JP4386890B2 - 原動機制御装置を具備する作業機械 - Google Patents

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Description

【技術分野】
本発明は、原動機制御装置を具備する作業機械に関するものである。
【背景技術】
従来、例えば油圧ショベルにおいては、掘削作業や吊り作業、均し作業など多種多様の作業形態があるため、吊り作業や均し作業において要求される微操作性を損なうことなく、掘削作業を効率良く行えるようにすることが望まれている。
このような要望を満たし得る油圧ショベルが例えば特許第3316057号公報にて提案されている。この公報にて提案されている油圧ショベルは、エンジンにより駆動される可変容量型油圧ポンプからの圧油によって作動される油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータの操作に係わる操作レバーの操作量変化率を検出する操作速度検出手段と、エンジンの回転数を制御するエンジン回転数制御手段を備えている。そして、前記操作速度検出手段によって検出された操作量変化率が所定値より小さい場合には、エンジン回転数制御手段により、エンジンの回転数を予め設定された設定回転数に維持するようにされている。つまり、吊り作業や均し作業などのように操作レバーの操作量変化率が小さい作業においては、エンジン回転数の増減が禁止されて微操作性に影響を与えないようにされている。一方、前記操作速度検出手段によって検出された操作量変化率が所定値より大きい場合には、エンジン回転数制御手段により、エンジンの回転数を予め設定された設定回転数から油圧アクチュエータにかかる負荷に応じて増加させるようにされている。つまり、掘削作業時には操作レバーの操作量変化率が吊り作業や均し作業などに比べて大きいから、作業負荷に応じてエンジンの回転数を増加させて掘削作業を効率良く行えるようにされている。
しかしながら、前記公報に開示されている油圧ショベルでは、操作速度検出手段により検出された操作レバーの操作量変化率に基づいてエンジン回転数制御手段によりエンジンの回転数を制御する構成とされているために、制御システムの複雑化が免れないという問題点がある。また、前記操作量変化率の大小を判定するための境界値の設定が運転者の操作感覚に基づくものであるために、運転者のその日の体調による影響や、複数の運転者で協同使用する場合では運転者の個人差による影響などにより、前述の作用効果の再現率にバラツキが生じる恐れがあるという問題点がある。
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、比較的簡易な構成で確実に微操作性を確保することができ、また微操作性を更に向上させることのできる原動機制御装置を具備する作業機械を提供することを目的とするものである。
【発明の開示】
前記目的を達成するために、第1発明による原動機制御装置を具備する作業機械は、
原動機により駆動される油圧ポンプからの圧油によって作動される油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータの作動により駆動される作業機と、作業内容に基づいて設定される複数の作業モードのそれぞれに対応させて前記原動機の出力を制御する原動機制御装置と、前記複数の作業モードのうちいずれかの作業モードを選択する作業モード選択手段を備え、
前記複数の作業モードのうち前記作業機を微速作動させる微操作作業モードが前記作業モード選択手段によって選択されると、前記原動機制御装置は、負荷変動に拘らず前記原動機の回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を行い、
前記複数の作業モードのうち前記原動機の設定回転数が定格出力回転数付近に設定される作業モードが前記作業モード選択手段によって選択されると、前記原動機制御装置は、負荷変動に応じて前記原動機の回転数を増減するレギュレーション制御を行う
ことを特徴とするものである。
