JP4429230B2 - 記録テープカートリッジ - Google Patents

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Description

本発明は、主にコンピューター等の記録再生媒体として使用される磁気テープ等の記録テープが巻装された単一のリールをケース内に収容してなる記録テープカートリッジに関する。
従来から、コンピューター等のデータ記録再生媒体として使用されている磁気テープ等の記録テープを単一のリールに巻装し、そのリールを合成樹脂製のケース内に回転可能に収容してなる記録テープカートリッジが知られている。この記録テープカートリッジのリールは、使用時(ドライブ装置に装填されたとき)には、ケース内において回転可能となるが、不使用時(ドライブ装置に装填されないとき)には、ケース内において回転不能となるようにロックされる。
すなわち、この記録テープカートリッジは、不使用時において、リールがケース内で回転しないようにするためのブレーキ手段を備えている。ブレーキ手段としては、例えばケースに対して回転不能とされたブレーキ部材をリールに係合させるなどの構成が考えられる。
例えば、図18で示すように、ブレーキ部材200を、リール202の有底円筒状をなすリールハブ204内に上下動可能に収容される円板状に形成し、その上面に平面視略「U」字状をなす一対の係合突起206を立設する。そして、その係合突起206内に、上ケース208の内面から垂設された一対の回転規制リブ210を挿入して、ブレーキ部材200をケース212に対して回転不能とする。
更に、そのブレーキ部材200を、圧縮コイルスプリング214等の付勢手段により、常時リールハブ204の底壁216に向かって付勢し、ブレーキ部材200の下面に形成されている環状の制動ギア218をリールハブ204の底壁216上面に形成されている環状の係合ギア220に噛合させる。これにより、リール202の不用意な回転が阻止される。
また、このブレーキ部材200の下面軸心部には、略円柱状の操作突起222が突設されており、この操作突起222が、リールハブ204の底壁216軸心部に穿設されている貫通孔216Aに挿入されて、下ケース224の略中央部に設けられたギア開口226に臨んでいる。したがって、リール202を回転可能とする際には、この操作突起222(ブレーキ部材200)を上方に向かって押し上げて、係合ギア220に対する制動ギア218の噛合を解除する(例えば、特許文献1参照)。
米国特許第6452747号明細書
しかしながら、このような構成では、記録テープカートリッジの不使用時において、リール202は、圧縮コイルスプリング214等の付勢手段の付勢力に抗して上昇可能(リール202の軸方向に移動可能)であるため、落下等によって記録テープカートリッジに衝撃が加わり、リールハブ204の底壁216が上方に移動してしまった場合には、図示するように、ブレーキ部材200が傾いた状態で貫通孔216Aの周縁部に係止され、倒れてしまうことがあった。
このような状態でドライブ装置に装填すると、記録・再生できないばかりか、記録テープカートリッジの破損やドライブ装置の故障を招来してしまう問題があった。更に、不使用時において、リールが回転可能となるため、記録テープに皺が寄ったり、切れてしまうといった悪影響が生じる問題もあった。
本発明は、上記事実を考慮して、リールが回転不能な状態で、制動部材の移動を規制すると共に、リールの移動を規制する記録テープカートリッジを得ることが目的である。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、記録テープカートリッジにおいて、ケース内に回転可能に収容され、記録テープが巻装されたリールのハブの底壁に形成された係合部と、前記係合部と対面し、前記ハブの軸方向に沿って移動可能に設けられ、前記係合部と係合して前記リールの回転を規制し、係合部との係合状態を解除してリールの回転を許容する制動部材と、前記ケースの中央部に形成され、前記ハブよりも内側に位置する部品取付部と、前記リールの径方向へ移動可能に前記部品取付部へ装着され、前記リールと前記ケースの間に介在して少なくともリールの軸方向の移動を規制し、前記制動部材が最初に当接し押圧する方向に沿って重心が設けられ、前記制動部材に押されてリールの径方向内側へ移動してリールの軸方向の移動を許容するロック部材と、前記ロック部材を前記リールの径方向外側へ付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明では、部品取付部に、リールの径方向へ移動可能なロック部材を装着しており、リールとケースの間に介在して、少なくともリールの軸方向の移動を規制し、制動部材に押されてリールの径方向内側へ移動してリールの移動を許容する。
つまり、記録テープカートリッジの不使用時では、制動部材と係合部とが係合している状態のため、この状態で少なくともリールの軸方向の移動を規制するロック部材を設けることで、記録テープカートリッジの不使用時において、リールが移動しないようにすることができる。
このロック部材の、制動部材が最初に当接し押圧する方向に沿ってロック部材の重心を設けている。
制動部材をロック部材に当接させ、制動部材がハブの軸方向に沿って上下移動することによってロック部材をリールの径方向へ水平移動させるが、制動部材がロック部材の重心に当接していない場合、ロック部材には回転モーメントが働くことになり、ロック部材は傾いてしまい、ロック部材の摺動面において、片当たりが生じる。
記録テープカートリッジの使用、不使用を繰り返す度に、ロック部材がケースの内面に当接した状態で往復移動するため、該片当たりによって、ロック部材の摺動部が摩耗すると、ロック部材の摺動部からは粉体(削りカス)が発生する。これにより、該粉体を介して、いわゆる凝着現象のような状態となり、摺動抵抗が増加し、リールを不使用時の状態から解除するときの解除力(いわゆるブレーキ解除力)が増大してしまう。
このため、制動部材が最初に当接し押圧する方向に沿ってロック部材の重心を設けることで、制動部材が最初にロック部材に当接するとき(制動部材の当接開始時)にロック部材に回転モーメントが働かないようにしている。
特に、静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいため、制動部材の当接開始時に、ロック部材に付与される制動部材の押圧力が一番大きくなる。このため、この制動部材の当接開始時のロック部材の摺動面の片当たりを防止することで、ロック部材の摺動部の摩耗を防止し、結果的にブレーキ解除力の増大を防止することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の記録テープカートリッジにおいて、前記制動部材が当接する前記ロック部材の傾斜面が約45〜60°であることを特徴とする。
