JP4369209B2 - カルボン酸無水物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カルボン酸無水物の製造方法に関し、エステル化やアミド化、ペプチド合成などに有用なアシル化剤、特に漂白活性化剤などとして有用なアシルオキシベンゼンスルホン酸又はその塩の原料として用いられるカルボン酸無水物を製造する方法に関する。
カルボン酸から低級カルボン酸無水物を用いてカルボン酸無水物を得るための製造方法はすでに公知であり、例えば、特許文献1には、無水酢酸を留出させずに副生する酢酸のみを除去する目的で、酢酸と共沸する溶媒を用いてカルボン酸無水物を得る方法が開示されている。しかし、この方法により得られるカルボン酸無水物は着色度が高く、これをアシル化剤などとして用いるには、実用的に十分満足できるものではなかった。
また、特許文献2には、副生する低級カルボン酸を複数段の分縮操作により反応系外に除去しながら反応させることによりカルボン酸無水物を容易かつ安価に製造する方法も提案されているが、上記着色度の面でも更に改善されたカルボン酸無水物が求められていた。
米国特許2,411,567号明細書 特開2000−86576号公報
本発明は、カルボン酸と低級カルボン酸の無水物からカルボン酸無水物を得る方法において、着色度が著しく低いカルボン酸無水物を提供することを目的とする。
本発明者らは、カルボン酸と低級カルボン酸の無水物からカルボン酸無水物を製造する際に、カルボン酸と低級カルボン酸無水物との反応後に、特定の冷却速度で徐冷することにより、着色の少ないカルボン酸無水物を得ることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
一般式(1)
1COOH (1)
(式中、R1は炭素数5~17の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基を示す。)で表されるカルボン酸と、一般式(2)
Figure 0004369209
(式中、R2は炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基を示す。)で表されるカルボン酸無水物とを130〜180℃の範囲の温度で反応させて、一般式(3)
Figure 0004369209
(式中、R1は前記に同じ。)で表されるカルボン酸無水物を含む反応生成物を得、これを毎分0.1〜3.0℃の範囲内の冷却速度で冷却する工程を含む上記一般式(3)で表されるカルボン酸無水物の製造方法、及び上記の方法により製造されたカルボン酸無水物と一般式(4)
Figure 0004369209
(式中、R3は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基、nは0~2の整数を示し、nが2の場合、2つのR3は同じでも異なっていてもよい。M1は水素原子又は陽イオン基であり、aはM1の価数を示す。M2は水素原子又は陽イオン基であり、bはM2の価数を示す。)で表されるヒドロキシベゼンスルホン酸又はその塩とを反応させて、一般式(5)
Figure 0004369209
(式中、R1、R3、n、M1、aは前記と同じである。)で表されるアシルオキシベンゼンスルホン酸又はその塩を製造する方法を提供する。
本発明のカルボン酸無水物の製造方法によれば、得られたカルボン酸無水物は着色度が著しく低いものである。また、本発明の方法により製造されたカルボン酸無水物をアシル化剤として用いて製造したアシルオキシベンゼンスルホン酸またはその塩も着色度が低いものである。
本発明に用いられる前記一般式(1)で示されるカルボン酸としては、R1が炭素数5~17の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であるカルボン酸であり、その具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、3,5,5−トリメチルカプロン酸、2−メチルカプリル酸、2−メチルカプリン酸、3,7−ジメチルカプロン酸、2−エチルヘキサン酸、イソステアリン酸などの各種カルボン酸などが挙げられる。また、上記アルキル基又はアルケニル基としては、塩素、臭素等のハロゲン原子、あるいはフェニル基等のアリール基で置換されたものも包含される。更に、これら列挙したカルボン酸の混合物も使用できる。混合脂肪酸としては、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、コーン油脂肪酸等が挙げられ、このうちラウリン酸が好ましく用いられる。
本発明に使用される一般式(2)で表されるカルボン酸無水物は、R2が炭素数1〜3の低級カルボン酸の無水物であり、その具体例として、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水フルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水クロル酢酸、無水トリクロロ酢酸などが挙げられる。
上記一般式(2)で表されるカルボン酸無水物の使用量としては、理論的には一般式(1)で表されるカルボン酸2モルに対し1モル必要であるが、目的の反応が行われる限りにおいては、特に制限はない。本発明の方法ではカルボン酸2モルに対し1.0〜1.6モル、更に1.0〜1.4モル程度使用することが好ましい。上記範囲であれば、反応後にカルボン酸が残存してしまうこともなく、また、残存する一般式(2)で表されるカルボン酸無水物で反応に関与しないものを除去するための蒸留時間の延長を防止することができる。
