JP4382958B2 - スラスト動圧軸受装置の製造方法、スラスト動圧軸受装置、およびスラスト動圧軸受装置を備えたスピンドルモータ - Google Patents

スラスト動圧軸受装置の製造方法、スラスト動圧軸受装置、およびスラスト動圧軸受装置を備えたスピンドルモータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の潤滑流体の動圧力によって軸部材と軸受部材とをスラスト方向に相対回転可能に支承させるようにしたスラスト動圧軸受装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気ディスク、ポリゴンミラー、光ディスク等の各種回転体を高速回転支持するための動圧軸受装置に関する提案が種々行われている。この動圧軸受装置のスラスト軸受部においては、例えば図9に示されているように、軸部材1に嵌着・固定されたスラストプレート2の軸方向両側の各動圧面に対して、スラスト軸受部材を構成する軸受スリーブ3の動圧面と、この軸受スリーブ3に固定されたカウンタープレート4の動圧面とが、軸方向に近接するようにして対向配置されており、これらスラストプレート2側の両動圧面と、軸受スリーブ3及びカウンタープレート4の各動圧面との間に形成された狭小隙間内には、空気やオイル等の潤滑流体が注入されている。さらに、記両対向動圧面のうちの少なくとも一方側には、図示を省略した動圧発生用溝等の流体加圧手段が形成されており、回転時における記流体加圧手段のポンピング作用によって潤滑流体が加圧され、それにより生じた潤滑流体の動圧によって、前記軸部材1及びスラスト軸受部材3,4の両部材どうしが、相対的に浮上した状態でスラスト方向の回転支持が行われるようになっている。
【0003】
このようなスラスト動圧軸受装置に用いられている前記カウンタープレート4は、例えば、上述した軸受部材としての軸受スリーブ3の開口端部分に円筒状に設けられたプレート嵌合部3aの内方側に挿入されている。記プレート嵌合部3aの内周壁面からは、半径方向中心側に向かってプレート支持面3bが段差状に突出するように形成されており、そのプレート支持面3bに対して、記カウンタープレート4の外周部分が軸方向に当接させられることによって軸方向の位置決めが行われている。そして、このカウンタープレート4を最終的に固定する手段としては、記プレート嵌合部の先端部分に設けられたカシメ部や、図示を省略したネジ手段等が用いられ、記カウンタープレート4の軸方向外側面(図9の下側面)の外周側が、記各固定手段の押圧・加圧力によって固定されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような動圧軸受装置では、スラスト動圧軸受部を構成しているスラストプレート2とカウンタープレート4との間の隙間寸法が、良好な軸受特性を得る上で極めて重要な要素となっている。例えば、前述したカウンタープレート4の固定作業におけるカシメやネジ等の押圧・加圧力によって、カウンタープレート4にサブミクロン程度の変形が生じるだけで、スラスト動圧軸受部の動圧特性に変動を来してしまい、製品としての機能が損なわれて、不良品となることがある。つまり、上述したカウンタープレート4の固定作業を、どのようにして行うかが、特に量産を行う上で非常に重大な問題となっている。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成で、カウンタープレートを変形させることなく高精度に固定させることができるようにしたスラスト動圧軸受装置、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
記目的を達成するために請求項1記載のスラスト動圧軸受装置の製造方法では、軸受部材の開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するようにしてプレート支持面を形成するとともに、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分をプレート嵌合部としておき、記軸受部材におけるプレート嵌合部の内方側にカウンタープレートを挿入し、前記プレート支持面に対して記カウンタープレートを当接させることによって該カウンタープレートを軸方向に位置決めした後、前記プレート嵌合部の軸方向先端部分をカシメ部として、該カシメ部をカウンタープレート側に向かって押圧変形させ、そのカシメ部の変形加圧力によって記カウンタープレートを固定する工程を有し、記軸受部材側に固定したカウンタープレートと、軸部材側に固定したスラストプレートとを、相対回転可能な状態で軸方向に近接させて対向配置し、これらカウンタープレート及びスラストプレートの少なくとも一方側に設けた動圧発生手段によって、これら両部材どうしの近接対向隙間内の潤滑流体に、前記軸部材及び軸受部材の相対回転によって動圧を発生させ、その潤滑流体に発生した動圧によって前記軸部材と軸受部材とを軸方向に相対浮上させながらスラスト方向に支承するようにしたスラスト動圧軸受装置の製造方法において、前記カシメ部の内周壁面の少なくとも一部を、カウンタープレートの外周面から半径方向外方側に離間するように形成し、前記軸受部材に対してカウンタープレートを固定する工程を行うにあたって、前記軸受部材に設けたプレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する逃溝を凹設しておき、前記カシメ部の押圧変形の方向を、記カウンタープレートの軸方向外側表面が前記プレート嵌合部の内周壁面に接触する位置から、前記逃溝の半径方向内側の縁部に向かう釣合方向に設定し、当該カシメ部の押圧変形時に記カウンタープレートに対して付加されるモーメントを相殺するようにして記カウンタープレートの固定を行うようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