JP4365624B2 - 皮膚貼付用粘着シート及び救急絆創膏 - Google Patents

皮膚貼付用粘着シート及び救急絆創膏 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン樹脂との樹脂組成物からなる基材フィルム上に粘着剤層を設けてなる皮膚貼付用粘着シートとその利用に関する。詳しくは、本発明は、皮膚貼付用粘着シートに求められる重要な特性、即ち、柔軟で皮膚によく追従して、貼付時の感覚(貼付感)にすぐれながら、実用上、十分な強度を有すること、貼付時に衣服等と擦れて、剥がれることがないように、表面の滑り性にすぐれること、剥離紙付きの粘着シートからその剥離紙を剥がすときの応力によって、粘着シートが著しくカール(弯曲)しないこと等の物性をすべて備えている皮膚貼付用粘着シートとその利用、例えば、救急絆創膏としての利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、柔軟な基材フィルム上に粘着剤層を設けてなる皮膚貼付用粘着シートは、ドレッシング、巻絆等として用いられているほか、粘着剤層の表面の中央域にガーゼ等の吸液性パッドを設けることによって、救急絆創膏として、一般家庭において、広く用いられている。更に、種々の薬剤を含有させた粘着剤からなる層を基材フィルム上に設けた粘着性皮膚貼付薬シートは、種々の医療用途に用いられている。
【0003】
このような皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとしては、従来、柔軟で皮膚によく追従して、貼付感がよいほか、加工性や印刷性にすぐれる等の点から、所謂軟質塩化ビニル樹脂からなるフィルムが広く用いられてきている。
【0004】
しかし、軟質塩化ビニル樹脂は、これに柔軟性を付与するために、ポリ塩化ビニルにジオクチルフタレート等のような可塑剤が多量に配合されており、このような可塑剤が粘着剤層に移行し、粘着剤の凝集力を低下させて、粘着力の低下を引き起こしたり、貼付した皮膚面に所謂糊残りを生じる等の問題があった。
【0005】
また、軟質塩化ビニル樹脂は、感温性が大きく、雰囲気温度によって物性が変化することが知られており、皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして用いた場合、冬場や水仕事の際に低い温度に曝されると、硬くなって柔軟性が低下し、貼付感が悪くなり、或いは皮膚への追従性が低下して、皮膚からの剥がれや浮きを生じることがある。手指に貼付していた場合に、基材フィルムの硬化が程度が著しいときは、洗顔時に顔の皮膚を傷つけるおそれさえある。
【0006】
更に、近年においては、環境への影響に配慮して、種々の塩化ビニル樹脂製品について、非塩素材料への代替化が各分野で進められており、経済性や安全性を考慮して、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が代替材料の候補として重要視されている。
【0007】
これらの事情の下に、これまでにも、皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムの分野においても、軟質塩化ビニル樹脂からなる基材フィルムの代替として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる基材フィルムが検討されてきている。
【0008】
例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる基材フィルムに従来の軟質塩化ビニル樹脂からなる基材フィルムと同等の柔軟性を付与するために、基材フィルムの厚さを薄くし、更に、伸縮性を付与するために、エラストマー成分を配合することが試みられている。しかし、このようにして得られる基材フィルムは、機械的強度が十分でなく、特に、粘着シートを皮膚に貼付している間の皮膚の蒸れを低減するために、粘着シートに直径1mm程度の貫通孔を多数穿った場合に、皮膚から剥離する際に破断することさえあった。
【0009】
そこで、基材フィルムの素材として、ある範囲の特性、即ち、ある範囲の重量平均分子量(Mw)、分子量分布、メルトフローレート(MFR)及び酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いてなる粘着シート用基材フィルムが提案されている(特許文献1参照)。しかし、これに用いられているエチレン−酢酸ビニル共重合体は、カレンダー加工時の溶融粘度が低いので、カレンダー加工によるフィルムの製造において、ロールからフィルムを引き剥がす際にフィルムに垂れや破断等の不具合が生じやすく、特に、厚み100μm以下の薄手のフィルムをカレンダー加工にて製造することは、非常に困難であった。他方、フィルムの厚みを厚くすれば、このような問題は、幾分、回避されるが、しかし、フィルムの製造コストが徒に上昇する。
【0010】
