JP4382274B2 - 液体現像剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複写機、プリンター、ファクシミリ等に用いられる電子写真あるいは静電記録用の液体現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体現像剤を用いる電子写真法あるいは静電記録法では、電場を印可することにより電気抵抗率の高い有機媒体中をトナー粒子が電気泳動する現象を利用して現像が行われる。現像剤を一方の電極上に保持あるいは塗布しておき、対向させた反対電極との間で電気的潜像がつくる電場によりトナー粒子を画像部へ選択的に泳動付着させる。今日、現像速度がより速く、より高精細な画像が得られることが求められており、顔料のトナー粒子を構成する樹脂中や有機媒体液中での分散性が高く、またトナー粒子も有機媒体中で良好に分散されていなければならない。分散性が良ければ着色力の向上、現像剤の低粘度化、トナー粒子の泳動性向上等による画像品質の向上、現像の高速度化等が可能になると期待される。これらを実現すべく、従来から液体現像剤中の顔料の分散性及びトナー粒子の分散性の改善が試みられてきた。
【0003】
例えば、特開昭50−70024号公報には脂肪酸のナトリウム塩を用いる方法、特開平04−174447号公報には低級カルボン酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Mn、Zn、或いはCoの塩を用いる方法、また、特開平06−148953号公報にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ソルビタンモノオレート等の界面活性剤を用いて顔料分散性を改善する方法が開示されている。これらの方法では顔料分散性がそれほど向上しないことに加え、以下の問題点がある。液体現像剤ではトナー粒子の電気泳動性を左右する粒子表面の電荷の制御が重要である。このため、必要に応じて、粒子表面に電荷を与える材料や、荷電制御剤と呼ばれる絶縁性有機溶媒中でトナー粒子表面が持つ電荷の対イオンを逆ミセルの形成により安定化する材料が用いられる。これらは上述の材料と同様に極性の高い部位を持ち、場合によっては構造が類似していることもある。このため、それら自身がトナーの帯電性に悪影響を及ぼしたり、荷電制御剤の働きを阻害するなどの影響が生じてしまう。
【0004】
また、特開昭54−41729号公報にはモルホリノ基を有するエチレン性不飽和単量体の(共)重合体を用いる方法、特開昭55−90959号公報にはN-ビニル-2-ピロリドンの(共)重合体を用いて顔料分散性を向上する方法が開示されている。これらは顔料表面に吸着性のあるアミンやアミドの構造をペンダントに持つポリマーを利用するものであり、顔料分散には有効である。しかし、やはりこれらの官能基によってもトナー粒子の帯電特性への影響は避けられない。
【0005】
また、特開平05−323679号公報や特開平05−333607号公報には、塩基性あるいは酸性顔料の誘導体を用いる方法が開示されている。これらはいわゆるシナジー効果を利用するもので、顔料分散と高電気抵抗率の維持には有効であるものの、塩基性基や酸性基由来の構造によりトナー粒子の帯電特性が少なからず影響を受ける。さらに、有色であるため、同系色の顔料にしか使えないという問題がある。
【0006】
また、特開平05−273792号公報には、ポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)やその末端に塩基等の極性基を持つ材料を用いてトナー粒子の分散性を改良する方法が開示されている。しかし、単純なポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)では分散性を十分に改善できず、ポリ(ヒドロキシカルボン酸エステル)の末端に塩基等の極性基を有する場合は、極性基由来の構造により帯電特性に影響が生じる。
【0007】
このように、帯電特性や電気抵抗率の維持と顔料やトナー粒子の分散性を両立し、かつどの色の着色剤にも適用できる方法は未だ見出されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電子写真あるいは静電記録用の液体現像剤において、液体現像剤の電気抵抗やトナー粒子の帯電特性への悪影響を最小限におさえ、顔料の分散性、トナー粒子の分散安定性が改善された液体現像剤を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、液体現像剤に特定の分散剤を使用することにより、どの色の液体現像剤にも適用でき、且つ液体現像剤の電気抵抗やトナー粒子の帯電特性への悪影響を最小限におさえ、顔料の分散性、トナー粒子の分散安定性を改善しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、絶縁性有機溶媒、着色剤、熱可塑性樹脂、分散剤を少なくとも含有し、必要に応じて荷電制御剤を含む液体現像剤において、分散剤として、芳香環及びヒドロキシカルボン酸由来のカルボキシル基によるエポキシ基の開環構造を有する下記変性ノボラック樹脂(A)及び/又は下記グラフト共重合体(B)を含有することを特徴とする液体現像剤に関する。
(A)分子内に一般式(1)で表わされる基を少なくとも1つ有する変性ノボラック樹脂。
【0011】
【化5】
【0012】
(式中、左端の酸素原子はノボラック樹脂の芳香族性水酸基に含まれる酸素原子に由来するものであり、W1とX1はそれぞれ独立に炭素数1〜19の2価の炭化水素基を、iとjはそれぞれ独立にi=1〜30、j=0〜30の整数を、R1は水素原子又はメチル基を示す)
(B)重量平均分子量3000〜100000のグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体中、一般式(2)で表わされる構成単位を少なくとも10モル%相当する量、並びに一般式(3)及び一般式(4)で表わされる構成単位から選ばれる1種以上を少なくとも10モル%相当する量含有するグラフト共重合体。
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】
【化8】
【0016】
(式中、W2とX2はそれぞれ独立に炭素数1〜19の2価の炭化水素基を、pとqはそれぞれ独立にp=1〜30、q=0〜30の整数を、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を、R5は水素原子又はハロゲン原子を、R6とR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、又はハロゲン原子を、R8は水素原子又はメチル基を、R9は直接結合又はメチレン基を示す)
