JP4365502B2 - 炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法 - Google Patents

炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョップドストランドの生産性のよい連続製造方法に関するものである。更に詳しくは、焼成炉より排出して得られた炭素繊維ストランドの製造工程に直結したチョップドストランドの連続製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
炭素繊維チョップドストランドは、主に熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化材に使用されている。例えば、炭素繊維チョップドストランド強化熱可塑性樹脂は、射出成形や押出成形が可能であって、機械特性、摺動特性、電気特性、寸法安定等の特性の付与に寄与している。
【0003】
また、炭素繊維チョップドストランドは、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化材としても用いられる。このような複合材料としては、SMC、BMC等が挙げられ、ハンドレイアップ等にも利用されている。
【0004】
炭素繊維チョップドストランドは、樹脂と混合して使用する必要性から、その特性として、粘着性の無い、しかも安息角が小さく、集束性がよく、嵩密度の高いことが望まれている。このためチョップドストランドは弱い撚りの掛かった状態とし、嵩密度が高い、所謂ニードルタイプが好まれる。
【0005】
炭素繊維チョップドストランド(以下単にチョップドストランドということがある)の形態は、炭素繊維ストランドの繊維束を1〜10mmの所定長さに切断した、直径0.5〜5mm程度の束状が一般的である。このような形態の炭素繊維チョップドストランドは、射出成形或いは押出成形時、若しくはコンパウンド製造時、ホッパーでの落ち込みが良く、マトリックス樹脂と均一に混合を行うのに適している。
【0006】
従来、炭素繊維チョップドストランドの原料となる炭素繊維ストランドの製造において、耐炎化と炭素化工程での焼成の際の熱効率を良くすること、炭素繊維ストランド内外での均一処理を行うこと、炭素繊維ストランドを構成するフィラメント相互間の膠着を防止すること、単一ボビンへの巻取り長さを長くして結び目の増加を防ぐこと、等の要求がなされている。
【0007】
このような要求のために、各ストランドは、フィラメント数にして3,000本(3K)乃至50,000本(50K)単位にて、汎用的な集束剤にて集束されて、ボビン等に巻かれて供給・製品化されている。このような工程を採用された捲回状態の炭素繊維ストランドは、長短両用に供することが可能で、汎用性を具有していることから、工業的には広く採用されている。
【0008】
従来の炭素繊維チョップドストランドの製造方法としては、ボビンなどに巻かれた炭素繊維ストランドを複数個、例えば、数百〜千個前後を用意し、各ボビンから巻き芯の軸方向に引き出しながら(解舒工程)、炭素繊維ストランド製造時に既に付着させた汎用のサイズ剤を除去した後に、再度、チョップドストランドの性能に好ましいサイズ剤を適用するか、或いは炭素繊維ストランド製造時に付着されている汎用のサイズ剤の上にさらにチョップドストランド用のサイズ剤を適用することにより集束処理、必要に応じて加撚することにより集束処理し(集束工程)、次いで、数百〜千個前後の炭素繊維ストランドを束にして引き揃え、長さ1〜10mmとなるように切断することにより(切断工程)、ストランド毎の束、即ちチョップドストランドとする方法が一般的である。
【0009】
このような集束剤の付与された炭素繊維チョップドストランドは、集束性がよく嵩密度が高いことで知られている(例えば、特開昭63−317321号公報、特開平2−203901号公報、特開平2−129229号公報、特開平2−64133号公報、特開昭60−26037号公報、特開昭58−126375号公報、特公平5−26642号公報、特公平5−26642号公報等)。
【0010】
なお、従来のこれらの炭素繊維チョップドストランドを製造する際の切断工程前のサイジング剤を付与した後の炭素繊維ストランドは、前記したように用途に応じ、切断せずに長繊維状態(ストランド状態)で使用する場合や、切断してチョップドストランドとして使用する場合等に対応できる利点がある。
【0011】
さらに、炭素繊維ストランドとして、近時フィラメント数5万本を越えるストランド単位で構成される所謂ラージトウと称される繊維束が使用されているが、このようなラージトウを使用して切断したチョップドストランドは開繊が良いが、集束性に乏しく、嵩密度が低いものとなり、樹脂と混合するコンパウンド作業時にチョップドストランド供給性が悪くなり、円滑な運転が困難になる等の問題を有している。また、このようなラージトウは炭素繊維として単繊維切れや毛羽立ちが多く、品質的にも少数構成の炭素繊維ストランドに比較して劣るものであるので、チョップドストランドとするのに適していない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
近年、炭素繊維チョップドストランドは、熱可塑性樹脂をマトリックス材とする複合材料に多く使用されるが、熱可塑性樹脂はリサイクルが可能なことから、炭素繊維チョップドストランドの需要は旺盛である。
【0013】
従来、炭素繊維チョップドストランドを製造する場合には、ストランド単位でボビンに巻き取られている炭素繊維ストランドを使用し、数百個〜千個前後の多数のボビンをセットし、各ボビンからの炭素繊維ストランドの解舒、解舒された各炭素繊維ストランドの集束、集束された各炭素繊維ストランドの合糸、合糸さた炭素繊維ストランドの切断の各工程を経る必要があり、作業工程が多く効率が悪い。
【0014】
また、従来の炭素繊維チョップドストランドの製造においては、炭素繊維ストランドの製造段階において、ボビンに巻かれる前に既に集束剤が付与されており、その後、ボビンから解舒された炭素繊維ストランドに対して、その集束剤の上にさらに集束剤を適用したり、以前の集束剤を除去して新たな集束剤を適用する必要があるため、集束剤の適用に無駄がある。
【0015】
