JP4359999B2 - ポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリフェニレンサルファイドの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ポリフェニレンサルファイド繊維本来の特徴である耐熱性や耐薬品性を維持すると共に、高強度・高タフネスの特性を備えたポリフェニレンサルファイド繊維であって、これを織物などとして用いた時に、毛羽が少なく、品位の優れた基布を与えることが可能なポリフェニレンサルファイド繊維を高い生産効率、かつ優れた収率で製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンサルファイドは、その優れた耐熱性や耐薬品性などの特徴を活かして、当初はエンジニヤリングプラスチックや耐熱性フィルムなどで実用化がなされてきたが、近年では、繊維分野においてもその利用が広がりつつあり、例えば、バグフィルター、モーター結束紐、モーターバインダーテープおよび抄紙用ドライヤーカンバスなどの用途に有用視されているばかりか、さらには新用途開発が進むにつれて、需要量も拡大している。
【0003】
ポリフェニレンサルファイドの繊維の製造方法については、例えば特開昭57−143518号公報により基本的な繊維化技術が開示されて以来、製糸技術の進歩に伴う物性の改良および製造プロセスの改良などについて、例えば特開平1−229809号公報および特開平4−100915号公報などにより多くの提案がなされている。
【0004】
そして、紡糸工程と延伸工程を直結した直接紡糸延伸法は、未延伸糸をボビンなどに一旦巻き取った後で逐次延伸する2工程法と比較して、生産性が大幅に高いことが知られており、ポリフェニレンサルファイド繊維についても、この直接紡糸延伸法により製造されることが従来より公知である。
【0005】
すなわち、特開昭57−143518号公報には、溶融紡糸されたポリフェニレンサルファイド未延伸糸を延伸工程に供し、供給ロールと引張ロールとの間において自然延伸比以上の延伸を行う際に、熱板や熱ロールなどによって、未延伸糸条をガラス転移点付近の温度(80〜120℃)の範囲に加熱して2段延伸する方法が開示されている。
【0006】
また、特開平1−229809号公報には、ポリフェニレンサルファイド繊維を延伸・熱処理するときの毛羽・断糸の発生を抑えるために、溶融紡糸した糸条に0.5〜1%の予備延伸を付与した後、延伸後の繊維の破断伸度が45%以下となるように85〜110℃の温度で1段延伸を行った後、この1段延伸糸条を100〜140℃の温度で定長乃至弛緩熱セットし、さらに150℃〜融点以下の温度で定長乃至弛緩熱セットする方法が開示されている。
【0007】
しかるに、これら従来の紡糸延伸法を適用した場合には、高強度かつ高タフネスのポリフェニレンサルファイド繊維が必ずしも得られないばかりか、延伸中の毛羽が必ずしも少ないとはいえず、また紡糸速度が高速とならざるを得ない直接紡糸延伸法であることから、紡糸中の糸切れが頻繁に発生して、長時間の安定した生産を行うことができないという問題があった。しかも、これらの従来法においては、紡糸速度を低くくすれば生産性が悪くなり、なおかつ延伸中に毛羽が発生するという問題もあった。
【0008】
したがって、例えばポリアミド繊維やポリエチレンテレフタレート繊維などで用いられている直接紡糸延伸法を、単純にポリフェニレンサルファイドに適応したとしても、高強度かつ高タフネスで、延伸中における毛羽や糸切れの発生が少ない繊維を得ることは困難であった。
【0009】
また、特開平4−100915号公報には、特定の分子量をもったポリマを使用し、口金温度を270〜310℃とした口金から紡出させて延伸熱処理する方法が開示されているが、融点が285℃である通常のポリフェニレンサルファイドポリマを用いて高々290℃程度の口金温度で紡糸する場合には、吐出が不安定となって、毛羽や紡糸中の糸切れが多発するという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ポリフェニレンサルファイド繊維本来の特徴である耐熱性や耐薬品性を維持すると共に、高強度・高タフネスの特性を備えたポリフェニレンサルファイド繊維であって、これを織物などとして用いた時に、毛羽が少なく、品位の優れた基布を与えることが可能なポリフェニレンサルファイド繊維を高い生産効率、かつ優れた収率で製造する方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法は、主として次の構成を有する。すなわち、
ポリフェニレンサルファイド繊維を直接紡糸延伸法にて製造するに際し、
