JP4360764B2 - 眼鏡レンズのレンズ周縁加工方法、レンズ周縁加工装置及び眼鏡レンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼鏡フレームのレンズ枠の内面に形成されたヤゲン溝に接触子を接触させて測定したレンズ枠形状データに基づいて眼鏡レンズを加工する、レンズ周縁加工方法、レンズ周縁加工装置及びその眼鏡レンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、眼鏡フレームの一部を構成するレンズ枠には、その内面に略V字状に拡開傾斜する一対の傾斜面を有するヤゲン溝が形成されている。
【0003】
図9(A)は、眼鏡フレーム(全体図は省略)のレンズ枠1を、その延在方向と直交する方向で切断した断面図である。レンズ枠1の内面1aに形成された略V字状の傾斜面1b,1cを有するヤゲン溝1dは、そのヤゲン溝底1eからヤゲン縁1f,1gに向って一定の開き角度θ1で拡開している、尚、この開き角θ1並びにヤゲン深さHは、レンズ枠1の形状、材質、メーカー等によって若干異なっている。
【0004】
一般には、このヤゲン溝1dに図示を略すフレーム形状測定装置等に設けられた接触子2(図8(A)参照)を当接して、レンズ枠1の形状を測定している。
【0005】
この接触子2には、ソロバン玉形状、針状、球状、矩形状等を呈する先端部が設けられている(特開昭51−119580号、特開昭58−196407号、特開昭58−38919号、特開昭60−52249号、特開昭62−88402号、特開昭63−24106号、特開平10−113853号公報参照)。
【0006】
図8(A)に示す接触子2は先端頂点から角度θ2で拡開する傾斜面2a,2bを有し、ヤゲン縁1f,1gに接触するように先端がヤゲン溝に挿入される。
【0007】
一方、図9(B)に示すように、このようなレンズ枠1に枠入れされる眼鏡レンズ3の周縁には、上述の接触子によって測定されたレンズ枠1のレンズ枠形状データに基づいて、ヤゲン頂点3aから開き角θ3(上記角度θ2と略同一角度)で傾斜する一対の傾斜面3b,3cを有するヤゲン山部3dが形成されている。尚、ヤゲン山部3dのレンズ前面3e側並びにレンズ後面3f側には、ヤゲン山部3dの傾斜面3bからコバ先端部3gまで並びに傾斜面3cからコバ後端部3hまでの、眼鏡レンズ3の周縁部位によって各幅の異なる、ヤゲン肩部3i,3jが同時に形成され、これら全体をヤゲンと称している。
【0008】
このヤゲンは、図8(B)に示すように、角度θ4(上記角度θ2,角度θ3と略同一角度で、例えば、約120度)で拡開する傾斜面4a,4bを有する研削砥石4によって形成される。
【0009】
ヤゲン形成後の眼鏡レンズ3は、接触子2の開き角度θ2とヤゲン山部3dの開き角度θ3とが略等しいことから、図8(C)に示すように、ヤゲン山部3dの頂点3a寄りがヤゲン溝1dに入り込み、ヤゲン縁1f,1gに傾斜面3c,3dが接触した状態でレンズ枠1に枠入れされる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、眼鏡フレームのレンズ枠1に形成されたヤゲン溝1dの開き角度θ1は、先に述べたように眼鏡フレーム毎に異なっており一定したものではない。
【0011】
他方、眼鏡レンズをヤゲン加工するための研削砥石4の開き角度θ4は、所定の角度を有しているので、研削砥石4で加工された眼鏡レンズ3のレンズコバ周縁に形成されたヤゲン山部3dの開き角度θ3は研削砥石4の開き角度θ4と略同一の角度となる。
【0012】
この為、開き角度θ3で加工されたヤゲン山部3dを有する眼鏡レンズ3をレンズ枠1のヤゲン溝1dに枠入れすると、ヤゲン頂点3aがレンズ枠1のヤゲン溝底1eに当接した状態では枠入れされず、図8(C)で示したように、ヤゲン溝1dのヤゲン縁1f,1gがヤゲン山部3dの傾斜面3b,3cに接触することになる。
しかしながら、図8(C)に示されるようにこの状態では眼鏡レンズは、単にフレーム枠のヤゲン縁1f、1gで支持されるのみであり、強固な保持は期待できないものであった。
【0013】
