JP4386627B2 - 空気入りタイヤ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車用空気入りタイヤ及びその製造方法に関し、更に詳しくは、路面の凹凸に起因するタイヤから車両へ伝播する振動を抑制することにより、ロードノイズを低減することができる乗用車用空気入りタイヤ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗用車の静粛性向上が非常に重要視され、タイヤ開発における騒音低減要求が厳しくなっている。特に、路面の凹凸に起因するロードノイズの低減が望まれている。
【0003】
このロードノイズは、路面の凹凸によって発生したタイヤの振動がタイヤから車軸を経て車室内へ伝播することによって生じる共鳴音であるので、この振動伝播を抑制することにより低減できることが分かっている。そのため、カーカス層の巻き上げ高さ(ターンアップ高さ)をビードフィラーの高さよりも低くしたローターンアップ構造が従来から採用され、カーカス層を介して伝播する振動を抑制する効果を奏している。
【0004】
また、一方で、ビードコア廻りのカーカスコードの摩滅を防止すると共にカーカス層巻き上げ端末におけるセパレーションの発生を抑制してビード部の耐久性を向上させるために、ビードコアとこのビードコアに隣接するカーカス層との間に、かつ、タイヤ内側のカーカス層とビードフィラーとの間に、JIS−A硬度で80以上、好ましくは85〜98のゴム層、少なくともビードフィラーよりも硬いゴム層を連続的に介在させた空気入りタイヤがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−54007号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の構造では、ビード部の耐久性を向上させることはできるが、ロードノイズの低減を図ることができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、タイヤの振動がカーカス層を介して伝播することに起因するロードノイズを低減することができる乗用車用空気入りタイヤとその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の乗用車用空気入りタイヤは、ビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げた一層以上のポリエステル、ナイロン、レーヨンのいずれかからなるカーカス層を有する空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアと該ビードコアに隣接する前記カーカス層との間に、該ビードコアのタイヤ回転軸側の面とタイヤ幅方向の外側の面および内側の面に接して、JIS−A硬度が50〜70であり厚さが1mm〜2mmである低弾性率ゴムシートを配置して構成される。
また、本発明の乗用車用空気入りタイヤの製造方法は、一層以上のカーカス層の端部をビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げた空気入りタイヤの製造方法において、前記ビードコアと該ビードコアに隣接する前記カーカス層との間に、該ビードコアのタイヤ回転軸側の面とタイヤ幅方向の外側の面および内側の面に接して、JIS−A硬度が50〜70である加硫済みの低弾性率ゴムシートを配置した未加硫タイヤを成形し、該未加硫タイヤを加硫成形する空気入りタイヤの製造方法である。
【0009】
本発明によれば、ビードコアとこのビードコアに隣接するカーカス層との間に設けた低弾性率ゴムシートが振動を吸収するので、路面の凹凸に起因する振動の車両への伝播が抑制され、ロードノイズが低減する。
【0010】
そして、前記空気入りタイヤが、前記カーカス層の巻き上げ端がビードフィラーよりも低く形成された空気入りタイヤであると、カーカス層が伝播する振動が更に少なくなるので、ロードノイズ低減効果が大きくなる。
【0011】
そして、本発明の空気入りタイヤの製造に際しては、低弾性率ゴムシートを、加硫済みの状態で挿入した未加硫タイヤを成形して加硫成形することが好ましく、これにより、タイヤ加硫時における低弾性率ゴムシートの流動変形を抑えられるので、加硫後も振動吸収に必要な所定厚さが維持され、所望のロードノイズ低減効果を奏するタイヤが得られることになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態の空気入りタイヤについて、図面を参照しながら説明するが、本発明の空気入りタイヤは、ビード部に特徴があるので、この部分について説明する。
【0013】
第1の実施の形態の空気入りタイヤは、図1に示すように、ビード部1では、カーカス層4の端部がビードコア2の廻りにタイヤ内側から外側に折り返され、このビードコア2のトレッド側に隣接して配置されたビードフィラー3に沿って巻き上げられている。そして、このビード部1でリム6に組み付けられる。
【0014】
カーカス層4は、ポリエステル、ナイロン、レーヨン等のカーカスコードを、ラジアルタイヤの場合にはタイヤ赤道に対して90°に配列したラジアル構造で形成される。カーカス層は2層以上に設けてもよく、2プライのカーカス層の場合にはタイヤ赤道に対し60°〜90°、好ましくは75°〜90°の角度に配置してラジアルやセミラジアル構造に形成される。
【0015】
ビードコア2とこのビードコア2に隣接するカーカス層4との間には、JIS−A硬度が50〜70である低弾性率ゴムシート10が配置されている。この低弾性率ゴムシート10の配置は、ビードコア2のタイヤ回転軸側の面(底面)とタイヤ幅方向の外側の面および内側の面(両側面)の3面に接して行われる。この低弾性率ゴムシート10の厚さは1mm〜2mm程度のものを用いることが肝要であり、これによりカーカス層4とビードコア2との間を確実に遮断する。