一般式(1)で示されるカルボン酸と一般式(2)で表されるカルボン酸無水物との反応においては、その反応温度は130〜180℃の範囲であり、140〜160℃の範囲であることが好ましい。上記範囲内の温度であれば、低級カルボン酸の無水物が反応前に留出することもなく、また目的とするカルボン酸無水物の収率も良好で未反応カルボン酸が残存することによる純度低下もない。
本発明においては、上記反応により得られた、一般式(3)で表されるカルボン酸無水物を含む反応生成物を、0.1〜3.0℃/分の冷却速度で冷却する工程を含む。このような冷却工程を含むことにより、得られるカルボン酸無水物は、その着色度が著しく改善されたものとなる。
上記冷却速度は、更に0.2〜2.0℃/分、特に0.3〜1.5℃/分の範囲内であることが本発明の効果及び生産効率の面で好ましい。本発明においては、上記冷却速度による冷却を全ての冷却工程にわたって行う必要はなく、冷却工程中に、上記冷却速度による冷却工程を含んでいればよい。特に、少なくとも上記反応温度から約120℃迄の冷却を上記冷却速度で行えば本発明の効果を得ることが可能である。約120℃以下の温度への冷却速度については、特に限定はされないが、好ましくは上記本発明の冷却速度で行うことが好ましい。なお、本発明においては、上記冷却速度の範囲内であれば、冷却期間中に冷却速度を適宜自在に変更して行うこともできる。
本発明の製造方法によって得られる一般式(3)で表されるカルボン酸無水物は、その着色度が著しく低いものであり、得られた反応生成物としてそのAPHA 60以下、好ましくは40以下のものが得られる。
このカルボン酸無水物はそのままでも純度が高いので特に精製処理を施さなくとも、アシル化剤などとして十分使用可能であるが、反応終了後、精留や再結晶など公知の方法によって精製することにより、更に高純度のカルボン酸無水物を得ることができる。
本発明において得られる一般式(3)で表されるカルボン酸無水物は、例えば、一般式(4)で表されるヒドロキシベゼンスルホン酸又はその塩と反応させて、一般式(5)で表されるアシルオキシベンゼンスルホン酸又はその塩を製造する際のアシル化剤として使用することができる。
一般式(4)において、R3で示される炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種ヘキサデセニル基、オレイル基などが挙げられるが、これらの中でメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基の中から選ばれる炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。nは0又は1が好ましく、さらに好ましくは0である。nが1以上の場合、R3のOH基に対する導入位置はパラ位以外であればよく、特に制限はない。
一般式(4)において、M1及びM2のうちの陽イオン基としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属;カルシウム、バリウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属;アンモニウム;ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等の置換アンモニウム;テトラメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム等の四級アンモニウムなどがあるが、そのうちアルカリ金属が好ましく、特に工業的な面からナトリウムが好ましい。また、M1及びM2は、たがいに同一でも異なっていてもよい。
ヒドロキシベンゼンスルホン酸又はその塩とカルボン酸無水物の反応方法については特に制限はなく従来公知の方法をいずれも採用することができるが、本発明においては、硫酸などの酸触媒の存在下に、例えば、トルエンなどの反応に不活性な溶媒中において、実質的に無水のヒドロキシベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩と、実質的に化学量論的量の前記カルボン酸無水物を50〜110℃程度の温度で反応させることにより、目的のアシルオキシベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩を得ることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
比較例1
攪拌機付きの2Lの四つ口フラスコに、ラウリン酸1000g(5モル)、無水酢酸255g(2.55モル)を加え、120℃で27kPaにした後、系内の圧力を2時間かけ、1.3kPaに徐々に低下させ、生成する酢酸を留去した。その後、さらに150℃(1.3kPa)まで昇温し、4時間反応した。APHA標準液と比較することによって反応生成物の色相を測定した結果、APHAで70であった。その後10分間で60℃まで冷却した。得られた反応生成物をNMRにより分析した結果、得られた無水ラウリン酸は純度75質量%、また色相はAPHAで70であった。結果を表1に示す。
実施例1〜3
冷却後到達温度及び冷却時間を表1に示すように変える以外は比較例1と同様に無水ラウリン酸を製造した。結果を表1に示す。
Figure 0004369209
実施例4
