JP4202076B2 - 散乱型近接場顕微鏡 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サンプル表面に発生するエバネッセント光を金属または誘電体からなる探針構造を有するカンチレバーにより散乱させて、散乱光を検出することにより、回折限界を超える高分解能でサンプル表面の光学特性を測定するための、散乱型近接場顕微鏡および散乱型近接場分光システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の散乱型近接場顕微鏡の第1の従来技術を、図13を基に説明する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の散乱型近接場顕微鏡は、金属または誘電体により製作され、先端が先鋭化された針状プローブ107を使用して、光源104、コンデンサーレンズ105、プリズム103よりなる全反射光学系、透過光学系あるいは反射光学系(透過光学系、反射光学系は図示せず)によりサンプル101の表面に発生させた微細な構造情報を有するエバネッセント光が存在する領域に前記プローブ107を挿入し、プローブ先端の微細構造とエバネッセント光とを相互作用させ、前記相互作用によって発生する伝播できる散乱光を集光レンズ109で集光して光電検出器110で検出することによって回折限界を超える分解能での微細構造計測を行っている。一般にエバネッセント光は強度が弱く検出が極めて困難であるが、本方式では探針先端の金属や誘電体の作用により散乱光は増強され、検出効率が向上する。
【0004】
第1の従来技術でプローブとサンプルの距離制御を行う方法の一例として、散乱光強度を利用する方法が紹介されている。エバネッセント光強度はサンプルからの距離に対して指数関数曲線に乗って減衰するため、エバネッセント光の散乱光強度により距離制御を行うことが可能である。
【0005】
また、第1の従来技術の応用例として、図14を基にストレート型の金属プローブを用いた散乱型近接場顕微鏡の第2の従来技術を説明する(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
第2の従来技術では、試料202の表面に生成されたエバネッセント光に先端が先鋭化された誘電体または金属からなるプローブ203を挿入し、プローブ先端で散乱された散乱光強度を計測することにより、回折限界を超える高い分解能で試料の光学情報を計測している。試料表面に発生するエバネッセント光の強度は試料からの距離に対して指数関数的に減少する。このため、試料表面に発生するエバネッセント光には試料表面の形状情報と光学情報が含まれている。そこで、プローブと試料表面間の距離を一定に保ちながら、試料とプローブを相対的にスキャンさせることにより、形状情報と光学情報を分離して測定することが可能となる。第2の従来技術では、プローブ203を試料202の表面に対して平行に振動させ、そのときのプローブ203の振幅を半導体レーザ210とレンズ211,212および2分割フォトディテクタ213よりなる変位検出器によって測定することにより、プローブ203と試料202間の高さ方向の距離が一定になるように制御が行われる。プローブ203と試料202を近接させた場合、プローブ先端203aにはシアフォースが作用する。このシアフォースにより、プローブの振幅や位相が変化する。このシアフォースは試料表面からの距離に依存するため、プローブの振幅または位相を計測することにより、プローブと試料間の距離制御が可能となる。
【0007】
更に、第1の従来技術に関する、別の応用例である散乱型近接場顕微鏡の第3の従来技術について図15を基に説明する(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
第3の従来技術では原子間力顕微鏡用の探針付カンチレバーに銀をコートしたプローブ301が用いられている。第3の従来技術では透過製のサンプル302の裏面に開口数(NA)が1.4の油浸対物レンズ303を配置し、対物レンズを通して、サンプル裏面から励起源となる波長488nmのレーザ光304をサンプルに照射する。このとき、対物レンズのNAが1以下となる部分に入射するレーザ光をカットするように光路上にマスク(図示せず)を挿入する。このとき、サンプルにはNAが1以上の光のみがサンプルに入射し、この光はサンプル表面部分で全反射されて、サンプルの表面にはエバネッセント光が形成される。このエバネッセント光にカンチレバーの探針301aを挿入すると、エバネッセント光が散乱される。このとき散乱光は探針にコートされた銀の作用により増強される。散乱光305は、励起光を集光したものと同一の対物レンズ303により集光されて、ノッチフィルター(図示せず)により励起光を除去し、その散乱光を冷却CCDカメラ付の分光器(図示せず)で分光分析することにより、回折限界を超える分解能で、ラマン分光分析を行っている。第3の従来技術では探針先端301aとサンプル302間に働く原子間力により探針とサンプルの距離制御が行われ、第2の従来技術と同じく、エバネッセント光に含まれる形状情報と光学情報を分離して測定することが可能である。
【0009】
【特許文献1】
特許第3196945号公報(第2−4項、第1図)