これは、ヤゲン山部3dの開き角度θ3は研削砥石(ヤゲン砥石)4の開き角度θ4と略同一に形成されるので、全ての眼鏡フレームのヤゲン溝1dに枠入れ可能な眼鏡レンズを作成するために研削砥石(ヤゲン砥石)4の開き角度θ4と略同一の開き角度θ2を有する接触子2を用いてレンズ枠形状データを得ていたことによる。
この状態で測定するレンズ枠形状は実際のレンズ枠についてのものであり、現実に眼鏡レンズを保持するヤゲンのサイズに関するものではないので、その大きさにレンズを形成しても、保持位置に依存するレンズ枠と眼鏡レンズとのサイズ差により、眼鏡フレームに密接かつ強固に保持されるレンズの周縁を加工することは実現されていなかった。
【0014】
また、開き角度θ1とヤゲン深さHが種々様々に異なっている眼鏡フレームに交換の必要なく対応させるためには、接触子2の先端幅(厚さ)wは眼鏡フレームのレンズ枠1の幅W以上であることが望ましい。
【0015】
ところが装置の構造上、レンズ枠1は接触子2の測定圧に耐えるように固定する必要があり、レンズ枠1を固定する保持装置(保持棒)と接触子2との干渉を防止するために、接触子2の先端幅(厚さ)wを眼鏡フレームのレンズ枠1の幅W以上にすることはできなかった。
【0016】
本発明は、レンズ枠を固定保持する保持装置と干渉することなく、レンズ枠が傾いた状態でヤゲン溝形状を測定して加工しても、保持位置によるレンズ枠と眼鏡レンズとのサイズ差を生じることなく、眼鏡フレームのヤゲン溝内部にレンズのヤゲンが接触してレンズ枠に強固に嵌合するようにヤゲン加工をする、レンズ周縁加工方法、レンズ周縁加工装置及びそれによって加工された眼鏡レンズを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のレンズ周縁加工方法は、眼鏡フレームのレンズ枠内面に形成されたヤゲン溝の両側面に接触子を接触させて眼鏡フレームのレンズ枠形状を測定する段階と、
ヤゲンのふもとの両傾斜面のなす角度がそのヤゲン頂点のなす角度より狭くなるように、前記眼鏡フレーム用の眼鏡レンズのヤゲンを形成する段階と、からなることを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載のレンズ周縁加工装置は、眼鏡フレームのレンズ枠内面に形成されたヤゲン溝の両側面に接触する接触子を備えたレンズ枠形状測定手段と、
前記レンズ枠形状測定手段からのデータに基づきヤゲン加工を行う研削加工手段を有するレンズ周縁加工装置において、
前記研削加工手段は、ヤゲンのふもとの両傾斜面のなす角度がそのヤゲン頂点のなす角度より狭くなるように、前記眼鏡フレーム用の眼鏡レンズのヤゲンを形成することを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に記載のレンズ周縁加工装置は、前記加工手段は、ヤゲン先端形状の加工歯形を持つ研削砥石を有することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のレンズ研削加工方法、レンズ研削加工装置及び眼鏡レンズの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
<実施の形態1>
図1(A)において、レンズ研削加工装置(レンズ研削装置又は玉摺機)10は、砥石室11を設けた筐体12を有する。砥石室11の中には、図示を略すモータで砥石軸13回りに高速回転される研削砥石14が収納されている。
【0022】
研削砥石14は、複数段の円筒形状を呈し、図1(B)に示すように、ガラスレンズ用の粗砥石部15と、ガラスレンズ用の仕上砥石部16と、プラスチックレンズ用の粗砥石部17と、プラスチックレンズ用の鏡面砥石部18とが設けられている。
【0023】
仕上砥石部16と鏡面砥石部18とは、粗砥石部15及び粗砥石部17の直径よりも大径の円柱状に形成されている。また、仕上砥石部16の両側端部には一定の角度(径方向に対する所定角度)で傾斜した傾斜面16A,16Bが形成されている。同様に、鏡面砥石部18の両側端部にも傾斜面18A,18Bが形成されている。
【0024】