また、カレンダー加工によって得られたフィルムをロール状に巻き取った場合、フィルムがブロッキングするために、粘着シートの製造時にフィルムをロールから繰り出す、即ち、開反するのに力を必要とし、フィルムにテンションが加わり、かくして、このようなフィルムを用いて得られた粘着シートは、その残留応力のために、収縮やカールを引き起し、粘着シートをロール状に巻き取った場合には、所謂巻締まりや「たけのこ」等の不具合を生じることがある。
【0011】
更に、従来より知られているエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルムは、表面の滑り性が劣るので、皮膚貼付用粘着シートや絆創膏用基材フィルムとして用いた場合に、衣類等と擦れて容易に剥がれる欠点があった。
【0012】
他方、適度の溶融粘度を有するポリオレフィン樹脂、特に、所謂リアクターTPO樹脂(オレフィン系熱可塑性エラストマー)が、従来、知られており、このようなポリオレフィン樹脂のカレンダー加工によるフィルムも既に知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなリアクターTPO樹脂は、カレンダー加工性はすぐれているが、しかし、得られたフィルムを皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして用いた場合、その粘着シートから離型紙を剥がす際の応力によって容易にフィルムがカールする所謂カール性が著しいので、皮膚に貼付し辛く、場合によっては、皮膚に密着して貼り付けることができない等の問題があった。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−206869号公報
【0014】
【特許文献2】
特開2001−131383号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上述した軟質塩化ビニル樹脂からなる粘着シート用基材フィルムの代替品における問題を解決するために鋭意研究した結果、ある範囲の特性を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン樹脂とからなる樹脂組成物は、カレンダー加工によって安定して薄手のフィルムを与え、そして、そのようなフィルムを皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして用いた場合には、柔軟で、皮膚によく追従するので、皮膚に貼り付けたときの貼付感にすぐれ、しかも、フィルムの表面の滑り性にすぐれており、また、著しいカール性もなく、従って、救急絆創膏を含む皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして好適に用いることができることを見出して、本発明に至ったものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、重量平均分子量が1×105 を越えて、1×106 以下の範囲にあり、メルトフローレートが1.0g/10分以下であり、酢酸ビニル含量が28重量%を越えて、35重量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体20〜80重量%と、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物から選ばれ、メルトフローレートが0.3〜4.0g/10分の範囲にある少なくとも1種のポリオレフィン樹脂80〜20重量%との樹脂組成物からなる基材フィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層が設けられていることを特徴とする皮膚貼付用粘着シートが提供される。
【0017】
また、本発明によれば、上記皮膚貼付用粘着シートの粘着剤層の表面の中央域に吸液性パッドを設けてなる救急絆創膏が提供される。
【0018】
更に、本発明によれば、上記樹脂組成物をカレンダー加工にてフィルムに成形し、かくして、得られた基材フィルム上に粘着剤層を設けることからなる上記皮膚貼付用粘着シートの製造方法が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明による皮膚貼付用粘着シートは、基材フィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層が設けられてなるものであって、本発明によれば、上記基材フィルムは、重量平均分子量(Mw)が1×105 を越えて、1×106 以下の範囲にあり、メルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以下であり、酢酸ビニル含量が28重量%を越えて、35重量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体20〜80重量%と、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物から選ばれ、メルトフローレートが0.3〜4.0g/10分の範囲にある少なくとも1種のポリオレフィン80〜20重量%との樹脂組成物からなる。