ブレーキ解除力の増大を防止するため、ロック部材の摺動抵抗を小さくすることも考えられる。このための方法として、ロック部材に付与される垂直力を小さくすることが挙げられる。制動部材によって付与される垂直方向の力を水平方向の力に変換するため、ロック部材の制動部材との当接面には傾斜面が形成されているが、この傾斜面をできる限り垂直に近づけるようにする。
但し、制動部材のストロークとロック部材の移動量の制約があり、おのずと傾斜面の傾斜角度も決まってしまうため、請求項2に記載の発明では、制動部材が当接するロック部材の傾斜面を約45〜60°としている。これにより、ロック部材の摺動抵抗を小さくして、ブレーキ解除力の増大を防止することができる。
本発明は、上記構成としたので、請求項1に記載の発明では、記録テープカートリッジの不使用時では、制動部材と係合部とが係合している状態のため、この状態で少なくともリールの軸方向の移動を規制するロック部材を設けることで、記録テープカートリッジの不使用時において、リールが移動しないようにすることができる。
また、制動部材が最初に当接し押圧する方向に沿ってロック部材の重心を設けることで、制動部材の当接開始時にロック部材に回転モーメントが働かないようにしている。特に、静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいため、制動部材の当接開始時に、ロック部材に付与される制動部材の押圧力が一番大きくなる。このため、この制動部材の当接開始時のロック部材の摺動面の片当たりを防止することで、ロック部材の摺動部の摩耗を防止し、結果的にブレーキ解除力の増大を防止することができる。
請求項2に記載の発明では、制動部材が当接するロック部材の傾斜面を約45〜60°とすることで、ロック部材の摺動抵抗を小さくして、ブレーキ解除力の増大を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、本発明に係るリールは記録テープカートリッジ10に適用される。したがって、説明の便宜上、その記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を前方向として矢印Aで表す。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向とする。
まず、最初に、記録テープカートリッジ10の全体構成について説明する。図1乃至図4で示すように、記録テープカートリッジ10は略矩形箱状ケース12を有している。このケース12は、合成樹脂製の上ケース14と下ケース16とが、互いにその周壁14B、16Bを突き合わせた状態で、超音波溶着やビス止め等によって接合されて形成されている。
ケース12内には、リール40が単一で収容されている。このリール40には、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTが巻装されている。また、ケース12の右前角部には開口20が形成されている。この開口20は、リール40に巻装された記録テープTを外部へ引き出すためのものである。
一方、記録テープTの先端部には、リーダーブロック22が取り付けられている。すなわち、リーダーブロック22の凹部24に記録テープTの先端を挟み込んだ状態で弾性ピン26が嵌め込まれている。このリーダーブロック22は、記録テープカートリッジ10の不使用時には、開口20の周縁部に係止されて、開口20を閉塞する。
また、このリーダーブロック22は、記録テープカートリッジ10の使用時には、先端に形成された係合部28に、ドライブ装置側に設けられた引出部材(図示省略)が係合することにより、開口20から引き出される。なお、記録テープTの先端部に取り付けられるのは、リーダーブロック22に限定されるものではなく、図示はしないが、開口20を閉塞する回動式のを設けて、リーダーテープ、リーダーピン(図示省略)等にしてもよい。
一方、リール40は樹脂材で成形され、有底円筒状のリールハブ42と、リールハブ42の上端部に一体に延設された上フランジ44と、リールハブ42の下端部に溶着等によって取り付けられた下フランジ46とで構成されている。したがって、リールハブ42と下フランジ46は、互いに相溶性がある樹脂材を用いて成形され、超音波等で容易に溶着可能とされている。
また、上フランジ44と下フランジ46の間隔は、記録テープTの幅と略同一とされており、リールハブ42に巻回された記録テープTの幅方向の位置が規制されるようになっている。
また、図2、図3で示すように、リールハブ42の下フランジ46側には底壁48が設けられており、その底壁48の軸心(中心)部分には貫通孔48Aが穿設されている。そして、その底壁48の下面側にはリールギア50が環状に形成されている。このリールギア50は、リール40が圧縮コイルスプリング78の付勢力によって下ケース16側に押し付けられることにより、下ケース16の略中央に設けられた円形のギア開口18から露出するようになっており、ドライブ装置側の回転シャフト100に備えられた駆動ギア102と噛合して、リール40に回転動力を伝達するようになっている。
なお、ギア開口18の周縁には、上方(ケース12内)に向かって環状リブ19が立設されており、その内周面(ギア開口18側の周面)にはテーパー面19Aが形成されている。そして、リール40(下フランジ46)の下面で、かつリールギア50の径方向外側には、下方に向かう環状リブ56が立設されており、その外周面にはテーパー面56Aが形成されている。したがって、記録テープカートリッジ10の不使用時には、環状リブ19のテーパー面19A上に環状リブ56のテーパー面56Aが面接する(図9参照)ことにより、リール40が下ケース16(ケース12)によって位置決め支持される構成である。
また、リールギア50の径方向内側には、磁性材より成る環状のリールプレート52がインサート成形等により一体的に固着されている。このリールプレート52は、駆動ギア102とリールギア50とが完全に噛合した状態で、駆動ギア102と後述する解除突起104との間に設けられた環状のマグネット106の磁力により吸着され、リール40と回転シャフト100との芯ずれ(軸ずれ)を防止するとともに、リールギア50と駆動ギア102との噛合状態を保持可能としている。このような構成により、回転シャフト100がその軸心廻りに回転すると、リール40がこれと一体にケース12内で回転する。
一方、リールハブ42の底壁48の上面側には、係合ギア54が環状に形成されており、ブレーキ部材80の制動ギア82と噛合可能になっている。このブレーキ部材80は、リールハブ42内に上下動可能に(リール40の軸方向に移動可能に)収容される円板状に形成され、その下面外周部には制動ギア82が環状に設けられている。
そして、ブレーキ部材80の上面には、上ケース14のガイド壁部68(後述)間に挿入される複数(本実施例では3つ)の板状のガイド部84と、複数(本実施例では3つ)のロック部材90のカム部94とそれぞれ係合する同数(3つ)の略角柱状の係合突起86が、それぞれ等間隔に、かつ交互に立設されている。
