以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、記録テープカートリッジのドライブ装置への装填方向を矢印Aで表し、それを前方向とする。また、矢印Bを左方向とし、それらを基準に前後・左右・上下の表現をする。また、以下において「径方向」と言う場合は、ケースに収容されたリールの軸心線から放射状に外方へ向かう方向と平行な方向を指している。
図1及び図2(なお、図2は記録テープカートリッジ10の上下を逆にした状態での分解斜視図である)で示すように、記録テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。このケース12は、PC等の樹脂製の下ケース16に上ケース14を被せ、それぞれ天板14Aの周縁に立設された周壁14Bと、底板16Aの周縁に立設された周壁16Bとを互いに当接させた状態で、超音波溶着やねじ止め等によって接合されて構成されている。
ケース12の内部にはリール40が1つだけ回転可能に収容されている。このリール40は、図2〜図4で示すように、軸心部を構成する有底円筒状のリールハブ42と、その上端部に設けられる上フランジ44とが一体に成形され、下フランジ46がリールハブ42の下端部に超音波溶着されて構成されている。そして、そのリールハブ42の外周面に、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTが巻回され、上フランジ44及び下フランジ46によって、その巻回された記録テープTの幅方向の端部が保持されている。
また、図1で示すように、記録テープカートリッジ10の左前方側のコーナー部12C付近には、リール40に巻装された記録テープTを外部に引き出すための開口20が形成されている。すなわち、コーナー部12Cに隣接する前壁12Aと左側壁12Bとに跨って開口20が形成され、その開口20から、記録テープTの端部に固着され、左側壁12Bに沿って配置されたリーダーテープ22が引き出されるようになっている。
なお、ここで言うコーナー部とは、略矩形箱状ケース12の周壁14B、16Bにおいて、平面視で略直角又は鈍角に交わる稜線部分を指している。したがって、コーナー部12Cとは、前壁12Aと左側壁12Bとが平面視で略直角に交わっている稜線部分を指している。
リーダーテープ22は、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が記録テープTを引き出すために係合する被引出部材であり、その先端近傍には引出部材が係合する孔部22Aが穿設されている。そして、その孔部22Aの先端よりも若干後方寄りの上下両サイドには、それぞれ上下方向に向かって張り出す張出部22Bが形成されている。この張出部22Bが、上ケース14の内面及び下ケース16の内面にそれぞれ形成された収納凹部24に収納(挿入)されることにより、リーダーテープ22がケース12内に保持される。
また、開口20は、記録テープカートリッジ10の不使用時にはドア30によって閉塞される。このドア30は、開口20と略同じ形状及び大きさの平面視略「L」字状に形成されている。なお、このドア30は、POM等のオレフィン系樹脂で成形されるのが好ましいが、PC等の樹脂やSUS等の金属で成形してもよい。
また、そのドア30の回動支点となる支軸26が、上ケース14及び下ケース16の前壁12A側にそれぞれ突設されている。この支軸26は、上ケース14側が円筒状のボス26Aになっており、下ケース16側が円柱状のボス26Bになっている。そして、下ケース16側のボス26Bの先端(上端)が、上ケース14側のボス26Aに嵌入することにより、支軸26が構成されるようになっている。したがって、ボス26Bの径がボス26Aの径よりも若干小さくなっている。
また、ドア30の内面の右端部近傍(右端部より所定距離左方へずれた位置)には、平板状の回転摺動部32が3本平行に突設されている。この回転摺動部32は、ドア30の内面の上下両端部と、中央より若干下方へずれた中途部とからそれぞれ突設され、各回転摺動部32には、支軸26に遊嵌される貫通孔が穿設されている。したがって、各貫通孔に支軸26が挿通されることにより、ドア30が回動可能に支持される。
