JP4384317B2 - 自動調圧機能を有する包装袋および包装体 - Google Patents

自動調圧機能を有する包装袋および包装体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として食品を電子レンジにて加熱または加熱調理するに際し、袋内が所定の内圧に達したときに、内部の圧力を自動的に逃がすことのできる包装袋および包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
袋に食品を収容した包装体をそのまま電子レンジにて加熱または加熱調理を行うと、発生する水蒸気により内部が過圧状態となり、最終的には包装体が破裂して、電子レンジ内に内容物が噴き出したり飛び散ったりすることがある。このような破裂は、食品の損失、電子レンジ内の汚れ、電子レンジの寿命の低下を招くだけでなく、周囲の人に危険を与える。
【0003】
そこで電子レンジ等の加熱器による調理に先立ち、消費者の側でハサミやカッターで袋に傷をつけることが必要となるが、消費者に負担を強いることになる上、傷付けの程度が小さいときは、破裂により内容物がが噴き出したり飛び散ったりすることを有効には防止できず、一方傷付けの程度が大きいときは、食品の蒸らし効果が不充分になる。そこで包装体を構成する袋自体に、過度の圧力とならないように逃圧する機構を設ける方法を採用する方が望ましい。
【0004】
従来より、過度の圧力を逃がすために種々の機構のものが提案されているが、そのうちの一つの機構(第1の機構)として、袋や容器に水蒸気逃散のための貫通孔を設けると共に、その逃散孔をラベル状のフィルムで覆い、内部が加圧されたときに自動的に開口する方式があり、多数の出願がなされている。
【0005】
また本発明にも関係する別の機構(第2の機構)として、以下に例示するように、シーラント層をイージーピール性にしたものが提案されている。
【0006】
たとえば、実公平2−15789号公報(実開昭62−45235号公報)には、内面が耐熱性を有する合成樹脂層からなる包装材同士を熱接着してなる電子レンジ用包装袋において、周縁熱接着部の少なくとも一部の熱接着部の一方が無延伸ポリプロピレンフィルムであり、他方がポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂フィルムである電子レンジ用包装袋が示されている。なお試験は上記両フィルムを用いて行っているが、それらのフィルムの外面にポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、紙基材などの耐熱性を有する補強材を積層してもよく、また包装袋の周縁の一部のみに上記の両フィルムを配してもよいとの記載もある。
【0007】
特開平5−319444号公報には、層間剥離が容易なシーラントを基材フィルムの内面に積層し、シーラント同士を向かい合わせた状態で熱接着して製袋した包装袋が示されている。実施例においては、シーラントとして3層構造のものを用いており、シーラントのいずれかの部分で層間剥離を起こして開封するとしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の第2の機構(シーラント層をイージーピール性にする機構)を採用している実公平2−15789号公報の電子レンジ用包装袋および特開平5−319444号公報の包装袋のいずれにあっても、袋内部の圧力が上がったときに破裂はしても、どの程度の内圧になったときに破裂するかの点で不安定であり、そのため、蒸らし効果が不足したり、過度の加圧状態になってから破裂したりすることがある。また、ヒートシール部のどの個所で破袋するか予測できないことになる。
【0009】
また、食品をトレーなしでまたはトレーに載せた形でピロー包装袋に収容した包装体にあっては、ピロー包装袋の袋片面の胴部のほぼ中央線に沿って胴部合掌張りシール帯が存在するので、電子レンジ加熱に供したときは、袋の両側縁のサイドシール帯から破袋する場合のみならず、その胴部合掌張りシール帯から破袋することもありうる。そのため、電子レンジ加熱に際しては胴部合掌張りシール帯の方を上面にしなければならないが、美観の点から店頭における商品の陳列は胴部合掌張りシール帯のある方が裏面となり、また電子レンジによる加熱または加熱調理時には、消費者は胴部合掌張りシール帯のある方を下にするのが通常であるから(たとえ胴部合掌張りシール帯のある方を上にする旨の注意書きがあっても)、製品設計に窮することになる。
