まず、図6(a)から(c)を参照しながら、本発明による光ディスク装置における特徴的な動作を説明する。
図6(a)は、シーク動作中における対物レンズ22の移動を模式的に示している。対物レンズ22は、光ピックアップのトラバース動作により、光ディスク100の内周側から外周側に図中水平方向に移動しているとする。図6(b)に示すように、光ビームの照射位置が光ディスク100の端部を越えた場合は、検知手段が「オーバラン」の発生を検知し、制御手段が対物レンズ22を光ディスク100から離れる方向に移動させる(矢印A)。この後、光ピックアップ(不図示)が光ディスク100の内周側に移動させられ、光ピックアップとともに対物レンズ22もディスク内周囲側に移動することになる(矢印B)。
対物レンズ22が光ディスク100の突出部102に対向する領域よりも内周側に移動した後は、フォーカスオン処理のため、対物レンズ22を光ディスク100に近づける動作が開始される(矢印C)。
このように、本発明の光ディスク装置では、オーバランが発生した場合、光ディスク100の突出部102を避けるように対物レンズ22の迂回動作を行うため、開口数NAが大きく焦点距離の短い対物レンズを採用していても、光ディスク100との衝突を回避し、信頼性の高い動作を実現することが可能になる。
また、本発明の他の態様では、オーバランが発生していない場合でも、適切な回避動作が実行される。すなわち、図7(a)に示すように突出部102に対向する領域に光ピックアップの一部(例えばレンズ保護部230)が位置するときにフォーカスサーボが外れると、図7(b)に示すように対物レンズ22を光ディスク100から遠ざけた後(矢印A)、図7(c)に示すように対物レンズの位置をディスク内周側に移動させる(矢印B)。その後、フォーカスサーチのために対物レンズ22を光ディスク100に近づける動作(矢印C)を開始しても、光ディスク100の突出部102との間の衝突を回避することが可能になる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(実施形態1)
まず、図8を参照しながら、本発明による光ディスク装置の第1の実施形態を説明する。図8は、本実施形態の光ディスク装置の構成を示している。
本実施形態の光ディスク装置は、複数種類の光ディスクからデータを読み出すこと、および、そのような光ディスクにデータを書き込むことを行うことが可能な光ディスク装置(3波長マルチドライブ)である。本実施形態の対応可能な光ディスクは、Blu−rayディスク、DVD−RW、DVD−RAMなどの書き換え型光ディスク、CD―R、DVD−Rディスクなどの追記型光ディスクを含んでいる。また、光ディスクの直径は、120mmに限定されず、80mmであってもよい。
この光ディスク装置は、光ディスク100を回転させるディスクモータ(スピンドルモータ)2と、光ディスク100の所望のトラックにアクセスする光ピックアップ6と、光ピックアップ6およびディスクモータ2などの動作を制御する制御部40(図中、破線部)とを備えている。
ディスクモータ2は、光ディスク100を所定の回転数(毎分)で回転させることができる。光ディスク100の記録再生方式は、線速度一定で記録再生を行うCLV方式(ゾーンCLV方式を含む)と、角速度一定で記録再生を行うCAV方式(ゾーンCAV方式を含む)とに分けられる。音楽や画像情報等の記録再生は、一定のデータ転送レートで行うことが望ましく、CLV方式が適している。CLV方式は、線速度一定で記録再生を行うので、光ビームが内周側のトラック上を走査しているときには光ディスク100の回転数が高くなるように制御し、光ビームが外周側を走査しているときには光ディスク100の回転数が低くなるように制御する。一方ゾーンCLV方式は、光ディスク100を半径方向に複数のゾーンに分割し、そのゾーン内では回転数を一定とし、各ゾーン間では回転数を変えることで平均的な線速度が一定となるように制御している。
ディスクモータ2による光ディスク100の回転数は、回転制御部3で制御され、実際の回転数は回転数検出部4によって検出される。回転数検出部4は、検出した回転数を示す検出値信号をコントローラ5へ送出する。
