JP4166381B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サイド部に補強層を挿入した空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、補強層の挿入に基づいてトラクション性を向上するに際し、その補強層に起因するユニフォミティーの低下や乗心地の悪化を抑制するようにした空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤにおいて、操縦安定性の向上、特にトラクション性の向上のためには、タイヤサイド部の周剛性を高めることが有効である。この周剛性を高める手段としては、サイド部にスチールコードや有機繊維コードからなる補強層を挿入することが行われており、場合によっては複数枚の補強層を挿入することもある。
【0003】
従来、各サイド部に複数枚の補強層を挿入する場合、2枚目の補強層のタイヤ周方向に対するコード角度を、1枚目の補強層のコード角度とは逆位相にしている。即ち、複数枚の補強層の補強コードをタイヤ周方向を挟んで互いに逆方向に傾斜させている。このように複数枚の補強層のコード角度を各サイド部で互いに逆位相に設定すると、周方向の剛性を効果的に得ることができる。
【0004】
しかしながら、上述のように各サイド部に挿入する複数枚の補強層のコード角度を互いに逆位相に設定すると、タイヤ成形工程において補強層のビード部側での変形量とトレッド部側での変形量との差が大きくなることから未加硫タイヤに大きな歪みを生じ、その結果としてユニフォミティーが低下するという問題があった。また、補強コードのバイアス効果により縦方向(タイヤ径方向)の剛性が必要以上に上がり過ぎるので、サイド部で衝撃を吸収しきれずに乗心地が悪化するという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、サイド部に補強層を挿入することでトラクション性を向上するに際し、その補強層に起因するユニフォミティーの低下や乗心地の悪化を抑制することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、左右一対のビード部とトレッド部とを左右一対のサイド部を介して互いに連接し、各サイド部に複数本の補強コードを平行に配列してなる少なくとも2枚の補強層を挿入した空気入りタイヤにおいて、これら補強層のタイヤ周方向に対するコード角度を各サイド部内で互いに同位相に設定し、かつ各サイド部の補強層間にコード角度差を与えると共に、各サイド部における補強層の位置をタイヤ径方向にずらし、タイヤ径方向外側に位置する補強層のコード角度θ 2 をタイヤ径方向内側に位置する補強層のコード角度θ 1 よりも小さくしたことを特徴とするものである。
【0007】
このようにサイド部に少なくとも2枚の補強層を挿入してトラクション性を向上するに際し、これら補強層のタイヤ周方向に対するコード角度を各サイド部内で互いに同位相に設定することにより、タイヤ成形工程において未加硫タイヤに生じる歪みを小さくしてユニフォミティーを向上することがき、しかも補強層の挿入に伴う縦剛性の過度の上昇を抑えて乗心地を向上することができる。
【0008】
本発明において、適度な周剛性と適度な縦剛性を得るために、補強層のタイヤ周方向に対するコード角度は5°〜45°にすることが好ましい。また、各サイド部での補強層間のコード角度差は35°以下にすることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを例示するものである。図において、1はビード部、2はトレッド部、3はビード部1とトレッド部2とを互いに連接するサイド部である。左右一対のビード部1,1間には複数本のコードをラジアル方向に配列させた内外2層のカーカス層4,5が装架されている。内側のカーカス層4はタイヤ幅方向両端部がそれぞれビードコア6の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられてターンナップ部4aを形成し、このターンナップ部4aがビードフィラー7を包み込んでいる。一方、外側のカーカス層5はタイヤ幅方向両端部がそれぞれターンナップ部4aの外側を通ってビードコア6の下方に配置されている。
【0011】
トレッド部2におけるカーカス層4,5の外周側には、それぞれ複数本のコードを平行に引き揃えてコートゴムで被覆した2層のベルト層8,8が埋設されている。これらベルト層8,8は、そのコードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間でコードが互いに交差するように配置されている。また、ベルト層8,8の外周側には、高速走行時の遠心力によりベルト層8,8のせり上がりを防止するために、複数本のコードを実質的にタイヤ周方向と平行に配列したベルトカバー層9がベルト層8,8を覆うように埋設されている。