載のスラスト動圧軸受装置の製造方法では、軸受部材の開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するようにしてプレート支持面を形成するとともに、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分をプレート嵌合部としておき、前記軸受部材におけるプレート嵌合部の内方側にカウンタープレートを挿入し、前記プレート支持面に対して前記カウンタープレートを当接させることによって該カウンタープレートを軸方向に位置決めした後、前記プレート嵌合部の軸方向先端部分をカシメ部として、該カシメ部をカウンタープレート側に向かって押圧変形させ、そのカシメ部の変形加圧力によって前記カウンタープレートを固定する工程を有し、前記軸受部材側に固定したカウンタープレートと、軸部材側に固定したスラストプレートとを、相対回転可能な状態で軸方向に近接させて対向配置し、これらカウンタープレート及びスラストプレートの少なくとも一方側に設けた動圧発生手段によって、これら両部材どうしの近接対向隙間内の潤滑流体に、前記軸部材及び軸受部材の相対回転によって動圧を発生させ、その潤滑流体に発生した動圧によって前記軸部材と軸受部材とを軸方向に相対浮上させながらスラスト方向に支承するようにしたスラスト動圧軸受装置の製造方法において、前記カシメ部を、前記カウンタープレートの厚さ方向の途中位置から軸方向外方向側に向かって突出する部分により形成し、前記軸受部材に対してカウンタープレートを固定する工程を行うにあたって、前記軸受部材に設けたプレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する逃溝を凹設しておき、前記カシメ部の押圧変形の方向を、前記カウンタープレートの軸方向外側表面が前記プレート嵌合部の内周壁面に接触する位置から、前記逃溝の半径方向内側の縁部に向かう釣合方向に設定し、当該カシメ部の押圧変形時に前記カウンタープレートに対して付加されるモーメントを相殺するようにして前記カウンタープレートの固定を行うようにしたことを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3記載のスラスト動圧軸受装置では、開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するプレート支持面と、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分からなるプレート嵌合部と、を有する軸受部材と、前記プレート嵌合部の内方側に位置し、前記プレート支持面に当接するカウンタープレートと、前記軸受部材の内周に配置され、スラストプレートが固定された軸部材と、前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの間の隙間内に充填された潤滑流体と、を備えたスラスト動圧軸受装置であって、前記スラスト動圧軸受部は、前記カウンタープレート及び前記カウンタープレートと軸方向に対向する前記スラストプレートの少なくとも一方側に、スラスト動圧発生溝が設けられ、前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの近接対向隙間部分に構成されており、前記プレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する凹状の逃溝が設けられ、前記プレート嵌合部の軸方向先端部分にカシメ部が設けられ、該カシメ部の内周壁面の少なくとも一部が、前記カウンタープレートの外周面から半径方向外方側に離間するように設けられ、前記プレート支持面と前記カウンタープレートの軸方向内側表面とを当接させた状態にて、前記カシメ部を半径方向内方に押圧変形させ、前記カウンタープレートが前記軸受部材に固定されていることを特徴とする。
【0009】
さらにまた、請求項4記載のスラスト動圧軸受装置では、開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するプレート支持面と、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分からなるプレート嵌合部と、を有する軸受部材と、前記プレート嵌合部の内方側に位置し、前記プレート支持面に当接するカウンタープレートと、前記軸受部材の内周に配置され、スラストプレートが固定された軸部材と、前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの間の隙間内に充填された潤滑流体と、を備えたスラスト動圧軸受装置であって、前記スラスト動圧軸受部は、前記カウンタープレート及び前記カウンタープレートと軸方向に対向する前記スラストプレートの少なくとも一方側に、スラスト動圧発生溝が設けられ、前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの近接対向隙間部分に構成されており、前記プレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する凹状の逃溝が設けられ、前記プレート嵌合部の軸方向先端部分にカシメ部が設けられ、該カシメ部が、前記カウンタープレートの厚さ方向の途中位置から軸方向外方向側に向かって突出する部分に設けられ、前記プレート支持面と前記カウンタープレートの軸方向内側表面とを当接させた状態にて、前記カシメ部を半径方向内方に押圧変形させ、前記カウンタープレートが前記軸受部材に固定されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5記載のスラスト動圧軸受装置では、前記請求項3または4に記載のスラスト動圧軸受装置において、前記軸受部材におけるカシメ部の外周面に