筐体12の後には軸受19が設けられ、この軸受19には、キャリッジ20のキャリッジ旋回軸21が回動自在且つ軸方向に移動可能に嵌挿されている。
【0025】
キャリッジ20は、その後端部がキャリッジ旋回軸21に固着され、これによりキャリッジ旋回軸21の軸回りに旋回可能でかつ軸方向に摺動可能となっている。
【0026】
キャリッジ20の自由端には同軸上に配設したレンズ保持軸23,24が保持されている。このレンズ保持軸23,24には、被加工レンズLが挟着保持される。また、レンズ保持軸23,24の軸線と砥石軸13の軸線とは平行に設けられている。
【0027】
レンズ保持軸23,24は、キャリッジ20内に配置された駆動モータ25により、公知の回転伝達機構26を介して回転される。また、一方のレンズ保持軸24の他端24aはキャリッジ20の側方から突出している。
【0028】
筐体12の一側方には、キャリッジ横移動手段30が配設されている。このキャリッジ横移動手段30はL形アーム部材31を備えている。このL形アーム部材31は筐体12の一側壁から張り出された軸状のレール部材32に摺動可能に支持されている。また、L形アーム部材31の一端部31aは、キャリッジ旋回軸21に軸線回りに回動可能に且つ横移動不能に取り付けられている。
【0029】
キャリッジ横移動手段30は、図示しない固定フレーム側に固定された横移動用の駆動モータ33と、駆動モータ33の出力軸(図示せず)に取り付けられた送りネジ34を有する。この送りネジ34は、キャリッジ旋回軸21と平行に設けられていると共に、L形アーム部材31に螺着されている。
【0030】
そして、この駆動モータ33の回転により送りネジ34を正回転又は逆回転させると、L形アーム部材31がキャリッジ旋回軸21に沿って左右方向に移動すると同時にキャリッジ20が同量同方向に移動される。
【0031】
また、筐体12の一側方には、軸間距離調整手段40が設けられている。この軸間距離調整手段40は、筐体12に軸41を介して回動自在に取り付けられたベース盤42と、ベース盤42に取り付けられてその上面から上方に延び且つその上面に対して直交したガイドレール43と、ガイドレール43と平行に且つ回動可能にベース盤42に設けられたスクリュー軸44と、ベース盤42の下面に取り付けられてスクリュー軸44を回動させるパルスモータ45と、スクリュー軸44の回動によりガイドレール43に沿って上下動する受台46と、ガイドレール43の上端部に固定されてスクリュー軸44の上端部を回動自在に保持する補強部材47とを備えている。
【0032】
軸41は研削砥石14と同軸上に設けられており、ガイドレール43とスクリュー軸44とが軸41を挟み込む位置から上方へ延びている。また、レンズ保持軸24の一端24aがガイドレール43とスクリュー軸44との間に挟み込まれていると共にガイドレール43に沿って移動可能となっている。
【0033】
受台46は軸41の中心(研削砥石14の回転中心)とレンズ保持軸24の一端24aの中心(レンズ保持軸24の回転中心)とを結ぶ直線上に沿って上下動する。また、受台46はレンズ保持軸24の一端24aを受けており、受台46がガイドレール43に沿って上下動(進退)することによりキャリッジ20がキャリッジ旋回軸21を中心にして回動する。
【0034】
駆動モータ25,32及びパルスモータ45は、図2に示すように、制御装置50によって制御される。この制御装置50は、CPU等を備えており、データ入力装置51から入力されるフレーム形状データなどに基づいて各モータ25,32,55を制御する。尚、制御装置50は筐体12内に設けられている。
【0035】
データ入力装置51には、図3(A)〜(C)に示すように、眼鏡フレームのレンズ枠1の内面1aに形成された略V字状に拡開傾斜する傾斜面1b,1cを有するヤゲン溝1dに接触子5(接触子6及び接触子7)を接触させることで測定されたレンズ枠形状データが入力される。
【0036】
接触子5,6,7は、ヤゲン溝1dの延在方向と直交する開口幅h1よりも狭い幅h2の一対の傾斜面接触部5a,5b(傾斜面接触部6a,6b及び傾斜面接触部7a,7b)を有しており、この一対の傾斜面接触部5a,5b,6a,6b,7a,7bを傾斜面1b,1cの中途部に接触させて測定を行う。