【0010】
【特許文献2】
特開平9−281122号公報(第3−7項、第4図)
【0011】
【非特許文献1】
Norihiko Hayazawa, Yasushi Inouye, Zouheir Sekkat, Satoshi Kawata, Near-field Raman scattering enhanced by a metallized tip, Chemical Physics Letters 335 (2001) 369-374
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1の従来技術では、探針と試料間の距離制御に散乱光を用いているため、エバネッセント光に含まれる形状情報と光学情報を分離できないという問題があった。さらに、エバネッセント光を散乱させた光は強度が弱いため、S/N比が悪くなり、制御が難しいという問題があった。
【0013】
第2の従来技術では、シアフォース制御により探針と試料間の距離制御を行いながら散乱光を測定しているため、形状情報と光学情報を分離して測定することが可能である。また、プローブの振幅測定が半導体レーザと2分割フォトディテクタからなる変位計により行われているため、散乱光強度による距離制御に比べて安定した制御が可能となる。しなしながら、シアフォース制御ではシアフォースが作用する原理としては、表面の吸着水によるキャピラリフォースや、摩擦力、原子間力、表面の凹凸による形状因子など複数の要因が考えられる。このため、安定性が低く、形状情報を完全には除去できない場合もある。また、シアフォース制御ではプローブを試料表面に対して平行に振動させているため、面内方向の分解能が悪くなる。さらに、プローブの変位の検出に半導体レーザが用いられているため、この光が、散乱光の検出信号の中に混入し、ノイズの要因となる。
【0014】
さらに、第1、第2の従来技術では、ストレート型のプローブが用いられている。このような形態のプローブは通常、1本1本手作業で製作を行う必要があり、品質にばらつきが生じ、またコストも高くなる。さらに装置へ取り付けなど操作性も悪い。
【0015】
第3の従来技術では、カンチレバーを用いて、探針とサンプル間に働く原子間力によりカンチレバーの撓みを検出し、撓みが一定となるように探針とサンプル間の距離制御を行っている。この方法では、シアフォースに比べてより安定して形状情報と光学情報を分離することが可能である。また、第3の従来技術に用いられるカンチレバーは半導体プロセス技術を用いて、ウェハ単位で大量に製作することが可能であるため、前述のストレート型のプローブに比べて、品質のばらつきが少なくなり、大量生産によりコストも安くなる。また、装置への取り付けも容易である。しかしながら、第3の従来技術ではシリコン基板により構成された探針付カンチレバーに銀をコートしたプローブが用いられている。このタイプのカンチレバーの撓み量の検出は外部から行う必要があり、通常は半導体レーザの光をカンチレバー背面に反射させて、反射光を2分割または4分割のフォトディテクタの検出面上に集光させて、検出面のスポットの軌跡から変位量を検出する光てこ法と呼ばれる方式により行われる。
【0016】
光てこ法の場合、第2の従来技術と同様に半導体レーザを用いているため半導体レーザの光が散乱光の検出信号に混ざり込みノイズとなってしまう。更に、外部からカンチレバーの変位量を検出する場合には、カンチレバーの周囲に検出用の機構を設ける必要があり、カンチレバーまわりのスペースに制約が生じる。散乱型近接場顕微鏡で非透過性のサンプル測定を行う場合には後方散乱成分の集光を行う必要があるが、後方散乱光の集光などのため、カンチレバーの周囲に光学部材の配置が必要な場合が多く、スペースが制約された場合には集光効率などの測定データに直接影響するような要因を犠牲にして光学部材を配置せざるを得ない。更にスペースが狭くなることにより、サンプルの交換や、測定時の光軸調整などの作業性も悪くなってしまう。
【0017】
本発明の目的は上記課題を解決できるような散乱型近接場顕微鏡および散乱型近接場分光システムを提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の散乱型近接場顕微鏡では、探針構造を有するカンチレバーと、カンチレバーを保持するためのカンチレバーホルダと、探針に対向する位置に配置され、サンプルの保持を行うサンプルホルダと、カンチレバーの撓み量を検出するための撓み量検出手段と、探針とサンプル間の距離を調整するための微動機構と、探針とサンプルを2次元平面内で相対的に移動させるスキャナと、撓み量検出手段からの信号を基に前記微動機構を動作させて、微小探針とサンプル間の距離の調整を行うためのサーボ回路と、サンプル表面にエバネッセント光を発生させるエバネッセント光発生手段と、サンプル表面に発生したエバネッセント光に探針を近接させた際に発生する散乱光を集光するための集光手段と、散乱光の強度を測定するための光検出部により散乱型近接場顕微鏡を構成し、散乱型近接場顕微鏡用のプローブに半導体プロセスにより製作が可能なカンチレバーを使用して原子間力顕微鏡の技術によりサンプルと探針間の距離制御を行うようにした。このときのカンチレバーの撓み量検出手段として、カンチレバー構造の一部に撓み量検出手段を設け、自己検知型のカンチレバーとした。