、プレート嵌合部の外周面より半径方向内方側に窪ませた段部が形成され、その段部の半径方向内方側に前記カシメ部が配置されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項6記載のスラスト動圧軸受装置では、前記請求項3乃至5のいずれかに記載のスラスト動圧軸受装置において、前記カシメ部の外周面が、当該カシメ部の外径が軸方向外方側に向かって連続的に縮小する傾斜面に形成されていることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項7記載のスラスト動圧軸受装置では、前記請求項6記載のスラスト動圧軸受装置において、前記カシメ部の外周側傾斜面によって、当該カシメ部の軸方向先端部分が断面尖塔状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8記載のスラスト動圧軸受装置では、前記請求項3乃至7のいずれかに記載のスラスト動圧軸受装置において、前記カシメ部が、前記カウンタープレートの軸方向外側表面から外方向側に向かって突出する部分の全長により形成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項9記載のスピンドルモータでは、前記軸受部材及び前記軸部材の一方を備えたステータ組と、前記軸受部材及び前記軸部材の他方を備えたロータ組と、請求項3乃至8のいずれかに記載のスラスト動圧軸受装置と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
このような構成を有する請求項1及び請求項3に記載の発明によれば、カシメ部の先端部分を釣合方向に押圧して変形させることによって、当該カシメ押圧力Fの半径方向分力Fx及び軸方向分力Fyの各々による変形支点P1に関する反対方向の回転モーメントMx,Myどうしが、互いに等しくなって打ち消し合うこととなり、その結果、カウンタープレートに対する変形作用が実質的になくなって、カウンタープレートは、ほとんど変形を生じることなく高精度に固定されるようになっている。
また、カシメ部をスラストプレートから離しておいても、カシメ部の変形が容易に行われることとなり、生産性の向上が図られる。
【0016】
さらに、請求項2及び請求項4に記載の発明によれば、カウンタープレートの厚さ方向の途中位置から外方向側に向かって突出部分をカシメ部としておけば、カシメ部の途中位置をカウンタープレート側に当接させることとなるため、その当接点の位置が確認し易くなり、押圧方向を精度良く設定することが可能となる。
【0017】
【0018】
【0019】
請求項5記載の発明によれば、カシメ部の外周面を段差状に窪ませて薄肉状に形成しておけば、カシメ部の変形が容易に効率的に行われることとなることから、生産性の向上が図られる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、カシメ部の外周面を傾斜面に形成して当該カシメ部の先端側を薄肉状に形成しておけば、カシメ部の変形が容易に効率的に行われることとなることから、生産性の向上が図られる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、カシメ部を尖塔形状に形成することによって先端側を極薄肉状に形成しておけば、カシメ部の変形が更に容易に効率的に行われることとなることから、生産性の向上が一層図られる。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、カウンタープレートの厚さ方向の外側表面から外方向側に向かって突出する部分の全長をカシメ部としておけば、カシメ部の長いスパンを利用して強固な固定力が得られる。
【0023】
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、それに先立って、本発明を適用するハードディスク駆動装置(HDD)の全体構造を図面に基づいて説明しておく。
【0025】
図8に示されている軸回転のHDDスピンドルモータの全体は、固定部材としてのステータ組10と、そのステータ組10に対して図示上側から組み付けられた回転部材としてのロータ組20とから構成されている。このうちステータ組10は、図示を省略した固定基台側にネジ止めされる固定フレーム11を有している。この固定フレーム11は、軽量化を図るためにアルミ系金属材料から形成されているが、当該固定フレーム11の略中央部分に立設するようにして形成された環状の軸受ホルダー12の内周側には、中空円筒状に形成された固定軸受部材としての軸受スリーブ13が、圧入又は焼嵌めによって記軸受ホルダー12に接合されている。この軸受スリーブ13は、小径の孔加工等を容易化するためにリン青銅などの銅系材料から形成されている。
【0026】
また、前記軸受ホルダー12の外周取付面には、電磁鋼板の積層体からなるステータコア14が嵌着されている。このステータコア14に設けられた各突極部には、駆動コイル15がそれぞれ巻回されている。
【0027】
さらに、記軸受スリーブ13に設けられた中心孔内には、上述したロータ組20を構成する回転軸21が回転自在に挿入されている。すなわち、記軸受スリーブ13の内周壁部に形成された動圧面は、記回転軸21の外周面に形成された動圧面に対して半径方向に対向するように配置されており、その微小隙間部分にラジアル動圧軸受部RBが構成されている。より詳細には、記ラジアル動圧軸受部RBにおける軸受スリーブ13側の動圧面と、回転軸21側の動圧面とは、数μmの微少隙間を介して周状に対向配置されており、その微少隙間からなる軸受空間内に、オイルや磁性流体やエアー等の潤滑流体が軸方向に連続するように注入又は介在されている。
【0028】
