JP4370101B2 - リチウム二次電池用高純度モノ及びジ(メタ)アクリル酸エステルの製造法 - Google Patents

リチウム二次電池用高純度モノ及びジ(メタ)アクリル酸エステルの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム二次電池の高分子ゲル電解質成分として用いられる高純度なモノ及びジメタクリル酸エステルの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話、カメラ一体型VTR,ノート型パソコン、ヘッドホーンステレオ、MDプレイヤー等の携帯用電子機器の電源として小型リチウム二次電池が注目され、更に、将来的には電気自転車、自動二輪車、電気自動車及び産業車両等の電源及び余剰電力の貯蔵が出来る大容量リチウム二次電池が注目されている。特に情報化産業を担っている各種携帯用電子機器の機能の多様化と機器の軽量化に伴い、更に薄い形状、高容量の他に、電解液の溶媒としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム類、γ―ブチロラクトン、N−メチルー2−ピロリドン、2−メチルテトラヒドロフラン等の低分子化合物を使用する電池では液漏れや発火性においてより安全性の高い機能を有するリチム電池の開発が望まれている。
【0003】
液漏れの問題を解決する技術として高分子ゲル電解質の利用が提案されている。例えば、特開平5−67476号公報ではポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート重合体からなる網状ポリマーの中に(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体を含有する高分子固体電解質が開示されている。特開平5−109310号公報ではポリエチレングリコールジアクリレート及びポリエチレングリコールジメチルエーテルとCF3SO3Liとからなる電解質を混合し、これに電子線を照射することよりゲル状の電解質を得る方法が開示されている。特開平9−50802号公報ではポリエチレンオキシドと電極活性物質と非水電解質とからなる混合物をプレス加工して得たベースフィルムに、エチレンオキシド鎖を有するポリエーテルのアクリレートまたはメタクリレートからなるモノマー溶液を塗布し、これに光を照射することにより、複合電極を得る方法が開示されている。特開2000−133308号公報では有機ポリマーがオリゴ(オキシアルキレン)基を含有する第一のモノマー、ビニル基とカーボネート基またはシアノ基のいずれかの極性基を含有するモノマー、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、ペンタ(エチレングリコール)ジメタクリレートのようないくつかのエチレングリコールを介したジ(メタ)アクリレートを含有する第三のモノマーとの共重合体であることを特徴とする非水二次電池が開示されている。また、特開2000−164033号公報ではポリアクリロニトリルと化学結合による三次元網目構造を有する高分子化合物(例えばポリエチレングリコールジメタクリレート及びポリエチレングリコールジアクリレート等のうち少なくとも一方が架橋性の官能基において架橋された化合物)と電解質塩とこの電解質塩を溶解する溶媒を含むことを特徴とする電解質及び電池が開示されている。
【0004】
一方、特許第32440017号公報ではリチウム二次電池の電池特性を良くするためには非水溶媒中のモノアルコール類及びジオール類が極力少なくすることが効果的であることが開示されている。更に特開2002−193892公報においてもリチウム二次電池用電解液の溶媒として用いられるカーボネートについても微量に含まれるアルコールやエーテル等の不純物を高度に除去する高純度カーボーネートの製造方法が開示されている。
【0005】
これらの観点からリチウム二次電池用高分子電解質に用いられるモノ及びジ(メタ)アクリル酸エステルは不純物の少ない高純度のものが望まれている。
【0006】
(メタ)アクリル酸エステルの製造法としては特開2002−179653公報において(メタ)アクリル酸ピペリジニルエステル誘導体の製造法が開示されているが、反応性HALS(HALS: Hindered Amine Light Stabilizer)として用いられるものでリチウム二次電池用のモノマーとしての記載はない。リチウム二次電池用高分子電解質に用いられるモノ及びジ(メタ)アクリル酸エステルは液漏れや電池特性の観点から化学構造の面で(メタ)アクリル酸ピペリジニルエステル誘導体と異なっており、不純物の少ない高純度のものが望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、リチウム二次電池における液漏れや電池特性を改良するため、高分子電解質のモノマー成分である高純度のモノ及びジメタクリル酸エステルの製造法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、一般式(1)で示されるグリコール誘導体
【0009】
【化4】
(式中、Rメトキシ基、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル基、ヒドロキシ基を示し、AOはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の1種又は2種の混合物を示し、2種の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、mはエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基の平均付加モル数であり1乃至100の数を示す。)と一般式(2)で示されるメタクリル酸エステル
【0010】
【化5】
(式中、Rはメチル基を示し、またRはメチル基又はエチル基を示す。)をテトライソプロピルチタネート触媒存在下エステル交換し、
(a)酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し、第二リン酸ソーダで処理し、又は
(b)酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し
減圧下で低沸物の留去を行い、瀘過することを特徴とする一般式(3)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステル
【0011】
【化6】
