JP4374912B2 - インクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットヘッドに関し、詳しくは、圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置され、前記駆動壁に電圧を印加することにより該駆動壁をせん断変形させてチャネル部内のインクを吐出させるようにしたヘッドチップを有するインクジェットヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、チャネル部を区画する駆動壁に電圧を印加することにより該駆動壁をせん断変形させてチャネル部内のインクを吐出させるようにしたシェアモード型のインクジェットヘッドとして、インクを吐出させるためのアクチュエータを、圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置される所謂ハーモニカ型のヘッドチップにより構成することで、1枚のウェハーからの取り数が多く、極めて生産性を向上させたインクジェットヘッドが公知である(特許文献1〜3)。
【0003】
このようなインクジェットヘッドのチャネル部は、その入口から出口に亘る長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレートタイプとなり、その後方側には、チャネル部にインクを供給するためのインク供給室を構成するインク供給室形成部材としてのインクマニホールドが固着されるため、各駆動壁に形成された駆動電極に電圧を印加するための配線を駆動回路と電気的に接続させることが困難である。このため、駆動回路からの配線との電気的接続が簡単に行える構造が望まれている。
【0004】
また、近年、より高画質、高精細の画像を記録するために、ノズルの高密度化が進んでいる。このため、生産性の良い高密度インクジェットヘッド構造が望まれている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−103612号公報
【特許文献2】
特開2002−103614号公報
【特許文献3】
特開2002−210955号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、各チャネル部内の駆動電極と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことのできる、生産性の高いインクジェットヘッドを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の課題は、各チャネル部内の駆動電極と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことのできる、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することにある。
【0008】
本発明の他の課題は以下の記載により明らかになる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置されてなるヘッドチップの上面及び下面に、前記チャネル部の長さよりも長尺に形成された上側基板及び下側基板が固着され、前記両基板の間に亘って前記ヘッドチップの後面に各チャネル部にインクを供給するためのインク供給室形成部材が設けられてなり、前記ヘッドチップには、前記上側基板との固着面と前記下側基板との固着面の少なくとも一方に、前記駆動壁に形成された各駆動電極と電気的に接続される第1の配線が形成され、前記上側基板と前記下側基板の少なくとも一方における前記ヘッドチップの前記第1の配線が形成された面との固着面側に、前記各第1の配線と電気的に接続される第2の配線が形成され、前記インク供給室形成部材には、一端が前記第2の配線と電気的に接続されると共に他端が該インク供給室形成部材の外面において駆動回路と電気的に接続される第3の配線が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記第3の配線の他端は、前記インク供給室形成部材の後面側に引き出されており、該インク供給室形成部材の後面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドである。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記インク供給室形成部材は、前記両基板よりも後方にはみ出したはみ出し部を有し、前記第3の配線の他端は、前記第1の配線と電気的に接続される前記第2の配線が形成された前記上側基板と前記下側基板の少なくとも一方との前記はみ出し部における固着面と同一面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドである。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記ヘッドチップは、前記駆動壁と前記チャネル部とが上下方向に2段に形成されてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッドである。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のインクジェットヘッドを複数用い、各インクジェットヘッドを上下方向に多段状に積層してなることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0014】
請求項6記載の発明は、各インクジェットヘッドの間に放熱部材が設けられていることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッドである。
【0015】
請求項7記載の発明は、圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置され、且つ、前記駆動壁と前記チャネル部とがヘッドチップの上下方向に2段に形成されてなるヘッドチップの上面及び下面に、前記チャネル部の長さよりも長尺に形成された上側基板及び下側基板が固着され、前記両基板の間に亘って前記ヘッドチップの後面に各チャネル部にインクを供給するためのインク供給室形成部材が設けられてなり、前記ヘッドチップには、前記上側基板及び下側基板との固着面に、前記駆動壁に形成された各駆動電極と電気的に接続される第1の配線が形成され、前記上側基板及び下側基板には、前記ヘッドチップとの固着面側に、前記各第1の配線と電気的に接続される第2の配線がそれぞれ形成されると共に、上側基板及び下側基板のうちの一方の基板は、他方の基板よりも相対的に長尺に形成され、前記インク供給室形成部材よりも後方に張り出されて前記第2の配線によって駆動回路と電気的に接続される張り出し部が形成され、前記インク供給室形成部材は、前記相対的に短尺な他方の基板との固着面に、一端が前記第2の配線と電気的に接続されると共に他端が該インク供給室形成部材の外面において駆動回路と電気的に接続される第3の配線が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記第3の配線の他端は、前記インク供給室形成部材の後面側に引き出されており、該インク供給室形成部材の後面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドである。
