JP4389319B2 - オフセット印刷用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面粘着性、吸水抵抗性、インク着肉性及びオフセット印刷時の紙粉堆積の少ないオフセット印刷用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷技術は、オフセット印刷化、カラー印刷化、高速大量印刷化、自動化など大きな進歩を遂げてきている。これに伴い、印刷用紙に対しても、作業性、印刷適性の面から各種の物性の改良が求められている。
【0003】
特に、新聞印刷用紙(新聞用紙、新聞巻取紙)は、一般的に、機械パルプや脱墨パルプ(以下、「脱墨パルプ」を「DIP」と略す)を主体とする紙であり、中・下級紙に分類される紙でありながら、他方では、指定された時間内に、指定された部数を確実に印刷しなければならず、一般印刷用紙以上に厳しい品質を要求される紙である。最近の新聞印刷用紙は、軽量化、DIPの高配合化などが求められており、これらの品質要求を克服しながら各種の改良を行う必要がある。このような観点から、新聞印刷用紙の改良は一般印刷用紙に比較してかなり厳しいものとなっている。
【0004】
新聞印刷についても、近年、印刷の高速化の要求、カラー紙面の要求、多品種印刷の要求、自動化の要求などの点から、新聞印刷へのコンピューターシステム導入と相まって凸版印刷からオフセット印刷への転換が急速に進んでいる。
【0005】
このオフセット印刷の普及により、新聞印刷用紙に対して、凸版印刷用の新聞印刷用紙とは異なった品質が要求されている。例えば、1)表面粘着性が小さい、すなわち剥離性がよいこと、2)ブランケットに紙粉の堆積が少ないこと、3)吸水抵抗性が適度に保たれオフセット印刷時に水切れがないこと、4)印刷インクのセット性が適度であること、5)不透明度が高く裏抜けしないこと、6)摩擦係数が適度であることなどの品質である。これらの要求品質の中でも、特に、1)表面粘着性の低下、2)紙粉の減少、3)吸水抵抗性の向上、4)印刷インクの着肉性の向上などが重要な課題となっている。
【0006】
しかし、機械パルプやDIPの含有率の高い新聞印刷用紙は、機械パルプの含有率が低く、広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPと略す)の含有率が高い一般印刷用紙とは異なり、微細化した繊維が多く、紙粉の問題が発生しやすい。また、機械パルプの含有率が高い場合、微細化した繊維同士の結合力は弱く、紙表面の状態は粗であるので紙表面から紙粉が脱落して印刷時にブランケットに紙粉の堆積が増加する傾向がある。
【0007】
新聞印刷用紙の軽量化については、例えば、1989年には、坪量46g/m2の新聞印刷用紙が96%を占めていたが、1993年には、坪量43g/m2の新聞印刷用紙が約80%を占めるに至っている。軽量化の進展により、新聞印刷用紙の不透明度の低下、紙力の低下などの問題が生じている。そのため、このような不透明度の低下、紙力の低下などを補うために、無機や有機の填料、顔料を増配しなければならない。しかし、填料あるいは顔料の増配は、用紙自体が薄く、軽くなっていることと相まって、填料あるいは顔料をより脱離しやすくする。特に、湿し水を用いるオフセット印刷の場合には、湿し水がパルプの繊維間結合を弱くすることから、その脱離の傾向はさらに大きいものとなっている。これらの脱離の傾向は、新聞印刷用紙のさらなる軽量化の進展に伴って、さらに深刻な問題となってきており、例えば、坪量40g/m2未満の新聞印刷用紙の改良は、坪量43g/m2以上の新聞印刷用紙の改良より非常に困難となっている。
【0008】
さらに、DIPの高配合化により、DIP由来の微細繊維、填料あるいは顔料の増加を招き、軽量化と相まって紙粉の増加、紙力の低下などの問題が生じる。これらの問題もDIPの配合率が上昇するほど重大な問題となっている。以上述べたように、新聞印刷用紙の最近の傾向は、特に表面強度の点で大きなマイナス要因となっている。
【0009】
新聞印刷用紙の表面強度の改良は、大別して非塗工による対策と塗工による対策が知られている。
【0010】
非塗工での対策は、原料配合の変更、抄紙条件の変更、紙力増強剤の増量などによる方法である。しかし、これらの方法では、オフセット新聞印刷用紙への厳しい品質要求に対応することは困難である。
【0011】
一方、塗工による対策は、澱粉、化工澱粉(酸化澱粉、澱粉誘導体など)やポリビニルアルコールなどの表面処理剤を、新聞印刷用原紙に表面塗工(外添)する方法であり、表面強度の改良に有効な手段となっている。
