JP4367379B2 - 光ディスク装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光ディスク装置に係り、特に複数種類の光ディスクを高速かつ正確に判別が可能な光ディスク装置に関する。
現在実用化されている光ディスクには、CD−ROM、CD−R、CD−RW等のCD(Compact Disc) 、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM等のDVD(Digital Versatile Disc)などの種類がある。また次世代の超高密度光ディスクとして、従来の赤色系レーザよりも波長が短く高密度の記録が可能な青色系レーザを用いて記録/再生を行なうBD(Blu-Ray Disk)等も実用化され始めている。このうちDVDおよびBDにおいては、情報の記録及び再生、または再生のみが行なわれる層である記録層が1層だけでなく複数の層を有するものがある。これらの光ディスクは、外形形状は同一であるが記録層の物理的な構造が異なり、記録/再生を行なう為のレーザの波長もそれぞれ異なる。
このように記録層の物理構造及びレーザ波長が異なる複数種類の光ディスクを1台の光ディスク装置で正常に記録/再生を行なうためには、それぞれの光ディスクの特性にあったレーザ及び対物レンズを備える光ピックアップを用いなければならない。従って、装置が記録/再生を行なう前にどの種類の光ディスクが装置に装着されたかを判別して、その光ディスクに適応する光ピックアップを用意するための光ディスク判別処理は大変重要な処理である。また、装置が起動して実際に記録/再生を開始できるようになるまでの時間は短い方が利用者にとって好ましい。従って、この光ディスク判別処理はできる限り早く終了させることが重要である。
光ディスク判別方法の従来例として、各光ディスクの特性に合った光ピックアップの対物レンズをディスク面と垂直方向に上下に移動させ(以下この動作をフォーカスランプと呼ぶ)、このときのフォーカスエラー信号(以下FE信号と呼ぶ)、トラッキングエラー信号(以下TE信号と呼ぶ)、総和信号(以下RF信号と呼ぶ)などの信号レベルの変化により、光ディスクの表層と記録層の層間距離を計測したり、各信号の最大振幅値を計測したりして光ディスク判別を行なうものが提案されている。
以下にいくつかの従来例の概要を説明する。
特許文献1:特開2003−217119号公報は、BD/CD/DVDの光ディスク判別方法についての提案である。BDはBD用光ピックアップの対物レンズと光ディスク表面とのワーキングディスタンスが小さい。従って、このBDを前提としてワーキングディスタンスが小さい状態でワーキングディスタンスが大きいCD/DVDの光ディスク判別を行なおうとしてフォーカスランプさせると対物レンズが光ディスク表面に接触してしまう。これを避けるため、先に赤色系レーザを用いて、CD/DVDを前提とした光ディスク表面と対物レンズのワーキングディスタンスが大きい状態にしておき、この状態でフォーカスランプを行って光ディスク判別を行なう。そしてその時のFE信号のS字カーブの振幅レベルが所定値以下の場合はBDと判断し、所定レベル以上の場合はCD/DVDと判断する。
上記FE信号のS字カーブとは、フォーカスランプ時に対物レンズと光ディスクの表層及び記録層との間の焦点距離近傍でFE信号の電圧レベルがS字上に変化する現象のことである。このFE信号のS字カーブの詳細については後述する。
特許文献2:特開2003−217135号公報は、各々の光ディスクの種類に対応する複数種類のレーザを光ディスクに照射してフォーカスランプさせる。そしてその各々の場合のFE信号のS字カーブを検出する。このうち一番振幅が大きいFE信号のS字カーブを発生したレーザに対応する種類が装着されている光ディスクの種類であるとして、光ディスク判別を行なうものである。
特許文献3:特開2004−206753号公報は、フォーカスランプの上昇時と下降時にそれぞれ1回ずつ発生する記録層の合焦点付近のFE信号のS字カーブの時間間隔を測定する。そして、この測定により得られた計測時間値によって光ディスクの基板厚を知り、光ディスク判別を行うものである。
特開2003−217119号公報 特開2003−217135号公報 特開2004−206753号公報
上記で説明した3つの従来例を、BD/CD/DVDの光ディスク判別に用いる場合にはそれぞれに課題がある。以下にその課題を従来例毎に説明する。
(1)特許文献1:特開2003−217119号公報