さらに、このような従来の方法では、ボビンの交換時はボビンに巻かれた炭素繊維ストランドの長さ単位で全工程をストップし、再度、数百個〜千個前後の多数のボビンをセットし直す必要がある。しかもボビンに巻き取られているストランドの長さがボビン個々で異なっていると、チョップドストランド製造工程で短尺品が製造途中で欠落することにより、多本集束されている繊維束の太さが途中で変わることになり、一定の品質のものを定常的に製造することが困難で、品質管理上問題である。また、このような欠落を補充するには一旦、装置を止め、新たなボビン巻きされているストランドを補充しなければならない。
【0016】
さらに、チョップドストランドを、均質とするには、ボビンに巻かれたストランド毎の製造時期、製造条件を同一にしなければならない等、事実上困難であるため、厳密な意味で品質が一定しないという問題点がある。
【0017】
そこで、本発明は、各工程に無駄が無く生産性が高く、品質を一定とすることができる炭素繊維チョップドストランドの連続的な製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記した問題点を解決するために、本発明の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法は、焼成炉より排出して得られた炭素繊維ストランドを巻き取ることなく、複数本を合糸しながら、切断工程に供し、所定長に切断する炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法であって、前記炭素繊維ストランドを焼成炉より排出した後、合糸する前にサイズ剤浴に浸漬し、該サイズ剤浴面上を垂直に引き上げることにより、サイズ剤の表面張力により炭素繊維ストランド断面が円形に集束し、その後、非接触状態で乾燥した後、合糸しながら、切断工程に供し、所定長に切断することにより、安息角45°以下の炭素繊維チョップドストランドを得ることを特徴とする。
【0019】
このような本発明によれば、炭素繊維焼成工程に直結したチョップドストランドの製造が可能となり、炭素繊維ストランドの巻取、解舒の各工程が必要ないので、生産効率が高い。
【0020】
このような本発明によれば、炭素繊維ストランドに対して、巻取前と解舒後に集束剤を重複して付与する必要がなく、1回の付与でよいので、また、集束剤の除去工程も無いので、生産効率が高い。
【0021】
このような本発明によれば、ラージトウ炭素繊維より製造されたチョップドストランドに比べ、集束性、嵩密度共に優れ、品質が良好なチョップドストランドを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の炭素繊維チョップドストランドの製造方法の好ましい製造工程の態様を示す図であるが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
炭素繊維ストランド1はサイズ剤が収容されたサイズ剤浴槽2に導入され、浸漬されて、炭素繊維ストランド1の内部及びその表面にサイズ剤が付与される(サイジング処理)。浸漬処理時に液浸ローラ12、14、3によって適宜の張力が付与される。サイズ剤浴槽2から排出される炭素繊維ストランド1は液浸ローラ3からサイズ剤浴面上に垂直に立ち上がり、ガイドローラ4によって引き上げられ、その間に乾燥機5で非接触状態で乾燥され、ついで冷風機6等の冷却手段で積極的に冷却される。冷却された炭素繊維ストランド1は、トランペットガイド等の合糸機7により集束され、集束炭素繊維ストランド8は切断装置9により所定長に切断され、炭素繊維チョップドストランド10となり、分糸機11により分糸される。
【0024】
炭素繊維ストランド
本発明の炭素繊維チョップドストランドの製造方法の原料として使用される炭素繊維ストランドは、構成本数3,000本(3K)〜50,000本(50K)のフィラメントからなる炭素繊維ストランドが望ましい。このような構成本数のストランドはその焼成過程での均一焼成に有効であり、しかも焼成工程に於ける熱の伝導、分解ガスの拡散、表面処理の均一化、サイズ剤の内部浸透等にとっても有効である。
【0025】
特に、嵩密度が高く、針状に、高度に集束された、所謂ニードルタイプの炭素繊維チョップドストランドを製造するには、その構成本数が3,000本(3K)〜25,000本(25K)、さらに好ましくは12K(12,000本)乃至24K(24,000本)の範囲のものがよく、このような構成本数のチョップドストランドを得るには、上記の構成本数の炭素繊維ストランドを合糸し、切断しチョップドストランドとするのがよい。
【0026】
炭素繊維ストランドは、種々の有機繊維をプリカーサーとして用いて焼成することにより製造でき、それぞれのプリカーサーの特性に応じた炭素繊維を得ることができる。炭素繊維ストランド用プリカーサーとしては、レーヨン、ピッチ系繊維、ポリアクリロニトリル系重合体繊維等が一般的である。
【0027】
炭素繊維ストランドの汎用性、強度と弾性率のバランス等を考慮するとポリアクリロニトリル系重合体繊維をプリカーサーとする炭素繊維ストランド(PAN系炭素繊維)が優れているため、最も多く生産され、且つ熱可塑性樹脂用の強化材繊維としても有効に利用されている。
【0028】
本発明で使用される炭素繊維ストランドの引っ張り強さは300MPa以上、引っ張り弾性率は20GPa以上、単繊維直径は5〜10μmの性能を示すものが、複合材料に使用するものとして好ましい。
【0029】
耐炎化処理・炭素化処理工程
PAN系炭素繊維は、前記プリカーサーに対して200〜350℃の酸化性雰囲気中での耐炎化処理(酸化処理)、及び不活性雰囲気中で、400℃以上炭素の昇華までの温度範囲において温度ゾーンを複数段に分けた、炭素化処理を施すことによって製造することが出来る。
【0030】
耐炎化工程は発熱反応であるため、温度管理には反応熱の除去が重要である。しかしながら、50Kを超えるフィラメントの構成本数の多いプリカーサーのストランドを採用した場合には、反応熱の除去にストランドを開繊状態に維持し反応熱の放散をはかるといった処理が必要となってくるため、単糸切れが生じやすく、張力調整も難しく高品位の炭素繊維は得られ難い。
【0031】
また、耐炎化終了についで行われる炭素化工程でも同様であり、構成本数の多いストランドは、高品位の炭素繊維を得るには不向きである。
【0032】
この炭素化処理は、目的物の要求性能に応じて、処理温度及び昇温勾配、処理温度での滞留時間、付与張力、雰囲気ガス等を設定することによって行われる。