光ピックアップ6は異なる波長を有する複数の光ビーム8、21を放射する光源(赤色半導体レーザ7および青色半導体レーザ23)と、光ビーム8、21を集束する対物レンズ9、22と、光ディスク100によって反射された光ビーム8、21の少なくとも一部に基づいて電気信号を生成する光検出器16を有しており、移送台11に支持されている。なお、本実施形態の光ディスク装置は、CDにも対応しているため、光ピックアップ6は、CDの照射に用いられる赤外の光ビームを放射する赤外レーザ(不図示)をも備えている。しかし、簡単化のため、図示を省略している。
また、図8には示されていないが、この光ピックアップ6には、図12に示されているレンズ保護部230と同様のレンズ保護部が設けられている。
光源の赤色レーザ7および青色レーザ23は、それぞれ、赤色レーザ駆動部10および青色レーザ駆動部24に接続されている。赤色レーザ駆動部10は、赤色の光ビーム8のパワーが記録、消去および再生のレベルに適するように赤色半導体レーザ7を制御する。一方、青色レーザ駆動部24は、青色の光ビーム21のパワーが記録、消去および再生のレベルに適するように青色半導体レーザ23を制御する。
赤色の光ビーム8はDVDを照射するために用いられ、青色の光ビーム21はBDを照射するために用いられる。CDは、不図示の赤外レーザが放射する赤外の光ビームによって照射される。赤外レーザも、他のレーザと同様にして制御される。
コントローラ5を主たる構成要素とする制御部40は、光ピックアップ6、ディスクモータ2、および他の構成要素の動作を制御することにより、フォーカス制御動作、およびトラッキング制御動作を実行する。制御部40を構成する各機能ブロックは、ハードウェア的に実現されていても良いし、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実現されていても良い。制御部40の少なくとも一部は、半導体集積回路装置として光ディスク装置内に組み込まれても良い。制御部40は、1つの半導体チップ上に実現されていても良いし、複数の半導体チップ上に分かれて実現されていても良い。制御部40の動作は、光ディスク装置内のメモリに格納されるプログラムによって規定され得る。このプログラムを変更することにより、制御部40の動作の詳細(例えばレンズの垂直移動距離などのパラメータ)を変化させることができる。
本実施形態のコントローラ5は、光ピックアップ6が光ディスク100のリム領域101に対向する位置にあるか否かを検知するリム検出部30を備えており、このリム検出部30は、オーバランが発生したか否かを検知することもできる。
上述した光ピックアップ6は、不図示のモータによって駆動される移送台11により、ディスク径方向に沿って移動すること(トラバース)ができる。移送台11の動作は、移送制御部13によって制御される。通常、光ディスク100が光ディスク装置に装填されると、移送台11は光ピックアップ6をディスク最内周側に移動し、光ビームの集束点を光ディスク100の最内周領域(管理領域)に位置させるように動作する。光ピックアップ6の移動を高速に制御するためには、リニアモータを用いて移送台11を構成することが好ましい。
光ディスク100上に形成する光ビームスポットの径方向位置(光ビームの照射位置)は、移送台11によって粗く決定された後、光ピックアップ6内のレンズアクチュエータによって細かく決定されることになる。光ピックアップ6の対物レンズ9、22は、図12に示すように一体的に保持されており、レンズアクチュエータ240によって一体的に駆動される。このため、光ディスク100に光ビーム8を照射しているとき、レンズ9の位置を調整するためレンズアクチュエータが動作すると、不可避的にレンズ22の位置も変化することになる。
光ディスク100上における光ビームスポットの径方向位置は、移送台11に取り付けられた位置検出部12によって検出される。検出された径方向位置を示す検出値信号は、位置検出部12からコントローラ5へ送られる。コントローラ5のリム検出部30は、位置検出部12からの信号に基づいて光ビームスポットの径方向位置に関する情報を得て、光ビームスポットがリム領域101にあるか否か、言い換えると光ピックアップ6がリム領域101に対向する位置にあるか否かを判定することができる。
コントローラ5からシーク制御部19に目標位置や、目標位置での回転数などの移送命令が送られると、シーク制御部19から移送制御部13に目標位置までの光ピックアップ6の移送命令などの制御信号が送られる。また、このとき、目標位置での回転数を実現するため、ディスクモータ2の回転数変更命令などの制御信号がシーク制御部19から回転制御部3に送られ、移送台11の移動およびディスクモータ2の回転数が制御される。