【0012】
新聞印刷用紙への表面処理剤の塗工は、経済的な側面からオンマシーン塗工が一般的であり、高速塗工が可能な被膜形成転写方式であるゲートロールコーターが用いられている。このゲートロールコーター方式の特徴は、例えば、紙パ技協誌 第43巻第4号(1989)p.36、紙パルプ技術タイムスVol.36 No.12(1993) p.20などに簡単にまとめられているが、一般印刷用紙で用いられている2本ロールサイズプレス方式と比較して、塗工液を効率よく紙表面にとどめることが可能であり紙表面の改良に効果的である。すなわち、2本ロールサイズプレス方式では、原紙は塗工液のポンド(液溜り)中を通過するため、塗工液の原紙への浸透が非常に大きいのに対し、ゲートロールコーター方式では、塗工液があらかじめ被膜を形成しその膜が転写されるため、塗工液の原紙への浸透がかなり抑制される。そのため、ゲートロールコーター方式では、塗工層が原紙表面に均一に形成される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したように、新聞印刷用紙の最近の傾向(軽量化、あるいはDIPの高配合化の進展)は、表面強度の点で大きなマイナス要因となっており、塗工による対策においても表面処理剤の塗布量を増加させる必要が生じている。従来から常用されている澱粉、加工澱粉やポリビニルアルコールなどの表面処理剤を多量に用いた場合、表面強度の向上効果は認められるものの、その表面処理剤が水で湿潤された状態では表面粘着性を示すため、新聞印刷用紙の製造時あるいは印刷時に、表面粘着性に起因するトラブル(いわゆる「ネッパリ」と呼ばれる現象)を起こす問題があった。また、このネッパリ問題は、表面処理剤をゲートロールコーターのようなフィルム転写方式で塗工を行った場合、2本ロールサイズプレスと比較してより顕著で深刻な問題であった。さらに4色カラー印刷では、新聞印刷用紙がの同一印刷面が4回の湿し水で湿潤されるため、ブランケット及び紙表面に水皮膜が生じやすく疎水性のインクが着肉しにくい現象がみられた。
【0014】
また、新聞印刷用紙に吸水抵抗性がないと、オフセット印刷時に湿し水が用紙内部に容易に浸透してしまうため、その部分の強度が低下し、印刷時の張力により断紙(以下、水切れ断紙と呼ぶ)が起こりやすく印刷時の重要な問題となっている。
【0015】
従って、ゲートロールコーターのようなフィルム転写方式による塗工において、新聞印刷用紙における表面強度の改善(紙粉の抑制)、吸水抵抗性の向上、表面粘着性(ネッパリ)の低下、インク着肉性の向上は極めて重要な課題である。
【0016】
これらに関して、例えば、特開平6-57688号公報、及び特開平6-192995号公報などに、表面処理剤に添加して表面粘着性を改善するような粘着防止剤が開示されている。すなわち、特開平6-57688号公報では、有機フルオロ化合物から成る粘着防止剤が、一方、特開平6-192995号公報では、置換コハク酸及び/または置換コハク酸誘導体を有効成分とする粘着防止剤が開示されている。これらの粘着防止剤を使用することによりネッパリが低減するので、表面処理剤の塗布量を増やすのに有効である。しかし、これらの粘着防止剤の使用においては、1)塗工材料が表面処理剤と粘着防止剤の2成分になるため塗工時の泡立ちが著しい、2)コスト上昇の要因になる、3)カラー印刷時の墨の着肉が悪化するなどの問題のあることが認められた。
【0017】
特開平5-59689号公報、特開平5-295693号公報には、ポリビニルアルコールとポリエーテル化合物から成る紙用サイジング剤が開示されている。特に、特開平5-59689号公報には、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体とポリビニルアルコールから成る組成物を新聞印刷用原紙に塗布すると、表面強度が改良され、かつオフセット印刷時の粘着性の低い新聞印刷用紙が得られることが開示されている。この組成物は、澱粉類やポリビニルアルコールを単独で塗工した場合に比較して、表面粘着性をある程度改善できるものの、さらに軽量化、DIP高配合化が進んだ場合、満足できるインク着肉性と表面粘着性を得ることはできなかった。
【0018】
さらに、本発明者らは、特願平11-233238号において、コロイダルシリカを新聞用紙の表面塗工剤として使用することを提案した。しかしながら、コロイダルシリカを単独で使用した場合には、表面強度及び表面粘着性の点では優れているが、吸水抵抗性が極めて低いために、オフセット印刷時に湿し水の印刷紙面への浸透により断紙が起こるという問題があった。また、印刷インクの着肉性も若干劣るため印刷の仕上がりにも問題があった。
