JP4361221B2 - 走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードの測定方法 - Google Patents

走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードの測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、プローブからサンプルにエバネッセント光を照射し、そのときの反射光強度を測定することにより、サンプル表面の光学特性を測定する走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードの測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
走査型近接場顕微鏡には、いくつかの方式が開発されている。このうちイルミネーションモードと呼ばれる方式の走査型近接場顕微鏡では、先端を先鋭化し微小開口を有するプローブに光を入射して、微小開口部近傍にエバネッセント光を発生させ、サンプルとプローブ先端との距離を、エバネッセント存在領域(概ね100nm以下)まで近接させて、両者の距離を一定に保ったままサンプルとプローブを相対的にスキャンさせ、そのときサンプル表面で散乱された光を集光し、フォトマルなどの光検出器により光強度を測定することにより、サンプル表面の光学特性の測定が行われる。このとき回折限界を超えるような分解能で光学測定を行うことが可能である。エバネッセント光の存在領域は微小開口の極近傍に限られ、しかも強度は開口部からの距離に対して指数関数的に減少する。このため、エバネッセント光をサンプルへの照明として利用するためには、エバネッセント光の存在領域にまでサンプルとプローブ先端の距離を近接させる必要がある。エバネッセント光の存在領域にサンプルが近づくとサンプル表面でエバネッセント光が散乱し、散乱した光は伝播光として働き、通常の光と同じような扱いが可能となる。
【0003】
走査型近接場顕微鏡におけるサンプルとプローブ先端との距離制御には、プローブ先端をサンプルに対してプローブの共振周波数近傍で垂直方向に振動させながらサンプルに対して近接させて、プローブ先端とサンプル表面に働く原子間力による振幅または位相の変化量、あるいは、サンプルを間欠的に接触させることによるプローブの振幅または位相の変化量が一定となるように微動機構により制御を行う方式が使用されている。この方式を振動型AFM制御方式と呼ぶ。この方式では、光ファイバーの先端を先鋭化し、プローブの長軸方向に対して屈曲し、先端部に概ね200nm以下の微小開口部を設けたベント型のプローブや、カンチレバーの先端に先鋭化された探針を形成させて、探針先端に開口部を設け、開口部に光を導入するような光導波路を有するマイクロカンチレバーなどが主として用いられる。また、プローブの振幅量の検出には、光てこ法などの光学的な検出手段や、圧電体をプローブに接触させ、プローブの振幅変化による圧電体から発生する電荷量の変化で振幅を検出する方式などが用いられている。また、微動機構には圧電素子やボイスコイルモータなどが使用される。
【0004】
また、プローブ先端をサンプル表面に対して水平方向に加振させながらサンプルに対して近接させて、プローブ先端とサンプル表面に働くシアフォースよるプローブの振幅または位相の変化量が一定となるように微動機構により制御行う方式も利用されている。この方式をシアフォース制御方式と呼ぶ。この方式では、主として光ファイバーの先端を先鋭化し、先端部に微小開口部を設けたストレート型のプローブが用いられる。
【0005】
これらのイルミネーション方式による走査型近接場顕微鏡において、エバネッセント光がサンプルで散乱された後、サンプルを透過してきた光を集光するモードをイルミネーション透過モード、反射してきた光を集光するモードをイルミネーション反射モードと呼ぶ。イルミネーション透過モードは生体や有機薄膜などの透過性を持ったサンプルに用いられる。一方、イルミネーション反射モードは半導体や金属薄膜などの非透過性のサンプル観察に用いられる。
【0006】
イルミネーションモードによる走査型近接場顕微鏡において、分解能とS/N比の向上を目的として、プローブの振動周期と同期して入射光を光変調し、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させ、開口部からの出射タイミングと出射時間を可変する方式が特開平7-260808公報に開示されている。
【0007】
走査型近接場光学顕微鏡ではプローブとサンプル間の距離が離れるにしたがって分解能が低下する。特開平7-260808公報の方式で振動型AFM方式を行う場合には、エバネッセント光にプローブの振幅に応じた変調を掛けて位相と間欠率を変化させ、プローブとサンプルが最も近接した場合にのみ発光させることにより、分解能低下の原因となるサンプルとプローブ間の距離が離れた場合の光信号成分を除去することができ、その結果、分解能を向上させることができる。
【0008】
また、シアフォース方式では振動中心から遠ざかるにしたがって分解能が低下するが、特開平7-260808公報の方式により振動中心付近でのみ光を出射することにより分解能低下の要因となる信号成分を除去することができ、分解能が向上する。
【0009】