【0019】
また、カンチレバーの先端部付近に散乱光強度増強用の金属または誘電体を取り付けた。
【0020】
さらに、カンチレバーの一部または全部を検出される信号に対して光学的に透明な材料を使用した。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、ここで述べる実施形態は本発明の一実施形態例に過ぎず、この実施形態例で本発明が限定されるものではない。
【0022】
(1)第一実施形態例
図1〜図4に、本発明に係る散乱型近接場顕微鏡の第一実施形態例を示す。図1は第一実施形態例の装置構成図、図2〜図4は第一実施形態例に用いられるカンチレバーの構成図で、図2は平面図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図2のB−B線断面図である。
【0023】
本実施形態例では、透明なサンプルホルダ1の下に開口数が1以上の対物レンズ2(ここでは開口数1.4の油浸レンズ)を配置した。この対物レンズ2にレーザ3からの光を導入する。レーザ光は、ビームエクスパンダー4により平行光に変換され、ダイクロイックミラー5により90°曲げられて対物レンズ2に導かれる。このとき、ビームエクスパンダー4とダイクロイックミラー5間の光路上に対物レンズ2に入射する光のうち開口数が1以下の部分の光をカットするように、円盤状の遮光板6を挿入する。このような光学系により、対物レンズ2から開口数が1以上の部分の光をサンプル7に入射することにより光は全反射角で入射し、サンプル7の表面にエバネッセント光が形成される。
【0024】
サンプル7はサンプルホルダ1上に載置されており、サンプルホルダ1には圧電素子より構成され、2次元平面内でのスキャンと高さ方向のサーボ動作が可能な3軸微動機構8が取り付けられている。
【0025】
一方、サンプル7の上方には、カンチレバーホルダ10が配置され、先端に先鋭化された探針構造を有する自己検知型のカンチレバー11が取付けられる。このカンチレバーは、図2に示したように、酸化シリコン層17bとシリコン層17aにより構成されるベースブロック17上にn型シリコン基板12によりカンチレバーを構成し、n型シリコン基板12の表面に、U字状にp型不純物シリコン13が注入されている。このp型不純物シリコン13がピエゾ抵抗体として作用する。このピエゾ抵抗体13は外部に設けられたプリアンプ25と電気的に接続するためのメタルコンタクト部14a,14bに接続されている。シリコン基板12の表面にはメタルコンタクト部14a,14bの絶縁用にシリコン酸化膜15が形成されている。また、この自己検知カンチレバー11の探針部分11aには、銀16が蒸着されている。
【0026】
カンチレバーホルダ10は、探針11aとサンプル7表面とを近接させるための粗動ステージ18に搭載されている。粗動ステージ18はステッピングモータ19と送りネジ20による機構を用いてマイクロメータヘッド21の脚を支点にして、カンチレバーホルダ10が搭載された粗動ステージ18をサンプル7に対して近接させるような構成である。
【0027】
このように構成された装置で、探針11aとサンプル7を原子間力が作用する領域まで近づけた場合、カンチレバー11の先端に作用する原子間力によりカンチレバー11に撓みが生ずる。このとき、ピエゾ抵抗体13にひずみが生じ、抵抗値が変化する。この抵抗変化をプリアンプ25で増幅し検出することによって、撓み量を測定する。プリアンプ25とピエゾ抵抗体13はブリッジ回路を構成しておりピエゾ抵抗体13にバイアス信号を印加し、抵抗値の変化に応じた出力信号が増幅して検出される。プリアンプ25での検出信号は差動アンプ(図示せず)に入力され基準信号と比較することによって撓み量が測定される。この撓み量は探針11aとサンプル7間の距離に依存するため、撓み量が一定となるように微動機構8をサーボ機構(図示せず)によりサーボ動作させることによってサンプル7と探針11aの距離を一定に保つことが可能となる。
【0028】
サンプル7表面に発生するエバネッセント光は、一般的にはサンプル表面から100nm〜200nmまでの間に存在し、サンプル7表面から遠ざかるにしたがって指数関数曲線に乗って減衰する。探針11aとサンプル7をサーボ動作させながら、この領域に位置決めすることにより、探針先端11aでエバネッセント光が散乱され、さらに、探針先端11aで散乱された光は銀の電場増強作用により増強され、伝播光に変換される。
【0029】
この散乱光は、励起光の入射に用いたレンズと同一のレンズ2で集光される。集光を行う場合には、開口数1以下の部分も含め対物レンズ全体で集光が行われる。集光された光信号のうち、所望の検出信号をダイクロイックミラー5と吸収フィルター22で選択し、全反射ミラー23で90度に曲げられて、結像レンズ24により結像された後、光検出器26に導かれる。光検出器26には、ここでは光電子増倍管を用い、フォトンカウンター27を用いて、フォトンカウンティング方式により光強度の計測を行った。
【0030】
このように構成された散乱型近接場顕微鏡において、サンプルを3軸微動機構8によりサンプル7と探針11aの高さを一定に保ちながら、2次元平面内でスキャンさせることにより、サンプル表面での光学情報のマッピングが回折限界を超える分解能で測定される。更に、高さ方向の制御に用いたサーボ信号をマッピングすることによりサンプル表面の凹凸像も同時に測定できる。