本発明においては、作業内容に基づいて設定される複数の作業モードのうち作業機を微速作動させる微操作作業モードが作業モード選択手段によって選択されると、原動機制御装置によるアイソクロナス制御が行われ、負荷変動に拘らず原動機の回転数が一定に維持される。したがって、負荷の変動が生じても作業機の動作速度が一定に保たれるので、微操作性を良好に確保することが可能になる。より具体的な例で言い換えると、例えば油圧ショベルにおける吊り作業や均し作業を好適に行えるように設定された微操作作業モードにおいて、比較的ラフな操作にても微速かつ一定速度で作業機を作動させることが容易に行えるので、微操作性を更に向上させることができる。しかも、このような作用効果は、特定の作業モードが選択されたときにのみアイソクロナス制御を実施するといった比較的簡易な制御システムによって得られるという利点がある。また、同作用効果は、作業モード選択手段によって特定の作業モードが選択されると確実に得られるものであるから、従来のように作用効果の再現率にバラツキが生じる恐れがない。た、複数の作業モードのうち前記原動機の設定回転数が定格出力回転数付近に設定される作業モードが作業モード選択手段によって選択されたときに、負荷変動に応じて原動機の回転数を増減するレギュレーション制御が行われるので、運転者は原動機の回転数の増減変化に基づいて作業負荷の変動度合を感知できることになり、作業を進める上での加減の施し所が的確につかめることになり、滞りなくスムーズに作業を行うことができる
発明において、前記原動機制御装置は、前記微操作作業モードにおいて、負荷が要求する前記原動機の出力トルク値が所定値に到達し更に増加傾向にある場合に、前記アイソクロナス制御に連続して等馬力制御を行うのが好ましい。このようにすれば、負荷の増分に対する原動機の回転数変化を抑えつつ出力トルクを増加させることができるので、微操作性を損なうことなく高負荷作業を良好に行うことができる。しかもこの際、原動機の出力は略一定とされるので、無駄なエネルギ消費が成されることはない。
また、第2発明による原動機制御装置を具備する作業機械は、
原動機により駆動される油圧ポンプからの圧油によって作動される油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータの作動により駆動される作業機と、
作業内容に基づいて設定される複数の作業モードのそれぞれに対応させて前記原動機の出力を制御する原動機制御装置と、前記複数の作業モードのうちいずれかの作業モードを選択する作業モード選択手段を備え、
前記複数の作業モードのうち前記作業機を微速作動させる微操作作業モードおよび前記複数の作業モードのうち前記原動機の設定回転数が定格出力回転数付近に設定される作業モードが前記作業モード選択手段によって選択されると、前記原動機制御装置は、負荷変動に拘らず前記原動機の回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を行う
ことを特徴とするものである。
本発明によれば、第1発明と同様に微操作性を更に向上させることができるのは勿論のこと、原動機の設定回転数が定格出力回転数付近に設定される作業モードにおいても原動機制御装置によるアイソクロナス制御が行われることで、作業中に突然無負荷状態となっても原動機の回転数が増加されず、また無負荷運転時のエンジン設定回転数そのものを低く設定することが可能になるので、振動や騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2は、第1の実施形態に係るエンジン・油圧制御システムの概略構成を表わすブロック図である。
図3は、第1の実施形態に係るエンジン出力トルク特性線図である。
図4は、第2の実施形態に係るエンジン出力トルク特性線図である。
図5は、第3の実施形態に係るエンジン・油圧制御システムの概略構成を表わすブロック図である。
図6は、第3の実施形態に係るエンジン出力トルク特性線図である。
図7は、第4の実施形態に係るエンジン・油圧制御システムの概略構成を表わすブロック図である。
図8は、第4の実施形態に係るエンジン出力トルク特性線図である。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、本発明による原動機制御装置を具備する作業機械の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は、作業機械の一種である油圧ショベルに本発明が適用された例である。
図1には、本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの側面図が示されている。