【0017】
請求項9記載の発明は、前記インク供給室形成部材は、前記相対的に短尺な他方の基板よりも後方にはみ出したはみ出し部を有し、前記第3の配線の他端は、該はみ出し部における前記基板との固着面と同一面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドである。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項7〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッドを複数用い、各インクジェットヘッドを上下方向に多段状に積層してなることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0019】
請求項11記載の発明は、一つのインクジェットヘッドにおける前記相対的に長尺な基板に他のインクジェットヘッドにおける前記相対的に短尺な基板を対向させて上下方向に多段状に積層してなると共に、前記対向される相対的に長尺な基板と相対的に短尺な基板とは略同一長さに形成されてなることを特徴とする請求項10記載のインクジェットヘッドである。
【0020】
請求項12記載の発明は、積層される各インクジェットヘッドの間に放熱部材が設けられていることを特徴とする請求項10又は11記載のインクジェットヘッドである。
【0021】
請求項13記載の発明は、前記第1の配線は、前記各駆動電極から前記ヘッドチップの前面及び後面の少なくともいずれかの面を介して、前記上側基板及び/又は下側基板との固着面に引き出されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0022】
請求項14記載の発明は、前記インク供給室形成部材は、前記上側基板と下側基板との間に亘って前記ヘッドチップの後面を包囲するように設けられた壁部により形成され、前記両基板及び前記壁部で囲まれる空間によって、前記インク供給室を形成してなることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0023】
請求項15記載の発明は、前記駆動電極、第1の配線及び前記インク供給室に臨む前記第2の配線の表面に電極保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0024】
請求項16記載の発明は、前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び下側基板のうちの少なくとも一つが、窒化アルミを成分に含むセラミックス、圧電材料及び液晶ポリマーのうちから選ばれるいずれかの材料からなることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0025】
請求項17記載の発明は、前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び下側基板のうちの少なくとも一つの熱膨張係数が、前記圧電素子の熱膨張係数の±2ppm/℃であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のインクジェットヘッドである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るインクジェットヘッドの第1の実施形態を示す全体斜視図、図2はその縦断面図、図3は要部分解斜視図である。
【0028】
図中、Aはインクジェットヘッド、1Aはヘッドチップ、2はヘッドチップ1Aの前面に固着されたノズルプレート、3はヘッドチップ1Aの上面に固着された基板(以下、上側基板という。)、4はヘッドチップ1Aの下面に固着された基板(以下、下側基板という。)、5はインク供給室形成部材である。
【0029】
なお、本明細書においては、ヘッドチップからインクが吐出される側を「前」、その反対側を「後」とし、それぞれの面を「前面」、「後面」という。また、本明細書においては、ヘッドチップから見て上側基板が固着される側を「上」、下側基板が固着される側を「下」とし、ヘッドチップにおいて並設されるチャネル部を挟んで上下に位置する外側面をそれぞれ「上面」、「下面」という。
【0030】
ヘッドチップ1Aは、上部基板11と下部基板13との間に、圧電素子12からなる駆動壁14とチャネル部15とが交互に並設されている。図示例では4つのチャネル部15と5つの駆動壁14とが形成されたものを例示している。
【0031】
チャネル部15の形状は、両側壁が垂直方向(上下方向)に向いており、そして互いに平行である。また、その入口から出口に亘る長さ方向で大きさと形状がほぼ変わらないストレートタイプである。このようにチャネル部15がストレートタイプであることにより、泡抜けが良く、電力効率が高く、発熱が少なく、高速応答性が良いインクジェットヘッドとすることができる。
【0032】
圧電素子12に用いられる圧電材料としては、電圧を加えることにより変形を生じる公知の圧電材料を用いることができ、有機材料からなる基板、非金属製の基板等がある。特に、非金属製の圧電材料基板が好ましく、成形、焼成等の工程を経て形成される圧電セラミックス基板、又は成形、焼成を必要としないで形成される基板等がある。
【0033】
非金属製の圧電材料基板において、成形、焼成等の工程を経て形成される圧電セラミックス基板としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が好ましい。さらにBaTiO3、ZnO、LiNbO3、LiTaO3等を用いてもよい。
【0034】
PZTとしては、PZT(PbZrO3−PbTiO3)と、第三成分添加PZTがある。添加する第三成分としてはPb(Mg1/2Nb2/3)O3、Pb(Mn1/3Sb2/3)O3、Pb(Co1/3Nb2/3)O3等がある。
【0035】
また、非金属製の圧電材料基板において、成形、焼成を必要としないで形成される基板としては、例えば、ゾル−ゲル法、積層基板コーティング法等で形成することができる。
【0036】
圧電素子12は、2枚の圧電材料基板12a、12bを分極方向を互いに反対に向けて接合してなる。これにより圧電素子12に複数列の溝を並設することで、分極方向が互いに反対方向となる駆動壁14が形成される。
【0037】
圧電材料基板12aと12bを接合する手段としては、接着剤を用いた接合を採用できるが、接合可能であれば、特にこれに限定されない。接着剤を用いて接合する場合、その接着剤層の硬化後の厚みは、1〜10μmの範囲が好ましい。
【0038】
なお、図示していないが、下部基板13の代わりに圧電材料基板12bを厚手のものとし、上側の圧電材料基板12a側から圧電材料基板12bの中途部までに亘って平行な複数列の溝を形成することで、上記同様の駆動壁14を形成するようにしてもよい。
【0039】