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の液体現像剤を詳細に説明する。
【0018】
本発明の液体現像剤は、液体現像剤中に、分散剤として芳香環及びヒドロキシカルボン酸由来のカルボキシル基によるエポキシ基の開環構造を有する下記変性ノボラック樹脂(A)及び/又は下記グラフト共重合体(B)を含有することを特徴とするものである。
(A)分子内に一般式(1)で表わされる基を少なくとも1つ有する変性ノボラック樹脂。
【0019】
【化9】
【0020】
(式中、左端の酸素原子はノボラック樹脂の芳香族性水酸基に含まれる酸素原子に由来するものであり、W1とX1はそれぞれ独立に炭素数1〜19の2価の炭化水素基を、iとjはそれぞれ独立にi=1〜30、j=0〜30の整数を、R1は水素原子又はメチル基を示す)
(B)重量平均分子量3000〜100000のグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体中、一般式(2)で表わされる構成単位を少なくとも10モル%相当する量、並びに一般式(3)及び一般式(4)で表わされる構成単位から選ばれる1種以上を少なくとも10モル%相当する量含有するグラフト共重合体。
【0021】
【化10】
【0022】
【化11】
【0023】
【化12】
【0024】
(式中、W2とX2はそれぞれ独立に炭素数1〜19の2価の炭化水素基を、pとqはそれぞれ独立にp=1〜30、q=0〜30の整数を、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を、R5は水素原子又はハロゲン原子を、R6とR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、又はハロゲン原子を、R8は水素原子又はメチル基を、R9は直接結合又はメチレン基を示す)
本発明の液体現像剤において、絶縁性有機溶媒中における着色剤および熱可塑性樹脂の存在形態は、製造法により異なり、各種形態をとりうるものであり、たとえば、最も一般的には、着色剤と熱可塑性樹脂が、実質的に、熱可塑性樹脂の粒子中に着色剤が含有されるトナー粒子として存在するものである。その他、着色剤と熱可塑性樹脂が、実質的に、それぞれ独立した粒子として存在する形態もとりうる。
【0025】
本発明の液体現像剤は、液体現像剤中に前記特定の分散剤を含有させることにより、どの色の液体現像剤にも適用でき、且つ液体現像剤の電気抵抗やトナー粒子の帯電特性への悪影響を最小限におさえ、顔料の分散性、トナー粒子の分散安定性を改善させることができる。
【0026】
本発明の液体現像剤に使用する絶縁性有機溶媒としては、静電潜像を乱さない程度の抵抗値(1011〜1016Ω・cm程度)のものが使用される。例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等を用いることができる。特に、臭気、無害性、コストの点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒が好ましい。具体的には、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK(以上いずれもエクソン化学(株)製)、シェルゾール71(シェル石油化学(株)製)、IPソルベント1620、IPソルベント2080(以上いずれも出光石油化学(株)製)等を挙げることができる。
【0027】
本発明の液体現像剤に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂を変性しカルボキシル基を導入したもの、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂、熱可塑性飽和ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂等のスチレン系樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。
【0028】
本発明の液体現像剤に使用する着色剤としては、通常使用されている顔料及び/又は染料を使用できる。顔料としては、無機顔料、有機顔料が使用でき、アセチレンブラック、黒鉛、ベンガラ、黄鉛、群青等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、およびカーボンブラック等が挙げられる。また、染料としては、オイルブラック、オイルレッド等の油溶性アゾ染料、ビスマルクブラウン等の塩基性アゾ染料、ブルーブラックHF等の酸性アゾ染料、ニグロシン等のキノンイミン染料等が挙げられる。
【0029】
本発明の液体現像剤に使用する分散剤としては、変性ノボラック樹脂(A)及び/又はグラフト共重合体(B)を使用する。
【0030】
まず、本発明の変性ノボラック樹脂(A)について説明する。
【0031】
本発明の変性ノボラック樹脂(A)を得るために用いるノボラック樹脂としては、一価フェノール類やジ或いはトリヒドロキシベンゼン等の多価フェノール類とアルデヒド類とから誘導されるノボラック樹脂を使用することができる。このうち一価フェノールとしては、フェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等の無置換フェノール類もしくはアルキル置換フェノール類、モノヒドロキシジフェニルメタン類、或いはフェニルフェノール等の芳香族置換基を有するフェノール類が使用できる。多価フェノール類としては、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノンもしくはトリヒドロキシベンゼン等のジ或いはトリヒドロキシベンゼン類、もしくはこれらのアルキル置換体或いは芳香族置換体が使用できる。また、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジヒドロキシジフェニルメタン類、ジヒドロキシビフェニル類等も使用することができる。また、前記フェノール類のハロゲン置換体も使用でき、例えば塩素化或いは臭素化フェノール類等も挙げることができる。これらフェノール類は単独で、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0032】
フェノール類としては、反応性の点から、一価フェノール類ではフェノール、メタ位がアルキル基1個で置換されたフェノール類等が好ましく、多価フェノール類ではレゾシノール等が好ましい。
