以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、記録テープカートリッジのドライブ装置への装填方向を矢印Aで表し、それを前方向とする。また、矢印Bを左方向とし、それらを基準に前後・左右・上下の表現をする。また、以下において「径方向」と言う場合は、ケースに収容されたリールの軸心(中心)線から放射状に外方へ向かう方向と平行な方向を指している。
図1で示すように、記録テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。このケース12は、PC等の樹脂製の上ケース14と下ケース16とが、それぞれ天板14Aの周縁に立設された周壁14Bと、底板16Aの周縁に立設された周壁16Bとを互いに当接させた状態で、超音波溶着やねじ止め等によって接合されて構成されている。
ケース12の内部には、リール40が1つだけ回転可能に収容されている。このリール40は、図2、図3で示すように、軸心部を構成する有底円筒状のリールハブ42と、その上端部に設けられる上フランジ44とが一体に成形され、下フランジ46がリールハブ42の下端部に超音波溶着されて構成されている。そして、そのリールハブ42の外周面に、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTが巻回され、上フランジ44及び下フランジ46によって、その巻回された記録テープTの幅方向の端部が保持されている。
また、図1で示すように、記録テープカートリッジ10の左前方側のコーナー部12C付近には、リール40に巻装された記録テープTを外部に引き出すための開口20が形成されている。すなわち、コーナー部12Cに隣接する前壁12Aと左側壁12Bとに跨って開口20が形成され、その開口20から、記録テープTの端部に固着され、左側壁12Bに沿って配置されたリーダーテープ22が引き出されるようになっている。
なお、ここで言うコーナー部とは、略矩形箱状ケース12の周壁14B、16Bにおいて、平面視で略直角又は鈍角に交わる稜線部分を指している。したがって、コーナー部12Cとは、前壁12Aと左側壁12Bとが平面視で略直角に交わっている稜線部分を指している。
リーダーテープ22は、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が記録テープTを引き出すために係合する被引出部材であり、その先端近傍には引出部材が係合する孔部22Aが穿設されている。そして、その孔部22Aの先端よりも若干後方寄りの上下両サイドには、それぞれ上下方向に向かって張り出す張出部22Bが形成されている。この張出部22Bが、上ケース14の内面及び下ケース16の内面にそれぞれ形成された収納凹部24に収納(挿入)されることにより、リーダーテープ22がケース12内に保持される。
また、開口20は、記録テープカートリッジ10の不使用時にはドア30によって閉塞される。このドア30は、開口20と略同じ形状及び大きさの平面視略「L」字状に形成されている。なお、このドア30は、POM等のオレフィン系樹脂で成形されるのが好ましいが、PC等の樹脂やSUS等の金属で成形してもよい。
また、そのドア30の回動支点となる支軸26が、上ケース14及び下ケース16の前壁12A側にそれぞれ突設されている。この支軸26は、上ケース14側が円筒状のボス26Aになっており、下ケース16側が円柱状のボス26Bになっている。そして、下ケース16側のボス26Bの先端(上端)が、上ケース14側のボス26Aに嵌入することにより、支軸26が構成されるようになっている。したがって、ボス26Bの径がボス26Aの径よりも若干小さくなっている。
また、ドア30の内面の右端部近傍(右端部より所定距離左方へずれた位置)には、平板状の回転摺動部32が3本平行に突設されている。この回転摺動部32は、ドア30の内面の上下両端部と、中央より若干下方へずれた中途部とからそれぞれ突設され、各回転摺動部32には、支軸26に遊嵌される貫通孔が穿設されている。したがって、各貫通孔に支軸26が挿通されることにより、ドア30が回動可能に支持される。
また、上端部の回転摺動部32の上面と、下端部の回転摺動部32の下面には、それぞれ貫通孔周りに環状凸部34が形成されている。そして、この環状凸部34が、それぞれ上ケース14と下ケース16に接触することにより、ドア30の上端面30Aと上ケース14との間、及びドア30の下端面30Bと下ケース16との間に、それぞれ0.3mm〜0.5mm程度の隙間が形成されるようにしている。
また、回転摺動部32間のドア30の内面には、支軸26の周面に沿った平断面視円弧状の隆起部36が形成されている。そして、支軸26には、ドア30を常時開口20の閉塞方向へ付勢するトーションばね28の巻回部28Aが挿嵌されている。
すなわち、このトーションばね28の巻回部28Aは、下端部の回転摺動部32と中途部の回転摺動部32の間に保持された状態で、径が細い方のボス26Bに挿嵌されて取り付けられている。そして、トーションばね28の一方の端部側は、ケース12のビスボス38(下ケース16に突設されたビスボス)に係止され、他方の端部側は、隆起部36の右側の縁端部に係止されている。
一方、リール40は樹脂材で成形され、上記したように、有底円筒状のリールハブ42と、リールハブ42の上端部に一体に延設された上フランジ44と、リールハブ42の下端部に溶着等によって取り付けられた下フランジ46とで構成されている。したがって、リールハブ42と下フランジ46は、互いに相溶性がある樹脂材を用いて成形され、超音波等で容易に溶着可能とされている。また、上フランジ44と下フランジ46の間隔は、記録テープTの幅と略同一とされており、リールハブ42に巻回された記録テープTの幅方向の位置が規制されるようになっている。
