉄から選ばれる金属塩化物を有効成分として含有することを特徴とするニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応用触媒(請求項10)や、ニトロソ化合物と、一般式(I)
【0016】
【化19】
【0017】
[式中、R1は、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R2は、水素原子又はメチル基を表し、R3は、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R1とR3とは結合してC5〜C8の環を形成してもよく、R4、R5、R6は、独立して、C1〜C3のアルキル基を表す。]で示されるシリルエノールエーテル化合物とを、ルイス酸触媒としての三フッ化ホウ素ジエチルエーテル及びトリ(パーフルオロフェニル)ホウ素から選ばれるホウ素化合物の存在下に反応させ、一般式(II)
【0018】
【化20】
【0019】
[式中、R1、R2、R3は、一般式(I)におけるR1、R2、R3と同じものを表し、R7は、炭化水素基を表す。]で示されるヒドロキシアミノ化合物、及び、一般式(III)
【0020】
【化21】
【0021】
[式中、R1、R2、R3は、一般式(I)におけるR1、R2、R3と同じものを表し、R7は、炭化水素基を表す。]で示されるアミノオキシ化合物を合成することを特徴とするヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法(請求項11)や、一般式(I)〜(III)におけるR1が、C4〜C6の非環状炭化水素基を表すことを特徴とする請求項11記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法(請求項12)や、一般式(I)〜(III)におけるR3が、水素原子を表すことを特徴とする請求項11または12記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法(請求項13)や、ニトロソ化合物が、置換基を有していてもよいニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法(請求項14)や、ニトロソ化合物が、ニトロソイソブタンであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法(請求項15)や、一般式(I)におけるR4、R5、R6が、メチル基を表すことを特徴とする請求項11〜15のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法(請求項16)に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明のヒドロキシアミノ化合物及び/又はアミノオキシ化合物の製造方法は、ニトロソ化合物と、一般式(I)(式中、R1は、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R2は、水素原子又はメチル基を表し、R3は、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状炭化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R1とR3とは結合してC5〜C8の環を形成してもよく、R4、R5、R6は、独立して、C1〜C3のアルキル基を表す。)で示されるシリルエノールエーテル化合物とを、ルイス酸触媒存在下に反応させ、一般式(II)(式中、R1、R2、R3は、一般式(I)におけるR1、R2、R3と同じものを表し、R7は、炭化水素基を表す。)で示されるヒドロキシアミノ化合物、及び/又は、一般式(III)(式中、R1、R2、R3は、一般式(I)におけるR1、R2、R3と同じものを表し、R7は、炭化水素基を表す。)で示されるアミノオキシ化合物を合成する製造方法であれば、特に限定されるものではなく、ニトロソ化合物と、一般式(I)で示されるシリルエノールエーテル化合物とを、ルイス酸触媒存在下に反応させ、ニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応を利用して、一般式(II)で示されるヒドロキシアミノ化合物、及び/又は、一般式(III)で示されるアミノオキシ化合物を合成する方法である。
【0023】
本発明に用いられるニトロソ化合物は、ルイス酸触媒の存在下、顕著な求電子性を有し、求核付加反応を生ぜしめるニトロソ基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、脂肪族ニトロソ化合物、芳香族ニトロソ化合物のいずれであってもよい。脂肪族ニトロソ化合物としては、アルキルニトロソ化合物が挙げられ、ニトロソ基が第三級炭素原子に結合しているものが好ましく、具体的には、2−ニトロソイソブタン、2−ニトロソ−2−メチルペンタン等を例示することができる。また、芳香族ニトロソ化合物としては、ニトロソベンゼンを例示することができ、芳香族ニトロソ化合物に置換基を有するものであってもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアルコキシ基や、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などを例示することができる。
【0024】
かかる置換基を有する芳香族ニトロソ化合物としては、具体的には、o−ニトロソトルエン、m−ニトロソトルエン、p−ニトロソトルエン、3,5−ジメチルニトロソベンゼン、o−ニトロソエチルベンゼン、o−ニトロソスチレン、o−ニトロソアニソール、m−ニトロソアニソール、p−ニトロソアニソール、o−ニトロソフェネトール、m−ニトロソフェネトール、p−ニトロソフェネトール、o−フルオロニトロソベンゼン、m−フルオロニトロソベンゼン、p−フルオロニトロソベンゼン、o−クロロニトロソベンゼン、m−クロロニトロソベンゼン、p−クロロニトロソベンゼン、0−ブロモニトロソベンゼン、m−ブロモニトロソベンゼン、p−ブロモニトロソベンゼン等を例示することができる。
【0025】
本発明に使用されるシリルエノールエーテルは、一般式(I)で表され、式中、R1は、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R2は水素原子、又はC1〜C3のアルキル基を表し、R3は、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6の非環状化水素基、又はC3〜C6の環状炭化水素基を表し、R1とR3とは相互に結合してC5〜C8の環を形成してもよい。
かかるシリルエノールエーテルの一般式(I)におけるR1としては、置換基を有していてもよいC1〜C6非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基のいずれかであれば特に限定されるものではないが、R1はC4〜C6の非環状炭化水素基又は環状炭化水素基が好ましく、また、R3としては、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基のいずれかであれば特に限定されるものではない。一般式(I)におけるR1、R3で表わされるC1〜C6非環状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘプチニル基等のアルケニル基や、プロパルギル基等のアルキニル基等を具体的に挙げることができ、C3〜C6の環状炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基や、フェニル基の芳香族炭化水素基を具体的に挙げることができるが、R1としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基や、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘプチニル基等のアルケニル基等のC4〜C6の非環状炭化水素や、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等のC4〜C6の環状炭化水素基が好ましい。