【0010】
本発明は、このような背景下において、シーラント層をイージーピール性にする機構を採用した包装形態にあって、
(i) 予め定めた所定の内圧に達したときに確実に破袋するように設計することができること、
(ii)また、袋片面の胴部のほぼ中央線に沿って胴部合掌張りシール帯が存在するピロー包装袋にトレー付き食品などの非加熱物を収容した包装体であっても、内圧が高まったときに両側縁のサイドシール帯の特定部位からのみ破袋するようにすることができ、従って胴部合掌張りシール帯のある面を下面にして電子レンジによる加熱または加熱調理を行うこともできること、
などの機能を備えた自動調圧機能を有する包装袋および包装体を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動調圧機能を有する包装袋または包装体は、
基材シート(1) /シーラント層 基材シート(1) /シーラント層(2) の層構成の積層シートから製袋された包装袋またはその内部に内容物が充填包装された包装体において、
前記シーラント層(2) は、袋の内面側となる第1層(2a)と、その第1層(2a)に隣接する第2層(2b)とを含む複層のポリオレフィン系樹脂層からなること、
ここで、前記第1層(2a)はリニア低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンド物層からなり、前記第2層(2b)はプロピレン系重合体層からなること、
包装袋または包装体としたときのシール部における第1層(2a)−第2層(2b)間の界面の剥離強度が、その温度25℃および温度90℃における剥離強度をそれぞれP25、P90とするとき、P25が 1.0〜2.5kg/15mm、P90が0.01〜0.2kg/15mmであること、
前記の包装袋または包装体が、袋片面の胴部のほぼ中央線に沿って袋の両端縁に向かう胴部合掌張りシール帯(S 1 )と、その両端縁のうち少なくとも一方の端縁をシールする端縁シール帯(S 2 )とを有するピロー包装袋またはピロー包装体であること、および、
前記端縁シール帯(S 2 )の形状を、それが胴部合掌張りシール帯(S 1 )と合する部位において袋の胴部側にC字状に湾曲する形状にすると共に、そのC字状の部分における端縁シール帯(S 2 )の最狭巾部の帯巾dを、その端縁シール帯(S 2 )のそれ以外の部分における帯巾Dの30〜60%に設定すること、
を特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
〈積層シート〉
本発明の包装袋またはその内部に内容物が充填包装された包装体にあっては、袋は、基材シート(1) /シーラント層(2) の層構成の積層シートから製袋される。内容物の充填は、製袋時に行ってもよく、製袋後に行ってもよい。
【0014】
〈基材シート(1) 〉
基材シート(1) としては、好適には、単層または複層のプラスチックスフィルムが用いられる。プラスチックスフィルムのうち特に重要なものは、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、比較的高融点の無延伸ナイロンフィルム、比較的高融点の無延伸ポリプロピレンフィルムなどである。これらのフィルムは、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのガスバリア性樹脂をコーティングしたものや、これらのガスバリア性樹脂の層をラミネートしたものであってもよい。またプラスチックスフィルムと共に、透明蒸着層、紙、不織布などの層を含んでいてもよい。基材シート(1) のうちのプラスチックスフィルムの厚みは、8〜50μm 程度とすることが多い。
【0015】
〈シーラント層(2) 〉
シーラント層(2) は、袋の内面側(製袋時の熱融着面)となる第1層(2a)と、その第1層(2a)に隣接する第2層(2b)とを含む複層のポリオレフィン系樹脂層から構成される。「第1層(2a)/第2層(2b)」の2層構成のみならず、たとえば、第1層(2a)と同様の第3層(2c)を付加した「第1層(2a)/第2層(2b)/第3層(2c)」とすることもできる。後者の構成は対称となるので、シーラント層(2) を製膜するときのカールが防止されるという利点がある。