また、図2、図3で示すように、リールハブ42の下フランジ46側には底壁48が設けられており、その底壁48の軸心(中心)部分には貫通孔48Aが穿設されている。そして、その底壁48の下面側にはリールギア50が環状に形成されている。このリールギア50は、リール40が圧縮コイルスプリング78の付勢力によって下ケース16側に押し付けられることにより、下ケース16の略中央に設けられた円形のギア開口18から露出するようになっており、ドライブ装置側の回転シャフト100に備えられた駆動ギア102と噛合して、リール40に回転動力を伝達するようになっている。
また、リールギア50の径方向内側には、磁性材より成る環状のリールプレート52がインサート成形等により一体的に固着されている。このリールプレート52は、駆動ギア102とリールギア50とが完全に噛合した状態で、駆動ギア102と後述する解除突起104との間に設けられた環状のマグネット106の磁力により吸着され、リール40と回転シャフト100との軸ずれを防止するとともに、リールギア50と駆動ギア102との噛合状態を保持可能としている。このような構成により、回転シャフト100がその軸心廻りに回転すると、リール40がこれと一体にケース12内で回転する。
一方、リールハブ42の底壁48の上面側には、係合ギア54が環状に形成されており、ブレーキ部材80の制動ギア82と噛合可能になっている。このブレーキ部材80は、図4で示すように、リールハブ42内に上下動可能に(リール40の軸方向に移動可能に)収容される円板状に形成され、その下面外周部には制動ギア82が環状に設けられている。
そして、ブレーキ部材80の上面には、上ケース14のガイド壁部68(後述)間に挿入される複数(本実施例では3つ)の板状のガイド部84と、複数(本実施例では3つ)のロック部材90(後述)のカム部94とそれぞれ係合する同数(3つ)の略角柱状の係合突起86が、それぞれ等間隔に、かつ交互に立設されている。この係合突起86は、径方向内側が30度〜60度、好ましくは45度傾斜したテーパー面86Aとされており、そのテーパー面86Aが、ロック部材90のカム部94に形成されたテーパー面94Aと係合するようになっている。
また、ブレーキ部材80の上面で、ガイド部84及び係合突起86の外側には、平坦面80Aが環状に形成され、記録テープカートリッジ10(ケース12)を組み立てたとき、付勢部材としての圧縮コイルスプリング78の下端が当接するようになっている。
更に、ブレーキ部材80の下面中央には、貫通孔48Aに挿通可能な略円柱状の操作突起88が突設されており、ドライブ装置側の回転シャフト100の軸心部に突設された解除突起104と当接可能とされている(図2、図3参照)。なお、この操作突起88は、図示するように、貫通孔48Aから(底壁48から)下方へは突出しない程度の高さ(貫通孔48A内に位置するような高さ)に突設されており、これによって、ブレーキ部材80が不用意に上方へ移動しないようにしている。
図4、図5で示すように、上ケース14の天板14A内面の略中央(リールハブ42の軸心部上)には、リールハブ42の上縁部に、その内周面側から係合して、リール40の軸方向(上下方向)の移動を阻止する複数(3つ)のロック部材90等を摺動可能に収容する取付部60が形成されている。
この取付部60は、平面視同心円状に立設され、外側が内側よりも高い2つの円筒壁62、64を有している。この円筒壁62、64は適宜位置(等間隔に3箇所)が切り欠かれており、その切り欠かれた部位の円筒壁64の内側には、ガイドリブ65が径方向に沿って立設されている。そして、このガイドリブ65間で構成された収容部63内にロック部材90が収容され、径方向に摺動可能とされている。
また、円筒壁62、64の間には、その円筒壁62、64同士を連結するように複数(本実施例では9つ)の板状の支持リブ66が径方向に沿って立設されている。そして、各収容部63の間で、かつ円筒壁64の内側には、ブレーキ部材80のガイド部84が挿入される2枚1組のガイド壁部68が、そのガイド部84と同数組突設されている。この2枚1組のガイド壁部68は、図4、図5で示すように、円筒壁64の外周面にその外端面が面一となるように径方向に沿って突設され、各組のガイド壁部68において、その突設間隔は、ガイド部84の板厚と同じか、それよりも若干大きくされている。
また、円筒壁62、64の間で、かつ収容部63の両側(ガイドリブ65の延長線上)には、ロック部材90を摺動可能に(微少な隙間を有して)保持する一対の保持部70が突設されている。この保持部70の先端(下端)には、図6、図7で示すように、互いに内側(ロック部材90側)へ向かって迫り出す突出部としてのアンダーカット部70Aが形成されている。
このアンダーカット部70Aは、ロック部材90を組み込んだ後、少なくとも上ケース14を天板14Aの内面が下を向くようにひっくり返して下ケース16に被せたときに(ケース12を組み立てるときに)、そのロック部材90が取付部60(収容部63)から落ちない(外れない)程度に仮押さえするようになっている。
すなわち、このアンダーカット部70Aは、金型で成形する際、その金型から引き抜き可能な程度(0.1mm〜0.5mm程度、好ましくは0.3mm程度)に内側に迫り出しており、更に、その引き抜きが容易にできるように、側断面視で略円弧状に形成されている。なお、保持部70は、その高さが4mm程度、板厚が0.35mm〜1.2mm程度、好ましくは0.5mm〜0.8mm程度に形成されている。
