JP4373665B2 - 被覆型蛍光微粒子、その水分散液およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被覆型蛍光微粒子、その水分散液およびその製造方法に関し、詳しくは、アンダーラインマーカー、ボールペン、サインペン、インクジェット、捺染用等の水性インキ、絵の具、あるいはポスターカラー等用の水性塗料に用いられる被覆型蛍光微粒子、その水分散液およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶剤または樹脂に対して不溶な「蛍光顔料」としては、熱可塑性または熱硬化性樹脂の微粒子を溶剤または樹脂に可溶な蛍光染料で染め付けた(染着した)ものが広く用いられている。
一方、顔料に相当する結晶粒子そのものが蛍光を発するものの例は少ないが、顔料のごとく結晶性の微粒子でありながら、強い蛍光を発する一連のアゾ系化合物も知られている(特許文献1)。これらのアゾ系化合物は、高い耐光性を発揮する優れたものであるが、色相が赤色、橙色、黄色等の暖色に限られること、水性着色剤とするためには界面活性剤等の添加剤を用いて分散させる必要があること、水性分散液の流動性や貯蔵安定性を増すためには結晶粒子の形態を整える必要があること等の課題がある。
【0003】
蛍光染料によって樹脂微粒子を着色したもので、熱可塑性樹脂を主体とするものとしては、例えば次のようなものが知られている。
(1)水性ボールペン用蛍光色ゲルインキに用いられる親水性顔料として、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、スチレンを乳化重合して得られる平均粒径0.1〜1μmのポリマー微粒子の水分散体を蛍光性染料または蛍光増白剤で染着してなる蛍光色材(特許文献2)、
(2)生地印刷(捺染)インキ、グラビア印刷インキ、蛍光ペイント等に好適な10μm以下、好ましくは1μm以下の平均粒径を有する、蛍光染料およびモノマー(極性基のない水不溶性ビニルモノマー、ビニルニトリル、スルホネート基を含むビニルモノマーと、極性アクリレートエステル、極性メタクリレートエステル、ビニルアセテート、ヒドロキシル基またはカルボキシルエステル基を含む置換アクリルアミドより選択された極性ビニルモノマー)との混合物を水相で重合してなる蛍光顔料の水分散系(特許文献3)、
【0004】
(3)アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルおよび多官能性架橋性モノマーとクマリンまたはペリレン系列の非極性蛍光染料との混合物を懸濁重合してなる、ポリメチルメタアクリレートを主体とする重合体マトリックスと上記の非極性蛍光染料を実質的に含む蛍光顔料(特許文献4)、
(4)染料で染色された、シアノ基含有ビニルモノマー誘導体および1乃至2種類のビニルモノマー誘導体を水分散系でラジカル重合させて得られる粒径が0.05〜0.50μmの樹脂粒子を含有する水性インキ(特許文献5)、
(5)少なくとも、モノマー、モノマーに溶解可能な有機蛍光物質、界面活性剤および共界面活性剤を水中で分散乳化させて着色ミニエマルションを形成し、次いで、重合開始剤の存在下に重合して得られる平均粒径が90nm以下の蛍光性樹脂微粒子(特許文献6)等。
【0005】
蛍光染料によって樹脂微粒子を着色したもので、熱硬化性樹脂を主体とするものとしては、例えば、アミノ樹脂の初期反応物(予備縮合物)に蛍光性化合物を添加し、これをポリビニルアルコール等の保護コロイド剤を含む水溶液に攪拌下に投入して、アミノ樹脂の懸濁液を得、次いでこれに鉱酸や有機酸等の硬化触媒を加えて重縮合硬化を行い、得られた硬化樹脂を濾別し、加熱乾燥してから解砕したもの(特許文献7)等がある。
【0006】
以上のような蛍光染料によって樹脂微粒子を染め付けたタイプの蛍光顔料には、鮮やかな発色と優れた親水性を発揮するものがある反面、高い耐光性を付与するには染料の種類と樹脂の組み合わせに制約があり、蛍光染料の選択範囲が限定されるという問題、使用可能な蛍光染料として樹脂粒子形成用モノマー乃至オリゴマーに溶解するものを用いなければならないという問題、また、蛍光顔料として紙の表面に固定された後、軟質塩化ビニル樹脂シート等と接触させた場合に蛍光色素が該シートに移行(マイグレート)する恐れがあるという問題がある。
【0007】
また、「マイクロカプセル顔料」としては、例えば、ボールペン用白色インキ顔料としての酸化チタンを内包したマイクロカプセル顔料が知られており、このマイクロカプセル顔料は、油溶性樹脂および/または非水系分散剤を含む油性媒体中に酸化チタンが均質状態に分散してなる着色媒体を内包した、全粒子の80重量%以上が1〜10μmの粒径範囲にある顔料である(特許文献8)。しかしながら、特許文献8にはマイクロカプセルの種々の製法が記載されているが、蛍光染料または蛍光顔料をマイクロカプセルに内包させることについての記載はない。また、インクジェット用記録液で使用する、少なくとも水不溶性の色素(顔料または油溶性染料)と紫外線吸収剤または酸化防止剤とを共に含有するマイクロカプセル(粒径の最頻値が10μm以下である)も知られている(特許文献9)。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−26745号公報
【特許文献2】
特開平5−171095号公報
【特許文献3】
特開平6−220298号公報
【特許文献4】