この係合突起86の径方向内側には、リールハブ42の軸線に対して30度〜60度傾斜したテーパー面86Aが形成されており、このテーパー面86Aが、ロック部材90のカム部94に形成されたテーパー面94Aと当接可能となっている(後述する)。
また、ブレーキ部材80の上面で、ガイド部84及び係合突起86の外側には、平坦面80Aが環状に形成され、記録テープカートリッジ10(ケース12)を組み立てたとき、付勢部材としての圧縮コイルスプリング78の下端が当接するようになっている。
更に、ブレーキ部材80の下面中央には、貫通孔48Aに挿通可能な略円柱状の操作突起88が突設されており、ドライブ装置側の回転シャフト100の軸心部に突設された解除突起104と当接可能とされている(図2、図3参照)。
なお、この操作突起88は、図示するように、貫通孔48Aから(底壁48から)下方へは突出しない程度の高さ(貫通孔48A内に位置するような高さ)に突設されており、これによって、ブレーキ部材80が不用意に上方へ移動しないようにしている。
図4、図5で示すように、上ケース14の天板14A内面の略中央(リールハブ42の軸心部上)には、リールハブ42の上縁部に、その内周面側から係合して、リール40の軸方向(上下方向)の移動を阻止する複数(3つ)のロック部材90等を摺動可能に収容する取付部60が形成されている。
この取付部60は、平面視同心円状に立設され、外側が内側よりも高い2つの円筒壁62、64を有している。この円筒壁62、64は適宜位置(等間隔に3箇所)が切り欠かれており、その切り欠かれた部位の円筒壁64の内側には、ガイドリブ65が径方向に沿って立設されている。そして、このガイドリブ65間で構成された収容部63内にロック部材90が収容され、径方向に摺動可能とされている。
また、円筒壁62、64の間には、その円筒壁62、64同士を連結するように複数(本実施例では9つ)の板状の支持リブ66が径方向に沿って立設されている。そして、各収容部63の間で、かつ円筒壁64の内側には、ブレーキ部材80のガイド部84が挿入される2枚1組のガイド壁部68が、そのガイド部84と同数組突設されている。
この2枚1組のガイド壁部68は、図4、図5で示すように、円筒壁64の外周面にその外端面が面一となるように径方向に沿って突設され、各組のガイド壁部68において、その突設間隔は、ガイド部84の板厚と同じか、それよりも若干大きくされている。
また、円筒壁62、64の間で、かつ収容部63の両側(ガイドリブ65の延長線上)には、ロック部材90を摺動可能に(微少な隙間を有して)保持する一対の保持部70が突設されている。この保持部70の先端(下端)には、図6、図7で示すように、互いに内側(ロック部材90側)へ向かって迫り出すアンダーカット部70Aが形成されている。
このアンダーカット部70Aは、ロック部材90を組み込んだ後、上ケース14を天板14Aの内面が下を向くようにひっくり返して下ケース16に被せたときに(ケース12を組み立てるときに)、そのロック部材90が、少なくとも取付部60(収容部63)から落ちない(外れない)程度に仮押さえするようになっている。
すなわち、このアンダーカット部70Aは、金型で成形する際、その金型から引き抜き可能な程度(0.1mm〜0.5mm程度、好ましくは0.3mm程度)に内側に迫り出しており、更に、その引き抜きが容易にできるように、側断面視で略円弧状に形成されている。なお、保持部70は、その高さが4mm程度、板厚が0.35mm〜1.2mm程度、好ましくは0.5mm〜0.8mm程度に形成されている。
また、この保持部70は、上ケース14と一体に成形してもよいし、別体で成形して上ケース14に固着するようにしてもよい。但し、保持部70を別体で成形して上ケース14に固着する構成にすると、ロック部材90を上ケース14に設置した後で、組み付けることが可能となるので、アンダーカット部70Aを更に迫り出したような形状やゲート状(「コ」字状)に成形することが可能となり、後述する止め具76を不要とできる効果がある。
更に、天板14A内面の略中央(リールハブ42の軸心線上であり、取付部60の中心)には、コイルばね58の一端を保持する係止突起72が突設されている。コイルばね58は、各ロック部材90毎に(この場合は3本)設けられ、各ロック部材90が常時取付部60の中心(リール40の中心)から径方向外側に向かって付勢されるようになっている。
係止突起72は、その3本のコイルばね58を1度に保持できるように、略三角柱状に形成されており、その側面における両端部には、全高に亘って、それぞれコイルばね58の一巻を両側から係止して保持できる一対の係止爪72Aが内側に向かって張り出すように形成されている。
また、取付部60の収容部63において、保持部70の間には、ロック部材90とコイルばね58を組み込むときに、そのコイルばね58で付勢されたロック部材90を一時的に(上ケース14を下ケース16に被せるまで)仮止めするストッパーリブ74(後述する)が突設している。
したがって、ロック部材90は、コイルばね58とストッパーリブ74とである程度のテンションが掛けられた状態で保持されるので、その脱落が一層防止される構成であり、これによって、その組込性が向上されるようになっている。
また、ロック部材90を保持部70に仮押さえ保持させた後、支持リブ66上には、ロック部材90が摺動しても外れないように本押さえ保持する脱落防止部材としての樹脂製のリング状止め具76が、超音波等で溶着されるようになっている。この止め具76とロック部材90との間には、図8で示すように、ロック部材90が摺動する際に、その妨げとならないように、所定のクリアランスC1(C1=0.05mm〜0.4mm程度)が確保されるようになっており、そのクリアランスC1が確保されるように、支持リブ66の高さが規定されている。
また、この止め具76上には、記録テープカートリッジ10を組み立てたときに(上ケース14を下ケース16に被せたときに)、圧縮コイルスプリング78の上端が当接するようになっており、圧縮コイルスプリング78は、止め具76(上ケース14)と平坦面80A(ブレーキ部材80)との間で保持されるようになっている。なお、圧縮コイルスプリング78の上端は止め具76に当接させなくてもよく、支持リブ66に当接させるようにしてもよい。
但し、圧縮コイルスプリング78の上端を止め具76に当接させるようにすると、止め具76を支持リブ66上に溶着しなくてもよくなる効果がある。更に、止め具76は、図示のリング状に限定されるものではなく、ロック部材90の脱落を常時防止できるように、少なくともロック部材90の両側の支持リブ66間に架設されていればよい。また、このような止め具76を設けるのみで、保持部70を省略する構成としてもよいし、止め具76を省略して保持部70のみを設ける構成としてもよい。
ロック部材90は、収容部63内に、径方向に摺動可能となるように、保持部70や止め具76等により脱落が防止された状態で保持されており、上ケース14の天板14A内面に摺接する略角柱状の本体部92を有している。そして、この本体部92の径方向内側の端部92B近傍に、本体部92と同じ幅の略角柱状のカム部94が、本体部92に対して垂直に(リール40の軸方向に)突設されている。