(式中、R、AOおよびmは前述と同意義であり、Rメトキシ基、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル基、メタクリロイルオキシ基を示す。)の製造法が、高純度モノ及びジメタクリル酸エステルである純度98.0%以上のリチウム二次電池に用いられる高分子電解質のモノマー製造法として優れたものであることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の一般式(1)を有する化合物においてRメトキシ基、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル基、ヒドロキシ基である。
【0013】
AOはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の1種又は2種の混合物を示し、2種の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良い。
【0014】
mはエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基の平均付加モル数であり1乃至100の数を示し、好適には1乃至80であり、特に好適には1乃至60である。
【0015】
一般式(2)を有する化合物においてR はメチル基である。Rメチル基又はエチ基である。
【0016】
エステル交換反応触媒は、テトライソプロピルチタネート触媒である。
【0017】
一般式(3)を有する化合物において、R はメチル基である。
【0018】
メトキシ基、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル基、メタクリロイルオキシ基である。
【0019】
特に好適な一般式(3)を有する化合物としては
メトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシド(EO)平均付加モル数:9)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:22)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:30)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量2000、EO/プロピレンオキシド(PO)重量比85%/15%)モノメタクリル酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量3000、EO/PO/EO、オキシエチレン鎖=27、オキシプロピレン鎖=31、EO/PO重量比40%/60%)ジメタクリレート及び1−[(2−メタクリロイルオキシ)エチル]−4−メタクリロイルオキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。
【0020】
最も好適な一般式(3)を有する化合物としてはメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシド(EO)平均付加モル数:9)モノメタクリル酸エステル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量3000、EO/PO/EO、オキシエチレン鎖=27、オキシプロピレン鎖=31、EO/PO重量比40%/60%)ジメタクリレートが挙げられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明では一般式(1)示されるグリコール誘導体と一般式(2)で示されるメタクリル酸エステルをテトライソプロピルチタネート触媒存在下エステル交換し、(a)酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し、第二リン酸ソーダで処理し、又は(b)第二リン酸ソーダで処理し、酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し、減圧下で低沸物の留去を行い、瀘過することにより一般式(3)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステルである純度98.0%以上のリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルを製造する。
【0022】
本発明の製造法は溶媒の存在下又は非存在下行うことが出来るが、好適には溶媒の存在下行う。
【0023】
使用される溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンのような脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタンのような脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類を挙げることができる。好適な溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンのような脂肪族又は脂環式炭化水素類であり、特に好適にはヘキサン、ヘプタンのようなの脂肪族炭化水素類である。
【0024】
メタクリル酸メチルは低沸点の(メタ)アクリル酸エステルであるため反応系からの蒸留による除去が容易であり、且つ最も安価であるため工業原料として好ましい。
【0025】
本発明において用いられる触媒は、テトライソプロピルチタネートであ。この触媒を用いてエステル交換反応を行うことにより、高い反応率で高品質の純度98.0%以上のリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルを製造することができる。また、反応終了後、濾過等の簡単な操作によって容易に短時間で触媒を反応液から分離することができる。触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、グリコール誘導体に対し、通常0.1乃至5重量%、好ましくは0.5乃至2.0重量%の範囲である。
【0026】