フォーカス制御部14は、光ビーム8、21の集束点を光ディスク100の所望の情報層上に位置させ、トラッキング制御部15は、光ビーム8、21の集束点を目的トラック上に位置させる。フォーカス制御およびトラッキング制御により、光ディスク100が高速で回転している間も、光ビーム8または光ビーム21の集束点が目的とする情報層の目的とするトラック上を常に追従することが可能になる。光ディスク100の回転に伴って、光ディスク100の面振れが発生するため、光ピックアップ6と光ディスク100との距離が変動する。フォーカス制御が機能しているとき、光ピックアップ6内のアクチュエータ240(図12)により対物レンズ9、22の軸方向位置が微調整され、常に光ビーム8、21の集束点が目標とする情報層上に位置することができる。
光ビーム8、21の光ディスク100による反射光は、光検出部16で電気信号に変換される。この電気信号は、プリアンプ17で増幅された後に、情報を復調するために再生信号処理部18へ、フォーカスエラー検出のフィードバックのためにフォーカス制御部14へ、トラッキングエラー検出のフィードバックのためにトラッキング制御部15へと、それぞれ送られる。再生信号処理部18は、電気信号の情報の復調や、反射光量の測定を行い、その結果をコントローラ5へ送出する。
フォーカス制御部14およびトラッキング制御部15は、それぞれ、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号の絶対値を最小化するように光ピックアップ6内のアクチュエータ240(図12)を制御して、対物レンズ9、22の位置を調整する(サーボ制御)。
次に、図9を参照して、シーク動作中に「オーバラン」が発生した場合の処理を説明する。
まず、図9のステップ301において、シーク動作のため、移送台11によって光ピックアップ6を光ディスク100の外周方向へ移動させる。ステップ302では、位置検出部12によって移送台11から光ピックアップ6の位置を取得する。光ピックアップ6の位置取得は、位置検出部12の出力に基づいて行うことができる。移送台11がステッピングモータによって動作する場合、ステッピングモータの駆動パルスを位置検出部12でカウントすることにより、光ピックアップ6の位置を決定することができる。移送台11がDCモータによって動作する場合は、リニアエンコーダなどの駆動パルスを位置検出部12でカウントすることによって光ピックアップ6の位置を決定することができる。あるいは光ディスク100から取得しておいたアドレスに基づいて、光ビームスポットの照射位置に対応する光ピックアップの位置を決定しても良い。
ステップ303では、ステップ302で取得した光ピックアップ6の位置に基づいて、オーバランが発生したか否かの判定をリム検出部30が行う。オーバランが発生していれば、ステップ304に進むが、オーバランが発生していなければ、ステップ308に進む。ここで、オーバランの発生有無の判定は、例えば、以下の(1)および(2)に示す方法で行なうことができる。
(1) 光ピックアップ6の半径位置情報に基づき、光ピックアップ位置が例えば半径位置58.5mmよりも外周側にあるときオーバランが発生したと判定する。ここで「半径位置58.5mm」は、光ディスク100の直径が120mmのBDの場合におけるリム領域の外周半径位置に相当する。ここで、「光ピックアップ位置」とは、光ビームの照射に用いられている対物レンズの中心の半径位置に相当する。
(2) 再生信号処理部18から得られる反射光量が所定レベル以下(例えばサーボ制御が行われている状態の反射光量の50%以下)であるとき、オーバランが発生したと判定する。
ステップ304では、レンズアクチュエータ240によって対物レンズ9、22を光ディスク100から離れる方向へ移動(退避)させる(図6(b)の矢印A)。この移動の距離(レンズ垂直移動量=退避量)は、対物レンズ9、22と光ディスク100のリム領域101とが衝突しない大きさに設定される。具体的には、リム領域101の最大突出量(例えば0.2mm)に光ディスク100の面ぶれ量などを考慮した値(マージン)を追加して決定する。光ディスク100の直径が120mmの場合、リム領域101における面ぶれ領域は、例えば0.3mm程度であるが、光ディスク100の直径が80mmの場合、リム領域101における面ぶれ領域は、例えば0.2mm程度である。