また、ロック部材90の裏面側には、図6、図8及び図9に示すように、凹部150が凹設されており、ロック部材90の裏面外縁部が天板14Aの内面との摺動面となっている。
また、凹部150の両端側には、カム部94及び後述する係合部96に相当する部分に、いわゆる肉抜き部152、154がそれぞれ形成されており、カム部94及び係合部96の肉厚を略均一にしている。
肉抜き部152と肉抜き部154の間には、ロック部材90の幅方向中央部に沿って溝部156が形成されており、ストッパーリブ74が係合可能となっている。これにより、ストッパーリブ74にガイドされた状態で溝部156を介してロック部材90が収容部63内で摺動する。
また、ロック部材90の溝部156の両端部には当接部158、160が突設されており、ストッパーリブ74に当接した状態でロック部材90は移動規制される。当接部158、160はそれぞれ天板14Aの内面よりも低く設けており、ロック部材90が摺動するときに、当接部158、160の上面が天板14Aの内面を摺動しないようにしている。
一方、カム部94の径方向内側面には、コイルばね58の他端が挿嵌される断面視十字状の嵌入部98が径方向内側へ向けて所定長さ突設されている。嵌入部98の外径は、コイルばね58の内径よりも若干大きく形成され、コイルばね58が嵌入部98から外れないようになっている。また、本体部92において、カム部94よりも径方向内側の端部92Bが所定長さ(嵌入部98よりも若干長くなるように)径方向内側へ向けて延設されている。
したがって、ロック部材90は、その重心G(図10参照)を低くすることができ、ロック部材90とコイルばね58を取付部60(収容部63)に組み込んで、係止突起72とストッパーリブ74との間で保持させた際、ロック部材90がコイルばね58のテンションによって取付部60(収容部63)から飛び出すのを更に防止できるようになっている。つまり、このような構成によって、ロック部材90及びコイルばね58の組込性が更に向上されるようになっている。
また、カム部94の下端面外方側には、水平方向に対して(リールハブ42の軸線に直交する方向に対して)約56度傾斜したテーパー面94Aを形成している。一方、図10に示すように、ブレーキ部材80のテーパー面86Aの勾配をテーパー面94Aよりもきつくし、テーパー面94Aに対してテーパー面86Aが線接触するようにしている。
そして、ブレーキ部材80のテーパー面86Aがロック部材90のテーパー面94Aに当接した状態で、ロック部材90にはブレーキ部材80からの押圧力が働くが、該押圧力の押圧方向に沿ってロック部材90の重心が設けられるようにロック部材90の形状を設定している。
この押圧力はテーパー面94Aに対して水平方向に働く力と垂直方向に働く力(いわゆる分力)に分解され、テーパー面94Aに対して垂直方向に働く力によって、ロック部材90は上ケース14側へ押し付けられ、また、水平方向に働く力によって、コイルばね58の付勢力の抗する方向へ押圧されて、上ケース14の天板14Aの内面に沿って摺動する。
そして、このロック部材90(本体部92)の径方向外側(係合部96よりも外側)における端部92Aの厚さD(図8参照)は、ケース12内において、リール40が最下位置に位置したときの上フランジ44上面と天板14A内面との距離W(図2参照)と略同一に形成されている。
更に、この径方向外側の端部92Aの近傍には、リールハブ42の上縁部と係合する所定高さの係合部96が、本体部92に対して垂直に(リール40の軸方向に)突設されている。この係合部96は、本体部92と同じ幅で、かつカム部94よりも低く突設され、その下端面外方側は、所定角度傾斜したテーパー面94Aとされている。そして、そのテーパー面94Aを含む外側面の形状は、平面視でリールハブ42の内周面と合致する円弧面とされている。
したがって、ストッパーリブ74によって仮止めされたロック部材90は、記録テープカートリッジ10を組み立てるときに(上ケース14を下ケース16に被せるときに)、その動作に伴って、係合部96がリールハブ42の上縁部に係合し易い構成であり、係合後は、図2、図9で示すように、本体部92の径方向外側の端部92Aが、ストッパーリブ74から離間するようになっている。
なお、このとき、係合部96のテーパー面94Aを除く外側面が、リールハブ42の内周面に当接(内周面を押圧)するため、リールハブ42の内周面における金型からの抜き勾配は0度であることが好ましい。この抜き勾配が0度より大きいと、リールハブ42の上縁部が外方へ向けて拡がる(上縁部の径が大きくなる)ので、係合部96による押圧力が低減し、ロック部材90が好適に機能しなくなるおそれがある。
以上の構成によれば、記録テープカートリッジ10の不使用時には、図2、図9で示すように、ブレーキ部材80は圧縮コイルスプリング78の付勢力によって下方へ付勢され、ロック部材90はコイルばね58の付勢力によって径方向外側へ付勢される。このとき、ガイド壁部68に挿入されたガイド部84により、ブレーキ部材80のケース12に対する回動が阻止され、ブレーキ部材80の制動ギア82とリールハブ42内の係合ギア54が強固に噛合することにより、リール40の不用意な回転が阻止される。
そして、ロック部材90の係合部96が、リールハブ42の上縁部と係合することにより、即ち係合部96のテーパー面94Aを除く外側面が、リールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の係合部96よりも径方向外側の端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在することにより(端部92Aの厚さDが、上フランジ44上面と天板14A内面との距離Wと略同一であることにより)、記録テープカートリッジ10の不使用時において、リール40の上昇が阻止される。
ここで、記録テープカートリッジ10の不使用時、コイルばね58の分力がブレーキ部材80に作用しないように、係合突起86とカム部94は互いに当接しない状態になっている。そして、その対向するテーパー面86A、94A間のリール40の軸方向(ブレーキ部材80の移動方向)におけるクリアランスC2は、当然ながら制動ギア82と係合ギア54との噛合量Kよりも(換言すれば、制動ギア82と係合ギア54との噛合が解除されるまでのブレーキ部材80の上昇ストロークよりも)小さくなっている。
これは、その噛合量KよりもクリアランスC2が大きければ、ブレーキ部材80は、落下等の衝撃によりクリアランスC2分は簡単に上昇してしまうので、リール40が不用意に回転可能となってしまうからである。したがって、係合突起86とカム部94とのクリアランスC2は極めて微少であり、これによって、リール40及びブレーキ部材80は、記録テープカートリッジ10の不使用時、実質的に上昇不能(リール40の軸方向に移動不能)となっている。