原料であるメタクリル酸エステル及び反応生成物の重合を防止するため重合防止剤の添加が好ましく、ヒドロキノン化合物、立体障害フェノール、立体障害アミンおよびヒドロキシアミン誘導体の群が挙げられる。例えば、ヒドロキノン化合物例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、立体障害フェノール例えば4−メチル2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、立体障害アミン例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジノオキシル、ならびにヒドロキシアミン化合物例えばN,N−ジエチルヒドロキシアミンなどを挙げることができ、2つ以上の重合防止剤を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
重合防止剤の使用量は、一般式(1)で示されるグリコール誘導体に対し15乃至10000ppmが好ましく、特に50乃至1000ppmが好ましい。少なすぎると重合防止剤を使用することによる重合防止効果が必ずしも十分でなくなることがあり,また,多過ぎると重合防止剤が除去されない製品をポリマー化に供する際にポリマー化を阻害するなどの悪影響を及ぼすことがある。
【0028】
高純度で着色の少ない一般式(3)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステル製造するには特にヒドロキノンモノメチルエーテルと4−メチル2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジノオキシル、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンが好ましい。
【0029】
反応中反応液の重合防止のために、酸素又は酸素と不活性気体の混合物、例えば空気や酸素/アルゴン混合気体を全反応時間にわたり反応液及び/または反応液面上に吹き込み導入を行うと重合防止効果が更に良好となる。
【0030】
エステル交換反応は、常圧又は減圧下で行うことができ、反応温度は反応が進行する温度であれば特に制限はないが高純度で着色の少ない一般式(3)で示されるモノ及びジメタククリル酸エステル製造するには好適には60乃至130℃で行うのが好ましく、特に好適には60乃至100℃で行うのが好ましい。
【0031】
反応時間は、反応温度及び要求される反応収率によって異なるが、通常、反応時間は2乃至30時間であり、好適には3乃至20時間であり、特に好適には3乃至10時間である。
【0032】
エステル交換反応は平衡反応であるため、反応を速く進行させるためには、反応の結果生成してきたアルコールを反応系から除去しながら反応を行うことが好ましい。除去方法としては公知の方法が用いられ、例えば、蒸留によって除去する方法、モレキュラーシーブ等の吸着剤に吸着させて除去する方法等を挙げることができる。また、蒸留によってアルコールを除去する場合、反応に用いる溶媒との分離をよくするため、精留塔を備えた装置を用いることが好ましい。
【0033】
生成した一般式(3)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステルの単離は、(a)酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し、第二リン酸ソーダで処理し、又は(b)第二リン酸ソーダで処理し、酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し、減圧下で低沸物の留去を行い、瀘過する方法が用いられ
【0034】
このようにして製造された一般式(3)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステルは高純度および高品質であり、特に純度に関してはHPLC純度98%以上であり、リチウム二次電池用電解質のモノマー成分として有用である。
【0035】
又、高純度および高品質である一般式(3)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステルは他の用途、例えば塗料、接着剤、樹脂用添加剤、繊維帯電防止剤、顔料分散剤、セメント分散剤(減水剤)、セメント混和剤等の種々の分野でモノマー成分として広く用いることができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例及び試験例を掲げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1.メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:9)モノメタクリル酸エステルの合成
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔を取り付けた反応器(5L)にメトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:9)2429g、ヒドロキノンモノメチルエーテル50ppmを含むメタクリル酸メチル2287g(22.8モル、モル比4.0)、ジエチルヒドロキシルアミン1.214g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.76gを仕込み、乾燥空気を80mL/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次にオルトチタン酸イソプロピル(テトライソプロピルチタネート)18.21g(メトキシポリエチレングリコールに対して0.75重量%)を加えた。反応中、ヒドロキノンモノメチルエーテル50ppmを含むメタクリル酸メチル190gを塔頂より滴下した。釜温度は91〜99℃、塔頂温度55〜65℃の範囲になるように還流比を調節してメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として610〜730hPaの減圧下留去しながら反応を行った。6時間30分後、反応液をHPLC分析したところ反応率は98.6%となったので反応を終了した。反応液を60〜70℃に冷却し、ガレオンアースV2(水澤化学工業(株))を1.4g及びセライト545を14g添加し、撹拌下5%第二リン酸ソーダ140gを30分間で滴下した。次いで釜温度45〜70℃で約25hPa減圧下5時間低沸物の留去を行ない、濾過することによりメトキシポリエチレングリコール(EO付加モル数:9)モノメタクリル酸エステル2562.6g(収率90.9%)を得た。製品のHPLC純度は98.6%であり、色相はハーゼン色数(APHA)20であった。
【0038】
実施例2.メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:22)モノメタクリル酸エステルの合成