【0033】
アルデヒド類としては、ノボラック樹脂の製造に一般に使用されているものがとくに制限なく使用することができる。具体的にはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンや環状ホルマール類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサール等の低級脂肪族アルデヒド類、フルフラール、フェニルアルデヒド等の芳香族アルデヒド類等が挙げられる。これらアルデヒド類は単独で、又は2種類以上を混合して使用できる。
【0034】
ノボラック樹脂を合成するには、常法によりパラトルエンスルホン酸、過塩素酸、塩酸、硝酸、硫酸、クロロ酢酸、シュウ酸、リン酸等の酸触媒の存在下に、これらフェノール類とアルデヒド類とを80〜130℃で反応させればよい。反応はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分子量を測定するなどして追跡することができる。
【0035】
この他、サリゲニンのようにヒドロキシメチル基を持つフェノール誘導体や、o−クロロメチルフェノールのようにハロゲン化メチル基を持つフェノール誘導体を用いる方法でノボラック樹脂を合成しても良い。
【0036】
次に、ノボラック樹脂を、常法によりエピクロルヒドリン或いはβ−メチルエピクロルヒドリンと反応させ、エポキシ基を有するノボラック樹脂を得る。勿論、市販のエポキシ基を有するノボラック樹脂も使用できる。
【0037】
最後に、エポキシ基を有するノボラック樹脂を後述するカルボン酸類やアミン類と反応させて目的とする変性ノボラック樹脂(A)を得る。この反応には必要に応じて溶媒を用い、また必要に応じて脂肪族アミン、芳香族アミン、アンモニウム塩等の触媒を用い、60〜160℃に加熱して行なうことができる。反応の進行はGPCによる分子量測定、エポキシ当量の測定等で追跡することができる。
【0038】
前記のごとくノボラック樹脂を合成してから変性を行う方法の他に、先ず上述した一価フェノールや多価フェノール類の芳香族性水酸基をエピククロルヒドリン或いはβ−メチルエピクロルヒドリンと反応させ、グリシジルオキシ基或いは2,3−エポキシ−2−メチルプロピルオキシ基を形成し、これを後述するカルボン酸類やアミン類と反応させた後、必要に応じて新たなフェノール類を加え、アルデヒド類を用いてノボラック樹脂化の反応を行うことによっても本発明の変性ノボラック樹脂(A)を得ることができる。
【0039】
本発明の変性ノボラック樹脂(A)における一般式(1)で表わされる基は、芳香族性水酸基に、エピクロルヒドリン或いはβ−メチルエピクロルヒドリンを反応させ、その後、不飽和結合や分岐構造を有してもよい炭素数12〜20のヒドロキシカルボン酸、これらの混合物、或いはその重縮合物を反応させて得ることができる。
【0040】
一般式(1)において、左端の酸素原子はノボラック樹脂の芳香族性水酸基に含まれる酸素原子に由来するものであり、W1とX1は不飽和結合及び/又は分岐構造を有してもよい炭素化数1〜19の範囲にある2価の炭化水素基を、R1は水素原子又はメチル基を示す。
【0041】
一般式(1)において、一般式(5):
【0042】
【化13】
【0043】
(式中、W1およびiは前記と同じ)で表わされる基および一般式(6):
【0044】
【化14】
【0045】
(式中、X1およびjは前記と同じ)で表わされる基は、不飽和結合及び/又は分岐構造を有してもよい炭素数2〜20の範囲にあるヒドロキシカルボン酸、これらの混合物、或いはこれらの重縮合物から誘導することができる。
【0046】
前記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドキシカプロン酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、リシノール酸やひまし油脂肪酸、及びそれらの水添物、12−ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。なかでも、好ましくは、炭素数が12〜20の範囲にあるヒドロキシカルボン酸、特に好ましくは、炭素数16〜20の範囲にあるリシノール酸やひまし油脂肪酸、及びそれらの水添物、12−ヒドロキシカルボン酸等のヒドロキシカルボン酸が好適に使用できる。
【0047】
繰り返し数iは1〜30の範囲にある整数、jは0〜30の範囲にある整数を示す。ただし、適切な値は使用する顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の性質、熱可塑性樹脂の種類、分散媒の極性等に応じて変化するものであり、用途に応じて最適値を選ぶ必要がある。iまたはjの値が前記範囲を超えても分散性をそれ以上改善することはできない。
【0048】
一般式(1)における一般式(5)又は一般式(6)で表わされる基の形成は、たとえば、予めヒドロキシカルボン酸の重縮合によりポリエステルを合成しておき、その末端カルボキシル基を上述のエポキシ基と反応させる方法、もしくは、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を上述のエポキシ基と反応させた後、更にヒドロキシカルボン酸を重縮合する方法等によってできる。
【0049】
前記ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応は、パラトルエンスルホン酸、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、テトラ−n−ブチルチタネート等の触媒の存在下または非存在下に反応系を180〜220℃に加熱攪拌し、生成する水をトルエンやキシレン等の共沸溶媒により除去しつつ行うことができる。反応はGPCによる分子量測定や酸価の測定等で追跡することができる。
【0050】
本発明の変性ノボラック樹脂(A)は、分子中に一般式(1)で表わされる基を必ず持っていなければならない。一般式(1)で表される基の数は1〜20にあるのが好ましい。この基がない場合は十分な分散性が得られない。該基の数が前記範囲を超えても効果はあるものの、そのために必要な核体数の多いノボラック樹脂の分子量制御が非常に難しくなるため、現実的には20が上限となる。ただし、適切な値は顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の有無或いはその性質、熱可塑性樹脂の種類、分散媒の極性等に応じて変化するものであり、用途に応じて最適値を選択する必要がある。
【0051】
また、本発明の変性ノボラック樹脂(A)は、分子内に更に一般式(7):