また、この保持部70は、上ケース14と一体に成形してもよいし、別体で成形して上ケース14に固着するようにしてもよい。但し、保持部70を別体で成形して上ケース14に固着する構成にすると、ロック部材90を上ケース14に設置した後で、組み付けることが可能となるので、アンダーカット部70Aを更に迫り出したような形状やゲート状(「コ」字状)に成形することが可能となり、後述する止め具76を不要とできる効果がある。
更に、天板14A内面の略中央(リールハブ42の軸心線上であり、取付部60の中心)には、板ばね56を取り付けるためのかしめ用ピン72が突設されている。板ばね56は、各ロック部材90におけるカム部94の径方向内側面にそれぞれ当接するように、中央から3本に分岐されるように(3枚羽根となるように)形成され、その中央部分には、かしめ用孔56Aが穿設されている。
したがって、そのかしめ用孔56Aに、上ケース14のかしめ用ピン72を挿通してかしめる(潰す)ことにより、上ケース14に板ばね56が取り付けられる。なお、このように、付勢手段としての板ばね56が天板14A内面の略中央(取付部60の中心)部分に配設される構成であると、ケース12内におけるデッドスペースの有効利用が図れ、かつ、その付勢手段をコンパクトに構成できるので好ましい。そして、ロック部材90は、この板ばね56によって、常時取付部60の中心(リール40の中心)から径方向外側に向かって付勢される。
また、天板14Aにおいて、収容部63の延長線上で、かつ円筒壁62よりも外側の所定位置(後述するテンションがある程度掛けられる位置)には、ロック部材90と板ばね56を組み込むときに、その板ばね56で付勢されたロック部材90を一時的に(上ケース14を下ケース16に被せるまで)仮止めする位置規制手段としてのストッパーリブ74が突設されている。
したがって、ロック部材90は、板ばね56とストッパーリブ74とで、ある程度のテンションが掛けられた状態で保持されるので、その脱落が一層防止される。なお、板ばね56は、後述する止め具76を支持リブ66上に溶着してからも取り付けが可能であるため、その組み込みは容易かつ良好にできる。
また、ロック部材90を保持部70に仮押さえ保持させた後、支持リブ66上には、ロック部材90が摺動しても外れないように本押さえ保持する脱落防止部材としての樹脂製のリング状止め具76が、超音波等で溶着されるようになっている。この止め具76とロック部材90との間には、図8で示すように、ロック部材90が摺動する際に、その妨げとならないように、所定のクリアランスC1(C1=0.05mm〜0.4mm程度)が確保されるようになっており、そのクリアランスC1が確保されるように、支持リブ66の高さが規定されている。
また、この止め具76上には、記録テープカートリッジ10を組み立てたときに(上ケース14を下ケース16に被せたときに)、圧縮コイルスプリング78の上端が当接するようになっており、圧縮コイルスプリング78は、止め具76(上ケース14)と平坦面80A(ブレーキ部材80)との間で保持されるようになっている。なお、圧縮コイルスプリング78の上端は止め具76に当接させなくてもよく、支持リブ66に当接させるようにしてもよい。
但し、圧縮コイルスプリング78の上端を止め具76に当接させるようにすると、止め具76を支持リブ66上に溶着しなくてもよくなる効果がある。更に、止め具76は、図示のリング状に限定されるものではなく、ロック部材90の脱落を常時防止できるように、少なくともロック部材90の両側の支持リブ66間に架設されていればよい。また、図9で示すように、このような止め具76を設けるのみで、保持部70を省略する構成としてもよいし、図10で示すように、止め具76を省略して保持部70のみを設ける構成としてもよい。
ロック部材90は、収容部63内に、径方向に摺動可能となるように、保持部70や止め具76等により脱落が防止された状態で保持されており、上ケース14の天板14A内面に摺接する略角柱状の本体部92を有している。そして、この本体部92の径方向内側の端部92Bに、本体部92と同じ幅の略角柱状のカム部94がリール40の略軸方向に一体に突設されている。
このカム部94は、図8で示すように、本体部92に対して外側に向かって所定角度θ傾斜するように所定高さ突設されており、ロック部材90(本体部92)の径方向外側の端部92Aがストッパーリブ74によって係止された状態で、板ばね56の付勢力を上ケース14側へ分力させるようになっている。したがって、ロック部材90は、その組込時において、より一層収容部63からの脱落が防止される構成であり、これによって、更にその組込性が向上されるようになっている。
また、このカム部94の下端面外方側は30度〜60度、好ましくは45度傾斜したテーパー面(カム面)94Aとされており、ブレーキ部材80の係合突起86のテーパー面86Aと係合するようになっている。係合突起86及びカム部94は、共に略角柱状に形成されているので、剛性が高く、好適に係合可能となっている。そして、このロック部材90(本体部92)の径方向外側の端部92Aにおける厚さD(図8参照)は、ケース12内において、リール40が最下位置に位置したときの上フランジ44上面と天板14A内面との距離W(図2参照)と略同一に形成されている。
更に、この径方向外側の端部92Aの近傍には、リールハブ42の上縁部と係合する所定高さの係合部96が、リール40の軸方向に(垂直に)一体に突設されている。この係合部96は、本体部92と同じ幅で、かつカム部94よりも低く突設され、その下端面外方側は、所定角度傾斜したテーパー面96Aとされている。そして、そのテーパー面96Aを含む外側面の形状は、平面視でリールハブ42の内周面と合致する円弧面とされている。