【0019】
そこで、本発明では、表面粘着性、吸水抵抗性、インク着肉性及び印刷時の紙粉堆積の少ないオフセット印刷用紙の提供を課題とした。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、印刷用原紙に、コロイダルシリカ及び表面サイズ剤の2成分を主体とする表面処理剤を含有した塗工層を設けることにより解決された。
【0021】
コロイダルアルミナあるいはコロイダルシリカを表面処理剤として使用した例としては、特開平4-12879号公報に、合成フィルム等の各種印刷対象物にコロイダルアルミナ100重量部に対して界面活性剤5重量部以下である水分散体を塗布して印刷することが開示されている。特開平4-327297号公報にはウイスカーと共にコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカを配合した防滑剤が開示されている。特開平6-48022号公報には、感圧紙のトナー複写の定着を向上させるために、無機コロイドのコーティング組成物としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカが記載されている。さらに、段ボール用板紙の摩擦係数を増加させて滑りを防止するために、コロイダルシリカを用いることが、井上らによって述べられている(M.Inoue,N.gurunagul,and P.Aroca,Tappi Jounal,72(12),81-85,1990)。
【0022】
同様に、C.H.フレッチャーはコロイダルシリカを紙の摩擦増加材料として用いることを“コロイダルシリカの利用による滑り防止処理”と題する報告書の中で論じている(C.H.Fletcher,Tappi Jounal 1973,56(8),81-85参照)。
【0023】
米国特許第3,389,100号には、シリカのエアロゲルを紙箱用印刷インクの滑り防止に用いることが開示されている。
【0024】
この他、コロイダルシリカを内添用に使用して歩留まりを向上させる記載の文献が数多くみられる。しかしながら、印刷用紙特に新聞印刷用紙における表面物性を改善することを目的とした記載は見られない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明するが、説明は本発明が最も有効に作用する新聞印刷用紙を具体例として記載した。
【0026】
本発明の表面処理剤に用いられるコロイダルシリカは、通常、無水ケイ酸を20〜40%含有し、酸化ナトリウムとして換算したナトリウムの含有率は1%以下で、pHは9.5〜10.5のコロイダルシリカである。無水ケイ酸は水分散液中でSiO2・XH2Oの形であり、粒径5〜100nmのコロイド粒子となっており、粒径が非常に小さいので容易に紙面に浸透し吸着力あるいは付着力が強くなる。
【0027】
本発明に用いられる表面サイズ剤としては、パラフィンワックスエマルジョン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、ロジン、シリコン樹脂エマルジョン、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−マレイン酸系共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル系共重合体、スチレン−マレイン酸−マレイン酸エステル系共重合体、オレフィン−マレイン酸系共重合体などが挙げられる。これらの中で、特にスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸系共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸系共重合体、オレフィン−マレイン酸系共重合体が優れている。
【0028】
コロイダルシリカに対する表面サイズ剤の所要量は5〜30重量%が望ましい。5重量%未満では吸水抵抗性の付与が十分ではなく、30重量%を超えるとコロイダルシリカの本来の特性が損なわれてしまう。
【0029】
本発明の表面処理剤においては、本発明の目的を損なわせない範囲で所望の用紙物性に適合させるため、無機顔料や他の表面処理剤を併用することは差し支えない。
【0030】
このような目的で用いられる無機顔料は、製紙用の填料、顔料として通常使用される炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、二酸化チタン等である。特に、二酸化チタンは少量の添加でも不透明度が向上するので好ましい。
