JP4389112B2 - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体パッケージ、電子素子等の実装部材をプリント回路板に搭載した半導体装置用はんだ付け装置及び半導体装置において、回路形成を目的として鉛フリーはんだを用いてはんだ接合する際に、プリント回路板の銅ランドと半導体パッケージ、電子素子等の間にはんだ付け材料を介してはんだ接合させる半導体装置及びはんだ付け装置に関するもので、更に詳しく言えば、該半導体装置が使用中の発熱などにより長時間高温暴露(以下、高温エージングと称す)された際に経時的に生成するはんだ接合部のマイクロボイド発生を抑制して、該半導体装置のはんだ接合部の耐衝撃破断性を向上させ、品質信頼性が高いはんだ接合皮膜を形成する半導体装置、及び技術の提供に関するものである。
近年、電子機器はますます高信頼性化と小型軽量化が要求され、これに使用される半導体装置も電子部品も軽薄微小化するとともに、その回路形成のために用いられるはんだ接合部も微小化し、かつ厳しい高信頼性が求められている。
1例として、半導体装置に搭載されるパッケージ分野で広く利用されている高密度実装型BGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・サイズ・パッケージ)の場合について述べると、これらのBGAやCSPをプリント回路板に実装するためには、予めBGAやCSPのリードに微小なはんだボールを用いて、はんだバンプを形成させる必要がある。(図1を参照)
このはんだボールは一般的に円球体をなし、以前は直径0.76mmφのものが主として使われてきたが、最近ではますます微小化して直径0.10〜0.45mmφのはんだボールが主流になりつつあることに加えて、これらのはんだボールは、従来から広く利用されてきた錫鉛系はんだボールが、鉛の環境汚染ならびに人体への有害性の問題で鉛の使用禁止または規制化に伴い、最近では特に電子部品分野において、鉛を含有しない所謂「鉛フリーはんだボール」が、BGAやCSPのはんだバンプ形成に広く使用されつつある。
一方、半導体装置を組立てるとき、これらのBGAやCSPは、プリント回路板に接合して回路を形成するために、まずBGAやCSPのはんだバンプをプリント回路板のマウント位置に合わせて配置して、はんだフラックスを使用してはんだバンプを溶融させてはんだ付けを行うが、接合信頼性上及び電気的信頼性上の技術的な問題として、鉛フリーはんだを使用してはんだ付けするときに、はんだフラックス中に存在する活性剤成分とはんだ金属の反応により水素や水分、その他活性剤成分の分解物が多量に発生するため、はんだ中に直径30〜150μmの「比較的に大きなボイド(空隙)」(以下、マクロボイドという)が発生し、導通不良やはんだ層内クラック破断の原因になることが知られている。(特許文献1、頁4)、(非特許文献1)
このマクロボイドを抑制する方法としては、特殊なはんだフラックスを使用する技術(特許文献1)、銅コアボールを使用する技術(特許文献2)など、色々な技術が提案されているが、フラックス成分材質・塗布量の選定、はんだ付け温度・速度・時間、リフロー、脱泡処理などの条件の最適化を行えば、マクロボイドは殆ど皆無にすることは可能であり、仮に数個存在してもはんだ層内に分散して閉じ込めることが可能であり、それが原因でクラックやはんだ層内破断を生ずることは殆どない。また、このような最適条件下ではんだ付けされた半導体装置の場合は温度40℃以下、相対湿度70%以下の室内で保管される場合(以下、常態という)では、プリント回路板の銅ランドとはんだ接合界面にマクロボイドは全く存在しない。(特許文献2)
しかしながら、このような最適条件下ではんだ付けされたBGAやCSPが搭載された半導体装置でも、実用中に120℃以上の高い温度で長時間暴露(高温エージング)されると、はんだ接合部界面のプリント回路板側の銅(Cu)とはんだバンプ側の錫(Sn)が拡散して金属間化合物(IMC)であるCuSnが形成され、CuとCuSnの界面およびCuSn層内に直径で0.001〜数μmの所謂カーケンダルボイドである「微小ボイド」(以下、「マイクロボイド」という)が発生することが広く知られている。(非特許文献1〜4)