したがって、ストッパーリブ74によって仮止めされたロック部材90は、記録テープカートリッジ10を組み立てるときに(上ケース14を下ケース16に被せるときに)、その動作に伴って、係合部96がリールハブ42の上縁部に係合し易い構成であり、係合後は、図2で示すように、本体部92の径方向外側の端部92Aが、ストッパーリブ74から離間するようになっている。
また、このとき、係合部96のテーパー面96Aを除く外側面が、リールハブ42の内周面に当接(内周面を押圧)するため、リールハブ42の内周面における金型からの抜き勾配は0度であることが好ましい。この抜き勾配が0度より大きいと、リールハブ42の上縁部が外方へ向けて拡がる(上縁部の径が大きくなる)ので、係合部96による押圧力が低減し、ロック部材90が好適に機能しなくなるおそれがある。
以上の構成によれば、図11で示すように、記録テープカートリッジ10の不使用時には、ブレーキ部材80は圧縮コイルスプリング78の付勢力によって下方へ付勢され、ロック部材90は板ばね56の付勢力によって径方向外側へ付勢される。このとき、ガイド壁部68に挿入されたガイド部84により、ブレーキ部材80のケース12に対する回動が阻止され、ブレーキ部材80の制動ギア82とリールハブ42内の係合ギア54が強固に噛合することにより、リール40の不用意な回転が阻止される。
そして、ロック部材90の係合部96が、リールハブ42の上縁部と係合することにより、即ち係合部96のテーパー面96Aを除く外側面が、リールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の係合部96よりも径方向外側の端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在することにより(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面に面接もしくは極めて微少な間隙を有して対面することにより)、記録テープカートリッジ10の不使用時において、リール40の上昇が阻止される。
ここで、記録テープカートリッジ10の不使用時、板ばね56の分力がブレーキ部材80に作用しないように、係合突起86とカム部94は互いに当接しない状態になっている。そして、その対向するテーパー面86A、94A間のリール40の軸方向(ブレーキ部材80の移動方向)におけるクリアランスC2は、当然ながら制動ギア82と係合ギア54との噛合量Kよりも小さくなっている。これは、その噛合量KよりもクリアランスC2が大きければ、ブレーキ部材80は、落下等の衝撃によりクリアランスC2分は簡単に上昇してしまうので、リール40が不用意に回転可能となってしまうからである。
したがって、係合突起86とカム部94とのクリアランスC2は極めて微少であり、それと略同じか、それ以上に本体部92の外側端部92Aの下面と上フランジ44の上面との間隙は微少になっている(略面接している)。よって、リール40及びブレーキ部材80は、記録テープカートリッジ10の不使用時、実質的に上昇不能(リール40の軸方向に移動不能)である。
一方、記録テープカートリッジ10の使用時には、図12で示すように、解除突起104が操作突起88に当接し、ブレーキ部材80が圧縮コイルスプリング78の付勢力に抗して所定高さ上昇する。これにより、係合突起86のテーパー面86Aとカム部94のテーパー面94Aとが互いに当接し、更に、そのテーパー面94Aがテーパー面86A上を摺動して、図13で示すように、カム部94が係合突起86の内側に入り込む。
つまり、制動ギア82と係合ギア54との噛合が解除されるとともに、ロック部材90が板ばね56の付勢力に抗して径方向内側へ向かって摺動し、係合部96の外側面がリールハブ42の内周面から離間するとともに、本体部92の外側端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間から退避する(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面から離間する)。これにより、リール40はケース12内において、回転可能になるとともに、所定高さ上昇可能となる。
なお、ブレーキ部材80が上昇した際、係合突起86の内側にカム部94が入り込むが、このとき、係合突起86の内側面にカム部94の外側面が当接するのみで、係合突起86の上端面はロック部材90に当接せず、かつカム部94の下端面もブレーキ部材80に当接しない。また、係合突起86の内側面及びカム部94の外側面は、共に金型からの抜き勾配が0度になっている。このため、板ばね56によってロック部材90が押圧される押圧力(付勢力)は、係合突起86の内周面で受け止められ、ブレーキ部材80を下方向へ押し付ける分力が発生することはない。
つまり、リール40の回転時において、板ばね56による押圧力(付勢力)は、リール40の径方向にのみ作用し、リール40の軸方向(上下方向)には作用しない(伝達されない)。このため、ロック部材90は安定してアンロック状態に保持される。そして、リール40の軸方向(上下方向)への押圧力(付勢力)は、従来と同様に圧縮コイルスプリング78の付勢力のみとなるので、板ばね56を設ける構成であっても、回転シャフト100の軸方向(下方向)に余計な負荷が掛からないようにできる。
更に、図7、図8で示すように、ロック部材90の本体部92において、上ケース14の天板14Aの内面と接触する上面と、止め具76に接触する下面には、適宜凹部92C(又は凸部でもよいが)を形成することが好ましい。このような凹部92C(又は凸部)を形成すると、上ケース14の天板14A内面及び止め具76との接触面積を低減させることができるので、ロック部材90を抵抗少なく摺動させることが可能となる。