また、走査型近接場顕微鏡で取り扱われる光信号は一般に非常に微弱なため、S/N比が悪い傾向がある。特開平7-260808公報の方式では、変調された光信号をロックイン検出することによりS/N比を向上させることが可能である。
【0010】
さらに、シアフォース制御方式を用いた走査型近接場顕微鏡において、サンプル表面に対してプローブ先端を楕円振動させて、水平方向の振幅変化による距離制御に加え、垂直方向の振動により光変調を行い、信号をロックイン検出することによりS/N比を向上させる測定方法が、石川らによりOptics Japan'99講演予稿集 24aB1 pp.233-234に述べられている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7-260808公報の方法をイルミネーション反射モードに使用した場合、次のような問題があった。
【0012】
イルミネーション透過モードではサンプルに対してプローブとは反対側に集光用の対物レンズが配置されるため、対物レンズの立体角を有効に使用可能である。しかしながらイルミネーション反射モードの場合にはサンプルに対してプローブと同じ側に集光用対物レンズを配置する必要がある。この場合、プローブが邪魔になり対物レンズの立体角を最も有効に使用できるような配置は困難であり、サンプルからプローブ先端を通る軸に対して斜め方向に対物レンズを配置するか、最も散乱光強度が強いサンプルからプローブ先端を通る軸の部分を避けるような対物レンズを製作するか、あるいは、集光用の凹面鏡などを組合せプローブが配置されている部分を避けながら信号を集光する、といった工夫が必要行われているが、いずれの方法もイルミネーション透過モードに比べて集光効率が著しく悪い。
【0013】
さらに、分解能向上を目指して、サンプルとプローブ先端が最も近接した場所で光を照射した場合には、プローブがサンプルからの散乱光を遮る形になり、信号の検出は極めて困難である。
【0014】
また、石川らによる方法はプローブからエバネッセント光をイルミネーションモードで照射した後、サンプルで散乱された光を、照射の場合と同一のプローブの開口部分から集光して、ロックイン検出を行う方式である。このような方式はイルミネーションコレクションモードと呼ばれ、イルミネーション反射モードとは検出形態が異なるものである。イルミネーションコレクションモードの場合にはプローブの開口が非常に微小であるため集光効率が悪く、また、光を伝播するための光ファイバーのカップリング部分などの損失も無視することができない。
【0015】
したがって、走査型近接場顕微鏡で非透過性サンプルの測定を行う場合には測定目的に応じてイルミネーションコレクションモードとイルミネーション反射モードを使い分けているが、石川らの方法はイルミネーション反射モードにおける問題点の解決を行うことは不可能である。
【0016】
そこで、本発明の目的は、従来のこのような問題を解決するため、
走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードにおいて、集光効率のよい測定方法を得ることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、先端が先鋭化され、先端部に微小開口を有し、プローブの長軸方向に対して先端を屈曲させたプローブと、サンプルに対して前記プローブ先端を垂直方向に振動させる加振手段と、前記プローブにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、前記光源からの光を前記プローブの振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記プローブの変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能な位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記プローブを相対移動させる粗動機構および微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、プローブ先端がサンプルに最も近づいた状態よりも遠ざかった位置で、プローブ先端から光を照射し、そのときのサンプルからの反射光をロックイン検出し、イルミネーション反射モードの測定を行うようにした。
【0018】
また、先端に微小開口を有するプローブと、サンプルに対して前記プローブ先端を水平方向に振動させる加振手段と、垂直方向に振動させる加振手段と、前記プローブにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、前記光源からの光を前記プローブの垂直方向の振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記プローブの水平方向の変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能な位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記プローブを相対移動させる粗動機構および微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、プローブ先端がサンプルに近接させた場合の水平方向の振幅変化によりプローブ先端とサンプル間の距離制御を行いながら、垂直方向加振手段によりプローブ先端がサンプルに最も近づいた状態よりも遠ざかった位置で、プローブ先端から光を照射し、そのときのサンプルからの反射光をロックイン検出を行ってイルミネーション反射モードの測定の測定を行うようにした。