そして、このマイクロボイドは高温エージング時間が長くなればなるほど、経時的に発生数は飛躍的に増加し、相互に結合して大きさ(容積)も大きくなり、はんだ接合部、即ちはんだ接合界面およびその近傍(CuとCuSnの界面およびにCuSn層内)一面にマイクロボイド数が増加し、従って、接合界面の空隙比率が増大化してはんだ接合部強度自体が著しく低下し、この部分に衝撃力が加わると接合破断を生ずる。この現象は従来の錫鉛系はんだでも広く知られており、最近の鉛フリーはんだ(例えば、錫銀銅系はんだ、錫ビスマス系はんだ、錫銅系はんだ)では、高温エージングによるマイクロボイドの発生度合いが錫鉛系はんだより更に著しいと言われており、はんだ接合部信頼性上の大きな難点になっている。
特開2005−288490号公報 特開2007−75856号公報 特開2004−76030号公報 特開平11−77366号公報 特開2004−306092号公報 特開2005−169495号公報 R.Aspandiar,"Void in Solder Joints"SMTA Northwest Chapter Meeting(September 21,2005) C.Hillman:"Long−term reliability of Pb−free electronics"Electronic Products p.69(September 2005) 伴充行、島内優:"電子部品の信頼性評価および不具合解析技術"、JFE技報第13巻p.97−102、2006年8月 石川信二他:"高温はんだとCu板の接合部におけるカーケンダルボイドの生成"、エレクトロニクス実装学会誌、第9巻4号p.269−277、2006年
本発明は、鉛フリーはんだを用いて、半導体パッケージ、電子素子等の電子部材をプリント回路板にはんだ接合した半導体装置において、従来技術の難点である高温エージング後のはんだ接合部に多発するマイクロボイドの発生を殆ど皆無にし、半導体装置の該はんだ接合部の耐衝撃破断性を飛躍的に改善する技術を提供することを目的としている。
本発明は、鉛フリーはんだを用いて、半導体パッケージ、電子素子等の電子部材をプリント回路板にはんだ接合した半導体装置の高温エージング後の耐衝撃性を向上化させることを目的として、半導体装置における半導体パッケージ、電子素子等をプリント回路板等にはんだ接合する際に、少なくともニッケル0.01〜0.2重量%を含有する鉛フリーはんだ、またはニッケル0.01〜0.2重量%に更にゲルマニウム0.001〜0.01重量%を含有する鉛フリーはんだと有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有するはんだフラックス用いて半導体パッケージ、電子素子等をはんだ付けすることにより、従来技術の難点である高温エージング後のはんだ接合部に多発するマイクロボイドの発生を殆ど皆無し、半導体装置の該はんだ接合部の耐衝撃破断性を飛躍的に改善する技術を提供するものである。
本発明に用いる少なくともニッケル0.01〜0.2重量%を含有する鉛フリーはんだ、またはニッケル0.01〜0.2重量%を含有し更にゲルマニウム0.001〜0.01重量%を含有する鉛フリーはんだは、ニッケルの添加により耐熱性と熱疲労強度が向上する効果があること、およびゲルマニウム添加によりはんだ中の錫の酸化を抑制し接合強度の改善効果があることは特許文献4で既に公知であるが、これらのはんだを通常のフラックスと共用してBGAなどの電子素子等の電子部材をプリント基板の銅ランド部に適切にはんだ接合した半導体装置は、後述の比較例2の通り常態では30ミクロン以上の大きなボイドも0.001〜数ミクロンのマイクロボイドもないが、これを150℃240時間高温エージングした後では明らかに数百個のマイクロボイドが発生し耐衝撃性が低下することが知見された。
また、本発明に用いるフラックスの有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩を含有するはんだフラックス、およびパルミチン酸ニッケル、パルミチン酸コバルト、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルトを含有するはんだフラックスについては、はんだ付の際のはんだのぬれ広がり性が改善されることが特許文献5及び6に記述されており、更にはんだフラックス中のニッケルがはんだ接合界面に錫・銅・ニッケルの金属間化合物を生成して高温環境下の金属間化合物の成長によるはんだ接続強度の低下を防止すること、はんだ食われ現象の防止対策としても有効なことも特許文献6に記述されている。