【0020】
本発明において、メルトフローレートは、JIS K−6730に準拠して測定するものとする。
【0021】
用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体が1×105 以下の重量平均分子量を有するときは、得られるフィルムが機械的強度において実用上、十分でなく、特に、厚さ100μm以下の薄手のフィルムを基材フィルムとして、皮膚貼付用粘着シートに用いた場合には、得られた皮膚貼付用粘着シートを皮膚から剥がすときに破断する等の不具合が生じやすい。しかし、エチレン−酢酸ビニル共重合体として、重量平均分子量が1×105 を越えるものを用いても、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量が28重量%以下であるときは、得られるフィルムの柔軟性が劣り、皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして用いるに適しない。
【0022】
他方、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量が35重量%を越えるときは、得られるフィルムをロール状に巻き取った場合に非常にブロッキングしやすい。そこで、フィルムをこのようなロールから開反し、これを基材フィルムとして用いれば、フィルムがロールから円滑に繰り出されないために、フィルムにテンションが加わり、その結果、得られた粘着シートは、残留応力のために収縮やカール等が生じやすく、更に、このような粘着シートをロール状に巻き取った場合には、前述したように、所謂巻き締まりや「たけのこ」等の不具合を生じることがある。そのうえ、得られるフィルムは、表面滑り性においても劣ることとなる。
【0023】
しかし、用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量が1×106 を越えるときは、得られるフィルムの表面が荒れて、均一なフィルムを得ることができない。
【0024】
更に、用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが1.0g/10分を越えるときは、そのような共重合体は、溶融粘度が低いために、カレンダー加工に際して、樹脂がロールに付着しやすく、特に、カレンダー装置の最終ロールからフィルムを引き取ることができない所謂ロール取られが起こったり、また、カレンダーロールからの引き取りに際して、ドローダウンや破断等の不都合が生じるので、表面が平滑で欠陥のないフィルムを得ることが困難である。しかし、用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが余りに小さいときも、得られるフィルムの表面が荒れて、均一なフィルムを得ることができない。例えば、意匠性を高めるために、通常、フィルムに印刷が施されるが、フィルムの表面が荒れていると、印刷のかすれ等を生じるので、表面の荒れたフィルムは、皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして用いるに適しない。本発明によれば、用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、0.05g/10分以上のメルトフローレートを有することが好ましい。
【0025】
従って、本発明によれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、重量平均分子量(Mw)が1×105 を越えて、1×106 以下の範囲にあり、メルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以下であり、好ましくは、0.05〜0.5g/10分の範囲であり、酢酸ビニル含量が28重量%を越えて、35重量%以下であるものが用いられる。特に、本発明によれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量は30〜33重量%の範囲が好ましい。
【0026】
しかし、このようなエチレン−酢酸ビニル共重合体も、単独では、これをカレンダー加工にてフィルムとしても、得られるフィルムは、表面滑り性が悪く、従って、そのようなフィルムを基材フィルムとして得られる粘着性皮膚貼付薬シートは、これを皮膚に貼付したとき、衣類との摩擦によって容易に皮膚から剥がれやすい。
【0027】
