JP4387854B2 - 圧延用ロール材及び圧延用ロール - Google Patents
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またハイス系の圧延用ロール材を用いた圧延ロールは、外層部の靭性が非常に低いため、遠心鋳造法を用いてダクタイル鋳鉄等の強靭な内層部を組み合わせた複合ロールとするのが基本となっている。しかし複合ロールとする場合には、鋳造時に内外層の境界部に欠陥が発生し易く、このために境界部の強度低下が起こり易い。また焼入れ・焼戻し熱処理時には外層部のみが変態膨張するために残留応力が高くなり、このため熱処理割れや圧延使用時の耐事故性に問題があり、製造条件的に非常に難しい面があった。
また本発明の圧延用ロールは、上記第1の特徴の圧延用ロール材を用いて、単層ロールを焼入れ・焼戻し熱処理をして、基地をベイナイトと微細パーライトを主とした混合組織とすると共に、ロール表面硬度をショア硬度で65以上にしたことを第2の特徴としている。
また本発明の圧延用ロール材によれば、Moを1.0〜2.5%、Vを0.5〜3.5%、且つMoとVとを合計で2.5〜4.5%として、その含有量を多くすることにより、アダマイト系圧延用ロール材の硬度を格段に向上させることができ、よって圧延用ロールとしての耐摩耗性を格段に向上させることができる。
よってアダマイト系材料のもつ強靭性に加えて、耐摩耗性と耐焼付き性と耐熱亀裂性とをバランスよく備えた、線材・棒鋼・小型形鋼等の粗列、中間列スタンド用の熱間圧延用で、特に単層ロールに適したロール材を提供できる。
また前記Moの含有量は、鋳造凝固時に粗大炭化物として晶出することなく、その後に行われる熱処理において、微細粒状炭化物として基地中に析出するように設定されたものである。そしてまた焼入れ・焼戻し処理を施すことで、基地をベイナイトと微細パーライトとの混合組織になるように設定されたものである。基地を全てベイナイトにする場合には変態応力による熱処理割れが発生し易く、また基地を全てパーライトにする場合には耐摩耗性が低下し、何れの場合も好ましくない。
またCr含有量を0.1〜1.0%とし、且つC−0.2V(材料の共晶凝固時の溶湯C量)を1.6〜1.9%に限定したことにより、一次の粗大セメンタイト晶出量を5〜10%にコントロールできるため、アダマイト系材料の持つ強靭性を確保することができる。前記範囲を下回る場合は材料の耐摩耗性が低下し、上回ると強靭性が低下する。
図1は実施形態に係る圧延用ロールの製造において、ロール鋳造後に、機械加工を容易にするためと組織調整のために行う高温拡散炭化物粒状化焼鈍の熱処理工程を示す図、図2は実施形態に係る圧延用ロールの製造において、ロール鋳造後に高温拡散炭化物粒状化焼鈍を行い、且つ必要な加工を行った後に行う焼入れ・焼戻しの熱処理工程を示す図である。
Cの含有量は、好ましくは1.8〜2.2%とする。
Siの含有量は、好ましくは1.3〜2.0%とする。
Mnの含有量は、好ましくは0.6〜1.0%とする。
Niの含有量は、好ましくは1.2〜1.6%とする。
本発明においては、Crの含有量を低めに設定している。高硬度となるほど強靭性は低下するため、材質を脆くするCrの値は低いほどよい。特に線材・棒鋼・小型形鋼等の圧延に用いることができる比較的小型の単層ロールとする場合には、Cr含有量を低くしてロール内部の強靭性を確保することが重要である。
Crの含有量は、好ましくは0.3〜0.7%とする。
Moの含有量は、好ましくは1.5〜2.0%とする。
Vの含有量は、好ましくは1.0〜2.0%とする。
C−0.2Vが1.6%未満ではセメンタイトの晶出量が少なく、耐摩耗性が低下する。またC−0.2Vが1.9%を超えると、セメンタイトがネット状に晶出してロールの強靭性を著しく劣化させ、また焼入れ・焼戻しの熱処理時に折損の危険が高くなる。