さらに、記軸受スリーブ13及び回転軸21の両動圧面の少なくとも一方側には、図示を省略した例えばへリングボーン形状のラジアル動圧発生用溝が、軸方向に2ブロックに分けられて環状に凹設されており、回転時に、当該ラジアル動圧発生用溝のポンピング作用により潤滑流体が加圧されて動圧を生じ、その潤滑流体の動圧によって、記回転軸21とともに後述する回転ハブ22がラジアル方向に、記軸受スリーブ13に対して非接触状態で軸支持される構成になされている。
【0029】
また、記各ラジアル動圧軸受部RBを構成している軸受空間の図示上端部分に、毛細管シール部RSが配置されている。この毛細管シール部RSは、記回転軸21又は軸受スリーブ13側に形成された傾斜面によって、隙間を軸受外方側に向かって徐々に拡大したものであって、例えば20μmから300μmに設定されている。この毛細管シール部RSには、モータの回転・停止のいずれの場合にも記潤滑流体の液面が位置するように構成されている。
【0030】
さらに、記回転軸21とともにロータ組20を構成している回転ハブ22は、図示を省略した磁気ディスク等の記録媒体を搭載するように、アルミ系金属からなる略カップ状部材からなり、当該回転ハブ22の中心部分に設けられた接合穴22dが、記回転軸21の図示上端部分に対して、圧入又は焼嵌めによって一体的に接合されている。
【0031】
記回転ハブ22は、記録媒体ディスクを外周部に搭載する略円筒状の胴部22aを有しているとともに、この胴部22aの図示下側の内周壁面側に、バックヨーク22bを介して環状駆動マグネット22cが取り付けられている。この環状駆動マグネット22cは、前述したステータコア14の外周側端面に対して環状に対向するように近接配置されている。
【0032】
一方、前記回転軸21の図示下端側の先端部分には、円盤状のスラストプレート23が固着されている。このスラストプレート23は、上述した軸受スリーブ13の図示下端側の中心部分に凹設された円筒状の窪み部内に収容されるようにして配置されていて、その軸受スリーブ13の窪み部内において、記スラストプレート23の図示上側面に設けられた動圧面が、軸受スリーブ13に設けられた動圧面に対して、軸方向に近接するように対向配置されている。そして、その両対向動圧面のうち少なくとも一方側には、通常のようにして動圧発生溝が形成されていて、それらスラストプレート23及び軸受スリーブ13の両動圧面どうしの対向隙間部分に、上側のスラスト動圧軸受部SBaが形成されている。
【0033】
さらにまた、記スラストプレート23の図示下側の動圧面に近接するようにして、比較的大径の円盤状部材からなるカウンタープレート16が配置されている。このカウンタープレート16は、記軸受スリーブ13の下端側開口部分を閉塞するように固着されており、当該カウンタープレート16の図示上面側に設けられた動圧面と、上述したスラストプレート23の図示下側の動圧面との間の近接対向隙間部分にも、通常のように動圧発生溝が形成されていることによって、下側のスラスト動圧軸受部SBbが形成されている。
【0034】
上述したように軸方向に隣接して配置された一組のスラスト動圧軸受部SBa,SBbを構成しているスラストプレート23側の両動圧面と、それに近接対向する軸受スリーブ13及びカウンタープレート16側の両動圧面とは、それぞれ数μmの微少隙間を介して軸方向に対向配置されているとともに、その微少隙間からなる軸受空間内に、オイルや磁性流体やエアー等の潤滑流体が、前記スラストプレート23の外周側通路を介して軸方向に連続するように注入又は介在されて設けられている。
【0035】
さらに、記スラストプレート23の動圧面と、軸受スリーブ13及びカウンタープレート16の動圧面との少なくとも一方側には、図示を省略したへリングボーン形状のスラスト動圧発生用溝が、例えば半径方向に2ブロックに分けられて環状に凹設されており、回転時に、当該スラスト動圧発生用溝のポンピング作用により潤滑流体が加圧されて動圧を生じ、その潤滑流体の動圧によって、上述した回転軸21及び回転ハブ22が、スラスト方向に浮上した非接触の状態で軸支持されるように構成されている。
【0036】
次に、上述した軸受スリーブ13に対して、カウンタープレート16を固定する工程に対して、本発明を適用した実施形態について説明する。まず、図1では、上述した図8と上下を逆にして示されているが、本図のように、軸受部材としての軸受スリーブ13の開口端部分は、略円筒状のプレート嵌合部13aに形成されていて、そのプレート嵌合部13aの半径方向内側部分に、記カウンタープレート16の外周径とほぼ同径のプレート挿入孔が画成されている。また、記プレート嵌合部13aの軸方向奥側(図1下側)部分には、当該プレート嵌合部13aの内周壁面13bから半径方向中心側に向かって段差状に突出するプレート支持面13dが設けられている。
【0037】
そして、記プレート嵌合部13aの挿入孔を通して軸受スリーブ13内にカウンタープレート16が装着されることとなるが、そのカウンタープレート16は、当該カウンタープレート16の外周面が、記プレート嵌合部13aの内周壁面13bに接触することによって径方向に位置決めされながら挿入されるとともに、記カウンタープレート16の奥側端面(図示下端面)が、上述したプレート支持面13dに対して軸方向に当接することによって軸方向に位置決めされるようになっている。
【0038】
また、記プレート支持面13dにおける最外周部分に相当する一部分には、円周方向に延在する逃溝13eが、横断面略円弧状をなすようにして凹設されている。この逃溝13e内には、記カウンタープレート16を固定するための接着剤が適宜に注入される。
【0039】
このとき、記プレート嵌合部13aは、プレート支持面13dから軸方向外方向(図1中の上方向)側に向かって突出するように形成されているが、このプレート嵌合部13aの高さh、すなわち記プレート支持面13dから先端部までの軸方向長さhは、記カウンタープレート16の厚さtよりもやや長く形成されており、記カウンタープレート16の厚さ方向における外側表面(図1中の上側表面)16aから軸方向外方向(図1中の上方向)側に突出している当該プレート嵌合部13aの先端部分13fは、記カウンタープレート16を固定するためのカシメ部になされている。