【0037】
また、この傾斜面1b,1cに対する一対の傾斜面接触部5a,5b,6a,6b,7a,7bの接触位置は、ヤゲン溝1dの内面1aから略同一深さh3で互いに対向する部位を維持するように設定されている。これにより、レンズ枠1の幾何学中心(図示省略)から傾斜面1b,1cの傾斜面接触部5a,5b,6a,6b,7a,7bとの接触点までの動径距離が眼鏡フレームのレンズ枠形状として測定される。
【0038】
尚、図3に示したように、接触子5,6,7の先端形状は、上述したようにヤゲン溝1dの開口幅h1と一対の傾斜面接触部5a,5b,6a,6b,7a,7b間の幅h2との関係が成立すると共に、傾斜面1b,1cの中途部に接触可能な傾斜面接触部5a,5b,6a,6b,7a,7bを有すれば良い。
【0039】
図3(A)に示した接触子5は、先端頂点5cから開き角度θ5で拡開する緩傾斜面5d,5eと、緩傾斜面5d,5eの基端部から連続した開き角度θ6で拡開する急傾斜面5f,5gとの複合面から形成されている。
【0040】
この際、緩傾斜面5d,5eでなす開き角度θ5は、急傾斜面5f,5gでなす開き角度θ6よりも広角に設定されている。また、緩傾斜面5d,5eでなす開き角度θ5はヤゲン溝1dの一対の傾斜面1b,1cとでなす開き角度θ1よりも広角に設定されている。
【0041】
また、図3(B)に示した接触子6は矩形、図3(C)に示した接触子7は先端半楕円(球でも良い)である。
【0042】
次に、データ入力装置51に入力されたレンズ枠形状データに基づくレンズ研削加工装置の動作について説明する。
【0043】
先ず、駆動モータ33及びパルスモータ45の駆動により、キャリッジ20を右方向に移動させると共に上下に回動させて、被加工レンズLのコバ面を、図4(A)の破線に示すように、研削砥石14の粗砥石部15に接触させて粗研削を行う(工程i)。
【0044】
次に、駆動モータ33及びパルスモータ45の駆動により、キャリッジ20を左方向に移動させると共に上下に回動させて、図4(A)の一点鎖線に示すように、仕上砥石部16及び傾斜面16Aを被加工レンズLのコバ面の右側(後側)に接触させて研削加工していく(工程ii)。
【0045】
この後、駆動モータ33及びパルスモータ45の駆動により、キャリッジ20を左方向に移動させると共に上下に回動させ、図4(A)の二点鎖線に示すように、仕上砥石部16及び傾斜面16Bを被加工レンズLのコバ面の左側(前側)に接触させて研削加工していく(工程iii)。
【0046】
さらに、図4(B)に示すように、図示を略するモータの駆動により、研削砥石14の砥石軸13(図1(A)参照)を傾斜回動して研削砥石14の鏡面砥石部18側を上向きとして傾斜させ、図4(B)の二点鎖線に示すように、砥石部16の砥石面16Bを被加工レンズLのコバ面の左側(前側)に形成されたヤゲン形状のヤゲン山部の頂点付近に接触させて研削加工していく(工程iv)。
【0047】
この後、図4(C)に示すように、図示を略するモータの駆動により、研削砥石14の砥石軸13(図1(A)参照)を傾斜回動して研削砥石14の鏡面砥石部18側を下向きとして傾斜させ、図4(C)の二点鎖線に示すように、砥石部16の砥石面16Aを被加工レンズLのコバ面の右側(後側)に形成されたヤゲン形状のヤゲン山部の頂点付近に接触させて研削加工していく(工程v)。
【0048】
図5(A),(B)は、被加工レンズLを工程i〜工程vを経て加工した眼鏡レンズ8のヤゲン形状を示し、眼鏡レンズ8の部位によって図5(A),(B)に示すように形状が異なっている。
【0049】
図5(A)に示した部位の眼鏡レンズ8は、ヤゲン頂点8a(稜線)を先細りとするように図示左右で対称な一対の複合傾斜面8b,8cを有するヤゲン山部8dが形成される。尚、ヤゲン山8dのレンズ前面8e側並びにレンズ後面8f側には、眼鏡レンズ3の周縁部位によってヤゲン山部8dの前面側裾からコバ先端部8gまで並びに後面側裾からコバ後端部8hまでの各幅の異なるヤゲン肩部8i,8jがヤゲン山部8dと同時に形成されている。
【0050】