【0031】
本発明で用いる二酸化チタンは、製紙用として通常使用される、比重3.8〜4.2程度の二酸化チタン及び水和二酸化チタンが好ましい。結晶の形態は、ルチル型あるいはアナタース型のいずれもが使用できる。二酸化チタンのコロイダルシリカに対する使用量はコロイダルシリカの種類、原紙の組成、原紙中の内添剤の量と種類等により変動するが、通常15〜30重量%で不透明度及び裏抜け防止に最大の効果が発現する。
【0032】
また、本発明の表面処理剤には、表面粘着性を悪化させない範囲で、澱粉、化工澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の表面処理剤を含有させてもよい。
【0033】
本発明で用いる新聞印刷用原紙は、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、セミケミカルパルプなどのメカニカルパルプ(MP)、クラフトパルプ(KP)に代表されるケミカルパルプ(CP)及びこれらのパルプを含む故紙を脱墨して得られる脱墨パルプ(DIP)及び抄紙工程からの損紙を離解して得られる回収パルプなどを、単独あるいは任意の比率で混合したパルプを常法に従い抄紙したものである。本発明の効果が顕著なのは、坪量37g/m2〜45g/m2の範囲で抄造した原紙である。坪量46g/m2以上の原紙の場合、その原紙は表面強度を十分に持っていると考えられ、また、オフセット印刷時における湿し水に起因する用紙の寸法変化、あるいは強度低下も無視できる程度であると考えられるので、必ずしも、薬品の外添により表面強度を改良する必要はない。
【0034】
一方、本発明で用いる原紙のDIPの配合率については、0〜100重量%の任意の範囲で配合することができる。最近のDIP高配合化の流れからすると、30〜100重量%の範囲がより好ましい。特に、DIPを70重量%以上配合した用紙に対し本発明は有効である。
【0035】
この新聞印刷用原紙には、填料としてクレー、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機填料、あるいは塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体系樹脂などの合成樹脂から製造される有機填料を添加できる。特に中性抄紙には炭酸カルシウムが有効である。
【0036】
また、必要に応じて、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂などの紙力増強剤;アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物などのろ水性あるいは歩留まり向上剤;硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、耐水化剤、紫外線防止剤、退色防止剤などの助剤などを含有してもよい。この原紙の物性は、オフセット印刷機で印刷できるものである必要があり、通常の新聞印刷用紙程度の引張り強度、引裂き強度、伸びなどの物性を有するものであればよい。
【0037】
また、本発明の新聞印刷用原紙は、酸性の新聞印刷用原紙であってもよいし、中性あるいはアルカリ性新聞印刷用原紙であってもよい。
【0038】
本発明の新聞印刷用紙は、新聞印刷用原紙の片面、あるいは両面に本発明の表面処理剤を含む塗工液をゲートロールコーターなどのオンマシーン塗工機により塗工することにより製造される。
【0039】
本発明の表面処理剤の塗工量は、製造される印刷用紙に対して求められる表面強度付与の程度に応じて決定されるものであり、特に限定されるものではないが、表面強度付与の観点からすれば、塗工量が0.1〜1.0g/m2(片面あたり)の範囲で有効にその効果を発揮する。塗工量が0.1g/m2未満では、本発明の組成物が十分な塗工層を形成しないため紙粉堆積の改良が不十分である。他方、塗工量が1.0g/m2を超える場合は、表面粘着性の悪化が懸念される。
【0040】
本発明の表面処理剤は、塗工機として、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーターなどの被膜転写型のコーターを用いるのが好ましく、特にゲートロールコーターを用いる時、その効果を大きく発揮する。すなわち、前述したように、従来用いられている表面処理剤は、ゲートロールコーターでは、十分な表面強度を持たせると粘着性に問題が生ずるものであったが、本発明の表面処理剤は、この方式でも、前述の塗布量領域で、抄紙速度600〜1800m/分の範囲でオンマシーン塗工することにより効率よく表面強度と表面粘着性を改善することが可能である。