【0040】
また、記軸受スリーブ13におけるカシメ部13fの軸方向全長と、このカシメ部13fに連続するプレート嵌合部13aの一部にかけては、外周面側から切り欠くようにして段部13gが形成されており、その段部13gが設けられている分だけ、記カシメ部13fは薄肉状に形成されている。これは、当該薄肉状のカシメ部13fによって、カシメ固定時における押圧変形が容易に行い得るようにするためのものである。
【0041】
そして、記カウンタープレート16を軸受部材としての軸受スリーブ13に固定するにあたっては、前述したように、まず、記プレート嵌合部13aの内周壁面13bに対してカウンタープレート16の外周面を接触させるようにして、当該カウンタープレート16を記プレート嵌合部13aの内側に挿入していき、記カウンタープレート16の外周部分をプレート支持面13dに軸方向に当接させる。その後、前記プレート嵌合部13aの先端部分のカシメ部13fを、図示を省略したカシメ治具を用いてカウンタープレート16側に向かって押圧することによって、図2のようにカシメ変形させ、それにより得られる記カシメ部13fの変形加圧力によって、記カウンタープレート16の外周部分を固定する。
【0042】
このような軸受スリーブ13に対してカウンタープレート16をカシメ固定する工程に際して、記カシメ部13fの変形を行わせる押圧方向を、以下のような釣合方向に設定している。すなわち、この釣合方向は、前記カウンタープレート16の軸方向外表面(図1の上面)16aが、上述したプレート嵌合部13aの内周壁面13bに当接する位置P1と、前記プレート支持面13dに設けられた逃溝13eの両対向縁部のうちの内周側の縁部に相当する位置P2とを結ぶ方向であって、記位置P1から位置P2に向かう方向にカシメ部13fを押圧することによって、前記カウンタープレート16をカシメ固定すれば、記カウンタープレート16に付加されるカシメ押圧力Fによる変形が、以下のように防止される。
【0043】
まず、記カシメ部13fの変形は、上述した図2から特に明らかなように、前記位置P1、すなわちカウンタープレート16の軸方向外表面(図1の上面)16aがプレート嵌合部13aの内周壁面13bに当接する位置P1を支点として行われるが、その変形支点P1に関して、前記カウンタープレート16に付加されるカシメ押圧力Fを、半径方向と軸方向に分解してみると、図3のようになる。
【0044】
つまり、前記カウンタープレート16に付加されるカシメ押圧力Fは、半径方向分力Fxと、軸方向分力Fyとに分解されるが、カシメ押圧力Fが軸方向となす角度をθとすると、Fx=FsinθFy=Fcosθとなる。そして、これらの各分力Fx,Fyによってカウンタープレート16に加えられるモーメントMx,Myは、カウンタープレート16の厚さt、及び逃溝13eの溝幅bを用いて表すと、Mx=Fx・t(図3右側領域において左回モーメント)
My=Fx・b(図3右側領域において右回モーメント)
となる。そして、これらの両モーメントMx,Myが等しくなるときに、記左右のモーメントMx,Myどうしが打ち消し合って、カウンタープレート16に歪みが生じなくなることとなる。
【0045】
そこで、Mx=Myとおくと、Fx・t=Fx・bであるから、t・Fsinθ=b・Fcosθとなるから、これを変形して、Fsinθ/Fcosθ=b/tとなる。すなわち、tanθ=b/tが成り立つ方向、つまり、上述した釣合方向にカシメ押圧方向を設定しておくことによってMx=Myとなり、カウンタープレート16に対するカシメ変形が防止される。
【0046】
一方、上述したように、カシメ部13fの肉厚は、薄肉状になされているが、そのカシメ部13fの肉厚は、上述したカシメ押圧力Fに耐えうる厚さを限度として設定されている。具体的には、記カシメ押圧力Fがカシメ部13fに対して作用する面積をSとしたとき、その単位面積当たりのカシメ応力σ1は、σ1=F/Sとなる。
【0047】
このとき、図3に示されているように、記カウンタープレート16及びカシメ部13fの各外径を、それぞれd1及びd2とすると、上述したカシメ押圧力Fがカシメ部13fに対して作用する面積Sは、S=π{(d2/2)2−(d1/2)2}
である。
【0048】
ここで、記カシメ応力σ1は、材料の最大弾性限度応力σ2を越えないように、σ1<σ2に設定する必要がある。これに上式を代入すると、d2>4[{F/(π・σ2)}+(d1/2)2]
となる。従って、本実施形態では、記カシメ部13fの外径d2が、上式を満足するように設定されている。
【0049】
このように、本実施形態にかかる製造方法によれば、カシメ部13fの先端部分を釣合方向に押圧して変形させた際に、そのカシメ部13fの変形の支点P1、すなわちカウンタープレート16の厚さ方向の外側表面16aがプレート嵌合部13aの内周壁面13bに当接する点P1に関して、記カシメ押圧力Fの半径方向分力Fx及び軸方向分力Fyは、回転モーメントMx,Myをそれぞれ発生させることとなるが、これらの両回転モーメントMx,Myどうしが、互いに等しくなって打ち消し合うように設定されていることから、記カウンタープレート16に対する変形作用は実質的になくなり、その結果、カウンタープレート16にほとんど変形を生じることなく高精度な固定作業が行われるようになっている。
【0050】