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次に、その作用について説明をする。記録テープカートリッジ10は、不使用時(ドライブ装置に装填しないとき)には、ドア30がトーションばね28の付勢力により開口20を閉塞している。また、リーダーテープ22は、その張出部22Bが収納凹部24内に収納(挿入)されて保持されることにより、左側壁12Bに沿って配置されている。
また、図2、図11で示すように、リール40が圧縮コイルスプリング78によりブレーキ部材80を介して下方へ付勢されている。つまり、圧縮コイルスプリング78の付勢力により、ブレーキ部材80の制動ギア82がリールハブ42内の係合ギア54に強固に噛合し、リール40の不用意な回転が阻止されている。
そして、板ばね56の付勢力により、ロック部材90が取付部60の中心(リール40の中心)から径方向外側へ向かって付勢され、その係合部96がリールハブ42の上縁部に係合している。すなわち、係合部96のテーパー面96Aを除く外側面がリールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の係合部96よりも径方向外側の端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在している(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面に面接もしくは極めて微少な間隙を有して対面している)。
ここで、ロック部材90(本体部92)の外側端部92Aの厚さDは、ケース12内において、リール40が最下位置に位置したときの上フランジ44上面と天板14A内面との距離Wと略同一に形成されているので、そのロック部材90により、リール40の上昇が阻止される。
つまり、落下等により記録テープカートリッジ10に衝撃が加わっても、リール40は上昇することがない。したがって、ブレーキ部材80が傾いて係止されてしまう(倒れ込んでしまう)ような不具合は発生しないし、上フランジ44や下フランジ46の外周縁側がケース12の内面に当たって変形してしまうような不具合も発生しない。よって、記録テープTに悪影響を与えることがない。
さて、記録テープカートリッジ10の記録テープTにデータを記録、又は記録テープカートリッジ10の記録テープTに記録されたデータを再生する際には、その記録テープカートリッジ10をドライブ装置(図示省略)へ装填する。すなわち、ドライブ装置の装填口(図示省略)に記録テープカートリッジ10を前壁12A側から挿入する。
すると、その装填に伴って、ドライブ装置の開閉部材(図示省略)が相対的にドア30の右端部(支軸26よりも右側)へ接近、当接して、その右端部を押圧する。すると、ドア30は、トーションばね28の付勢力に抗して支軸26を中心に回動し、開口20を開放する。
このとき、ドア30の上端面30Aと上ケース14の間、及びドア30の下端面30Bと下ケース16との間には、それぞれ環状凸部34によって0.3mm〜0.5mm程度の隙間が形成されている。つまり、ドア30において、上ケース14及び下ケース16と接触しているのは、環状凸部34だけとなっている。したがって、ドア30は摺動抵抗少なく回動できる。
なお、そのドア30において、少なくとも回転摺動部32及び環状凸部34は、POM等のオレフィン系樹脂で成形することが望ましい。これによれば、PC等の樹脂で成形されている上ケース14及び下ケース16に対する摺動抵抗を更に低減することができるとともに、支軸26に対する摺動抵抗も低減することができる。
また、トーションばね28の巻回部28Aは、回転摺動部32の間に配置されているので、その回転摺動部32がPOM等のオレフィン系樹脂で成形されていると、PC等の樹脂で成形されるケース12よりも削られ難くなる。つまり、トーションばね28の巻回部28Aが、ドア30の回動によって摺動しても、摩耗粉等が発生し難くなるので、記録テープTに対して悪影響を与えることがない。
何れにしても、このようなドア30が回動して開口20が開放されると、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が左側壁12B側から開口20に接近し、リーダーテープ22の孔部22Aと係合する。このとき、リーダーテープ22は、左側壁12Bに近接した状態で待機しているので、その引出部材は確実に孔部22Aに係合できる。
こうして、引出部材が孔部22Aに係合したら、その引出部材が開口20から離間することにより、リーダーテープ22がケース12内から引き出される。そして、ケース12内から引き出されたリーダーテープ22は、ドライブ装置の巻取リール(図示省略)に巻回される。
一方、図12で示すように、ドライブ装置の回転シャフト100が、ギア開口18から進入し、リール40の底壁48へ向かって接近する。すなわち、解除突起104が操作突起88を押圧し、ブレーキ部材80を上昇させる。すると、係合ギア54と制動ギア82との噛合が解除されるが、その前に、係合突起86がロック部材90のカム部94に当接して、更にそのカム部94を上方向へ押圧する。
すると、係合突起86のテーパー面86A上をカム部94のテーパー面94Aが摺動し、ロック部材90が板ばね56の付勢力に抗して天板14Aの内面上(収容部63内)を径方向内側へ摺動する。このとき、本体部92には凹部92Cが形成されているので、ロック部材90は抵抗少なく摺動できる。また、そのロック部材90は、止め具76により、収容部63(取付部60)から外れることなく、安定した状態で摺動できる。
