JP4363879B2 - 圧電アクチュエータ、インクジェット記録ヘッド、圧電特性の調整方法およびインク吐出量の調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細な変位を発生させることにより、各種デバイスの位置決めや加圧などに用いられる圧電アクチュエータ、これを備えたインクジェット記録ヘッド、圧電特性の調整方法およびインク吐出量の調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、圧電セラミックスを利用した製品としては、例えば圧電アクチュエータ、フィルタ、圧電共振子(発信子を含む)、超音波振動子、超音波モーター、圧電センサ等がある。
【0003】
これらの中で、圧電アクチュエータは、電気信号に対する応答速度が10-6秒台と非常に高速であるため、半導体製造装置のXYステージの位置決め用アクチュエータやプリンタのインクジェット記録ヘッドに用いられるアクチュエータ等に応用されている。
【0004】
インクジェット記録ヘッドは、例えば図3に示すように、複数のインク流路33aが並設され、各インク流路33aを仕切る壁として隔壁33bを形成した流路部材33の上に、圧電アクチュエータ34が設けられた構造を有する(特許文献1参照)。
【0005】
圧電アクチュエータ34は、振動板の役割を兼ねた導電性の共通電極36上に、圧電セラミック層35が積層され、この圧電セラミック層35の表面に表面電極37を複数配列して圧電変位部38を複数形成したものである。この圧電アクチュエータ34は、インク流路33aの上に表面電極37が位置するようにして流路部材33上に積層されている。
【0006】
上記のようなインクジェット記録ヘッドは、共通電極36と所定の表面電極37との間に電圧を印加して該表面電極37直下の圧電セラミック層35を変位させることにより、インク流路33a内のインクを加圧して、流路部材33の底面に開口したインク吐出孔33cよりインク滴を吐出する。
【0007】
ところが、このようなインクジェット記録ヘッドでは、圧電アクチュエータ間に圧電特性のばらつきが生じてインク吐出量にばらつきが生じることがある。このインク吐出量のばらつきによって、印刷時のドットサイズにばらつきが生じて画像がにじむなどの印字品質の低下が生じる。
【0008】
これに対して、特許文献2および特許文献3には、電極をトリミングすることにより有効電極面積を制御し、インク吐出量を調節してインク吐出量のばらつきを低減することが提案されている。しかしながら、特許文献2および特許文献3に記載の圧電アクチュエータは、トリミングに多くの時間を要するという問題がある。また、圧電アクチュエータの集積度が高くなった場合、電極も小型化されるのでトリミングプローブが接触するパッド面積が確保できず、トリミングの微調整が困難になるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平11−34321号公報図1
【特許文献2】
特開昭61−118261号公報
【特許文献3】
特開2002−307696号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧電アクチュエータ間に生じる圧電特性のばらつきを適正値に調整するには、圧電アクチュエータを流路部材に取り付ける前に、複数の圧電変位部の静電容量を直接計測して圧電アクチュエータの圧電特性を検査し、圧電アクチュエータ間に圧電特性のばらつきが生じている場合には、前記検査結果に基づいて表面電極と共通電極との間に印加する電圧を制御して圧電特性およびインク吐出量のばらつきを低減することができる。
【0011】
しかしながら、圧電変位部の静電容量を直接計測する際に、計測用のプローブを表面電極に取り付けることによって表面電極に傷を付けてしまうおそれがあった。また、インクジェット記録ヘッドに搭載する圧電アクチュエータには複数の圧電変位部が形成されているため、各圧電変位部の静電容量を計測するには多くの時間を要するという問題があった。さらに、集積度の高い圧電アクチュエータでは、表面電極が小型化されているため、計測用のプローブを正確に表面電極に取り付けるのが困難であるという問題があった。
【0012】