攪拌機付きの1Lの四つ口フラスコにフェノールを400g(425モル)加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら50℃に昇温した。その後、98質量%硫酸446g(純度約98質量%、4.46モル)を50〜100℃で滴下し、100℃で1時間撹拌した。液体クロマトグラフィー分析により得られたフェノールスルホン酸のパラ体の収率は88%(パラ体の純度は80%)であった。
さらに攪拌機付きの1Lの四つ口フラスコに得られたフェノールスルホン酸100g(パラ体:0.46モル)と水155.6gを加え、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液449gを40〜60℃で滴下し、30質量%のフェノールスルホン酸ナトリウム水溶液を得た。その後、100〜120℃で水を留去し、フェノールスルホン酸ナトリウム水溶液を約半分の質量にした後、トルエン270gを加え110℃で共沸脱水を行い、水分含量を0.2質量%以下にした。
さらに80℃まで冷却後、硫酸2.3g(0.023モル)を加え、実施例1で得られた無水ラウリン酸234g(純度75質量%、0.46モル)を滴下し、80℃で8時間攪拌し、エステル化反応終了品を得た。液体クロマトグラフィー分析により得られたラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムのパラ体の収率は88%であった。得られた反応混合物に、2−プロパノール:水=8:2の溶液を加えて溶解させ、ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム濃度が5質量%の溶液を作り、溶液の色をAPHA標準液と比較することによって色相を測定した結果、APHAで70であった。
反応物の分析はNMRおよび液体クロマトグラフィーを用いて行った。液体クロマトグラフィーについては、以下のカラム、溶離液及び検出器を用いて行った。
ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムの定量:
カラム:GL Science Inc. Inertsil ODS-3V(5μm)、150mm×4.6mmφ
溶離液:水/メタノール=600mL/2400mL中にテトラブチルアンモニウムブロミド 17.3g, 酢酸 5mL含有
検出器:RI
p−フェノールスルホン酸ナトリウムの定量:
カラム:関東化学株式会社製リクロスファー100 PR−18(5μm)、250mm×4mmφ
溶離液:以下のA液、B液を用いるグラジェント法
A液:0.1モル/リットル NaClO4 含有 CH3CN/水質量比=15/85溶液
B液:CH3CN 100%
検出器:UV 260nm
本発明の方法で製造されたカルボン酸無水物は、アシル化剤としてアシルオキシベンゼンスルホン酸又はその塩、特にアルカリ金属塩の製造に用いられ、得られたアシルオキシベンゼンスルホン酸又はその塩は、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどの過酸化水素発生基質や過酸化水素と水中で接触させることにより、低温でも容易に有機過酸を発生し、衣類などの汚れ、シミ汚れなどに有効な漂白性能を発揮することから、漂白活性化剤として、洗浄剤組成物などに用いることができる。

Claims (3)

  1. 一般式(1)
    1COOH (1)
    (式中、R1は炭素数5〜17の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基を示す。)で表されるカルボン酸と、一般式(2)
    Figure 0004369209
    (式中、R2は炭素数1〜3の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基を示す。)で表されるカルボン酸無水物とを130〜180℃の範囲の温度で反応させて、一般式(3)
    Figure 0004369209
    (式中、R1は前記に同じ。)で表されるカルボン酸無水物を含む反応生成物を得、これを前記反応温度から少なくとも120℃まで、毎分0.1〜3.0℃の範囲内の冷却速度で冷却する工程を含む上記一般式(3)で表されるカルボン酸無水物の製造方法。
  2. 得られる一般式(3)で表されるカルボン酸無水物のAPHAが、反応生成物について60以下である請求項記載の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載された方法により式(3)で表されるカルボン酸無水物を製造し、次いで、一般式(4)
    Figure 0004369209
    (式中、R3は炭素数1〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基、nは0〜2の整数を示し、nが2の場合、2つのR3は同じでも異なっていてもよい。M1は水素原子又は陽イオン基であり、aはM1の価数を示す。M2は水素原子又は陽イオン基であり、bはM2の価数を示す。)で表されるヒドロキシベゼンスルホン酸又はその塩反応させて、一般式(5)
    Figure 0004369209
    (式中、R1、R3、n、M1、aは前記と同じである。)で表されるアシルオキシベンゼンスルホン酸又はその塩を製造する方法。
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