【0016】
上記のシーラント層(2) (袋の内面側となる第1層(2a)と、その第1層(2a)に隣接する第2層(2b)とを含む複層のポリオレフィン系樹脂層)は、製造工程上の有利さから、共押出複層フィルムで構成されていることが好ましい。このときの基材シート(1) との積層は、ドライラミネート法によるのが通常である。ただし基材シート(1) とシーラント層(2) との積層は、基材シート(1) 上にアンカーコーティング層を介してシーラント層(2) を構成する各層を共押出したり、基材シート(1) とシーラント層(2) とをサンドイッチ押出ラミネートしたりすることにより行うことも可能である。
【0017】
シーラント層(2) を構成する各層は、より具体的には、次のように設計される。
【0018】
まず、袋の内面側となる第1層(2a)は、リニア低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンド物層とされる。このときのリニア低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンド比は、重量比で、15:85〜50:50、殊に20:80〜45:55、なかんずく25:75〜40:60の範囲に設定することが多い。
【0019】
第1層(2a)に隣接する第2層(2b)は、CPPと称されるプロピレン系重合体(コポリマーやターポリマー)の層とされる。
【0020】
「第1層(2a)/第2層(2b)/第3層(2c)」とするときの第3層(2c)としては、第1層(2a)と同様の層や、リニア低密度ポリエチレン(たとえば密度が 0.945〜0.900 、殊に 0.935〜0.910 であるもの)の層などがあげられる。
【0021】
シーラント層(2) を構成する各層の厚みは、適宜に設定できるものの、第1層(2a)が3〜20μm (殊に5〜15μm )、第2層(2b)が5〜50μm (殊に10〜40μm )で、かつ第1層(2a)よりも第2層(2b)の方が厚くなるようにすることが望ましい。第3層(2c)は任意層であるので必ずしも設けなくてもよいが、もし設けるときは3〜20μm (殊に5〜15μm )とすることが多い。
【0022】
上記において第1層(2a)と第2層(2b)とは、次に述べる両層の界面における剥離強度に大きな影響を与えるので、その樹脂組成や膜厚に充分の留意を払うべきであり、実験的な知見も加味して、最適の設計を選択することが望ましい。
【0023】
〈第1層(2a)−第2層(2b)間の界面の剥離強度〉
そして本発明においては、包装袋または包装体としたときのシール部における第1層(2a)−第2層(2b)間の界面の剥離強度が特定の範囲にあることが要求される。すなわち、その温度25℃および温度90℃における剥離強度をそれぞれP25、P90とするとき、P25が 1.0〜2.5kg/15mm、P90が0.01〜0.2kg/15mmであることが必要である。好ましい範囲は、P25が 1.1〜2.0kg/15mm、P90が0.02〜0.15kg/15mm である。特に好ましい範囲は、P25が 1.2〜1.8kg/15mm、P90が0.03〜0.10kg/15mm である。
【0024】
剥離強度P25が余りに小さいときは、包装体の取り扱い工程においてシール不足となるため、内容物の保存性の点で信頼性を欠く。一方、剥離強度P25を大きくすること自体は特に支障とはならないが、過度に大きくすることは第1層(2a)、第2層(2b)に用いる樹脂の組み合わせが難しくなり、実用的でなくなる。次に、剥離強度P90が余りに小さいときは、加熱または加熱調理時の蒸らし効果が不足するようになる。一方、剥離強度P90が余りに大きいときは、シール強度が過多となって電子レンジ加熱時に袋が膨らみすぎるようになると共に、破袋までの内圧が大きくなって、破袋部が大きくなり、ひどいときには破袋時に内容物の噴き出しや飛び散りを生じることがある。
【0025】
〈包装袋、包装体〉
先にも述べたように、本発明の包装袋またはその内部に内容物が充填包装された包装体にあっては、袋は、基材シート(1) /シーラント層(2) の層構成の積層シートから製袋される。内容物の充填は、製袋時に行ってもよく、製袋後に行ってもよい。