(イ)メルトフローレート(MFR)が100〜600のポリフェニレンサルファイドからなるポリマペレットを、ポリマ温度が295〜320℃となるように溶融し、(ロ)孔径(D)が0.1〜0.6mmで、孔長(L)と孔径(D)の比(L/D)が2.5以上の口金孔を通して紡糸し、(ハ)紡糸糸条が通過する口金面から10cm下における雰囲気温度を250℃以下とし、(ニ)次いで、冷却された紡糸糸条に水系油剤を付与して、この未延伸糸条を引き取りロールで引き取り、(ホ)引き取った糸条を直ちに延伸工程に移行させて、1.1〜1.5倍の1次延伸を行ない、引き続き2.0〜4.0倍の2次延伸を行なうか、または1.1〜1.5倍の1次延伸を行ない、引き続き2.0〜3.5倍の2次延伸を行った後、さらに1.01〜1.2倍の3次延伸を行ない、(ヘ)続いて延伸糸条を巻き取ることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法である。
【0013】
なお、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法においては、以下の(1)〜(5)が好ましい条件であり、これらの条件の適用によりさらにすぐれた効果を期待することができる。
(1)前記(ハ)の口金面から10cm下における雰囲気温度が150〜230℃であること、
(2)前記(ニ)の紡糸糸条に対する水系油剤の固形分付着量が1.0〜3.0重量%であること、
(3)前記(ニ)の未延伸糸条の引き取り速度が300〜1000m/分であること、
(4)前記(ホ)の延伸工程に引き続き、延伸糸条に0.9〜0.99倍の弛緩熱処理を施すこと、
(5)製糸速度が2000m/分以上であること。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法について、詳細に説明する。
本発明に係るポリフェニレンサルファイド繊維は、従来にない高強度かつ高タフネスの特性を有するものであり、かかる特性を活かして毛羽品位を有する織物用途、特にバグフィルター、モーター結束紐、モーターバインダーテープおよび抄紙用ドライヤーカンバスなどの分野に有用である。
【0015】
図1は、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法に用いる直接紡糸延伸装置の一例を示す概略図である。
図1において、ポリフェニレンサルファイドポリマは、好ましくはエクストルーダー型紡糸機1に供給されて溶融状態とされ、口金パック2の紡糸口金の細孔を通して紡出される。
【0016】
次に、紡出糸条は断熱筒3を経て口金直下10cm間の特定雰囲気温度に調整されたチムニー4を通り、続いてダクト5内で冷却を受けた後、油剤オイリングローラ6により水系油剤が付与され、引き取りローラ8により引き取られる。
【0017】
そして、この未延伸糸条7は、ただちに引き取りローラ8/セパレートローラ8’とフィードローラ9/セパレートローラ9’との間で1次延伸され、次いでフィードローラ9/セパレートローラ9’と第1延伸ローラ10/10’との間で2次延伸、第1延伸ローラ10/10’と第2延伸ローラ11/11’との間で3次延伸、さらには第2延伸ローラ11/11’とリラックスローラ12/12’との間でによりリラックス処理を受けた後、ワインダー14に巻き取られる。
なお、図中の符号13は、後述する実施例において単繊維切れを評価するために設けられた毛羽検知装置である。
【0018】
次に、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法について、さらに詳しく説明する。
まず、上記(イ)において、本発明で用いるポリフェニレンサルファイドからなるポリマペレットは、そのメルトフローレート(MFR)を100〜600とするものである。メルトフローレートが100未満では、目的とする繊維物性が得られず、一方、600を越えると、溶融粘度が高過ぎて安定な紡糸が困難となる。
【0019】
なお、ここでいうメルトフローレート(MFR)とは、測定温度316℃、荷重5Kgfとし、ASTM D1238−82法によって測定されたポリマの溶融流れ性を示すパラメーターである。
【0020】
また、本発明で用いるポリフェニレンサルファイドは実質的に線状のポリマとであることが好ましい。また、トリクロロベンゼン(TCB)を0.1重量%以下含有したポリマであってもよい。
【0021】
ポリフェニレンサルファイドのポリマペレットは、通常140〜180℃で8〜24時間程度乾燥して用いることが好ましい。その理由は、主に低沸点異物を除去し、また適度に結晶化させることによって、紡糸機中でのスムーズな溶融が可能となるからである。