特開平8−48899号公報
【特許文献5】
特開2001−181544号公報
【特許文献6】
特開2001−226595号公報
【特許文献7】
特開平7−278456号公報
【特許文献8】
特開2000−265105号公報
【特許文献9】
特許第2562634号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、耐光性に優れ、軟質塩化ビニル樹脂シート等への耐移行性を有し、分散安定性および貯蔵安定性に優れた被覆型蛍光微粒子、その水分散液およびその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、予め形成された疎水性樹脂に蛍光染料が溶解もしくは蛍光顔料が分散された蛍光微粒子が、乳化分散剤水溶液中に分散してなり、かつ、該蛍光微粒子の表面にアミノ樹脂膜が形成されていることを特徴とする被覆型蛍光微粒子水分散液およびそれから単離される被覆型蛍光微粒子が提供される。
また、本発明によれば、予め形成された疎水性樹脂中に、蛍光染料が溶解もしくは蛍光顔料が分散した蛍光性樹脂組成物またはその有機溶剤溶液を、乳化分散剤水溶液中に分散させて蛍光微粒子を形成する工程と、該蛍光微粒子表面にアミノ樹脂膜を形成させる工程とを含み、有機溶剤を使用した場合は、さらに、乳化分散状態を保ちながら前記有機溶剤を除去する工程を少なくとも含むことを特徴とする被覆型蛍光微粒子水分散液の製造方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の被覆型蛍光微粒子水分散液は、予め形成された疎水性樹脂に、蛍光染料を溶解もしくは蛍光顔料を分散させた蛍光性樹脂組成物またはその有機溶剤の溶液(以下、総称して蛍光性組成物と称する。)を、乳化分散剤の水溶液に乳化分散させ、その後に有機溶剤を使用した場合には有機溶剤を除去することで得られる、蛍光微粒子の水分散液である。
【0012】
本発明の水分散液中の蛍光微粒子は、従来の蛍光染料とモノマーとの混合物を懸濁重合して得られるものとは樹脂粒子中の蛍光染料等の存在形態は同じであるが、この懸濁重合による方法では使用するモノマーの種類が限られる。しかし、本発明では疎水性樹脂にはこのような制限はなく、有機溶剤に可溶な疎水性樹脂がいずれも使用できる利点がある。なお、本発明において被覆型とは、疎水性樹脂粒子中に蛍光染料または顔料が溶解または分散している蛍光微粒子の表面が、乳化分散剤で被覆されていることを意味する。
【0013】
以下に本発明の被覆型蛍光微粒子水分散液の製造材料および製造方法について説明する。
〔1〕製造材料
本発明に用いられる蛍光染料は、特に限定されないが、以下に列挙するような色素を好適に使用することができる。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー43、C.I.ソルベントイエロー44、C.I.ソルベントイエロー98、C.I.ソルベントイエロー104、C.I.ソルベントイエロー135、C.I.ソルベントイエロー160、C.I.ソルベントグリーン5等を挙げることができる。
【0014】
塩基性染料としては、例えば、C.I.ベイシックイエロー1、C.I.ベイシックイエロー40、C.I.ベイシックオレンジ22、C.I.ベイシックレッド1、C.I.ベイシックレッド13、C.I.ベイシックバイオレット7、C.I.ベイシックバイオレット10、C.I.ベイシックバイオレット11、C.I.ベイシックバイオレット16等を挙げることができる。なお、上記の塩基性染料は、一旦、酸性の水溶液とした後、アンモニア水で中和して析出させたものを水洗、乾燥したものを用いることが好ましい。
直接染料としては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー85、C.I.ダイレクトオレンジ8、C.I.ダイレクトレッド9等を挙げることができる。
【0015】
また、可視光線の波長領域にほとんど吸収を示さず、すなわち、無色で、有色の蛍光を発する化合物も使用することができる。赤色発光物質としては、例えば、ユーロピウムに、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオン、トリ−n−オクチルフォスフィンオキサイド等の配位子を1種または2種以上配位させた錯体が、緑色発光物質としては、例えば、3−(2−キノリルメチレン)イソインドリン−1−オンが、青色発光物質としては、例えば、蛍光増白剤として知られている、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント52、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント55、C.I.フルオレッセントブライトニングホワイテックスWS52、C.I.フルオレッセント112、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント135、C.I.フルオレッセント162、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント184等をそれぞれ挙げることができる。
【0016】