しかしながら、これら特許文献5及び6のフラックスと通常の鉛フリーはんだ、例えば現在最も広く使用されている錫−銀−銅系鉛フリーはんだを共用してBGAなどの電子素子等の電子部材をプリント基板の銅ランド部に適切にはんだ接合した半導体装置も、後述の比較例3及び4で詳述する通り、常態では30ミクロン以上の大きなボイドも0.001〜数ミクロンのマイクロボイドはないが、これを150℃ 240時間高温エージングすると、非常に多くのマイクロボイドが発生し耐衝撃性が低下することが確認された。
このため、発明者らは種々の組成の鉛フリーはんだと種々のフラックスを組合せながら試行錯誤的に実験を繰り返した結果、少なくともニッケル0.01〜0.2重量%を含有する鉛フリーはんだ、またはニッケル0.01〜0.2重量%に更にゲルマニウム0.001〜0.01重量%を含有する鉛フリーはんだと有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有するはんだフラックスの組合せではんだ接合することにより、従来技術の難点である高温エージング後のはんだ接合部におけるマイクロボイドの発生を殆ど皆無にし、半導体装置の該はんだ接合部の耐衝撃破断性を飛躍的に改善できることを発明した。
発明に用いる鉛フリーはんだはニッケルを含有していることが必須条件であり、その含有量は実験結果としては0.01〜0.2重量%がよく、これ以下では加熱エージング後のマイクロボイドの発生数が多く、耐衝撃破断性も劣る。これは、0.01重量%未満でははんだ接合部界面に凝集するニッケル層厚が薄いために高温エージングで該界面に形成される錫銅ニッケルの金属間化合物層(以下、IMCと略称する)が薄いために銅ランド側からCuがはんだ層に拡散してSn/CuリッチのIMCであるCuSn層が厚くなるためと考えられる。また、0.2重量%を超えた範囲でははんだ接合界面にニッケルの微小粒状偏析が見られ、はんだ接合強度が却って低下するため耐衝撃破断性が低下すると考えられ、好ましくない。従って、ニッケル含有量としては望ましくは0.02〜0.1重量%である。Niを含む錫銅ニッケルのIMCは(CuNi)Snと考えられ、これがプリント回路板側の銅の加熱エージングによるはんだ側への拡散を防止し、CuSn層の成長を抑制する役割を果すと考えられる。
カーケンダルボイドは一般に格子欠陥に起因する空隙と云われているが、高温エージング後のマイクロボイドは図12〜13に模式的に示したように酸化銅11の酸素が錫13と結合して酸化第一錫12と銅14になるケース、即ち、
CuO+Sn→Cu+SnO
により約1.5%の体積収縮が生ずることによりマイクロボイド(空隙)16が発生するケース、または図12に模式的に示したように酸化銅11と酸化第一錫12が銅14と酸化第二錫15になるケース、即ち
CuO+SnO→Cu+SnO
により約15%の堆積収縮を生ずることによりマイクロボイド(空隙)16が発生するものと発明者らは考えている(仮説)。
また、ニッケル含有鉛フリーはんだにゲルマニウムを添加した場合は錫の酸化抑制効果が大きいので加熱エージング後のマイクロボイドと耐衝撃破断性改善の効果もより大きいと考えられる。
一方、本発明に用いるフラックスは、フラックス中に有機ニッケル塩または有機コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有されることで、同時に使用する上記ニッケル含有鉛フリーはんだ、または該はんだに更にリンまたはゲルマニウムのいずれかおよび両方を添加したニッケル含有鉛フリーはんだを併用することにより相乗的にニッケルまたはコバルトのいずれか、もしくは両方の金属を含む合金層をはんだ接合部界面に均一かつ所定の厚さに形成させることによりプリント回路板側の銅とはんだバンプ側の錫の拡散を抑制して、上述の難点である高温エージング後のはんだ接合部のマイクロボイド発生を殆ど皆無近くまで大幅に抑制し該はんだ接合部の耐衝撃破断性を飛躍的に改善できる。