【0026】
本発明は、以下に述べるピロー包装袋またはピロー包装体を対象とする。
【0027】
ピロー包装袋またはピロー包装体は、袋片面の胴部のほぼ中央線に沿って袋の両端縁に向かう胴部合掌張りシール帯(S1)と、その両端縁のうち少なくとも一方の端縁をシールする端縁シール帯(S2)とを有する。
【0028】
自動充填機によるピロー包装の仕方には、(イ)内容物(トレー付きの場合とトレーなしの場合とがある)を巻くようにして背貼り(胴部合掌張り)しながら所定のピッチで横断方向にヒートシールを行い、ついでそのヒートシール帯の中央でカットする横ピロー包装と、(ロ)円筒状に形成したシートに横断方向に底部となるシールを設けつつ、上方から内容物を充填していく縦ピロー包装とがある。そのほか、手詰めまたは半自動式により内容物を充填するときは、開口部を有するピロー包装袋に内容物を充填してから、開口部をヒートシールする方法が採用される。
【0029】
そして上述のピロー包装においては、後述の図1に平面図、図2に底面図を示したように、端縁シール帯(S2)の形状を、それが胴部合掌張りシール帯(S1)と合する部位において袋の胴部側にC字状に湾曲する形状にすると共に、そのC字状の部分における端縁シール帯(S2)の帯巾dを、その端縁シール帯(S2)のそれ以外の部分における帯巾Dよりも小にする。ここで帯巾dとは、C字状の最狭巾部を言うものとする。
【0030】
端縁シール帯(S2)のC字状に湾曲する形状に形成する部位のC字状は、図7に例示したように、種々の変形が可能である。ただし図7においては、煩雑さを避けるため、胴部合掌張りシール帯(S1)の記載を省略してある。
【0031】
そして、本発明においては、上記のC字状の部分における端縁シール帯(S 2 )の最狭巾部の帯巾dを、その端縁シール帯(S 2 )のそれ以外の部分における帯巾Dの30〜60%に設定する。一般に帯巾Dはシールの信頼性の点を考慮して10mm前後とすることが多いので、たとえば帯巾Dが10mmであるときは、帯巾dは3〜6mmに設定される。
【0032】
〈用途、使い方〉
上記構造を有する包装袋または包装体(ピロー包装袋またはピロー包装体)は、水分を含む食品の電子レンジ加熱または加熱調理用食品の包装袋または包装体として特に好適である。この場合、食品をそのまま入れて包装体とする場合のほか、食品をトレーに入れた状態で包装して包装体とすることも多い。なお食品に限らず、他の材料を加熱することもできる。
【0033】
上記のピロー包装体を電子レンジにて加熱または加熱調理するときは、胴部合掌張りシール帯(S1)のある方を下面または上面のいずれにしてもよいが、下面にすることができることが本発明の特長の一つでもある。特に内容物がトレー付きの食品であるときは、胴部合掌張りシール帯(S1)のある方とは反対面が商品としての表面となるので、電子レンジによる加熱または加熱調理をその商品形態通りの姿勢(胴部合掌張りシール帯(S1)のある方が下面となる姿勢)で行うことができる点が、メーカー、販売店、消費者の3者のいずれにとっても有利である。
【0034】
〈作用〉
次に、胴部合掌張りシール帯(S1)とC字状に湾曲した端縁シール帯(S2)とを有するピロー包装体にかかる本発明の作用を説明する。このピロー包装体を電子レンジによる加熱または加熱調理に供した場合、袋は膨らんでくるので、応力は、胴部合掌張りシール帯(S1)の中央部付近と、端縁シール帯(S2), (S2)の中央付近に特に集中することになる。しかるに、端縁シール帯(S2)の胴部合掌張りシール帯(S1)と合する部位においては、袋の内側にC字状に湾曲する形状にしてあると共に、そのC字状の部分における端縁シール帯(S2)の最狭巾部の帯巾dを、端縁シール帯(S2)のそれ以外の部分における帯巾Dの30〜60%に設定してあるので、袋の内側に突出しているC字状の湾曲部に最大の応力がかかり、帯巾dの部分が剥離して破袋する。胴部合掌張りシール帯(S1)の中央部付近にも応力がかかるので、その帯が少し剥離することがあるが、帯巾Dが大であるので、C字状の湾曲部の帯巾dの部分の方が確実に先に破袋することになる。
【0035】