【0022】
ポリフェニレンサルファイドのポリマペレットは、好ましくはエクストルーダー型紡糸機1で溶融し、ポリマ温度(紡糸温度)を295℃〜320℃として紡糸されるものである。紡糸温度とは紡糸パック中のポリマ温度であり、好ましくは300〜315℃である。
【0023】
次に、上記(イ)において、紡糸パック2中では、溶融ポリマを20μ以下、好ましくは10μ以下の開孔を有するフィルターを用いて濾過した後、紡糸口金の細孔を通して紡出する。本発明の製造方法において、紡糸口金は、孔径(D)0.1〜0.6mmで、孔長(L)と孔径(D)の比(L/D)が2.5以上の口金孔を有するものを用いるものである。特に孔長(L)と孔径(D)の比(L/D)は、紡糸安定性および延伸性、ひいては繊維の毛羽品位に大きな影響を及ぼすため、最適な条件を選ぶことが重要である。特に好ましい範囲は3.0〜8.0である。比(L/D)が2.5未満であると、安定した製糸が困難となり、糸切れや毛羽が頻発することが多い。
【0024】
次いで、紡出糸条は断熱筒3を経て口金直下10cm間に配置された雰囲気温度を250℃以下、好ましくは150〜230℃としてチムニー4を通過させるものである。このチムニー4は、口金直下10cm下における雰囲気温度を上記の温度となるように保持された保温筒または加熱筒で囲まれた雰囲気である
【0025】
続いて、上記(ハ)において、糸条をダクト5を通過させ、このダクト5内で冷風で冷却する。冷風の温度は通常10〜30℃の範囲を用いるが、100℃以下の温風を用いてもよい。
【0026】
冷却固化した糸条には、油剤オイリングローラ6により、水系油剤が付与されるものであり、油剤を付与された未延伸糸条7は、引き続いて回転する引き取りローラ8で引き取る。ここで使用する油剤は、平滑剤、活性剤、乳化剤などを主成分とする水系エマルジョン油剤であることが必須である。ポリフェニレンサルファイド繊維の延伸熱処理において、ポリアミド繊維などに用いられる非含水油剤を用いると、単繊維間の摩擦が大きくなるため、毛羽や糸切れの要因となる。
【0027】
また、未延伸糸に対する水系油剤の固形分付着量は、1.0〜3.0重量%となるように調整されるのが好ましい。水系油剤の固形分付着量をかかる好ましい範囲とすると未延伸糸条7と延伸ローラとの摩擦力が高くなりすぎず、延伸熱処理時に毛羽や糸切れを有効に抑制でき、また、ポリフェニレンサルファイド繊維としての性能が劣ってしまうこともない。
【0028】
引き取りローラ8は、通常、300〜1000m/分の速度とする。300m/分以下では生産効率が劣り、一方1000m/分以上では目的とする物性が得られないことがある。
【0029】
次いで、未延伸糸条7は、本発明の製造方法において最も特徴的である上記(ホ)の延伸工程へ送られる。
すなわち、未延伸糸条7は、ただちに引き取りローラ8/セパレートローラ8’とフィードローラ9/セパレートローラ9’との間で1次延伸され、フィードローラ9/セパレートローラ9’と第1延伸ローラ10/10’との間で2次延伸、第1延伸ローラ10/10’と第2延伸ローラ11/11’との間で3次延伸、さらには第2延伸ローラ11/11’とリラックスローラ12/12’との間でによりリラックス処理を受けた後、ワインダー14に巻き取られる。この延伸ゾーンでは、先ず1.1〜1.5倍の1次延伸を行った後、引き続き2.0〜4.0倍の2次延伸を行なうか、または、先ず1.1〜1.5倍の1次延伸を行った後、引き続き2.0〜3.5倍の2次延伸を行い、さらに1.01〜1.5で3次延伸を行うことが特徴である。
【0030】
ここで、1次延伸は一般にプレストレッチと称し、1.1倍未満、通常は1.05程度が多く採用されているが、本発明の製造方法においては1.1〜1.5倍、好ましくは1.2〜1.4倍とするものであり、これは極めて特異な範囲であるといえる。1次延伸倍率が1.1倍未満では、目的とする物性が得にくいばかりか、特に織物用途で重要な毛羽品位における改良効果が得られない。一方、1次延伸倍率が1.5以上では、不均一な延伸が生じるため、特に織物用途で重要な毛羽品位における改良効果を得ることができない。
【0031】
1次延伸は、引き取りローラ8とフィードローラ9との間で行ない、引き取りローラ8の温度は、ポリフェニレンサルファイドのガラス転移温度(Tg)以下、すなわち90℃以下、好ましくは30〜60℃に、フイードローラ9の温度はTg±20℃、すなわち70〜110℃で、引き取りローラ8よりも高い温度に設定する。
【0032】