このはんだフラックス中に添加するニッケル塩、コバルト塩としては無機塩及び有機塩のいずれでも効果はあるが、腐食性、経時劣化性、環境や人体への有害性がある化合物は好ましくなく、特に好ましいのは有機酸ニッケルまたは有機酸コバルトであり、これらを構成する有機酸としてはパルミチン酸・ステアリン酸・オレイン酸などの脂肪族カルボン酸、フタール酸、ピロメリット酸などの芳香族カルボン酸などを使用することが出来る。このうち炭素原子数が8〜20の有機脂肪酸のカルボニル基の水素原子をニッケルまたはコバルトのいずれかの金属原子に置換したものが優れている。また、その反応機構は、加熱により基板側の銅とニッケル含有鉛フリーはんだ、または該はんだに更にゲルマニウムを添加したニッケル含有鉛フリーはんだからなるはんだボールまたはBGAなどのはんだバンプの間に準備された有機ニッケル塩または有機コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有するフラックスが溶解し活性化が始まり、次に該はんだボールまたは該はんだバンプの融点以上に加熱された段階で該はんだボールまたは該はんだバンプが溶解し、それと共にフラックス中のニッケル塩またはコバルト塩の金属イオンも遊離し該はんだボールもしくは該はんだバンプ中のニッケルと相乗的に接触界面に錫とニッケルまたはコバルトとの合金層を形成、その合金層が基板側の銅と接合することではんだ付が行われ、これにより合金層には錫−銅−ニッケルまたはコバルトが存在することになると考えられる。
上記フラックスの具体例としては、例えば、炭素原子数16のパルミチン酸ニッケルCH(CH14COONi、パルミチン酸コバルト CH(CH14COOCo、炭素原子数18のステアリン酸ニッケル CH(CH16COONi、ステアリン酸コバルト CH(CH16COOCoが特に効果的であり、それぞれ単独で用いても良いがこれらのうち2種類以上を混合して用いても効果がある。
また、このはんだフラックス中に配合する有機脂肪酸ニッケル、有機脂肪酸コバルトの総量は1〜5重量%が最適であり、1重量%未満でははんだ接合部に形成される合金層中のニッケルまたはコバルト、もしくはその両方の金属量が過少なため高温エージング後のマイクロボイド発生抑制効果が不充分となり、また5重量%以上ではマイクロボイド発生抑制効果は同等で実用可能であるが、はんだフラックスとしての粘調性が阻害されるほか、接合部付近にNiが偏析しやすいこと、及びコストアップにもなり必ずしも好ましくはない。
上記、ニッケル含有鉛フリーはんだと有機脂肪酸ニッケルまたはコバルト含有はんだフラックスを併用することにより相乗的にはんだ接合界面に形成する(CuNi)Snと推定される錫銅ニッケルのIMC層の厚さは2.5μm以下では加熱エージング後のマイクロボイドの発生がまだ非常に多く耐衝撃性も良くないが、3μm以上になるとマイクロボイドの発生は1/10以下に激減し耐衝撃性も格段に改善され、更に4μm以上ではマイクロボイドは殆ど皆無になり耐衝撃性も向上する。また、該IMC層の厚さは上記はんだ中及びフラックス中の望ましいニッケル濃度範囲内では約6μmで飽和しそれ以上の厚さにはなり難いため、該IMC層の厚さは3〜6μmが望ましい。更に、該IMC中のニッケル配位数は、本発明のニッケル含有錫銀銅系鉛フリーはんだとパルミチン酸ニッケルなどの有機脂肪酸ニッケル含有フラックスを併用すると、相乗効果によりそれぞれを単独で用いた場合よりも多くなり、従って、該IMC中のニッケル含有量も多くなり、その結果、長時間高温エージング後のマイクロボイドの発生が抑止されるものと推定される。
本発明に使用するはんだフラックスの構成成分はロジンを主成分とし、上記有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩を1種類以上のほかに、ジエタノールアミン、ジフェニルグアニジン臭化水素酸、イソプロピル臭化水素酸等の活性剤、ステアリン酸アミンなどのチクソ剤、ワックスならびにセルロース等の粘度調整剤、更には溶媒などを適当な割合に配合し均一に混合したものからなる。これらのはんだフラックスの使用方法としては、何ら特別な条件や制約はなく、従来のフラックスと同様、通常のはんだ付け条件で使用できる。
<実施例および比較例>
先ず、比較例1として、ニッケル、リン、及びゲルマニウムを含有しない銀3重量%、銅0.5重量%、残部が錫からなる鉛フリーはんだと一般的なはんだフラックスである下記の構成物質および組成からなるフラックス、即ち、
WWロジン系樹脂 60重量%
イソプロピル臭化水素酸塩(活性剤) 0.3重量%
セバシン酸(活性剤) 1.0重量%
ステアリン酸アミン 5.0重量%
エチレングリコールモノブチルエーテル 33.7重量%
をベースはんだフラックスとして使用して後述の各種鉛フリーはんだと各種フラックスを組合わせた条件[表1]ではんだ付けを行った。