この従来例ではBDとCD/DVDとの判別を、まず装着された光ディスクがCD/DVDであるかどうかから行なっている。しかしながらBDが搭載されている装置はBDを主体に記録/再生が行なわれる場合が多いことが予想される。従って、CD/DVDを先に判別するのでは、BDを判別する前には必ずCD/DVDの光ディスク判別処理が必要になる。よってBD主体の装置にも関わらず、装着光ディスクがBDであると判断するのに要する時間が、装着光ディスクがCD/DVDであると判断するまでに要する時間に比較して長くなってしまうという課題がある。
(2)特許文献2:特開2003−217135号公報
この従来例では光ディスクの回転を停止した状態でフォーカスランプさせて、その時に各記録層において発生するFE信号のS字カーブの数を数えて光ディスクの記録層の数を決定し、光ディスク判別を行なう。しかしながら、レーザを光ディスクが回転停止状態で記録層に照射した場合、回転状態で照射する場合に比較して非常に大きなエネルギーが記録層に加えられることになる。例えば、光ディスク中心点から22mm付近に光ピックアップが位置し、回転停止状態でレーザを照射した場合に記録層に加えられるエネルギーは、同じ位置で光ディスクが2000rpmで回転している状態でレーザを照射した場合に比較して数百倍のエネルギーとなる。従って再生用の弱いパワーのレーザを照射したとしても、記録層が劣化する可能性があるという課題がある。(特にBDの場合、30分間同じトラックを再生し続けると、再生信号のジッタが劣化するという内部実験結果もある)
(3)特許文献3:特開2004−206753号公報
上記に対して、本従来例では光ディスクを回転させて、対物レンズをフォーカスランプして表層と記録層を通過する際に発生する2つのFE信号のS字カーブの時間間隔を測定する。この測定した時間間隔により表層と記録層との間の厚みを算出する。しかしこの方法では、光ディスクに面振れがあると、フォーカスランプ時のFE信号のS字カーブ間の時間間隔が変化してしまうという課題がある。
また面振れの度合いが大きいと、フォーカスランプにより発生させる対物レンズと光ディスク間の距離の変化に対して、面振れによって生じる対物レンズと光ディスク間の距離の変化の大きさが上回ってしまい、フォーカスランプにより実現させたい変化に対して逆の向きに対物レンズと光ディスク間の距離が変化してしまう、逆行現象が発生する場合がある。この逆行現状が発生すると、実際に取得したい信号であるフォーカスランプによる真のFE信号のS字カーブ以外に、実際には想定していないこの逆行現象によるFE信号のS字カーブが発生してしまう。従って、この逆行現象によってもフォーカスランプ時の正確なFE信号のS字カーブ間の時間間隔を測定できないという課題がある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、記録層がN層のBD、CD/DVDの複数種類の光ディスク判別処理を、高速に、かつ正確に、かつ記録層を劣化させること無く実現することが可能な光ディスク装置を提供することを目的とする。
そこで上記課題を解決するために本発明は、下記の装置を提供するものである。
(1)装着された光ディスクに対物レンズを介してレーザ光を照射して、その照射したレーザ光の反射光により、前記光ディスクの種類がCD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)の赤色系レーザを用いる種類の光ディスクであるか、青色系レーザを用いるBD(Blu-Ray Disc)であるかを判別する光ディスク装置において、
前記光ディスクを、所定の回転数で回転させる第1の制御手段と(3、10)、
前記対物レンズを、前記光ディスクのディスク面と垂直方向に移動させる手段であり、
前記光ディスクを所定の回転数で回転させる際に、面振れにより発生する前記光ディスクの記録層におけるディスク面と垂直方向の移動速度に対して、前記対物レンズにおけるディスク面と垂直方向の移動速度がより速くなるように制御する第2の制御手段と(20、10)、
前記反射光に基づいて、前記対物レンズと前記光ディスクとの距離に応じて電圧レベルが変化するフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成手段と(6)、
前記第2の制御手段が移動させる前記対物レンズの移動範囲を、前記対物レンズの焦点が前記各光ディスクの表面に相当する位置と前記BDの記録層に相当する位置を含み、かつ前記DVDの記録層に相当する位置は含まない所定の範囲となるように制限するレンズ移動制限手段と(13)、
前記フォーカスエラー信号生成手段から供給されるフォーカスエラー信号を用いて前記光ディスクの種類を判別する光ディスク判別手段と(8、9、10)、
を有し、
前記第2の制御手段は、
前記光ディスクの記録層におけるディスク面と垂直方向の移動速度を、前記光ディスクの最外周における予め決定された所定の面振れ量と、前記光ディスクの回転中心と前記光ディスクの前記対物レンズを介して前記レーザ光が照射されるディスク面の位置との間の距離と、前記第1の制御手段により回転させている前記光ディスクの回転数とから算出し、