この油圧ショベル1は、走行用油圧モータ(図示省略)の作動により走行自在に構成される下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回用油圧モータ(図示省略)を駆動源とする旋回装置3を介して設けられる上部旋回体4と、この上部旋回体4に取着される作業機6を備えて構成されている。前記作業機6は、前記上部旋回体4側から順にブーム7、アーム8およびバケット9がそれぞれ回動可能に連結されて構成され、これらブーム7、アーム8およびバケット9は、それぞれブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12の伸縮作動により回動操作されるようになっている。また、前記上部旋回体4には運転室5が設けられ、この運転室5には、各油圧アクチュエータ(走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12)を操作する操作装置(図示省略)や、各種インジケータを表示するモニタと各種スイッチが配置されてなる操作部とで構成されるモニタパネル20(図2参照)などが設置されている。なお、この油圧ショベル1においては、バケット9とそのバケット9の回動機構を構成するバケットリンク13とを連結するピン14に、吊りフック(図示省略)が取り付けられており、掘削作業や均し作業のみならず、吊り作業が行えるようにされている。
次に、本発明の第1の実施形態に係るエンジン・油圧制御システムについて、図2のブロック図を用いて以下に詳述する。
本実施形態のエンジン・油圧制御システム15は、ディーゼル式のエンジン(原動機)16と、このエンジン16により駆動される可変容量型の油圧ポンプ17と、前記エンジン16の出力を制御するエンジン制御装置(原動機制御装置)18と、前記油圧ポンプ17の吐出特性を制御するポンプ制御装置19と、前記モニタパネル20における操作部に配置され、作業内容に基づいて設定される複数の作業モード(後述する)のうちいずれかの作業モードを選択する作業モード選択スイッチ(作業モード選択手段)24(アクティブモード選択スイッチ21、掘削モード選択スイッチ22、リフティングモード選択スイッチ23)を備えている。
前記エンジン16には、そのエンジン16の燃焼室に燃料を噴射するための燃料噴射ポンプ25が付設されている。この燃料噴射ポンプ25は、図示による説明は省略するが、燃料を高圧にして噴射管へ圧送するためのプランジャおよびカムシャフトからなる圧送機構と、前記プランジャと係合するコントロールラックを具備しそのコントロールラックのラック位置を変化させることで前記圧送機構による燃料の圧送量を調整する圧送量調整機構を備えて構成されている。
前記油圧ポンプ17は、コントロールバルブ26を介して各油圧アクチュエータに接続されている。また、このコントロールバルブ26においては、各油圧アクチュエータに対応するように前記操作装置に設けられている各操作レバーの操作にて油路の切り換えが行われるようにされている。こうして、運転者による各操作レバーの所定の操作にて、油圧ポンプ17からの圧油が対応する油圧アクチュエータに供給され、下部走行体2による走行動作や上部旋回体4の旋回動作、作業機6の屈曲起伏動作が行われるようにされている。
前記エンジン制御装置18は、前記燃料噴射ポンプ25における圧送量調整機構に具備されるコントロールラックのラック位置を制御する電子式ガバナ27と、この電子式ガバナ27に対してガバナ駆動信号を送信するエンジンコントローラ28を備えて構成されている。ここで、エンジンコントローラ28には、エンジン16の回転数を検出する回転センサ29からのエンジン回転数検出信号、および燃料ダイヤル30の操作量を検出するスロットルセンサ31からのスロットル信号がそれぞれ入力されるようになっている。
前記ポンプ制御装置19は、前記油圧ポンプ17に具備される斜板を傾動させる斜板駆動装置32と、この斜板駆動装置32の作動を制御するポンプコントローラ33を備えて構成されている。ここで、ポンプコントローラ33には、油圧ポンプ17の回転数(=エンジン回転数)を検出する回転センサ34からのポンプ回転数検出信号、および作業モード選択スイッチ24からの作業モード選択信号がそれぞれ入力されるようになっている。
前記エンジンコントローラ28とポンプコントローラ33との間では信号の送受信が可能とされており、ポンプコントローラ33に入力されたモニタパネル20からの作業モード選択信号がモード指令信号としてエンジンコントローラ28へ向けて送信され、このポンプコントローラ33から送信されたモード指令信号がエンジンコントローラ28に入力されるようになっている。そして、エンジンコントローラ28においては、入力されたモード指令信号に基づいて、作業モード選択スイッチ24の選択操作によって選択された作業モードを判断し、かかる作業モードに応じたエンジン16の出力特性となるように所定のガバナ駆動信号を電子式ガバナ27に送信するようにされている。