【0012】
上記空気入りタイヤにおいて、ビードフィラー7と内側カーカス層4のターンナップ部4aとの間には複数本の補強コードを平行に引き揃えてコートゴムで被覆した補強層10が挿入されている。一方、内側カーカス層4のターンナップ部4aと外側カーカス層5との間には複数本の補強コードを平行に引き揃えてコートゴムで被覆した補強層11が挿入されている。
【0013】
これら補強層10,11を構成する補強コードとしては、スチールコードを使用することが好ましいが、必要に応じて芳香族ポリアミド等からなる高弾性の有機繊維コードを用いることも可能である。スチールコードを用いる場合、単位幅当たりのコード打ち込み本数は30〜50本/50mmにすると良い。また、補強層10,11の幅は30〜60mm、より好ましくはタイヤ断面高さの30〜60%の範囲にすると良い。
【0014】
図2に示すように、補強層10,11のタイヤ周方向に対するコード角度θ1 ,θ2 は各サイド部3内で互いに同位相に設定されている。即ち、各サイド部3において、補強層10,11は補強コードがタイヤ周方向に対して同一方向に傾斜している。
【0015】
上述のようにサイド部3に2枚の補強層10,11を挿入するに際し、補強層10,11のタイヤ周方向に対するコード角度θ1 ,θ2 を各サイド部3内で互いに同位相に設定することにより、タイヤ成形工程において未加硫タイヤに生じる歪みが小さくなるので、ユニフォミティーを向上することがきる。また、各サイド部3において、補強層10,11の補強コードがタイヤ周方向に対して同一方向に傾斜しており、サイド部3の縦剛性が過度に上昇することはないので、乗心地を向上することができる。更には、補強層10,11のコード角度θ1 ,θ2 とそのコード角度差を適切に設定することにより、サイド部3の周剛性を効果的に高めることができ、その結果としてトラクション性を向上することができる。
【0016】
補強層10,11のタイヤ周方向に対するコード角度θ1 ,θ2 は5°〜45°の範囲にすると良い。これら補強層10,11の補強コードは各サイド部3内で互いに同一方向に傾斜していることが必要であるが、タイヤ内での傾斜方向は特に限定されるものではない。つまり、タイヤ周方向に対して特定方向への傾斜をプラス値で表し、その反対方向への傾斜をマイナス値で表した場合、コード角度の絶対値|θ1 |,|θ2 |を5°〜45°の範囲にすれば良い。これらコード角度θ1 ,θ2 が5°未満であると補強層の積層効果が減少するため周方向の剛性が確保できず、逆に45°を超えると縦剛性が上がり過ぎるため乗心地が悪化してしまう。また、各サイド部3における補強層10,11間のコード角度差|θ2 −θ1 |は35°以下にすると良い。このコード角度差が35°を超えるとユニフォミティーと乗心地の向上効果が不十分になる。
【0017】
図3は本発明の空気入りタイヤに用いる補強層を成形ドラム上に配置した状態を示すものである。但し、補強層以外のタイヤ構成部材は不図示である。この図3に示すように、成形ドラムD上において、補強層10,11の補強コードは各サイド部3内では互いに同一方向に傾斜し、タイヤ中心線CLの両側では互いに逆方向に傾斜するように配置されている。補強層10,11を成形ドラムD上で上記のように配置した場合、製品タイヤにおいては補強層10,11がタイヤ中心線CLの両側で互いに同一方向に傾斜するようになる。
【0018】
図4は本発明の空気入りタイヤに用いる補強層を成形ドラム上に配置した他の状態を示すものである。但し、補強層以外のタイヤ構成部材は不図示である。この図4に示すように、成形ドラムD上において、補強層10,11の補強コードは各サイド部3内で互いに同一方向に傾斜すると共に、タイヤ中心線CLの両側でも互いに同一方向に傾斜するように配置されている。補強層10,11を成形ドラムD上で上記のように配置した場合、製品タイヤにおいては補強層10,11がタイヤ中心線CLの両側で互いに逆方向に傾斜するようになる。
【0019】
本発明において、サイド部の補強構造は上述した関係を満足する限り種々異なる形態にすることが可能である。例えば、補強層のタイヤ厚さ方向の挿入位置は上記実施形態に限定させるものではなく、ビードフィラーの内外やカーカス層の内外の任意の位置を選択することができる。また、補強層は少なくとも2枚挿入することが必要であるが、必要に応じて3枚以上挿入することも可能である。補強層を3枚以上挿入する場合も、これら補強層のタイヤ周方向に対するコード角度を各サイド部内で互いに同位相に設定すれば良い。