前記光ディスク判別手段は、
前記レンズ移動制限手段で制限される前記所定の範囲の一方の端から他方の端へ前記第2の制御手段が前記対物レンズを移動させる際に、前記光ディスクの表面と記録層とを通過する前後でフォーカスエラー信号がそれぞれ描くS字上の電圧レベル変化の発生回数をカウントし、そのカウントした発生回数により、装着された光ディスクが、前記赤色系レーザを用いる種類の光ディスクであるか、前記BDであるかを判別すると共に、判別した光ディスクが前記BDの場合は記録層が何層のBDであるかを判別することを特徴とする光ディスク装置。
本発明の光ディスク装置によれば、下記に示す効果を得ることができる。
(1)本発明では、フォーカスランプ範囲をCD/DVDの記録層まで焦点が及ばないBDの記録層の合焦距離付近に制限し、かつ一回のフォーカスランプで記録層がN層のBD、CD/DVDの光ディスク判別を行なうことができる。従って高速な光ディスク判別処理が可能となり、記録/再生を可能とするまでに要する起動時間を短くすることが可能となる。
(2)また上記のように、フォーカスランプ範囲をCD/DVDの記録層まで焦点が及ばないBD記録層の合焦距離付近に制限しているので、判別対象光ディスクがCD/DVDの場合でも対物レンズが光ディスク表面に接触する虞がない。
(3)更には、対物レンズのランプ(上または下方向への移動)速度を高速化し、かつ光ディスクを通常回転数より低速で回転させることで面振れにより生じる光ディスク面の上下移動の速度を低下させて光ディスク判別を行なうことで、逆行現象による想定外のFE信号のS字カーブの出現をなくすことが出来る。この逆行現象がなくなると光ディスクの表層、記録層で生じるFE信号のS字カーブを確実に取得することが出来る。従って、従来例において発生する虞のあった停止状態の光ディスクへのレーザの照射よる記録層の劣化を防ぎながら、より正確な光ディスク判別が可能となる。
本発明の実施例を説明する。
<全体構成>
図1は、本実施例による光ディスク装置のブロック構成図である。本実施例の光ディスク装置は、複数種類の光ディスク(CD/DVD/N層BD等)に対して情報の記録/再生が可能な装置である。なお、光ディスク装置は記録機能および再生機能の両方を備えていなくてもよく、例えば、各種類の光ディスクに記録された情報の再生のみが可能な装置であってもよい。
光ディスク装置は、対物レンズ21とこの対物レンズ21を支持する弾性体及び対物レンズ21を駆動するためのコイルとからなるアクチュエータ2及びレーザダイオード(LD)4及びフォトディテクタ(PD)5及びビームスプリッタ7などを構成要素とする光ピックアップ20、アナログ信号処理回路6、FE信号整形器8、パルスカウント器9、コントローラ10、RAM11、ROM12、フォーカスリミッタ13、アクチュエータ2を駆動するドライバ14、光ディスク1を回転させるスピンドルモータ3等から構成される。
なお上記の光ピックアップ20は、説明の便宜上複数種類の光ディスク(CD/DVD/BD)に対して対応が可能な光ピックアップを想定するが、それぞれの光ディスクの種類に応じた複数の光ピックアップを備える構成としても良い。
光ピックアップ20は、LD4が放射するレーザ光をビームスプリッタ7、アクチェータ2の対物レンズ21を介して光ディスク1 に照射する。そしてその光ディスク1からの反射光はビームスプリッタ7により光路が変更されPD5へ入射される。ここでビームスプリッタ7はLD4からのレーザ光は透過し、光ディスク1からの反射光は透過せずに反射する性質を持つ素子であるが、詳細内容は本発明とは直接関係が無いので割愛する。
LD4は、CD用の赤外色レーザ(波長:750nm)、DVD用の赤色レーザ(波長:650nm) およびBD用の青紫色レーザ(波長:405nm) のいずれかの光を放射する。
PD5は、受光した反射光をその光量に応じた電圧の電気信号に変換してアナログ信号処理回路6に出力する。
アナログ信号処理回路6はPD5から供給される電気信号を用いて、光ディスク1と対物レンズ21との位置関係に応じて電圧の変化するフォーカスエラー信号(以下FE信号と呼ぶ)、トラッキングエラー信号(以下TE信号と呼ぶ)を生成する。
ここでの位置関係とは、FE信号においては光ディスク1のディスク面と対物レンズ21とのフォーカス方向における位置関係のことであり、TE信号においては、光ディスク1にらせん状または同心円状に形成されている記録/再生トラックと対物レンズ21の焦点とのトラック方向における位置関係のことである。すなわちFE信号は、光ディスク1の記録層と対物レンズ21との距離に応じた電圧レベルを有する信号である。このFE信号によれば、対物レンズ21の焦点が記録層上に位置するか、記録層の表層側に位置するか、表層側とは反対側(奥) に位置するかを特定できる。なお、TE信号に関しては、本発明とは直接関係がないので以後の説明は割愛する。また、アナログ信号処理回路6はFE信号、TE信号と同時に、総和信号(RF信号)も生成し、以降の信号処理回路(図示せず)へ出力するがこれに関しても本発明とは直接関係がないので以後の説明を割愛する。