【0033】
表面処理工程
炭素繊維チョップドストランドを強化材とし、マトリックス材として水硬性無機材料を使用する場合、或いは炭素繊維チョップドストランドを水分散系で使用する場合等特別の場合を除き、炭素化処理終了後に、マトリックス材との接着性改良のために炭素繊維ストランドに対して表面処理を施すのが好ましい。
【0034】
この表面処理には、液相処理、或いは気相処理などが挙げられる。生産性、処理の均一性、安定性等の観点から、液相電解表面処理が好ましい。一方、残留電解質による悪影響の問題が少ないという観点から、酸素、オゾン、塩化水素等の活性ガスによる気相表面処理が好ましい。
【0035】
液相電解表面処理に用いられる電解液には、塩酸、硝酸、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウムイオンを含む塩類及びこれらの混合物が使用できる。
【0036】
液相電解表面処理は、上記に例示した電解質溶液中で炭素繊維に通電処理することによって行われ、通電は一段又は多段、或いはパルス給電によって行われる。この時の通電電気量は、処理する炭素繊維の熱履歴によって異なる。例えば、処理温度の高い、炭素化度が進んだ炭素繊維ほど強い処理を必要とする。表面処理の程度の目安は、例えばX線光電子分光法(ESCA)により測定される炭素繊維の表面酸素濃度比O/C、表面窒素濃度比N/Cによって管理するのがよい。通常、表面酸素濃度比O/Cが、0.01〜0.5となるように酸化処理するのが好ましい。
【0037】
このような表面処理により、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が改良される。表面処理が過度になると炭素繊維が脆弱化しマトリックス樹脂との複合材としたときに、炭素繊維の強度低下のために、本来の性能を発揮し得ない。一方、表面処理が不足すると、マトリックス樹脂との接着性が不足し、充分な複合効果 が発揮されない。
【0038】
サイジング処理工程
このような表面処理を経た炭素繊維は、充分に洗浄し電解質を除去した後、更にサイズ剤によるサイジング処理を施すことが好ましい。サイズ剤の種類は、炭素繊維をマトリックス材と複合させる場合には、マトリックス材との相溶性の高いものが使用され、マトリックス材の種類に応じ適宜採用される。
【0039】
炭素繊維と複合させるマトリックス材としては、例えば、汎用的には、エポキシ樹脂が多く採用されるため、これに応じてサイズ剤としてもエポキシ樹脂系が好ましく使用できる。
【0040】
エポキシ樹脂系以外のサイズ剤としては変性ナイロン系、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリイミド樹脂系、フェノール樹脂系等マトリックス樹脂に親和性のサイズ剤成分を採用することが好ましい。また、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホンのような熱可塑性樹脂もサイズ剤として用いることができる。
【0041】
複合材料を成形する際に、加熱成形に伴うサイズ剤の熱分解によって分解ガスが発生するが、この分解ガスの発生を抑制するために、マトリックス樹脂の種類・特性に応じサイズ剤の種類も選定される。高い耐熱性が要求される複合材料系では、例えばウレタン樹脂がサイズ剤として付与されたチョップドストランドを更に熱処理・熱履歴を与え、熱分解ガスが発生しにくいように熱処理されたチョップドストランドを用いる方法も採用することもできる。この場合、熱履歴の付与は、炭素繊維ストランドを切断後に付与するのが好適である。
【0042】
サイズ剤付与処理は、エマルジョン法と溶剤法が適用できる。溶剤法に使用される溶剤としては、アセトン、MEK等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、メチレンクロライド等の有機塩素化合物等が使用される。しかし、エマルジョン法が人体への安全性の面及び自然環境を汚さないという環境対策の面からも好ましい。
【0043】
サイズ剤の付与は、スプレー法、液浸法、転写法等種々の既知の方法が採択し得るが、液浸法が汎用的で効率的且つ付与の均一性の点に於いて優れている。
【0044】
炭素繊維ストランドをサイズ剤液に浸積する際、サイズ剤液中に設けられた液没ローラ又は液浸ローラを介して、開繊と絞りを繰り返し、ストランドの芯までサイズ液を含浸させる。
【0045】
サイジング剤の付与方法は、単独または二種類以上のサイズ樹脂を、二段階以上に分けて付与させてもかまわない
本発明に於いてサイジング処理では、サイズ剤液(サイズ剤の溶液又はエマルジョン液)が炭素繊維ストランドに付与され、非接触状態で乾燥するので、サイズ剤液の表面張力によって炭素繊維ストランドが集束し断面が円形となる。このため得られたチョップドストランドは集束性、嵩密度共に優れ、品質が良好となり好ましい。
【0046】
複合材料のマトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレン、ポリアセタール等が一般的に使用でき、またポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性の芳香族ポリエステル等の耐熱性ポリマー類も使用できる。
【0047】
サイズ剤が水エマルジョン系の場合、炭素繊維ストランドに付与するサイズ剤量を適正化する上で、サイズ剤の濃度は1〜100g/L、25℃での溶液粘度は0.1〜100ポアズが好ましい。サイジングする際の工程温度は0〜50℃が好ましく、サイズ剤の付着量をコントロールするために、サイズ剤液を付着させた後、微振動を与えて、或いはスクイズ処理をしても構わない。
【0048】
サイズ剤付与量は、少ないと集束性が不足しチョップドストランドがばらけやすく取り扱い性が悪くなる。一方多くなると複合材料としたときにマトリックス樹脂に対するサイズ剤の量が多くなり、性能低下の原因となる。サイズ剤の適正付与量は固形分換算で、繊維重量に対し好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜12重量%、最も好ましくは2〜10重量%となるように付与するのがよい。
【0049】
このサイジング処理の際、炭素繊維ストランドにかかる張力はサイズ剤液の粘度等の性質を考慮し炭素繊維ストランドが集束するように調整するのが良く、この際の適正な張力は当業者の経験則によって容易に見出すことが出来る。