【0026】
更に、一般式(I)中、R1、R3が表すC1〜C6非環状炭化水素や、C3〜C6の環状炭化水素基における置換基としては、特に制限されるものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基などや、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシル基、2,4,6−メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ベンジル基、フェネチル基等の芳香族炭化水素基などの環状炭化水素基を挙げることができる。
【0027】
また、一般式(I)におけるR1とR3とが相互に結合して形成するC5〜C8の環としては、1位の炭素に不飽和結合を有する脂環式炭化水素環を有するものであれば、特に制限されるものではなく、かかるC5〜C8の環としては、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキシニル基、1−シクロヘプチニル基、1−シクロオクチニル基、ビシクロ[2.2.1]−1−ヘプチニル基、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプチニル基等を挙げることができる。
【0028】
更に、R1とR3とが相互に結合して形成するC5〜C8の環における置換基としては、上記R1、R3が表す1〜C6の非環状炭化水素基や、C3〜C6の環状炭化水素基における置換基と同様の置換基を挙げることができ、かかる置換基のうち、環状の置換基はR1とR3とが相互に結合して形成するC5〜C8の環に縮合したものであってもよい。
【0029】
また、シリルエノールエーテルの一般式(I)におけるR2は、水素原子又はメチル基を表し、R4、R5、R6は、相互に独立して、C1〜C3のアルキル基を表すものであれば、特に制限されるものではない。R4、R5、R6のC1〜C3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基を挙げることができる。
【0030】
このようなシリルエノールエーテルとしては、具体的には、1−トリメチルシリルオキシ−1−(n−ブチル)エチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−(n−ブチル)−2−メチルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−(n−ペンチル)エチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−(n−ペンチル)−2−メチルエチレン、1−トリメチルシリル−1−(n−ヘキシル)エチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−(n−ヘキシル)−2−メチルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−シクロペンチルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−シクロペンチル−2−メチルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−シクロヘキシルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−シクロヘキシル−2−メチルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−フェニルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−フェニル−2−メチルエチレン、1−トリメチルシリルオキシ−1−シクロペンテン、1−トリメチルシリルオキシ−2−メチル−1−シクロペンテン、1−トリメチルシリルオキシ−1−インデン、1−トリメチルシリルオキシ−2−メチル−1−インデン、1−トリメチルシリルオキシ−1−シクロヘキセン、1−トリメチルシリルオキシ−2−メチル−1−シクロヘキセン、1−トリメチルシリルオキシ−2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセンを挙げることができる。
【0031】
本発明に用いられるルイス酸触媒としては、ニトロソ化合物の窒素原子又は酸素原子に対して電子対受容体として作用するものであれば、特に限定されるものではないが、ルイス酸触媒としては、トリフラートや、金属フッ化物、金属塩化物等が好ましい。
【0032】
本発明の所定のルイス酸であるトリフラートは、トリフルオロメタンスルホン酸のエステル(ROSO2CF3)や、金属塩(MOSO2CF3)であり、式(VII)で表されるシリルトリフラートや、銀トリフラート(AgOSO2CF3)や、銅トリフラート(Cu(OSO2CF3)2)等が好適である。
【0033】
【化22】
【0034】
式(VII)中、R8、R9、R10は独立して、C1〜C4のアルキル基を表し、かかるアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等を例示することができ、トリフラートは公知の方法に準じて生成することができ、市販のものを適用することができる。
【0035】
このようなアルキルシリルトリフラートとして、具体的には、トリメチルシリルトリフラート、トリエチルシリルトリフラート、t−ブチルジメチルシリルトリフラート等を例示することができる。
【0036】
本発明の所定のルイス酸である金属塩化物としては、いずれの金属の塩化物であってもよいが、四塩化チタン、三塩化鉄が好ましい。
また、本発明の金属フッ化物としては、いずれの金属フッ化物であってもよいが、フッ化銀、フッ化銅が好ましい。かかるフッ化銀や、フッ化銅はBINAPとの錯体としてもよい。BINAPは、2,2′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチル類であって、ビナフトールに、塩基存在下、パーフルオロアルキルスルホニルハライド又はパーフルオロアルカンスルホン酸無水物を反応させて、ジパーフルオロアルキルスルホネートを得、これを塩基及びニッケル触媒の存在下、ジフェニルホスフィンと反応させる等、公知の方法に準じて生成することができる。得られたBINAPから錯体を形成するには、BINAPをメタノール等の溶液とし、この溶液にフッ化銀、フッ化銅等を添加する等の公知の方法によることができる。また、BINAPは市販のものを適用し、金属フッ化物や、金属塩化物のBINAP錯体を容易に生成することができる。
【0037】
上記ルイス酸触媒として、シリルトリフラート又は金属塩化物を用いた場合は、式(V)に示すように、
【0038】
【化23】
【0039】
ニトロソベンゼンが単量体から二量体であるニトロオキシドに変化するために、ルイス酸が末端の酸素原子を活性化し、もう片方の酸素原子への求核攻撃が進行し、o−アルキル化体が生成すると考えられる。一方、上記ルイス酸触媒として、フッ化銀を用いた場合は、式(VI)に示すように、
【0040】
【化24】
【0041】
まず、単量体であるニトロソベンゼンの酸素原子へのフッ化銀の配位により、窒素原子へのシリルエノールエーテルの求核攻撃が進行する、または、フッ化銀の添加により銀エノラートが生成し、銀エノラートとニトロソベンゼンとの反応が起こり、N−アルキル化体が得られると考えられる。また、ルイス酸触媒としてホウ素化合物を触媒として使用すると、アミノオキシ化合物及びヒドロキシアミノ化合物の合計の収率を高く得ることができるが、反応生成物は双方が混在したものとなり、ホウ素化合物はいずれか一方を選択的に生成させる触媒として適用できるものではない。