一方、記録テープカートリッジ10の使用時には、図3、図13で示すように、制動ギア82と係合ギア54との噛合が解除されるとともに、ブレーキ部材80の係合突起86のテーパー面86Aがロック部材90のカム部94のテーパー面94Aに当接し押圧して、ロック部材90がコイルばね58の付勢力に抗して径方向内側へ向かって摺動させる。
これにより、係合部96の外側面がリールハブ42の内周面から離間するとともに、本体部92の外側端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間から退避して、ケース12内において、リール40が所定高さ上昇可能となり、回転可能とされる。
なお、ブレーキ部材80が上昇した際、係合突起86の内側にカム部94が入り込むが、このとき、係合突起86の内側面にカム部94の外側面が当接するのみで、係合突起86の上端面はロック部材90に当接せず、かつカム部94の下端面もブレーキ部材80に当接しない。また、係合突起86の内側面及びカム部94の外側面は、共に金型からの抜き勾配が0度になっている。このため、コイルばね58によってロック部材90が押圧される押圧力(付勢力)は、係合突起86の内周面で受け止められ、ブレーキ部材80を下方向へ押し付ける分力が発生することはない。
つまり、リール40の回転時において、コイルばね58による押圧力(付勢力)は、リール40の径方向にのみ作用し、リール40の軸方向(上下方向)には作用しない(伝達されない)。このため、ロック部材90は安定してアンロック状態に保持される。そして、リール40の軸方向(上下方向)への押圧力(付勢力)は、従来と同様に圧縮コイルスプリング78の付勢力のみとなるので、コイルばね58を設ける構成であっても、回転シャフト100の軸方向(下方向)に余計な負荷が掛からないようにできる。
更に、図7、図8で示すように、ロック部材90の本体部92において、止め具76に接触する下面には、適宜凹部92C(又は凸部でもよいが)を形成することが好ましい。このような凹部92C(又は凸部)を形成すると、上ケース14の天板14A内面及び止め具76との接触面積を低減させることができるので、ロック部材90を抵抗少なく摺動させることが可能となる。
また、図6及び図9に示すように、ロック部材90の裏面(上ケース14の天板14Aの内面と接触する面)側に、凹部150を凹設し、ロック部材90の裏面外縁部のみが天板14Aの内面との摺動面となるようにすることで、ロック部材90の裏面全面を摺動面とした場合と比較して、ロック部材90と天板14Aの内面との接触面積を小さくすることができ、ロック部材90の摺動抵抗を少なくすることができる。
さらに、天板14Aにおいて、収容部63内に設けられた保持部70の間に、ロック部材90を移動規制するストッパーリブ74を設けている。収容部63はリール40のリールハブ42よりも内側に位置するため、ストッパーリブ74はリールハブ42の内側に配置されることとなる。従って、記録テープカートリッジ10が落下し、リール40がロック解除されたとしても、ストッパーリブ74がリール40に接触することはなく、該リール40にストッパーリブ74による集中応力が働く恐れはない。
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次に、その作用について説明をする。
図2及び図9に示すように、記録テープカートリッジ10は、不使用時(ドライブ装置に装填しないとき)には、開口20がリーダーブロック22によって閉塞されている。そして、リール40が圧縮コイルスプリング78によりブレーキ部材80を介して下方へ付勢されている。つまり、圧縮コイルスプリング78の付勢力により、ブレーキ部材80の制動ギア82がリールハブ42内の係合ギア54に強固に噛合し、リール40の不用意な回転が阻止されている。
そして、コイルばね58の付勢力により、ロック部材90が取付部60の中心(リール40の中心)から径方向外側へ向かって付勢され、その係合部96がリールハブ42の上縁部に係合している。すなわち、係合部96のテーパー面94Aを除く外側面がリールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の係合部96よりも径方向外側の端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在している。
ここで、ロック部材90(本体部92)の外側端部92Aの厚さDは、ケース12内において、リール40が最下位置に位置したときの上フランジ44上面と天板14A内面との距離Wと略同一に形成されているので、そのロック部材90により、リール40の上昇が阻止される。つまり、リール40の回転が阻止されると共に、リール40の半径方向及び軸方向の移動が規制され、落下等により記録テープカートリッジ10に衝撃が加わっても、リール40は上昇することがない。
また、ロック部材90のカム部94とブレーキ部材80の係合突起86とのクリアランスC2は、制動ギア82と係合ギア54との噛合量Kよりも小さく、極めて微少なので、落下等により記録テープカートリッジ10に衝撃が加わっても、ブレーキ部材80は実質的に上昇しない。したがって、制動ギア82が係合ギア54から外れることはなく、記録テープTに悪影響を及ぼすことがない。
一方、記録テープカートリッジ10の記録テープTにデータを記録、又は記録テープカートリッジ10の記録テープTに記録されたデータを再生する際には、その記録テープカートリッジ10をドライブ装置(図示省略)へ装填する。すなわち、ドライブ装置の装填口(図示省略)に記録テープカートリッジ10を前壁12A側から矢印A方向に沿って挿入する。
記録テープカートリッジ10がドライブ装置内に装填(挿入)されると、記録テープカートリッジ10が所定高さ下降するか、又は回転シャフト100が上昇して、解除突起104が貫通孔48Aから挿入される。そして、図10に示すように、操作突起88を解除突起104が上方へ押し上げ、ブレーキ部材80の制動ギア82とリールハブ42内の係合ギア54との噛合を解除する。
そして更に、図11〜図13に示すように、回転シャフト100の解除突起104が操作突起88を介してリール40の高さ方向の位置決めをし、リールプレート52がマグネット106に吸着される。これにより、記録テープカートリッジ10(リール40)がドライブ装置内において、精度よく位置決めされ、この状態で駆動ギア102がリールギア50と噛合する。
ところで、図10で示すように、解除突起104が操作突起88を上方向へ押圧すると、ブレーキ部材80が圧縮コイルスプリング78の付勢力に抗して上昇し、係合突起86がロック部材90のカム部94に当接して、そのカム部94を上方向へ押圧する。
これにより、係合突起86のテーパー面86A上をカム部94のテーパー面94Aが摺動し、ロック部材90がコイルばね58の付勢力に抗して天板14Aの内面上(収容部63内)を径方向内側へ摺動し始める。