各駆動壁14には、チャネル部15内に臨んで駆動電極16が形成されている。駆動電極16を形成する金属は、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)等があるが、NiやCuが好ましく、特に好ましくはNiである。
【0040】
駆動電極16の形成は、蒸着法、スパッタリング法、めっき法、CVD(化学気相反応法)等の真空装置を用いた方法等が挙げられるが、めっき法によるものが好ましく、特に無電解めっきにより形成されることが好ましい。無電解めっきによれば、均一且つピンホールフリーの金属被膜からなる電極を形成することができる。
【0041】
無電解めっきによる電極形成においては、Ni−P(リン)めっき又はNi−B(ホウ素)めっきを単独で使用してもよいし、あるいはNi−PとNi−Bを重層してもよい。Ni−PめっきはP含量が高くなると電気抵抗が増大するので、P含量が1〜数%程度がよい。Ni−BめっきのB含量は、普通1%以下なので、Ni−PよりNi含量が多く、電気抵抗が低く、且つ、外部の配線との接続性が良いため、Ni−PよりNi−Bの方が好ましいが、Ni−Bは高価なので、Ni−PとNi−Bを組み合わせることも好ましい。更に、Ni−Pめっき又はNi−Bめっきを下層として、その上層にAu(金)を電解めっき又は蒸着により形成してもよい。めっき膜の厚みは0.5〜5μmの範囲が好ましい。
【0042】
ヘッドチップ1Aには、上側基板3の固着面と下側基板4との固着面の少なくとも一方に、駆動壁14に形成された各駆動電極16と電気的に接続される第1の配線17が形成されている。この第1の配線17を上記上側基板3や下側基板4との固着面に引き出すための具体的方法は特に問わず、例えば上記特許文献3に記載のように、上側基板や下側基板に貫通孔を形成し、この貫通孔を介して引き出すようにしてもよいが、このような煩雑な貫通孔の形成作業を不要とし、より簡単に配線を引き出し可能とするため、図示する方法を用いることが好ましい。
【0043】
すなわち、ヘッドチップ1Aの下面、すなわち下部基板13の外面には、各チャネル部15と同じピッチで第1の配線17が、各チャネル部15と同数、平行に形成されており、ヘッドチップ1Aの前端から後端に亘って延びている。この第1の配線17は、ヘッドチップ1Aの下面に限らず、上面、すなわち上部基板11の外面でもよく、また上下両面にあってもよい。
【0044】
この第1の配線17は、詳細には後述するが、駆動回路からの電圧を各駆動電極16に印加するために第2の配線と電気的に接続するため、ヘッドチップ1Aの上下両面に形成されていれば、この第2の配線との接続をヘッドチップ1Aの上下両面のいずれからもとることができる。すなわち第2の配線を形成した基板をヘッドチップ1Aの上下いずれの面に固着することもできるので、ヘッドチップ1Aの向きを選ばず、インクジェットヘッドの作成上有利である。
【0045】
また、ヘッドチップ1Aの後面、具体的には下部基板13の後面には、一端が各チャネル部15内の駆動壁14に形成された駆動電極16とそれぞれ電気的に接続される接続配線18が形成されており、その他端はそれぞれ対応する第1の配線17と電気的に接続されている。従って、各駆動電極16に電気的に繋がる配線が、この接続配線18を介してヘッドチップ1Aの後面からヘッドチップ1Aの下面に亘って引き出されている。この接続配線18は、ヘッドチップ1Aの後面に限らず、前面でもよく、また前後両面にあってもよい。
【0046】
ここで、かかるヘッドチップ1Aの製造方法の一例について説明する。なお、以下に記載する数値はあくまで一例であり、本発明は以下の数値に限定されるものではない。
【0047】
まず、図4に示すように、分極方向(矢印で示す)を互いに反対方向に向けた各厚さ0.1mmの2枚の圧電材料基板(PZT)12a、12bを積層した圧電素子12を、厚さ0.6mmのセラミック基板からなる下部基板13(大きさ50mm角)に貼り付けた積層体を準備する。なお、前述したように、下部基板13と圧電材料基板12bは同一であってもよく、この場合は分極方向を異ならせた2枚の圧電材料基板により積層体が構成される。
【0048】
次に、図5に示すように、この積層体の上下両面にスピンコート法によりポジレジスト(光が照射された部分が現像で溶解される)100、101をコーティングし、その後、圧電素子12と反対側にある下部基板13の下面のポジレジスト101をストライプ状のマスク(マスク幅0.07mm、ピッチ0.141mm)を用いて露光し、現像することにより、該下面に幅0.71mmのストライプパターンを得る。
【0049】
次いで、図6に示すように、上記圧電素子12の側から0.08mm厚の円盤状の砥石(ダイシングブレード)を用いて0.141mmピッチで互いに平行な溝150、150・・・を研削加工する。この溝150は、その長さ方向に亘って略均一な深さ(0.20mm)であり、長さ方向に亘って溝150の断面形状がほぼ変わらないストレートな溝である。加工する溝150の数は、例えば258本の加工を行うと、257本の駆動壁14と256本のチャネル部用の溝150及び両側に1本ずつの余りの溝150が形成される。
【0050】
その後、無電解めっき法により各溝150内及び上記ストライプパターンが形成された下部基板13の下面に0.5〜5μmの膜厚となるように金属層を形成させる。金属層は下層がNi−Bめっき層、上層がAuめっき層となる積層構造とする。このとき、無電解めっき処理の前処理を適切に行うことにより、レジスト上にはめっきが析出しない、いわゆる選択めっきを行うようにする。
【0051】
次いで、リムーバーでレジストを溶解除去することにより、各溝150の内面にはめっき層が形成されて駆動電極16が形成され、各駆動壁14の上部には電極が形成されず、また、下部基板13の下面には、各ストライプパターンの間にめっき層が形成されて第1の配線17が形成された図7の状態となる。
【0052】
以上のめっき法による駆動電極16及び第1の配線17の形成方法としてレジストを用いた選択めっき法を行う例を示したが、これに限定されるものではなく、他の方法として、レジストの代わりにドライフィルムレジストを用い、真空蒸着によりアルミニウムを全面に形成した後、溶剤でドライフィルムレジストと共に、ドライフィルムレジスト上のアルミニウムを除去するリフトオフ法でも同様な駆動電極16及び第1の配線17をパターン形成することができる。このとき、望ましくはアルミニウムの上に連続して金を蒸着するとよい。
【0053】
駆動電極16及び第1の配線17を形成した後、別途用意した上部基板11をエポキシ系接着剤を用いて圧電素子12からなる駆動壁14の上面に固着する。図8は上部基板11を固着した後の状態を示す。これにより、上部基板11と下部基板13との間に駆動壁14と溝150によって形成されたチャネル部15とが交互に並設されたヘッド基板aを形成する。
【0054】
次に、かかるヘッド基板aを、図8に示すように、チャネル部15の長さ方向と略直交するカットラインC1、C2、C3・・・に沿って切断し、1枚のヘッド基板aから複数のヘッドチップ1、1、1・・・を作成する。
【0055】