また、本実施形態では、カシメ部13fの外周面を段差状に窪ませて薄肉状に形成して、当該カシメ部13fの変形が容易に行われるようにしているので、カシメ固定の工程を短時間で効率的に行うことが可能となっており、生産性の向上が図られる。加えて、記段差を設けることによって、軸受スリーブ13の外周部の変形が確実に防止されることとなることから、その軸受スリーブ13の外周部を、前述した軸受ホルダー12に対して圧入等を用いて接合することが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態におけるカシメ部13fは、カウンタープレート16の厚さ方向の外側表面16aから軸方向外方向側に向かって突出する全長部分から構成されているので、このカシメ部13fの長いスパンを利用して強固な固定力が得られるようになっている。
【0052】
一方、図4に示されている実施形態は、軸受スリーブ13のプレート支持面13dの半径方向ほぼ中央部分に逃溝13eを設けたものであって、その逃溝13eよりも半径方向外方部分にプレート支持面13d’を延設している。このように、逃溝13eの半径方向外方側にプレート支持面13d’を設けておけば、そのプレート支持面13d’上に、前記カウンタープレート16のカシメ固定される外周部分が支持されることとなるが、記プレート支持面13d’は、カシメ時には、ウンタープレート16を介して押し下げられるように変形される一方、カシメ終了時には、カシメ押圧力Fが前述したθ方向に作用するため、いずれにしても記ウンタープレート16に歪みを生じることはない。
【0053】
さらに、図5中の(a),(b)及び(c)は、カシメ部13fの外周面を傾斜面13f1に形成して、当該カシメ部13fの先端側を薄肉状に形成し、それによって、カシメ部13fの変形を容易化したものである。このような実施形態によれば、カシメ固定の変形工程を更に短時間で行うことが可能となり、生産性の向上が図られることとなる。
【0054】
このとき、記カシメ部13fの外周傾斜面13f1は、(a)のように段差を有する切欠形状にしてもよいし、(b),(c)のように段差を設けないで形成するようにしてもよい。特に、同図中の(c)は、カシメ部13fを尖塔形状に形成して先端側を極薄肉状に形成したものであり、このような構成を採用することによって、カシメ部13fの変形が一層容易に行われる。
【0055】
さらにまた、図6中の(a),(b)及び(c)は、カシメ部13fをスラストプレート16から離して配置するとともに、カウンタープレート16の厚さ方向の途中位置から軸方向外方向側に向かって突出部分をカシメ部13fとしたものである。このような実施形態を採用した場合も、カシメ部13fの変形が容易に行われることによってカシメ固定の変形工程を短時間で行うことが可能となるとともに、カシメ部13fの途中位置をカウンタープレート側に当接させることとなることから、その当接点の位置が確認し易くなって、カシメ押圧方向を精度良く調整することが可能となる。
【0056】
このとき、記カシメ部13fの外周傾斜面13f1は、(a)のように段差を有する切欠形状にしてもよいし、(b),(c)のように段差を設けないで形成するようにしてもよい。特に、同図中の(c)は、カシメ部13fを尖塔形状に形成して先端側を極薄肉状に形成することによって、カシメ部13fの変形が一層容易に行われるようにしたものである。
【0057】
さらにまた、図7中の(a),(b)及び(c)は、カシメ部13fの根本部分から連続するプレート嵌合部13aの一部分を、外周側から切り欠くようにして薄肉状に形成したものであって、カシメ部13fの変形作用を、記プレート嵌合部13aの薄肉部分に吸収させることにより、プレート嵌合部13aの本体部分の変形を確実に防止するようにしたものである。
【0058】
このときの外周側からの切欠部分は、(a),(c)のような段差形状にしてもよいし、(b)のような斜面形状にしてもよい。また特に、同図中の(c)は、カシメ部13fを尖塔形状に形成して先端側を極薄肉状に形成したことによって、カシメ部13fの変形が一層容易に行われるようにしたものである。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を異体的に説明したが、本発明は記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で程々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0060】
例えば、上述した実施形態における逃溝13eは、全周にわたって円周方向に延在するように設けているが、短い長さで接線方向に延びるようにして、全周の一部分に形成することも可能である。
【0061】
例えば、本発明は、上述した実施形態のようなHDD用モータ以外に用いられる動圧軸受装置、例えば、ポリゴンミラー駆動用モータやCD−ROM駆動用モータに用いられる動圧軸受装置に対しても同様に適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように発明は、カシメ部の先端部分を釣合方向に押圧変形させることによって、カウンタープレートに対する半径方向分力と軸方向分力の各々による回転モーメントどうしを互いに等しくして打ち消し合うように設定し、カウンタープレートに対する変形作用を実質的になくしてカウンタープレートに変形を生じさせることなく高精度な固定作業を効率的に行い得るようにしたものであるから、簡易な構成で、スラスト動圧軸受装置の動圧特性及び品質を向上させつつ、生産性を高めることができる。
【0063】
また、本発明は、カシメ部の外周面を段差状に窪ませて薄肉状に形成し、カシメ部の変形を容易化して生産性の向上を図るようにしたものであるから、上述した本発明にかかる効果を更に向上させることができる。
【0064】
【0065】
さらにまた、本発明は、カシメ部の外周面を傾斜面に形成して先端側を薄肉状に形成し、カシメ部の変形が容易に行われるように構成したものであるから、特に生産性の向上を図ることが可能となり、上述した本発明にかかる効果を更に向上させることができる。
【0066】