【0041】
また、本発明の表面処理剤は、ゲートロールコーター塗工適性も優れているので、新聞印刷用原紙に、オンマシーンゲートロールコーターにより両面塗工を行うのが最も望ましい。
【0042】
新聞印刷用紙の場合、用紙の表面の平滑度は低く、ゲートロールコーター方式による比較的低塗布量領域では、用紙表面に無機材料からなる塗工層を設けることは困難であると考えられてきた。しかしながら、本発明の表面処理剤は、抄紙速度600〜1800m/分と高速の抄紙速度で、かつ比較的低塗布量でも、粘着性の少ない表面強度、吸水抵抗性及びインク着肉性付与効果が認められるという優れた特徴がある。
【0043】
本発明の表面処理剤を含有する塗工層を設けた新聞印刷用紙は、摩擦係数が向上することも確認されている。従って、特に防滑剤を配合させる必要もない。新聞印刷用紙に適用した場合、製造される新聞印刷用紙の動摩擦係数は、0.40〜0.70の範囲にあることが望ましい。
【0044】
本発明の表面処理剤を含有する塗工層を設けた新聞印刷用紙は、表面強度を広い範囲でコントロールすることが可能なので、印刷時に使用する各種インクに幅広く対応することができる。例えば、油性インク中に湿し水を混入させたエマルジョンインクなどの特殊インク、水なし平版用のタック性の高いインクなどへの対応も可能である。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を、本発明の効果が最も現れる新聞印刷用紙について実施例及び比較例に従って、詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、説明中、パーセントは重量パーセントを示す。
【0046】
実施例及び比較例で製造した新聞印刷用紙について、表面粘着性は剥離強度の測定により、吸水抵抗性は点滴吸水度の測定により評価し、塗工量、インク着肉性、紙粉量を以下に示す方法にて測定した。
【0047】
・塗工量の測定:塗工量はアプリケータロール上の液膜の厚さを測定し、転移率を95%として計算した。
【0048】
・剥離強度の測定:新聞印刷用紙を4×6cmに2枚切り取り、1枚の塗工面を温度20℃の水に5秒間浸漬した後、塗工面同士を密着させた。外側両面に新聞印刷用原紙を重ね、50kg/m2の圧力でロールに通し、20℃、65%RHで24時間調湿した。これを3×6cmの試料片とした後、引張り試験機で引張り速度30mm/分の条件で測定を行った。初期の剥離強度の高い値をピーク値とした。次に安定した剥離強度の値を安定値とした。剥離強度の測定値が大きいほど、剥がれにくい(逆の言い方をすると、粘着性が強い)ことを意味する。本発明の新聞印刷用紙では、剥離強度の安定値が15.0gf/3cm以下のものを“剥離性が良好である、即ち表面粘着性が少ない”とした。
【0049】
・点滴吸水度の測定:点滴吸水度はJapan TAPPI No.33に準拠した点滴吸水度法で行った。表面処理剤を塗工した新聞印刷用紙のF面に蒸留水1μlを滴下し、水滴が紙面に吸収されるまでの時間を測定した。点滴吸水度の値が大きい程、吸水抵抗性は高く、オフセット印刷時の新聞用紙表面から原紙内部への湿し水の浸透が少なくなり、水切れ断紙が起こりにくくなることを意味している。
【0050】
・インク着肉性の測定:インク着肉性はプリュフバウ印刷試験機により行った。プリュフバウ印刷試験機のゴムロールに一定量の墨インキをのせ、新聞印刷用紙(印刷面積: 4×20cm)に、印圧:15N/m、印刷速度:6.0m/秒で印刷した。この時、新聞印刷用紙の中央部2×20cm部分に湿し水が接触し、その0.15秒後に印刷される。そして、両端の湿し水が付着していない印刷部(DRY印刷部)及び中央部の湿し水が付着した印刷部(WET印刷部)の印刷濃度をマクベス濃度計で測定した。インク着肉性評価はDRY印刷濃度値からWET印刷濃度値を差し引いた値で行った。すなわち、この印刷濃度差が小さい程、DRY印刷濃度とWET印刷濃度の差は小さく、WET印刷部は湿し水の影響をあまり受けていないことを意味し、差が大きい程、WET印刷部は湿し水の影響を大きく受けインク着肉性が劣ることを示している。
【0051】