【0052】
【化15】
【0053】
[式中、左端の酸素原子はノボラック樹脂の芳香族性水酸基に含まれる酸素原子に由来するものであり、Yは接続端に酸素原子又は窒素原子を持ち炭素数が1〜20の範囲にある1価の有機基(ただし、一般式(5)で表される基を除く)を、R10は水素原子又はメチル基を示す] で表わされる基を有していてもよい。
【0054】
一般式(7)で表わされる基は、芳香族性水酸基に、エピクロルヒドリン又はβ−メチルエピクロルヒドリンを反応させ、その後、1価のカルボン酸類又は1価のアミン類とを反応させることにより得ることができる。なお、1価のアミン類を反応させて形成される塩基性基は、帯電特性に悪影響を及ぼす傾向があるので、1価のアミン類は使用しないほうが好ましい。1価のアミン類を使用する場合は、使用量に注意することが必要である。
【0055】
1価のカルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸類、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラジドン酸、エレオステアリン酸等の不飽和脂肪酸類やそれらの水添物等が使用できる。
【0056】
1価のアミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、ベンジルアミン等の脂肪族1級モノアミン類、アニリン、ナフチルアミン等の芳香族1級モノアミン類、及びこれらのN−モノアルキル置換による2級モノアミン類、エタノールアミン、N−モノアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン等の1級或いは2級アミノ基を持つアルカノールモノアミン類が使用できる。
【0057】
また、本発明の変性ノボラック樹脂(A)は、分子中に更に一般式(8):
【0058】
【化16】
【0059】
(式中、左端の酸素原子はノボラック樹脂の芳香族性水酸基に含まれる酸素原子に由来するものであり、R12は水素原子又はメチル基を示す)で表わされる基や芳香族性水酸基を有してもよい。
【0060】
このことは、グリシジルオキシ基又は2,3−エポキシ−2−メチルプロピルオキシ基や芳香族性水酸基が残存してもよいことを示す。ただし、本発明の変性ノボラック樹脂(A)が、一般式(8)で表される基と芳香族性水酸基とを両方有することは好ましくない。これらの両方を有する場合はゲル化を生じる傾向がある。
【0061】
一般式(7)で表される基、一般式(8)で表される基、及び芳香族性水酸基の基数はそれぞれ0〜19の範囲にあればよい。この範囲を超えても効果はあるものの、核体数の多いノボラック樹脂の分子量制御が非常に難しくなる点、また、一般式(1)で表される基が必ず1つは存在しなければならない点から、現実的には19がそれぞれの上限となる。ただし、適切な値は顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の有無或いはその性質、熱可塑性樹脂の種類、分散媒の極性等に応じて変化するものであり、用途に応じて最適値を選択する必要がある。
【0062】
さらに、本発明の変性ノボラック樹脂(A)は、更に、一般式(9):
【0063】
【化17】
【0064】
(式中、右端の酸素原子はノボラック樹脂の同一分子内または異なる分子の芳香族性水酸基に含まれる酸素原子に由来するものであり、Zは接続端に酸素原子又は窒素原子を持ち炭素数が1〜40の範囲にある2〜6官能の有機基を、kは2〜6の範囲にある整数を、R11は水素原子又はメチル基を示す)で表される架橋基で分子間或いは分子内で置換されていてもよい。
【0065】
芳香族性水酸基の活性水素を、一般式(9)で表される、分子間又は分子内の架橋基で置換するには、芳香族性水酸基に、エピクロルヒドリン又はβ−メチルエピクロルヒドリンを反応させ、その後、2〜6官能のカルボン酸類、アミン類(1級のモノアミン類を含む)、又はアミノ酸類を反応させればよい。なお、アミン類、アミノ酸類を反応させて形成される塩基性基は、帯電特性に悪影響を及ぼす傾向があるので、アミン類、アミノ酸類は使用しないほうが好ましい。アミン類、アミノ酸類を使用する場合は、使用量に注意することが必要である。
【0066】
多官能のカルボン酸の具体例としては、こはく酸、マレイン酸、イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ダイマー酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、3,6−メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族ポリカルボン酸類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等の芳香族ポリカルボン酸類が使用できる。
【0067】
多官能のアミン類の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、(ジメチルアミノ)プロピルアミン、(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレントリアミン、N,N−ビス(アミノプロピル)メチルアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、N−(アミノエチル)ピペラジン、N,N’−ビス(アミノエチル)ピペラジン、キシリレンジアミン、ダイマージアミン等の脂肪族ポリアミン類や、メラミン、ベンゾグアナミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン類が挙げられる。
【0068】
また、ポリエーテルジアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、また、いわゆるポリアミノアミド等も使用できる。
【0069】
また、エポキシ基に対して二官能性である1級のアミノ基を反応させることによっても架橋構造を形成することができる。この場合は上述した1級のモノアミンを使用することもできる。
【0070】
また、ロイシン、トレオニン等のアミノ酸も使用できる。
【0071】
前記反応は必要に応じて適宜有機溶媒を用い、必要に応じて脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、或いは3級アミンのアンモニウム塩等の触媒を用い、60〜160℃に加熱して行なうことができる。反応の進行はGPCによる分子量測定、エポキシ当量の測定等で追跡することができる。
【0072】