なお、図5(B)に示した部位の眼鏡レンズ8は、上述したヤゲン肩部8i,8jが形成されていない状態である。
【0051】
複合傾斜面8b,8cは、ヤゲン頂点8a(稜線)から開き角θ7(開き角度θ5と略同一角度)で拡開傾斜する緩傾斜面8k,8lと、緩傾斜面8k,8lの基端部から連続した開き角度θ8(開き角度θ6と略同一角度)で拡開する急傾斜面8m,8nとの複合面であると同時にその境界部分が頂点となって接触部8o,8pが形成されている。
【0052】
この際、緩傾斜面8k,8lでなす開き角度θ7は、急傾斜面8m,8nでなす開き角度θ8よりも広角に設定されている。また、緩傾斜面8k,8lでなす開き角度θ7はヤゲン溝1dの一対の傾斜面1b,1cとでなす開き角度θ1よりも広角に設定されている。また、θ8はθ1よりも狭角に設定されている。
【0053】
尚、プラスチックレンズを被加工レンズLとした場合には、研削砥石14の使用する部位が粗砥石部17,鏡面砥石部18,傾斜面18A,18Bとなるだけで、その工程等は実質的に同一である。
【0054】
従って、眼鏡レンズ8をヤゲン溝1dに挿入してレンズ枠1に枠入れした場合には、例えば、図5(A)に示した部位の眼鏡レンズ8では図6(A)に示した状態となり、図5(B)に示した部位の眼鏡レンズ8では図6(B)に示した状態となる。
【0055】
そして、何れの場合においても、レンズ枠1の一対の傾斜面1b,1cの互いに対向する同一深さの中途部に複合傾斜面1b,1cの頂点である接触部8o,8pが接触した状態となる。
【0056】
これにより、眼鏡レンズ8のレンズ枠1との接触部8o,8pがレンズ枠1のヤゲン縁より内側になり、眼鏡フレームのレンズ枠1のヤゲン溝1dの開き角度θ1とヤゲン深さHに違いがある場合にあっても、レンズ枠形状測定装置の接触子6の先端接触状態と仕上加工後の眼鏡レンズ8の接触状態とを一致させることができる。
【0057】
従って、僅かにレンズ枠1が傾いている状態でヤゲン溝1dの形状を測定した場合であっても、レンズ枠1のヤゲン溝1dの形状と仕上加工後の眼鏡レンズ8とのサイズに差ができ難く、確実にレンズ枠1に眼鏡レンズ8を枠入れすることができる。
【0058】
<実施の形態2>
図7は、本発明の眼鏡レンズのレンズ周縁加工装置の実施の形態2を示し、上記実施の形態1では、工程iv及び工程vにおいて研削砥石14を上下に傾斜させてヤゲン加工を行っていたのに対し、この実施の形態2では、そのような研削砥石14を傾斜させずにヤゲン加工を行うものである。
【0059】
即ち、図7(A)に示すように、研削砥石14’には、上述したガラスレンズ用の粗砥石部15、ガラスレンズ用の仕上砥石部16、プラスチックレンズ用の粗砥石部17、プラスチックレンズ用の鏡面砥石部18の他(一部図示略)、例えば、粗砥石部15と仕上砥石部16との間に加工歯形としてのヤゲン山仕上砥石部16’を設けると共に、そのヤゲン山仕上砥石部16’の断面形状をヤゲン山部8dの断面形状と略一致する複合傾斜凹部16aを設ける。
【0060】
複合傾斜凹部16aは、図7(B),(C)に示すように、ヤゲン山部8dの複合8b,8cに緩傾斜面8k,8lと急傾斜面8m,8n並びに接触部8o,8pを同時に形成するため、拡開緩傾斜砥石面16b,16cと拡開急傾斜砥石面16d,16eとを備えている。なお、レンズ材質や加工の種類に応じてプラスチックレンズ用の仕上砥石部を設けても良い。
【0061】
これにより、上述した工程i〜工程iiiの加工を行った後、研削砥石14’のヤゲン山仕上砥石部16’によってヤゲン山部8dを形成する。