アナログ信号処理回路6で生成されたFE信号、TE信号は図示していないAD(アナログ−デジタル)変換器でデジタル信号に変換されコントローラ10へ供給される。また
FE信号は、同時にFE信号整形器に供給8される。
波形整形器8では、供給されたFE信号からノイズ成分を除去したのち、所定の閾値と比較してFE信号のS字カーブを検出し、検出したS字カーブ部分をL(低電位)として他の部分はH(高電位)となるS字検出信号を生成してパルスカウント器9へ出力する。
パルスカウント器9では、供給されるS字検出信号のLからHへの信号変化を検出して、この検出した回数をカウントする。
なお、波形整形器8で生成するS字検出信号のH/Lの極性、およびパルスカウント器9で検出するLからHへの信号の変化は、もちろん逆の関係となっても良い。
コントローラ10は、光ディスク1の種類を判別するためにアクチュエータ2の対物レンズ21をフォーカスランプさせるためのフォーカスドライブ信号を生成し、フォーカスリミッタ13、ドライバ14を介してアクチュエータ2のコイルへ供給すると同時に、光ディスク1を所定の回転数で回転させるためのスピンドルドライブ信号をスピンドルモータ3へ供給する。また、フォーカスランプが終了したならば、パルスカウント器9でカウントした回数データを取得して、この回数データを基に光ディスク1の種類を決定する。なおコントローラ10は、通常動作時におけるフォーカス制御、トラッキング制御、スピンドルモータ制御なども行なう。
フォーカスリミッタ13は、光ディスク判別時の対物レンズ21の移動範囲を制限するのに用いられるドライブ信号制限器である。
ドライバ14はアクチュエータ2のコイルを駆動するために電流を増幅するための電流増幅器である。
アクチュエータ2は、ドライバ14からのフォーカスドライブ信号によって光ディスク1のディスク面に対して垂直な方向( 以下、フォーカス方向と呼ぶ) に対物レンズ21を移動させる。
<光ディスク判別処理>
次に上記装置で行なわれる光ディスク判別処理を詳細に説明する。
装置に光ディスク1が正常に装着されたのを確認した後、光ディスク判別処理を実行する。この光ディスク判別処理によって、装着された光ディスク1の種別を予め認識しないと、光ディスク1の種類に適合した各種設定値を導くキャリブレーションや、光ディスク1の記録層へ焦点が合うように対物レンズ21を制御するフォーカスシングサーボ、焦点の位置を記録層のトラック上に保つように対物レンズ21を制御するトラッキングサーボなど、一連の通常動作を実行することが出来ない。
従ってこの光ディスク判別処理によって正確に光ディスク1の種類を判別することは非常に重要である。
<光ディスク構造>
まず、本装置で記録/再生を可能とする各光ディスクの構造を説明する。図2は各光ディスク毎の表層と記録層との位置関係を示すための断面図である。それぞれの図においてレーザは下側から照射される。従って表層は最下部となる。図2(a)はDVD、図2(b)はCD、図2(c)は記録層が1層の1層BD、図2(d)は記録層が2層の2層BDの断面図である。なお、図2(d)の2層BDの図は図2(c)の1層BDの表層から記録層に至る部分を拡大した図である。このように、光ディスクの種類に応じて表層(下側)から記録層へ至るまでの深さが異なっている。従って、それぞれの光ディスクにおいて記録/再生を行なうには、それぞれの光ディスク構造に対応可能なように複数のレーザや対物レンズを備える共用光ピックアップ、またはそれぞれの光ディスク毎に専用で使用する複数の光ピックアップが必要となる。
<FE信号のS字カーブ>
次に、図4を参照しながら、FE信号について説明する。図4は光ディスク1に対してフォーカスランプする対物レンズ21の移動量とFE信号の関係を表した図である。図4(a)はフォーカスランプを行なう際にドライバ14からアクチェータ2に供給されるドライブ信号に対応してフォーカスランプする対物レンズ21の移動量の変化を表している。図4(b)は上記フォーカスランプ応じてアナログ信号処理回路6から出力されるFE信号の波形を示す。なお図4の横軸は時間軸を表す。