作成されたヘッドチップ1の切断面に、図9に示すように、各チャネル部15に対応する接続配線形成用の開口201を有するドライフィルム200でパターニングを行い、その後アルミニウムを蒸着することで各接続配線18を形成する。蒸着は駆動電極16及び第1の配線17との電気的接続を確実にするため、方向を変えて2回行った。また、ここでの接続配線18の形成方法としては、蒸着に限らず、スパッタリング法でもよい。その後、溶剤でドライフィルムとその上に形成されたアルミニウムを除去すると、各駆動電極16と各第1の配線17とが接続配線18によって電気的に接続された図10の状態となる。
【0056】
なお、ここではヘッドチップ1の一方の切断面(後にヘッドチップ1Aの後面となる面)にアルミニウムを蒸着しているが、反対側の面であってもよく、また、前面及び後面の両面であってもよい。
【0057】
このようにして形成されたヘッドチップ一つからなるヘッドチップ1Aの下面に固着される下側基板4は、ヘッドチップ1Aの幅(チャネル部15の並設方向の長さ)とほぼ同幅で、且つヘッドチップ1Aの長さ(ヘッドチップ1Aの前面から後面に亘る長さ)よりも十分に長尺な基板からなり、そのヘッドチップ1Aとの固着側の面には、図3に示すように、ヘッドチップ1Aのチャネル部15と同じピッチで、第2の配線41が平行に形成されている。このような第2の配線41は、上述したヘッドチップ製造の場合と同様に、下側基板4にパターニングを行い、無電解めっき法等を用いて金属を析出させることにより形成することができる。
【0058】
この下側基板4は、その前端面がヘッドチップ1Aの前面と面一となるように、且つ、第2の配線41の形成面をヘッドチップ1Aの第1の配線17と対向させ、各第1の配線17と各第2の配線41とが電気的に接続するようにヘッドチップ1Aの下面に接着剤や異方性導電フィルム等を用いて固着されている。
【0059】
上側基板3は、上記下側基板4と同一大に形成されており、その前端面がヘッドチップ1Aの前面と面一となるように、ヘッドチップ1Aにおける上部基板11の上面に固着されている。これによりヘッドチップ1Aは、該ヘッドチップ1Aの後方側に張り出した上側基板3及び下側基板4によって上下から挟み付けられた状態とされている。
【0060】
ノズルプレート2は、上側基板3及び下側基板4がそれぞれ固着されたヘッドチップ1Aの前面側に固着されている。ノズルプレート2には、各チャネル部15に対応するノズル孔21が開設されている。
【0061】
インク供給室形成部材5は、この上側基板3と下側基板4との間において前記ヘッドチップ1Aの後面に設けられている。このインク供給室形成部材5は、ポリイミド、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックと呼ばれる高機能樹脂により、上側基板3と下側基板4との間に亘って前記ヘッドチップ1Aの後面を包囲するように設けられた平面視略コ字型を呈する囲い壁部(側壁5a、5b及び後壁5c)によって形成されている。これによりヘッドチップ1Aの後面側には、上下が上側基板3と下側基板4とによって覆われると共に側面がこのインク供給室形成部材5を構成する囲い壁部5a、5b、5cによって閉鎖された空間が形成され、この空間によって各チャネル部15にインクを供給するためのインク供給室51が構成される。
【0062】
52はインク供給室51内にインクを流入させるための流入口であり、これによりインク供給室51はインクマニホールドとして機能する。このインク供給室51は、図示しないが、ゴミの流入を防ぐためにフィルターを内蔵している。
【0063】
このように本実施形態に示すインク供給室形成部材5は、上側基板3と下側基板4との間に亘ってヘッドチップ1Aの後面を包囲するように設けられた囲い壁部5a、5b、5cによって形成されることで、このインク供給室形成部材5とヘッドチップ1Aとの固着部位は、該ヘッドチップ1Aの両側端部に位置する極く一部の領域のみで済む利点がある。
【0064】
すなわち、従来一般に、インク供給室を構成するためのインク供給室形成部材(インクマニホールド)は、一面が開口する箱型状の部材を、該開口がチャネル部の全体に亘ってその周囲を囲むように上部基板や下部基板の全域に対して固着されるようになっているため、ヘッドチップの上部基板及び下部基板の全域に固着のための糊代を確保する必要がある。従って、この糊代の確保のために、上部基板及び下部基板を余計に大きく形成しなくてはならず、ヘッドチップを無駄に大きく形成する必要がある。しかも、上部基板及び下部基板の後面という極めて微小スペースに接着剤を塗布する必要があるため、塗布作業も面倒である上に、接着剤がチャネル部にはみ出すおそれすらもある。
【0065】
しかし、本実施形態に示すように、囲い壁部5a、5b、5cによってインク供給室51を形成することで、上部基板11や下部基板13全域に接着剤を塗布する必要がなく、このため、インク供給室51を形成するためにヘッドチップ1Aを無駄に大きく形成する必要も、微小スペースへの接着剤の塗布作業も不要となり、生産性の向上を図ることができるようになり、本発明において好ましい態様である。
【0066】
本実施形態に示すインク供給室形成部材5は、その後壁5cが上側基板3及び下側基板4よりも後方にはみ出しており、はみ出し部53が形成されている。従って、インク供給室形成部材5の後端側には、上記上側基板3及び下側基板4との固着面と同一面が、該上側基板3及び下側基板4からはみ出して上方及び下方に一部露呈している。
【0067】
このインク供給室形成部材5には、一端が上記第2の配線41と電気的に接続されると共に他端が該インク供給室形成部材5の外面に引き出された第3の配線54が形成されている。ここでは、第2の配線41は下側基板4に形成されているため、この第3の配線54は、図2及び図3に示すように、インク供給室形成部材5の下面において、各第2の配線41と同数且つ同ピッチで、平行に形成されている。また、第3の配線54の他端は、インク供給室形成部材5の後方のはみ出し部53において下方に露呈する面53bにまで延びている。このような第3の配線54は、上述したヘッドチップ製造の場合と同様に、インク供給室形成部材5にパターニングを行い、無電解めっき法等を用いて金属を析出させることにより形成することができる。
【0068】
このインクジェットヘッドAには、回路基板6が、その表面に形成された各配線61がインク供給室形成部材5に形成された各第3の配線54とそれぞれ電気的に接続するように異方性導電フィルムにより接合され、インクジェットヘッドAの後方に延びている。この回路基板6との電気的接続により、インクジェットヘッドAは駆動回路と電気的に接続され、各駆動電極16への電圧印加が可能とされる。
【0069】
このような回路基板6はフレキシブル回路基板(FPC)であることが好ましい。また、回路基板6には、図示するように駆動IC62が実装されていると、接続端子数の削減化を図れるために好ましい。
【0070】
このようにインクジェットヘッドAは、各駆動電極16に電圧印加するための配線がインク供給室形成部材5の外面にまで引き出されているため、回路基板6をインク供給室形成部材5の外面において第3の配線54と接合するだけで、各チャネル部15内の各駆動電極16と回路基板6との電気的接続を極めて簡易に行うことが可能である。
【0071】
しかも、第3の配線54は、インクジェットヘッドAの最も後方に位置するインク供給室形成部材5を利用して、その外面に引き出されるため、この第3の配線54の引き出し方法によって回路基板6の接続方向を選択することができる利点がある。