このように、面ぶれ量は、光ディスク100のサイズによっても変化するため、光ディスクのサイズなどに応じて、対物レンズの退避量を変更するようにしてもよい。こうして対物レンズの退避量を、光ディスク100の直径が120mmの場合は0.5mmに設定し、80mmの場合は0.4mmに設定してもよい。また、アダプタの装着された80mmディスクの場合は、突出部152(図4)の突出量(例えば、0.5mm)がリム領域101の突出量よりも大きいため、対物レンズの退避量を突出部152の突出量と面ぶれと合計した値0.9mmに設定してもよい。但し、レンズ保護部230が設けられている場合は、レンズ保護部230が対物レンズ22よりも突出している部分の高さ(例えば20〜70μm)をも考慮して、退避量を決定することが好ましい。光ピックアップ6を光ディスク100の内周側へ移動するとき、レンズ保護部230とリム領域101またはアダプタとの衝突を確実に回避するためである。
ステップ305では、移送台11によって光ピックアップ6を光ディスク100の半径方向に沿って内周側に移動させる(図6(b)の矢印B)。移動距離は、光ピックアップ6がリム領域101の半径位置よりも内周側に位置するように決定される。リム領域101の範囲は、光ディスク100上における実際のリム領域101の径方向サイズ(幅)に対して、移送台11の送り分解能によって決まるマージンを付加したものであってもよい。
光ピックアップ6の移動先は、リム領域101よりも内周側に位置しさえすれば任意であるが、シーク先の目標トラックに近い位置に移動させれば、目標トラックへ移動するために必要な時間を短縮することができる。なお、矢印Aで示される対物レンズの移動が完了する前に、矢印Bの移動(トラバース)を開始しても良い。
ステップ306では、フォーカス制御部14の働きによって対物レンズ9、22を光ディスク100に近づけ(図6(b)の矢印C)、フォーカスオン処理を実行する。フォーカスオン処理は、前述したとおりであるので、ここでは、その詳細な説明を繰り返さない。
ステップ307では、ステップ302で行った方法と同様の方法により、光ピックアップ6の位置を取得する。ステップ308では、ステップ302またはステップ307で取得した光ピックアップ6の位置が目標トラックの位置と一致するかどうかを判定する。目標トラックの位置と一致している場合は、シーク処理を完了し、一致していない場合は、ステップ301に戻って同様の処理を繰り返す。
なお、シーク処理完了の確認については、ステップ307において現在の光ピックアップ位置でのアドレスの取得を行い、ステップ308で目標アドレスと一致しているかどうかの判定を行うことによって実行しても良い。
本実施形態におけるリム検出部30は、シーク動作のため、光ピックアップ6を光ディスクの内周側から外周側に移動させる場合において、光ビームの照射位置が光ディスクの端部を越えたことを検知する検知手段として機能する。
(実施形態2)
次に、図10を参照して本発明による光ディスク装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態の光ディスク装置の基本的な構成は、図8に示す光ディスク装置の構成と同様である。異なる点は、その動作フローにある。
前述の通り、フォーカス制御が行われているときは、光ディスク100が高速で回転している間も、光ビーム8または光ビーム21の集束点が目的とする情報層上を常に追従することが可能になる。しかし、光ディスク100の傷やダスト、あるいは装置外部からの衝撃などにより、フォーカスサーボが外れる場合がある。この場合、再びフォーカス制御を開始するための動作(リトライ)を行う必要がある。本実施形態では、オーバランとは異なる原因によってフォーカスサーボが外れた場合におけるリトライの方法を説明する。以下、簡単のため、光ピックアップ6が1つの対物レンズ(例えばBD用の対物レンズ22)のみを備える場合について、最初に説明する。
まず、図10のステップ201において、光ピックアップ6の現在位置を取得する。光ピックアップ6の位置の取得方法は、実施形態1で述べた方法と同様であるため、説明は省略する。