また、本発明は、カシメ部を尖塔形状に形成して先端側を極薄肉状に形成し、カシメ部の変形がより容易に行われるように構成したものであるから、特に生産性の向上を更に図ることが可能となり、上述した本発明にかかる効果を大幅に向上させることができる。
【0067】
さらに、本発明は、カシメ部をスラストプレートから離して、カシメ部の変形が容易に行われるように構成したものであるから、特に生産性の向上を更に図ることが可能となり、上述した本発明にかかる効果を更に向上させることができる。
【0068】
さらにまた、本発明は、カウンタープレートの厚さ方向の外側表面から外方向側に向かって突出する部分をカシメ部とし、カシメ部の全長を利用して強固な固定力が得られるように構成したものであるから、上述した本発明にかかる効果を一層確実に得ることができる。
【0069】
また、本発明は、カウンタープレートの厚さ方向の途中位置から外方向側に向かって突出部分をカシメ部として、カシメ部の途中位置をカウンタープレート側に当接させ、その当接点の位置を確認し易くして加圧方向を精度良く調整することを可能としたものであるから、上述した本発明にかかる効果を更に一層確実に得ることができる。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態により製造したスラスト動圧軸受部分を拡大して表した部分拡大横断面説明図である。
【図2】 カシメ部を押圧変形させた状態を表した図1に相当する部分拡大横断面説明図である。
【図3】 カシメ部への押圧作用力によるモーメント関係を表した軸受部材の概略横断面図である。
【図4】 本発明の他の実施形態により製造したスラスト動圧軸受部分を表した図1相当の部分拡大横断面説明図である。
【図5】 本発明の更に他の実施形態により製造したスラスト動圧軸受部分を表した図1相当の部分拡大横断面説明図である。
【図6】 本発明の更に他の実施形態により製造したスラスト動圧軸受部分を表した図1相当の部分拡大横断面説明図である。
【図7】 本発明の更に他の実施形態により製造したスラスト動圧軸受部分を表した図1相当の部分拡大横断面説明図である。
【図8】 本発明を適用した軸回転型の動圧軸受装置を備えたハードディスク駆動装置(HDD)の全体構造例を表した縦断面説明図である。
【図9】 従来における動圧軸受装置のスラスト動圧軸受部分を拡大して表した半断面説明図である。
【符号の説明】
13 軸受スリーブ(軸受部材)
13a プレート嵌合部
13b プレート嵌合部の内周壁面
13d,13d’ プレート支持面
13e 逃溝
13f カシメ部
13g 段部
16 カウンタープレート
16a カウンタープレート外側表面
F カシメ押圧力
Fx 半径方向分力
Fy 軸方向分力
Mx,My 回転モーメント

Claims (9)

  1. 軸受部材の開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するようにしてプレート支持面を形成するとともに、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分をプレート嵌合部としておき、
    記軸受部材におけるプレート嵌合部の内方側にカウンタープレートを挿入し、
    前記プレート支持面に対して記カウンタープレートを当接させることによって該カウンタープレートを軸方向に位置決めした後、
    前記プレート嵌合部の軸方向先端部分をカシメ部として、該カシメ部をカウンタープレート側に向かって押圧変形させ、そのカシメ部の変形加圧力によって記カウンタープレートを固定する工程を有し、
    記軸受部材側に固定したカウンタープレートと、軸部材側に固定したスラストプレートとを、相対回転可能な状態で軸方向に近接させて対向配置し、これらカウンタープレート及びスラストプレートの少なくとも一方側に設けた動圧発生手段によって、これら両部材どうしの近接対向隙間内の潤滑流体に、前記軸部材及び軸受部材の相対回転によって動圧を発生させ、その潤滑流体に発生した動圧によって前記軸部材と軸受部材とを軸方向に相対浮上させながらスラスト方向に支承するようにしたスラスト動圧軸受装置の製造方法において、
    前記カシメ部の内周壁面の少なくとも一部を、カウンタープレートの外周面から半径方向外方側に離間するように形成し、
    記軸受部材に対してカウンタープレートを固定する工程を行うにあたって、前記軸受部材に設けたプレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する逃溝を凹設しておき、
    前記カシメ部の押圧変形の方向を、記カウンタープレートの軸方向外側表面が前記プレート嵌合部の内周壁面に接触する位置から、前記逃溝の半径方向内側の縁部に向かう釣合方向に設定し、当該カシメ部の押圧変形時に記カウンタープレートに対して付加されるモーメントを相殺するようにして記カウンタープレートの固定を行うようにしたことを特徴とするスラスト動圧軸受装置の製造方法。
  2. 軸受部材の開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するようにしてプレート支持面を形成するとともに、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分をプレート嵌合部としておき、
    前記軸受部材におけるプレート嵌合部の内方側にカウンタープレートを挿入し、
    前記プレート支持面に対して前記カウンタープレートを当接させることによって該カウンタープレートを軸方向に位置決めした後、
    前記プレート嵌合部の軸方向先端部分をカシメ部として、該カシメ部をカウンタープレート側に向かって押圧変形させ、そのカシメ部の変形加圧力によって前記カウンタープレートを固定する工程を有し、