【0016】
この低弾性率ゴムシート10の組成は特に限定されないが、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等のゴムにカーボンブラック等の配合剤を配合したゴム組成物を挙げることができる。
【0017】
この構成により、トレッドが路面から拾い、カーカス層4に伝播した振動を低弾性率ゴムシート10がビードコア2への伝播を抑えるため、リム6の振動が抑制され、車室内の共鳴音であるロードノイズをより効果的に低減することができる。
【0018】
上述した本発明の空気入りタイヤの製造に際しては、未加硫タイヤを成形するとき、低弾性率ゴムシート10として厚さが1mm〜2mmである加硫済みのゴムシート状態にして挿入することが肝要であり、この製造方法により、タイヤ加硫時における低弾性率ゴムシートの流動変形を抑えて厚さを保持できるので、上述した振動の遮断を効率よく行うことができる。
【0019】
また、第2の実施の形態の空気入りタイヤは、図2に示すように、カーカス層4の巻き上げ端(ターンアップ)4aがビードフィラー3よりも低く形成され、いわゆるローターンアップ構造で構成される。この構成以外は、第1の実施の形態と同じで、低弾性率ゴムシート10も第1の実施の形態と同様に設けられる。
【0020】
この構成によれば、カーカス層4の巻き上げ端4aがカーカス層4の本体に接合していないため、ビードコア2への振動の伝達が抑制されるので、低弾性率ゴムシート10の振動吸収との相乗効果により、ロードノイズを著しく低減できる。
【0021】
〔実施例〕
図5と図6に示すような、従来例1と、ローターンアップ構造の従来例2に対して、図3と図4に示すように、低弾性率ゴムをそれぞれ設けた実施例1(第1の実施の形態に相当)と実施例2(第2の実施の形態に相当)の下記タイヤサイズからなる4種の空気入りタイヤを製作した。
【0022】
これら4種類のタイヤについて、下記の評価条件で国産FF車で荒れた路面を走行しながら、走行中の車内中央の騒音(オーバーオール(O.A.)値)を測定したところ、表1の結果を得た。
【0023】
タイヤサイズ:175/65R14 82S
評価条件:空気圧=220kPa,リム=14x51/2JJ
【0024】
【表1】
Figure 0004386627
【0025】
表1によれば、従来例1を基準とした実施例1では−0.4dB〔A〕となり、従来例2を基準とした実施例2では−0.6dB〔A〕となった。特に、ローターンアップ構造の従来例2では、従来例1に対して、−1.0のdB〔A〕のノイズ低減効果が得られ、ロードノイズの低減に大きな効果を奏することが分かった。
【0026】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の空気入りタイヤによれば、ビードコアとこのビードコアに隣接するカーカス層との間に、JIS−A硬度が50〜70である低弾性率ゴムシートを配置したので、走行路面の凹凸によって発生した振動がカーカス層を介して車体に伝播するのを抑制して、ロードノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の空気入りタイヤの構造を示すビード部の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の空気入りタイヤの構造を示すビード部の断面図である。
【図3】実施例1の空気入りタイヤの構造を模式的に示すビード部の断面図である。
【図4】実施例2の空気入りタイヤの構造を模式的に示すビード部の断面図である。
【図5】従来例1の空気入りタイヤの構造を模式的に示すビード部の断面図である。
【図6】従来例2の空気入りタイヤの構造を模式的に示すビード部の断面図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 ビードコア
3 ビードフィラー
4 カーカス層
6 リム
10 低弾性率ゴムシート

Claims (3)

  1. ビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げた一層以上のポリエステル、ナイロン、レーヨンのいずれかからなるカーカス層を有する空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアと該ビードコアに隣接する前記カーカス層との間に、該ビードコアのタイヤ回転軸側の面とタイヤ幅方向の外側の面および内側の面に接して、JIS−A硬度が50〜70であり厚さが1mm〜2mmである低弾性率ゴムシートを配置した乗用車用空気入りタイヤ。
  2. 前記カーカス層の巻き上げ端をビードフィラーの径方向外端よりも低くした請求項1記載の乗用車用空気入りタイヤ。
  3. 一層以上のポリエステル、ナイロン、レーヨンのいずれかからなるカーカス層の端部をビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げた空気入りタイヤの製造方法において、前記ビードコアと該ビードコアに隣接する前記カーカス層との間に、該ビードコアのタイヤ回転軸側の面とタイヤ幅方向の外側の面および内側の面に接して、JIS−A硬度が50〜70であり厚さが1mm〜2mmである加硫済みの低弾性率ゴムシートを配置した未加硫タイヤを成形し、該未加硫タイヤを加硫成形する乗用車用空気入りタイヤの製造方法。
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