本発明に用いられる蛍光顔料は、特に限定されないが、例えば、特許文献1(特開2000−26745号公報)に記載の黄色、橙色、赤色のアゾ顔料等を挙げることができる。これらのアゾ顔料は、平均粒径0.05乃至1μmに微分散して用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる疎水性樹脂としては、後述の有機溶剤に可溶であるもの、あるいは、50乃至100℃において溶融し、溶融状態で水中に乳化分散可能であるものを好適に使用することができる。具体的には、例えば、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリインデン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリビニルピリジン、ポリアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルベンジルエーテル、
【0018】
ポリビニルメチルケトン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、ポリメタクリロニトリル、ポリアセトアルデヒド、ポリクロラール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート類(ビスフェノール類+炭酸)、ポリ(ジエチレングリコール・ビスアリルカーボネート)類、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アセチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローストリブチレート、エポキシ樹脂(ビスフェノール類+エピクロルヒドリン)等の樹脂およびこれらの樹脂を形成するモノマーの共重合・共重縮合体を好適に使用することができる。
【0019】
また、本発明に用いられる有機溶剤としては、沸点または水との共沸温度が100℃未満であって、水と微溶するものも用いることができるが、水と相溶性がないものが好ましい。具体的には、エステル類(例えば、酢酸メチルや酢酸ブチル等)、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン等)、炭化水素類(例えばベンゼン等)、および炭化水素の塩素置換体(例えば、塩化メチレンやクロロホルム等)から使用する疎水性樹脂に応じて好適に選択して用いることができる。
【0020】
〔2〕製造方法
(1)蛍光性組成物の調製
蛍光性組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、蛍光染料または蛍光顔料と有機溶剤を攪拌機付き容器に入れ、攪拌しながら溶解または分散させ、そこに、疎水性樹脂を投入し、溶解または分散して蛍光性組成物を得ることができる。ここで、疎水性樹脂が50乃至100℃において溶融し、充分な流動性を有する場合は、必ずしも有機溶剤を用いる必要はない。有機溶剤の使用量は、疎水性樹脂100重量部に対し、5乃至200重量部が好ましく、さらに好ましくは20乃至100重量部である。5重量部未満では、蛍光性組成物の粘度が高く、水相中に乳化分散させる時に微粒子化できなくなり、200重量部を超える場合には、体積基準の粒径の粒度分布がブロードになる。
【0021】
蛍光染料の使用量は、疎水性樹脂に対し、0.1乃至10重量%が好ましい。0.1重量%未満では蛍光微粒子の蛍光強度が低く、また、10重量%を超える場合には、溶剤除去後の疎水性樹脂への蛍光染料の溶解性が低下して大きな結晶として析出するおそれや、いわゆる濃度消光の現象によって蛍光強度が低くなるおそれがある。
【0022】
また、蛍光顔料の使用量は、疎水性樹脂に対し、0.1乃至50重量%が好ましく、0.1重量%未満では、蛍光微粒子の蛍光強度が低く、また、50重量%を超える場合には、蛍光微粒子の凝集が強くなり、蛍光性組成物を水中に乳化分散させることが困難になる。
【0023】
(2)蛍光性組成物の乳化分散剤水溶液中への乳化分散
上記の蛍光性組成物を乳化分散剤水溶液中へ乳化分散させるために、乳化分散剤を適度な濃度にした乳化分散剤水溶液を用意する。
本発明で用いられる乳化分散剤としては、水溶性高分子化合物、特に無水マレイン酸共重合体が好ましい。無水マレイン酸の共重合成分は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、ジイソブチレン等の直鎖状または側鎖を有するオレフィン炭化水素であり、主にα−オレフィンが用いられる。その他スチレン、メチルビニルエーテルとのコポリマー等が用いられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、公知の方法によりアルカリ等による中和物およびアルコール類によるエステル化物として使用することもできる。
【0024】
使用する乳化分散剤の濃度としては、0.5乃至20重量%が好ましく、さらに好ましくは2乃至10重量%である。0.5重量%未満では、乳化粒子の分散安定性が充分でなく、また、20重量%を超えると、乳化分散剤水溶液の粘度が高くなり、目的の粒径が得られ難くなる。
【0025】
蛍光性組成物を乳化分散剤水溶液中へ乳化分散させる方法は、蛍光性組成物を均一に分散できる限り特に制限されず、ホモミキサー、ホモジナイザー等の公知の攪拌装置を用いて、乳化分散剤水溶液中に蛍光性組成物を分散させて水中油型の乳化分散液を調製する。なお、有機溶剤を使用する場合、乳化温度は有機溶剤の沸点より低く設定することが好ましく、有機溶剤が揮発性の高いものであれば、蛍光性組成物ならびにそれらの乳化分散液を調製するまで、適正な温度に調整して操作しなければならない。