こうして、ロック部材90が収容部63内を径方向内側へ向かって摺動すると、ロック部材90の係合部96の外側面がリールハブ42の内周面から離間し、本体部92の外側端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間から退避する(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面から離間する)。
そして、図3、図13で示すように、カム部94が係合突起86の内側に入り込む(落ち込む)ことにより、本体部92の外側端部92Aがリールハブ42の内側に配置され、かつ係合突起86の内側面にカム部94の外側面が当接する。これにより、リールハブ42の上縁部に対する係合部96の係合が解除され、ロック部材90がアンロック状態に保持される。
そして更に、回転シャフト100が上昇することにより、駆動ギア102がリールギア50に噛合し、リールプレート52がマグネット106に吸着される。リールギア50に駆動ギア102が噛合されると、リール40はケース12内において、所定高さ上昇して回転可能となり、駆動ギア102、即ちリール40が巻取リールと同期して回転駆動することにより、記録テープTが順次ドライブ装置側へ送り出される。そして、そのドライブ装置の記録再生ヘッド(図示省略)によって、記録テープTにデータの記録、又は記録テープTに記録されたデータの再生が行われる。
記録テープカートリッジ10をドライブ装置から取り出すときには、まず駆動ギア102を逆回転させて、記録テープTをリール40に巻き戻す。そして、リーダーテープ22が巻取リールから外され、開口20からケース12内に戻される。つまり、リーダーテープ22の張出部22Bが収納凹部24内に収納(挿入)されて、ケース12内の所定位置に保持される。
次いで、回転シャフト100が下降し、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が解除されるとともに、リールプレート52からマグネット106が離間される。そして、リール40がブレーキ部材80を介して圧縮コイルスプリング78の付勢力により下降する。すると、ロック部材90は板ばね56の付勢力により収容部63内を径方向外側へ摺動し、カム部94のテーパー面94Aが係合突起86のテーパー面86A上を摺動する。このときもロック部材90は、止め具76により、収容部63(取付部60)から外れることなく、安定した状態で摺動できる。
そして、係合突起86がカム部94から離間することで、係合部96がリールハブ42の上縁部に係合する。すなわち、板ばね56の付勢力により、係合部96のテーパー面96Aを除く外側面がリールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の外側端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在する(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面に面接もしくは極めて微少な間隙を有して対面する)。これにより、リール40の上昇が再び阻止された状態となる。
また、このとき、圧縮コイルスプリング78の付勢力により、制動ギア82が係合ギア54に強固に噛合し、リール40の不用意な回転が阻止される。そして、回転シャフト100がギア開口18から抜き出された後、記録テープカートリッジ10が装填口から排出されるが、この排出動作に伴って、開閉部材がドア30の右端部から離間する。すると、ドア30はトーションばね28の付勢力によって、支軸26を中心に上記とは反対の方向へ回動して、開口20を閉塞する。こうして、開口20が閉塞された記録テープカートリッジ10がドライブ装置から排出される。
以上、何れにしても、ロック部材90は、取付部60(収容部63内)へ組み込まれたとき、その収容部63の両側に形成された保持部70のロック部材90側に迫り出すアンダーカット部70Aによって保持されるとともに、リール40の中心から径方向外側に向かって付勢された板ばね56と収容部63の延長線上に突設されたストッパーリブ74とによって、ある程度のテンションが掛けられた状態で保持される構成になっている。
したがって、ロック部材90の取付部60(収容部63)からの飛び出しが防止され、止め具76を支持リブ66上に溶着する作業が容易にできる。また、その止め具76を溶着することにより、上ケース14を下ケース16に被せてケース12を組み立てる際に、更にロック部材90の脱落を防止することができるので、その組み立て作業が容易かつ良好にできる。そして、記録テープカートリッジ10(ケース12)の組立後、ロック部材90は、止め具76により、摺動時においても脱落防止に保持されるので、取付部60(収容部63)から外れることなく、安定して摺動できる。
さて、次に、ロック部材を付勢する付勢手段として、板ばね56ではなく、コイルばね58を使用した場合の変形実施例を説明する。なお、図において、上記と同等の部分については、同じ符号を付して、その説明を省略する。また、コイルばね58は各ロック部材91に対して設けられる。したがって、この場合は3本設けられるが、このコイルばね58は、板ばね56よりも安価で済む利点がある。
図14乃至図16で示すように、コイルばね58を使用する場合は、上記ロック部材90とは、次の点で異なるロック部材91を使用する。すなわち、このロック部材91は、本体部92に対して垂直に(リール40の軸方向に)カム部94が突設されている。そして、本体部92のカム部94よりも径方向内側の端部92Bが所定長さ径方向内側へ向けて延設されている。
そして更に、カム部94の径方向内側面に、コイルばね58が挿嵌される断面視十字状の嵌入部98が所定長さ径方向内側へ向けて突設されている。この嵌入部98の外径は、コイルばね58の内径よりも若干大きく形成され、コイルばね58が嵌入部98から外れないようになっている。