【0019】
さらに、サンプルに対するプローブまたはマイクロカンチレバーの垂直方向の振幅量を20nm以上で加振し、イルミネーション反射モードの測定を行うようにした。
【0020】
【発明の実施の形態】
上記のように構成された走査型近接場顕微鏡により、プローブ先端とサンプル間に隙間ができたときに光の集光を行うことで、プローブ先端で光が遮られることが少なくなり、集光効率が向上する。その結果、イルミネーション反射像のS/N比が向上する。
【0021】
更に、プローブのサンプル表面に対する垂直方向の振幅量を20nm以上で大きく振ることにより、プローブ先端で遮られる部分がさらに少なくなり、さらに集光効率が向上する。
【0022】
これらの場合、プローブとサンプルが最も近づいたときに発光させる場合よりも分解能は低下するが、プローブの振幅量は通常、100nm以下であるため、十分、近接場が存在する領域であり、従来型の光学顕微鏡を超える分解能は確保することができる。
【0023】
また、プローブから照射する光をプローブの振幅周期で同期させ、ロックイン検出を行うことにより、S/N比も向上する。
【0024】
【実施例】
以下に、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明の第一実施例の走査型近接場顕微鏡の外観図である。
【0026】
本実施例で使用するプローブ1は、光ファイバーの先端を熱引きあるいはエッチングにより先鋭化するとともに、溶融させることにより光ファイバーの長軸方向に対して屈曲させたベント型のプローブである。プローブ先端部にはφ5nm〜φ200nm程度の微小開口が設けられ、開口部以外はアルミニウム膜が蒸着されている。プローブの背面は機械的に研磨され反射面が設けられている。
【0027】
プローブ1は、圧電素子2による加振機能を有するプローブホルダ3に固定される。プローブの振幅の検出には、半導体レーザ4をプローブ背面に設けた反射面に当て、反射光を4分割ディテクタ5で検出する光てこ方式の変位計6が用いられる。
【0028】
一方、サンプル7は微動機構8上に設けられたサンプルホルダ9上に載置される。
【0029】
サンプル7に対してプローブ1と同一側にはイルミネーション反射モード時に使用される集光用対物レンズ10が設けられている。この対物レンズ10は、プローブ1、光てこ光学系6、カンチレバーホルダ2と干渉しないようにプローブ先端とサンプル表面を通る軸に対して斜め方向に配置されており、フォーカシング方向の調整機能11を有している。この反射側の対物レンズ10で集光された光信号は鏡筒12内を通り結像レンズ13で結像され、フォトマルから構成される光検出部14に導かれる。
【0030】
サンプル7をスキャンするための微動機構8には円筒型圧電素子を使用している。円筒型圧電素子は、円周に沿って一様に電極が設けられ、サンプルとプローブ間の距離制御を行うためのZ駆動部と円周上を4分割した電極が設けられサンプルを2次元平面内でXY方向にスキャンするためのXY駆動部が設けられた構造である。
【0031】
微動機構8上のサンプル7は粗動機構1 5により、プローブ先端に対して近接される。粗動機構15にはステッピングモータ駆動による送りネジ方式を使用した。プローブ1を共振点近傍で加振しながら粗動機構15によりサンプル7を近接させていくと、プローブ先端とサンプル間に働く原子間力や、間欠的な接触により振幅が減衰する。この減衰量が一定となるように微動機構8でZ駆動することにより、プローブ1とサンプル7間の距離を一定に保つことが可能である。距離を一定に保ったままで、微動機構8のXY駆動部によりスキャンさせると、XY平面内での凹凸像が測定可能である。また、プローブ先端とサンプル間に働く原子間力や間欠的な接触による位相の変化で距離制御を行うことも可能である。
【0032】
微小開口部からサンプル7に対して光を照射するための光源16には、アルゴンレーザを使用した。アルゴンレーザの前方には、プローブ7への入射光に変調を掛けるため、AOモジュレータ17を配置し、AOモジュレータ17を通った光は対物レンズ18で集光されて、プローブ1の末端にカップリングされる。
【0033】
AOモジュレータ駆動用の信号19は、プローブ加振信号20と同期した周波数で、加振信号20に対して位相および間欠率を変化させる移相器21により調整されて、入射光に変調が掛けられる。
【0034】
一方、フォトマル14により検出された検出信号は、プローブ加振用の信号20をリファレンス信号として、ロックインアンプ22でロックイン検出される。
以上のような構成をもつ走査型近接場顕微鏡においてイルミネーション反射モードで測定を行う場合、図2に示すように、プローブがサンプルから遠ざかった地点でエバネッセント光が照射されるように移相器でAOモジュレータの変調信号の位相φと間欠比(t/T)を調整すると、プローブ先端とサンプル表面との間に隙間ができるため、最も近づいた場合に比べ集光効率が大幅に向上する。また、検出された信号はロックイン検出されるためS/N比も向上する。
【0035】
このとき、プローブとサンプルが最も近づいたときに発光させる場合よりも分解能は低下するが、プローブの振幅量は通常、100nm以下であるため、十分、近接場が存在する領域であり、従来型の光学顕微鏡を超える分解能は確保することができる。
【0036】