【0026】
蛍光性組成物を乳化分散させる際のこれらと乳化分散剤水溶液の使用割合は、蛍光性組成物100重量部に対して、乳化分散剤水溶液は100乃至400重量部の割合が好ましい。100重量部未満では、これらが乳化分散し難くなり、また400重量部を超える場合には、固形分量が低くなるため、生産性が悪くなる。
【0027】
(3)乳化分散液からの有機溶剤の除去
上記で得られた乳化分散液から溶剤を除去する方法は、重合体溶液から転相法により重合体ラテックスを製造する際等の溶剤除去方法が使用でき、特に限定されない。例えば、攪拌機の付いた密閉式軸シール機構の容器に上記で得た乳化分散液を入れ、系内全体が流動する程度に攪拌する。使用する有機溶剤により異なるが、選択された有機溶剤に適した温度と真空状態をコントロールしながら溶剤を除去することで、疎水性樹脂に蛍光染料が溶解、または蛍光顔料が分散した蛍光微粒子が乳化分散剤水溶液に分散した、被覆型蛍光微粒子水分散液が得られる。なお、上述のように疎水性樹脂が充分な流動性を有し、有機溶剤を使用しない場合は、本工程を行う必要はない。
【0028】
このようにして得られる本発明の被覆型蛍光微粒子水分散液中の被覆型蛍光微粒子(蛍光微粒子の表面が乳化分散剤で被覆された親水性の微粒子)は、実質的に球形であり、体積平均粒径は0.1乃至20μmの範囲が好ましい。また、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.25以下および50体積%径に対する75体積%径の比が0.75以上、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の1乃至30%の範囲内にあることが好ましい。
このようにして得られた被覆型蛍光微粒子水分散液では、乳化分散剤として用いた水溶性高分子化合物が蛍光微粒子の表面において親水性のスキン層膜となり得る。
【0029】
本発明の水中に乳化分散された蛍光微粒子の表面には、さらにアミノ樹脂膜を形成することができる。アミノ樹脂膜を形成することにより蛍光微粒子中の蛍光染料の軟質塩化ビニル樹脂シート等への移行(マイグレーション)が防止され、また、保存(貯蔵)安定性が向上する。以下にアミノ樹脂膜の形成方法について説明する。
上記で得られた被覆型蛍光微粒子水分散液(室温まで冷却した)に、アミノ樹脂膜形成成分のアミノ樹脂原料を添加する。次いで、温度60乃至80℃において重縮合反応を行うことで、蛍光微粒子表面にアミノ樹脂膜を形成させることができる。
【0030】
本発明で用いられるアミノ樹脂膜形成成分としては、1分子あたり少なくとも2個のアミノ基を有するアミン、例えば、尿素、メラミン、グアニジン、N−メチル尿素、チオ尿素等と、ホルムアルデヒドを用いることができる。好ましくは、それらの重縮合反応により得られるアミノ樹脂前駆体(初期縮合物)、具体的には、尿素−ホルムアルデヒド(メチロール尿素)樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド(メチロールメラミン)樹脂または尿素−メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等の初期縮合物またはこれらの変性物等を用いることができる。適宜にレゾルシン、カテコール、ピロガロール等の多価フェノール類やブタノール等のアルコール等により変性したものも使用することができる。
【0031】
アミノ樹脂膜形成成分の使用量(固形分)は、蛍光微粒子(固形分)100重量部に対し、5乃至30重量部が好ましい。5重量部未満では、蛍光微粒子表面にアミノ樹脂膜が形成され難く、30重量部を超えると、蛍光微粒子の蛍光強度を阻害するおそれがある。
【0032】
以上の方法で得られた被覆型蛍光微粒子水分散液から、被覆型蛍光微粒子(蛍光微粒子の表面が乳化分散剤で被覆された親水性の微粒子)を分離することも可能である。分離する方法は、特に限定されないが、例えば、フラッシュドライヤー等の通常の粉体物の製造に使用される乾燥手段が使用可能である。分離された被覆型蛍光微粒子は、親水性であるため再び水に分散して水分散液とすることができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例、比較例及び応用例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
【0034】
実施例1
(1)蛍光性組成物の調製
疎水性溶剤として酢酸エチル100重量部および蛍光色素としてダイヤレジンエロー3G(三菱化学社製:C.I.ソルベントイエロー98相当品)0.5重量部をセパラブルフラスコに入れ、室温で溶解する。次に攪拌しながら疎水性樹脂としてポリスチレン(重量平均分子量約30万)99.5重量部を投入し、溶解させて蛍光性組成物を得た。
(2)乳化分散剤水溶液の調製
乳化分散剤としてイソブチレン−無水マレイン酸共重合体の約22重量%水溶液(日昇工業社製「MICRON8020」)45.5重量部および水154.5重量部を混合し、乳化分散剤水溶液を得た。
【0035】
(3)蛍光性組成物の乳化分散