従って、本発明によれば、上述したような特性を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体を80重量%以下の範囲で用い、これにポリオレフィン樹脂を組合わせることによって、カレンダー加工性にすぐれる樹脂組成物を得ることができるのみならず、このような樹脂組成物のカレンダー加工によって、救急絆創膏を含む皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして好適に用いることができる基材フィルムを得ることができる。
【0028】
但し、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン樹脂とからなる樹脂組成物であっても、エチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が20重量%よりも少ないときは、得られるフィルムを皮膚貼付用粘着シートの基材フィルムとして用いた場合、粘着シートから剥離紙を引き剥がした際のカール性が著しく、皮膚貼付用粘着シートを皮膚に貼付するときの操作性を悪化させるので、粘着シート用基材フィルムとしての適性に欠けることとなる。特に、本発明によれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン樹脂とからなる樹脂組成物において、エチレン−酢酸ビニル共重合体の割合は40〜70重量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
本発明において、上述したようなエチレン−酢酸ビニル共重合体と組合わせて用いるポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物から選ばれ、メルトフローレートが0.3〜4.0g/10分の範囲にある少なくとも1種である。なかでも、本発明によれば、得られるフィルムのブロッキング性を著しく軽減し得る点から、ポリオレフィン樹脂としては、メタロセンポリエチレンとして知られている線状低密度ポリエチレンが好ましい。特に、本発明によれば、メタロセンポリエチレンのなかでも、メルトフローレートが2.0〜3.0/10分の範囲にあるものが好ましい。
【0030】
しかし、本発明によれば、メタロセンポリエチレン以外にも、例えば、メルトフローレートが上記0.4〜4.0g/10分、好ましくは、1.0〜3.0g/10分の範囲にあるポリプロピレンやリアクターTPOもポリオレフィン樹脂として用いることができる。
【0031】
本発明において用いることができるメタロセンポリエチレンやリアクターTPOは、既によく知られている。メタロセンポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて、エチレンを重合させて得られる線状低密度ポリエチレン樹脂であり、従来のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られる低密度ポリエチレン樹脂に比べて、分子量分布や組成分布が揃っており、べたつき、衝撃強度等が大幅に改善されている。日本ポリケム(株)製の「カーネル」等を市販品として入手することができる。
【0032】
また、リアクターTPOは、融点が100℃以上であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)の一つであって、通常、ポリプロピレンと(場合によっては、ポリブテンと、)エチレン−プロピレン共重合体成分とを有するブロック又はグラフト共重合体である。このようなリアクターTPOとしては、モンテル社の「キャタロイ」、(株)トクヤマの「PER」、チッソ(株)の「ニューコン」等が知られている。
【0033】
このように、上述したエチレン−酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン樹脂とからなる樹脂組成物は、カレンダー加工性にすぐれており、カレンダー加工によって容易にフィルムとすることができる。また、必要に応じて、このカレンダー加工時にエンボスを施して表面性状を任意に、即ち、例えば、梨子地等の平滑な表面から絹目等の深い絞りまで調節することができる。
【0034】
本発明による皮膚貼付用粘着シートにおいて用いられる基材フィルムは、皮膚に貼付したとき、違和感なく、よく追従し、柔軟でありながら、皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして必要な強度を有するように、10%モジュラスが5.0N/19mm幅以下であることが好ましい。この10%モジュラスは、小さければ小さい程、皮膚への貼付感にすぐれる。しかし、10%モジュラスは、一般に、破断強度に比例するので、本発明によれば、得られるフィルムが粘着シート用基材フィルムとして実用的な強度を有するように、破断強度として、20N/19mm幅以上を有せしめるのが好ましい。
【0035】
また、本発明による皮膚貼付用粘着シートにおいて用いられる基材フィルムは、その厚さは、救急絆創膏を含む皮膚貼付用粘着シートのための基材フィルムとして、上記と同様に、皮膚に違和感なく、よく追従し、柔軟であって、好適に用いることができるように、通常、20〜200μmの範囲である。