したがって、本発明の主たる目的は、表面電極に傷を付けることなく圧電変位部の圧電特性を正確にかつ容易に把握することができる圧電アクチュエータおよびこれを備えたインクジェット記録ヘッドを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、複数の圧電変位部が形成された圧電アクチュエータであっても、表面電極に傷を付けることなく圧電変位部の圧電特性を短時間で正確にかつ容易に把握することができる圧電アクチュエータおよびこれを備えたインクジェット記録ヘッドを提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、集積度の高い圧電アクチュエータであっても、電極に計測用のプローブを正確に取り付けることができる圧電アクチュエータおよびこれを備えたインクジェット記録ヘッドを提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、圧電変位部の圧電特性を正確にかつ容易に調整することができる圧電特性の調整方法およびインク吐出量の調整方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、表面電極と共通電極間の静電容量値が、前記表面電極とは別に圧電セラミック層の表面に設けた検査用電極と前記共通電極間の静電容量値と高い相関性を有するという知見を得た。そして、この知見に基づいて、本発明者らは、さらに研究を重ねた結果、計測用のプローブを表面電極に取り付けて表面電極と共通電極間の静電容量を直接計測しなくても、検査用電極と共通電極間の静電容量を計測することにより、圧電アクチュエータの圧電特性を正確にかつ容易に把握することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の圧電アクチュエータは、以下の構成からなる。
(1) 振動板上に、共通電極および圧電セラミック層がこの順に積層され、さらに前記圧電セラミック層の表面の一部に表面電極が積層されて、圧電変位部が設けられている圧電アクチュエータであって、前記圧電セラミック層が四角形であるとともに、前記圧電セラミック層の表面の四隅にそれぞれ前記圧電変位部の圧電特性を検査するための検査用電極が設けられていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
(2) 前記圧電セラミック層の表面には、前記表面電極が複数形成されている(1)記載の圧電アクチュエータ。
【0018】
本発明の圧電アクチュエータは、特にインクジェット記録ヘッドに好適である。すなわち、本発明のインクジェット記録ヘッドは、以下の構成からなる。
(3) 前記(2)記載の圧電アクチュエータが、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に、前記インク流路と前記表面電極との位置を揃えて取り付けられているインクジェット記録ヘッド。
【0019】
本発明の圧電特性の調整方法およびインク吐出量の調整方法は、以下の構成からなる。
(4) 振動板上に、共通電極および圧電セラミック層がこの順に積層され、さらに前記圧電セラミック層の表面の一部に表面電極が積層されて、圧電変位部が設けられているとともに、前記圧電セラミック層の表面に検査用電極が設けられている圧電アクチュエータにおける圧電特性の調整方法であって、前記圧電セラミック層を介して対向する前記検査用電極と前記共通電極との間の静電容量を計測し、この検査結果に基づいて前記表面電極と前記共通電極との間に印加する電圧を制御して圧電特性を調整することを特徴とする圧電特性の調整方法。
(5) 振動板上に、共通電極および圧電セラミック層がこの順に積層され、さらに前記圧電セラミック層の表面の一部に複数の表面電極が積層されて、複数の圧電変位部が設けられているとともに、前記圧電セラミック層の表面に検査用電極が設けられている圧電アクチュエータが、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に、前記インク流路と前記表面電極との位置を揃えて取り付けられているインクジェット記録ヘッドにおけるインク吐出量の調整方法であって、前記圧電セラミック層を介して対向する前記検査用電極と前記共通電極との間の静電容量を計測し、この検査結果に基づいて前記表面電極と前記共通電極との間に印加する電圧を制御して圧電特性を調整することによりインク吐出量を調整することを特徴とするインク吐出量の調整方法。
【0020】
前記(1)記載の圧電アクチュエータによれば、表面電極には計測用のプローブを取り付ける必要がなく、検査用電極を使用して圧電アクチュエータの圧電特性を把握することができるので、表面電極に傷が付くのを防止することができる。また、圧電セラミック層の四隅、すなわち圧電セラミック層のデッドスペースに検査用電極を配置することで、表面電極の配列の妨げになることがなく、小型化・高集積化する上で弊害が生じず、スペースを有効利用することができる。また、表面電極が配列されている部分以外の余白が多く存在すると、焼成後に反りが発生しやすいが、四隅の余白に検査用電極を配置することにより、反りが生じるのを抑制することができ、圧電アクチュエータの寸法精度も向上する。
【0021】