容量500mlのセパラブルフラスコに上記の乳化分散剤水溶液の全量を投入し、これを水浴中に入れ、水浴の温度を5乃至10℃に保持する。高速回転型攪拌機(特殊機化工業社製「TKオートホモミキサーROBO MICS」)をセパラブルフラスコに設置し、飛散防止用の平板を下ろして液面近くに設置する。液温が5乃至10℃に保持されてから、回転数4,000rpmで攪拌しながらフラスコに蛍光性組成物を投入し、しばらく攪拌を継続し、目視により混濁状態が認められた時点でほぼ予備混合を終了した。速やかに回転数を10,000rpmに上昇し、15分間高速攪拌を行った。その間、乳化液の温度が10℃を超えないように水浴の温度を調整した。
【0036】
(4)溶剤除去
密閉式軸シール機構付きのセパラブルフラスコに汎用攪拌機を取り付け、上記の乳化液を投入し、回転数400rpmで攪拌する。水浴を40℃に加熱し、フラスコの内容物が飛散しないよう、徐々に減圧して酢酸エチルを蒸発させ、セパラブルフラスコ上部に取り付けた溶剤トラップを通じて酢酸エチルを除去した。
以上の操作により、本発明の被覆型蛍光微粒子水分散液を得た。酢酸エチルを除去する際、水分の一部も揮発したため、常圧下、105℃にて2時間乾燥後、得られた被覆型蛍光微粒子水分散液の固形分は、40重量%であった。
【0037】
この水分散液の極少量をシリコン基板上で乾燥した後、走査型電子顕微鏡で観察したところ、すべての粒子が実質的に真球状であることが判った。
試験のため、得られた被覆型蛍光微粒子水分散液を少量採取し、電解液(ISOTON−II)に入れて拡散させ、コールターカウンター(ベックマン・コールター社製「マルチサイザーII」)により、孔径50μmのアパチャーチューブを使用して粒度分布を測定した。その結果、体積平均粒径は5.0μm、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.21および50体積%径に対する75体積%径の比が0.78、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の26%であった。
得られた被覆型蛍光微粒子水分散液を固形分20重量%に希釈し、No.8バーコーターで上質紙に塗工および乾燥させた。得られた試験紙に、63℃にてフェードメーターで人工太陽光を照射して耐光(候)性試験を行った結果、蛍光強度が半減するまでの時間は13時間であった。
【0038】
応用例1
実施例1の被覆型蛍光微粒子水分散液20重量部を水30重量部で希釈して固形分を16重量%とし、これに結着剤としてメタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(アンモニウム塩)共重合体20重量部、ノニオン系分散剤2重量部、プロピレングリコール10重量部、および、水18重量部を含む結着剤溶液を加え、ディゾルバーを用いて攪拌・分散させて蛍光性黄色水性着色剤を作製した。
【0039】
繊維束を樹脂で結着させてなるペン体を固定したペン体ホルダーを、弁機構を介して先端に嵌着したアルミニウム円筒体からなり、マーキング時にペン先を紙面に押しつけて弁を開放させて筒内のインクをペン先に導出するタイプのマーキングペンのペン体を用意し、これに得られた蛍光性黄色水性着色剤を充填して蛍光性黄色マーカーペンを作製した。このマーカーペンを用いて中性紙に筆記したところ、得られた描線は鮮やかな蛍光性黄色であり、通常の使用条件で高い耐久性を示した。
また、このマーカーペンを、(1)ペン先を下に向けて縦置きした場合、(2)ペン先を上に向けて縦置きした場合、および、(3)横置きした場合について、それぞれ暗所に室温で長期保存試験したところ、1年放置後も、(1)乃至(3)のいずれの場合も、問題なく筆記することができた。すなわち、蛍光性黄色水性着色剤は高い保存安定性を示した。
【0040】
比較例1
実施例1と比較するため、蛍光染料で着色した樹脂を粉砕・分級して疎水性蛍光性黄色の粉末を以下のようにして試作した。
蛍光色素としてダイヤレジンエロー3G(三菱化学社製)10重量部と疎水性樹脂としてポリスチレン(重量平均分子量約30万)90重量部を3本ロールにて150℃以下で混練した。混練物を目開き1mmのフルイを通過するまで粗粉砕して得たマスターバッチ5重量部を、目開き1mmのフルイを通過するまで粗粉砕したポリスチレン(重量平均分子量約30万)95重量部と充分に希釈混合した後、3本ロールに150℃以下で混練し、得られた混練物を目開き1mmのフルイを通過するまで粗粉砕した。これをエアジェット式粉砕機によりさらに粉砕した後、分級して平均粒径5.5μmの疎水性蛍光性黄色粉末を得た。粒径はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリムを用いて電解液(ISOTON−II)中に分散させ、前記コールターカウンターを使用して測定した。体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比は1.23、および、50体積%径に対する75体積%径の比が0.95、かつ体積基準の粒径の標準偏差は体積平均粒径値の16%であった。
【0041】
比較応用例1