比較例2では、ニッケル0.05重量%、銀3重量%、銅0.5重量%、残部が錫からなる鉛フリーはんだと上記比較例1と同じはんだフラックスを使用して後述の条件ではんだ付けを行った。
また、比較例3では比較例1と同じはんだと比較例1のベースはんだフラックス98重量%に対してパルミチン酸ニッケル2重量%を配合して均一に混合したフラックスを使用して後述の条件ではんだ付けを行った。
更に比較例4では比較例1と同じはんだと比較例1のベースはんだフラックス98重量%に対してパルミチン酸ニッケル1重量%とステアリン酸コバルト5重量部をそれぞれ配合して均一に混合したものを使用して後述の条件ではんだ付けを行った。
一方、実施例1として、比較例2と同じニッケル0.05重量%、銀3重量%、銅0.5重量%、残部が錫からなる鉛フリーはんだと比較例3と同じはんだフラックス、即ち、比較例1のベースはんだフラックス98重量%に対してパルミチン酸ニッケル2重量%を配合して均一に混合したフラックスを使用して[後述の条件ではんだ付けを行った。
また、実施例2としてニッケル0.05重量%、ゲルマニウム0.005重量%、銀3重量%、銅0.5重量%、残部が錫からなる鉛フリーはんだと比較例3と同じはんだフラックス、即ち、比較例1のベースはんだフラックス98重量%に対してパルミチン酸ニッケル2重量%を配合して均一に混合したフラックスを使用して後述の条件ではんだ付けを行った。
更に、実施例3ではニッケル0.1重量%、ゲルマニウム0.005重量%、銀3重量%、銅0.5重量%残部が錫からなる鉛フリーはんだと比較例4のはんだ、即ち、ベースはんだフラックス98重量%に対してパルミチン酸ニッケル1重量%とステアリン酸コバルト1重量%を配合して均一に混合したフラックスを使用して後述の条件ではんだ付けを行った。
評価試料の作成方法ならびに試作条件は以下の通り。
即ち、実施例1〜3および比較例1〜4はいずれも同一製造ロットのBGAで外形寸法15mmX15mmX1.2mm(はんだバンプ厚を含む)、リード数(はんだバンプ数に同じ)192、リードピッチが0.8mmで各リード部には予め各実施例及び比較例に示した組成の直径0.45mmφの鉛フリー半田ボールが接合されてはんだバンプが形成されたBGAを使用し、これと各実施例及び比較例に示した組成のはんだフラッックス[表1]を介してバーンイン試験用プリント基板上の対応する銅リード部に該BGAを搭載して評価試験用試料を作成した。バーンイン試験用プリント回路板について更に詳しく述べると、外形寸法は77mmX132mmで厚さ1mm、基板中央に上記BGAと同ピッチで同リード数の0.3mmφ銅リードを有するBGA導通試験用回路を1単位として、5mm間隔で上下に各1単位、これを中央の1行として同様に5mm間隔で左右に各2行、即ち、マトリックス状に5行X3列、合計15個のBGA搭載可能な回路が形成され、該銅リード部を除く表面が半田レジスト膜で覆われたプリント回路板になっている。各実施例及び比較例の供試料用フラックスは各n=5(繰り返し数)で各BGA1単位毎にランダムに塗布し、これを介して上記BGAを搭載し、温度250℃の溶融はんだ浴上にBGA搭載側を上にして120秒間放置し、BGAの各はんだバンプを該プリント回路板の銅ランドに接合後に取出して自然冷却させたものを評価用試料として評価試験に供した。
半導体装置において、BGAをプリント回路基板にはんだ接合する際の配置形状を模式的に示した部分断面図 半導体装置における比較例の常態における接合部の断面SEM写真で、(a)は比較例1、(b)は比較例2、(c)は比較例3である。 半導体装置において、実施例の常態における接合部の断面SEM写真で、(a)は実施例1、(b)は実施例2である。 半導体装置における比較例1の高温エージング後の接合部の断面写真で(a)はSEM写真、(b)〜(c)はその部分に含まれる元素のEPMAマッピング写真であり、(b)はSn,(c)はCuである。 半導体装置における比較例1の高温エージング後の接合部の断面SEM写真(上記図4−1(a))の部分に含まれる元素のEPMAマッピング写真であり、(d)はAg、(e)はNiである。また(f)は比較例1の別の個所の断面SEM写真でマイクロボイドが結合している部分である。 半導体装置における比較例2の高温エージング後の接合部の断面写真で(a)はSEM写真、(b)〜(e)はその部分に含まれる元素のEPMAマッピング写真であり、(b)はSn,(c)はCu、(d)はAg、(e)はNiのEPMAマッピング写真。