次に、フィードローラ9と第1延伸ローラ10間での2次延伸は、2段延伸で完了させる場合は2.0〜4.0倍で、また3段延伸を施す場合の2段延伸は2.0〜3.5倍で行うものである。第1延伸ローラ10の温度は90〜130℃で、フィードローラ9の温度より高い温度に設定することが好ましい。2次延伸倍率が上記の範囲を外れる場合には、目的とする繊維物性を得にくいばかりか、織物用原糸とした場合の優れた毛羽品位を得ることができない。
【0033】
また、3段延伸の場合には、第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11との間で第3次延伸を行う。第2延伸ローラ11の温度は、150〜265℃とすることが好ましい。第2延伸ローラ11の温度と、この第2延伸ローラ11上への糸条捲回数が、得られるポリフェニレンサルファイド繊維の乾熱収縮率に大きく影響する。この第2延伸ローラ11には糸条を少なくとも1秒間接触させることが好ましい。第3次延伸の延伸倍率は、1.01〜1.2倍、好ましくは1.03〜1.2倍と比較的低倍率に設定するものである。この範囲外では、目的とする繊維物性が得られないばかりか、織物用原糸とした場合の優れた毛羽品位を得ることができない。
【0034】
次いで、延伸熱処理後の糸条は、第2延伸ローラ11とリラックスローラ11との間で、通常0.90〜0.99の延伸倍率、すなわちち弛緩条件下に加熱しながら延伸歪みを緩和された後、巻き取り直前にワインダー14に巻取られる。
【0035】
かくして得られる本発明のポリフェニレンサルファイド繊維は、強度が4.3cN/dtex以上、伸度が22%以上と、高強度・高タフネスの特性を備え、しかも特に織物用途などに適した毛羽品位を有するものであり、このような特性がが要求されるバグフィルター、モーター結束紐、モーターバインダーテープおよび抄紙用ドライヤーカンバスなどの用途にきわめて有用である。
【0036】
また、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法によれば、上記の優れた特性を有する繊維を、高い生産効率でかつ優れた収率で得ることができる。すなわち、直接紡糸延伸法により、製糸速度2000m/分以上、通常は3000m/分以上で、かつ2糸条以上の多糸条同時延伸法で効率良く生産することができる。また、製造時、特に延伸時の毛羽の発生が著しく少なく、整径工程での毛羽発生は十数ケ/千万m以下、通常は数ケ/千万mであり、産業資材用途に用いられているポリアミド繊維やポリエステル繊維の場合に比べて遜色ないレベルであるといえる。
【0037】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明の明細書および実施例中に記載した繊維特性の定義および測定方法は次の通りである。
(a)強度(cN/dtex)、伸度(%)
JIS L 1013の方法に依った。詳しくは、試長25cm、引張り速度30cm/分の条件で測定した。
(b)糸切れ(回/t)
1トンあたりの糸切れ回数を算出した。
(c)単繊維切れ(個/千万m)
巻き取り直前で、毛羽検知装置((株)キーエンス製のセンサーGH513とアンプGA245から成る)と切断した単繊維とが接触した回数を、1千万mあたりの個数として算出した。
(d)整経毛羽(個/千万m)
整経工程での毛羽個数を単繊維切れと同様に算出した。
【0038】
[実施例1]
MFRが240のポリフェニレンサルファイドポリマを、10トール真空下の状態でエクストルダー型紡糸機によりポリマ温度が315℃になるように溶融し、紡糸パック中で溶融ポリマを5μの細孔を有する金属フィルターで濾過した後、孔径0.30mm、孔深度/孔径の比が4の吐出孔を50ホール有する紡糸口金を通して紡出し、吐出量は巻取り糸条が220dtexとなるように製糸条件に合わせた。
口金の直下に断熱筒を設置し、口金面下10cmの雰囲気温度が220℃である雰囲気を通過させ、この糸条をただちに25℃の冷風で冷却し、冷却固化した未延伸糸条に、未延伸糸に対する油剤固形分付着量が1.5重量%になるよう水系エマルジョン油剤を付与した。
次いで、600m/分の速度で回転する50℃に加熱した引取りロールで引取り、この未延伸糸条を一旦巻き取ることなく連続して90℃に加熱したフィードロールとの間で1.30倍の1次延伸を行った。引き続いてフィードロールと105℃の第1延伸ロールとの間で3.0倍の2次延伸を行った。さらに、糸条に第2延伸ロールとリラックスロールとの間で0.98倍の弛緩処理を施し、ワインダーで巻き取ることにより、単繊維繊度4.5dtexのポリフェニレンサルファイド繊維を得た。
上記製造条件と得られたポリフェニレンサルファイド繊維の特性は表1に示す通りであった。表1の結果から明らかなように、本発明の条件を満たす製造方法により得られたポリフェニレンサルファイド繊維(実施例1〜4)は、強度が4.3cN/dtex以上、伸度が22%以上と、高強度・高タフネスの特性を備え、しかも特に織物用途などに適した毛羽品位を有するものである。