【0031】
本実施形態例の散乱型近接場顕微鏡では、距離制御にカンチレバーを利用した原子間力顕微鏡技術を用いているため、ストレートプローブを用いたシアフォース制御に比べ安定した距離制御が可能となり光学像と形状像を完全に分離して測定することが可能である。
【0032】
また、従来行われていたように撓み量の検出にレーザを用いた光てこ光学系などを使用していないため、撓み量検出用の光が散乱信号に混入してノイズとなることがない。また撓み量検出用に光てこなどを用いた場合には光軸合わせなど操作性が悪かったが、本実施形態例により操作性も向上する。
【0033】
さらに、探針に蒸着された銀の作用により信号が増幅されるためS/N比が向上する。
【0034】
また、プローブは半導体プロセスにより作製された自己検知型が用いられているため、ストレート型のプローブに比べて品質のばらつきやコストも抑えることができ、装置へ取り付けなど操作性もよい。
【0035】
(2)第二実施形態例
図5〜図8に、本発明に係る散乱型近接場顕微鏡の第二実施形態例を示す。図5は第一実施形態例の装置構成図、図6〜図8は第二実施形態例に用いられるカンチレバーの構成図で、図6は平面図、図7は図6のC−C線断面図、図8は図6のD−D線断面図である。
【0036】
本実施形態例では、ベース30上にサンプルステージ31を配置し、サンプルステージ31上にサンプル32を載置した。サンプル32の上方に圧電素子より構成され、2次元平面内でのスキャンと高さ方向のサーボ動作が可能な3軸微動機構33を配置し、3軸微動機構33にカンチレバーホルダ34が3軸微動機構33と一体に動作するように取り付けられている。
【0037】
カンチレバーホルダ34には、先端に先鋭化された探針構造を有する自己検知型のカンチレバー36が取付けられる。このカンチレバーは、図7に示したように、酸化シリコン層27bとシリコン層27aにより構成されるベースブロック27上にn型シリコン基板28によりカンチレバーの一部を構成し、n型シリコン基板28の表面に、U字状にp型不純物シリコン29が注入されている。このp型不純物シリコン29がピエゾ抵抗体として作用する。このピエゾ抵抗体29は外部に設けられたプリアンプ44と電気的に接続するためのメタルコンタクト部35a,35bに接続されている。シリコン基板28の表面にはメタルコンタクト部35a,35bの絶縁用にシリコン酸化膜49が形成されている。また、カンチレバーの先端は酸化シリコン基板50により構成されており、探針36a部分も酸化シリコンで形成される。この探針の最先端部から概ね100nmの高さの部分には銀51が蒸着されている。先端部のみに金属を付着させる方法として、探針36a全体に金属薄膜を蒸着し、最先端部の約100nm部分のみを残して残りの金属をフォーカストイオンビーム(FIB)により、除去加工することにより製作した。
【0038】
また、カンチレバーホルダ34にはカンチレバー36励振用の圧電素子37が取り付けられており、カンチレバー36が加振され、ピエゾ抵抗体29により振幅が検出される。
【0039】
サンプル32の表面の上方にはレーザ光源38が配置され、全反射角を満たし、光路がカンチレバー36と干渉しない方向からレーザ光が入射され、サンプル32表面にエバネッセント光を発生させる。
【0040】
3軸微動機構33は、サンプル32とカンチレバー36を近接させるための粗動機構39に搭載されている。粗動機構はステッピングモータ40と送りネジ(図示せず)による機構を用いた。
【0041】
サンプル上方の後方散乱光を検出できる位置には散乱光集光用の対物レンズ41が配置される。対物レンズ41で集められた光は全反射ミラー42で反射されて、ノッチフィルター43で励起光成分をカットし、結像レンズ45で結像されて、光検出器46に導かれる。本実施形態例では光検出器として、光電子増倍管を使用した。
【0042】
このように構成された装置で、カンチレバーの共振周波数近傍で加振して、探針36aがサンプル32に近づいた際の原子間力や間欠的な接触による、カンチレバー36の振幅の変化をピエゾ抵抗体29の抵抗値変化により検出し、探針36aとサンプル32間の距離制御を行っている。共振周波数近傍で加振した場合には振動に対応してカンチレバーのピエゾ抵抗体29に撓みが生じる。このとき、ピエゾ抵抗体29にひずみが生じ、抵抗値が変化する。この抵抗変化をプリアンプ44で増幅し検出することによって、振幅を測定する。プリアンプ44とピエゾ抵抗体29はブリッジ回路を構成しておりピエゾ抵抗体29にバイアス信号を印加し、抵抗値の変化に応じた出力信号が増幅して検出される。プリアンプ44での検出信号は差動アンプ(図示せず)に入力され基準信号と比較することによって振幅が測定される。
【0043】
このときの振幅の変化量は探針36aとサンプル32間の距離に依存するため、振幅が一定となるようにサーボ機構(図示せず)によりサーボ動作を行うことにより、探針36aとサンプル32間の距離を一定の保つことが可能である。なお、振幅の代わりに、位相や周波数を用いて制御を行うことも可能である。
【0044】