これらのルイス酸触媒の使用量としては、1〜10mol%の範囲が好ましく、特に、5mol%程度がより好ましい。
【0042】
本発明の製造方法に用いられる溶媒としては、特に制限されるものではないが、使用するニトロソ化合物、シリルエノールエーテルや、反応生成物のアミノオキシ化合物、ニトリルや、触媒との関係において、適宜選択することができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香環をもつ溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒等を使用することができ、これらの溶媒の1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうちで、特に、メタノール、1,2−ジクロロプロパン等が好ましい。
【0043】
本発明のニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応は、上記ニトロソ化合物とシリルエノールエーテルとを、ルイス酸触媒の存在下で行なう反応であれば、特に限定されるものではないが、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、上記のニトロソ化合物の溶媒溶液に、シリルエノールエーテル化合物を、ニトロソ化合物1molに対して、1mol%程度添加し、この混合溶液に、ルイス酸触媒である金属フッ化物1〜10mol%、好ましくは5mol%程度を、−78℃〜室温、好ましくは0℃前後の温度で添加することにより、ニトロソ化合物の窒素原子に選択的求核付加反応が生じ、ヒドロキシアミノ化合物が選択的に生成される。他方、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、上記のニトロソ化合物の溶媒溶液に、シリルエノールエーテル化合物を、ニトロソ化合物1molに対して、1mol%程度添加し、この混合溶液に、シリルトリフラート、金属塩化物1〜10mol%、好ましくは5mol%程度を、−78℃〜室温、好ましくは0℃前後の温度範囲で添加することにより、ニトロソ化合物の酸素原子に選択的求核付加反応が生じ、アミノオキシ化合物が選択的に生成される。反応後、飽和食塩水を添加して反応を終了させることができ、得られたヒドロキシアミノ化合物や、アミノオキシ化合物の精製は、公知の従来の方法で行うことができる。
【0044】
本発明のニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応によって、ニトロソ化合物から選択的に生成されるヒドロキシアミノ化合物としては、具体的には、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン、2−(N−o−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−(N−p−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−[N−(3,5−キシル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(o−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−(N−o−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−p−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−[N−(3,5−キシル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(o−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノンを例示することができる。
【0045】
更に、生成されるヒドロキシアミノ化合物としては、具体的には、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−(N−o−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−p−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−[N−(3,5−キシル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(o−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロオクタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロオクタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[g]シクロオクタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[g]シクロオクタノン、2−(N−o−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロオクタノン、2−(N−p−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロオクタノン、2−[N−(3,5−キシル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(o−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(p−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロオクタノンを例示することができる。
【0046】
更に、生成されるヒドロキシアミノ化合物としては、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)フェニルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−o−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−p−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(3,5−キシル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(o−アニソール)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(p−アニソール)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)フェニルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−o−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−p−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(3,5−キシル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(o−アニソール)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(p−アニソール)ヒドロキシアミンを例示することができる。
【0047】