また、上端部の回転摺動部32の上面と、下端部の回転摺動部32の下面には、それぞれ貫通孔周りに環状凸部34が形成されている。そして、この環状凸部34が、それぞれ上ケース14と下ケース16に接触することにより、ドア30の上端面30Aと上ケース14との間、及びドア30の下端面30Bと下ケース16との間に、それぞれ0.3mm〜0.5mm程度の隙間が形成されるようにしている。
また、回転摺動部32間のドア30の内面には、支軸26の周面に沿った平断面視円弧状の隆起部36が形成されている。
また、支軸26には、ドア30を常時開口20の閉塞方向へ付勢するトーションばね28の巻回部28Aが挿嵌されている。すなわち、このトーションばね28の巻回部28Aは、下端部の回転摺動部32と中途部の回転摺動部32の間に保持された状態で、径が細い方のボス26Bに挿嵌されて取り付けられている。そして、トーションばね28の一方の端部側は、ケース12のビスボス38(下ケース16に突設されたビスボス)に係止され、他方の端部側は、隆起部36の右側の縁端部に係止されている。
一方、リール40は樹脂材で成形され、上記したように、有底円筒状のリールハブ42と、リールハブ42の上端部に一体に延設された上フランジ44と、リールハブ42の下端部に溶着等によって取り付けられた下フランジ46とで構成されている。したがって、リールハブ42と下フランジ46は、互いに相溶性がある樹脂材を用いて成形され、超音波等で容易に溶着可能とされている。
図2〜図4で示すように、リールハブ42の下フランジ46側には底壁48が設けられており、底壁48の軸心部には貫通孔48Aが穿設されている。また、底壁48の下面側にはリールギア50が環状に形成されており、後述する圧縮コイルスプリング78の付勢力によってリール40が下ケース16側に押し付けられるようになっている。
この状態で、リールギア50は下ケース16の略中央に設けられた円形のギア開口18から露出可能となっており、ドライブ装置側の回転シャフト100に備えられた駆動ギア102と噛合して、リール40に回転動力を伝達するようになっている。
また、リールギア50の径方向内側には、磁性材より成る環状のリールプレート52がインサート成形等により一体的に固着されている。このリールプレート52は、駆動ギア102とリールギア50とが完全に噛合した状態で、駆動ギア102と後述する解除突起104との間に設けられた環状のマグネット106の磁力により吸着され、リール40と回転シャフト100との軸ずれを防止するとともに、リールギア50と駆動ギア102との噛合状態を保持可能としている。このような構成により、回転シャフト100がその軸心回りに回転すると、リール40がこれと一体にケース12内で回転する。
一方、リールハブ42の底壁48の上面側には、係合ギア54が環状に形成されており、ブレーキ部材80の制動ギア82と噛合可能になっている。このブレーキ部材80は、図4及び図5で示すように、リールハブ42内に上下動可能に収容される円板状に形成されており、ブレーキ部材80の下面外周部には制動ギア82が環状に設けられている。
そして、ブレーキ部材80の上面には、複数(本実施例では3つ)の板状のガイド部84と、複数(本実施例では3つ)の略角柱状の係合突起86が立設されており、係合突起86には、径方向内側が所定角度(例えば45度)傾斜した当接面86Aが形成されている。
また、ブレーキ部材80の上面で、ガイド部84及び係合突起86の外側には、平坦面80Aが環状に形成されている。更に、ブレーキ部材80の下面中央には、貫通孔48Aに挿通可能な略円柱状の操作突起88が突設されており、ドライブ装置側の回転シャフト100の軸心部に突設された解除突起104と当接可能とされている(図3及び図4参照)。
ここで、図2、図4及び図5で示すように、上ケース14の天板14A内面の略中央には、略正方形状の凹部15が凹設されており、凹部15内には略正方形状の平板の装着部53が嵌合可能となっている。この装着部53の肉厚は、凹部15の深さと略同一となっており、接着剤によって装着部53を凹部15内に固定した状態で、上ケース14の天板14A内面と装着部53の上面とが面一となる。
また、装着部53の上面には略円筒状の部品取付部55が設けられている。この部品取付部55には、3つの円弧壁62が等間隔で断続的に設けられており、円弧壁62の内側には、円弧壁62よりも高さが低い円弧壁64が、円弧壁62に対面した状態で設けられている。円弧壁64の中央部内側には、一対のガイド壁部68が円弧壁62と連設している。このガイド壁部68は円弧壁62よりも高く突出しており、ブレーキ部材80の上面に形成された板状のガイド部84が挿入可能な大きさとなっている。