比較例1で得た疎水性蛍光性黄色粉末20重量部を、結着剤としてメタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(アンモニウム塩)共重合体20重量部、ノニオン系分散剤2重量部、プロピレングリコール10重量部、および、水48重量部を含む結着剤溶液に加え、ディゾルバーを用いて攪拌した後、3本ロールを用いて分散させた。この分散液を応用例1で用いたのと同様なマーカーペンに充填して蛍光性黄色マーカーペンを作成した。このマーカーペンを用いて中性紙に筆記したところ、当初、得られた描線は鮮やかな蛍光性黄色であった。しかしながら、このマーカーペンを(1)ペン先を下に向けて縦置きした場合(2)ペン先を上に向けて縦置きした場合、および(3)横置きした場合について、それぞれ暗所に室温で保存試験したところ、1ヶ月放置後において、(1)乃至(3)のいずれの場合も、筆記できなくなった。放置後の充填液(もはや分散液ではない)を光学顕微鏡で観察したところ、粉砕された多種多様な形態のポリスチレン微粒子が、密集した凝集体を形成していることが判った。
すなわち、蛍光染料で着色した樹脂を粉砕・分級して製造した比較例1の疎水性蛍光性黄色粉末は、初期の粒度分布は実施例1の場合と同等以上の狭さではあるが、粒子外壁が粗雑な破断面で構成されていること、および、本質的に疎水性であることから、室温放置でも容易に凝集してしまったことが判る。
【0042】
実施例2
(1)アミノ樹脂膜形成成分の調製
100mlのビーカーに尿素(純度99%以上の試薬)9.5重量部とメラミン(純度99%以上の試薬)4.1重量部とを採取し、ホルムアルデヒド水溶液(37重量%)30.8重量部を入れ、攪拌しながら60℃の水浴中で20分間反応させ、反応後25℃に冷却しメラミン−尿素−ホルムアルデヒド初期縮合物を得てアミノ樹脂膜形成成分とした。
【0043】
(2)アミノ樹脂膜の形成
実施例1と同様の操作により得た被覆型蛍光微粒子水分散液をセパラブルフラスコに入れ、汎用の攪拌機を装着して攪拌しながら上記のアミノ樹脂膜形成成分を壁面に沿わせて静かに全量入れ、セパラブルフラスコを60℃の水浴中に設置した。液温が60℃に達してから3時間かけて、膜形成成分を反応させてアミノ樹脂膜を蛍光微粒子上に形成させた。熱源を切った後、更に約10時間攪拌を継続した。その後、攪拌しながら28重量%アンモニア水を約5.2重量部入れ、更に20重量%水酸化ナトリウムを約1.6重量部入れてpH9に調整し、アミノ樹脂膜を有する蛍光微粒子が乳化分散剤水溶液中に分散した被覆型蛍光微粒子水分散液を得た。その水分散液中の該微粒子の粒度分布を測定した結果、体積平均粒径が5.2μm、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.16および50体積%径に対する75体積%径の比が0.81、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の25%であった。
【0044】
得られた被覆型蛍光微粒子水分散液(固形分は40重量%)を水で希釈して固形分20重量%とし、これをNo.8バーコーターで上質紙に塗工した。得られた試験紙を63℃にてフェードメーターに掛けて耐光性試験を行った結果、蛍光強度が半減するまでの時間は14時間であった。また、この水分散液の極少量をシリコン基板上で乾燥した後、走査型電子顕微鏡で観察したところ、すべての粒子が実質的に真球状であることが判った。
【0045】
応用例2
実施例2の被覆型蛍光微粒子水分散液(固形分40重量%)20重量部に水30重量部を加えた水分散液に、結着剤としてメタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−アクリル酸(アンモニウム塩)共重合体20重量部、ノニオン系分散剤2重量部、プロピレングリコール10重量部、および、水18重量部を含む結着剤溶液を加え、ディゾルバーを用いて攪拌・分散させて蛍光性黄色水性着色剤を作成した。これを応用例1の場合と同様のペン体に充填して蛍光性黄色マーカーペンを作製し、これを用いて中性紙に筆記した。得られた描線は鮮やかな蛍光性黄色であり、通常の使用条件で高い耐久性を示した。すなわち、無蛍光の中性紙の全面に前記マーカーペンで着色し、63℃にてフェードメーターに掛けて耐光性試験を行った結果、蛍光強度が半減するまでの時間は14時間であった。
また、このマーカーペンを(1)ペン先を下に向けて縦置きした場合、(2)ペン先を上に向けて縦置きした場合、および、(3)横置きした場合について、暗所、50℃で加速保存試験したところ、3ヶ月放置後においても(1)乃至(3)のいずれの場合も、問題なく筆記することができた。すなわち、本応用例の蛍光性黄色水性着色剤は高い保存安定性を示した。
【0046】
〔マイグレーション試験〕
本発明の被覆型蛍光微粒子水分散液中の被覆型蛍光微粒子について、日常生活環境における色素の移行(マイグレーション)の有無を調べるため、以下のような「コーヒーカップ試験」を実施した。この試験は、日常生活で想定される状況を再現するものとして、紙上に形成された色素を含む塗工膜に、軟質塩化ビニル樹脂シート(テーブルクロス)に密着させ、その軟質塩化ビニル樹脂シート上にコーヒーカップを置いて放置した状況を想定したものであって、以下の手順で実施される。
【0047】
(1)試験対象の色素を含む塗工膜をアート紙または白ボール紙(例えば80mm×110mm)上に形成する。ここでは、応用例2のマーカーペンにて紙面全面に筆記したもの、応用例2の蛍光性黄色水性着色剤をバーコーターで塗工し、80℃で1時間乾燥したもの、実施例2の被覆型蛍光微粒子水分散液を直接、バーコーターで塗工したものの3種類の塗工膜を試験した。
(2)厚さ1cm、縦横30cmのガラス板およびコーヒーカップ(例えば、糸底の外径44mm、内径38mm:底面積3.864cm2)にガラスビーズを入れ、総重量386.4g(糸底における圧力100g/cm2(0.01MPa))としたものを80℃に設定した送風恒温機(ヤマト科学社製DN40型)の内部に設置し、全体の温度を80℃に昇温する。