【0036】
更に、本発明による皮膚貼付用粘着シートにおいて用いられる基材フィルムは、これを用いて得られる粘着性皮膚貼付薬シートがこれを皮膚に貼付したとき、衣類との摩擦によって容易に皮膚から剥がれたり、また、末端がめくれたりすることがないように、表面滑り性にすぐれることが必要であり、そのためには、荷重200g、試験速度100mm/分の条件下に測定した動摩擦係数が1.5N以下であることが好ましく、特に、0.3〜1.0Nの範囲であることが好ましい。
【0037】
本発明による皮膚貼付用粘着シートにおいて用いられる基材フィルムは、それ自体で、粘着剤に対する接着力、即ち、投錨性にすぐれているが、基材フィルム上に粘着剤層を形成するに先立って、基材フィルムの表面をコロナ放電処理したり、既に知られている種々のプライマーを塗布したりして、基材フィルムに対する粘着剤の投錨効果を高めることができる。しかし、好ましくは、コロナ放電処理することによって、その処理面にプライマー処理を要せずして、基材フィルム上に粘着剤層を十分な投錨力をもたせて形成することができる。
【0038】
本発明による皮膚貼付用粘着シートは、上述したような基材フィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層を設けることによって得ることができる。上記粘着剤としては、従来より知られているアクリル系粘着剤や天然ゴム系粘着剤のほか、合成ゴム系、シリコーン系、ビニルエーテル系の粘着剤等、皮膚刺激性が少なく、医療用粘着剤として用いることができるものであれば、特に、限定されることなく、任意のものが用いられる。しかしながら、本発明においては、種々の粘着剤のなかでも、皮膚に対するアレルギー性が少ない等の皮膚病理学的見地から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0039】
なかでも、本発明によれば、ガラス転移点の低い重合体を与える2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等、アルキル基の炭素数が4〜12であるアクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物とを乳化共重合して得られるエマルジョン系のアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0040】
しかしながら、本発明によれば、皮膚貼付用の粘着剤は、上記エマルジョン系のものに限らず、有機溶剤系、ホットメルト系等、任意の形態で用いられる。また、これらの粘着剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上の複数を併用してもよい。
【0041】
粘着剤層の厚みは、皮膚に対する接着性の点から、通常、20〜80μmの範囲であり、好ましくは、30〜60μmの範囲である。
【0042】
基材フィルム上に粘着剤層を設けるには、基材フィルム上に粘着剤の溶液を直接、塗布し、乾燥させ、また、ホットメルト粘着剤を溶融させ、直接、押出機にて基材フィルム上に塗布してもよい。しかし、基材フィルムの不必要な伸びや曲がり(カール)を防止するためには、適宜の方法にて剥離紙の片面に予め粘着剤層を形成し、この粘着剤層の上に基材フィルムを貼り合わせて、上記粘着剤層を基材フィルムに転写する所謂転写法によるのが好ましい。
【0043】
本発明による皮膚貼付用粘着シートは、ドレッシングや巻絆等として用いることができるほか、粘着剤層の表面の中央域にガーゼ等の布帛やスポンジパッド等の創傷部を保護するための吸液性パッドを設けることによって、救急絆創膏とすることができる。
【0044】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。また、表中のポリオレフィン樹脂は次のような特性を有するものであり、また、以下の実施例と表中の樹脂組成物において、用いた樹脂の部数は重量部数である。
【0045】
ウルトラセンYX11:
東ソー(株)製エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量32重量%、Mw=1.26×105、MFR=0.25g/10分
ウルトラセン635:
東ソー(株)製エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量25重量%、Mw=6.3×104、MFR=5.7g/10分
ウルトラセン751:
東ソー(株)製エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量28重量%、Mw=5.5×104、MFR=2.4g/10分
キャタロイKS353P:
モンテル社製リアクターTPO、MFR=0.45g/10分
カーネルKF282:
日本ポリケム(株)製メタロセンポリエチレン樹脂、MFR=2.2g/10分
EG7F:
日本ポリケム(株)製ポリプロピレン樹脂、MFR=1.3g/10分