【0050】
乾燥前に、或いはサイズ剤液導入前にチョップドストランド単位のフィラメント数を調整する目的で、例えば、3Kの4本合わせ、6Kの4本合わせというように、ウエットストランドを合わせ、加撚やインターミングル処理を行うことにより、チョップドストランドの形態として好ましい構成フィラメント数である12Kや24Kとすることができる。
【0051】
乾燥工程
サイズ剤液付与後、ローラー等に接触した状態、あるいは接触した後に乾燥すると、炭素繊維ストランドが扁平になることが多く、このようなストランドから得られた炭素繊維チョップドストランドは嵩密度が低く好ましくない。また、チョップドストランド相互が接着しやすく、しかも接着しなかったものも扁平でばらけ易くなってフリーファイバーが多く、複合材料の性能が理論値より低いものとなり、設計が難しくなる。
【0052】
非接触状態での乾燥は、サイズ剤液付与後の乾燥前の所謂ウエットストランドをほぼ垂直に立ち上げることが好ましい。この間にウエットストランドはサイズ剤液の表面張力によって集束し、断面がほぼ円形に集束する。立ち上げ高さは、50cm〜2m程度でサイズ剤液の粘度等によって決められ、その後乾燥ゾーンに導入される。
【0053】
工程上、サイズ剤付与後に絞り、方向変換等、ローラー等への接触が必要な場合、溝付きローラーを用い、各炭素繊維ストランドを溝底に納めて搬送してもよい。この際1本の炭素繊維ストランドが通過するローラーの溝幅が3mmを越えないようにし、且つ溝の底面を丸くすることにより、チョップドストランドの扁平化を防ぐことができる。
【0054】
乾燥ゾーンの雰囲気温度は、溶剤を使用したサイズ剤液の場合、その溶剤の種類により決められる。汎用的な水エマルジョンの場合は80〜200℃に設定することが好ましい。乾燥温度が高い、あるいは乾燥時間が長い場合、乾燥状態は良好となるが、熱履歴が多くかかりすぎた場合、サイズ剤樹脂の劣化が起こる。このため炭素繊維ストランドは柔軟が欠け、切断時にストランドが割れやすくなるため嵩密度が低くなる等の弊害が起こるので、適正な乾燥条件で乾燥することが好ましい。
【0055】
炭素繊維ストランドの集束性を高めるために、プリカーサーの段階からサイズ剤液の乾燥工程迄の間に、加撚することもある。加撚は、炭素繊維ストランドの集束のみならず、単糸切れによるストランドの毛羽立ちを抑制するためにも有効である。加撚の程度は、2回/m〜30回/mが良い。
【0056】
サイズ剤付与処理後乾燥された炭素繊維ストランドは、多数本合糸し引き揃え、切断工程に供される。炭素繊維ストランドの合糸は、切断工程の能力に応じて選定すればよい。
【0057】
乾燥機から出てきた炭素繊維ストランドを多数本合糸し引き揃えた際、サイズ剤の種類により粘着性がある場合、ストランド相互が粘着する。このようなときは、合糸の前に、積極的に冷却するのが炭素繊維ストランドが密着するのを防ぐ上で有効である。積極的な冷却には冷風の吹き付けが有効であるが、乾燥機から排出されて後、合糸までの間に放冷時間を設ける手段でも良い。
【0058】
冷却を効果的にするために、乾燥機上方に遮熱板を配し、走行ストランドに乾燥機からの上昇気流が当たるのを制御するのが好ましい。この様にすることによって乾燥機上方に配された、ローラの加熱も制御することができる。
【0059】
乾燥機から出た炭素繊維ストランドに、微量のタルク、カーボンブラック等の無機粉末、熱可塑性樹脂粉末を付与することにより、乾燥された炭素繊維ストランドの表面の粘着性を抑えることもできる。このような目的で使用される熱可塑性樹脂粉末としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PS)、ポリアリレート等がある。これらの樹脂粉末は粒径10μm以下の粉末まで市場で入手することが出来る。
【0060】
炭素繊維ストランドをラインストランド毎に個々に切断工程に供給すると、切断機構が複雑となり効率も悪い。そこで本発明ではこのようなラインストランドを合糸する。合糸はサイズ剤付与処理を終了し、乾燥を終了した段階で合糸する。
【0061】
炭素繊維ストランドの合糸は、切断機構の能力に応じ、例えば[12Kストランド200本]、[24Kストランド100本]の様に合糸後の太さが一定になるように、ライン状況との兼ね合いで調整して行えばよい。また、切断機構も、その能力に幅があるものが工程の管理上も好ましい。
【0062】
合糸に際しては、加撚の必要は特になく、例えば、トランペットガイド等の合糸機を使用し、所謂引き揃えで足りる。切断工程に供される時に繊維の長さが不揃いにならないようにする。このためには、各炭素繊維ストランド毎の張力調整機構と合糸後の複数の張力調整ガイドの組合せを経て引き揃え合糸される。
【0063】
切断機構は、繊維の切断に汎用されている、所謂ギロチンカッターを利用することが出来るがこれに限定されず、円筒の外周に外向きに植刃された円筒状カッター(所謂ECカッター)の外周に炭素繊維ストランドを巻き付け切断することも出来る。
【0064】
チョップドストランドの繊維長は、通常1〜10mm、好ましくは3〜8mmに設定される。
【0065】
サイズ剤付与処理とそれに続く乾燥処理によって、炭素繊維ストランドが集束されているため、切断後簡単に各ストランド単位に分糸しチョップドストランドとなる。仮に切断後に仮接着している場合でも、不良品除去のために選別工程を行うか、或いは梱包機に搬送供給するために、振動を与えることによって容易に分糸する事ができ、同時に切断長が異常なチョップ等を分別することが出来る。
【0066】
炭素繊維チョップドストランドの切断における速度設定は、炭素繊維ストランドの最終生産速度とカットスピードが合致するように設定するが、工程途中で速度がズレても工程トラブルを起こさないように、炭素繊維ストランドの生産速度とカット速度を調整するバイパスを工程内に設け、スピード調整しても構わない。バイパスでの生産速度とカット速度の調整には、張力に応じてローラーが上下に移動するダンサーローラーを利用することができる。
【0067】
また、サイズ剤に耐熱性が要求される場合は、サイズ剤で処理されているチョップドストランドを更に熱処理してもよい。熱処理は目的に応じて、200〜600℃で行われ、場合によっては不活性雰囲気下で、サイズ剤が炭素化する温度にて処理しても良い。