一方、取付部60においては、かしめ用ピン72の代わりに、コイルばね58保持用の係止突起73が、その取付部60の中心に突設されている。この係止突起73は、3本のコイルばね58を1度に保持できるように、略三角柱状に形成され、その側面における両端部には、全高に亘って、それぞれコイルばね58の一端(一巻)を両側から係止して保持できる一対の係止爪73Aが内側に向かって張り出すように形成されている。
なお、係止突起73にも嵌入部98を成形することが好ましいが、その場合は、アンダーカットになるため成形が困難になる。したがって、係止突起73の全高に亘る一対の係止爪73Aとし、コイルばね58及びロック部材91を組み込むときに、その組込性が良好となるようにするとともに、係止突起73とストッパーリブ74との間で確実に保持できるようにしている。
また更に、板ばね56の場合は、止め具76を支持リブ66上に溶着した後でも容易に取り付けることが可能であったが、コイルばね58の場合は、止め具76を支持リブ66上に溶着した後では取り付けることが困難になるため、より一層ロック部材91を飛び出し防止に保持する必要がある。
そのため、係止突起73に係止爪73Aを形成するだけではなく、本体部92の径方向内側の端部92Bを所定長さ(嵌入部98よりも若干長くなるように)延設している。このような構成によれば、ロック部材91の重心を低くすることができるので、ロック部材91とコイルばね58を取付部60(収容部63)に組み込んで、係止突起73とストッパーリブ74との間で保持させた際、ロック部材91がコイルばね58のテンションによって取付部60(収容部63)から飛び出さないようにできる。
以上のようなコイルばね58を使用した記録テープカートリッジ10において、次に、その作用について説明をする。なお、コイルばね58に関する部分以外については、上記と同様なので、その説明は省略する。
記録テープカートリッジ10は、不使用時(ドライブ装置に装填しないとき)には、図17で示すように、リール40が圧縮コイルスプリング78によりブレーキ部材80を介して下方へ付勢されている。つまり、圧縮コイルスプリング78の付勢力により、ブレーキ部材80の制動ギア82がリールハブ42内の係合ギア54に強固に噛合し、リール40の不用意な回転が阻止されている。
そして、コイルばね58の付勢力により、ロック部材91が取付部60の中心(リール40の中心)から径方向外側へ向かって付勢され、その係合部96がリールハブ42の上縁部に係合している。すなわち、係合部96のテーパー面96Aを除く外側面がリールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の係合部96よりも径方向外側の端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在している(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面に面接もしくは極めて微少な間隙を有して対面している)。
ここで、ロック部材91(本体部92)の外側端部92Aの厚さDは、ケース12内において、リール40が最下位置に位置したときの上フランジ44上面と天板14A内面との距離Wと略同一に形成されているので、そのロック部材91により、リール40の上昇が阻止される。
つまり、落下等により記録テープカートリッジ10に衝撃が加わっても、リール40は上昇することがない。したがって、ブレーキ部材80が傾いて係止されてしまう(倒れ込んでしまう)ような不具合は発生しないし、上フランジ44や下フランジ46の外周縁側がケース12の内面に当たって変形してしまうような不具合も発生しない。よって、記録テープTに悪影響を与えることがない。
記録テープカートリッジ10の記録テープTにデータを記録、又は記録テープカートリッジ10の記録テープTに記録されたデータを再生する際には、その記録テープカートリッジ10をドライブ装置(図示省略)へ装填する。すなわち、ドライブ装置の装填口(図示省略)に記録テープカートリッジ10を前壁12A側から挿入する。すると、その装填に伴って、ドライブ装置の開閉部材(図示省略)が相対的にドア30の右端部(支軸26よりも右側)へ接近、当接して、その右端部を押圧する。
開閉部材がドア30の右端部を押圧すると、ドア30は、トーションばね28の付勢力に抗して支軸26を中心に回動し、開口20を開放する。ドア30が回動して開口20が開放されると、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が左側壁12B側から開口20に接近し、リーダーテープ22の孔部22Aと係合する。そして、孔部22Aに係合した引出部材が開口20から離間することにより、リーダーテープ22がケース12内から引き出され、ドライブ装置の巻取リール(図示省略)に巻回される。
一方、図18で示すように、ドライブ装置の回転シャフト100が、ギア開口18から進入し、リール40の底壁48へ向かって接近する。すなわち、解除突起104が操作突起88を押圧し、ブレーキ部材80を上昇させる。すると、係合ギア54と制動ギア82との噛合が解除されるとともに、係合突起86がロック部材91のカム部94に当接して、更にそのカム部94を上方向へ押圧する。
すると、係合突起86のテーパー面86A上をカム部94のテーパー面94Aが摺動し、ロック部材91がコイルばね58の付勢力に抗して天板14Aの内面上(収容部63内)を径方向内側へ摺動する。このとき、本体部92には凹部92Cが形成されているので、ロック部材91は抵抗少なく摺動できる。また、そのロック部材91は、止め具76により、収容部63(取付部60)から外れることなく、安定した状態で摺動できる。