また、本実施形態例では、入射するレーザ光にカンチレバー36の加振周波数に同期したパルス信号でモジュレーションを掛け、光電子増倍管46で検出される信号のうち、カンチレバー36の加振周波数に同期した散乱光成分のみをロックインアンプ47でロックイン検出するような光計測方式を用いてS/N比の向上をはかった。ここで、カンチレバー36の振幅は通常、数nm〜数十nmである。サンプル表面に発生したエバネッセント光はサンプル表面からの距離に対して指数関数曲線に乗って減衰するため、サンプル表面と垂直方向に加振されることに伴い、厳密にはエバネッセント光強度が変化する。本方式のように、入射光にパルス信号によりON/OFFのモジュレーションを掛けて、散乱光をロックイン検出すれば、カンチレバーの加振に伴うエバネッセント光強度の変動を最小に抑えることも可能となる。更に、探針36aがサンプル32表面から遠ざかるにしたがって分解能も低下するため、探針36aが近接した部分でのみ入射光を与えるようにすれば分解能も向上する。
【0045】
なお、ロックイン検出を行う場合には、カンチレバーの加振周波数に関わらず入射光に任意のモジュレーションをかけて、この周波数に同期した散乱光成分をロックイン検出する、あるいは、入射光は連続光として、カンチレバーの加振周波数に同期した成分のみをロックイン検出する方式も考えられ、いずれもS/N比の向上をはかることができる。
【0046】
従来の散乱型近接場顕微鏡では可視光に対して光学的に不透明なシリコン製のカンチレバーを利用して、さらにカンチレバー全面にわたって散乱用の金属を蒸着したような構成であった。このため、後方散乱光の大部分はカンチレバーで遮られてしまい、集光用の対物レンズをサンプル表面に対して斜め上方に配置しカンチレバーで遮られないような工夫が必要であった。この場合には後方散乱光の一部しか対物レンズで集光することができず、集光効率が著しく悪かった。
【0047】
本実施形態例では、カンチレバー36および探針部分36aは可視光に対して光学的に透明な酸化シリコンにより構成され、金属は先端の極一部にしか付着していないため、カンチレバー36で後方散乱光が遮られる部分が大幅に少なくなり、その結果、集光用の対物レンズ41をカンチレバー36の後方にも配置することが可能となり、集光効率が大幅にアップする。さらに、金属付着部分がサンプル表面のエバネッセント光の存在する領域に限られるため、ファーフィールド成分の散乱が防止され、ファーフィールド光散乱に起因するノイズ成分の影響が少なくなる。
【0048】
さらに、一般に光の集光効率を上げるためには集光レンズの開口数(NA)の大きなレンズが用いられているが、NAが大きくなると作動距離(WD)が短くなり、従来の光てこ光学系などを用いた装置ではWDを長くすることができず、その結果、低NAの対物レンズしか使用できず集光効率が悪かった。しかしながら、本実施形態例では自己検知タイプのカンチレバーを用いているため、カンチレバーの周囲に従来用いられていた光てこ光学系などの変位検出機構が不要となり対物レンズを配置する空間が確保できる。このため、後方散乱集光用の対物レンズを従来の散乱型近接場顕微鏡よりも近接することが可能となる。
【0049】
このように構成した散乱型近接場顕微鏡により、形状の影響を受けずに、回折限界を超える光学情報を得ることができる。また、距離制御のフィードバック信号からサンプル表面の形状情報も同時に得ることができる。
【0050】
なお、本実施形態例ではサンプル上方にエバネッセント光発生手段を配置して外部から光を励起するような構成であるが、エバネッセント光発生手段は本方式に限定されず、例えば半導体レーザの発光面での強度分布測定や光導波路の境界面での強度分布測定のように励起光源を用いなくてもサンプル表面にエバネッセント光が存在するようなサンプルに対しても適用が可能である。
【0051】
また、集光用の対物レンズの配置はカンチレバー直上に限定されず、斜め方向などから集光を行う場合も本発明に含まれる。
【0052】
(3)第三実施形態例
図9〜図12に、本発明に係る散乱型近接場顕微鏡の第三実施形態例である散乱型近接場分光システムを示す。図9は第三実施形態例の装置構成図、図10〜図12は第三実施形態例に用いられるカンチレバーの構成図で、図10は平面図、図11は図10のE−E線断面図、図12は図10のF−F線断面図である。
【0053】
図9に示したように、本実施形態例では、透過性のサンプル用に第一実施形態例の散乱型近接場顕微鏡と同様の光学系を使用した。すなわち、透明なサンプルホルダ53の下に開口数が1以上の対物レンズ5 4(ここでは開口数1.4の油浸レンズ)を配置した。この対物レンズ54にレーザ55からの光を導入する。レーザ光は、ビームエクスパンダー56により平行光に変換され、ハーフミラー57により90°曲げられて対物レンズ54に導かれる。このとき、ビームエクスパンダー56とハーフミラー57間の光路上に対物レンズ54に入射する光のうち開口数が1以下の部分の光をカットするように、円盤状の遮光板58を挿入する。このような光学系により、対物レンズ54から開口数が1以上の部分の光をサンプル59に入射することにより光は全反射角で入射し、サンプル59の表面にエバネッセント光が形成される。また、サンプル59はサンプルホルダ53上に載置されており、サンプルホルダ53には圧電素子より構成され、2次元平面内でのスキャンと高さ方向のサーボ動作が可能な3軸微動機構60が取り付けられている。