【0048】
(3)上記塗工膜を、塗工面を上にして上記の送風恒温機内のガラス板上に置き、その上に、無色の軟質塩化ビニル樹脂シート(テーブルクロスとして市販されているもの:厚さ0.5mm;80mm×110mm)を重ねる。
(4)上記軟質塩化ビニル樹脂シート上に前記のコーヒーカップを置き、1時間放置する。
(5)軟質塩化ビニル樹脂シートに、この場合では、色素の輪の形成が確認された場合を色素が移行(マイグレーション)したと判定する。
結果は、上記3種類の塗工膜のいずれからも、黄色蛍光色素の移行は全く観察されなかった。
【0049】
比較応用例2
種々の市販の顔料タイプの黄色水性蛍光マーカーペンを用いて、応用例2の場合と同様にして耐光性試験を行ったところ、結果は応用例2と同等であった。また、色素の移行(マイグレーション)を試験したところ、いずれの場合もコーヒーカップの糸底部分だけでなく、その周辺部分にも色素の移行が認められた。これは、市販の顔料タイプの黄色水性蛍光マーカーペンに用いられている蛍光顔料の表面がアミノ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆されていないためであると推測される。
【0050】
実施例3
アミノ樹脂膜形成工程におけるアミノ樹脂膜形成成分を、市販の60重量%メラミンホルムアルデヒド樹脂プレポリマー(東邦理化社製MR−280)41.7gに代えた以外は実施例2と同様にしてアミノ樹脂膜を有する被覆型蛍光微粒子水分散液を得た。その水分散液中の被覆型蛍光微粒子の粒度分布を測定した結果、体積平均粒径が5.1μm、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.2および50体積%径に対する75体積%径の比が0.82、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の26%であった。実施例2同様に上質紙に塗工し、耐光性試験を行った結果、蛍光強度が半減するまでの時間は13.5時間であった。また、この分散液の極少量をシリコン基板上で乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、図1に示すように、すべての粒子が実質的に真球状であることが判った。
【0051】
応用例3
実施例3の被覆型蛍光微粒子水分散液(固形分40重量%)を用いた他は応用例2と同様にして蛍光性黄色水性着色剤および蛍光性黄色マーカーペンを作製し、応用例2の場合と同様にして耐光性試験、加速保存試験、色素の移行性を試験した。その結果、蛍光強度が半減するまでの時間は13.5時間であり、暗所、50℃で3ヶ月放置後も該微粒子は凝集を起こさなかった。また、色素の移行は全く観察されなかった。
【0052】
実施例4
乳化分散工程においてホモジナイザーによる乳化条件を10,000rpm×30分に代えた以外は実施例2と同様にして、アミノ樹脂膜を有する蛍光微粒子が乳化分散剤水溶液中に分散した被覆型蛍光微粒子水分散液を得た。その分散液中の被覆型蛍光微粒子の粒度分布を測定した結果、体積平均粒径が2.1μm、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.18および50体積%径に対する75体積%径の比が0.83、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の25%であった。実施例2と同様に上質紙に塗工し、耐光性試験を行った結果、蛍光強度が半減するまでの時間は14時間であった。また、この分散液の極少量をシリコン基板上で乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、すべての粒子が実質的に真球状であることが判った。
【0053】
応用例4
実施例4の被覆型蛍光微粒子水分散液(固形分40重量%)を用いた他は応用例2と同様にして蛍光性黄色水性着色剤および蛍光性黄色マーカーペンを作製し、応用例2の場合と同様にして耐光性試験、加速保存試験、色素の移行性を試験した。結果は、蛍光強度が半減するまでの時間は14時間であり、暗所、50℃で3ヶ月放置後も該微粒子は凝集を起こさなかった。また、色素の移行は全く観察されなかった。
【0054】
比較例2
疎水性樹脂であるポリスチレンに代えて有機溶剤SAS296(新日本石油化学社製:沸点290℃以上)を使用した以外は実施例2と同様にして被覆型蛍光微粒子水分散液(蛍光微粒子内部は液体)を得た。この水分散液中の該微粒子の粒度分布を測定した結果、体積平均粒径が5.1μm、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.21および50体積%径に対する75体積%径の比が0.78、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の25%であった。実施例2同様に上質紙に塗工し、耐光性試験を行った結果、蛍光強度が半減するまでの時間が2.5時間であった。
以上の結果から、本発明の被覆型蛍光微粒子は、従来の蛍光顔料より耐光性が優れていることが判る。
なお、比較例2の被覆型蛍光微粒子水分散液を上質紙に塗工した膜について、応用例2の場合と同様に色素の移行(マイグレーション)試験を行ったところ、蛍光色素の移行は全く確認されなかった。被覆型蛍光微粒子の内部が液体であっても、アミノ樹脂層による被覆が色素の移行を防止したことが判る。