【0020】
【実施例】
タイヤサイズを225/50R16とし、各サイド部に2枚の補強層を挿入した空気入りタイヤにおいて、各サイド部内における補強層のタイヤ周方向に対するコード角度θ1 ,θ2 を種々異ならせた従来タイヤ、比較タイヤ及び本発明タイヤ1〜3をそれぞれ製作した。なお、補強層としては2+2構造のスチールコードをエンド数39の打ち込み密度で平行に配列したものを使用した。
【0021】
これら試験タイヤについて、下記試験方法によりユニフォミティー、乗心地、トラクション性を評価し、その結果を表1に示した。
【0022】
ユニフォミティー:
各試験タイヤについてラテラルフォースバリエーション(LFV)を測定したた。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来タイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどユニフォミティーが優れている。
【0023】
乗心地:
試験タイヤを空気圧200kPaとして排気量1800ccの乗用車に装着し、5名のテストドライバーにてサーキットコースを走行してフィーリングを評価した。評価結果は、従来タイヤを100とする指数で示した。この指数値が大きいほど乗心地が優れている。
【0024】
トラクション性:
特殊4輪駆動車を用いて3輪に同じ駆動力をかけ、試験タイヤを装着した残りの1輪に異なる駆動力を加え、その回転速度の差と駆動力から試験タイヤの前後力を検出し、これを駆動力とした。但し、50km/hからの測定とした。評価結果は、従来タイヤを100とする指数で示した。この指数値が大きいほどトラクション性が優れている。
【0025】
【表1】
【0026】
この表1から明らかなように、本発明タイヤ1〜3はいずれも補強層のコード角度θ1 ,θ2 を各サイド部内で互いに逆位相に設定した従来タイヤと同等のトラクション性を確保しながらユニフォミティーと乗心地を向上することができた。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、各サイド部に少なくとも2枚の補強層を挿入した空気入りタイヤにおいて、これら補強層のタイヤ周方向に対するコード角度を各サイド部内で互いに同位相に設定し、かつ各サイド部の補強層間にコード角度差を与えると共に、各サイド部における補強層の位置をタイヤ径方向にずらし、タイヤ径方向外側に位置する補強層のコード角度θ 2 をタイヤ径方向内側に位置する補強層のコード角度θ 1 よりも小さくしたことにより、補強層の挿入によりトラクション性を向上するに際し、その補強層に起因するユニフォミティーの低下や乗心地の悪化を抑制することができる。従って、トラクション性の向上とユニフォミティーや乗心地の向上とを両立することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。
【図2】図1の空気入りタイヤにおけるサイド部の補強構造を示す切り欠き側面図である。
【図3】本発明の空気入りタイヤに用いる補強層を成形ドラム上に配置した状態を示す平面図である。
【図4】本発明の空気入りタイヤに用いる補強層を成形ドラム上に配置した他の状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 トレッド部
3 サイド部
4,5 カーカス層
6 ビードコア
7 ビードフィラー
8 ベルト層
9 ベルトカバー層
10,11 補強層
θ1 ,θ2 補強層のコード角度
Claims (3)
- 左右一対のビード部とトレッド部とを左右一対のサイド部を介して互いに連接し、各サイド部に複数本の補強コードを平行に配列してなる少なくとも2枚の補強層を挿入した空気入りタイヤにおいて、これら補強層のタイヤ周方向に対するコード角度を各サイド部内で互いに同位相に設定し、かつ各サイド部の補強層間にコード角度差を与えると共に、各サイド部における補強層の位置をタイヤ径方向にずらし、タイヤ径方向外側に位置する補強層のコード角度θ 2 をタイヤ径方向内側に位置する補強層のコード角度θ 1 よりも小さくした空気入りタイヤ。
- 前記補強層のタイヤ周方向に対するコード角度を5°〜45°にした請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 各サイド部での補強層間のコード角度差を35°以下にした請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
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