前記(2)記載の圧電アクチュエータによれば、複数の表面電極が形成された集積度の高い圧電アクチュエータであっても、複数の前記圧電変位部の静電容量値が、圧電セラミック層の表面に設けた検査用電極と前記共通電極間の静電容量値と高い相関性を有するので、複数の前記圧電変位部の静電容量を直接計測しなくても、前記検査用電極と共通電極間の静電容量を計測することにより、表面電極に傷を付けることなく圧電アクチュエータの圧電特性を短時間で正確にかつ容易に把握することができる。
【0027】
前記(3)記載のインクジェット記録ヘッドによれば、検査により圧電特性のばらつきが把握された圧電アクチュエータを備えているので、この検査結果に基づいてインク吐出量を調整することが可能である。
【0028】
前記(4)記載の圧電特性の調整方法および前記(5)記載のインク吐出量の調整方法によれば、表面電極に傷を付けることなく圧電特性およびインク吐出量を正確にかつ容易に調整することができる。また、前記調整方法によれば、短時間で簡単に圧電特性およびインク吐出量を調整することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態にかかる圧電アクチュエータおよびインクジェット記録ヘッドについて図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態の圧電アクチュエータを備えたインクジェット記録ヘッドを示す斜視図であり、図2は該インクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【0030】
図1および図2に示すように、圧電アクチュエータ7は、振動板2a上に、共通電極6および圧電セラミック層2bがこの順に積層され、圧電セラミック層2bの表面の一部に表面電極3を等間隔で2次元的に複数配列して複数の圧電変位部8を形成している。複数の表面電極3は、それぞれ外部の電子制御回路に独立して接続されている。共通電極6は、ビア電極(図示せず)を介して引出電極4に接続されて電位が安定化されている。引出電極4はグランド電位に接続されている。圧電変位部8は、表面電極3と共通電極6との間に電圧が印加されることにより変位する。
【0031】
インクジェット記録ヘッド10は、圧電アクチュエータ7を、インク吐出孔11bを有する複数のインク流路11aが配列された流路部材11上に、インク流路11aと表面電極3との位置を揃えて積層接着したものである。各インク流路11aは隔壁11cにより隔てられている。
【0032】
圧電セラミック層2b上には、圧電変位部8の圧電特性を検査するための検査用電極5が設けられている。検査用電極5は、四角形の圧電セラミック層2b上の四隅に配置されている。検査用電極5の表面積は、表面電極3の表面積よりも大きくするのがよく、好ましくは2〜5倍程度大きくするのがよい。これにより、圧電アクチュエータの集積度が高くても、検査用電極に計測用のプローブを正確に取り付けることができ、圧電アクチュエータの圧電特性を正確に検査することができる。また、本実施形態では、圧電セラミック層2b表面の相互に離隔した複数箇所に検査用電極5を設けているので、圧電特性の検査精度がより向上する。
【0033】
本発明の圧電アクチュエータ7では、検査用電極5と共通電極6間の静電容量が計測された後、圧電セラミック層2b上に、検査結果を示すマーク9が付される。これにより、このマーク9を、圧電特性を調整する際の目安とすることができる。このマーク9には4つの検査用電極5により検査された検査結果が付される。マーク9に付される検査結果は、該検査結果が判別できるものであれば特に限定されず、例えば計測した静電容量値をそのまま付してもよく、検査結果に応じてランク分けされた記号(例えば、A,B,C,・・・など)を付してもよい。また、マーク9に付される検査結果は、4つの検査用電極5により検査された検査結果をそれぞれ別々に付してもよいが、計測した4つの静電容量値を平均し、この平均値またはこの平均値に応じてランク分けされた記号を付してもよい。圧電セラミック層2b上にマーク9を付する手段は、例えばUVインクなどにより印字することができる。
【0034】
このマーク9に付された検査結果に基づいて、例えばIC制御などにより表面電極3と共通電極6との間に印加する電圧を制御して、圧電アクチュエータ7毎に圧電特性を調整することができる。これにより、インクジェット記録ヘッド10のインク吐出量を調整することができる。
【0035】
圧電セラミック層2bの材質としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT系)、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)およびニッケルニオブ酸鉛(PNN系)からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とする圧電セラミックスが好適である。圧電セラミック層2bの厚みは、特に限定されないが、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10〜30μmであるのがよい。圧電セラミック層2bの厚みが100μm以下であると、圧電アクチュエータの小型薄型化が図れるとともに、小さい電圧で大きな変位を得ることができる。また、この圧電アクチュエータをインクジェット記録ヘッドに適用することにより、高解像度のインクジェットプリンタが得られる。