【0054】
本実施形態例ではさらに非透過性のサンプル用にサンプル59の斜め上方にもレーザ61を配置し、エバネッセント光発生用のレーザを入射可能な構成とするとともに、探針62aで散乱された後方散乱成分も集光可能なようにカンチレバー62の後方側にも集光用の対物レンズ63を配置した。さらにサンプル59の上方にも圧電素子より構成され、2次元平面内でのスキャンと高さ方向のサーボ動作が可能な3軸微動機構64を配置し、3軸微動機構64にカンチレバーホルダ65を3軸微動機構と一体に動作するように取り付けた。
【0055】
サンプルの上方に設けられた3軸微動機構64は、ステッピングモータ67により駆動される粗動ステージ68に取り付けられており、粗動ステージ68により探針62aがサンプル59に近づけられる構成となっている。
【0056】
カンチレバーホルダ65には、先端に先鋭化された探針構造を有する自己検知型のカンチレバー62が取付けられる。このカンチレバーは、図10に示したように、酸化シリコン層66bとシリコン層66aにより構成されるベースブロック66上にn型シリコン基板80によりカンチレバーを構成し、n型シリコン基板80の表面に、U字状にp型不純物シリコン81が注入されている。このp型不純物シリコン81がピエゾ抵抗体として作用する。このピエゾ抵抗体81は外部に設けられたプリアンプ72と電気的に接続するためのメタルコンタクト部82a,82bに接続されている。シリコン基板80の表面にはメタルコンタクト部82a,82bの絶縁用にシリコン酸化膜83が形成されている。また、探針部62aは酸化シリコン84により構成されている。この探針62aの最先端部から概ね100nmの高さの部分には銀85が蒸着されている。さらに、探針の最先端部に直径が約50nmの大きさの微小開口を設けたものを使用した。このカンチレバーの製作は探針部全体に銀を蒸着し、先端から約100nmの高さの部分のみ残して、残りの金属をFIBで除去加工した後、さらに、FIBを用いて最先端部分を除去加工し、約50nmの微小開口86を製作した。
【0057】
このように構成された装置で、探針62aとサンプル59を原子間力が作用する領域まで近づけた場合、カンチレバー62の先端に作用する原子間力によりカンチレバー62に撓みが生ずる。このとき、ピエゾ抵抗体81にひずみが生じ、抵抗値が変化する。この抵抗変化をプリアンプ72で増幅し検出することによって、撓み量を測定する。プリアンプ72とピエゾ抵抗体81はブリッジ回路を構成しておりピエゾ抵抗体81にバイアス信号を印加し、抵抗値の変化に応じた出力信号が増幅して検出される。プリアンプ72での検出信号は差動アンプ(図示せず)に入力され基準信号と比較することによって撓み量が測定される。この撓み量は探針62aとサンプル59間の距離に依存するため、撓み量が一定となるように微動機構64をサーボ機構(図示せず)によりサーボ動作させることによってサンプル59と探針62aの距離を一定に保つことが可能となる。なお、第二実施形態例と同じようにカンチレバーを加振しながら制御を行う方式も使用可能である。
【0058】
本実施形態例では、探針62aの開口部86周囲の金属によりエバネセント光が散乱され、散乱光のうちサンプル59を透過した成分は励起光の入射に用いたレンズと同一の透過側の対物レンズ54で集光される。集光を行う場合には、開口数1以下の部分も含め対物レンズ54全体で集光が行われる。集光された光信号はハーフミラー57を透過し、全反射ミラー69で90度曲げられて、さらに全反射ミラー70,71で光路を変換されて、さらに、ノッチフィルター73により励起光成分をカットされて、結像レンズ74により結像された後、分光システム75に導かれる。
【0059】
また、後方散乱成分は探針先端62aの開口部86で集光されて可視光に対して透明な探針内部を透過して集光用の対物レンズ63で集光される。また、後方散乱光のうち開口部分で集められなかった成分もカンチレバー62を通して対物レンズ63で集光することができる。これらの光は、2枚の全反射ミラー76,77で光路を変換された後、透過光の光路と同じ光路を通り分光システム75に導かれる。ここで、全反射ミラー70は切り替え可能な構成となっており、後方散乱成分の計測を行う場合にはスルーに切り替えられる。
【0060】
このように構成された散乱型近接場分光システムにより、透過性サンプルや非透過性サンプル、あるいは装置のもつエバネッセント光発生手段以外の方法でサンプル表面にエバネッセント光が存在するようなサンプルに対して適宜入射方法と集光方法を選択して用いることが可能となる。また、全反射ミラー70をハーフミラーに切り替えることにより、透過光と後方散乱成分の双方が同時に計測可能となる。
【0061】
2つの3軸微動機構60,64は通常、透過光集光時にはサンプルの下側に設けられた3軸微動機構60を用い、後方散乱成分集光時にはサンプルの上側に設けられた3軸微動機構64を用いるが、これらは測定の対象により、任意に選択して使用可能である。
【0062】