また(f)は比較例2の別の個所の断面SEM写真でマイクロボイドが散在している部分である。 半導体装置における比較例3の高温エージング後の接合部の断面写真で(a)はSEM写真、(b)〜(e)はその部分に含まれる元素のEPMAマッピング写真であり、(b)はSn,(c)はCu、(d)はAg、(e)はNiのEPMAマッピング写真。また(f)は比較例3の別の個所の断面SEM写真でマイクロボイドが散在している部分である。 半導体装置にける本発明の実施例1の高温エージング後の接合部の断面写真で(a)はSEM写真、(b)〜(e)はその部分に含まれる元素のEPMAマッピング写真であり、(b)はSn,(c)はCu、(d)はAg、(e)はNiのEPMAマッピング写真である。 半導体装置にける本発明の実施例2の高温エージング後の接合部の断面写真で(a)はSEM写真、(b)〜(e)はその部分に含まれる元素のEPMAマッピング写真であり、(b)はSn,(c)はCu、(d)はAg、(e)はNiのEPMAマッピング写真である。 本発明の半導体装置において、パルミチン酸ニッケル含有はんだフラックス中のNi含有率(横軸数字、単位は重量%)またはニッケル含有鉛フリーはんだ中のNi含有率(横軸数字、単位は1/100重量%)と加熱エージング後に形成される錫銅ニッケル金属間化合物(IMC)層の厚さ(縦軸数字、単位はμm)の関係を示した図である。 半導体装置における比較例1〜4の高温エージング後の接合部の断面を約5000倍に拡大した状態を模式的に示す断面図である。 半導体装置にける本発明の実施例1〜3の高温エージング後の接合部断面を約5000倍に拡大した状態を模式的に示す断面図である。 はんだ接合部断面に存在する酸化銅CuOと酸化第一錫SnOを模式的に示した図である。 マイクロボイド発生機構(仮説)の説明するためのはんだ接合部周辺にエージング後に一般的に発生するマイクロボイドを模式的に示した図である。 マイクロボイド発生機構(仮説)第一ケースの説明図として錫と酸化銅が酸化第一錫と銅に変化する前後の体積比率を模式的に示した図である。[図15]本発明の半導体装置に マイクロボイド発生機構(仮説)第二ケースの説明図として酸化第一錫と酸化銅が酸化第二錫と銅に変化する前後の体積比率を模式的に示した図である。
符号の説明
1 BGA
2 プリント回路基板
3 はんだバンプ
4 はんだ付け材料
5 銅リード(プリント回路基板の銅箔)
6 はんだレジスト
7 はんだ接合部の断面に存在するCuSn層
8 はんだ接合部の断面に存在するCuSn
9 鉛フリーはんだ層
10 はんだ接合部の断面に存在するマイクロボイド
11 酸化銅 CuO
12 酸化第一錫 SnO
13 錫 Sn
14 銅 Cu
15 酸化第二錫 SnO
16 マイクロボイド(空隙)
17 銅−錫−ニッケル合金層(Cu−Sn−Ni金属間化合物層)
18 銅−錫−ニッケル−コバルト合金層(Cu−Sn−Ni−Co金属間化合物層)
19 Ni含有鉛フリーはんだと通常はんだフラックス使用の場合
20 通常の鉛フリーはんだとパルミチン酸Ni含有はんだフラックス使用の場合
21 通常の鉛フリーはんだとパルミチン酸Ni含有はんだフラックス使用の場合
22 高温エージング後のマイクロボイドの発生を防止するために望ましいはんだ接合界面におけるNi含有IMC層の厚さを示す目安線
半田接合部界面付近のボイド有無の評価方法としては、評価試験用試料を常態と、恒温加熱炉に150℃、240時間放置して高温エージング加速試験後、それぞれはんだ接合部断面を研磨して走査電子顕微鏡(SEM)及びX線マイクロアナライザー(EPMA)により該はんだ接合部付近のボイドの数と大きさを観察ならびに分析し比較した。また同一条件下で同時に加熱エージング加速試験をした上記各実施例および各比較例の試料を市販のBGA等電子デバイス部品用全自動落下試験装置を用い、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)規格のNo.22−B111に準じて高さ1000mmから約1300Gで繰り返し落下させて、その都度各試験試料の導通試験を行い、導通不良が発生するまでの落下試験回数を調べた。