ステップ202では、ステップ201で決定した光ピックアップ6の位置に基づいて、対物レンズ22が光ディスク100のリム領域101に対向する領域内にあるか否かの判定を行う。対物レンズ22がリム領域101に対向する領域内にあるとき、ステップ203に進む。リム領域101に対向する領域内になければ、ステップ205に進む。上記の判定は、リム検出部30が行う。具体的には、光ピックアップ6の位置情報(ディスク半径位置を示す情報)に基づき、対物レンズ22の中心のディスク半径位置とレンズ半径との合計値が例えばディスク半径位置58.5〜60.0mmの範囲内にあるときは、対物レンズ22がリム領域101に対向する領域内にあると判定する。ここで「ディスク半径位置58.5〜60.0mm」は、光ディスク100の直径が120mmのBDの場合におけるリム領域101に相当する。
ステップ203では、レンズアクチュエータ240(図12)によって対物レンズ9、22を光ディスク100から離れる方向へ移動(退避)させる。退避量(レンズ垂直移動量)は、実施形態1と同様に対物レンズ9、22と光ディスク100のリム領域101とが衝突しない大きさに設定される。したがって、この退避量は、リム領域101の半径方向位置(光ディスク100の直径)に応じて異なる値に設定されることが好ましい。
ステップ204では、移送台11によって光ピックアップ6を光ディスク100の半径方向に沿って内周側に移動させる。この移動距離(水平移動距離)は、対物レンズ22の外周エッジがリム領域101の半径位置よりも内周側に位置するように決定される。すなわち、光ピックアップ6の水平移動距離は、「対物レンズ22の中心の半径位置」と「レンズ半径」との合計値がリム領域101の半径位置よりも小さくなるように決定される。リム領域101との衝突を防止するという観点からは、光ピックアップ6の水平移動距離を大きくすることが好ましいが、記録再生動作の再開までの時間を短縮するためには、フォーカスサーボが外れたときの光ビーム照射位置の近傍でフォーカスオンを行うことが好ましい。従って、光ピックアップ6は、対物レンズ22の外周エッジがリム領域101よりも内周側に位置するという条件を満足しつつ、フォーカスサーボが外れる前に取得していたアドレスで定まる位置に可能な限り近い位置に移動させることが好ましい。
光ピックアップ6の内周側への「水平移動量」は、ディスク偏心を考慮して決定することが好ましい。リム領域101の幅(例えば1.5mm)、ディスク偏心(例えば37.5μm)、スピンドルモータの軸ぶれ(例えば50μm)、レンズ半径(例えば1〜1.6mmmm)などを考慮すると、「水平移動量」は、これらの数値を加算した値よりも大きな値設定することが好ましい。
上記の説明では、光ピックアップ6が1つの対物レンズ22のみを備える場合を対象にしていたが、以下、光ピックアップ6がDVD用の対物レンズ9およびBD用の対物レンズ22を備える場合を説明する。
光ピックアップ6におけるDVD用の対物レンズ9およびBD用の対物レンズ22の配置関係は、図13(a)および(b)に示すように、大きく異なる2つの態様を取り得る。図13(a)に示すように、2つの対物レンズ9、22が光ディスク100の半径方向に並び、BD用の対物レンズ22が外周側に位置している場合は、DVD用の対物レンズ9によってDVD上に光ビームを照射するときでも、図12から明らかなように、使用してないBD用の対物レンズ22がリム102に衝突する危険がある。したがって、何らかの原因によってフォーカスサーボが外れ、退避のために光ピックアップ6を光ディスク100から遠ざけた後、フォーカスオン処理を行うために対物レンズ9、22を光ディスク100に接近させるとき、BD用の対物レンズ22がリム102に衝突しない位置に光ピックアップ6を水平移動させておく必要がある。
このようにして光ピックアップを水平に移動させる距離(水平移動量)は、光ピックアップ6のうち、光ディスク100のリム102に衝突する可能性が高い危険部分の位置を考慮し、その危険部分がリム領域101よりも内周側に来るように決定されることが好ましい。
光ピックアップ6がDVD用の対物レンズ9よりもBD用の対物レンズ22が外周側に位置する構成を有している場合、DVD用の対物レンズ9によってDVDにアクセスしているとき、ディスク偏心などを考慮して決定した上記の「水平移動量」に対して、対物レンズ9、22の配置関係を考慮した「補正量」を付加することが好ましい。
図13(a)に示される配置の場合、この補正量は、対物レンズ9の最外周部分の半径位置と対物レンズ22の最外周部分の半径位置との差によって規定される。