また、円弧壁62と円弧壁64の間には、複数の支持リブ66(後述する)が放射線状に架け渡されており、円弧壁62及び円弧壁64を補強している。さらに、隣り合う円弧壁62同士の隙間は、隣り合う円弧壁64同士の隙間と略同一となっており、該隙間によって収容部60が構成され、ロック部材90が摺動可能に収容される。
ここで、図6及び図7に示すように、ロック部材90は直方体状の本体部92を備えており、本体部92の裏面(上ケース14の天板14Aとの摺動面)には、本体部92の長手方向に沿って延出する一対の凹部92Cが凹設されている。
この凹部92Cによって、ロック部材90と上ケース14の天板14A(図5参照)との摺動面積は小さくなり、ロック部材90が上ケース14の天板14A上を摺動するときの摺動抵抗を減らすことができ、ロック部材90の移動をスムーズにすることができる。
また、本体部92の表面(上ケース14の天板14Aとの摺動面と反対側の面)には、断面が略台形状を成すカム部94及び係合壁96が対面した状態で突設している。カム部94の外面には、傾斜面94Bが形成されており、カム部94の先端側へ行くに従って僅かに内側へ向かって角度θ傾いている(図10参照)。
ここで、図10に示すように、板バネ56(後述する)でロック部材90の傾斜面94Bを押圧することで、ロック部材90を上ケース14側へ押し付ける分力Fを発生させることができ、ロック部材90が上ケース14から離れないようにすることができる。
また、カム部94の内面先端側には、ブレーキ部材80の上面に形成された略角柱状の係合突起86の当接面86Aが当接可能な当接面94Aが設けられている(図11(B)参照)。この当接面94Aは所定角度傾斜しており、カム部94の傾斜面94B側から離間するに従って高さが低くなっている。
一方、係合壁96はカム部94の高さよりも低くなっており、カム部94と係合壁96との間は、少なくとも円弧壁62と円弧壁64の離間距離よりも離間している。また、カム部94と係合壁96との間には、収容部60内にロック部材90を収容した状態で支持リブ66の高さよりも低い突設部92Dが架け渡されており、この突設部92Dによってカム部94及び係合壁96が補強されている。
また、係合壁96の外面先端側には、所定角度傾斜した当接面96Aが形成されており、係合壁96の内面から離間するに従って高さが低くなっている。この当接面96Aを含む外面の形状は、平面視でリールハブ42の内周面と合致する円弧面とされている(後述する)。
また、係合壁96の外面基部には、本体部92から段部96Bが張出しており、段部96Bの厚さは、図3に示すように、ケース12内において、リール40の下フランジ46が下ケース16に形成された環状リブ45に当接した状態で、上フランジ44上面と天板14A内面との間の隙間と略同一となっている。
この段部96B及び係合壁96が、リール40の上フランジ44の上面とリールハブ42の内周面に当接可能となっており、段部96B及び係合壁96が、リール40の上フランジ44の上面とリールハブ42の内周面に当接した(ロック部材90が上ケース14の天板14A内面とリール40の上フランジ44との間に介在した)状態で、リール40の移動が規制される。
ところで、部品取付部55の中央部には、板バネ56が配設可能となっている。図5及び図7に示すように、板バネ56は、基部56Aと脚片56Bと構成されており、基部56Aには孔部56Cが形成され、部品取付部55の中央部に設けられたボス72に嵌合可能となっている。一方、脚片56Bは、基部56Aから120°間隔で放射線状に広がり、各脚片56Bは、基部56Aから先端部へ向かって大きく弧を描くように湾曲している。
このように、板バネ56を、基部56Aと脚片56Bとで構成し、脚片56Bを基部56Aから放射線状に広げることで、ロック部材90の数量に拘らず、一つの板バネ56で良いことになる。このため、組付け時において、ロック部材90の数量に拘らず、一つの板バネ56を組付けるだけで良いので、組付けが容易となり、作業性が良くなる。また、脚片56Bの基部から先端部に掛けて大きく弧を描くように湾曲させることで、板バネ56の上下方向が明確になるため、板バネ56を上下逆に組付ける恐れがない。
この板バネ56の孔部56Cをボス72に嵌合させた状態で、ボス72の先端部をかしめ、板バネ56がボス72から抜けないようにする。この状態で、脚片56Bは収容部60内に収容されたロック部材90のカム部94の傾斜面94Bに当接可能となる。