【0068】
チョップドストランドの緻密性を評価する尺度として、嵩密度あるいは安息角が用いられる。このチョップドストランドは、繊維長によって若干の変動はあるが、嵩密度200g/l以上、好ましくは300g/l以上、更に好ましくは400g/l以上がよい。
【0069】
また安息角は、嵩密度とほぼ対応し、嵩密度が高いチョップドストランドは安息角も小さくなる傾向を示す。本発明のチョップドストランドの安息角は45°以下であるので、このようなチョップドストランドはフィーダーでの持ち込みがよくマトリックス材への安定配合を行うことが出来る。
【0070】
チョップドストランドの構成本数は、前述の通り、合糸する前の状態にほぐされ、元の炭素繊維ストランド単位でのチョップドストランドの構成本数とすることができる。
【0071】
【実施例】
以下実施例について記載する。尚各実施例に於ける各測定値は下記の方法にて求めた値である。
【0072】
[嵩密度]2000ccのメスシリンダーに300gのチョップドストランドを充填し軽く衝撃を与え平衡に達したときの体積を求めた。
【0073】
[安息角]V型ロートより10cm下の水平平板上にチョップドストランドを自然落下させ山状に堆積したチョップドストランドの傾斜角度を測定した。
【0074】
[フリーファイバー]2000ccのメスシリンダーに約500ccのチョップドストランドを入れ密封した。この時のチョップドストランドの質量(W1g)を測定した。密封したメスシリンダーの高さ方向を軸にして、20分間25rpmで回転した。メスシリンダーの回転を止め試料を#4の篩に移し篩い分けした。篩いに残ったフリーファイバーを採取しその質量(W2g)を測定した。試料全体の質量とフリーファイバーの質量からフリーファイバー発生率(%)を求めた。
【0075】
〔実施例1〕
24K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程に通し、炭素化炉より平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド300本を電解表面処理し、水洗後、ウレタン変成エポキシ樹脂を主成分とする固形分濃度65g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に導入し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を5.0%付与した。
【0076】
この炭素繊維ストランドには3個/mの仮撚を付与した。この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より150cm垂直に立ち上げ、次いで乾燥機に導入した。乾燥条件は、110℃の雰囲気で約2分、ついで200℃の雰囲気で約1分処理し、乾燥を完結させた。乾燥上がりの炭素繊維ストランド1本の直径は、3mmであった。
【0077】
乾燥後、300本の炭素繊維ストランドを表面温度30℃まで冷却後、引き続き巻き取ることなく、ストランド150本が1単位となるようトランペットガイドを通して合糸した。次いで、各炭素繊維ストランドの長さが不揃いにならないよう調整し、ギロチンカッターに供給し、繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩に掛け、振動を与えながら搬送し梱包機に供給した。本実施例1の製造工程により約100時間連続操業ができた。
【0078】
このようにして得られた炭素繊維チョップドストランドは、工程単位のストランドに別れており、その直径は2.8mm、繊維長は6mm、嵩密度は400g/L、安息角は40°、フリーファイバーは1.0%であり、品質良好なチョップドストランドであった。
【0079】
上記炭素繊維チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライトL−1250:商品名)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ3.5kg(歩留まり:88%)であった。
【0080】
〔実施例2〕
24K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程に通し、炭素化炉より平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド300本を電解表面処理し、水洗後、ウレタン変成エポキシ樹脂を主成分とする固形分濃度80g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に通し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を7.0%付与した。
【0081】
この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より150cm垂直に立ち上げ、次いで乾燥機に導入した。乾燥条件は、200℃の雰囲気で約1分処理し、乾燥を完結させた。乾燥上がりの炭素繊維ストランド1本の直径は約3mmであった。乾燥後、引き続き巻き取ることなく、前記実施例1と同様にしてギロチンカッターに供給し、繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩に掛け、振動を与えながら搬送し梱包機に供給した。
【0082】
得られた炭素繊維チョップドストランドは炭素繊維ストランド単位に別れており、その直径は3.1mm、繊維長は6mm、嵩密度は450g/L、安息角は42°、フリーファイバーは1.5%であり、品質良好なチョップドストランドであった。
【0083】
上記炭素繊維チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライトL−1250:商品名)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ3.6kg(歩留まり:90%)であった。
【0084】
〔実施例3〕