光ディスク1のディスク面から対物レンズ21までの距離と、この距離の変化に応じて変化するFE信号との関係を説明する。図4(a)のように対物レンズ21が下方から上方へ移動して光ディスク1の表層付近に焦点が近づくと、FE信号は一旦電圧レベルが上昇するが更に近づくと逆に低下する。そして対物レンズ21の焦点が表層で合焦する位置で電圧レベルが0となる。この状態をゼロクロスと呼ぶ。そして更に対物レンズ21が上昇するとレベルは0以下に一旦低下するが更に上昇すると逆に上昇して最終的に電圧レベル0へ戻る。更に対物レンズ21が上昇して焦点が記録層を通過すると、FE信号は、表層で生じるのと同様の変化であるがその振幅が大きい曲線を描く。FE信号が描くこのようなS字上の曲線をFE信号のS字カーブと呼ぶ。フォーカスサーボはFE信号がこのようにS字カーブを描く特性を利用して実現しているが、FE信号がこのようなS字カーブを描く技術的根拠、フォーカスサーボを実現できる技術的根拠については本説明とは直接関係が無いので割愛する。
図3(a)は装着した光ディスク1がBDの場合のBD用光ピックアップの対物レンズ21と光ディスク1との合焦時の位置関係を表した図である。また図3(b)は、装着光ディスク1がDVDの場合に前述のBD用光ピックアップの対物レンズ21と光ディスク1との合焦時の位置関係を表した図である。BDの場合、対物レンズ21から光ディスク1の記録層までの合焦時の距離(焦点距離)は0.4mmであるので、図3(b)で明らかなようにこのBD用の光ピックアップでDVDの記録層へ焦点をあわせることは、光ディスク1の内部へ対物レンズ21が入ってしまうことになり、現実には不可能となる。従来例では、光ディスク1の種類を判別するためのフォーカスランプは記録層に対して行なってFE信号のS字カーブを検出することで行なう。従って従来例ではBD用光ピックアップを用いてCD/DVDの判別ができない。無理に合わせようとすると、光ディスク1の表層へ対物レンズ21が接触してしまうことになる。
本実施例では、図3(a)の位置関係においてBD用光ピックアップを用いて光ディスク判別を行なう。このときのフォーカスランプの移動範囲を図1示すフォーカスリミッタ13によって限定し、対物レンズ21が1層BDの記録層へ合焦する位置を中心として±0.2mmとする。そして、この範囲内で発生するFE信号のS字カーブの数によって光ディスク1の判別を行なう。このような構成にすると、装着された光ディスク1がCD/DVDの場合は記録層へは合焦しないが表層へは合焦するのでFE信号のS字カーブが1回発生することになる。また1層BDの場合は表層と記録層とへ合焦するのでFE信号のS字カーブが2回発生することになる。そして2層BDの場合は、表層と第1記録層と第2記録層へ合焦するのでFE信号のS字カーブが3回発生することになる。従って、このFE信号のS字カーブの発生数をカウントすることによって、CD/DVD、1層BD、2層BDを判別することが可能となる。
上記のように光ディスク判別の為にFE信号のS字カーブの発生数をカウントする場合、光ディスク1が回転停止している状態の時が最も正確にカウントできる。しかし、前述の通り、回転停止状態で記録層にレーザを照射すると、エネルギーが記録層の1点に集中してしまい、その記録層を劣化させてしまうという課題が生じる。従って光ディスク判別は回転状態にして行なうのが記録層の劣化を防ぐ観点からは望ましい。
しかし通常の場合、ディスク面は均一平面とはなっておらず、面振れが生じているのが一般的である。この面振れのある光ディスク1を回転させるとディスク面が上下に移動してしまう。
大きな面振れのある光ディスク1を回転させて光ディスク判別を行うと、上記ディスク面の上下移動により、フォーカスランプによる対物レンズ21と光ディスク1間の距離の一定方向への変化に対して逆方向に変化してしまう逆行現象が発生する場合がある。この逆行現状が発生すると、実際に取得したい信号であるフォーカスランプによる真のFE信号のS字カーブ以外に、実際には想定していないこの逆行現象によるFE信号のS字カーブが発生してしまう。
図5はこの逆行現象の影響を説明する図である。図5(a)はフォーカスランプを行なう際にドライバ14からアクチェータ2に供給されるドライブ信号に対応してフォーカスランプする対物レンズ21の移動量の変化を表している。図5(b)は上記フォーカスランプ応じてアナログ信号処理回路6から出力されるFE信号の波形を示す。図5(c)は、図5(a)の対物レンズ21の移動量に、光ディスク1の面振れによるディスク面の移動量を加えたものであり、これが実際のディスク面と対物レンズ21との相対距離となる。なお図5の横軸は時間軸を表す。
上記図5(c)で明らかなように、面振れがあると、実際に実現させたい対物レンズ21の下方から上方への移動の変化だけではなく、上方から下方への距離の変化が発生する。これが逆行現状である。この影響により、点線内の真のFE信号のS字カーブのほかに多数の想定しないS字カーブが発生してしまう。
そこで本実施例では以下のような処理を行う。