図1を参照して、ロールを鋳造後すぐに950〜1050℃まで加熱して、15〜25時間保持する。その後、一旦550〜600℃まで、例えばエアーを吹き込んで冷却して、5〜15時間保持する。そして再び800〜900℃まで加熱して、5〜15時間程度保持する。その後、550〜600℃まで冷却して、5〜15時間保持した後に炉冷する。
以上の高温拡散炭化物粒状化焼鈍を行うことにより、組織中の成分偏析が解消され、基地中に粒状炭化物が均一に析出した強靭性に優れた組織となると共に、硬さもショア硬度で45〜50となって加工がし易くなる。
図2を参照して、先ずロールを950〜1050℃に加熱して、5〜15時間保持する。次に10〜20℃/分の冷却速度で、ロール表面温度が450〜550℃付近になるまで冷却(焼入れ)する。このとき、冷却速度が前記範囲を超えて大きすぎると、ロール表層部が全てベイナイト組織となり、変態応力による割れが発生し易くなる。逆に冷却速度が前記範囲未満になると、ロール内部まで焼きが入ってしまったり、所定の表面硬度が得られなくなったりする。
前記焼入れの後、直ちに500〜600℃に5〜15時間保持し、炉冷する。この処理により、基地がベイナイトと微細パーライトの混合組織となる。その後、残留オーステナイトのベイナイト変態と応力除去を目的に、500〜600℃で焼戻し処理を2回程度実施する。
各単層ロールの胴部余長部よりサンプルを採取し、ロール表面の組織、硬度を調査し、また耐摩耗性を評価するために摩擦摩耗試験を実施して摩耗減量を測定した。
調査、測定結果を表2に示す。
摩擦摩耗試験は次の条件にて実施した。
試験方法 : ピンオンディスク法
試験温度 : 300℃
試験荷重 : 5kg/cm2
回転速度 : 100m/mim
試験距離 : 20000m
比較例2は、C−0.2Vが1.6〜1.9重量%の範囲よりも少し低くなっている(1.58重量%)。このためセメンタイト量が少ない。結果として、硬度が小さく、摩耗減量が多くなり、ロールの耐摩耗性に問題が生じる。その他、Mo含有量が1.0〜2.5重量%の下限に近いために、パーライト量に比べてベイナイト量が少なく、硬度の改善が不十分のままである。
比較例3は、Cr含有量が0.1〜0.6重量%を超えている(1.12重量%)。またMo+Vの合計が2.5〜4.5重量%の範囲未満となっている。またC−0.2Vが1.6〜1.9重量%の範囲を超えている(1.94重量%)。これらのために材料が脆くなり、Mo含有量が1.0〜2.5%の下限に近いために硬度が上がらず、またネット状に晶出する粗大セメンタイトが非常に多くなる。結果として、焼入れ・焼戻し熱処理において、ロールにクラックが発生する問題が生じた。
比較例4は、Cr含有量が0.1〜1.0重量%を超えている(1.21重量%)。またC−0.2Vが1.6〜1.9重量%の範囲を超えている(2.18重量%)。このため材料が脆くなり、粗大セメンタイトがネット状に多量に晶出する。結果として、ロール内部の靭性が低下し、焼入れ・焼戻し熱処理においてロールにクラックが発生した。この比較例4は、複合ロールの外層となる場合には、硬度が高く、摩耗減量が少なく、耐摩耗性に優れており、また黒鉛の晶出量も多くて耐焼付き性や耐熱亀裂性も良好で好ましい材料と言える。しかし、単層ロールとしてはロール折損の危険性が高く、適当とは言えない。
Claims (2)
- 成分組成が重量%で、
C :1.7〜2.5%
Si:1.0〜2.5%
Mn:0.5〜1.5%
Ni:1.0〜3.0%
Cr:0.1〜1.0%
Mo:1.0〜2.5%
V :0.5〜3.5%
を含有すると共に、残部がFeから成り、且つ
Mo+V:2.5〜4.5%及び
C−0.2V:1.6〜1.9%
を満たすことを特徴とする圧延用ロール材。 - 請求項1に記載の圧延用ロール材からなる単層ロールを焼入れ・焼戻し熱処理をして、基地をベイナイトと微細パーライトを主とした混合組織とすると共に、ロール表面硬度をショア硬度で65以上にしたことを特徴とする圧延用ロール。
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