このとき、本体部92には凹部92Cが形成されているので、ロック部材90は抵抗少なく摺動できる。また、そのロック部材90は、止め具76等により、収容部63(取付部60)から外れることなく、安定した状態で摺動できる。
こうして、ロック部材90が収容部63内を径方向内側へ向かって摺動し始めると、ロック部材90の係合部96の外側面がリールハブ42の内周面から離間し、本体部92の外側端部92Aが、上フランジ44上面と天板14A内面との間から退避し始める。
そして、係合ギア54と制動ギア82との噛合が解除されるとともに、リールギア50に駆動ギア102が噛合し始め、図11で示すように、リールギア50と駆動ギア102との噛合量が、その歯高の略半分まで達したときに、ロック部材90が、上フランジ44上面と天板14A内面との間から完全に退避する。
すなわち、図10〜図13に示すように、ロック部材90は、リールギア50と駆動ギア102との噛合量が歯高にして略半分程度になるまでは、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在し続け、リール40を上昇不能としている。したがって、記録テープカートリッジ10が縦置きされたドライブ装置に装填される場合でも、リール40が鉛直下方向(図2、図3で示す矢印C方向)にずれることがない。
つまり、リール40は、その下面に立設された環状リブ56が、ギア開口18の周縁に立設された環状リブ19に支持されることにより、ケース12に対する位置ずれ(芯ずれ)が防止されている。
そして、リールギア50と駆動ギア102との噛合量が歯高にして略半分程度になると、ロック部材90が上フランジ44上面と天板14A内面との間から完全に退避し、その外側端部92Aがリールハブ42の内側に配置されて、リール40が上昇可能となり、回転シャフト100によって上昇し始める。
これにより、環状リブ19上から環状リブ56が離間するが、このときには、駆動ギア102によって、リール40(リールギア50)が支持され、かつリールプレート52がマグネット106に吸引されているので、同様に、リール40が鉛直下方向(矢印C方向)にずれることがない。
その後、駆動ギア102がリールギア50に完全に噛合し、リールプレート52がマグネット106に吸着されると、更に回転シャフト100が所定高さまで上昇するが、これに伴ってカム部94が係合突起86の内側に入り込み(落ち込み)、係合突起86の内側面にカム部94の外側面が当接して、ロック部材90がアンロック状態に保持される。そして、その所定高さ位置において、リール40が回転駆動可能となる。
一方、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が、リーダーブロック22(図1参照)の係合部28に係合して、そのリーダーブロック22をケース12から引き出す。このとき、記録テープカートリッジ10はドライブ装置内において精度よく位置決めされているので、引出部材は確実にリーダーブロック22の係合部28と係合できる。こうして、記録テープカートリッジ10から引き出されたリーダーブロック22はドライブ装置側の巻取リールのハブ(図示省略)に形成された嵌入部に収容される。
リーダーブロック22が巻取リールの嵌入部に収容されると、回転シャフト100によりリール40と巻取リールとが同期して回転駆動する。これにより、記録テープTは、巻取リールに巻き取られつつ順次記録テープカートリッジ10内から引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド(図示省略)によって、その記録テープTへデータの記録又はその記録テープTに記録されたデータの再生が行われる。
一方、記録テープカートリッジ10をドライブ装置から排出する際には、まず、記録テープTがリール40に巻き戻され、リーダーブロック22が開口20(図1参照)を閉塞する。そして、記録テープカートリッジ10が上昇するか、又は回転シャフト100が下降することにより、図12に示すように、圧縮コイルスプリング78の付勢力によって、リール40が下降し始め、ブレーキ部材80が下降し始める。
そして、これに伴い、ロック部材90がコイルばね58の付勢力により収容部63内を径方向外側へ摺動し始める。つまり、カム部94のテーパー面94Aが係合突起86のテーパー面86A上を摺動し始める。
そして、更に回転シャフト100が下降すると、図11に示すように、リールプレート52からマグネット106が離間し、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が解除され始める。そして、リールギア50と駆動ギア102との噛合量が歯高にして略半分程度にまで減少した時点で、ロック部材90(本体部92)の外側端部92Aが上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在し始める。
つまり、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が完全に解除される前に(回転シャフト100でリール40を支持している間に)、ロック部材90が上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在してリール40を下ケース16との間で保持し、その上昇を阻止する。
したがって、記録テープカートリッジ10を縦置きされたドライブ装置から排出するときも、リール40が鉛直下方向(矢印C方向)へずれることがなく、ロック部材90によるロックが確実に行われる。すなわち、リール40は、その上面がロック部材90によって上昇不能に押さえられ、その下面に立設された環状リブ56が環状リブ19に支持されるので、ケース12に対する位置ずれ(芯ずれ)が防止される。
その後、更に回転シャフト100が下降して、図10に示すように、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が完全に解除されると、係合部96がリールハブ42の上縁部に係合する。すなわち、コイルばね58の付勢力により、係合部96のテーパー面94Aを除く外側面がリールハブ42の内周面を押圧する。
そして、図9に示すように、カム部94のテーパー面94Aから係合突起86のテーパー面86Aが離間し、操作突起88から解除突起104が離間すると、圧縮コイルスプリング78の付勢力によって、ブレーキ部材80が最下位置まで下降し、制動ギア82が係合ギア54に強固に噛合する。これにより、リール40の不用意な回転が再び阻止された状態となる。
こうして、ギア開口18から回転シャフト100が抜き出されると、記録テープカートリッジ10が装填口から排出される。