【0046】
実施例1
(カレンダー加工によるフィルムの製造とカレンダー加工性の評価)
表1に示す組成を有する樹脂組成物を表面温度170℃の2本ロールを用いて、厚み100μmのフィルムに成形加工した。この加工に際して、離型性と引き取り性に基づいて、樹脂組成物のカレンダー加工性について調べた。即ち、離型性は、ロールからフィルムを引き剥がす際に、樹脂組成物のロール離れがよいときを○とし、ロールに樹脂とられがあるときを×とした。また、引き取り性は、ロールからフィルムを引き剥がす際に、不具合なしに引き取ることができるときを○とし、フィルムをロールから引き剥がすときに垂れや破断が生じたときを×とした。
【0047】
(基材フィルムの製造とブロッキング性の評価)
次に、上記離型性と引き取り性に基づくカレンダー加工性を有する樹脂組成物を密閉式混合機で混練し、ストレーナを通過させた後、ロール表面温度180℃の逆L型4本カレンダー装置を用いて、厚み70μmのフィルムを製造し、これをロールに巻き取った後、このフィルムをロールから開反する際のブロッキングの有無を調べた。ブロッキングがみられないときを○、ブロッキングがみられたときを×とした。
【0048】
(粘着シートの製造とその特性の評価)
窒素雰囲気下にアクリル酸2重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル93重量部及びメタクリル酸メチル10重量部を乳化共重合して、エマルジョン型アクリル系共重合体を得た。片面にシリコーン処理を施した剥離紙のその処理面に乾燥後の厚さが40μmになるように上記エマルジョン型アクリル系共重合体を塗布し、120℃で3分乾燥して、粘着剤層を剥離紙上に形成した。
【0049】
上記カレンダー加工によって得た厚さ70μmのフィルムの片面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に上記剥離紙上の粘着剤層を貼り合わせて、剥離紙付きの粘着シートを作製した。
【0050】
このようにして得られた粘着シートについて、10%モジュラス、貼付感、動摩擦係数、表面の滑り性、カール性及び引き剥がし強度を以下の方法によって評価した。結果を表1に示す。
【0051】
10%モジュラス
得られた粘着シートを幅19mm、長さ100mmに裁断し、温度23±2℃、相対湿度65±15%の雰囲気下において、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件下、10%伸長時の荷重を10%モジュラスとした。この10%モジュラスが5.0N/19mm幅以下であるとき、粘着シートは柔軟であると判定する。
【0052】
貼付感
得られた粘着シートを幅19mm、長さ72mmに裁断し、被験者の第二指、第三指及び第四指の第二関節にオーバーラップするように巻き付け、関節を屈伸させたときの突っ張り感の度合いで評価した。突っ張り感がないときを○、若干あるときを△、強いときを×とした。
【0053】
動摩擦係数
温度23±2℃、相対湿度65±15%の雰囲気下において、得られた粘着シートの基材フィルムの表面に大きさ63mm四方、重量200gのステンレス製の滑り片を載せて、引張速度100mm/分で引っ張って、滑り片が動き出し、値が安定したときの荷重を動摩擦係数とした。動摩擦係数が1.5N以下であるとき、粘着シートはその基材フィルム面の滑り性にすぐれると判定する。
【0054】
滑り性
得られた粘着シートを幅19mm、長さ72mmに裁断し、被験者の膝に粘着シートの長手方向が横方向(膝の内側から外側)になるように貼付し、24時間後の衣類との擦れによる粘着シートの剥がれ具合を観察して評価した。粘着シートの剥がれがないときを○、末端に若干のめくれが発生したときを△、末端が剥がれたときを×とした。
【0055】
カール性
得られた粘着シートを幅19mm、長さ72mmに裁断し、温度23±2℃、相対湿度65±15%の雰囲気下において、粘着シートから剥離紙を引き剥がしたときのカールの度合いで評価した。カールがないときを○、カールがみられたが、実用上問題ないときを△、カールが著しく、皮膚に貼付し難いときを×とした。
【0056】
引き剥がし強度
得られた粘着シートを幅19mm、長さ72mmに裁断し、図1に示すような配列にて直径1mmの貫通孔を穿った。この粘着シートを被験者の第二指、第三指及び第四指の第二関節にオーバーラップするように巻き付けて貼付し、1時間の後、粘着シートを引き剥がすときの粘着シートの剥がれ具合で評価した。即ち、粘着シートが何ら支障なく剥がれたときを○、粘着シートは著しく伸びたが、破断なしに剥がれたときを△、粘着シートが破断したときを×とした。
【0057】
実施例2〜8
それぞれ表1に示す樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物のカレンダー加工性を調べた後、同様にして、厚さ70μmのフィルムにカレンダー加工し、得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、ブロッキングの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0058】