核体数の多いノボラック樹脂の分子量制御が非常に難しいことから、変性ノボラック樹脂の持つ芳香族性水酸基の合計(無置換および置換された芳香族性水酸基の合計、以下同様)は20以下であるのが好ましい。
【0073】
次に、本発明のグラフト共重合体(B)について説明する。
【0074】
本発明のグラフト共重合体(B)は、(1)一般式(10):
【0075】
【化18】
【0076】
(式中、R2およびR3は前記と同じ)で表わされるエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体10〜90モル%と、一般式(11):
【0077】
【化19】
【0078】
(式中、R4、R5、R6及びR7は前記と同じ)で表わされる単量体及び/又は一般式(12):
【0079】
【化20】
【0080】
(式中、R8及びR9は前記と同じ)で表わされる単量体の10〜90モル%と、必要に応じてエポキシ基に対して反応性の高い官能基を有していないその他のエチレン性不飽和単量体0〜80モル%とを、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を用い、常法によりエポキシ基を含有する共重合体を得た後、該共重合体のエポキシ基に、ヒドロキシカルボン酸、必要に応じてカルボン酸類やアミン類を反応させることにより、又は(2)一般式(13):
【0081】
【化21】
【0082】
(式中、R2、R3、W2、X2は前記と同じ。mおよびnはそれぞれ独立にm=1〜30、n=0〜30の整数を示す)で表わされる単量体および要すれば一般式(14):
【0083】
【化22】
【0084】
(式中、Vは接続端に酸素原子又は窒素原子を有し炭素数が1〜20の範囲にある1価の有機基〔ただし、一般式(15):
【0085】
【化23】
【0086】
(式中、W2およびqは前記と同じ)で表わされる基を除く〕を、R13とR14はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す)で表わされる単量体の10〜90モル%と、一般式(11)で表わされる単量体及び/又は一般式(12)で表わされる単量体の10〜90モル%と、必要に応じてエポキシ基に対して反応性の高い官能基を有していないその他のエチレン性不飽和単量体0〜80モル%とを過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を用い、常法により反応させることにより得ることができる。
【0087】
なお、前記方法(1)において得られる共重合体のエポキシ基に後述するカルボン酸類やアミン類と反応させて一般式(2)や一般式(16):
【0088】
【化24】
【0089】
(式中、V、R13及びR14は前記と同じ)で示される構造単位をうる反応、
又は前記方法(2)において一般式(10)で表わされるエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体のエポキシ基にヒドロキシカルボン酸、必要に応じてカルボン酸類やアミン類と反応させて一般式(13)や一般式(14)で表わされる単量体をうる反応は、必要に応じ溶媒を用い、また、必要に応じ脂肪族アミン、芳香族アミン、或いはアンモニウム塩等の触媒を用い、60〜160℃に加熱して行なうことができる。
【0090】
前記一般式(3)で表わされる構成単位において、R5で表されるハロゲン原子としては塩素原子等が挙げられる。R6又はR7で表される炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル等のアルキル基が、炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えばメトキシ、ブトキシ等が、炭素数6〜10のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ等が、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0091】
本発明のグラフト共重合体(B)の製造に用いる単量体の中で、一般式(11)で表される単量体のうちのスチレン誘導体としては、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、t−ブチルスチレン等のアルキル置換スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン、フェノキシスチレン等のアリールオキシ置換スチレン、β−クロロスチレン等が使用できる。
【0092】
一般式(12)で表される単量体としては、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェニルがあげられる。
【0093】
一般式(10)で表されるエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0094】
必要に応じて使用するエポキシ基に対して反応性の高い官能基を有していないその他のエチレン性不飽和単量体としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等のエポキシ基に対して反応性の高い官能基を有していないエチレン性不飽和単量体が使用できる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシルメタ(アクリレート)、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族性水酸基を有する(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート類、メチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボエート等のビニルエーテル類、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の脂肪族性水酸基を有するビニルエーテル類、アリルアセテート等の各種酸のアリルエステル等を挙げることができる。
【0095】
なお、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体のエポキシ基にヒドロキシカルボン酸、必要に応じてカルボン酸類やアミン類と反応させて得られる一般式(13)や一般式(14)で表される単量体を用いてグラフト共重合体を得る場合は、カルボキシル基、フェノール性水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等のエポキシ基に対して反応性の高い官能基を有するエチレン性不飽和単量体も使用できる。