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔を取り付けたフラスコ(10L)にメトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:22)4484g、ヒドロキノンモノメチルエーテル50ppmを含むメタクリル酸メチル2674g(26.7モル、モル比6.0)、ジエチルヒドロキシルアミン2.24g、ヒドロキノンモノメチルエーテル1.77gを仕込み、乾燥空気を160mL/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次にオルトチタン酸イソプロピル(テトライソプロピルチタネート)26.9g(メトキシポリエチレングリコールに対して0.6重量%)を加えた。反応中、ヒドロキノンモノメチルエーテル50ppmを含むメタクリル酸メチル190gを塔頂より滴下した。釜温度は96〜98℃、塔頂温度57〜81℃の範囲になるように還流比を調節してメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として600〜690hPaの減圧下留去しながら反応を行った。11時間後、反応液をHPLC分析したところ反応率は98.5%となったので反応を終了した。反応液を58〜65℃に冷却し、ガレオンアースV2(水澤化学工業(株))2.44g及びセライト545を24.4g添加し、撹拌下5%第二リン酸ソーダ153.3gを30分間で滴下した。次いで釜温度45〜70℃で約40hPa減圧下5時間低沸物の留去を行ない、濾過することによりメトキシポリエチレングリコール(EO付加モル数:22)モノメタクリル酸エステル4560.8g(収率95.3%)を得た。製品のHPLC純度は98.0%であり、色相はハーゼン色数(APHA)20であった。
【0039】
実施例3.メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:30)モノメタクリル酸エステルの合成
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔を取り付けたフラスコ(2L)にメトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:30)1023.8g、ヒドロキノンモノメチルエーテル50ppmを含むメタクリル酸メチル770g(7.7モル、モル比10)、ジエチルヒドロキシルアミン0.51g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.31gを仕込み、乾燥空気を50mL/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次にオルトチタン酸イソプロピル(テトライソプロピルチタネート)8.16g(メトキシポリエチレングリコールに対して0.8重量%)を加えた。釜温度は95〜100℃、塔頂温度61〜85℃の範囲になるように還流比を調節してメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として740〜800hPaの減圧下留去しながら反応を行った。3時間20分後、反応液をHPLC分析したところ反応率は98.6%となったので反応を終了した。反応液を60〜62℃に冷却し、ガレオンアースV2(水澤化学工業(株))0.54g及びセライト545を1.62g添加し、撹拌下5%第二リン酸ソーダ120.7gを30分間で滴下した。次いで釜温度45〜61℃で約25hPa減圧下4時間低沸物の留去を行ない、濾過することによりメトキシポリエチレングリコール(EO付加モル数:30)モノメタクリル酸エステル970.7g(収率90.2%)を得た。製品のHPLC純度は98.2%であり、色相はハーゼン色数(APHA)20であった。
【0040】
実施例4.メトキシポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量2000、EO/PO重量比85%/15%)モノメタクリル酸エステルの合成
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔を取り付けたフラスコ(2L)にメトキシポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量2000、EO/PO重量比85%/15%)600g、ヒドロキノンモノメチルエーテル50ppmを含むメタクリル酸メチル1200g(12.0モル、モル比40.0)、ジエチルヒドロキシルアミン1.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル1.0gを仕込み、乾燥空気を50mL/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次にオルトチタン酸イソプロピル(テトライソプロピルチタネート)7.2g(メトキシポリエチレンオキシポリプロピレングリコールに対して1.2重量%)を加えた。釜温度は93〜99℃、塔頂温度60〜84℃の範囲になるように還流比を調節してメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として750〜800hPaの減圧下留去しながら反応を行った。4時間後、反応液をHPLC分析したところ反応率は98.0%となったので反応を終了した。反応液を60〜65℃に冷却し、ガレオンアースV2(水澤化学工業(株))0.31g及びセライト545を1.86g添加し、撹拌下5%第二リン酸ソーダ108.0gを1時間で滴下した。次いで釜温度45〜60℃で約30hPa減圧下4時間低沸物の留去を行ない、濾過することによりメトキシポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量2000、EO/PO重量比85%/15%)モノメタクリル酸エステル564.6g(収率91.0%)を得た。製品のHPLC純度は98.0%であり、色相はハーゼン色数(APHA)30であった。
【0041】
実施例5.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量3000、EO/PO/EO,オキシエチレン鎖=27、オキシプロピレン鎖=31、EO/PO重量比40%/60%)ジメタクリレートの合成