このようにして得られたフィルムを基材フィルムとして用いて、実施例1と同様にして、粘着シートを作製し、このようにして得られた粘着シートについて、実施例1におけると同様にして、10%モジュラス、貼付感、動摩擦係数、表面の滑り性、カール性及び引き剥がし強度を調べた。結果を表1に示す。
【0059】
比較例1〜12
それぞれ表2及び表3に示す組成を有する樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、カレンダー加工によって厚さ100μmのフィルムを製造する際の樹脂組成物のカレンダー加工性を調べ、カレンダー加工性を有する樹脂組成物を用いて、同様に、厚み70μmのフィルムにカレンダー成形し、得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、ブロッキングの有無を調べた。結果を表2及び表3に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0004365624
【0061】
【表2】
Figure 0004365624
【0062】
【表3】
Figure 0004365624
【0063】
比較例1〜3及び8はいずれも、本発明で規定するエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いるが、ポリオレフィン樹脂との組成物において、その割合が多すぎるので、その樹脂組成物はカレンダー性にはすぐれるものの、得られるフィルムがブロッキング性において著しい。反対に、比較例4及び5は、本発明で規定するエチレン−酢酸ビニル共重合体に対して、メタロセンポリエチレン樹脂及びリアクターTPOの割合がそれぞれ多すぎる結果、樹脂組成物のカレンダー加工性が悪く、目的とするフィルムを得ることができない。
【0064】
比較例6は、本発明で規定するエチレン−酢酸ビニル共重合体に対して、ポリプロピレン樹脂の割合が多すぎるので、得られるフィルムは、滑り性にはすぐれるが、硬く、皮膚への貼付感が悪い。比較例9及び10は、用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体が本発明で規定する重量平均分子量やメルトフローレートをもたず、しかも、ポリオレフィン樹脂と組合わせていないので、カレンダー加工によってフィルムを得ることができない。
【0065】
比較例11及び12は、本発明で規定するエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いずに、本発明で規定するポリオレフィン樹脂のみを用いて、カレンダー加工したものであって、フィルムを得ることはできるが、しかし、得られるフィルムはカール性が著しい。
【0066】
比較例7は、本発明で規定する配合割合にてエチレン−酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン樹脂とを組合わせたものであるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量が本発明で規定する値よりも小さく、メルトフローレートが高いために、カレンダー加工時の引き取り性が悪く、目的とするフィルムを得ることができない。
【0067】
これらの比較例に対して、本発明によれば、樹脂組成物はカレンダー加工性にすぐれ、しかも、得られるフィルムは、柔軟で、皮膚によく追従するので、そのようなフィルムを基材フィルムとして用いて得られる粘着シートは、後述するように、皮膚に貼付したときに違和感がなく、貼付感にすぐれ、しかも、フィルムの表面の滑り性にすぐれており、また、カール性もない。
【0068】
即ち、本発明による皮膚貼付用粘着シートは、すべての評価において、すぐれた結果を示しており、柔軟でありながら、実用上、十分な強度を有すると共に、表面滑り性やカール性にもすぐれており、皮膚貼付用粘着シートとしてバランスのとれた特性を示しており、特に、救急絆創膏として用いる皮膚貼付用粘着シートとして好適である。
【0069】
比較例1〜3による粘着シートは、本発明による粘着シートと比較して明らかなように、エチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が本発明で規定するよりも多いポリオレフィン樹脂との樹脂組成物からなる基材フィルムを用いて得られたものであるので、表面(即ち、フィルム面)の動摩擦係数が高く、滑り性に劣っている。反対に、比較例4〜6による粘着シートは、本発明による粘着シートと比較して明らかなように、エチレン−酢酸ビニル共重合体の割合が本発明で規定するよりも少ないポリオレフィン樹脂との樹脂組成物からなる基材フィルムを用いて得られたものであるので、カール性が著しく、貼付感も、本発明による粘着シートに比べて劣っている。