こうして、ロック部材91が収容部63内を径方向内側へ向かって摺動すると、ロック部材91の係合部96の外側面がリールハブ42の内周面から離間し、本体部92の外側端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間から退避する(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面から離間する)。
そして、図19で示すように、カム部94が係合突起86の内側に入り込む(落ち込む)ことにより、本体部92の外側端部92Aがリールハブ42の内側に配置され、かつ係合突起86の内側面にカム部94の外側面が当接する。これにより、リールハブ42の上縁部に対する係合部96の係合が解除され、ロック部材91がアンロック状態に保持される。
そして更に、回転シャフト100が上昇することにより、駆動ギア102がリールギア50に噛合し、リールプレート52がマグネット106に吸着される。リールギア50に駆動ギア102が噛合されると、リール40はケース12内において、所定高さ上昇して回転可能となり、駆動ギア102、即ちリール40が巻取リールと同期して回転駆動することにより、記録テープTが順次ドライブ装置側へ送り出される。そして、そのドライブ装置の記録再生ヘッド(図示省略)によって、記録テープTにデータの記録、又は記録テープTに記録されたデータの再生が行われる。
記録テープカートリッジ10をドライブ装置から取り出すときには、まず駆動ギア102を逆回転させて、記録テープTをリール40に巻き戻す。そして、リーダーテープ22が巻取リールから外され、開口20からケース12内に戻される。つまり、リーダーテープ22の張出部22Bが収納凹部24内に収納(挿入)されて、ケース12内の所定位置に保持される。
次いで、回転シャフト100が下降し、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が解除されるとともに、リールプレート52からマグネット106が離間される。そして、リール40がブレーキ部材80を介して圧縮コイルスプリング78の付勢力により下降する。すると、ロック部材91はコイルばね58の付勢力により収容部63内を径方向外側へ摺動し、カム部94のテーパー面94Aが係合突起86のテーパー面86A上を摺動する。このときもロック部材91は、止め具76により、収容部63(取付部60)から外れることなく、安定した状態で摺動できる。
そして、係合突起86がカム部94から離間することで、係合部96がリールハブ42の上縁部に係合する。すなわち、コイルばね58の付勢力により、係合部96のテーパー面96Aを除く外側面がリールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の外側端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在する(端部92Aの下面が、上フランジ44の上面に面接もしくは極めて微少な間隙を有して対面する)。これにより、リール40の上昇が再び阻止された状態となる。
また、このとき、圧縮コイルスプリング78の付勢力により、制動ギア82が係合ギア54に強固に噛合し、リール40の不用意な回転が阻止される。そして、回転シャフト100がギア開口18から抜き出された後、記録テープカートリッジ10が装填口から排出されるが、この排出動作に伴って、開閉部材がドア30の右端部から離間する。すると、ドア30はトーションばね28の付勢力によって、支軸26を中心に上記とは反対の方向へ回動して、開口20を閉塞する。こうして、開口20が閉塞された記録テープカートリッジ10がドライブ装置から排出される。
以上、何れにしても、ロック部材91は、取付部60(収容部63内)へ組み込まれたとき、その収容部63の両側に形成された保持部70のロック部材91側に迫り出すアンダーカット部70Aによって保持されるとともに、リール40の中心から径方向外側に向かって付勢されたコイルばね58と収容部63の延長線上に突設されたストッパーリブ74とによって、ある程度のテンションが掛けられた状態で保持される構成になっている。
したがって、ロック部材91の取付部60(収容部63)からの飛び出しが防止され、止め具76を支持リブ66上に溶着する作業が容易にできる。また、その止め具76を溶着することにより、上ケース14を下ケース16に被せてケース12を組み立てる際に、更にロック部材91の脱落を防止することができるので、その組み立て作業が容易かつ良好にできる。そして、記録テープカートリッジ10(ケース12)の組立後、ロック部材91は、止め具76により、摺動時においても脱落防止に保持されるので、取付部60(収容部63)から外れることなく、安定して摺動できる。
なお、上記実施例では、ロック部材90、91をリール40(取付部60)の中心から径方向外側に向かって付勢する付勢手段として、板ばね56とコイルばね58を例に採って説明したが、付勢手段はこれらに限定されるものではなく、例えばトーションばね等で構成してもよい。
また、上記実施例では、ロック部材90、91をブレーキ部材80との係合によって径方向に摺動させる構成としたが、ロック部材90、91を径方向に摺動させる構成は、これに限定されるものではなく、例えばロック部材90、91を昇降ロック位置(リール40の軸方向の移動を阻止する位置)と昇降許容位置(リール40の軸方向の移動を許容する位置)とに切り替える切替部材等をブレーキ部材80とは別に設ける構成としてもよい。但し、この場合、その切替部材等はブレーキ部材80と連動して作動する構成とすることが好ましい。