また、本発明のニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応によって、ニトロソ化合物から選択的に生成されるアミノオキシ化合物としては、具体的には、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン、2−(N−o−トリルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−(N−p−トリルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−[N−(3,5−キシル)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(o−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−(N−o−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−p−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−[N−(3,5−キシル)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−クロロフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(o−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノンを例示することができる。
【0048】
更に、生成されるアミノオキシ化合物としては、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−(N−o−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−p−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−[N−(3,5−キシル)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(o−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロオクタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロオクタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[g]シクロオクタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[g]シクロオクタノン、2−(N−o−トリルアミノオキシ)−1−シクロオクタノン、2−(N−p−トリルアミノオキシ)−1−シクロオクタノン、2−[N−(3,5−キシル)アミノオキシ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)アミノオキシ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)アミノオキシ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(o−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロオクタノン、2−[N−(p−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロオクタノンを例示することができる。
【0049】
更に、生成されるアミノオキシ化合物としては、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)フェニルアミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−o−トリルアミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−p−トリルアミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(3,5−キシル)アミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(p−クロロフェニル)アミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(o−アニソール)アミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(p−アニソール)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)フェニルアミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−o−トリルアミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−p−トリルアミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(3,5−キシル)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(p−クロロフェニル)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(o−アニソール)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(p−アニソール)アミンを例示することができる。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1[ヒドロキシアミノ化合物選択的生成のルイス酸触媒の選択]
アルゴン気流下、メタノール溶媒(2ml)に、フッ化銀(12.7mg)と、ラセミ−BINAP(62.3mg)を溶かし、遮光して室温で20分攪拌し、フッ化銀・BINAP錯体メタノール溶液を調製した。次に、アルゴン気流下、メタノール溶媒(3ml)にニトロソベンゼン(107.1mg)を溶かし、さらに、室温で5分間攪拌した。この溶液を0℃に冷却後、1−トリメチルシリル−2−メチル−1−インデン(230μL)(式(IV)における1a)を加え、続いて、最初に調製したフッ化銀・BINAP錯体メタノール溶液(2ml)(10mol%)を10分かけてゆっくり滴下した。0℃で2時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン(式(IV)における2a)と、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン(式(IV)における3a)(230.5mg)を得た。反応生成物における2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン(2a)と、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン(3a)の収率の比は>99:1であり、分離後の収率は91%であった。結果を表1に示す。同様にして調製したフッ化銅・BINAP錯体を触媒として、反応を行ない、反応生成物を得た。また、フッ化銀、フッ化銅を触媒として反応生成物を得た。更に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
フッ化銅・BINAP錯体、フッ化銅・BINAP錯体については、反応生成物を収率高く得ることができ、フッ化銀、フッ化銅については、反応生成物の収率はBINAP錯体より低いものの、いずれの場合も、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノンを選択的に得ることができた。
【0053】
実施例2[アミノオキシ化合物選択的生成のルイス酸触媒の選択]