【0070】
比較例8による粘着シートは、本発明で規定するエチレン−酢酸ビニル共重合体単独をフィルムとし、これを基材フィルムとして用いて得られたものであって、滑り性に劣る。比較例11及び12はいずれも、ポリオレフィン樹脂単独からなる基材フィルムとして用いて得られたものであって、カール性が著しい。
【0071】
これらに対して、本発明による粘着シートはいずれも、柔軟であって、貼付感にもすぐれながら、実用上、十分な強度を有し、更に、表面の滑り性にすぐれ、カールもなく、かくして、皮膚貼付用粘着シートとして好適に用いることができる。
【0072】
【発明の効果】
以上のように、本発明による皮膚貼付用粘着シートは、その基材フィルムとして、ある範囲の特性を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体とポリオレフィン樹脂との樹脂組成物からなるものであり、実用上、必要な柔軟性と強度を併せ有することは勿論、皮膚に貼付したときに皮膚によくなじんで、追従するので、違和感がなく、貼付感にすぐれ、また、表面滑り性にすぐれるので、衣類等に擦れても容易に皮膚から剥離しない。
【0073】
更に、上記樹脂組成物は、カレンダー加工において、ロールからの離型性や引き取り性、即ち、カレンダー加工性にすぐれており、薄手のフィルムでも安定して製造することができ、しかも、このようにして得られたフィルムを粘着シート用基材フィルムとして、例えば、これに粘着剤層を塗工するために、フィルムをそのロールから開反する際にブロッキングがなく、また、基材フィルム上に設けた粘着剤層から剥離紙を剥離してもカールすることがない。かくして、本発明による皮膚貼付用粘着シートは、救急絆創膏を含む皮膚貼付用粘着シートとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】引き剥がし強度の測定に用いた、多数の貫通孔を穿った粘着シートを示す。

Claims (11)

  1. 重量平均分子量が1×105 を越えて、1×106 以下の範囲にあり、メルトフローレートが1.0g/10分以下であり、酢酸ビニル含量が28重量%を越えて、35重量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体20〜80重量%と、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びこれらの混合物から選ばれ、メルトフローレートが0.3〜4.0g/10分の範囲にある少なくとも1種のポリオレフィン樹脂80〜20重量%との樹脂組成物からなる基材フィルム上に皮膚貼付用の粘着剤層が設けられていることを特徴とする皮膚貼付用粘着シート。
  2. 10%モジュラスが5.0N/19mm幅以下である請求項1に記載の皮膚貼付用粘着シート。
  3. 荷重200g、試験速度100mm/分の条件下に測定した動摩擦係数が1.5N以下である請求項1に記載の皮膚貼付用粘着シート。
  4. 厚さが20〜200μmである請求項1に記載の皮膚貼付用粘着シート。
  5. 粘着剤がアクリル系粘着剤である請求項1に記載の皮膚貼付用粘着シート。
  6. アクリル系粘着剤が(a)アルキル基の炭素数が4〜12であるアクリル酸アルキルエステルと、(b)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物とを共重合してなる共重合体からなる請求項5に記載の皮膚貼付用粘着シート。
  7. 請求項1から6のいずれか記載の皮膚貼付用粘着シートの粘着剤層の表面の中央域に吸液性パッドを設けてなる救急絆創膏。
  8. 請求項1に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法であって、樹脂組成物をカレンダー加工にてフィルムに成形し、かくして、得られた基材フィルム上に粘着剤層を設けることを特徴とする皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
  9. 厚さが20〜200μmである請求項8に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
  10. 粘着剤がアクリル系粘着剤である請求項8に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
  11. アクリル系粘着剤が(a)アルキル基の炭素数が4〜12であるアクリル酸アルキルエステルと、(b)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物とを共重合してなる共重合体からなる請求項10に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
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