次に、図13(b)に示すように2つの対物レンズ9、22が光ディスク100の周方向に並んでいる場合を考える。この場合、DVD用の対物レンズ9の中心がリム領域101よりも内周側にある場合でも、BD用の対物レンズ22の中心はリム領域101内に位置してしまう。図13(c)に示す例では、DVD用の対物レンズ9の中心が半径位置58.3mmにあり、BD用の対物レンズ22の中心が半径位置58.5mmにある。しかし、このような場合は、BD用の対物レンズ22の半径がDVD用の対物レンズ9の半径よりも小さいため、DVD用の対物レンズ9の最外周部分がリム領域101よりも内周側に位置すれば、BD用の対物レンズ22の最外周部分もリム領域101よりも内周側に位置することになる。このため、図13(b)の配置は、図13(a)の配置に比べて、BD用対物レンズ22とリム102との衝突を避けやすい利点を有している。
次にレンズ保護部230とリム102との衝突について検討する。レンズ保護部230はシリコーン樹脂などの弾性材料から形成され、BD用の対物レンズ22の近傍に設けられる。レンズ保護部230は、図13(a)および図13(b)に示すように、対物レンズ9、22よりも外周側に配置される場合がある。このような場合は、レンズ保護部230の位置をも考慮して、水平移動量を補正することが好ましい。例えば、DVD用の対物レンズ9を用いてDVDにアクセスしているときにフォーカスサーボが外れた場合は、「補正量」として、DVD用対物レンズ9の最外周部分の半径位置からレンズ保護部230までの距離を用いることができる。
ステップ205では、フォーカスオン処理を実行する。なお、フォーカスサーボが外れた原因が光ディスク100上の傷やダストの影響による可能性を考慮すると、対物レンズ22やレンズ保護部230がリム領域101よりも内周側に位置するように光ピックアップ6を水平移動させただけでは不充分な場合があり得る。すなわち、対物レンズ22やレンズ保護部230がリム領域101よりも内周側に位置するが、光ビーム照射位置が光ディスク100の傷やダストが存在する領域内に含まれ得ることがある。そのような場合は、傷やダストのサイズ(例えば5mmとする)以上の距離だけ、ディスク半径方向の内周方向または外周方向へと光ピックアップ6を移動した後、フォーカスオン処理を行っても良い。
なお、通常のリム領域101は光ディスク100の最外周に位置しているため、光ピックアップ6が光ディスク100の最外周部に移動してきたことを検知するスイッチを設けておくと、このスイッチの働きにより、光ピックアップ6の位置がリム領域101内に達したことを検出することが可能である。
このように本実施形態では、フォーカスオン処理を行う際に、光ピックアップ6がリム102と衝突する可能性のある領域内にあることを検知すると、衝突回避のために光ピックアップ6の位置をディスク内周側に移動させるため、光ディスク100の傷つきや対物レンズの破損を防止することができる。
なお、DVD用の対物レンズ9およびBD用の対物レンズ22が光ディスク100の半径方向に並んでいるが、DVD用の対物レンズ9がBD用の対物レンズ22よりも外周側に位置する場合、BD用の対物レンズ22を用いてBDの最外周部付近にアクセスすると、DVD用の対物レンズ9がリム領域101に対向する場合がある。しかしながら、DVD用の対物レンズ9は焦点距離が長く、光ディスク100から離れた位置にセットされているため、フォーカスオン動作中にリム領域102と衝突する危険性は低い。
(実施形態3)
次に、図11を参照して本発明の光ディスク装置の第3の実施形態を説明する。本実施形態の光ディスク装置も図8に示す構成を備えている。
ここでは、光ディスク100からデータを再生しているとき(再生時)、または光ビーム照射位置をディスク内周側から外周側に移動させる動作行っているとき(シーク動作時)において、フォーカス外れが発生したとする。
ステップ501では、フォーカス外れが「再生時」および「シーク動作 (Seek)時」のいずれの動作モード中に発生したかを判定する。再生時であればステップ507に進み、シーク動作時であればステップ502に進む。シーク動作時にフォーカス外れが生じたとき、その原因は、光ビームの照射位置が光ディスク100の端部を越えるオーバランが発生したことによる場合と、そうではない場合がある。この違いは、光ビームの照射位置に光ディスク100が存在しているか否かに対応している。