12K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程に通し、炭素化炉より平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド400本を電解表面処理し、水洗後、ポリエステル樹脂を主成分とする固形分濃度50g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に通し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を3.5%付与した。この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より150cm垂直に立ち上げ、次いで乾燥機に導入した。乾燥条件は、150℃の雰囲気で約2分処理し、乾燥を完結させた。乾燥上がりの炭素繊維ストランド1本の直径は約1mmであった。
【0085】
乾燥後、400本の炭素繊維ストランドを表面温度30℃まで冷却し、引き続き巻き取ることなく炭素繊維ストランド200本が1合糸単位となるよう合糸した。次いで、各ストランドの長さが不揃いにならないよう調整しギロチンカッターに供給し、繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩に掛け、振動を与えながら搬送し梱包機に供給した。
【0086】
このようにして得られた炭素繊維チョップドストランドは、炭素繊維ストランド単位に別れており、この炭素繊維チョップドストランドの直径は1.1mm、繊維長は6mm、嵩密度は420g/L、安息角は40°、フリーファイバーは0.6%であり、品質良好なチョップドストランドであった。
【0087】
上記炭素繊維チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライトL−1250:商品名)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ3.6kg(歩留まり:90%)であった。
【0088】
〔実施例4〕
24K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程に通し、炭素化炉より平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド200本を電解表面処理し、水洗後、ウレタン樹脂を主成分とする固形分濃度40g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に通し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を3.0%付与した。
【0089】
この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より150cm垂直に立ち上げ、次いで乾燥機に導入した。乾燥条件は、200℃の雰囲気で約1分処理し、乾燥を完結させた。乾燥上がりの炭素繊維ストランド1本の直径は約2mmであった。乾燥後、200本の炭素繊維ストランドを表面温度30℃まで冷却し、引き続き巻き取ることなく炭素繊維ストランド100本を1合糸単位として2束に合糸した。次いで、長さが不揃いにならないよう調整しギロチンカッターに供給し、繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩に掛け、振動を与えながら搬送し梱包機に供給した。
【0090】
このようにして得られた炭素繊維チョップドストランドは、炭素繊維ストランド単位に別れており、この炭素繊維チョップドストランドの直径は2.0mm、繊維長は6mm、嵩密度は520g/L、安息角は38°、フリーファイバーは0.1%であり、品質良好なチョップドストランドであった。
【0091】
上記チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライトL−1250:商品名)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ3.8kg(歩留まり:95%)であった。
【0092】
〔実施例5〕
24K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程を経て炭素化炉より平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド300本を電解表面処理し、水洗後、ウレタン樹脂を主成分とする固形分濃度37g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に通し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を2.5%付与した。
【0093】
この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より150cm垂直に立ち上げ、次いで乾燥機に導入した。乾燥条件は、150℃の雰囲気で約2分処理し、乾燥を完結させた。乾燥上がりの炭素繊維ストランド1本の直径は、約2mmであった。乾燥後、300本の炭素繊維ストランドを表面温度30℃まで冷却し、引き続き巻き取ることなく炭素繊維ストランド150本を1合糸単位として2束に合糸した。次いで、各ストランドの長さが不揃いにならないよう調整し、ギロチンカッターに供給し、繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩(分糸機)に掛け、振動を与えながら搬送し梱包機に供給した。
【0094】
このようにした得られた炭素繊維チョップドストランドは、ストランド単位に別れており、この炭素繊維チョップドストランドの直径は2.4mm、繊維長は6mm、嵩密度は490g/L、安息角は39°、フリーファイバーは0.3%であり、品質良好な炭素繊維チョップドストランドが得られた。
【0095】
上記チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライトL−1250:商品名)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ3.7kg(歩留まり:93%)であった。
【0096】
〔実施例6〕
24K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程に通し、炭素化炉より平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド300本を電解表面処理し、水洗後、ウレタン変性エポキシ樹脂を主成分とする固形分濃度80g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に通し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を7.0%付与した。