下方から上方へフォーカスランプする際は通常速度で移動する。この際は光ディスク判別処理を行わない。その後、上方から下方へフォーカスランプする際に、面振れによって生じる対物レンズ21と光ディスク1間の距離の変化を上回る対物レンズ21と光ディスク1間の距離の変化となるように高速で対物レンズ21を下降させ、光ディスク判別処理を行う。なお、対物レンズ21を下方から上方へ移動する際に高速移動を行なわないのは、高速移動によってオーバーシュートが生じて対物レンズ21が光ディスク1の表面に接触が起してしまうのを防ぐ為である。
また、対物レンズ21移動の高速化に加えて、光ディスク1の回転数を標準速度ではなく低速にすると更に面ぶれによる影響を排除することができる。
このように、対物レンズ21移動の高速化と光ディスク1の回転数の低速化により、図6の下降時に示すように真のFE信号のS字カーブのみを取得することが可能となる。
以下に、上記のように真のFE信号のS字カーブを取得することが可能となる対物レンズ21の移動速度と光ディスク1の回転数の関係を説明する。
例えば、光ディスク判別を行なう測定ポイントを光ディスク中心からR22.7mmの位置とした場合、記録容量が25GBのBDの標準の回転数は2068rpmである。このとき、光ディスクの最外周での面振れを仕様許容値の2倍の±0.3mmとした場合、測定ポイントでの面振れの上下速度は13.8mm/s(一周29ms、測定ポイント地点面振れ=±0.1mm)である。すなわち、半周で200μm上下するので、表層と記録層との距離である100μmを加算すると、300μmを14.5ms以下で、対物レンズ21は上下移動しなければならない。つまり対物レンズ21の移動スピードは最低でも20μm/ms以上が必要になる。対物レンズ21を移動させるアクチュエータ2の高速化による下降時のランプ速度は10μm/ms(ランプ幅0.4mm、ランプ時間40ms)が限界である。従ってこれを越える分の距離の変化は光ディスク1の回転数を下げることで吸収する。例えば光ディスク1の回転数を標準回転数の約1/4の500rpmとする。
このように、対物レンズ21下降時の移動速度を光ディスク1が回転することによる面振れの上下移動速度に対して2倍にすることによって、逆行現象の影響を排除でき正確なFE信号のS字カーブを得ることができた。本説明では、対物レンズ21下降時の移動速度を光ディスク1が回転することによる面振れの上下移動速度に対して2倍としたが、この倍率は2倍に限らず2倍以上であれば同様の効果を得ることができる。しかし現実的には装置の性能により4倍程度が上限の値となる。
なお上記では、対物レンズ21の移動方向を上方から下方へ移動する際の例を説明したが、対物レンズ21のオーバーシュートの防止対策を施せば、下方から上方へ移動する際に上記処理を行っても良く、同様の効果を得ることができる。
<FE信号整形器>
FE信号のS字カーブは所定の閾値を設けて検出する。記録層におけるFE信号は記録層の反射率が大きいので十分大きな電圧レベルが得られる。しかし、表層におけるFE信号は表層の反射率が小さいので電圧レベルも小さく、ノイズの電圧レベルに近いところにある。電圧レベルを上げるためにFE信号を増幅しても、伴ってノイズの電圧レベルも増加するので、閾値によるFE信号のS字カーブの検出が難しい。また光ディスク表面に傷等がある場合には、傷等による反射をFE信号として認識してしまうこともある。
図1におけるFE信号整形器8は、上記の問題を解決してFE信号のS字カーブを精度よく検出してS字検出信号を生成するブロックである。
アナログ信号処理回路6から図示していないA/D変換器を介してデジタル信号として取り込んだFE信号は時系列的に連続する8データの移動平均による平滑化が行なわれノイズ成分が取り除かれる。更に、この平滑化が行なわれたFE信号に対して図7(b)に示すようにFE信号のセンター値(ゼロクロスレベル)の上下に所定の閾値を設けて、この上下の閾値未満のFE信号はノイズと見なしてキャンセルする。そしてFE信号がこの閾値以上になった場合、S字カーブが発生したとみなしてS字検出信号を生成する。具体的には、図7(c)に示すように下側の閾値をFE信号の電圧レベルがマイナス方向に超えた時にL(低電位)となり、その後ゼロクロスしてFE信号の電圧レベルが上側の閾値をプラス方向に超えた時にH(高電位)となるようなS字検出信号を生成する。このように、FE信号を連続データの移動平均として平滑化した後に、上下の閾値によるS字検出を行うことにより、ノイズの影響を低減し、表層、記録層でのFE信号のS字カーブを精度よく検出し、S字検出信号を生成できる。
パルスカウント器9は、FE信号整形器8で生成したS字検出信号の立ち上がりパルス(電位がLからHへの移行する期間)を検出し、これをカウントする。このカウントした数がS字カーブの発生数であり、光ディスク1において検出した層数となる。層の数は光ディスク判別データとして用いられ、1層BDでは2個、2層BDでは3個、CD/DVD等は対物レンズ21の移動範囲がフォーカスリミッタ13によって記録層に達しないようにしているため、表層における1個だけとなる。