さらに、エバネッセント光の存在範囲以内で、プローブの振幅量を増加させることにより、プローブ先端で反射光が遮られる割合が更に少なくなり、集光効率が向上する。
【0037】
これらの一連の動作は制御装置23により行われ、また、得られた凹凸信号と光学特性情報の画像化も同一の制御装置により行われる。
【0038】
以上のような方法でイルミネーション反射モードの測定を行う場合の装置構成は上記のような構成のみには限定されない。
【0039】
例えば、プローブの振幅の検出には光てこ法のほかにも、圧電体を利用する方法がある。この場合、圧電体をプローブに固定し、圧電体と一緒に振動させる。プローブに外力がかかると、圧電体から発生する電荷量が変化する。この変化量により振幅の検出が行われる。
【0040】
さらに、微動機構には円筒型圧電素子に加え、トライポット型の圧電素子や、平行バネと圧電素子を組み合わせた方式、またボイスコイル方式なども使用される。
【0041】
微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源には、アルゴンレーザ以外の光源も使用可能である。
【0042】
光源の変調手段にはAOモジュレータによる方法以外にも、メカニカルチョッパーを用いる方式や、半導体レーザを利用して、レーザ自体のON/OFF動作により変調を掛ける方式も考えられる。
【0043】
図3は本発明の第二実施例の走査型近接場顕微鏡の外観図である。
【0044】
本実施例では図4に示されるようなカンチレバー24を使用した。このカンチレバー24はSiO2製でカンチレバー部24aとカンチレバー部先端に設けられる探針部24bが一体成形される。カンチレバーの探針が設けられている面は、探針の最先端部を除いてアルミニウム24cでコートされる。以上のような構成により先端に微小開口部24dを有するカンチレバーが形成される。
【0045】
このカンチレバー24は圧電素子からなる加振部25を持ったカンチレバーホルダ26に固定される。
【0046】
このカンチレバー24の上面側に顕微鏡27を配置し、顕微鏡の鏡筒27a内に光源28からの光を導いて、対物レンズ29で集光し、カンチレバーの開口部24dに集光させる。SiO2は光学的に透明であるため、カンチレバー自体が導波路として作用し、開口部24dに入射光が導かれ開口部近傍にエバネッセント光が発生する。本実施例では光源として半導体励起のYAGレーザを使用し、変調信号でレーザをON/OFF駆動することにより変調をかけた。
【0047】
上記以外の部分の構成は第一の実施例と同一である。
【0048】
このように構成された走査型近接場顕微鏡を使用して、第一の実施例と同様にカンチレバー先端がサンプル7から遠ざかった位置で照射を行うことにより、カンチレバー先端で反射光が遮られる割合が少なくなり、集光効率が向上する。
【0049】
本実施例で使用されるカンチレバーは上記のタイプに限定されず、例えばシリコンナイトライドで形成され、カンチレバーの裏側から探針先端に向かってFIBで微細な穴を設けて導波路を確保する方式や、探針先端に設けられた開口部に光が導かれるようにカンチレバーの軸方向に導波路を形成し、カンチレバーの末端の側面部から光を入射する方式などが考えられる。
【0050】
図5には本発明の第三実施例の走査型近接場顕微鏡の外観図を示す。
【0051】
本実施例では光ファイバーの先端を熱引きあるいはエッチングにより先鋭化するとともに、プローブ先端部にφ5nm〜φ200nm程度の微小開口を設け、開口部以外はアルミニウム膜を蒸着したストレート型のプローブ30が用いられる。
【0052】
このプローブ30の長軸方向がサンプル7に対して垂直になるようにプローブホルダ31によりプローブが配置される。プローブホルダ31にはプローブ先端がサンプル7に対して水平方向と垂直方向に加振させるための圧電素子32が設けられている。入射用の光源16および反射光検出部分の構成は第一実施例と同様である。プローブ30はプローブの共振周波数近傍の信号33によりサンプルに対して水平方向に加振されるとともに、サンプルに対して垂直な方向にも任意の周波数の信号34で加振される。プローブには水平方向の振幅検出用の圧電体35が固定されている。プローブ30の水平方向の振幅量の変化は、プローブに固定された圧電体35から発生する電荷量の変化として検出される。このとき、プローブに入射されるArレーザ16はAOモジュレータ17によりプローブ30の垂直方向の振動周期と同期した信号36により変調が掛けられる。
【0053】
本実施例の場合にもプローブ30がサンプル7から遠ざかった地点でエバネッセント光が照射されるように移相器21でAOモジュレータの変調信号36の位相φと間欠比(t/T)を調整することにより、集光効率が大幅に向上する。また、垂直方向の加振周波数をリファレンス信号として光検出部14で検出される信号をロックインアンプ22によりロックイン検出させることによりS/N比も向上する。
【0054】
本実施例のプローブの振幅検出手段は、圧電体による方式に限定されず、光学的に検出することも可能である。また、振幅変化による距離制御以外にも位相の変化により距離制御を行うことも可能である。
【0055】