【0097】
この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より50cm垂直に立ち上げた後、溝幅3mmの溝ローラーにて、約90°進行方向を変更後、乾燥機に導入した。乾燥条件は、200℃の雰囲気で約1分処理し、乾燥を完結させた。乾燥上がりの炭素繊維ストランド1本の直径は、約3mmであった。
【0098】
乾燥後、引き続き巻き取ることなく300本の炭素繊維ストランドを2分割し、150本を1単位として集束させた。カット前の炭素繊維ストランドは、表面温度30℃まで冷却し、各ストランドの長さが不揃いにならないよう調整しギロチンカッターに供給し、繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩(分糸機)に掛け、振動を与えながら搬送し梱包機に供給した。
【0099】
得られた炭素繊維チョップドストランドの直径は2.6mm、繊維長は6mm、嵩密度は490g/L、安息角は42°、フリーファイバーは0.2%であり、品質良好な炭素繊維チョップドストランドが得られた。
【0100】
上記チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライトL−1250:商品名)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ3.6kg(歩留まり:90%)であった。
【0101】
比較例1
24K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程に通し、炭素化炉より平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド300本を電解表面処理し、水洗後、ウレタン変成エポキシ樹脂を主成分とする固形分濃度80g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に通し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を7.0%付与した。
【0102】
この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より50cm垂直に立ち上げた後、平ローラーにて、約90°進行方向を変更後、乾燥機に導入した。乾燥条件は、150℃の雰囲気で約2分処理し、乾燥を完結させた。乾燥上がりの炭素繊維ストランド1本の直径は、約6mmであった。
【0103】
乾燥後、引き続き巻き取ることなく300本の炭素繊維ストランドを2分割し、150本を1単位として集束させた。カット前の炭素繊維ストランドは、表面温度30℃まで冷却後、合糸し長さが不揃いにならないよう調整しギロチンカッター切断機に供給し、繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩(分糸機)に掛け、振動を与えながら分糸・搬送し梱包機に供給した。
【0104】
得られた炭素繊維チョップドストランドの直径は6.1mm、繊維長は6mm、嵩密度は460g/L、安息角は50°、フリーファイバーは0.2%であり、扁平な炭素繊維チョップドストランドが得られた。
【0105】
上記炭素繊維チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライト L−1250)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ2.6kg(歩留まり:65%)であった。
【0106】
比較例2
24K、PAN系プリカーサーを耐炎化工程及び炭素化工程に通し、炭素化炉よりが平行整列処理して排出された炭素繊維ストランド300本を電解表面処理し、水洗後、ウレタン変成エポキシ樹脂を主成分とする固形分濃度65g/Lの水エマルジョンサイズ剤液に導入し、液浸ローラーを介して、ストランド張力を調整し、サイズ剤液を5.0%付与した。
【0107】
この炭素繊維ストランドには前記サイジング処理過程において3個/mの仮撚を付与した。この炭素繊維ストランドをサイズ剤液より150cm垂直に立ち上げ、次いで乾燥機に導入した。乾燥条件は、110℃の雰囲気で約2分、ついで200℃の雰囲気で約1分処理し、乾燥を完結させた。
【0108】
次いで、前記工程で得られた炭素繊維ストランドを外径100mmφのボビンに巻き取った。ボビン1本あたりの巻き量は2kg で、長さは約1300mである。因みにボビンに巻き取る前の、乾燥上がり炭素繊維ストランド1本の直径は3mmであった。
【0109】
このボビン150本をクリールにセットし、150本の束にしてギロチンカッターに供給し繊維長6mmに切断した。次いで傾斜した胴型回転篩に掛け、振動を与えながら搬送し梱包機に供給した。
【0110】
このようにして得られた炭素繊維チョップドストランドは、ストランドに別れていたものの、断面が直径は2.8mmのほぼ円形のものから、やや扁平化した楕円で、長径は約3.5mmであり、嵩密度は390g/L、フリーファイバーは1.2%であった。
【0111】
工程管理は、ほぼ製品270kg毎にボビンの交換が必要で、この際誘導糸として炭素繊維ストランド端末をクリールから合糸ガイド部まで残す必要があり、しかも、誘導糸と新しいボビンの緒糸とを結束する必要があったためこの間停台し、工数は32分/1人であった。更に運転再開後、結束部がカッターに到達したとき更に機台を止める必要が生じ、炭素繊維ストランドからの歩留まりは92%であった。
【0112】
上記チョップドストランドとポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成製パンライトL−1250:商品名)計4kgを炭素繊維が30重量%になるようにドライブレンドした後、4mmベント式押出機にて、溶融混練してストランド状に押出し、水冷後切断して炭素繊維含有ポリカーボネートペレットを得た。このペレットを乾燥後、重量を測定したところ3.1kg(歩留まり:78%)であった。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、炭素繊維チョップドストランド製造工程を炭素繊維製造工程に直結する事が可能で、生産性良く炭素繊維チョップドストランドを製造することが出来る。