なお上記の実施例では、将棋のコマ形の断面形状を有するヤゲンについて説明したが、眼鏡フレームのヤゲン縁1f、1gではなく、ヤゲン溝の両側面のそれぞれと溝奥で接触して保持される形状に眼鏡レンズのヤゲンを形成すれば、本発明の効果をえることができる。それにより、眼鏡フレームとヤゲンの接触点がヤゲン縁(ヤゲン角度がヤゲン溝角度より大きい)及びヤゲン溝底(ヤゲン角度がヤゲン溝角度より小さい)となる、ヤゲン断面が三角形のもの以外であれば、本発明の効果を呈することができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、ヤゲン溝の開き角度とヤゲン深さが種々様々に異なっている眼鏡フレームのレンズ枠であっても、また僅かにレンズ枠が傾いている状態でヤゲン溝形状を測定した場合であっても、レンズ枠を固定保持する保持装置と接触子が干渉せず、レンズ枠のヤゲン溝形状とヤゲン加工後の眼鏡レンズとのサイズに差を生じさせることがなく、フレームを確実に固定した状態で、ヤゲン加工後の眼鏡レンズのヤゲンとレンズ枠との接触位置に対応させてレンズ枠の形状を測定し、この形状データにより眼鏡レンズのレンズ枠との接触位置に対応させて、強固に保持される眼鏡レンズのヤゲン加工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる眼鏡レンズのレンズ周縁加工方法に用いられるレンズ周縁加工装置を示し、(A)はレンズ周縁加工装置の外観斜視図、(B)は研削砥石の正面図である。
【図2】同じく、制御系のブロック図である。
【図3】同じく、(A)はレンズ枠形状測定装置に設けられた先端船底形の接触子を用いたレンズ枠測定状態の説明図、(B)はレンズ枠形状測定装置に設けられた先端矩形の接触子を用いたレンズ枠測定状態の説明図、(C)はレンズ枠形状測定装置に設けられた先端半楕円形の接触子を用いたレンズ枠測定状態の説明図である。
【図4】同じく、(A)は研削砥石による工程i〜工程iiiまでのレンズ加工工程の説明図、(B)は研削砥石による工程ivのレンズ加工工程の説明図、(C)は研削砥石による工程vのレンズ加工工程の説明図である。
【図5】同じく、(A)はヤゲンの一例の断面図、(B)はヤゲンの他例の断面図である。
【図6】同じく、(A)はレンズ枠に枠入れした眼鏡レンズの要部の断面図、(B)はレンズ枠に枠入れした眼鏡レンズの他の部位の要部の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係わる眼鏡レンズのレンズ周縁加工方法に用いられるレンズ周縁加工装置を示し、(A)は研削砥石の要部の拡大正面図、(B)は研削砥石によるレンズ加工工程の説明図、(C)は研削砥石による他の部位のレンズ加工工程の説明図である。
【図8】従来の眼鏡レンズのレンズ周縁加工方法を示し、(A)は接触子によるレンズ枠形状測定状態の要部の説明図、(B)はレンズ加工状態の説明図、(C)は枠入れ状態の眼鏡レンズの説明図である。
同じく、である。
【図9】(A)はレンズ枠の延在方向と直交する方向のレンズ枠の断面図、(B)は眼鏡レンズのヤゲンの断面図である。
【符号の説明】
1 …レンズ枠
1a…内面
1b…傾斜面
1c…傾斜面
1d…ヤゲン溝
5 …接触子
5a…傾斜面接触部(角部)
5b…傾斜面接触部(角部)
6 …接触子
6a…傾斜面接触部
6b…傾斜面接触部
7 …接触子
7a…傾斜面接触部
7b…傾斜面接触部
8 …眼鏡レンズ
8o…接触部
8p…接触部
14 …研削砥石
50 …制御装置(制御部)
51 …データ入力装置(レンズ枠形状データ取込手段)
h1 …開口幅
h2 …幅
Claims (3)
- 眼鏡フレームのレンズ枠内面に形成されたヤゲン溝の両側面に接触子を接触させて眼鏡フレームのレンズ枠形状を測定する段階と、
ヤゲンのふもとの両傾斜面のなす角度がそのヤゲン頂点のなす角度より狭くなるように、前記眼鏡フレーム用の眼鏡レンズのヤゲンを形成する段階と、からなる眼鏡レンズのレンズ周縁加工方法。 - 眼鏡フレームのレンズ枠内面に形成されたヤゲン溝の両側面に接触する接触子を備えたレンズ枠形状測定手段と、
前記レンズ枠形状測定手段からのデータに基づきヤゲン加工を行う研削加工手段を有するレンズ周縁加工装置において、
前記研削加工手段は、ヤゲンのふもとの両傾斜面のなす角度がそのヤゲン頂点のなす角度より狭くなるように、前記眼鏡フレーム用の眼鏡レンズのヤゲンを形成することを特徴とするレンズ周縁加工装置。 - 前記加工手段は、ヤゲン先端形状の加工歯形を持つ研削砥石を有することを特徴とする請求項2に記載のレンズ周縁加工装置。
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