第一実施例から第三実施例では、反射光の集光方式として対物レンズを斜めに配置する方式を用いているが、集光方式はこれに限定されず、集光用の凹面鏡を使用して集光光学系を組む方式や、プローブを避けるような逃げを設けた集光レンズにより集光を行う方式なども使用可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードの測定方法では、先端が先鋭化され先端部に微小開口を有しプローブの長軸方向に対して先端を屈曲させたプローブと、サンプルに対して前記プローブ先端を垂直方向に振動させる加振手段と、前記プローブにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、前記光源からの光を前記プローブの振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記プローブの変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能な位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記プローブを相対移動させる粗動機構および微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、プローブ先端がサンプルに最も近づいた状態よりも遠ざかった位置でプローブ先端から光を照射し、そのときのサンプルからの反射光をロックイン検出するように構成した。その結果、プローブ先端とサンプル間に隙間ができたときに光の集光が行われるため、プローブ先端で光が遮られることが少なくなり集光効率が向上し、イルミネーション反射像のS/N比が向上する。
【0057】
また、先端が先鋭化された探針と該探針の先端に設けられた微小開口部と微小開口部に光を伝達するための導波路を有するマイクロカンチレバーと、サンプルに対して前記探針を垂直方向に振動させる加振手段と、前記マイクロカンチレバーにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、マイクロカンチレバーとのカップリング手段と、前記光源からの光を前記マイクロカンチレバーの振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記マイクロカンチレバーの変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能な位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記マイクロカンチレバーを相対移動させる粗動機構および微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、プローブ先端がサンプルに最も近づいた状態よりも遠ざかった位置でプローブ先端から光を照射し、そのときのサンプルからの反射光をロックイン検出するように構成した。
【0058】
この場合にも、プローブ先端とサンプル間に隙間ができたときに光の集光が行われるため、プローブ先端で光が遮られることが少なくなり集光効率が向上し、イルミネーション反射像のS/N比が向上する。
【0059】
また、先端が先鋭化され先端部に微小開口を有するプローブと、サンプルに対して前記プローブ先端を水平方向に振動させる加振手段と、垂直方向に振動させる加振手段と、前記プローブにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、前記光源からの光を前記プローブの垂直方向の振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記プローブの水平方向および垂直方向の変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能な位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記プローブを相対移動させる粗動機構および微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、プローブ先端がサンプルに近接させた場合の水平方向の振幅変化によりプローブ先端とサンプル間の距離制御を行いながら、垂直方向加振手段によりプローブ先端がサンプルに最も近づいた状態よりも遠ざかった位置で、プローブ先端から光を照射し、そのときのサンプルからの反射光をロックイン検出するような構成とした。その結果、プローブ先端とサンプル間に隙間ができたときに光の集光が行われるため、プローブ先端で光が遮られることが少なくなり集光効率が向上し、イルミネーション反射像のS /N比が向上する。
【0060】
更に、プローブのサンプル表面に対する垂直方向の振幅量を20nm以上で大きく振ることにより、プローブ先端で遮られる部分がさらに少なくなり、さらに集光効率が向上する。
【0061】
これらの場合、プローブとサンプルが最も近づいたときに発光させる場合よりも分解能は低下するが、プローブの振幅量は通常、100nm以下であるため、十分、近接場が存在する領域であり、従来型の光学顕微鏡を超える分解能は確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の装置構成を示す外観図である。
【図2】プローブの振幅の軌跡と光変調信号の関係を示す説明図である。
【図3】本発明の第二実施例の装置構成を示す外観図である。
【図4】本発明の第二実施例に使用されるカンチレバーの断面図である。
【図5】本発明の第三実施例の装置構成を示す外観図である。
【符号の説明】
1 プローブ
3 プローブホルダ
6 光てこ式変位計
7 サンプル