【0072】
例えば、図11は、第3の配線54をインク供給室形成部材5の下面から後面側にまで引き出して形成している。回路基板6は、このインク供給室形成部材5の後面側に、各配線が対応する各第3の配線54と電気的に接続するように接合されることにより、回路基板6の接続方向を上方(又は下方)にとることができる。なお、この場合、インク供給室形成部材5の後面は、上側基板3及び下側基板4の後端面と少なくとも面一状であればよく、必ずしもはみ出し部53を形成する必要はない。
【0073】
ところで、ヘッドチップ1Aにおける駆動壁14以外の部材(すなわち上部基板11及び下部基板13の両基板)、上側基板3及び下側基板4のうちの少なくとも一つは、窒化アルミを成分に含むセラミックス、圧電材料及び液晶ポリマーのうちから選ばれるいずれかの材料からなることが好ましい。これにより放熱特性が優れ、また、温度変化に対して安定なインクジェットヘッドを得ることができる効果がある。
【0074】
また、上記ヘッドチップ1Aにおける駆動壁14以外の部材(すなわち上部基板11及び下部基板13の両基板)、上側基板3及び下側基板4のうちの少なくとも一つの熱膨張係数が、駆動壁14を構成する圧電素子12の熱膨張係数の±2ppm/℃であることが更に好ましい。熱膨張係数をこの範囲とすることで、各部材間に熱膨張係数の差による剥離等が起こらない。
【0075】
更に、インク供給室51に接続配線18及び第2の配線41の一部が臨むため、これらは各チャネル部15内の駆動電極16同様、インクと直に接触する。従って、インクとして水系インクを使用可能とするために、各チャネル部15内の駆動電極16、接続配線18及び第2の配線31の表面に電極保護膜を形成することが好ましい。電極保護膜としては、柔軟性を有すると共に剥離しにくく、駆動壁14のせん断変形に追従し易く、また、駆動電極16の耐久性をより向上させることができることから、有機絶縁膜が好ましい。更に、有機絶縁膜としてはパリレン膜が好ましい。
【0076】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドBを示す縦断面図である。第1の実施形態と同一符号は同一構成を示し、特に相違がない限り詳しい説明は省略する。
【0077】
このインクジェットヘッドBにおけるヘッドチップ1Bは、駆動壁とチャネル部とが上下方向に2段に形成されている。本実施形態では、このように駆動壁とチャネル部とが上下方向に2段に形成されて一つのヘッドチップ1Bが構成されている。
【0078】
図13は、ヘッドチップ1Bを後面側から見た斜視図である。ヘッドチップ1Bは、上部基板11と下部基板13との間に、圧電素子121からなる上側の駆動壁141及びチャネル部151とが交互に並設された上段と、圧電素子122からなる下側の駆動壁142及びチャネル部152とが交互に並設された下段とを有している。各圧電素子121、122は、それぞれ分極方向を互いに反対に向けて接合されてなる2枚の圧電材料基板121a及び121b、122a及び122bにより構成されている。
【0079】
上段の駆動壁141及びチャネル部151と下段の駆動壁142及びチャネル部152との間には、上部基板11又は下部基板13と同様の1枚の中間基板10が設けられている。かかるヘッドチップ1Bは、上記第1の実施形態に係るヘッドチップ1Aを2つ用いて上下に積層することによって得ることもできるが、このように上段と下段との間を中間基板10の1枚のみとして共用することで、部品点数の削減化が図られている。
【0080】
ヘッドチップ1Bにおいて、各チャネル部151、152内の駆動電極161、162に対応する第1の配線171、172は、ヘッドチップ1Bの上面及び下面の両面にそれぞれ形成されている。すなわち、図示上側に位置するチャネル部151と電気的に接続する第1の配線171は、接続配線181を介してヘッドチップ1Bの上部基板11の外面に形成され、図示下側に位置するチャネル部152と電気的に接続する第1の配線172は、接続配線182を介してヘッドチップ1Bの下部基板13の外面に形成されている。
【0081】
なお、かかるヘッドチップ1Bは、例えば、図8に示すヘッド基板aの上部基板11上に、図7に示す基板の駆動壁14側を更に固着し(この場合、上部基板11が図13の中間基板10に相当し、図7に示す下部基板13が図13に示す上部基板11に相当する。)、その後、図9と同様に接続配線形成用の開口201を有するドライフィルム200でパターニングを行い、その後アルミニウムを蒸着して接続配線181、182を形成することによって製造することができる。
【0082】
ヘッドチップ1Bの上面及び下面には、表面にそれぞれ第2の配線31、41が形成された上側基板3及び下側基板4が、その第2の配線31、41が第1の配線171、172のそれぞれと電気的に接続するように固着されている。
【0083】
また、上側基板3と下側基板4との間に亘ってヘッドチップ1Bの後面を共通に包囲するように、第1の実施形態と同様のインク供給室形成部材5を設けることによって、上下2段構成のヘッドチップ1Bの各チャネル部151、152にインクを供給するためのインク供給室51を形成している。
【0084】
このインク供給室形成部材5は、上側基板3及び下側基板4よりも後方に大きくはみ出しており、はみ出し部53が形成されている。従って、インク供給室形成部材5は、上側基板3及び下側基板4との固着面と同一面が、該上側基板3及び下側基板4の後端からはみ出して上方及び下方に一部露呈している。
【0085】
そして、このインク供給室形成部材5の上面及び下面には、一端が上記上側基板3及び下側基板4の各第2の配線31、41と電気的に接続された第3の配線541、542がそれぞれ形成され、その他端は上記上側基板3及び下側基板4の後端から上記はみ出し部53の上面53a及び下面53bにまで引き出されている。
【0086】
また、ノズルプレート2は、上下2段構成のヘッドチップ1Bの前面と上側基板3及び下側基板4の前端面に亘る大きさを有すると共に、ヘッドチップ1Bの各チャネル部151、152に対応するように、ノズル孔211、212が上下2列に形成されている。
【0087】
このインクジェットヘッドBには、インク供給室形成部材5のはみ出し部53において、その上方に露呈する面53aに上側の回路基板6aが、その表面に形成された各配線61aが上記第3の配線541と電気的に接続するように異方性導電フィルムにより接合されていると共に、下方に露呈する面53bに下側の回路基板6bが、その表面に形成された配線61bが上記第3の配線542と電気的に接続するように異方性導電フィルムにより接合され、インクジェットヘッドBの後方に延びている。この回路基板6a、6bとの電気的接続により、インクジェットヘッドBは駆動回路と電気的に接続され、各駆動電極161、162への電圧印加が可能とされる。
【0088】