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔を取り付けたフラスコ(2L)にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量3000、EO/PO/EO,オキシエチレン鎖=27、オキシプロピレン鎖=31、EO/PO重量比40%/60%)555g、ヒドロキノンモノメチルエーテル50ppmを含むメタクリル酸メチル740g(7.4モル、モル比40)、ジエチルヒドロキシルアミン0.2775g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.155gを仕込み、乾燥空気を20mL/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次にオルトチタン酸イソプロピル(テトライソプロピルチタネート)5.54g(ポリオキシアルキレングリコールに対して1.0重量%)を加えた。釜温度は94〜95℃、塔頂温度60〜90℃の範囲になるように還流比を調節してメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として540hPaの減圧下留去しながら5時間30分反応を行った。反応液を60〜65℃に冷却し、ガレオンアースV2(水澤化学工業(株))0.58g及びセライト545を5.8g添加し、撹拌下5%第二リン酸ソーダ83.0gを1時間で滴下した。次いで釜温度60〜65℃で約30hPa減圧下3時間低沸物の留去を行ない、濾過することによりポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(平均分子量3000、EO/PO/EO,オキシエチレン鎖=27、オキシプロピレン鎖=31、EO/PO重量比40%/60%)ジメタクリレート479.0g(収率82.8%)を得た。水酸基価よりエステル化率は95.0%であり、色相はハーゼン色数(APHA)50であった。
【0042】
実施例6.1−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−4−メタクリロイルオキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジンの合成
撹拌機、温度計、空気導入管及び精留塔を取り付けたフラスコ(500mL)に1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジン50.3g、ヒドロキノンモノメチルエーテル10ppmを含むメタクリル酸メチル200g(2.0モル、モル比8.0)、ジエチルヒドロキシルアミン0.025g、3,5−ジターシャリブチル−4−ヒドロキシトルエン0.004gを仕込み、乾燥空気を10mL/minの速度で吹き込みながら加熱還流し、系内の水分を除去した。次にオルトチタン酸イソプロピル(テトライソプロピルチタネート)1.2g(1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジンに対して1.7モル%)を加えた。釜温度は94〜96℃、塔頂温度58〜92℃の範囲になるように還流比を調節してメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として565〜580hPaの減圧下留去しながら反応を行った。4時間後、反応液をガスクロ分析したところ反応率は98.2%となったので反応を終了した。反応液を60〜65℃に冷却し、撹拌下5%第二リン酸ソーダ18.0gを30分間で滴下した。次いで水層を分離した後さらに水洗を行った。ガレオンアースV2(水澤化学工業(株))0.004g及びセライト545を0.024g添加し、釜温度50〜68℃で約30hPa減圧下2時間30分低沸物の留去を行ない、濾過することにより5.1−[(2−メタクリロイルオキシ)エチル]−4−メタクリロイルオキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジン69.6g(収率82.5%)を得た。製品のガスクロ純度は98.2%であった。
【0043】
試験例1
溶媒としてエチレンカーボネート47.6重量%及びプロピレンカーボネート27.6重量%と電解質塩としてLiPF610.7重量%を試験管中混合した。次いで、この混合液に化学結合による三次元網目構造を形成するための原料として実施例6のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングルコールジメタアクリレート5.4重量%、アクリロニトリル2.8重量%、実施例1のメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート5.4重量%のモノマーと開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.5重量%を添加し密栓した。この混合液を70―80℃のオイルバスにて1時間重合した。この高分子電解質は60℃24時間の経時変化でも液漏れを生じなかった。
【0044】
試験例2
溶媒としてエチレンカーボネート47.6重量%、プロピレンカーボネート19.3重量%及びエチレングリコールジメチルエーテル8.3重量%と電解質塩としてLiPF610.7重量%を試験管中混合した。次いで、この混合液に化学結合による三次元網目構造を形成するための原料として実施例6のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングルコールジメタアクリレート5.4重量%、アクリロニトリル2.8重量%、実施例1のメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート5.4重量%のモノマーと開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.5重量%を添加し密栓した。この混合液を70―80℃のオイルバスにて1時間重合した。この高分子電解質は60℃24時間の経時変化でも液漏れを生じなかった。
【0045】
試験例3
溶媒としてエチレンカーボネート47.6重量%、プロピレンカーボネート16.6重量%及びγ―ブチロラクトン11.0重量%と電解質塩としてLiPF610.7重量%を試験管中混合した。次いで、この混合液に化学結合による三次元網目構造を形成するための原料として実施例6のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングルコールジメタアクリレート5.4重量%、アクリロニトリル2.8重量%、実施例1のメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート5.4重量%のモノマーと開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.5重量%を添加し密栓した。この混合液を70―80℃のオイルバスにて1時間重合した。この高分子電解質は60℃24時間の経時変化でも液漏れを生じなかった。