【0096】
本発明のグラフト共重合体における一般式(2)で表される構成単位は、前記一般式(10)で表されるエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位と不飽和結合や分岐構造を有してもよい炭素数2〜20のヒドロキシカルボン酸、これらの混合物、或いはその重縮合物とから得ることができる。或いは、前記一般式(10)で表されるエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体と不飽和結合や分岐構造を有してもよい炭素数2〜20のヒドロキシカルボン酸、これらの混合物、或いはその重縮合物より得られる一般式(13)で表される単量体より誘導される。
【0097】
一般式(2)において、W2とX2は不飽和結合および/または分岐構造を有してもよい炭素数1〜19の範囲にある2価の炭化水素基を、R2とR3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0098】
一般式(2)において、一般式(15):
【0099】
【化25】
【0100】
(式中、W2およびpは前記と同じ)で表される基および一般式(17):
【0101】
【化26】
【0102】
(式中、X2およびqは前記と同じ)で表される基は、不飽和結合及び/又は分岐構造を有してもよい炭素数が2〜20の範囲にあるヒドロキシカルボン酸、これらの混合物、或いはその重縮合物より誘導することができる。
【0103】
前記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドキシカプロン酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、リシノール酸やひまし油脂肪酸、及びそれらの水添物、12−ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。なかでも、好ましくは、炭素数が12〜20の範囲にあるヒドロキシカルボン酸、特に好ましくは、炭素数16〜20の範囲にあるリシノール酸やひまし油脂肪酸、及びそれらの水添物、12−ヒドロキシカルボン酸等のヒドロキシカルボン酸が好適に使用できる。
【0104】
繰り返し数pは1〜30の範囲にある整数、qは0〜30の範囲にある整数を示す。ただし、適切な値は使用する顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の性質、熱可塑性樹脂の種類、分散媒の極性等に応じて変化するものであり、用途に応じて最適値を選ぶ必要がある。pまたはqの値が前記範囲を超えても分散性をそれ以上改善することはできない。
【0105】
一般式(2)における一般式(15)または一般式(17)で表される基の形成は、たとえば、予めヒドロキシカルボン酸の重縮合によりポリエステルを合成しておき、その末端カルボキシル基を上述のエポキシ基と反応させる方法、もしくはヒドロキシカルボン酸単量体のカルボキシル基を上述のエポキシ基と反応させた後、更にヒドロキシカルボン酸を重縮合する方法などによってできる。
【0106】
前記ヒドロキシカルボン酸の重縮合反応は、パラトルエンスルホン酸、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、テトラ−n−ブチルチタネート等の触媒の存在下または非存在下に反応系を180〜220℃に加熱攪拌し、生成する水をトルエンやキシレン等の共沸溶媒により除去しつつ行なうことができる。反応はGPCによる分子量測定や酸価の測定等で追跡することができる。
【0107】
本発明のグラフト共重合体(B)は、一般式(2)で表される構成単位並びに一般式(3)及び/又は一般式(4)で表される構成単位を必ず持っていなければならない。グラフト共重合体(B)に対するこれらの含有量は、グラフト共重合体中、一般式(2)で表される構成単位を少なくとも10モル%相当する量、なかんづく10〜90モル%相当する量、及び一般式(3)及び一般式(4)で表される構成単位から選ばれる1種以上を少なくとも10モル%相当する量、なかんづく10〜90モル%相当する量であることが好ましい。尚、一般式(2)で表される構成単位を少なくとも10モル%相当する量含有するとは、グラフト共重合体をエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位に分割し、全構成単位中に、一般式(2)で表される構成単位が少なくとも10モル%含有することを意味する。また、一般式(3)及び一般式(4)で表される構成単位から選ばれる1種以上を少なくも10モル%相当する量含有するとは、グラフト重合体をエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位に分割し、全構成単位中、一般式(3)及び一般式(4)で表される構成単位から選ばれる1種以上を少なくとも10モル%含有することを意味する。これらのいずれか、或いは双方が、所定モル相当する量%含まれていない場合には、十分な分散性が得られない。ただし、適切な値は顔料の種類、顔料粒子の比表面積や粒子径、顔料表面処理剤の有無或いはその性質、熱可塑性樹脂の種類、分散媒の極性等に応じて変化するものであり、用途に応じて最適値を選択する必要がある。
【0108】
また、本発明のグラフト共重合体(B)は、さらに、一般式(16)で表わされる構成単位を有していてもよい。
【0109】
一般式(16)で表わされる構成単位は、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体又は共重合体のエポキシ基と1価のカルボン酸又は1価のアミン類より得ることができる。なお、1価のアミン類を反応させて形成される塩基性基は、帯電特性に悪影響を及ぼす傾向があるので、1価のアミン類は使用しないほうが好ましい。1価のアミン類を使用する場合は、使用量に注意することが必要である。
【0110】
1価のカルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸類、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラジドン酸、エレオステアリン酸等の不飽和脂肪酸類やそれらの水添物等が使用できる。
【0111】
1価のアミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、ベンジルアミン等の脂肪族1級モノアミン類、アニリン、ナフチルアミン等の芳香族1級モノアミン類、及びこれらのN−モノアルキル置換による2級モノアミン類、エタノールアミン、N−モノアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン等の1級又は2級アミノ基を持つアルカノールモノアミン類が使用できる。