そしてシーラント層(2) の第1層(2a)−第2層(2b)間の界面の剥離強度は、常態では強度が大であるが高温では強度が小に移行する所定の設計値になるようにされているので、包装体を電子レンジによる加熱または加熱調理に供したとき、必要な蒸らし効果を発揮させると同時に、内圧が過度に高くなることを防ぐことができる。
【0036】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。図において、シール帯(胴部合掌張りシール帯(S1)、端縁シール帯(S2))は、散点で示してある。
【0037】
実施例1
図1は本発明の包装袋および包装体の一例を示した平面図である。図2は図1の包装袋または包装体の底面図である。図3は図1の包装袋または包装体を構成する積層シートの層構成の一例を示した拡大断面図である。図4は図1の包装袋または包装体の一例を模式的に示した説明図である。図5は電子レンジによる加熱または加熱調理を行ったときの破袋時の状態を模式的に示した説明図である。
【0038】
インフレーション法により、下記の「第1層(2a)/第2層(2b)」の層構成を有する合計厚み40μm の共押出2層フィルムからなるシーラント層(2) を製膜した。
・第1層(2a):厚み10μm の、密度 0.920のリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)と密度 0.920の低密度ポリエチレン(LDPE)との重量比で0:100、30:70、50:50または70:30のブレンド物層(この順にケース1、2、3、4とする)

・第2層(2b):厚み30μm のプロピレン系重合体層
【0039】
このようにして得た「第1層(2a)/第2層(2b)」の層構成のシーラント層(2) を、その第2層(2b)側が基材シート(1) 側となるように、基材シート(1) の一例としての厚み15μm の二軸延伸ナイロンフィルム(O−Ny)の片面にウレタン系接着剤を用いてドライラミネートした。これにより、基材シート(1) /シーラント層(2) の層構成の積層シートが得られた(図3参照)。
【0040】
この積層シートのシーラント層(2) 側を対向させて15mm巾にヒートシールしたものをサンプルとして用いて、温度25℃における剥離強度P25と、温度90℃における剥離強度P90を測定した。測定はJIS Z0238 に従って行った。すなわち、株式会社島津製作所製のオートグラフを用い、恒温槽の中で、上方のロードセルに連絡するチャックと下方からのチャックとでサンプルを把持し、恒温槽の内温を25℃に3時間、または90℃に3時間保ってから、下方のチャックを下方に向けて300mm/minの速度で引っ張ることにより行った。
【0041】
測定結果を表1に示す。表1中の剥離強度の数値は、試験数n=6の平均値である。
【0042】
【表1】

第1層(2a)の 剥離強度(kg/15mm)
LLDPE:LDPE比 P 25 90
ケース1 0 :100 0.50 0.005
ケース2 30 : 70 1.15 0.02
ケース3 50 : 50 1.45 0.05
ケース4 70 : 30 1.80 0.08
【0043】
上記の結果からで、第1層(2a)についてはケース3が最適であったので、以下においては第1層(2a)についてはケース3のブレンド処方を採用した。
【0044】
第1層(2a)としてケース3の処方を用いて、「基材シート(1) /シーラント層(2) 」、つまり「第1層(2a)/第2層(2b)/基材シート(O-Ny)(1) 」の層構成の積層シートを製造した。ついでこの積層シートを用いて、図1に平面図、図2に底面図を示したように、205mm×130mmのサイズの横ピロー包装袋(包装体)を作製した。この横ピロー包装袋は、袋片面の胴部のほぼ中央線に沿って袋の両端縁に向かう胴部合掌張りシール帯(S1)と、その両端縁をシールする端縁シール帯(S2), (S2)とを有している。なお横ピロー包装は、トレー付きの内容物(食品)を巻くようにして背貼り(胴部合掌張り)しながら所定のピッチで横断方向にヒートシールを行い、ついでそのヒートシール帯の中央でカットすることにより行った。
【0045】
この横ピロー包装袋(包装体)の端縁シール帯(S2)の形状は、シール板の形状を工夫することにより、それが胴部合掌張りシール帯(S1)と合する部位において袋の胴部側にC字状に湾曲する形状にしてある。C字状の部分における端縁シール帯(S2)の帯巾d(C字状の最狭巾部)は5mm、その端縁シール帯(S2)のそれ以外の部分における帯巾Dは10mmに設定した。なお、胴部合掌張りシール帯(S1)の帯巾は15mmに設定した。