    前記軸受部材側に固定したカウンタープレートと、軸部材側に固定したスラストプレートとを、相対回転可能な状態で軸方向に近接させて対向配置し、これらカウンタープレート及びスラストプレートの少なくとも一方側に設けた動圧発生手段によって、これら両部材どうしの近接対向隙間内の潤滑流体に、前記軸部材及び軸受部材の相対回転によって動圧を発生させ、その潤滑流体に発生した動圧によって前記軸部材と軸受部材とを軸方向に相対浮上させながらスラスト方向に支承するようにしたスラスト動圧軸受装置の製造方法において、
    前記カシメ部を、前記カウンタープレートの厚さ方向の途中位置から軸方向外方向側に向かって突出する部分により形成し、
    前記軸受部材に対してカウンタープレートを固定する工程を行うにあたって、前記軸受部材に設けたプレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する逃溝を凹設しておき、
    前記カシメ部の押圧変形の方向を、前記カウンタープレートの軸方向外側表面が前記プレート嵌合部の内周壁面に接触する位置から、前記逃溝の半径方向内側の縁部に向かう釣合方向に設定し、当該カシメ部の押圧変形時に前記カウンタープレートに対して付加されるモーメントを相殺するようにして前記カウンタープレートの固定を行うようにしたことを特徴とするスラスト動圧軸受装置の製造方法。
  3. 開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するプレート支持面と、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分からなるプレート嵌合部と、を有する軸受部材と、
    前記プレート嵌合部の内方側に位置し、前記プレート支持面に当接するカウンタープレートと、
    前記軸受部材の内周に配置され、スラストプレートが固定された軸部材と、
    前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの間の隙間内に充填された潤滑流体と、
    を備えたスラスト動圧軸受装置であって、
    前記スラスト動圧軸受部は、前記カウンタープレート及び前記カウンタープレートと軸方向に対向する前記スラストプレートの少なくとも一方側に、スラスト動圧発生溝が設けられ、前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの近接対向隙間部分に構成されており、
    前記プレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する凹状の逃溝が設けられ、
    前記プレート嵌合部の軸方向先端部分にカシメ部が設けられ、該カシメ部の内周壁面の少なくとも一部が、前記カウンタープレートの外周面から半径方向外方側に離間するように設けられ、
    前記プレート支持面と前記カウンタープレートの軸方向内側表面とを当接させた状態にて、前記カシメ部を半径方向内方に押圧変形させ、前記カウンタープレートが前記軸受部材に固定されていることを特徴とするスラスト動圧軸受装置。
  4. 開口端部分の内周壁面から半径方向内方に段差状に突出するプレート支持面と、そのプレート支持面から軸方向外方に向かって延出する円筒状部分からなるプレート嵌合部と、を有する軸受部材と、
    前記プレート嵌合部の内方側に位置し、前記プレート支持面に当接するカウンタープレートと、
    前記軸受部材の内周に配置され、スラストプレートが固定された軸部材と、
    前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの間の隙間内に充填された潤滑流体と、
    を備えたスラスト動圧軸受装置であって、
    前記スラスト動圧軸受部は、前記カウンタープレート及び前記カウンタープレートと軸方向に対向する前記スラストプレートの少なくとも一方側に、スラスト動圧発生溝が設けられ、前記カウンタープレートと前記スラストプレートとの近接対向隙間部分に構成されており、
    前記プレート支持面の一部に、円周方向又は接線方向に延在する凹状の逃溝が設けられ、
    前記プレート嵌合部の軸方向先端部分にカシメ部が設けられ、該カシメ部が、前記カウンタープレートの厚さ方向の途中位置から軸方向外方向側に向かって突出する部分に設けられ、
    前記プレート支持面と前記カウンタープレートの軸方向内側表面とを当接させた状態にて、前記カシメ部を半径方向内方に押圧変形させ、前記カウンタープレートが前記軸受部材に固定されていることを特徴とするスラスト動圧軸受装置。
  5. 前記軸受部材におけるカシメ部の外周面に、プレート嵌合部の外周面より半径方向内方側に窪ませた段部が形成され、その段部の半径方向内方側に前記カシメ部が配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載のスラスト動圧軸受装置。
  6. 前記カシメ部の外周面が、当該カシメ部の外径が軸方向外方側に向かって連続的に縮小する傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のスラスト動圧軸受装置。
  7. 前記カシメ部の外周側傾斜面によって、当該カシメ部の軸方向先端部分が断面尖塔状に形成されていることを特徴とする請求項6記載のスラスト動圧軸受装置。
  8. 前記カシメ部が、前記カウンタープレートの軸方向外側表面から外方向側に向かって突出する部分の全長により形成されていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載のスラスト動圧軸受装置。
  9. 前記軸受部材及び前記軸部材の一方を備えたステータ組と、
    前記軸受部材及び前記軸部材の他方を備えたロータ組と、
    請求項3乃至8のいずれかに記載のスラスト動圧軸受装置と、を備えたことを特徴とするスピンドルモータ。
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