この第2の実施形態に係るインクジェットヘッドBでは、駆動壁141、142及びチャネル部151、152が上下方向に2段に形成されてマルチノズル化されているが、第1の実施形態と同様、第3の配線541、542は、インクジェットヘッドBの最も後方に位置するインク供給室形成部材5を利用して、その外面に引き出されているため、このインク供給室形成部材5を利用して駆動回路との電気的接続を容易に行うことができる。すなわち、各チャネル部151、152内の駆動電極161、162と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことができ、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することができる利点がある。
【0089】
この場合も、インク供給室形成部材5の外面への第3の配線541、542の引き出し方法によって回路基板6の接続方向を選択することができる。例えば、図14(a)に示すように、各第3の配線541、542をインク供給室形成部材5の上面及び下面からそれぞれ後面側にまで引き出すことで、上側のチャネル部151に対する回路基板6aの接続方向を上方に、下側のチャネル部152に対する回路基板6bの接続方向を下方にとることもできる。このとき、インク供給室形成部材5の後面には、図14(b)に示すように、上側のチャネル部151から引き出された第3の配線541の他端と下側のチャネル部152から引き出された第3の配線542の他端とが、互いに接することなく形成される。
【0090】
また、図15(a)に示すように、上側のチャネル部151に対する回路基板と下側のチャネル部152に対する回路基板とを1枚の回路基板6で共通とすることもできる。これによれば、1枚の回路基板6の接合作業で、上下の各チャネル部151、152の駆動電極と駆動回路との電気的接続が可能となるために作業性に優れたものとなる。この1枚の回路基板6には、図15(b)に示すように、上側のチャネル部151に電圧印加するための駆動回路からの配線611の他端と、下側のチャネル部152に電圧印加するための駆動回路からの配線612の他端とが、互いに接することなく形成される。
【0091】
更に、図14及び図15に示す態様では、回路基板6の接合作業の方向が後方からの一方向のみとなるため、上下の二方向からとなる図12に示す態様に比べ、回路基板6a、6b、6の接合作業性に優れたものとなる。
【0092】
また、図16に示すように、例えば上側の第3の配線541をインク供給室形成部材5の後面まで引き出すことにより上側の回路基板6aの接続方向を上方とし、下側の回路基板6bを、インク供給室形成部材5のはみ出し部53の下面53bに形成された第3の配線542と電気的に接続することにより接続方向を後方とするように、上側と下側の回路基板6a、6bの接続方向を異なるようにすることもできる。
【0093】
(第3の実施形態)
図17は、第3の実施形態に係るインクジェットヘッドCを示している。第1及び第2の実施形態と同一符号は同一構成を示し、特に相違がない限り詳しい説明は省略する。
【0094】
このインクジェットヘッドCは、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドBを複数用いて更にマルチノズル化を図った構成である。
【0095】
すなわち、駆動壁及びチャネル部が上下2段に形成されたヘッドチップ1Bを上側基板3及び下側基板4で挟着した状態の図12で示したインクジェットヘッドBを1単位とし、これを2つ(B1、B2)用いて上下方向に積層することにより、上下方向に合計4段の駆動壁及びチャネル部を有するインクジェットヘッドを構成している。
【0096】
上下に積層される各インクジェットヘッド単位B1、B2の間には、図示するようにヒートシンク等の放熱部材7を設けることによって、駆動時の放熱対策を講じることが好ましい。
【0097】
ノズルプレート2は、各インクジェットヘッド単位B1、B2毎に形成してもよいが、図示するように全体で1枚のノズルプレート2を使用することが、ノズルプレート2の接合作業を簡略化できて好ましい。
【0098】
また、このインクジェットヘッドCは、インクジェットヘッド単位B1、B2の2段に積層するものに限らず、3段、4段と積層数を上下方向に更に増加していくことによって、更なるマルチノズル化を図ることもできる。
【0099】
このインクジェットヘッドCによれば、各チャネル部151、152内の駆動電極161、162と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことができ、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することができる利点がある。
【0100】
(第4の実施形態)
図18は、第4の実施形態に係るインクジェットヘッドDを示している。第1及び第2の実施形態と同一符号は同一構成を示し、特に相違がない限り詳しい説明は省略する。
【0101】
このインクジェットヘッドDは、第2の実施形態に係るインクジェットヘッドBと同様に、チャネル部と駆動電極とが上下方向に2段に積層されているが、回路基板6との接続構成を異にしている。
【0102】
すなわち、このインクジェットヘッドDでは、インク供給室形成部材5の後方側は、上側基板3よりも後方にはみ出してはみ出し部53が形成され、その上面53aが上方に露呈しているが、下側基板4の方がインク供給室形成部材5よりも大きく後方に張り出しており、張り出し部42が形成されている。
【0103】
インク供給室形成部材5の上面には、上側基板3に形成された第2の配線31と電気的に接続する第3の配線541が、その前端から後端に亘って形成されており、ヘッドチップ1Bの上側のチャネル部151と、第2の配線31、第1の配線171及び接続配線181を介して電気的に接続されているが、このインク供給室形成部材5の下面には第3の配線は形成されておらず、下側基板4表面の第2の配線41が、インク供給室形成部材5との固着面を通って張り出し部42の上面にまで延設されている。
【0104】
従って、ヘッドチップ1Bにおける上側のチャネル部151に対して駆動回路との電気的接続を行うための回路基板6aは、その配線61aがインク供給室形成部材5の上面に露呈している第3の配線541と電気的に接続するように接合される一方、下側のチャネル部152に対して駆動回路との電気的接続を行うための回路基板6bは、その配線61bが下側基板4の張り出し部42の上面に露呈している第2の配線41と電気的に接続するように接合されている。この接合作業は、図示下側の回路基板6bを下側基板4の張り出し部42に接合した後に、図示上側の回路基板6aをインク供給室形成部材5の上面に接合すればよい。
【0105】
このインクジェットヘッドDによれば、各チャネル部151、152内の駆動電極161、162と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことができ、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することができる利点がある。
【0106】
しかも、各回路基板6a、6bの接合作業の方向を一方向のみ(図18では図示上方向のみ)からとすることができるため、上下に対向する二方向からとなる図12に示す態様に比べ、回路基板6a、6bの接合作業性に優れたものとなる。
【0107】