本実施形態例では、分光器と冷却型CCDカメラにより構成される分光システム75を用いて、スペクトル強度を測定可能なように構成した。本システムを用いることにより、サンプルの任意の位置でのラマンスペクトルや蛍光スペクトル測定が回折限界を超える高い分解能で可能となる。また、サンプルと探針を相対的にスキャンしながらスペクトル強度を測定することにより、2次元平面内でのスペクトルマッピングも可能である。特に本実施形態例では銀をコートしたカンチレバーを用いているため、電場増強効果により散乱光強度は向上させることが可能となり、ラマン分光分析などの微弱光測定も実現できる。
【0063】
(4)その他の実施形態例
▲1▼カンチレバー
本発明において、自己検知型のカンチレバーに設けられる撓み量検出手段は、第一から第三実施形態例に示したピエゾ抵抗体を用いたタイプに限定されず、カンチレバーと一体に構成される、いわゆる自己検知タイプのカンチレバーはすべて本発明に含まれる。また、カンチレバーを加振しながら制御を行う方式では、カンチレバーにピエゾ薄膜を設け、このピエゾにより加振と撓み量の検出を同時に行う方式も適用可能であり本発明に含まれる。
【0064】
また、後方散乱成分をカンチレバーで透過させたあと対物レンズで集光する場合のカンチレバーの材質は、検出光に対して光学的に透明であれば任意の材質が使用可能である。たとえば、第二実施形態例、第三実施形態例では酸化シリコン製のカンチレバーを使用したが、酸化シリコンは主に可視から近赤外にかけて光学的に透明ありこの範囲で使用可能である。また、シリコンナイトライド製のカンチレバーも近赤外までの光に対して光学的に透明でありこの範囲で使用可能である。また、約1.2μm以上の光に関してはシリコンでも光を通し、この範囲ではシリコン製のカンチレバーも使用可能である。
【0065】
また、探針に設けられる金属は銀に限定されず、たとえば、金、白金、タングステン、アルミニウムなどの金属のほか、誘電体なども目的に応じて使用できる。
【0066】
これらの金属や誘電体は散乱光の増強効果の有するものが望ましく、探針の母材よりも、先端に設けられる散乱体の増強率を大きくすることにより、S/N比が向上する。
【0067】
金属や誘電体を設ける方法は実施形態例で述べた蒸着に限定されず、たとえば、FIBを用いて探針先端に堆積する方法や、イオン注入を行う方法などが考えられる。また、これらの金属や誘電体は単一のものに限定されず、例えば金属の酸化防止のため保護膜を作製することや、あるいは増強度を向上させるために多層膜化をはかることも考えられる。
【0068】
これらの金属や誘電体などの散乱体が設けられる領域は、好ましくは、エバネッセント光が存在する領域のみに設ける方がよい。通常、探針先端から200nm以内の高さに設けられる。この高さは目的により任意に選択可能であり、たとえば、高分解能を得るためにはできるだけ狭い領域にのみ散乱体を設けるほうがよい。
【0069】
また、探針先端に微小開口を製作する場合には、第三実施形態例で述べたような探針部分が中実の構造の他にもFIBなどでカンチレバー背面から探針先端にかけて物理的に中空開口を形成する方式も考えられる。
【0070】
さらに、探針先端の形状は任意であり、たとえば散乱光の増強度を向上させるために三角形状や菱形などに加工することも考えられる。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、探針構造を有するカンチレバーと、カンチレバーを保持するためのカンチレバーホルダと、探針に対向する位置に配置され、サンプルの保持を行うサンプルホルダと、カンチレバーの撓み量を検出するための撓み量検出手段と、探針とサンプル間の距離を調整するための微動機構と、探針とサンプルを2次元平面内で相対的に移動させるスキャナと、撓み量検出手段からの信号を基に前記微動機構を動作させて、微小探針とサンプル間の距離の調整を行うためのサーボ回路と、サンプル表面にエバネッセント光を発生させるエバネッセント光発生手段と、サンプル表面に発生したエバネッセント光に探針を近接させた際に発生する散乱光を集光するための集光手段と、散乱光の強度を測定するための光検出部により散乱型近接場顕微鏡を構成した。
【0072】
本発明では特に、カンチレバーの撓み量検出手段として、カンチレバーの構造の一部にピエゾ抵抗体などを組み込み、自己検知型のカンチレバーを使用した。
【0073】
このように構成された散乱型近接場顕微鏡では、距離制御にカンチレバーを利用した原子間力顕微鏡技術を用いているため、ストレートプローブを用いたシアフォース制御に比べ安定した距離制御が可能となり光学像と形状像を完全に分離して測定することが可能である。
【0074】
また、従来行われていたように撓み量の検出にレーザを用いた光てこ光学系などを使用していないため、撓み量検出用の光が散乱信号に混入してノイズとなることがない。また撓み検出用に光てこなどを用いた場合には光軸合わせなど操作性が悪かったが、本実施形態例により操作性も向上する。
【0075】
また、プローブとして半導体プロセスにより作製された自己検知型カンチレバー型が用いられているため、ストレート型のプローブに比べて品質のばらつきやコストも抑えることができ、装置へ取り付けなど操作性もよい。
【0076】