【0036】
振動板2aは、絶縁性の高いものであれば良いが、圧電体であること、特に圧電セラミック層2bと略同一の熱膨張率を有するものであることが好ましく、圧電セラミック層2bと略同一の組成であることがより好ましい。これにより、同時焼成が可能となり、熱膨張差に起因して焼成時に発生する熱応力によって反りや歪みが生じるのを防止することが容易となる。また、振動板2aは、単層でも良いが、厚みを制御し、焼結後の組成ばらつきや特性ばらつきを抑制するため、積層体であることが好ましい。振動板2aの厚みは、特に限定されないが、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10〜30μmであるのがよい。また、圧電アクチュエータ7の総厚みは200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは30〜60μmであるのがよい。
【0037】
また、振動板2aおよび圧電セラミック層2bは気孔率が1%以下、特に0.8%以下、更には0.5%以下であることが、インク等の液体の染み込みを効果的に防止でき、インク漏れを低減することができるので好ましい。
【0038】
共通電極6の材質としては、Ag、Pd、Pt、Rh、Au、Ni系材料の単独または2種以上の組み合わせが好ましく、特にAg−Pd系合金がより好ましい。圧電セラミック層2aと共通電極6とは同時焼成により形成される。共通電極6の厚みは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度であるのがよく、0.5〜8μm、好ましくは1〜3μmであるのがよい。
【0039】
表面電極3と検査用電極5の材質は、例えば上記した共通電極6と同様の金属を使用することができるが、特に電気抵抗および耐食性に優れるAuを使用するのが好ましい。表面電極3および検査用電極5の厚みは1〜10μm、好ましくは2〜5μmであるのがよい。特に、検査精度を向上させるという点で、表面電極3と検査用電極5の材質および厚みは同じであるのが好ましい。引出電極4の材質としては、上記した表面電極3と同様の金属を使用することができる。
【0040】
次に、圧電アクチュエータ7の製造方法について説明する。
(a) まず、前記した圧電セラミックスの粉末を用いてグリーンシートを必要枚数形成した後、このグリーンシートに貫通孔を形成する。
(b) ついで、貫通孔が形成されたグリーンシートにスクリーン印刷を用いて、ビア電極となる導体を充填するとともにグリーンシートの略全面に共通電極パターンを形成する。
(c) ついで、ビア電極パターンおよび共通電極パターンが形成されたグリーンシートに対して、共通電極パターンを狭持するように、グリーンシートを積層して積層体を形成する。
(d) さらに、この積層体を所定の形状に切断した後、900〜1100℃程度で焼成して圧電アクチュエータ本体を形成する。
(e) 最後に、この圧電アクチュエータ本体の表面に導電ペーストを印刷して所定の位置に検査用電極パターン、表面電極パターンおよび引出電極パターンを形成し、600〜850℃程度で焼成する。これにより圧電アクチュエータ7を得ることができる。なお、表面電極、引出電極および検査用電極は、圧電セラミック層、共通電極および振動板と同時焼成することもできる。
【0041】
次に、インクジェット記録ヘッド10の製造方法について説明する。
流路部材11は圧延法等によって得られ、インク吐出孔11bおよびインク流路11aはエッチングにより所定の形状に加工されて設けられる。この流路部材11は、Fe−Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種によって形成されていることが望ましく、特にインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましく、Fe−Cr系がより好ましい。
【0042】