コントローラ10はこのパルスカウント器でカウントした値を取得して、装着された光ディスク1の光ディスク種類を判別する。
<フローチャート>
上記の光ディスク判別処理の流れを図1のブロック図と図8のフローチャートを用いて説明する。以下の説明は1層BDが装着された場合の例である。
ますコントローラ10は、スピンドルモータ3によって光ディスク1を低速で回転させ、LD4を点灯すると共に、アクチェータ2の対物レンズ21を、上端に移動させ、下方向へのフォーカスランプを開始する(ステップS1)。この上端とは、フォーカスリミッタ13で制限される焦点距離から+0.2mmの位置である。するとこの位置でのFE信号がアナログ信号整形器6で生成されFE信号整形器8に供給される。
次に、FE信号整形器8では供給されたFE信号に平滑フィルタ処理とノイズキャンセル処理を施す(ステップS2)。
そして、平滑フィルタ処理とノイズキャンセル処理が施されたFE信号と予め決定している所定の上側閾値及び下側閾値と比較する(ステップS3、ステップS4)。現段階ではフォーカスランプ開始直後であり対物レンズ21が上端の位置にいるので、FE信号は0レベルであるからステップS3、ステップS4の比較結果はどちらもNOとなる。またこのときFE信号整形器8の出力であるS字検出信号はデフォルト値であるH(高電位)のままである。
次に、このS字検出信号はパルスカウント器9に供給されるが、現段階では信号レベルはHのままなのでパルスカウント器9は動作しない。ステップS7ではパルスは発生していないのでNOとなりステップS9へ移行する。
ステップS9では対物レンズ21の位置が下端に達したかどうかを検出する。この下端とは、フォーカスリミッタ13で制限される焦点距離から−0.2mmの位置である。現段階ではまだフォーカスランプ開始直後なので、対物レンズ21は下端に達していないのでNOとなる。従って処理はステップS2から再開することになり対物レンズ21は下降を続ける。なおこの繰り返しループは、例えば10msec周期といった高速ループとなる。
上記繰り返しループが継続し対物レンズ21の下降が続いて、対物レンズ21の焦点が光ディスク1の記録層付近に近づくと、FE信号はS字カーブを描き始めるので一旦電圧レベルが0以下に低下する。FE信号整形器8がこのFE信号が下閾値を越えたことを検出するとS字検出信号をLに変化させる。図8のフローチャートにおいてはステップS4にてYESとなりステップS5にてS字検出信号をLに変化させることになる。
更に繰り返しループが継続し対物レンズ21の下降が続いて、対物レンズ21の焦点が光ディスク1の記録層を横切るようになると、FE信号はS字カーブによって再び電圧レベルが上昇し始めゼロクロスして0レベル以上となる。FE信号整形器8がこのFE信号が上閾値以上になったことを検出するとS字検出信号をLからHに変化させる。図8のフローチャートにおいてはステップS3にてYESとなりステップS6にてS字検出信号をLからHに変化させることになる。
S字検出信号がLからHに変化すると、パルスカウント器9はそのLからHへの変化を検出して、検出回数データを1カウントアップする(ステップS8)。
更に繰り返しループが継続し対物レンズ21の下降が続いて、対物レンズ21の焦点が光ディスク1の記録層から遠ざかると、FE信号はS字カーブから元の0付近に収束する。
更に繰り返しループが継続し対物レンズ21の下降が続いて、対物レンズ21の焦点が光ディスク1の表層付近に近づくと、上記記録層で行われたのと同様の処理の流れとなる。そして、最終的にパルスカウント器9によってS字検出信号がLからHへの変化を検出して、検出回数データを1カウントアップする(ステップS8)。
更に繰り返しループが継続し対物レンズ21の下降が続いて、ステップS9によって対物レンズ21が下端に達したことを検出したならば、コントローラ10はパルスカウント器9で保持している検出回数データを取得して、その回数により光ディスク判別を行なう(ステップS10)
と共に、フォーカスランプを停止する(ステップS11)。
上記説明では、記録層で1回と表層で1回の計2回S字カーブを検出し、検出回数データが2であるので、1層BDであると判断する。同様に検出回数データが3の場合は2層BDと判断し、検出回数データが1の場合はCD/DVDであると判断する。
また、上記の一連の手順を繰り返し実行し、検出回数の総和や平均値をとった値によって光ディスク判別を行なうと、より光ディスク判別の精度を向上させることができる。