アルゴン気流下、1,2−ジクロロプロパン溶媒(3ml)に、ニトロソベンゼン(107.1mg)を溶かし、さらに、室温で5分間攪拌した。この溶液を0℃に冷却後、1−トリメチルシリル−2−メチル−1−インデン(230μL)(1a)を加え、続いて、トリエチルシリルトリフラート(23μL)(10mol%)を10分かけてゆっくり滴下した。0℃で1時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン(式(IV)における2a)と、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン(式(IV)における3a)(238.1mg)を得た。反応生成物における2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン(2a)と、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン(3a)の収率の比は1:>99であり、分離後の収率は94%であった。結果を表1に示す。同様にシリルトリフラート、金属塩化物を触媒として反応を行ない、反応生成物を得た。結果を表1に示す。
【0054】
実施例3[ニトロソ化合物に対するルイス酸触媒作用]
アルゴン気流下、1,2−ジクロロプロパン溶媒(3ml)に、ニトロソベンゼン(107.1mg)を溶かし、さらに、室温で5分間攪拌した。この溶液を0℃に冷却後、1−トリメチルシリル−2−メチル−1−インデン(230μL)(1a)を加え、続いて、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル(5mol%)を10分かけてゆっくり滴下した。0℃で1時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン(式(IV)における2a)と、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン(式(IV)における3a)(238.1mg)を得た。反応生成物における2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン(2a)と、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン(3a)の収率の比は60:40であり、分離後の収率は84%であった。結果を表1に示す。同様にトリ(パーフルオロフェニル)ホウ素を触媒として反応をおこない、反応生成物を得た。結果を表1に示す。
シリルトリフタレートは、反応生成物を収率高く得ることができ、銅トリフラート、銀トリフラート、金属塩化物については、シリルトリフタレートより収率は低下するものの、いずれの場合も、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノンを選択的に得ることができた。また、ホウ素化合物については、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン及び2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノンとを合計して収率よく得ることができた。
【0055】
実施例4[シリルエノールエーテルの基質適用範囲]
実施例1で調製したフッ化銀・BINAP錯体メタノール溶液(10mol%)を触媒として用い、実施例1と同様にして、表2に示すシリルエノールエーテル(1)と、ニトロソベンゼンとの反応を行なった。また、トリエチルシリルトリフラート(5mol%)を触媒として、実施例2と同様にして、表2に示すシリルエノールエーテル(1)と、ニトロソベンゼンとの反応を行なった。ヒドロキシアミノ化合物(2)とアミノオキシ化合物(3)の反応生成物の収率、及び、収率比を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すシリルエノールエーテルから、ヒドロキシアミノ化合物、又はアミノオキシ化合物のいずれかを選択的に得ることができることがわかった。特にシリルトリフラート触媒を用いた場合、アミノオキシ化合物を選択的に得ることができることがわかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、ルイス酸触媒を用いて、ニトロソ化合物とシリルエノールエーテルから、ヒドロキシアミノ化合物及び/又はアミノオキシ化合物を収率よく合成することができ、更に、ヒドロキシアミノ化合物、アミノオキシ化合物のいずれか一方を選択的に得ることができ、生理活性物質の合成へ導くことができる化合物を効率よく合成することができる。
Claims (16)
- ニトロソ化合物と、一般式(I)
ルイス酸触媒としてのフッ化銀及びフッ化銅から選ばれる金属フッ化物の存在下に反応させ、一般式(II)
又は、ルイス酸触媒としてのシリルトリフラート、銀トリフラート、及び銅トリフラートから選ばれるトリフラート又は四塩化チタン及び三塩化鉄から選ばれる金属塩化物の存在下に反応させ、一般式(III)
合成することを特徴とするヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法。 - 一般式(I)〜(III)におけるR1が、C4〜C6の非環状炭化水素基を表すことを特徴とする請求項1記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法。
- 一般式(I)〜(III)におけるR3が、水素原子を表すことを特徴とする請求項1または2記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法。
- ニトロソ化合物が、置換基を有していてもよいニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法。
- ニトロソ化合物が、ニトロソイソブタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法。
- 一般式(I)におけるR4、R5、R6が、メチル基を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物の製造方法。
- 金属フッ化物が、BINAP錯体であることを特徴とする請求項1記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法。
- ニトロソ化合物と、一般式(I)
- 金属フッ化物が、BINAP錯体であることを特徴とする請求項8記載のニトロソ化合物への位置選択的求核付加反応用触媒。
- ニトロソ化合物と、一般式(I)
- ニトロソ化合物と、一般式(I)
- 一般式(I)〜(III)におけるR1が、C4〜C6の非環状炭化水素基を表すことを特徴とする請求項11記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法。
- 一般式(I)〜(III)におけるR3が、水素原子を表すことを特徴とする請求項11または12記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法。
- ニトロソ化合物が、置換基を有していてもよいニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法。
- ニトロソ化合物が、ニトロソイソブタンであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法。
- 一般式(I)におけるR4、R5、R6が、メチル基を表すことを特徴とする請求項11〜15のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物及びアミノオキシ化合物の製造方法。
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