【0046】
このようにして得た包装体を冷凍状態にて流通を模した条件で輸送テストを行ったが、破袋や内容物の異状は認めらず、いずれのシール帯も損なわれていないことが確認された。
【0047】
そして、上記で得た多数の包装体のうち任意にサンプリングした20個以上を用い、そのまま電子レンジに入れて加熱したところ、加熱時間の経過と共に水蒸気が発生し、内圧が上昇して包装体が膨れはじめたが、ある圧力にまで達すると、2つの端縁シール帯(S2), (S2)のうちのどちらか一方のC字状湾曲部位のシール部が剥離して破袋を生じ、内圧が円滑かつ自動的に逃がされた。このとき、胴部合掌張りシール帯(S1)の中央部付近の内側線の側には若干の剥離が見られることがあったが、その胴部合掌張りシール帯(S1)のシール性が損なわれる事態は皆無であった。
【0048】
このように、多数の供試サンプルにつき、2つの端縁シール帯(S2), (S2)のうちのどちらか一方のC字状に湾曲部位のシール部からのみ破袋が起こり、他のシール個所から破袋するトラブルは1件も生じなかった上、電子レンジのパワーを種々変更したときも、同様にトラブルは1件も生じなかった。
【0049】
実施例2
図6は本発明の包装袋または包装体を構成する積層シートの層構成の他の一例を示した拡大断面図である。
【0050】
インフレーション法により、下記の「第1層(2a)/第2層(2b)/第3層(2c)」の層構成を有する合計厚み40μm の共押出3層フィルムからなるシーラント層(2) を製膜した。

・第1層(2a):厚み7μm の、密度 0.920のリニア低密度ポリエチレンと密度 0.920の低密度ポリエチレンとの重量比で40:60のブレンド物層(この順にケース1、2、3、4とする)
・第2層(2b):厚み26μm のプロピレン系重合体層
・第3層(2c):厚み7μm
、密度 0.920のリニア低密度ポリエチレン層
【0051】
このようにして得た「第1層(2a)/第2層(2b)/第3層(2c)」の層構成のシーラント層(2) を、その第3層(2c)側が基材シート(1) 側となるように、基材シート(1) の一例としての厚み12μm の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)の片面にウレタン系接着剤を用いてドライラミネートした。これにより、基材シート(1) /シーラント層(2) の層構成の積層シートが得られた。
【0052】
この積層シートのシーラント層(2) 側を対向させて15mm巾にヒートシールしたものをサンプルとして用いて、実施例1の場合と同様にして、温度25℃における剥離強度P25と、温度90℃における剥離強度P90を測定したところ、剥離強度P25は1.50kg/15mm 、剥離強度P90は0.03kg/15mm であった。
【0053】
上記の積層シートを用いて、実施例1と同様にして横ピロー包装袋(包装体)を作製し、流通を模した条件で1ケ月間取り扱う試験、電子レンジ加熱試験を行ったが、実施例1の場合と同様にトラブルは皆無であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明の包装袋または包装体にあっては、基材シート(1) /シーラント層(2) の層構成の積層シートにおいて、シーラント層(2) が、袋の内面側となる第1層(2a)と、その第1層(2a)に隣接する第2層(2b)とを含む複層のポリオレフィン系樹脂層からなり、ここで前記第1層(2a)はリニア低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンド物層からなると共に前記第2層(2b)はプロピレン系重合体層からなり、さらには包装袋または包装体としたときのシール部における第1層(2a)−第2層(2b)間の界面の剥離強度が、その温度25℃および温度90℃における剥離強度をそれぞれP25、P90とするとき、P25が 1.0〜2.5kg/15mm、P90が0.01〜0.2kg/15mmとなるようにしてある。
【0055】