また、回路基板6aとの電気的接続を行うための第3の配線541は、インク供給室形成部材5の上面にのみ形成すればよく、また、回路基板6bとの電気的接続を行うための第2の配線41は、下側基板4の表面にそのまま延設するだけでよく、同じく接合作業の方向が一方向となる図14及び図15に示す態様のようにインク供給室形成部材5の後面にまで第3の配線を引き回す必要がないため、配線形成も簡略化することができる。
【0108】
なお、上側基板3に回路基板6aを接合する張り出し部を形成し、第3の配線をインク供給室形成部材5の下面に形成することによって、図18を上下逆にした態様としてもよいことは勿論である。
【0109】
(第5の実施形態)
図19は、第5の実施形態に係るインクジェットヘッドEを示している。第1、第2及び第4の実施形態と同一符号は同一構成を示し、特に相違がない限り詳しい説明は省略する。
【0110】
このインクジェットヘッドEは、第4の実施形態に係るインクジェットヘッドDを複数用いて更にマルチノズル化を図った構成である。
【0111】
すなわち、駆動壁141、142及びチャネル部151、152が上下2段に形成されたヘッドチップ1Bを上側基板3及び下側基板4で挟着した状態の図18で示したインクジェットヘッドDを1単位とし、これを2つ(D1、D2)用いて上下方向に積層することにより、上下方向に合計4段の駆動壁141、142及びチャネル部151、152を有するインクジェットヘッドEを構成している。
【0112】
上下に積層される各インクジェットヘッド単位D1、D2の間には、図示するようにヒートシンク等の放熱部材7を設けることによって、駆動時の放熱対策を講じることが好ましい。
【0113】
ノズルプレート2は、各インクジェットヘッド単位D1、D2毎に形成してもよいが、図示するように全体で1枚のノズルプレート2を使用することが、ノズルプレート2の接合作業を簡略化できて好ましい。
【0114】
また、このインクジェットヘッドEも、インクジェットヘッド単位D1、D2を2段に積層するものに限らず、3段、4段と積層数を更に増加していくことによって、更なるマルチノズル化を図ることもできる。
【0115】
このインクジェットヘッドEによれば、各チャネル部151、152内の駆動電極161、162と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことができ、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することができる。
【0116】
なお、ここでは上側のインクジェットヘッド単位D1と下側のインクジェットヘッド単位D2は、互いの下側基板4同士が放熱部材7を挟んで対向するように積層されているが、これに限らない。例えば、図20に示すインクジェットヘッドFのように、図示上側のインクジェットヘッド単位D1の下側基板4と、下側のインクジェットヘッド単位D2の上側基板3とが放熱部材7を挟んで対向するように積層してもよい。
【0117】
この場合は、下側のインクジェットヘッド単位D2の上側基板3は、上側のインクジェットヘッド単位D1の張り出し部42が形成された下側基板4と略同一長さに形成されるようにし、そのインク供給室形成部材5の後方側は、この上側基板3の後端よりも大きくはみ出すように形成されると共に、下側のインクジェットヘッド単位D2の下側基板4は、上記インク供給室形成部材5の後方に大きく張り出した張り出し部42が形成されるようにすることにより、下側のインクジェットヘッド単位D2は、上側のインクジェットヘッド単位D1よりも後方側に長く形成されるようにすることが好ましい。
【0118】
これにより各回路基板6との接合面(インク供給室形成部材5の上面及び下側基板4の張り出し部42)は、図示するように階段状となるように形成される。従って、このようにすることで、図19に示す態様に比べ、各回路基板6との接合作業の方向を全て一方向(図20では上方向)のみから行うことができるため、接合作業性に優れたものとなる。特に、この態様では、各インクジェットヘッド単位D1、D2を上下方向に積層した後に、全ての回路基板6a、6b・・・を後付けすることができる利点もある。
【0119】
インクジェットヘッド単位D1、D2の積層数を3段、4段と更に増加していく場合も、上記同様に各回路基板6の接合面が階段状に形成されるようにすると、全ての回路基板6a、6b・・・を後付けすることができるためより好ましい。
【0120】
【発明の効果】
本発明によれば、各チャネル部内の駆動電極と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことのできる、生産性の高いインクジェットヘッドを提供することができる。
【0121】
また、本発明によれば、各チャネル部内の駆動電極と駆動回路からの配線との電気的接続を簡単に行うことのできる、生産性の高い高密度のインクジェットヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係るインクジェットヘッドを示す全体斜視図
【図2】図1に示すインクジェットヘッド縦断面図
【図3】第1の実施形態に係るインクジェットヘッドを示す要部分解斜視図
【図4】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図5】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図6】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図7】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図8】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図9】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図10】インクジェットヘッドの製造方法の一工程を示す図
【図11】第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの別の態様の要部を示す縦断面図
【図12】第2の実施形態に係るインクジェットヘッドを示す縦断面図
【図13】第2の実施形態に係るインクジェットヘッドのヘッドチップを示す斜視図
【図14】(a)は第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの別の態様の要部を示す縦断面図、(b)はそのインクジェットヘッドの後面を示す図
【図15】(a)は第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの更に別の態様の要部を示す縦断面図、(b)はその回路基板の表面を示す図
【図16】第2の実施形態に係るインクジェットヘッドのまた更に別の態様の要部を示す縦断面図
【図17】第3の実施形態に係るインクジェットヘッドを示す縦断面図
【図18】第4の実施形態に係るインクジェットヘッドを示す縦断面図
【図19】第5の実施形態に係るインクジェットヘッドを示す縦断面図
【図20】第5の実施形態に係るインクジェットヘッドの別の態様を示す縦断面図