ここで、円弧壁62の端部と円弧壁64の端部を結ぶ線上には、保持部70が突出しており、図8に示すように、ロック部材90が収容部60に収容された状態で、ロック部材90の幅方向の左右に位置する。この保持部70の先端部の互いに対面する面には、突部70Aが突出しており、突部70A同士の最短の離間距離は、ロック部材90の幅よりも狭くなっている。
保持部70は弾性変形可能なため、収容部60内にロック部材90を収容させるとき、突部70Aが邪魔にならないように保持部70を互いに離間させ、収容部60内にロック部材90を収容すると、突部70Aがロック部材90の本体部92の表面に被さり、上ケース14を下ケース16に被せる際に、ロック部材90が上ケース14から落下しないようにすることができる。
一方、図5に示すように、ガイド壁部68の端部と円弧壁64の端部は、円弧壁62の端部と円弧壁64の端部を結ぶ線に沿って形成された側壁65によって架け渡されており、ガイド壁部68の補強を図ると共に、ロック部材90が収容部60に収容された状態で、ロック部材90の移動規制を行なう。
また、円弧壁62の外側には、収容部60に対応してストッパーリブ74が突設している。このストッパーリブ74にはロック部材90が当接可能となっており、ストッパーリブ74によって、ロック部材90が収容部60に収容された状態で移動規制され、仮止めされる(図9参照)。
ここで、ストッパーリブ74によって仮止めされたロック部材90の当接面96Aは、平面視でリールハブ42の内周面と合致する円弧面とされているため、記録テープカートリッジ10を組み立てるときに(下ケース16に上ケース14を被せるときに)、その動作に伴ってリールハブ42の上縁部に係合し易くなっており、図3で示すように、リールハブ42の上縁部によって押圧され、本体部92の係合壁96側の端面92Aが、ストッパーリブ74から離間するようになっている。
また、図3に示すように、支持リブ66には、圧縮コイルスプリング78の一端部が当接可能となっており、圧縮コイルスプリング78の他端部は、ブレーキ部材80の平坦面80Aに当接する。これにより、ブレーキ部材80を介してリール40は下ケース16側へ付勢される。
以上の構成によれば、図11(A)で示すように、記録テープカートリッジ10の不使用時には、ブレーキ部材80は圧縮コイルスプリング78の付勢力によって下方へ付勢され、ロック部材90は板ばね56の付勢力によって径方向外側へ付勢される。
このとき、ガイド壁部68に挿入されたガイド部84により、ブレーキ部材80のケース12に対する回動が阻止され、ブレーキ部材80の制動ギア82とリールハブ42内の係合ギア54が強固に噛合することにより、リール40の不用意な回転が阻止される。
そして、リール40の下フランジ46が下ケース16に形成された環状リブ45に当接した状態で、ロック部材90の段部96B及び係合壁96が、リール40の上フランジ44の上面とリールハブ42の内周面に当接することで、記録テープカートリッジ10の不使用時において、リール40の上下方向の移動が規制される。
一方、記録テープカートリッジ10の使用時には、図11(B)で示すように、解除突起104が操作突起88に当接し、ブレーキ部材80が圧縮コイルスプリング78の付勢力に抗して所定高さ上昇する。これにより、係合突起86とカム部94とが互いに当接し、更に係合突起86の当接面86Aとカム部94の当接面94Aが互いに摺接する。
ここで、ロック部材90の当接面94A及び係合突起86の当接面86Aは傾斜してるため、係合突起86の当接面86Aから伝達されるリール40のハブ42の軸方向に沿って働く力は、ロック部材90を水平方向へ移動させる力へ変換され、ロック部材90は脚片56Bの付勢力に抗して上ケース14上を径方向内側へ移動する。
そして、図11(C)で示すように、カム部94が係合突起86の内面側に入り込むと、カム部94と係合突起86との当接状態が解除される。これにより、ロック部材90とブレーキ部材80及びリール40との係合状態が解除され、リール40はケース12内において、回転可能になると共に、所定高さ上昇可能となる。
ここで、係合突起86の内面側にカム部94が入り込むことで、板ばね56によってロック部材90が押圧される押圧力(付勢力)は、カム部94の外面を介して係合突起86の内面で受け止められることとなる。このように、係合突起86の当接面86Aとカム部94の当接面94Aとの当接状態を解除することで、ブレーキ部材80が上昇するとき、板ばね56の押圧力が、係合突起86の上下方向に伝達されないようにしている。