圧電アクチュエータ7と流路部材11とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ7や流路部材11への影響を及ぼさないために、熱硬化温度が130〜250℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ7と流路部材11とを加熱接合することができ、これによりインクジェット記録ヘッド10を得ることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、複数の圧電変位部が形成されたインクジェット記録ヘッドに搭載される圧電アクチュエータを例にあげて説明したが、本発明は、微細な変位を発生させることにより各種デバイスの位置決めや加圧などに用いられる種々の圧電アクチュエータに対して適用することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、四角形の圧電セラミック層を用い、検査用電極を四隅にそれぞれ設けた場合について説明したが、圧電セラミック層の形状、並びに検査用電極の配置場所および個数は特に限定されるものではない。
【0045】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明する。
実施例1
焼成後50μmとなるPZTのグリーンシートを2枚準備した。それぞれのグリーンシートに、共にAg−Pdペーストからなる表面電極パターンと共通電極パターンをスクリーン印刷により形成した。表面電極パターンを形成したグリーンシートには予め穿孔し導体を充填して、引出電極と共通電極とを電気的に接続できるようにしておいた。更に、表面電極を形成したグリーンシートには四隅にAg−Pdペーストの検査用電極パターンを、各検査用電極パターンの表面積が表面電極パターンの3倍の表面積となるように印刷形成した。この2枚のグリーンシートを積層し、1100℃で焼成することにより、図1および図2に示すような圧電アクチュエータを得た。
【0046】
得られた圧電アクチュエータにおいて、各表面電極と共通電極との間の静電容量値をそれぞれ計測し平均値を算出した。同様にして、各検査用電極と共通電極との間の静電容量値をそれぞれ計測し平均値を算出した。その結果、表面電極と共通電極との間の静電容量の平均値が、検査用電極と共通電極との間の静電容量の平均値と高い相関性があることがわかった。
【0047】
次に、上記の圧電アクチュエータを流路部材上に積層接着して図1および図2に示すようなインクジェット記録ヘッドを作製した後、インク吐出量と、静電容量値との相関を調べた。その結果、検査用電極と共通電極との間の静電容量の平均値とインク吐出量との間にも高い相関性があることがわかった。したがって、圧電アクチュエータの圧電特性ばらつきおよびインクジェット記録ヘッドのインク吐出量のばらつきは、検査用電極と共通電極との間の静電容量値で検査できることがわかった。
【0048】
実施例2
実施例1で得られた検査結果をランク分けし、該当するランクを示すマークを、実施例1で得られた圧電アクチュエータにおける圧電セラミック層上にUVインキを用いて印字した。ついで、印字されたマークをCCDカメラで読みとり、読みとったデータに基づいて、表面電極と共通電極との間に印加する電圧を下記A〜Cのいずれかの電圧に調整し、圧電特性を調整した。ついで、調整した電圧を印加してインクジェット記録ヘッドのインク吐出量を計測した。
<ランク分け>
A:18V駆動可容量
B:20V駆動可容量
C:22V駆動可容量
【0049】
比較例
実施例1で得られた検査結果に基づく圧電特性の調整を行わず、適正な圧電特性を有していると仮定した場合に用いる電圧を印加した他は、実施例2と同様にしてインク吐出量の計測を行った。
【0050】
比較例では、インク吐出量が適正値から15%程度ばらついていたのに対して、実施例2では、適正値とほぼ同等のインク吐出量が得られた。
【0051】
【発明の効果】
本発明の圧電アクチュエータによれば、表面電極には計測用のプローブを取り付ける必要がなく、検査用電極を使用して圧電アクチュエータの圧電特性を把握することができ、表面電極に傷が付くのを防止することができるので、高品質な圧電アクチュエータを得ることができるという効果がある。
【0052】
本発明では、複数の表面電極が形成された集積度の高い圧電アクチュエータであっても、表面電極に傷を付けることなく圧電アクチュエータの圧電特性を短時間で正確にかつ容易に把握することができるという効果がある。
【0053】
本発明における検査用電極の表面積が表面電極の表面積よりも大きいときは、検査用電極に計測用のプローブを正確に取り付けることができるので、圧電アクチュエータの集積度が高くても、圧電特性を正確に検査することができるという効果がある。
【0054】
本発明における圧電セラミック層の表面に、圧電特性の検査結果を示すマークが付されているときは、このマークを、圧電特性を調整する際の目安とすることができるので、正確にかつ容易に圧電特性のばらつきを調整することができるという効果がある。
【0055】
本発明における圧電セラミック層表面の相互に離隔した複数箇所にそれぞれ検査用電極が設けられているときは、圧電特性の検査精度がより向上するので、圧電特性のばらつきをより低減することができるという効果がある。