【0046】
比較例1
特開2000−164033の実施例に従ってエチレンカーボネート55.4重量%およびプロピレンカーボネート32.1重量%と、電解質塩としてLiPF612.5重量%とを混合し、電解質Aを形成した。ついでこの電解質A85.9重量%、ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=9)10.8重量%、ポリアクリロニトリル2.8重量%、重合開始剤0.5重量%を添加し、密栓した。この混合液を70―80℃のオイルバスにて1時間重合した。この高分子電解質は室温でも液漏れした。
【0047】
評価例1.
得られた電解質の樹脂を直径0.9cmの円盤状にプレス成形し、これを一対のステンレス電極に挟みこんだのち、各温度での複素インピーダンス法によりイオン導電率を求めた。試験例化合物のイオン導電率を表1に示す。
【0048】
【表1】
表1に示すように試験例の化合物は高いイオン導電率を有していた。
【0049】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、純度98.0%以上のリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルを製造する方法を提供するものであり、本発明の製造方法で製造されたモノ及びジメタクリル酸エステルはリチウム二次電池用高分子電解質に用いられるモノマー成分として有用である。

Claims (5)

  1. 一般式(1)
    (式中、Rはメトキシ基、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル基、ヒドロキシ基を示し、AOはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の1種又は2種の混合物を示し、2種の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、mはエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基の平均付加モル数であり1乃至100の数を示す。)で示されるグリコール誘導体と一般式(2)
    (式中、Rはメチル基を示し、またRはメチル基又はエチル基を示す。)で示されるメタクリル酸エステルをテトライソプロピルチタネート触媒存在下エステル交換し、
    (a)酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し、第二リン酸ソーダで処理し、又は
    (b)第二リン酸ソーダで処理し、酸性白土を鉱酸で処理してなる吸着剤及び融剤焼成珪藻土からなる濾過助剤を添加し、
    減圧下で低沸物の留去を行い、瀘過することを特徴とする一般式(3)
    (式中、R、AOおよびmは前述と同意義であり、Rはメトキシ基、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル基、メタクリロイルオキシ基を示す。)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステルである純度98.0%以上のリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルの製造法。
  2. 一般式(3)で示されるモノ及びジメタクリル酸エステルが、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:9)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:22)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:30)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量2000、EO/PO重量比85%/15%)モノメタクリル酸エステル、ポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量3000、EO/PO/EO、オキシエチレン鎖=27、オキシプロピレン鎖=31、EO/PO重量比40%/60%)ジメタクリレート、1−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである純度98.0%以上のリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルである請求項1の製造法。
  3. 一般式(3)で示されるリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルが、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:9)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:22)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(EO平均付加モル数:30)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量2000、EO/PO重量比85%/15%)モノメタクリル酸エステルである請求項2に記載の製造法。
  4. 一般式(3)で示されるリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルが、ポリエチレンオキシポリプロピレングリコール(平均分子量3000、EO/PO/EO、オキシエチレン鎖=27、オキシプロピレン鎖=31、EO/PO重量比40%/60%)ジメタクリレートである請求項2に記載の製造法。
  5. 一般式(3)で示されるリチウム二次電池用高純度モノ及びジメタクリル酸エステルが、1−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである請求項の製造法。
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