【0039】
【表1】
Figure 0004359999
【0040】
[実施例2〜4、比較例1〜6]実施例1の製造条件のうち1部を表1に示したように変更した以外は同様の条件で紡糸、延伸することにより、種類のポリフェニレンサルファイド繊維を得た。得られた各ポリフェニレンサルファイド繊維の評価結果及び特性を表1に併記した。本発明の条件を一つでも欠く製造方法により得られたポリフェニレンサルファイド繊維(比較例1〜6)は、高強度・高タフネスの一方または両方を満たさず、しかも毛羽品位の劣るものである。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維は、強度が4.3cN/dtex以上、伸度が22%以上と、高強度・高タフネスの特性を備え、しかも特に織物用途などに適した毛羽品位を有るものであり、このような特性がが要求されるバグフィルター、モーター結束紐、モーターバインダーテープおよび抄紙用ドライヤーカンバスなどの用途にきわめて有用である。
【0042】
また、本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法によれば、上記の優れた特性を有する繊維を、高い生産効率でかつ優れた収率で得ることができる。すなわち、直接紡糸延伸法により、製糸速度2000m/分以上、通常は3000m/分以上で、かつ2糸条以上の多糸条同時延伸法で効率良く生産することができる。また、製造時、特に延伸時の毛羽の発生が著しく少なく、整径工程での毛羽発生は十数ケ/千万m以下、通常は数ケ/千万mであり、産業資材用途に用いられているポリアミド繊維やポリエステル繊維の場合に比べて遜色ないレベルであるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法に用いる直接紡糸延伸装置の一例を示す概略図。
【符号の説明】
1 紡糸機
2 口金パック
3 断熱筒
4 チムニー
5 ダクト
6 油剤オイリングロール
7 未延伸糸条
8 引取りローラ
9 フィードローラ
8’,9’ セパレートローラ
10,10’ 第1延伸ローラ
11,11’ 第2延伸ローラ
12,12’ リラックスローラ
13 毛羽検知装置
14 ワインダー

Claims (6)

  1. ポリフェニレンサルファイド繊維を直接紡糸延伸法にて製造するに際し、
    (イ)メルトフローレート(MFR)が100〜600のポリフェニレンサルファイドからなるポリマペレットを、ポリマ温度が295〜320℃となるように溶融し、
    (ロ)孔径(D)が0.1〜0.6mmで、孔長(L)と孔径(D)の比(L/D)が2.5以上の口金孔を通して紡糸し、
    (ハ)紡糸糸条が通過する口金面から10cm下における雰囲気温度を250℃以下とし、
    (ニ)次いで、冷却された紡糸糸条に水系油剤を付与して、この未延伸糸条を引き取りロールで引き取り、
    (ホ)引き取った糸条を直ちに延伸工程に移行させて、1.1〜1.5倍の1次延伸を行ない、引き続き2.0〜4.0倍の2次延伸を行なうか、または1.1〜1.5倍の1次延伸を行ない、引き続き2.0〜3.5倍の2次延伸を行った後、さらに1.01〜1.2倍の3次延伸を行ない、
    (ヘ)続いて延伸糸条を巻き取ること
    を特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法。
  2. 前記(ハ)の口金面から10cm下における雰囲気温度が150〜230℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法。
  3. 前記(ニ)の紡糸糸条に対する水系油剤の固形分付着量が1.0〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法。
  4. 前記(ニ)の未延伸糸条の引き取り速度が300〜1000m/分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法。
  5. 前記(ホ)の延伸工程に引き続き、延伸糸条に0.9〜0.99倍の弛緩熱処理を施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法。
  6. 製糸速度が2000m/分以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド繊維の製造方法。
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