・紙粉量の測定:紙粉量はオフセットタイプのアポロ印刷機を使用して測定した。印刷は表面処理剤を塗工した新聞印刷用紙のF面に一色印刷で、20000部を印刷した。インクは墨インキを使用した。印刷後の画像部の濃度を1.20に設定し、版上の湿し水の膜厚が1.7ミクロンになるように調整した。印刷終了後にブランケットを回収し、ブランケットに堆積した紙粉を、蒸留水で湿らせて歯ブラシでかきとって重量を測定し、100cm2当りの紙粉量として算出した。
【0052】
<新聞印刷用原紙の製造>
DIP(脱墨パルプ)35部、TMP(サーモメカニカルパルプ)30部、GP(グランドパルプ)20部、KP(クラフトパルプ)15部の割合で混合離解し、フリーネスを200mlに調製した混合パルプをベルベフォーマー型抄紙機にて、抄紙速度1100m/分で抄紙し、未サイズ、ノーカレンダーの新聞印刷用原紙を得た。この原紙は、坪量43g/m2、密度0.65g/cm3、白色度51%、平滑度60秒、静摩擦係数0.45、動摩擦係数0.56であった。また、この原紙は内添サイズ剤を含まず、点滴吸水度は7秒であった。
【0053】
[実施例1]
コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスST−40、日産化学工業製)の40%水溶液を固形分濃度10%になるように水で希釈し、コロイダルシリカ水溶液とした。次に、表面サイズ剤としてスチレン−アクリル酸共重合体(商品名:コロパールM−305、星光化学工業製)の10%水溶液を調製した。次に、コロイダルシリカに対して表面サイズ剤の添加比率が25重量%となるように両者を混合し、10%濃度の表面処理剤塗工液を調製した。得られた表面処理剤塗工液を、前述の新聞印刷用原紙のF面にゲートロールコーターを用いて、塗工速度1000m/分で塗工し、さらにスーパーカレンダー処理を行い新聞印刷用紙を得た。この新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0054】
[実施例2]
表面サイズ剤としてスチレン−アクリル酸共重合体の代わりに、アルキド樹脂(商品名:サイズアップ411K、荒川化学工業製)10%水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0055】
[実施例3]
表面サイズ剤としてスチレン−アクリル酸共重合体の代わりに、スチレン−マレイン酸共重合体(商品名:コロパールM−300、星光化学工業製)10%水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0056】
[実施例4]
表面サイズ剤としてスチレン−アクリル酸共重合体代わりに、オレフィン−マレイン酸共重合体(商品名:ポリマロン482、荒川化学工業製)10%水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性を測定し、表1に示した。
【0057】
[実施例5]
二酸化チタン(商品名:タイペ−クW−10、石原産業製、X線粒径150nm)と10%コロイダルシリカ水溶液(商品名:スノーテックスST−40、日産化学工業製)を予め固形分として1:5の比率で混合した12%濃度の分散液を調製した。次に、表面サイズ剤としてスチレン−アクリル酸共重合体(商品名:コロパールM−305、星光化学工業製)の10%水溶液を調製した。これらを混合し、水で希釈して、コロイダルシリカに対して表面サイズ剤の添加比率が25重量%である固形分濃度10%濃度の表面処理剤塗工液を調製した。得られた表面処理剤塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0058】
[実施例6]
コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスST−40、日産化学工業製)の40%水溶液を固形分濃度10%になるように水で希釈し、コロイダルシリカ水溶液とした。次に、表面サイズ剤としてスチレン−アクリル酸共重合体(商品名:コロパールM−305、星光化学工業製)の10%水溶液を調製した。さらに、カチオン性ポリアクリルアミド(商品名:ハーマイドRH−125、ハリマ化成工業製)の10%水溶液を調製した。これらを混合し、コロイダルシリカに対して表面サイズ剤の添加比率が25重量%、カチオン性ポリアクリルアミドの添加比率が25重量%である固形分濃度10%の表面処理剤塗工液を調製した。得られた表面処理剤塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0059】
[比較例1]
コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスST−40、日産化学工業製)の40%水溶液を固形分濃度10%になるように水で希釈したものを表面処理剤塗工液として用いた以外は、実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0060】
[比較例2]
スチレン−アクリル酸共重合体(商品名:コロパールM−305、星光化学工業製)の10%水溶液を表面処理剤塗工液として用いた以外は、実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0061】
[比較例3]
酸化澱粉(商品名:SK−20、日本コーンスターチ製)の10%水溶液を調製した。次に表面サイズ剤としてスチレン-アクリル酸共重合体(商品名:コロパールM−305、星光化学工業製)の10%水溶液を調製した。これらを混合し、酸化澱粉と表面サイズ剤の重量比が4:1で、固形分濃度10%の表面処理剤塗工液を調製した。得られた表面処理剤塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0062】
[比較例4]
酸化澱粉(商品名:SK−20、日本コーンスターチ製)の10%水溶液を表面処理剤塗工液として用いた以外は、実施例1と同様にして新聞印刷用紙を製造し、得られた新聞印刷用紙について、塗工量、剥離強度、点滴吸水度、インク着肉性、紙粉量を測定し、表1に示した。
【0063】
【表1】
表1に示すように、実施例1〜4及び6のコロイダルシリカと表面サイズ剤を塗工したものは、剥離強度が小さく表面粘着性が低下しており、点滴吸水度が高く吸水抵抗性が向上しており、さらに紙粉量が少なく、インク着肉性も優れたものであることが認められた。一方、比較例1のコロイダルシリカのみを塗工したものでは剥離強度は低いものの、点滴吸水度が低く吸水抵抗性が不十分であり、インク着肉性も若干劣っていた。比較例2の表面サイズ剤のみを塗工したものでは剥離強度、インク着肉性、紙粉量のいずれもが劣っていた。比較例3の酸化澱粉と表面サイズ剤を塗工したもの、比較例4の酸化澱粉のみを塗工したものでは、剥離強度、吸水抵抗性、インク着肉性、紙粉量に問題があった。
【0064】
また、実施例5の表面処理剤に酸化チタンを添加したもの剥離強度の安定値は0.5gf/3cmであり、酸化チタンの添加によって、剥離強度はさらに低下した。酸化澱粉のみを塗工した比較例4は不透明度の低下が見られたが、実施例5では不透明度は向上した。
【0065】
さらに、得られた新聞印刷用紙の動/静摩擦係数については、例えば、実施例5の新聞印刷用紙では、動摩擦係数=0.60、静摩擦係数=0.56であったのに対し、比較例4の新聞印刷用紙では動摩擦係数=0.51、静摩擦係数=O.50であり、本発明の表面処理剤を塗工した新聞印刷用紙の動/静摩擦係数は向上した。尚、動/静摩擦係数の測定は、JAPAN TAPPI No.30-79(紙および板紙の摩擦係数試験方法)に従った。
【0066】
【発明の効果】
コロイダルシリカ及び表面サイズ剤を一定の比率で含有する表面塗工剤の開発によって、以下の特性を備えたカラーオフセット印刷用紙が得られた。
1)表面粘着性が小さい
2)ブランケットに紙粉の堆積が少ない
3)吸水抵抗性が適度に保たれオフセット印刷時に水切れがない
4)印刷インクのセット性が適度である
5)不透明性が高く裏抜けしない
6)摩擦係数が適度である
Claims (2)
- 全パルプ固形分中DIPを30〜100重量%含有するオフセット印刷用原紙に、コロイダルシリカ及び下記群から選ばれる少なくとも1種の表面サイズ剤の2成分を主体とする表面処理剤であってコロイダルシリカに対する表面サイズ剤の添加比率が5〜30重量%である表面処理剤を含有した塗工層を設けたオフセット印刷用紙。
表面サイズ剤;パラフィンワックスエマルジョン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、ロジン、シリコン樹脂エマルジョン、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−マレイン酸系共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル系共重合体、スチレン−マレイン酸−マレイン酸エステル系共重合体、オレフィン−マレイン酸系共重合体 - オフセット印刷用原紙が坪量37g/m2〜45g/m2の範囲の新聞印刷用原紙である請求項1記載のオフセット印刷用紙。
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