ステップ502においては、光ビーム照射位置に光ディスク100が存在しているか否かを判定する。光ビーム照射位置に光ディスク100が存在しない場合は、オーバランが発生したと判定し、ステップ503に進む。ステップ503では、まず、対物レンズを光ディスク装置1から離れる方向に移動させる。具体的には、レンズアクチュエータによって対物レンズ9、22を光ディスク100から離れる方向へ退避させる。
上記のレンズ移動により、光ピックアップ6が光ディスク100のリム領域101に衝突する可能性がなくなった後、ステップ504において、光ピックアップを光ディスク100の内周側に移動させる。このとき、光ピックアップ6の位置決定は、位置検出部12の出力に基づいて行うことができる。移送台11がステッピングモータによって動作する場合、ステッピングモータの駆動パルスをカウントすることにより、光ピックアップ6の位置を決定することができる。移送台11がDCモータによって動作する場合は、リニアエンコーダなどの駆動パルスをカウントすることによって光ピックアップ6の位置を決定することができる。なお、実施形態2のように、リム領域101に衝突しやすい部位が実際に使用している対物レンズよりも外周側に位置している場合は、「補正量」を追加した距離だけ内周側に光ピックアップ6を移動させることが好ましい。
こうして、対物レンズ9、22が光ディスク100に接近しても、光ピックアップ6が光ディスク100のリム領域101に衝突しない位置に光ピックアップ6を水平移動(トラバース)させた後、ステップ505において、フォーカスオン処理を開始する。フォーカスオン処理を開始すると、目標とする情報層を求めて対物レンズ9、22を光ディスク100に接近させることになる(フォーカスサーチ)。フォーカスサーチにより、目標とする情報層の近傍に光ビームの集束点を近づけ、フォーカス引き込みが完了(サーボ制御オン)したならば、ステップ506において、トラッキング制御を開始する。この後、目標トラックを求めてシーク動作のリトライが実行される。
前述のステップ501において、フォーカス外れが「再生時」に発生したと判定されたとき、または、ステップ502において、「シーク動作時」であるがオーバランは発生していないと判定されたときは、ステップ507に進み、対物レンズ9、22を光ディスク100から離れる方向に移動させる。
ステップ508では、光ピックアップ6がリム領域101およびその近傍に対向する領域に位置するか否かを判定する。光ピックアップ6の位置は、位置検出部12の出力に基づいて行うことができる。
光ピックアップ6がリム領域101およびその近傍に対向する領域に位置する場合は、次に行うフォーカスオン処理時に光ピックアップ6が光ディスク100のリム領域101に衝突しないように、光ピックアップ6を光ディスク100の内周側に移動させる(ステップ509)。一方、ステップ508において、光ピックアップがリム領域およびその近傍に対向する領域に位置しないと判定されたときは、そのまま、ステップ505に進むことになる。リム領域の検出範囲は、光ディスク100上における実際のリム領域101の径方向サイズ(幅)に対して、移送台11の送り分解能によって決まるマージンを付加してもよい。
本実施形態の光ディスク装置によれば、フォーカス外れが発生した時に「再生」または「シーク」のいずれの動作を行っていたかに応じて、適切な処理を行うことにより、フォーカスサーボの再開を行うときに光ピックアップ6が光ディスク100に衝突することを回避することができる。
なお、各実施形態におけるDVD用の対物レンズ9は、BD用の対物レンズ22に比べて焦点距離が長いため、図12に示されるように、BD用の対物レンズ22よりも光ディスク100から離れた位置に配置されているが、これらの対物レンズ9、22は、アクチュエータ240によって一体的に移動する。このため、前述したように、対物レンズ9を用いてDVDに対するデータの記録/再生を行っているときにも、ワーキングディスタンスはBD側の対物レンズ22またはレンズ保護部230によって制限され、その対物レンズ22またはレンズ保護部230が光ディスク100の突出部102に衝突する可能性がある。したがって、光ピックアップがDVD用の対物レンズ9とBD用の対物レンズ22の両方を備える場合は、DVD用の光ディスクに対する動作を実行しているときも、本発明によるリム回避処理を行うことが有効である。
(実施形態4)
次に、図14を参照しながら、本発明による光ディスク装置の第4の実施形態を説明する。図14は、本実施形態の光ディスク装置の構成を示している。図14の光ディスク装置で、図8と同一の構成部は、同一符号を付与して説明を省略する。