【符号の説明】
A、B、C、D、E、F:インクジェットヘッド
1、1A、1B:ヘッドチップ
11:上部基板
12:圧電素子
13:下部基板
14:駆動壁
15:チャネル部
16:駆動電極
17:第1の配線
18:接続配線
2:ノズルプレート
21:ノズル孔
3:上側基板
31:第2の配線
4:下側基板
41:第2の配線
5:インク供給室形成部材
51:インク供給室
52:流入口
53:はみ出し部
54:第3の配線
6:回路基板
61:配線
62:駆動IC
7:放熱部材
Claims (17)
- 圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置されてなるヘッドチップの上面及び下面に、前記チャネル部の長さよりも長尺に形成された上側基板及び下側基板が固着され、
前記両基板の間に亘って前記ヘッドチップの後面に各チャネル部にインクを供給するためのインク供給室形成部材が設けられてなり、
前記ヘッドチップには、前記上側基板との固着面と前記下側基板との固着面の少なくとも一方に、前記駆動壁に形成された各駆動電極と電気的に接続される第1の配線が形成され、
前記上側基板と前記下側基板の少なくとも一方における前記ヘッドチップの前記第1の配線が形成された面との固着面側に、前記各第1の配線と電気的に接続される第2の配線が形成され、
前記インク供給室形成部材には、一端が前記第2の配線と電気的に接続されると共に他端が該インク供給室形成部材の外面において駆動回路と電気的に接続される第3の配線が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記第3の配線の他端は、前記インク供給室形成部材の後面側に引き出されており、該インク供給室形成部材の後面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 前記インク供給室形成部材は、前記両基板よりも後方にはみ出したはみ出し部を有し、前記第3の配線の他端は、前記第1の配線と電気的に接続される前記第2の配線が形成された前記上側基板と前記下側基板の少なくとも一方との前記はみ出し部における固着面と同一面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 前記ヘッドチップは、前記駆動壁と前記チャネル部とが上下方向に2段に形成されてなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェットヘッド。
- 請求項4記載のインクジェットヘッドを複数用い、各インクジェットヘッドを上下方向に多段状に積層してなることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 各インクジェットヘッドの間に放熱部材が設けられていることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。
- 圧電素子からなる駆動壁とチャネル部とが交互に並設されると共に前面及び後面にそれぞれチャネル部の出口と入口とが対向状に配置され、且つ、前記駆動壁と前記チャネル部とがヘッドチップの上下方向に2段に形成されてなるヘッドチップの上面及び下面に、前記チャネル部の長さよりも長尺に形成された上側基板及び下側基板が固着され、
前記両基板の間に亘って前記ヘッドチップの後面に各チャネル部にインクを供給するためのインク供給室形成部材が設けられてなり、
前記ヘッドチップには、前記上側基板及び下側基板との固着面に、前記駆動壁に形成された各駆動電極と電気的に接続される第1の配線が形成され、
前記上側基板及び下側基板には、前記ヘッドチップとの固着面側に、前記各第1の配線と電気的に接続される第2の配線がそれぞれ形成されると共に、上側基板及び下側基板のうちの一方の基板は、他方の基板よりも相対的に長尺に形成され、前記インク供給室形成部材よりも後方に張り出されて前記第2の配線によって駆動回路と電気的に接続される張り出し部が形成され、
前記インク供給室形成部材は、前記相対的に短尺な他方の基板との固着面に、一端が前記第2の配線と電気的に接続されると共に他端が該インク供給室形成部材の外面において駆動回路と電気的に接続される第3の配線が形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記第3の配線の他端は、前記インク供給室形成部材の後面側に引き出されており、該インク供給室形成部材の後面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッド。
- 前記インク供給室形成部材は、前記相対的に短尺な他方の基板よりも後方にはみ出したはみ出し部を有し、前記第3の配線の他端は、該はみ出し部における前記基板との固着面と同一面において駆動回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッド。
- 請求項7〜9のいずれかに記載のインクジェットヘッドを複数用い、各インクジェットヘッドを上下方向に多段状に積層してなることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 一つのインクジェットヘッドにおける前記相対的に長尺な基板に他のインクジェットヘッドにおける前記相対的に短尺な基板を対向させて上下方向に多段状に積層してなると共に、前記対向される相対的に長尺な基板と相対的に短尺な基板とは略同一長さに形成されてなることを特徴とする請求項10記載のインクジェットヘッド。
- 積層される各インクジェットヘッドの間に放熱部材が設けられていることを特徴とする請求項10又は11記載のインクジェットヘッド。
- 前記第1の配線は、前記各駆動電極から前記ヘッドチップの前面及び後面の少なくともいずれかの面を介して、前記上側基板及び/又は下側基板との固着面に引き出されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記インク供給室形成部材は、前記上側基板と下側基板との間に亘って前記ヘッドチップの後面を包囲するように設けられた壁部により形成され、前記両基板及び前記壁部で囲まれる空間によって、前記インク供給室を形成してなることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記駆動電極、第1の配線及び前記インク供給室に臨む前記第2の配線の表面に電極保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び下側基板のうちの少なくとも一つが、窒化アルミを成分に含むセラミックス、圧電材料及び液晶ポリマーのうちから選ばれるいずれかの材料からなることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記ヘッドチップにおける駆動壁以外の部材、前記上側基板及び下側基板のうちの少なくとも一つの熱膨張係数が、前記圧電素子の熱膨張係数の±2ppm/℃であることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
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