また、正確な検出回数をカウントできなかった場合など、なんらかの不具合が生じた場合には、ピックアップ20を半径方向に1mm程度移動させて、再度上記の1連の処理を行うなどのリトライ処理を行うのも有効である。そして、このリトライ処理を行ってもなお不具合が解消されない場合は、上記一連の光ディスク判別処理を中止することが望ましい。
なお本実施例では、BDの記録層は1層BDと2層BDについて説明したが、判別できるBDは1層BD、2層BDだけでなく、何層のBDでも、上記検出回数のカウント数によって判別が可能である。
また、本発明は上記した光ディスク装置の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムを含むものである。これらのプログラムは、記録媒体から読み取られてコンピュータに取り込まれてもよいし、通信ネットワークを介して伝送されてコンピュータに取り込まれてもよい。

本発明の光ディスク装置の一実施例を示す構成図である。 各光ディスクの構造図である。 本発明に関わる光ディスクとアクチェータとの関係図である。 対物レンズ上昇時のフォーカスエラーの様子を示す図である。 光ディスクに面振れがある場合の対物レンズ上昇時のフォーカスエラーの様子を示す図である。 本発明の一実施例による対物レンズ上昇及び下降時のフォーカスエラーの様子を示す図である。 本発明の一実施例によるS字検出信号を説明する図である。 本発明の光ディスク装置の一実施例のフローチャートである。
符号の説明
1 光ディスク
2 アクチェータ
3 スピンドルモータ
4 レーザダイオード(LD)
5 フォトディテクタ(PD)
6 アナログ信号処理回路
7 ビームスプリッタ
8 FE信号整形器
9 パルスカウント器
10 コントローラ
11 RAM
12 ROM
13 フォーカスリミッタ
14 ドライバ
20 光ピックアップ
21 対物レンズ

Claims (1)

  1. 装着された光ディスクに対物レンズを介してレーザ光を照射して、その照射したレーザ光の反射光により、前記光ディスクの種類がCD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)の赤色系レーザを用いる種類の光ディスクであるか、青色系レーザを用いるBD(Blu-Ray Disc)であるかを判別する光ディスク装置において、
    前記光ディスクを回転させるディスク駆動手段を制御する第1の制御手段と、
    前記対物レンズを前記光ディスクのディスク表面と垂直方向に移動させるレンズ駆動手段を制御する手段であり、
    前記光ディスクを前記ディスク駆動手段によって所定の回転数で回転させる際に、面振れにより発生する前記光ディスクの記録層におけるディスク表面と垂直方向の移動速度に対して、前記対物レンズにおけるディスク表面と垂直方向の移動速度がより速くなるように前記レンズ駆動手段を制御する第2の制御手段と、
    前記反射光に基づいて、前記対物レンズと前記光ディスクとの距離に応じて電圧レベルが変化するフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成手段と、
    前記レンズ駆動手段が移動させる前記対物レンズの移動範囲を、前記対物レンズの焦点が前記光ディスクの表面に相当する位置と前記BDの記録層に相当する位置を含み、かつ前記DVDの記録層に相当する位置は含まない所定の範囲となるように制限するレンズ移動制限手段と、
    前記フォーカスエラー信号生成手段から供給されるフォーカスエラー信号を用いて前記光ディスクの種類を判別する光ディスク判別手段と、
    を有し、
    前記第2の制御手段は、
    前記光ディスクの記録層におけるディスク面と垂直方向の移動速度を、前記光ディスクの最外周における予め決定された所定の面振れ量と、前記光ディスクの回転中心と前記光ディスクの前記対物レンズを介して前記レーザ光が照射されるディスク面の位置との間の距離と、前記第1の制御手段により回転させている前記光ディスクの回転数とから算出し、その算出結果に応じて前記対物レンズの移動速度を制御する手段であり、
    前記光ディスク判別手段は、
    前記レンズ移動制限手段で制限される前記所定の範囲の一方の端から他方の端への前記前記対物レンズの移動に伴い、前記対物レンズの焦点が前記光ディスクの表面と記録層とを通過する際に前記フォーカスエラー信号がそれぞれ描くS字上の電圧レベル変化の発生回数をカウントし、そのカウントした発生回数が1回の場合は装着された光ディスクが前記赤色系レーザを用いる種類の光ディスクであると判別し、前記発生回数が複数回の場合は装着された光ディスクが前記BDであると判別すると共に、前記発生回数に応じて記録層が何層のBDであるかを判別する手段である、
    ことを特徴とする光ディスク装置。

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