【0114】
従来の炭素繊維チョップドストランドの製造においては、ストランド単位でボビンに巻き取られている炭素繊維ストランドの数百個〜千個前後をセットし、各ボビンからの炭素繊維ストランドの解舒、解舒された各炭素繊維ストランドの集束、集束された各炭素繊維ストランドの合糸、合糸された炭素繊維ストランドの切断の各工程を経る必要があり、作業工程が多く効率が悪かったが、本発明の炭素繊維製造工程に直結した炭素繊維チョップドストランドの製造方法では、従来法に比較し、ボビンのセット、巻き取り、解舒、再度の集束等の工程が無く作業効率が高いため安価に製造することができ、しかも、嵩密度やフリーファイバーの面で、従来法のものとほぼ同等のチョップドストランド特性を有する。
【0115】
本発明に於いてサイジング処理では、サイズ剤浴面上を炭素繊維ストランドを垂直に引き上げるので、また、サイズ剤液(サイズ剤の溶液又はエマルジョン液)が適用された炭素繊維ストランドに対して、非接触状態で乾燥するので、サイズ剤液の表面張力によってストランドが集束し断面が円形となる。このため得られたチョップドストランドは集束性、嵩密度共に優れ、品質が良好となり好ましい。
【0116】
本発明の炭素繊維チョップドストランドの製造方法は、一旦巻き取っている炭素繊維ストランドを使用していないので、ボビン交換時に誘導糸と新しいボビンの緒糸とを結束する必要がなく、そのための全工程をストップすることなく、連続的に製造できるので、作業効率が高い。さらに結束のための不均一部分が生ずることがないので、均質な炭素繊維チョップドストランドが得られる。
【0117】
本発明の炭素繊維チョップドストランドの製造方法は、炭素繊維ストランドに対して、巻取前と解舒後に集束剤を重複して付与する必要がなく、1回の付与でよいので、また、集束剤の除去工程も無いので、生産効率が高い。
【0118】
本発明の炭素繊維チョップドストランドの製造方法は、ラージトウ炭素繊維より製造されたチョップドストランドに比べ、集束性、嵩密度共に優れ、品質が良好なチョップドストランドが得られる。
【0119】
従来の炭素繊維チョップドストランドの製造方法においては、ボビンに巻き取られている炭素繊維ストランドを使用するため、製造時期、製造条件が同一である炭素繊維ストランドを用意することは、実際上困難であり、したがって、厳密な意味で品質が一定しないが、本発明の炭素繊維チョップドストランドの製造方法では、品質の一定な炭素繊維チョップドストランドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の炭素繊維チョップドストランドの製造方法の好ましい製造工程の態様を示す図。
【符号の説明】
1 炭素繊維ストランド
2 サイズ剤浴槽
3、12、13、14 液浸ローラ
4 ガイドローラ
5 乾燥機
6 冷風機
7 合糸機
8 集束炭素繊維ストランド
9 切断装置
10 炭素繊維チョップドストランド
11 分糸機

Claims (10)

  1. 焼成炉より排出して得られた炭素繊維ストランドを巻き取ることなく、複数本を合糸しながら、切断工程に供し、所定長に切断する炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法であって、
    前記炭素繊維ストランドを焼成炉より排出した後、合糸する前にサイズ剤浴に浸漬し、該サイズ剤浴面上を垂直に引き上げることにより、サイズ剤の表面張力により炭素繊維ストランド断面が円形に集束し、その後、非接触状態で乾燥した後、合糸しながら、切断工程に供し、所定長に切断することにより、安息角45°以下の炭素繊維チョップドストランドを得ることを特徴とする炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  2. 前記サイズ剤浴面から垂直に引き上げた炭素繊維ストランドをその後絞り又は方向変換によりローラーに接触させる場合には、溝幅が3mmを超えない溝付ローラーを用いて炭素繊維ストランドを溝底に納めて搬送することを特徴とする請求項1記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  3. 前記乾燥における温度は、80〜200℃であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  4. 前記非接触状態で乾燥された炭素繊維ストランドを、積極的に冷却することを特徴とする請求項1記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  5. 前記炭素繊維ストランドは、3000〜50000本のフィラメントで構成されていることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  6. 前記炭素繊維ストランドは、合糸する前に表面処理が行われ、次いでサイジング処理により集束されていることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  7. 前記炭素繊維ストランドは、サイジング処理により固形分換算で繊維重量に対し0.5〜15%のサイズ剤が付着されて集束していることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  8. 前記炭素繊維ストランドは、加撚されていることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  9. 前記サイジング処理は、炭素繊維ストランドにエマルジョン型サイズ剤を適用することを特徴とする請求項1記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
  10. 炭素繊維ストランドを所定長に切断した後、元の炭素繊維ストランド単位に分糸処理することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維チョップドストランドの連続的製造方法。
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