その結果、上記高温エージング加速試験後の半田接合部断面のSEMおよびEPMA分析結果から、本発明の実施例1〜2、および比較例2、3のはんだ接合部界面にはニッケルを含む錫銅の3元系合金層17、実施例3および比較例4の接合界面にはニッケル、コバルトを含む錫銅の4元系合金層18が検出されたのに対し比較例1の接合界面には当然のことながらCuSn層7のみが検出されニッケル及びコバルトは検出されなかった。尚、はんだ接合界面の各上記合金層の上層には(はんだバンプ側)CuSnの層8が全ての実施例および比較例に検出された。
またはんだ接合部断面には高温エージング前には実施例1〜3および比較例1〜4のいずれにも全くボイドは見られなかった。そのSEM写真の例として、図2−(a)に比較例1の場合、以下同様に図2−(b)に比較例2、図2−(c)に比較例3、図3−(a)に実施例1、図3−(b)に実施例2のはんだ接合部断面状態を示した。
これに対して、上記の条件で高温エージング加速後は比較例1〜4にはいずれの試料にもはんだ接合境界部断面付近にマイクロボイドが観測された。そのSEM写真及び該部のAg,Cu,Ni,Sn元素のEPMAマッピング写真の例として、図4−1、図4−2に比較例1の場合、以下同様に図5に比較例2、図6に比較例3、図7に実施例1、図8に実施例2、のはんだ接合部断面状態を示した。
これによると、その接合境界部付近の断面長さ0.2mm当たりのボイド発生数ならびに大きさについては比較例1〜4には多数のマイクロボイドが見られたのに対して、実施例1、2および3にはマイクロボイドの発生は圧倒的に少ないこと、またマイクロボイドの大きさは実施例がいずれも1〜0.5μ程度の微小マイクロボイドであったのに対して比較例の方は相対的に実施例より大きい目の0.5〜2ミクロンのボイドも多数観察され、中には接合界面に平行してマイクロボイドが結合連結して横長の長さ5〜10μmにも及ぶマクロボイドに変化したものも観察された。(図4−2(f)および表2)
また、高温エージング後に形成される錫銅ニッケルのIMC層の厚みは実施例がいずれも3μm以上であったのに対して、比較例1はニッケルが存在するIMC層はなく、比較例2〜4ではいずれも2.5μm以下であった。
因みに、(A)通常のはんだとNiフラックスを使用した場合、(B)Ni含有錫銀銅はんだ(鉛フリー)と通常のはんだフラックスを使用した場合、および(C)Ni含有錫銀銅はんだ(鉛フリー)とNi含有フラックスを使用した場合の中の各Ni含有量と高温エージング後に形成される錫銅ニッケルのIMC層の厚みの関係は(B)の場合は図9の曲線19の通りで、Ni含有量が0.05重量%でも錫銅ニッケルのIMC層の厚みは高々1μmしかならない。同様に(A)の場合は図9の曲線20の通りで、上記フラックス中のNi含有量が2重量%で錫銅ニッケルのIMC層の厚みは約2.4μmになり、Ni含有量が5重量%の場合の錫銅ニッケルIMC層は3.5μm程度になり飽和するが、同時にNi含有量が3重量%前後から接合界面にNiの偏析が多数発生し、はんだ接合強度低下と耐衝撃性の低下を招くことが知見された。これに対して、(C)の場合、即ち、フラックス中のパルミチン酸ニッケル含有量が2重量%のフラックスとニッケル含有鉛フリー錫銀銅はんだとを併用した場合の該ニッケル含有錫銀銅はんだ中のNi含有量と加熱エージング後に形成される錫銅ニッケルのIMC層の厚みの関係は図9の曲線21の通り、錫銀銅はんだ中のNi含有量 0.02重量%で錫銅ニッケルのIMC層の厚みは4μm近くまで厚くなり、0.05%以上では該IMC層の厚さは5μmを越えて、しかもNiの偏析もなく均一で、マイクロボイドの発生が激減、耐衝撃性が飛躍的に向上することが判った。
また実施例1〜3及び比較例1〜4の高温エージング後の耐衝撃破断性についても上記落下試験の繰り返し衝撃によるはんだ接合部の衝撃破断と見られる導通不良(抵抗値増大)に至る落下回数は各比較例が9回以下に対して実施例1〜3はいずれも40回以上(それ以上の繰り返し試験は中止)であった[表2]。
以上の通り、本発明の技術は明らかに従来にない高温エージング後の耐衝撃性に優れた高信頼性の半導体装置を実現するものであり、工業的に価値が高い技術である。

Claims (6)