また、本発明の散乱型近接場顕微鏡では、自己検知型カンチレバーの探針の一部または全部を散乱強度増強用の金属や誘電体により構成した。このため、信号強度が増幅され、S/N比が向上する。
【0077】
さらに、本発明では、探針先端で後方散乱された光の一部または全部が透過可能なように、自己検知型のカンチレバーの一部または全部が光学的に透明な材料で構成されるようにするとともに、散乱光強度増強用の金属または誘電体が、探針の最先端部付近にのみ形成されるように構成した。
【0078】
このように構成された散乱型近接場顕微鏡では、金属が先端の極一部にしか付着していないため、カンチレバーで後方散乱光が遮られる部分が大幅に少なくなり、集光用の対物レンズをカンチレバーの後方にも配置することが可能となり、集光効率が大幅にアップする。さらに、金属付着部分がサンプル表面のエバネッセント光の存在する領域に限られるため、ファーフィールド成分の散乱が防止され、ファーフィールド光散乱に起因するノイズ成分の影響が少なくなる。
【0079】
さらに、一般に散乱型近接場顕微鏡では、散乱光強度が微弱であるため、光の集光効率を上げるために集光レンズの開口数(NA)の大きなレンズを用いる必要があるが、NAが大きくなると作動距離(WD)が短くなり、従来の光てこ光学系などを用いた装置ではWDを長くすることができず、その結果、低NAの対物レンズしか使用できず集光効率が悪かった。しかしながら、本発明では自己検知タイプのカンチレバーを用いているため、カンチレバーの周囲に従来用いられていた光てこ光学系などの変位検出機構が不要となり対物レンズを配置する空間が確保できる。このため、後方散乱集光用の対物レンズを従来の散乱型近接場顕微鏡よりも近接することが可能となり、その結果、高NAの対物レンズが使用でき集光効率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の散乱型近接場顕微鏡の第一実施形態例の構成図である。
【図2】第一実施形態例に用いられる自己検知型カンチレバーの平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】本発明の散乱型近接場顕微鏡の第二実施形態例の構成図である。
【図6】第二実施形態例に用いられる自己検知型カンチレバーの平面図である。
【図7】図6のC−C線断面図である。
【図8】図6のD−D線断面図である。
【図9】本発明の散乱型近接場顕微鏡の第二実施形態例の構成図である。
【図10】第三実施形態例に用いられる自己検知型カンチレバーの平面図である。
【図11】図10のE−E線断面図である。
【図12】図10のF−F線断面図である。
【図13】第一の従来技術の構成図である。
【図14】第二の従来技術の構成図である。
【図15】第三の従来技術の構成図である。
【符号の説明】
1,53 サンプルホルダ
2,41,54,63 対物レンズ
3,38,55,61 レーザ
7,32,59 サンプル
8,33,60,64 3軸微動機構
9,78 ベース
10,34,65 カンチレバーホルダ
11,36 自己検知カンチレバー
18,68 粗動ステージ
25,44,72 プリアンプ
26,46 光検出器
31 サンプルステージ
39 粗動機構
48,79 支柱
62 カンチレバー
75 分光システム

Claims (3)

  1. 探針構造を有するカンチレバーと、
    該カンチレバーを保持するためのカンチレバーホルダと、
    前記探針に対向する位置に配置され、サンプルの保持を行うサンプルホルダと、
    前記カンチレバーの撓み量を検出するための撓み量検出手段と、
    探針とサンプル間の距離を調整するための微動手段と、
    前記撓み量検出手段からの信号を基に前記微動機構を動作させて、探針とサンプル間の距離の調整を行うためのサーボ回路と、
    サンプル表面にエバネッセント光を発生させるエバネッセント光発生手段と、
    サンプル表面に発生したエバネッセント光に探針を近接させた際に発生する可視光から近赤外光の散乱光を集光するための集光手段と、
    散乱光の強度を測定するための光検出部と、
    を有する散乱型近接場顕微鏡において、
    前記集光手段が対物レンズであり前記カンチレバーに設けた探針先端から見てカンチレバーの後方に載置し、
    前記カンチレバーが、その固定端側にn型シリコン基板からなる部材を配し、前記集光手段の直下に位置する前記探針を設ける先端部分の該探針及び該カンチレバーの該当部分が酸化シリコン又はチッ化シリコンからなる部材を配して構成され、
    前記撓み量検出手段が前記カンチレバーの固定端側のn型シリコン基板からなる部材の表面にp型不純物シリコンを注入することにより形成したピエゾ抵抗体として備わり、
    前記探針の尖鋭化した先端部のみに該探針の母材とは異なる金属又は誘電体で被覆した
    ことを特徴とする散乱型近接場顕微鏡。
  2. 探針先端部に開口を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の散乱型近接場顕微鏡。
  3. 探針先端部に開口を設け、探針内部を中空構造としたことを特徴とする、請求項1乃至2のいずれかに記載の散乱型近接場顕微鏡。
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