つまり、記録テープカートリッジ10の使用時において、板ばね56による押圧力は、径方向にのみ作用し、上下方向には作用しないため、上下方向の押圧力は、圧縮コイルスプリング78の押圧力のみとなる。したがって、板ばね56を設けても、ブレーキ部材80を上昇させるために必要な力は増大されない。
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次に、その作用について説明をする。
図1に示すように、記録テープカートリッジ10は、不使用時(ドライブ装置に装填しないとき)には、ドア30がトーションばね28の付勢力により開口20を閉塞している。また、リーダーテープ22は、その張出部22Bが収納凹部24内に収納(挿入)されて保持されることにより、左側壁12Bに沿って配置されている。
また、記録テープカートリッジ10の不使用時には、図3及び図11(A)で示すように、ブレーキ部材80が圧縮コイルスプリング78により下方へ付勢されている。つまり、圧縮コイルスプリング78の付勢力により、ブレーキ部材80の制動ギア82がリールハブ42内の係合ギア54に強固に噛合し、リール40の不用意な回転が阻止されている。
そして、板ばね56の付勢力により、ロック部材90が径方向外側へ向かって付勢され、段部96B及び係合壁96が、リール40の上フランジ44の上面とリールハブ42の内周面にそれぞれ当接し(係合壁96がリールハブ42の上縁部に係合し)、リール40の上下方向の移動が規制されている。
一方、図1に示す記録テープカートリッジ10の記録テープT(図3参照)にデータを記録、又は記録テープカートリッジ10の記録テープTに記録されたデータを再生する際には、その記録テープカートリッジ10をドライブ装置(図示省略)へ装填する。すなわち、ドライブ装置の装填口(図示省略)に記録テープカートリッジ10を前壁12A側から挿入する。
この装填に伴って、ドライブ装置の開閉部材(図示省略)が相対的にドア30の右端部(支軸26よりも右側)へ接近、当接して、その係合凹部を押圧すると、ドア30は、トーションばね28の付勢力に抗して支軸26を中心に回動し、開口20が開放される。
ドア30が回動して開口20が開放されると、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が左側壁12B側から開口20に接近し、リーダーテープ22の孔部22Aと係合する。このとき、リーダーテープ22は、左側壁12Bに近接した状態で待機しているので、引出部材は確実に孔部22Aと係合することができる。
こうして、引出部材が孔部22Aに係合したら、引出部材が開口20から離間することにより、リーダーテープ22がケース12内から引き出される。そして、ケース12内から引き出されたリーダーテープ22は、ドライブ装置の巻取リール(図示省略)に巻回される。
次に、図3及び図11(A)、(B)で示すように、ドライブ装置の回転シャフト100が、ギア開口18から進入し、リール40の底壁48へ向かって接近する。すなわち、解除突起104が操作突起88を押圧し、ブレーキ部材80が上昇する。
これにより、係合ギア54と制動ギア82との噛合が解除されるとともに、係合突起86がロック部材90のカム部94に当接して、カム部94をリール40のハブ42の軸方向に沿って押圧する。係合突起86の当接面86Aから伝達される力は、ロック部材90を水平方向へ移動させる力へ変換されるため、ロック部材90は板バネ56の付勢力に抗して上ケース14上を径方向内側へ移動する。
つまり、図4、図11(C)で示すように、ロック部材90の係合壁96の外面側がリールハブ42の内周面から離間し、カム部94が係合突起86の内側に入り込む(落ち込む)ことにより、ロック部材90の段部96Bがリールハブ42の内側に配置され、リールハブ42の上縁部に対する係合壁96の係合が解除される。
これにより、リール40はケース12内において、回転可能になると共に、所定高さ上昇可能となる。そして、回転シャフト100が上昇することにより、駆動ギア102がリールギア50に噛合し、リールプレート52がマグネット106に吸着される。