以上、説明したように、記録テープカートリッジ10を縦置きされたドライブ装置に装填した際、ロック部材90は、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合量が、歯高にして略半分程度に達するまでは、上フランジ44上面と天板14A内面との間から完全に退避しないように、換言すれば、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合動作によってリール40が上昇し始めるタイミングで、リール40の軸方向の移動を許容する昇降許容位置を取るように構成されているので、リール40が鉛直下方向(矢印C方向)にずれることがない。
すなわち、ロック部材90が昇降許容位置を取ったときには、リール40は軸方向への移動が許容されるので(支えがなくなるので)、自重で下方へずれるおそれがあるが、そのときには、すでにリールギア50に駆動ギア102がある程度噛合しているので、リール40(リールギア50)は回転シャフト100(駆動ギア102)によって支持される。したがって、回転シャフト100に対するリール40の芯ずれ(軸ずれ)が生じることがない。
また、その縦置きされたドライブ装置から記録テープカートリッジ10を排出するときも、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が解除されるまでに(完全に解除される前に)、ロック部材90が上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在してリール40の軸方向の移動を阻止する昇降ロック位置を取るように構成されているので、ロック部材90は、好適かつ確実にリール40をロックする(支える)ことができる。したがって、リールギア50に対する駆動ギア102の噛合が解除されても、リール40が鉛直下方向(矢印C方向)にずれることがない。
ところで、図14(A)には、ロック部材90とブレーキ部材80との間で、実動を考慮した加速耐久試験(繰り返し1万5千回のブレーキ解除)を行った結果が示されている。縦軸はブレーキ部材80を持ち上げるために必要な押圧力(ブレーキ解除力)を示しており、後述する1次ピークにおいて、約13Nのブレーキ解除力が必要となることが分かる。通常、ドライブ装置のブレーキ解除力としては、10N未満とされており、13Nのブレーキ解除力を必要とする場合、ドライブ装置では解除できない場合も生じる。
このときのロック部材90と上ケース14の天板14A内面との間の摺動面、及びロック部材90とブレーキ部材80との間の摺動面をそれぞれ確認すると、図15〜図17に示す領域Aで摩耗が生じ、特にロック部材90と天板14A内面との摺動面の摩耗がひどく、摩耗粉が発生していた。
解析の結果、1万5千回摺動試験したサンプルでは、ブレーキ部材80とロック部材90とが当接した直後の垂直方向の荷重が最も高いことが分かった。すなわち、試験後のロック部材90と天板14A内面との間の摩擦力及びロック部材90とブレーキ部材80との間の摩擦力は、ブレーキ部材80とロック部材90が最初に当接した時点(図10参照)が最も高く、それに打ち勝つのに必要な垂直荷重も高くなり、ブレーキ部材80を持ち上げる力(ブレーキ解除力)は高くなると言うことが分かった。
一方、バージン品(摺動試験前のサンプル)で上述と同様の解析を行うと、図14(C)に示すように(なお、図14(A)〜(C)において、横軸は時間を示しているが、1メモリのピッチを統一していないため、横軸方向の波形は一致しない)、確かに、ブレーキ部材80とロック部材90の当接時にもピークは迎えるが、このピークよりもブレーキ部材80がロック部材90のとが完全にテーパー面94Aを通過したとき(図12参照)のピークの方が大きい(2段ピークがある)ことが分かった。以下、ブレーキ部材80とロック部材90が最初に当接した時点を1次ピークといい、ブレーキ部材80のテーパー面94A通過時を2次ピークという。
また、1万5千回摺動試験したサンプルにおいて、ロック部材90と天板14A内面の摺動面の摩耗粉を取り除くと、ブレーキ解除力のピークは、バージン品にほぼ近い値を示した。ここで、現物を良く確認すると、ロック部材90の上ケース14の中心よりに位置する部分の削れがひどいことが分かった。また、この現象は温度や湿度にも依存性があることが分かった。
そこで、以下のような、仮説を立てて試験を行った。
1.静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいため、ロック部材90の上ケース14の中心よりに位置する部分がひどく削れてしまう。
2.削れの現象は、ロック部材90と天板14A内面との摺動面、及びロック部材90とブレーキ部材80との摺動面に摩耗を誘発する要因となる。つまり、摩擦力が高くなると、垂直力(ブレーキ解除力)も高くなる。そして、摺動面は高圧で摺動するので削れやすくなり、摩擦係数を示すμ値が上昇するという悪循環を生み出す。
3.ロック部材90と上ケース14の天板14A内面との間で摩耗状態を比較すると、該天板14A内面中央部付近の摩耗の方がよりひどい。つまり、ロック部材90がブレーキ部材80により僅かに傾けられ、そのためにロック部材90の片当たりに近い状態が起こっている。
4.環境により摩耗状況は変わり、ブレーキ解除力も変わる。
上記に対して、以下のような確認結果を得た。
1.図14(A)に示すように、1次ピークの後は、ブレーキ解除力は一度下がることから、静止摩擦力が動摩擦力よりも大きいことは明確である。
2.摩擦力が高いと垂直力も高いということは、分力の関係からも明確である。また、面圧(ブレーキ部材80がロック部材90を押圧する押圧力)が高いと摺動する部材(ロック部材90)は削れ易いということは容易に憶測できる。1次ピークが上昇したサンプルの、ロック部材90と天板14A内面の摺動面の摩耗粉を取り除くだけで、ブレーキ解除力のピークは、バージン品にほぼ近い値を示したことから、ロック部材90と天板14A内面間の摺動面の摺動抵抗がブレーキ解除力に大きく影響を及ぼすことが分かった。
3.ケース14の周壁14Bに穴を開けて、照明と共に高速度カメラを近接させた。その結果、ロック部材90は予想通り、傾いて解除されており、ロック部材90の片当たりの原因がほぼ説明できた。
4.10℃10%の環境で、ロック部材90或いは天板14A内面の摩耗が最も多く、低温低湿の環境で摩耗状態がひどくなることが分かった。なお、ケース14の材料はPCを使用し、ロック部材90の材料はPAを使用した。
この悪循環は摺動面において、ロック部材90或いは天板14A内面が削れる現象を引き起こさなければ発生しないことが経験的に分かった。そこで、ロック部材90の片当たりを防止し、また、ロック部材90に付与される垂直力をいかに小さくするかを考えた。
そこで、本形態では、図10に示すように、ブレーキ部材80のテーパー面86Aがロック部材90のテーパー面94Aに当接した状態で、ロック部材90にはブレーキ部材80からの押圧力が働くが、この押圧力の向きに沿ってロック部材90の重心Gが設けられるようにロック部材90の形状を設定している。
これにより、ブレーキ部材80が最初にロック部材90に当接するとき(ブレーキ部材80の当接開始時)にロック部材90に回転モーメントが働かないようにする。特に、静止摩擦力は動摩擦力よりも大きいため、ブレーキ部材80の当接開始時に、ロック部材90に付与されるブレーキ部材80の押圧力が一番大きくなる。