なお、符号35で示されるのは、エンジン16に関わる情報をモニタパネル20に送信するための信号線であって、この信号線により伝達されたエンジン16の情報はモニタパネル20におけるモニタに表示されるようになっている。一方、ポンプコントローラ33においては、エンジンコントローラ28から送られる燃料ダイヤル30によるエンジン16の目標回転数信号と、回転センサ34にて検出されたポンプ回転数検出信号とに基づいて、エンジン16の各出力点でのベストマッチングトルクを油圧ポンプ17が吸収するように斜板駆動装置32によりその油圧ポンプ17の吐出量を制御するとともに、エンジン16の燃費効率の高いところでマッチングさせるために各作業モードにおいて等馬力制御するようにされている(図3において記号PaおよびPbで示されるそれぞれの等馬力曲線を参照)。
本実施形態において設定される作業モードは、アクティブモード、掘削モードおよびリフティングモード(微操作作業モード)の3つである。ここで、アクティブモードは、スピードとパワーが要求される作業に対応させるべく設定されたモードである。一方、掘削モードは、エンジン16の燃費効率の良い出力領域で通常の掘削作業が行えるように設定されたモードであり、他方、リフティングモードは、例えば吊り作業や均し作業などのように微操作性を要求される作業に対応させるべく設定されたモードである。そして、本実施形態では、各作業モードに対応させてエンジン16の出力を前記エンジン制御装置18により制御するようにされている。
また、本実施形態において前記エンジン制御装置18がエンジン16に対して実施する制御は、以下の2種類である。
一つはレギュレーション制御(ドゥループ制御)と称されるものである。このレギュレーション制御では、エンジン16の無負荷運転(アイドル運転)時において前記燃料ダイヤル30によりエンジン16の目標回転数が設定されると、作業負荷の高まりに応じてエンジン16の回転数を下げていくようにされる。
もう一つはアイソクロナス制御と称されるものである。このアイソクロナス制御では、作業負荷の変動に拘らずエンジン16の回転数を一定に維持するようにされる。すなわち、このアイソクロナス制御においては、エンジンコントローラ28が、スロットルセンサ31から送られてくるスロットル信号と、ポンプコントローラ33から送られてくるモード指令信号とに基づき、設定回転数を決定するとともに、その設定回転数と実際のエンジン回転数と比較して燃料噴射ポンプ25におけるコントロールラックの目標ラック位置を決定し、この目標ラック位置と実際のラック位置とが等しくなるようにフィードバック制御を実行させる駆動信号を電子式ガバナ27に送信する。こうして、燃料噴射量を制御することにより、作業負荷の変動に対しエンジン16の回転数を一定に保持するようにされる。
以上に述べたように構成される本実施形態の油圧ショベル1においては、運転者が作業モード選択スイッチ24の中からリフティングモード選択スイッチ23をONすると、図3中記号ELで示されるエンジン出力トルク特性ラインが設定され、エンジン制御装置18は同図において記号Laで示されるエンジン回転数一定ラインに沿ってアイソクロナス制御を実行する。一方、運転者が作業モード選択スイッチ24の中からアクティブモード選択スイッチ21をONすると、図3中記号ELで示されるエンジン出力トルク特性ラインが設定され、エンジン制御装置18は同図において記号Lbで示される傾斜負荷ラインに沿ってレギュレーション制御を実行する。なお、掘削モード選択スイッチ22をONすることで選択される掘削モードにおいては、設定回転数がアクティブモードにおけるそれよりもやや低いエンジン回転数に設定されたエンジン出力トルク特性が選択されるとともに、エンジン制御装置18により実施される制御がアクティブモードにおけるレギュレーション制御と基本的に同様であるため、説明の都合上、同図において掘削モードに係る傾斜負荷ラインは図示省略されている。また、同図において記号Lcで示される破線のラインは、リフティングモードにおいてアイソクロナス制御が実施されずにレギュレーション制御が行われた場合の傾斜負荷ラインである。また、同図において括弧内に記載されているエンジン回転数は、リフティングモードにおいてレギュレーション制御が行われる場合の設定回転数である。