【0056】
本発明における四角形の前記圧電セラミック層の四隅にそれぞれ前記検査用電極が設けられているときは、表面電極の配列の妨げになることがなく、小型化・高集積化する上で弊害が生じず、スペースを有効利用することができ、しかも反りが生じるのを抑制することができ、圧電アクチュエータの寸法精度が向上するという効果がある。
【0057】
本発明における圧電セラミック層の厚みが100μm以下であるときは、圧電アクチュエータの小型薄型化が図れるとともに、小さい電圧で大きな変位を得ることができるという効果がある。また、この圧電アクチュエータをインクジェット記録ヘッドに適用することにより、高解像度のインクジェットプリンタを得ることができる。
【0058】
本発明のインクジェット記録ヘッドによれば、インク吐出量のばらつきを正確にかつ容易に調整することができるという効果がある。
【0059】
本発明の調整方法によれば、表面電極に傷を付けることなく圧電特性およびインク吐出量を調整することができるので、圧電アクチュエータおよびインクジェット記録ヘッドの品質を向上させることができるという効果がある。また、前記調整方法によれば、短時間で正確にかつ容易に圧電特性およびインク吐出量を調整することができるので、製造コストを低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電アクチュエータを備えたインクジェット記録ヘッドを示す斜視図である。
【図2】本発明の圧電アクチュエータを備えたインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【図3】従来のインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
2a 振動板
2b 圧電セラミック層
3 表面電極
5 検査用電極
6 共通電極
7 圧電アクチュエータ
8 圧電変位部
9 マーク
10 インクジェット記録ヘッド
11 流路部材
11a インク流路
11b インク吐出孔
11c 隔壁
Claims (5)
- 振動板上に、共通電極および圧電セラミック層がこの順に積層され、さらに前記圧電セラミック層の表面の一部に表面電極が積層されて、圧電変位部が設けられている圧電アクチュエータであって、前記圧電セラミック層が四角形であるとともに、前記圧電セラミック層の表面の四隅にそれぞれ前記圧電変位部の圧電特性を検査するための検査用電極が設けられていることを特徴とする圧電アクチュエータ。
- 前記圧電セラミック層の表面には、前記表面電極が複数形成されている請求項1記載の圧電アクチュエータ。
- 請求項2記載の圧電アクチュエータが、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に、前記インク流路と前記表面電極との位置を揃えて取り付けられているインクジェット記録ヘッド。
- 振動板上に、共通電極および圧電セラミック層がこの順に積層され、さらに前記圧電セラミック層の表面の一部に表面電極が積層されて、圧電変位部が設けられているとともに、前記圧電セラミック層の表面に検査用電極が設けられている圧電アクチュエータにおける圧電特性の調整方法であって、前記圧電セラミック層を介して対向する前記検査用電極と前記共通電極との間の静電容量を計測し、この検査結果に基づいて前記表面電極と前記共通電極との間に印加する電圧を制御して圧電特性を調整することを特徴とする圧電特性の調整方法。
- 振動板上に、共通電極および圧電セラミック層がこの順に積層され、さらに前記圧電セラミック層の表面の一部に複数の表面電極が積層されて、複数の圧電変位部が設けられているとともに、前記圧電セラミック層の表面に検査用電極が設けられている圧電アクチュエータが、インク吐出孔を有する複数のインク流路が配列された流路部材上に、前記インク流路と前記表面電極との位置を揃えて取り付けられているインクジェット記録ヘッドにおけるインク吐出量の調整方法であって、前記圧電セラミック層を介して対向する前記検査用電極と前記共通電極との間の静電容量を計測し、この検査結果に基づいて前記表面電極と前記共通電極との間に印加する電圧を制御して圧電特性を調整することによりインク吐出量を調整することを特徴とするインク吐出量の調整方法。
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JP2003096621A JP4363879B2 (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 圧電アクチュエータ、インクジェット記録ヘッド、圧電特性の調整方法およびインク吐出量の調整方法 |
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