このように、リールギア50に駆動ギア102が噛合されると、リール40はケース12内において、所定高さ上昇して回転可能となり、駆動ギア102、即ちリール40が巻取リールと同期して回転駆動することにより、記録テープTが順次ドライブ装置側へ送り出される。そして、そのドライブ装置の記録再生ヘッド(図示省略)によって、記録テープTにデータの記録、又は記録テープTに記録されたデータの再生が行われる。
記録テープカートリッジ10をドライブ装置から取り出すときには、まず駆動ギア102を逆回転させて、記録テープTをリール40に巻き戻す。そして、リーダーテープ22が巻取リールから外され、開口20からケース12内に戻される。つまり、リーダーテープ22の張出部22Bが収納凹部24内に収納(挿入)されて、ケース12内の所定位置に保持される。
次いで、図11(C)、図11(B)、図11(A)の順番で示すように、回転シャフト100が下降し、リール40が圧縮コイルスプリング78の付勢力により下降する。これにより、ロック部材90は、カム部94の当接面94Aが係合突起86の当接面86A上を摺動しながら、板ばね56の付勢力により径方向外側へ移動し、係合壁96がリールハブ42の上縁部に係合する。
すなわち、板ばね56の付勢力により、ロック部材90の段部96B及び係合壁96が、リール40の上フランジ44の上面とリールハブ42の内周面に当接する。これにより、記録テープカートリッジ10の不使用時において、リール40の上下方向の移動が規制される。
また、このとき、圧縮コイルスプリング78の付勢力により、制動ギア82が係合ギア54に強固に噛合し、リール40の不用意な回転が阻止される。そして、回転シャフト100がギア開口18から抜き出されることにより、リールプレート52からマグネット106が離間され、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が解除される。
その後、記録テープカートリッジ10は装填口から排出されるが、この排出動作に伴って、開閉部材がドア30の右端部から離間すると、ドア30はトーションばね28の付勢力によって、支軸26を中心に上記とは反対の方向へ回動し、開口20を閉塞する。
次に、本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの要部について説明する。
図3及び図11(A)に示すように、ロック部材90の係合壁96がリールハブ42の上縁部に係合した状態では、段部96B及び係合壁96が、リール40の上フランジ44の上面とリールハブ42の内周面に当接しており、これにより、記録テープカートリッジ10の不使用時において、リール40の上下方向の移動が規制される。
このため、落下等によって記録テープカートリッジ10に衝撃が加わっても、リール40は上昇することがない。したがって、ブレーキ部材80が傾いて倒れ込んでしまうというような不具合は発生しない。また、記録テープカートリッジ10を落下させた場合に、リール40がケース12内で移動することによりリール40に設けられた上フランジ44或いは下フランジ46が破損するという問題も改善される。
また、上ケース14の天板14A内面の略中央に凹部15を凹設し、部品取付部55を設けた平板の装着部53を凹部15内に固定することで、上ケース14内で直接ロック部材90及び板バネ56を取り付ける場合と比較して、上ケース14の周壁14Bが邪魔にならないため、ロック部材90及び板バネ56を取付け易い。
さらに、上ケース14の凹部15を略正方形状とし、部品取付部55が設けられた装着部53を略正方形状とすることで、部品取付部材55のガイド壁部68にブレーキ部材80のガイド部84が挿入され、ブレーキ部材80がケース12に対して回動阻止された状態で、部品取付部材55の回転を防止する。
また、図2及び図9に示すように、上ケース14の天板14A内面の中央部に部品取付部55を設け、部品取付部55の中央部にボス72を設けて板バネ56を装着し、ロック部材90の傾斜面94Bに、板バネ56の脚片56Bを当接させ、上ケース14の中央部からロック部材90を付勢するようにしている。
板バネ56を上ケース14の周壁14B側に配設し、上ケース14の周壁14B側からロック部材90を付勢するようにした場合、上ケース14の周壁14B側では、リール40を収容する収容リブ41や上ケース14を補強するためのリブ(図示省略)等が設けられ、スペースの確保が困難である。