そして、本発明は、袋片面の胴部のほぼ中央線に沿って袋の両端縁に向かう胴部合掌張りシール帯(S 1 )と、その両端縁のうち少なくとも一方の端縁をシールする端縁シール帯(S 2 )とを有するピロー包装袋またはピロー包装体にかかるものであるところ、上記の端縁シール帯(S 2 )の形状を、それが胴部合掌張りシール帯(S 1 )と合する部位において袋の胴部側にC字状に湾曲する形状にすると共に、そのC字状の部分における端縁シール帯(S 2 )の最狭巾部の帯巾dを、その端縁シール帯(S 2 )のそれ以外の部分における帯巾Dの30〜60%に設定するという工夫を講じてある。
【0056】
そのため、流通過程や保管過程においてシール性が損なわれることはなく、しかも包装体を電子レンジによる加熱または加熱調理に供したときには、設計通りに、必要な蒸らし効果を発揮させると同時に、内圧が過度に高くなることを確実に防ぐことができるという基本的な効果が得られるのみならず、端縁シール帯(S 2 )のC字状に湾曲した部分から確実に破袋が起きるので、胴部合掌張りシール帯(S 1 )を下にして電子レンジによる加熱または加熱調理を行うことができるという効果も奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の包装袋および包装体の一例を示した平面図である。
【図2】 図1の包装袋または包装体の底面図である。
【図3】 図1の包装袋または包装体を構成する積層シートの層構成の一例を示した拡大断面図である。
【図4】 図1の包装袋または包装体の一例を模式的に示した説明図である。
【図5】 電子レンジによる加熱または加熱調理を行ったときの破袋時の状態を模式的に示した説明図である。
【図6】 本発明の包装袋または包装体を構成する積層シートの層構成の他の一例を示した拡大断面図である。
【図7】 サイドシール帯(S2)に形成したC字状のシール帯の例を示した説明図である。
【符号の説明】
(1) …基材シート、
(2) …シーラント層、
(2a)…第1層、(2b)…第2層、(2c)…第3層、
(S1)…胴部合掌張りシール帯、
(S2)…端縁シール帯

Claims (3)

  1. 基材シート(1) /シーラント層(2) の層構成の積層シートから製袋された包装袋またはその内部に内容物が充填包装された包装体において、
    前記シーラント層(2) は、袋の内面側となる第1層(2a)と、その第1層(2a)に隣接する第2層(2b)とを含む複層のポリオレフィン系樹脂層からなること、
    ここで、前記第1層(2a)はリニア低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンド物層からなり、前記第2層(2b)はプロピレン系重合体層からなること、
    包装袋または包装体としたときのシール部における第1層(2a)−第2層(2b)間の界面の剥離強度が、その温度25℃および温度90℃における剥離強度をそれぞれP25、P90とするとき、P25が 1.0〜2.5kg/15mm、P90が0.01〜0.2kg/15mmであること、
    前記の包装袋または包装体が、袋片面の胴部のほぼ中央線に沿って袋の両端縁に向かう胴部合掌張りシール帯(S 1 )と、その両端縁のうち少なくとも一方の端縁をシールする端縁シール帯(S 2 )とを有するピロー包装袋またはピロー包装体であること、および、
    前記端縁シール帯(S 2 )の形状を、それが胴部合掌張りシール帯(S 1 )と合する部位において袋の胴部側にC字状に湾曲する形状にすると共に、そのC字状の部分における端縁シール帯(S 2 )の最狭巾部の帯巾dを、その端縁シール帯(S 2 )のそれ以外の部分における帯巾Dの30〜60%に設定すること、
    を特徴とする自動調圧機能を有する包装袋または包装体。
  2. 前記シーラント層(2) が、袋の内面側となる第1層(2a)と、その第1層(2a)に隣接する第2層(2b)とを含む共押出複層フィルムで構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動調圧機能を有する包装袋または包装体。
  3. 電子レンジによる加熱または加熱調理用のトレー付きまたはトレーなしの食品の包装用の包装袋または包装体である請求項1記載の自動調圧機能を有する包装袋または包装体。
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