本実施形態の光ディスク装置は、80mmアダプタ検出部31を備えている点が前述の実施形態における光ディスク装置と異なる点である。
80mmアダプタ検出部31は、光ディスク装置のロードされた光ディスク100が「80mmアダプタの装着された直径80mmディスク」か「直径120mmディスク」かの判別を行う。
次に図15を参照し、80mmアダプタ検出部31による判別手順を説明する。この判別のための動作は、好ましくは、光ディスク100の起動処理を行う際に実施される。
光ディスク100の直径が80mmか120mmかは、光ディスク100上のディスク情報領域に記載されている。このようなディスク情報は、光ディスク100の管理領域に記録されている。光ディスク100が例えばBDの場合、ディスク情報は「PIC領域」に記録されている。
なお、光ディスク100の直径が80mmか120mmかの判別は、ディスクモータ2が一定の回転数になるまでの経過時間を測定し、その大小によって決定することもできる。ディスクモータ2に同一電圧を印加した場合において、光ディスク100が所定回転数に達するまでに要する時間は、イナーシャの値(ディスク半径の4乗の定数倍)に比例する。このため、直径120mmディスクと直径80mmディスクとが、所定回転数に達するまでの時間の比は81:16となる。実際には、ディスクモータ2のイナーシャも存在し、例えば90:25の比となる。このため、直径120mmディスクの回転速度が所定の値(例えば1000rpm)になるまでの時間が9.0秒だとすると、直径80mmディスクの回転速度が所定の値になるまでの時間は2.5秒となる。従って、光ディスク100の回転速度が所定の値になるまでの時間を基準値(例えば5.0秒)と比較し、この基準値よりも短ければ、光ディスク100を直径80mmディスクであると決定できる。
以下、図15を参照して、本実施形態の動作を説明する。
まず、ステップ601において、ディスクモータ2を回転させる。ステップ602では、ディスクモータ2の回転数が所定の値(例えば1000rpm)になるまでの時間を測定する。ステップ603では、ステップ602で取得したディスクモータ2の回転数が所定の値になるまでの時間が5.0秒以下か否かを判定する。5.0秒以下ならば、光ディスク100が80mmディスクアダプタの付いていない80mmディスクと判定し、5.0秒を超えるならば、ステップ604に進む。
ステップ604では、光ディスク100に記録されているディスク情報を取得し、ステップ605では、ステップ604で取得したディスク情報に基づいて120mmディスクか80mmディスクかを判断する。ディスク情報が「80mmディスク」であることを示す場合は、光ディスク100を、80mmディスクアダプタがセットされた直径80mmディスクと判定する。一方、ディスク情報が「120mmディスク」であることを示す場合、光ディスク100を直径120mmディスクと判定することができる。
本実施形態によれば、80mmアダプタ検出部31によって80mmアダプタを検出することができる。本実施形態では、80mmアダプタを検出した場合、図4に示すアダプタ150の突出部152を迂回するように、光ピックアップ6の退避動作を行う。具体的には、前述した各実施形態におけるリム領域101の位置および範囲を、直径80mmディスクのリム領域101の位置および範囲に置き換えるとともに、退避量を80mmアダプタの突出量を考慮した値(例えば0.9mm)に設定する。なお、80mmアダプタの突出部を避ける場合の退避量は、直径120mmの光ディスク100のリム102を避けるために必要な退避量よりも大きい。
80mmアダプタが検出されなかった場合の退避量は、80mmディスクにおけるリム102の突出量を基準に、直径120mmの光ディスクの場合の退避量と同程度(例えば0.5mm)に設定することができる。この場合、80mmアダプタがある場合に比べて退避量を小さくすることができるため、フォーカスオン処理に要する時間を短縮することができる。
なお、本実施形態では、80mmアダプタの有無を検出しているが、直径80mmディスクがセットされていることがわかった場合は、アダプタの有無にかかわらず、アダプタの突出量を考量した迂回動作を一律に行うようにしてもよい。これにより、アダプタ検出のための構成や処理を省略することが可能になる。