【0112】
また、本発明のグラフト共重合体(B)は、一般式(18):
【0113】
【化27】
【0114】
(式中、R15とR16はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す)で表わされる構成単位を有していてもよい。
【0115】
このことは、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体によるグリシジルオキシ基又は2,3−エポキシ−2−メチルプロピルオキシ基が残存してもよいことを示す。
【0116】
本発明の液体現像剤における着色剤の含有量は、特に限定されないが、画像濃度の点から、液体現像剤100重量部中に1〜10重量部が好ましい。
【0117】
本発明の液体現像剤において、分散剤の含有量は、液体現像剤100重量部中に0.2〜3.0重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0重量部である。分散剤の含有量が前記範囲より少ない場合は、分散性が向上されない傾向がある。一方、分散剤の含有量を前記範囲より多くしても、分散性はそれ以上向上されない傾向がある。
【0118】
本発明の液体現像剤に必要に応じて使用する荷電制御剤は、大別して2つのタイプがある。
【0119】
1つはトナー粒子の表面をイオン化或いはイオンの吸着を行い得る物質で被覆する方法である。このタイプとして、アマニ油、大豆油等の油脂、アルキッド樹脂、ハロゲン化重合体、芳香族ポリカルボン酸、酸性基含有水溶性染料、芳香族ポリアミンの酸化縮合物等が用いられる。
【0120】
もう1つは、絶縁性有機溶媒に溶解しトナー粒子とイオンの授受を行い得るような物質を共存させることであり、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸鉄、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸ニッケル、オクチル酸亜鉛、ドデシル酸コバルト、ドデシル酸ニッケル、ドデシル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸コバルト等の金属石鹸類、石油系スルホン酸金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩等のスルホン酸金属塩類、レシチン等の燐脂質、t−ブチルサリチル酸金属錯体等のサリチル酸金属塩類、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアミド樹脂、スルホン酸含有樹脂、ヒドロキシ安息香酸誘導体等が用いられる。
【0121】
さらに、本発明の液体現像剤には、必要に応じて他の添加剤を配合することができる。
【0122】
本発明の液体現像剤を製造するには従来公知の製造法が使用できる。例えば、▲1▼本発明の液体現像剤において使用する絶縁性溶媒中で、本発明の分散剤の存在下に着色剤を分散させ、この系で不飽和二重結合を持つモノマーの重合を行い着色剤を含有する樹脂粒子(トナー粒子)を形成する、いわゆるNADによる方法、▲2▼本発明の液体現像剤において使用する絶縁性溶媒中で、本発明の分散剤の存在下に着色剤を分散させ、この系に樹脂を良溶媒に溶解した樹脂溶液を加え、良溶媒を留去した後冷却したり、あるいは貧溶媒を加えて、着色剤を含有する樹脂粒子を形成する方法、▲3▼本発明の液体現像剤において使用する絶縁性溶媒(樹脂の良溶媒を併用してもよい)中で、本発明の分散剤の存在下に着色剤および樹脂を湿式粉砕する方法等が使用できる。ただし、本発明の範囲はこれらの例によって制限されるものではない。
【0123】
以下、実施例によって、本発明の液体現像剤をさらに詳細に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。なお、以下の記述中において「部」は重量部を示す。
【0124】
<分散剤A>
反応容器に、エポキシ変性ノボラック樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート154)30部、12−ヒドロキシステアリン酸の縮重合により得られた酸価30、重量平均分子量4,500のポリエステル75部、ステアリン酸35部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.2部の混合物を入れ、窒素気流下に130〜150℃で3時間加熱攪拌した後に減圧濾過により触媒を除去し、重量平均分子量が8,000の変性ノボラック樹脂(分散剤A)を得た。
【0125】
<分散剤B>
反応容器に、12−ヒドロキシステアリン酸100部、キシレン10部、テトラ−n−ブチルチタネート0.1部を加え、窒素気流下に生成する水を共沸留去しながら、180〜200℃で縮合反応を行った。所定酸価となったところでキシレンを留去し、酸価33、重量平均分子量4,400の淡褐色状のポリエステルを得た。次いで、このポリエステル74.3部、及びエポキシ基を有する共重合体としてスチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体(含有率はそれぞれ80モル%、20モル%)25.7部を、ジメチルホルムアミド40部を溶媒として130〜150℃で反応した。酸価及びエポキシ基の残存量が測定限定以下となったところで溶媒を減圧留去してグラフト共重合体(分散剤B)を得た。GPC測定による重量平均分子量は35,000であった。
【0126】
実施例1
銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化工業(株)製)20部、分散剤Aの2部、及びアイソパーL(エクソン化学(株)製)78部を混合し、直径5mmのスチールビーズを用い、ペイントシェーカーで混練した。この混練物の25部をアイソパーLの59.5部で希釈したのち85℃に維持して攪拌し、スチレン7.5部、ステアリルメタアクリレート1.5部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.2部、及びアイソパーLの6部の混合溶液を2時間かけて滴下し、さらに8時間窒素雰囲気下で反応させた。これに電荷制御剤としてモレスコアンバーSB−50N(スルホン酸バリウム塩、(株)松村石油研究所製)2.5部を添加し、液体現像剤を得た。
【0127】
実施例2
銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化工業(株)製)20部、分散剤Aの2部、及びアイソパーLの78部を混合し、直径5mmのスチールビーズを用いてペイントシェーカーで混練した。この混練物の10部をアイソパーLの90部で希釈し、これにデュミランC−2270(エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分けん化物、武田薬品工業(株)製)2部をテトラヒドロフラン100部に溶解した溶液を加えた。次いでテトラヒドロフランを60〜80℃で留去し、室温まで放冷した後、電荷制御剤としてモレスコアンバーSB−50Nの2.5部を添加して、液体現像剤を得た。
【0128】
実施例3
キナクリドンレッド(C.I.ピグメントバイオレット19、クラリアント社製)20部に、分散剤Bの2部、アイソパーLの58部、テトラヒドロフラン100部、及びエチレン−酢ビ共重合体(三井デュポンケミカル(株)製、エバフレックス250)20部を混合し、直径5mmのスチールビーズを用いてペイントシェイカーで混錬した。この混練物の10部をアイソパーLの90部で希釈した後にテトラヒドロフランを60〜80℃で留去し、室温まで放冷した後、電荷制御剤としてオクトープZr(オクチル酸ジルコニウム塩、ホープ製薬(株)製)2.5部を添加し、液体現像剤を得た。
【0129】
比較例1
銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化工業(株)製)20部、及びアイソパーL(エクソン化学(株)製)80部を混合し、直径5mmのスチールビーズを用い、ペイントシェーカーで混練した。この混練物の25部をアイソパーLの59.5部で希釈して85℃に維持して攪拌し、スチレン7.5部、ステアリルメタアクリレート1.5部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.2部、及びアイソパーLの6部の混合溶液を2時間かけて滴下し、さらに8時間窒素雰囲気下で反応させた。これに電荷制御剤としてモレスコアンバーSB−50Nの2.5部を添加し、液体現像剤を得た。
【0130】
比較例2
銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化工業(株)製)20部、及びアイソパーLの80部を混合し、直径5mmのスチールビーズを用いてペイントシェーカーで混練した。この混練物の10部をアイソパーLの90部で希釈し、これにデュミランC−2270(エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分けん化物、武田薬品工業(株)製)2部をテトラヒドロフラン100部に溶解した溶液を加えた。次いでテトラヒドロフランを60〜80℃で留去し、室温まで放冷した後、電荷制御剤としてモレスコアンバーSB−50Nの2.5部を添加して、液体現像剤を得た。
【0131】
比較例3
キナクリドンレッド(C.I.ピグメントバイオレット19、クラリアント社製)20部に、アイソパーLの60部、テトラヒドロフラン100部、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンケミカル(株)製、エバフレックス250)20部を混合し、直径5mmのスチールビーズを用いてペイントシェイカーで混錬した。この混練物の10部をアイソパーLの90部で希釈した後にテトラヒドロフランを60〜80℃で留去し、室温まで放冷した後、電荷制御剤としてオクトープZrの2.5部を添加し、液体現像剤を得た。
【0132】
比較例4〜6
実施例2における分散剤Aの替わりに、重量平均分子量1,200のポリ(12-ヒドロキシステアリン酸エステル)(比較例4)、ソルスパーズ17000(アミノ基末端の顔料分散剤、アビシア社製)(比較例5)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(比較例6)をそれぞれ用いたほかは実施例2と同様にして、液体現像剤を得た。
【0133】
[評価方法]
実施例1〜3の液体現像剤、比較例1〜6の各液体現像剤に関し、下記の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0134】
▲1▼ 電気抵抗値
各液体現像剤の電気抵抗値を、アドバンス社製R8340を用いて測定した。
▲2▼ 平均粒径
実施例1〜3、比較例5の液体現像剤中のトナー粒子の平均粒径を、遠心沈降式粒度分布計((株)堀場製作所社製)で測定した。比較例1〜4、比較例6の液体現像剤は、トナー粒子が非常に粗いので、光学顕微鏡により目視により測定した。
▲3▼ 粘度
実施例1〜3、比較例1〜6の液体現像剤の25℃における粘度を、E型粘度計(50rpm)を使用し、60秒後の粘度として測定した。
▲4▼ 現像特性
静電記録紙に150〜500Vまでの表面電荷で静電パターンを形成し、実施例1〜3、比較例1〜6の各液体現像剤を用いローラー現像機により現像を行った。非画像部の汚れ(かぶり)がなく画像部濃度の高いものを2、非画像部の汚れ(かぶり)があり画像部濃度の低いものを1として評価した。
▲5▼ 経時安定性
25℃で1ヵ月放置後に、実施例1〜3、比較例1〜6の各液体現像剤の粘度、平均粒径、現像特性の測定を行った。これらの特性値について、各液体現像剤調製時と1ヵ月放置後の比較を行い、調製時と較べて変化の少ないものを2、劣化の認められるものを1として評価した。
【0135】
【表1】
【0136】
【発明の効果】
どの色の液体現像剤にも適用でき、且つ液体現像剤の電気抵抗やトナー粒子の帯電特性への悪影響を最小限におさえ、顔料の分散性、トナー粒子の分散安定性が改善された液体現像剤が得られる。
Claims (1)
- 絶縁性有機溶媒、着色剤、熱可塑性樹脂、分散剤を少なくとも含有し、必要に応じて荷電制御剤を含む液体現像剤において、分散剤として、芳香環及びヒドロキシカルボン酸由来のカルボキシル基によるエポキシ基の開環構造を有する下記変性ノボラック樹脂(A)及び/又は下記グラフト共重合体(B)を含有することを特徴とする液体現像剤。
(A)分子内に一般式(1)で表わされる基を少なくとも1つ有する変性ノボラック樹脂。
(B)重量平均分子量3000〜100000のグラフト共重合体であって、当該グラフト共重合体中、一般式(2)で表わされる構成単位を少なくとも10モル%相当する量、並びに一般式(3)及び一般式(4)で表わされる構成単位から選ばれる1種以上を少なくとも10モル%相当する量含有するグラフト共重合体。
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