本実施形態によれば、エンジン16の設定回転数が比較的低く設定されるリフティングモード(設定回転数:1480r.p.m.)においてはアイソクロナス制御が行われるので、比較的ラフな操作にても微速かつ一定速度で作業機6を作動させることが容易に行え、これにより吊り作業時荷がゆれないし、法面掘削時に刃先がぶれないという効果を奏する。また、エンジン16の設定回転数が比較的高く(定格出力回転数またはその近傍)設定されるアクティブモード(設定回転数:2050r.p.m.)においてはレギュレーション制御が行われるので、運転者はエンジン回転数の増減変化に基づいて作業負荷の変動度合を感知することができる。このため、作業を進める上での加減の施し所が的確につかめることになり、滞りなくスムーズに作業を行うことができるという効果を奏する。しかも、これらの効果を奏する本実施形態の制御システムは、比較的簡易に構築でき、また運転者の操作感覚に依るところがないから効果の再現率にバラツキが生じる恐れがないという利点がある。
次に、本発明の第2の実施形態について以下に説明する。図4には、第2の実施形態に係るエンジン出力トルク特性線図が示されている。なお、本実施形態におけるエンジン・油圧制御システムのハード構成は、第1の実施形態におけるそれと基本的に同じである。
第1の実施形態においては、リフティングモード時にアイソクロナス制御が、アクティブモード時にレギュレーション制御がそれぞれ実行される例を示したが、本実施形態では、図4に示されるように、リフティングモード時においては第1の実施形態と同様に図中記号Laで示されるエンジン回転数一定ラインに沿ってアイソクロナス制御が行われるようにされるとともに、アクティブモード時においても図中記号Ldで示されるエンジン回転数一定ラインに沿ってアイソクロナス制御が行われるようにされている。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に微操作性が更に高められるのは勿論のこと、アクティブモードで作業を行っているときに突然無負荷状態となってもエンジン回転数が増加されず、また無負荷運転時のエンジン設定回転数そのものを低く設定することが可能になるので、振動や騒音を低減することができる。
なおここで、第1の実施形態および第2の実施形態において、前記エンジン制御装置18に代えて、後述する第3の実施形態および第4の実施形態におけるエンジン制御装置18Aと同様のものを用いても良い。かかるエンジン制御装置18Aにおいては、後述するように、コモンレール式燃料噴射装置40、エンジンコントローラ28および各種センサ類を含む機器にて電子制御噴射システムが構築されている。
次に、本発明の第3の実施形態について以下に説明する。図5には、第3の実施形態に係るエンジン・油圧制御システムの概略構成を表わすブロック図が示されている。また、図6には、第3の実施形態に係るエンジン出力トルク特性線図が示されている。なお、本実施形態において、前記各実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては本実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
前記エンジン16には、蓄圧(コモンレール)式の燃料噴射装置40が付設されている。この燃料噴射装置40は、それ自体公知のものであって、図示による詳細説明は省略するが、燃料圧送ポンプによりコモンレールに燃料を蓄圧し、電磁弁の開閉によりインジェクタから燃料を噴射する方式のものであり、エンジンコントローラ28から前記電磁弁への駆動信号により燃料噴射特性が決定され、エンジン16の低速域から高速域まで任意の噴射特性を得ることができるようにされている。本実施形態では、燃料噴射装置40、エンジンコントローラ28および各種センサ類を含む機器にて構築される電子制御噴射システムによりエンジン制御装置18Aが構成されており、かかる電子制御噴射システムにおいては、目標噴射特性をデジタル値でマップ化することにより、後述するようなエンジン特性を得ることができるようにされている。
前記エンジンコントローラ28には、リフティングモードおよびアクティブモードのそれぞれに対応するエンジン出力トルク特性がマップ化されて記憶されている。ここで、本実施形態においては、リフティングモードに対応して、エンジン出力トルク特性ラインEL′が設定されている。このエンジン出力トルク特性ラインEL′は、アイソクロナス制御ラインLaを有するとともに前記エンジン出力トルク特性ラインELに比し中低速域における出力トルクがやや低めに設定されている。また、本実施形態においては、アクティブモードに対応して、第1の実施形態と同様のレギュレーションラインLbを有するエンジン出力トルク特性ラインELが設定されている。そして、このエンジンコントローラ28においては、各エンジン出力トルク特性マップに基づきエンジン回転数信号と燃料噴射特性マップ(図示省略)とを参照することで燃料噴射量を求め、求められた燃料噴射量を満足するような駆動信号を燃料噴射装置40に向けて出力するようにされている。なお、前記エンジン出力トルク特性ラインELに代えて、第2の実施形態において採用されたアイソクロナス制御ラインLdを有するエンジン出力トルク特性ラインEL′を設定するようにしても良い(後述する第4の実施形態においても同様)。