【0055】
実施例5
蛍光色素・ダイヤレジンエロー3Gに代えてスミプラストエローFL−7G(住友化学社製:C.I.ソルベントグリーン5相当品)を用いた他は実施例1と同様にして被覆型蛍光微粒子水分散液を得た。これを常圧下105℃にて2時間乾燥した後の固形分は40重量%であった。この水分散液の極少量をシリコン基板上で乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、すべての粒子が実質的に真球状であることが確認された。
【0056】
上記水分散液中の被覆型蛍光微粒子の粒度分布を測定した結果、体積平均粒径が4.8μm、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.22および50体積%径に対する75体積%径の比が0.86、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の21%であった。上記の被覆型蛍光微粒子水分散液を固形分20重量%に希釈し、これをNo.8バーコーターで上質紙に塗工し、得られた試験紙を63℃にてフェードメーターに掛けて耐光性試験を行った結果、蛍光強度が半減するまでの時間は15時間であった。
【0057】
実施例6
実施例1の被覆型蛍光微粒子水分散液に代えて実施例5の被覆型蛍光微粒子水分散液を用いた他は実施例2と同様にして、アミノ樹脂膜を有する蛍光微粒子が乳化分散剤水溶液中に分散した被覆型蛍光微粒子水分散液を得た。これを常圧下105℃にて2時間乾燥した後の固形分は40重量%であった。この分散液の極少量をシリコン基板上で乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、すべての粒子が実質的に真球状であることが確認された。
上記水分散液中の該微粒子の粒度分布を測定した結果、体積平均粒径が4.9μm、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.21および50体積%径に対する75体積%径の比が0.85、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の22%であった。実施例2と同様に上質紙に上記の水分散液を塗工し、耐光性試験を行なった結果、蛍光強度が半減するまでの時間は16時間であった。
【0058】
応用例5
実施例6の被覆型蛍光微粒子水分散液(固形分40%)を用いた他は応用例2と同様にして蛍光性黄色水性着色剤および蛍光性黄色マーカーペンを作製し、応用例2の場合と同様にして耐光性試験、加速保存試験、色素の移行性を試験した。結果は、蛍光強度が半減するまでの時間は15時間であった。暗所、50℃で3ヶ月放置後も該微粒子は凝集を起こさなかった。また、色素の移行は全く観察されなかった。
【0059】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、耐光性に優れ、分散安定性および貯蔵安定性に優れ、また、アミノ樹脂膜を有するものは軟質塩化ビニル樹脂シート等へ移行(マイグレート)しない被覆型蛍光微粒子水分散液が提供される。また、本発明によれば、多種類の蛍光染料または蛍光顔料を原料として使用することができる被覆型蛍光微粒子水分散液の製造方法が提供される。本発明の被覆型蛍光微粒子水分散液は、アンダーラインマーカー、ボールペン、サインペン、インクジェット、捺染用等の水性インキ、絵の具、あるいはポスターカラー等用の水性塗料の製造に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例3の被覆型蛍光微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
Claims (5)
- 予め形成された疎水性樹脂に蛍光染料が溶解もしくは蛍光顔料が分散された蛍光微粒子が、乳化分散剤水溶液中に分散してなり、かつ、該蛍光微粒子の表面にアミノ樹脂膜が形成されていることを特徴とする被覆型蛍光微粒子水分散液。
- 水分散液中の被覆型蛍光微粒子が実質的に球形である請求項1に記載の被覆型蛍光微粒子水分散液。
- 水分散液中の被覆型蛍光微粒子の体積平均粒径が0.1乃至20μmであり、体積基準の粒径の粒度分布において、大粒子径側から積算した50体積%径に対する25体積%径の比が1.25以下および50体積%径に対する75体積%径の比が0.75以上、かつ体積基準の粒径の標準偏差が体積平均粒径値の1乃至30%の範囲内にある請求項2に記載の被覆型蛍光微粒子水分散液。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆型蛍光微粒子水分散液から分離されてなることを特徴とする被覆型蛍光微粒子。
- 予め形成された疎水性樹脂中に蛍光染料が溶解もしくは蛍光顔料が分散した蛍光性樹脂組成物またはその有機溶剤溶液を、乳化分散剤水溶液中に分散させて蛍光微粒子を形成する工程と、該蛍光微粒子表面にアミノ樹脂膜を形成させる工程とを含み、有機溶剤を使用した場合は、さらに、乳化分散状態を保ちながら前記有機溶剤を除去する工程を少なくとも含むことを特徴とする被覆型蛍光微粒子水分散液の製造方法。
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