  1. 半導体装置において、鉛フリーはんだを用いて実装部材をプリント回路板にはんだ接合する際、少なくともニッケル0.01〜0.2重量%を含有する鉛フリーはんだと有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有するはんだフラックス用いて半導体パッケージ又は電子素子をプリント回路板の銅ランドにはんだ接合し、ニッケル、コバルトのいずれか1種もしくは両方の金属を含む合金層を半田接合部界面に厚さ3〜6ミクロン形成させることにより半導体装置が長時間高温暴露(高温エージング)された際に生ずるはんだ接合部のマイクロボイドを抑制し、はんだ接合部の耐衝撃破断性を向上させた半導体装置。
  2. 半導体装置において、鉛フリーはんだを用いて実装部材をプリント回路板にはんだ接合する際、少なくともニッケル0.01〜0.2重量%を含有し、更にゲルマニウム0.001〜0.01重量%を含有する鉛フリーはんだと有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有するはんだフラックス用いて半導体パッケージ又は電子素子をプリント回路板の銅ランドにはんだ接合し、ニッケル、コバルトのいずれか1種もしくは両方の金属を含む合金層をはんだ接合部界面に厚さ3〜6ミクロン形成させることにより半導体装置が長時間高温暴露(高温エージング)された際に生ずるはんだ接合部のマイクロボイドを抑制し、はんだ接合部の耐衝撃破断性を向上させた半導体装置。
  3. 請求項1又は2記載の半導体装置において、上記フラックスの有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩はパルミチン酸ニッケル、パルミチン酸コバルト、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルトのうち、いずれか1種類または2種類以上を1〜5重量%含有するはんだフラックスを用いてはんだ接合することにより半導体装置が長時間高温暴露(高温エージング)された際に生ずるはんだ接合部のマイクロボイドを抑制し、はんだ接合部の耐衝撃破断性を向上させるための半導体装置。
  4. 半導体装置の製造方法において、鉛フリーはんだを用いて実装部材をプリント回路板にはんだ接合する際、少なくともニッケルを0.01〜0.2重量%を含有する鉛フリーはんだと有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有するはんだフラックス用いて半導体パッケージ又は電子素子をプリント回路板の銅ランドにはんだ接合し、ニッケル、コバルトのいずれか1種もしくは両方の金属を含む合金層をはんだ接合部界面に厚さ3〜6ミクロン形成させることにより半導体装置が長時間高温暴露(高温エージング)された際に生ずるはんだ接合部のマイクロボイドを抑制し、はんだ接合部の耐衝撃破断性を向上させることを特徴とする半導体装置の製造方法
  5. 半導体装置の製造方法において、鉛フリーはんだを用いて実装部材をプリント回路板にはんだ接合する際、少なくともニッケル0.01〜0.2重量%を含有し、更にゲルマニウム0.001〜0.01重量%を含有する鉛フリーはんだと有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩のうち、いずれか1種類または2種類以上を含有するはんだフラックス用いて半導体パッケージ又は電子素子をプリント回路板の銅ランドにはんだ接合し、ニッケル、コバルトのいずれか1種もしくは両方の金属を含む合金層をはんだ接合部界面に厚さ3〜6ミクロン形成させることにより半導体装置が長時間高温暴露(高温エージング)された際に生ずるはんだ接合部のマイクロボイドを抑制し、はんだ接合部の耐衝撃破断性を向上させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  6. 上記請求項4又は5記載の半導体装置の製造方法において、上記フラックスの有機脂肪酸ニッケル塩または有機脂肪酸コバルト塩はパルミチン酸ニッケル、パルミチン酸コバルト、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルトのうち、いずれか1種類または2種類を1〜5重量%含有するはんだフラックスを用いてはんだ接合することにより半導体装置が長時間高温暴露(高温エージング)された際に生ずるはんだ接合部のマイクロボイドを抑制し、はんだ接合部の耐衝撃破断性を向上させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
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