8 微動機構
9 サンプルホルダ
10 集光用対物レンズ
14 光検出部
15 粗動機構
16 光源
17 AOモジュレータ
18 対物レンズ
19 変調信号
20 加振信号
21 移相器
22 ロックインアンプ
23 制御装置
24 カンチレバー
26 カンチレバーホルダ
27 顕微鏡
28 光源
29 対物レンズ
30 ストレート型プローブ
31 プローブホルダ
32 加振用圧電素子
33 水平方向の加振信号
34 垂直方向の加振信号
35 検出用圧電素子
36 変調信号

Claims (3)

  1. 先端が先鋭化され、先端部に直径5nm以上200nm以下の微小開口を有し、プローブの長軸方向に対して先端を屈曲させたプローブと、サンプルに対して前記プローブ先端を垂直方向に振動させる加振手段と、前記プローブにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、前記光源からの光を前記プローブの振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記プローブの変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能で前記プローブに干渉しない位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記プローブを相対移動させる微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、
    前記プローブ先端を20nm以上100nm以下の振幅で加振し、前記加振に伴う振幅または位相の変化量により前記プローブと前記サンプル間の距離を制御し、前記プローブ先端がサンプル表面から20nm以上の位置で、プローブ先端から前記光変調手段により変調された光が照射されるように前記移相器により位相および間欠率を調整し前記プローブの振動周期をリファレンス信号としてサンプルからの反射光をロックイン検出することを特徴とする走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードの測定方法。
  2. 先端が先鋭化された探針と該探針の先端に設けられた直径5nm以上200nm以下の微小開口部と微小開口部に光を伝達するための導波路を有するマイクロカンチレバーと、サンプルに対して前記探針を垂直方向に振動させる加振手段と、前記マイクロカンチレバーにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、マイクロカンチレバーとのカップリング手段と、前記光源からの光を前記マイクロカンチレバーの振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記マイクロカンチレバーの変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能で前記探針に干渉しない位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記マイクロカンチレバーを相対移動させる微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、
    前記探針先端を20nm以上100nm以下の振幅で加振し、前記加振に伴う振幅または位相の変化量により前記プローブと前記サンプル間の距離を制御し、前記探針がサンプル表面から20nm以上の位置で、微小開口部から前記光変調手段により変調された光が照射されるように前記移相器により位相および間欠率を調整し、前記プローブの振動周期をリファレンス信号としてサンプルからの反射光をロックイン検出することを特徴とする走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードの測定方法。
  3. 先端が先鋭化され、先端部に直径5nm以上200nm以下の微小開口を有するプローブと、サンプルに対して前記プローブ先端を水平方向に振動させる加振手段と、垂直方向に振動させる加振手段と、前記プローブにカップリングされ、微小開口部からサンプルに対して光を照射するための光源と、前記光源からの光を前記プローブの垂直方向の振動周期と同期して振幅変調する光変調手段と、前記光変調手段での位相または間欠率を変化させる移相器と、前記プローブの水平方向の変位を検出する変位検出手段と、サンプルからの反射光を検出可能で前記プローブに干渉しない位置に配置された集光光学系と、反射光強度を測定するための光検出器と、前記サンプルと前記プローブを相対移動させる微動機構と、装置全体を制御する制御装置を有する走査型近接場顕微鏡において、
    前記プローブ先端サンプルに近接させた場合の水平方向の振幅または位相の変化により前記プローブ先端とサンプル間の距離制御を行いながら、前記プローブ先端を20nm以上100nm以下の振幅で垂直方向に加振し、プローブ先端がサンプル表面から20nm以上の位置でプローブ先端から前記光変調手段により変調された光が照射されるように前記移相器により位相および間欠率を調整し前記プローブの垂直方向の振動周期をリファレンス信号としてサンプルからの反射光をロックイン検出することを特徴とする走査型近接場顕微鏡におけるイルミネーション反射モードの測定方法。
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