前記ポンプコントローラ33には、リフティングモードおよびアクティブモードのそれぞれに対応するポンプ吸収トルク特性がマップ化されて記憶されている。ここで、本実施形態においては、リフティングモードに対応して、等馬力で推移するポンプ吸収トルク特性ラインPLが設定されている。このポンプ吸収トルク特性ラインPLは、アイソクロナス制御ラインLa上の出力トルク点Maにおいてエンジン出力トルク特性ラインEL′とマッチングするようにされている。また、本実施形態においては、アクティブモードに対応して、エンジン回転数を変数とする単調増加関数となるようなポンプ吸収トルク特性ラインPLが設定されている。このポンプ吸収トルク特性ラインPLは、エンジン16の出力が最大となる出力トルク点Mbにおいてエンジン出力トルク特性ラインELとマッチングするようにされている。そして、このポンプコントローラ33においては、各ポンプ吸収トルク特性マップに基づいて斜板駆動信号を求め、求められた斜板駆動信号を斜板駆動装置32に向けて出力するようにされている。
本実施形態においては、運転者が作業モード選択スイッチ24の中からリフティングモード選択スイッチ23をONすると、図6に示されるように、エンジン出力トルク特性ラインEL′が設定されるとともに、アイソクロナス制御ラインLa上の出力トルク点Maにおいてそのエンジン出力トルク特性ラインEL′とマッチングするポンプ吸収トルク特性ラインPLが設定される。一方、運転者が作業モード選択スイッチ24の中からアクティブモード選択スイッチ21をONすると、同図に示されるように、エンジン出力トルク特性ラインELが設定されるとともに、エンジン16の出力が最大となる出力トルク点Mbにおいてそのエンジン出力トルク特性ラインELとマッチングするポンプ吸収トルク特性ラインPLが設定される。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができるのは勿論のこと、リフティングモード時において、エンジン出力トルク特性ラインEL′の中低速域における出力トルクが、第1の実施形態におけるエンジン出力トルク特性ラインELの中低速域における出力トルクよりもやや低められているので、第1の実施形態よりもリフティングモード時において燃費低減を図ることができるという利点がある。
次に、本発明の第4の実施形態について以下に説明する。図7には、第4の実施形態に係るエンジン・油圧制御システムの概略構成を表わすブロック図が示されている。また、図8には、第4の実施形態に係るエンジン出力トルク特性線図が示されている。なお、本実施形態において、前記各実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては本実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
エンジンコントローラ28には、図7および図8において記号EL″で示されるラインで表わされるエンジン出力トルク特性がリフティングモードに対応するエンジン出力トルク特性としてマップ化されて記憶されている。このエンジン出力トルク特性ラインEL″は、アイソクロナス制御ラインLaを有するとともに前記エンジン出力トルク特性ラインELに比し中低速域における出力トルクがやや低められ、さらにそのアイソクロナス制御ラインLaに連続する制御ラインLeを有している。ここで、この制御ラインLeは、エンジン出力を略等馬力で推移させる制御ラインである(以下、この制御ラインLeを等馬力制御ラインLeと称する。)。このエンジン出力トルク特性ラインEL″によれば、エンジン16は、無負荷状態から負荷が増加すると一旦アイソクロナス制御ラインLaに沿って運転され、負荷が要求するエンジン出力トルク値が所定値Tsに到達し更に増加傾向にあると、等馬力制御ラインLeに沿って運転される。
ポンプコントローラ33には、図7および図8において記号PL′で示されるラインで表わされるポンプ吸収トルク特性がリフティングモードに対応するポンプ吸収トルク特性としてマップ化されて記憶されている。このポンプ吸収トルク特性ラインPL′は、エンジン回転数を変数とする単調増加関数となるようにされるとともに、等馬力制御ラインLe上の出力トルク点Mcにおいてエンジン出力トルク特性ラインEL″とマッチングするようにされている。