このため、このブレーキ部材80の当接開始時にロック部材90に回転モーメントが働かないようにして、ロック部材90の摺動面の片当たりを防止することで、ロック部材の摺動部の摩耗を防止し、結果的にブレーキ解除力の増大を防止することができる。そして、実験結果では、1次ピークのブレーキ解除力がバージン品で約7%減、1万5千回試験品で20%減を達成し、ブレーキ解除力を10N未満とすることができた。また、天板14A内面とロック部材90の摺動面の摩耗も低減していた。
また、ブレーキ部材80によって付与される垂直方向の力を水平方向の力に変換するため、ロック部材のブレーキ部材80との当接面にはテーパー面94Aが形成されているが、このテーパー面94Aをできる限り垂直に近づけることで、ロック部材90に付与される垂直力を小さくすることができる。
但し、ブレーキ部材80のストロークとロック部材90の移動量の制約があり、おのずとテーパー面94Aの傾斜角度も決まってしまう。このため、ブレーキ部材80が当接するロック部材90の傾斜面を約45〜60°とする。本形態では、テーパー面94Aを水平方向に対して(リールハブ42の軸線に直交する方向に対して)約56度傾斜させている。これにより、1次ピークはバージン品で約10%減、1万5千回試験品で約25%減を達成した。
なお、ここでは、ロック部材90係合部96のテーパー面96Aを除く外側面でリールハブ42の内周面を押圧し、本体部92の係合部96よりも径方向外側の端部92Aを、上フランジ44上面と天板14A内面との間に介在させて、リール40の回転を阻止すると共に、リール40の半径方向及び軸方向の移動を規制するようにしたが、少なくともリール40の軸方向の移動を規制することができれば良いため、必ずしもロック部材90係合部96のテーパー面96Aを除く外側面でリールハブ42の内周面を押圧しなければならないということはない。
つまり、本形態はあくまでも一実施例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
また、ロック部材90は、図2、図3で示すように、記録テープカートリッジ10が縦置きされたドライブ装置に装填される(縦向き装填される)際の鉛直方向上側(矢印Cが鉛直下方向)に、少なくとも1個設けられることが好ましい。このような構成にすると、リール40の自重による鉛直下方向(矢印C方向)への位置ずれ(回転シャフト100に対する芯ずれ)を好適に防止することができる。
また、このロック部材90は、リールギア50と駆動ギア102とが歯高にして略半分程度噛合したと同時又はその後に、上フランジ44上面と天板14A内面との間から完全に退避するように構成されていればよい。したがって、例えばロック部材90の外側端部92Aの下面における所定位置から外方へ向かって所定角度のテーパー面(図示省略)を形成して、リール40の上昇を許容しつつ、ロック部材90が退避できるように構成してもよい。
また、上記実施例では、ロック部材90をリール40(取付部60)の中心から径方向外側に向かって付勢する付勢手段として、コイルばね58を例に採って説明したが、付勢手段はこれに限定されるものではなく、例えば板ばねやトーションばね等で構成してもよい。また、このような付勢手段が天板14A内面の略中央(取付部60の中心)部分に配設される構成であると、ケース12内におけるデッドスペースの有効利用が図れ、かつ、その付勢手段をコンパクトに構成できるので好ましい。
更に、上記実施例では、ロック部材90をブレーキ部材80との係合によって径方向に摺動させる構成としたが、ロック部材90を径方向に摺動させる構成は、これに限定されるものではなく、例えばロック部材90を昇降ロック位置(リール40の軸方向の移動を阻止する位置)と昇降許容位置(リール40の軸方向の移動を許容する位置)とに切り替える切替部材等をブレーキ部材80とは別に設ける構成としてもよい。但し、この場合、その切替部材等はブレーキ部材80と連動して作動する構成とすることが好ましい。
記録テープカートリッジの概略斜視図である。 回転シャフト上昇前の記録テープカートリッジの概略側断面図である。 回転シャフト上昇後の記録テープカートリッジの概略側断面図である。 上ケースに形成された取付部の構成を示す概略分解斜視図である。 上ケースに形成された取付部を示す概略斜視図である。 ロック部材とコイルばねを組み込む様子を示す概略斜視図である。 保持部に保持されたロック部材の概略断面図である。 保持部に保持されたロック部材の概略側面図である。 回転シャフト上昇前の記録テープカートリッジの一部拡大概略側断面図である。 回転シャフト上昇開始の記録テープカートリッジの一部拡大概略側断面図である。 回転シャフト上昇途中の記録テープカートリッジの一部拡大概略側断面図である。 回転シャフト上昇途中の記録テープカートリッジの一部拡大概略側断面図である。 回転シャフト上昇終了の記録テープカートリッジの一部拡大概略側断面図である。 (B)は、本願のブレーキ解除力を示すデータであり、(A)は本願との比較データであり、(C)はバージン品のブレーキ解除力を示すデータである。 ロック部材の摩耗領域を示す斜視図である。 上ケースの天板内面の摩耗領域を示す斜視図である。 ブレーキ部材の摩耗領域を示す斜視図である。 従来の記録テープカートリッジの一部拡大概略側断面図である。
符号の説明
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
40 リール
50 リールギア(係合部)
58 コイルばね(付勢手段)
60 取付部(部品取付部)
80 ブレーキ部材(制動部材)
90 ロック部材
94A テーパー面(傾斜面)

Claims (2)

  1. ケース内に回転可能に収容され、記録テープが巻装されたリールのハブの底壁に形成された係合部と、
    前記係合部と対面し、前記ハブの軸方向に沿って移動可能に設けられ、前記係合部と係合して前記リールの回転を規制し、係合部との係合状態を解除してリールの回転を許容する制動部材と、
    前記ケースの中央部に形成され、前記ハブよりも内側に位置する部品取付部と、
    前記リールの径方向へ移動可能に前記部品取付部へ装着され、前記リールと前記ケースの間に介在して少なくともリールの軸方向の移動を規制し、前記制動部材が最初に当接し押圧する方向に沿って重心が設けられ、前記制動部材に押されてリールの径方向内側へ移動してリールの軸方向の移動を許容するロック部材と、
    前記ロック部材を前記リールの径方向外側へ付勢する付勢手段と、
    を有することを特徴とする記録テープカートリッジ。
  2. 前記制動部材が当接する前記ロック部材の傾斜面が約45〜60°であることを特徴とする請求項1に記載の記録テープカートリッジ。
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