このため、板バネ56を上ケース14の中央部に配置し、上ケース14の中央部からロック部材90を付勢するようにすることで、容易にスペースを確保することができると共に、上ケース14の中央部分を有効に活用することができる。
一方、図5に示すように、円弧壁62の端部と円弧壁64の端部を結ぶ線上に保持部70を突出させており、図8に示すように、ロック部材90が収容部60に収容された状態で、保持部70の突部70Aでロック部材90を抜け止め可能としている。
例えば、図示はしないが、該突部をケースに一体に形成させた場合、突部はケースを成形する金型からケースを取出すときの取出し方向に対してアンダーカットとなってしまう。この場合、金型構造上、スライドコアによってアンダーカット部分をスライドさせて形成させる方法があるが、スライドコアのストロークを確保しなければならないため、寸法上の規制によりスライドコアを設けることができない場合がある。
また、金型からケースを取出すときに突出しピンの押圧力等によって無理やり金型から取出すという無理抜きという方法もあるが、無理抜きの場合、ケースを成形する樹脂の剛性が高い場合(例えば、ポリカーボネイト)は、アンダーカット部分を抜き易くするため突部にRを設け、また、突出量を小さく(例えば、0.1〜0.3mm)しなければならない。従って、突部をケースに一体に形成させた場合、突部の突出量が限られてしまい、ロック部材の抜けを防止するには到らず単に仮止めする程度のものとなってしまう。
しかし、図2に示すように、上ケース14と部品取付部55が形成された装着部53を別体とすることで、装着部53に貫通孔を開けることができるため、図12(A)に示すように、固定側金型73からピン73Aを突出させ、保持部70の突部70Aがアンダーカット部とならない金型構造とすることができる(なお、固定側金型73と可動側金型75とで構成された空間によって保持部70が形成される)。
このため、突部70Aの突出量に上記のような制限はなく、ロック部材90の抜けを防止するために必要な突出量とすることができるので、部品取付部55を下に向けた状態で部品取付部55に取付けたロック部材90を落下させないようにすることができる。
従って、記録テープカートリッジ10の組立て時に上ケース14の天板14A内面を下にした状態で下ケース16に被せるとき、部品取付部55に取り付けたロック部材90を落下させないようにするための部材が不要となり、その分コストを削減することができる。
なお、図12(A)の場合、保持部70の突部70Aを形成するためのピン73Aの大きさは、突部70Aの幅及び突出量によって決まるため細くなってしまう。このため、金型の寿命等を考慮すると、左右の貫通孔77を繋いで、図12(B)に示すように、貫通孔79を広げ、ピン73Bを大きくしても良い。この場合、貫通孔79(保持部70)の位置は、ロック部材90の摺動時にロック部材90の端部が引っ掛からない位置にする必要がある。
また、ここでは、図2、図4及び図5で示すように、上ケース14の天板14A内面の略中央に略正方形状の凹部15を凹設し、部品取付部55が設けられた略正方形状の平板の装着部53を凹部15内に固定するようにしたが、凹部及び装着部の形状は四角形状に限るものではなく、三角形状であっても良い。
また、部品取付部55内の構成はこれに限るものではないため、例えば、上ケース14に対して部品取付部55の方向性が必要な場合は、図13に示すように、凹部15に位置決め部15Aを設け、装着部53に位置決め凹部15に嵌合する位置決め凸部53Aを設けて、上ケース14に対して部品取付部55の位置決めを行なうようにしても良い。
次に、ロック部材を付勢する付勢手段として、板ばね56ではなく、コイルばね58を使用した場合の変形例を説明する。なお、上記と同等の内容については、同じ符号を付して、その説明を省略する。また、コイルばね58は各ロック部材に対して設けられる。したがって、この場合は3本設けられる。
図14及び図15に示すように、ロック部材91のカム部94の外面は、ケース14に対して垂直面となっており、カム部94の外面には、断面略十字状の嵌入部98がロック部材90の長手方向に沿って突出し、コイルバネ58の一端部が嵌入されるようになっている。また、嵌入部98の下方には、本体部92から張出すストレート部92Bが設けられており、嵌入部98に装着するコイルバネ58の一端部側を支持する(後述する)。