本実施形態においては、運転者が作業モード選択スイッチ24の中からリフティングモード選択スイッチ23をONすると、図8に示されるように、エンジン出力トルク特性ラインEL″が設定されるとともに、等馬力制御ラインLe上の出力トルク点Mcにおいてそのエンジン出力トルク特性ラインEL″とマッチングするポンプ吸収トルク特性ラインPL′が設定される。一方、運転者が作業モード選択スイッチ24の中からアクティブモード選択スイッチ21をONすると、同図に示されるように、エンジン出力トルク特性ラインELが設定されるとともに、エンジン16の出力が最大となる出力トルク点Mbにおいてそのエンジン出力トルク特性ラインELとマッチングするポンプ吸収トルク特性ラインPLが設定される。
本実施形態においてリフティングモードが選択された際には、無負荷状態から負荷が増加すると一旦アイソクロナス制御ラインLaに沿ってエンジン16が運転され、負荷が要求するエンジン出力トルク値が所定値Tsに到達し更に増加傾向にあると、等馬力制御ラインLeに沿ってエンジン16が運転される。そして、エンジン16の実回転数は、エンジン出力トルク特性ラインEL″とポンプ吸収トルク特性ラインPL′とが交差する出力トルク点Mc(以下、「マッチング点Mc」という。)に対応するエンジン回転数Ncに収束されることになる。この際、エンジン出力トルクはエンジン16それ自身の等馬力特性に従って変化されるので、負荷の増分に対してエンジン回転数が緩やかに変化されながらエンジン出力トルクが増加されることになる。さらに、エンジン16の出力トルクがマッチングMcに収束される際には、エンジン16の出力がそのマッチング点Mcにおいて必要とされるエンジン出力に保たれるから、エンジン16が出力過剰に陥ることはない。
本実施形態によれば、微操作性を損なうことなく高負荷作業を良好に行うことができるとともに、第3の実施形態に比しリフティングモードにおいて更に燃費低減を図ることができる。
なお、前記各実施形態においては、油圧ショベルに本発明が適用された例を示したが、油圧ショベル以外の建設機械や、産業車両、農業機械等に本発明が適用し得るのは言うまでもない。

Claims (3)

  1. 原動機により駆動される油圧ポンプからの圧油によって作動される油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータの作動により駆動される作業機と、作業内容に基づいて設定される複数の作業モードのそれぞれに対応させて前記原動機の出力を制御する原動機制御装置と、前記複数の作業モードのうちいずれかの作業モードを選択する作業モード選択手段を備え、
    前記複数の作業モードのうち前記作業機を微速作動させる微操作作業モードが前記作業モード選択手段によって選択されると、前記原動機制御装置は、負荷変動に拘らず前記原動機の回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を行い、
    前記複数の作業モードのうち前記原動機の設定回転数が定格出力回転数付近に設定される作業モードが前記作業モード選択手段によって選択されると、前記原動機制御装置は、負荷変動に応じて前記原動機の回転数を増減するレギュレーション制御を行う
    ことを特徴とする原動機制御装置を具備する作業機械。
  2. 前記原動機制御装置は、前記微操作作業モードにおいて、負荷が要求する前記原動機の出力トルク値が所定値に到達し更に増加傾向にある場合に、前記アイソクロナス制御に連続して等馬力制御を行う請求項に記載の原動機制御装置を具備する作業機械。
  3. 原動機により駆動される油圧ポンプからの圧油によって作動される油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータの作動により駆動される作業機と、
    作業内容に基づいて設定される複数の作業モードのそれぞれに対応させて前記原動機の出力を制御する原動機制御装置と、前記複数の作業モードのうちいずれかの作業モードを選択する作業モード選択手段を備え、
    前記複数の作業モードのうち前記作業機を微速作動させる微操作作業モードおよび前記複数の作業モードのうち前記原動機の設定回転数が定格出力回転数付近に設定される作業モードが前記作業モード選択手段によって選択されると、前記原動機制御装置は、負荷変動に拘らず前記原動機の回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を行う
    ことを特徴とする原動機制御装置を具備する作業機械。
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