一方、部品取付部55の中央部には、略三角柱の係止突起73が突設されており、各側面には係止突起73の全高に渡って溝部73Aが凹設されている。この溝部73Aは入口側よりも奥側の方が幅広となっており、嵌入部98にコイルバネ58の一端部を装着した状態で、コイルバネ58の他端部を溝部73Aに係合させる。溝部73Aは入口側の方が奥側よりも幅が狭くなっているため、コイルバネ58の他端部は、水平方向に対しては容易には外れないようになっている。
ところで、図17(B)に示すように、解除突起104が操作突起88に当接し、ブレーキ部材80が圧縮コイルスプリング78の付勢力に抗して所定高さ上昇し、係合突起86の当接面86Aがロック部材91のカム部94の当接面94Aに当接すると、カム部94の当接面94Aには、リール40の軸方向に沿った押圧力が負荷されることとなる。
一方、図18に示すように、ロック部材91の本体部92からストレート部92Bが張出していない場合(仮想線で示す)、カム部94はロック部材91の長手方向の一端側に位置しているため、係合突起86によってカム部94が押圧された状態で、ロック部材90の角部Pには回転モーメントMが働くこととなる。
しかし、ロック部材91の本体部92からストレート部92Bを張出させることで、回転モーメントMに抵抗する回転モーメントM1(M1=M)を上ケース14から得ることができる。これにより、ロック部材91を上ケース14側へ常時付勢させる力を与えることができ、ロック部材91の傾きを防止し、ロック部材91を上ケース14から離れないようにすることができる。
このため、コイルバネ58及びロック部材91の組込み時にコイルバネ58及びロック部材91の飛び出しを防止することができる。また、ロック部材91の本体部92からストレート部92Bを張出させることで、ロック部材91の重心をロック部材91の裏面側(上ケース14側)とすることができ、ロック部材91の安定感を図ることができる。
このような構成により、板バネ56に代えてコイルバネ58を用いることで、コイルバネ58は板バネ56と比較して部品単価が大幅に安いため、作業性は若干悪くなるが、コストダウンを図ることができる。
なお、ここでは、板バネ56或いはコイルバネ58を用いて説明したが、ロック部材90或いはロック部材91を付勢することができれば良いため、これに限るものではなく、トーションバネを用いても良い。
また、圧縮コイルスプリング78によって、ブレーキ部材80の制動ギア82をリールハブ42の係合ギア54側へ押圧しているが、制動ギア82と係合ギア54を係合させることができれば良いため、これに限るものではない。
図19(A)〜(C)に示すように、ロック部材93のカム部95の当接面95Aの傾斜角度を変え、ブレーキ部材80をケース12に対して回転不能にした状態で(図19(A)参照)、カム部95の当接面95Aとブレーキ部材80の係合突起86の当接面86Aとを当接させ、板バネ56の付勢力によって、制動ギア82を係合ギア54側へ押圧する分力を与えるようにしても良い。これにより、圧縮コイルスプリング78を不要とすることができる。これにより、部品点数が少なくなり、コストを削減することができる。
また、上記の実施の形態では、ケース12の略中央部にリール40を配置した構成としたが、リール40は必ずしもケース12の中央部に配置しなければならないというものではない。
さらに、上記の実施の形態では、記録テープカートリッジ10がリーダーテープ22を有する構成を例示したが、本発明は、ケース12の形状、磁気テープTの引出構造(リーダ部材の構成)、ギア開口18の開閉構造等によって限定されることはない。したがって、例えば、記録テープカートリッジ10は、磁気テープTの先端にリーダ部材として小円柱状のリーダピンが取り付けられた構成としても良く、ギア開口18を開閉する遮蔽部材(所定の直線または円弧に沿って移動するスライドドア等)を有する構成としても良い。
また、上記実施の形態では、ブレーキ部材80との係合部を係合ギア54としたが、リール40の回転を規制することができれば良いため、これに限るものでない。この場合、係合部の形状に伴って、ブレーキ部材の形状も変わるのは勿論のことである。
さらにまた、上記の実施の形態では、記録テープとして磁気テープTを用いた構成としたが、本発明はこれに限定されず、記録テープは情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、本発明に係る記録テープカートリッジが如何なる記録再生方式の記録テープにも適用可能であることは言うまでもない。