次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.印刷制御:
A−1.ハードウェアおよびソフトウェア構成:
A−2.色変換プロファイル作成指針の設定:
A−3.色変換プロファイルの作成:
A−4.色変換および印刷:
B.各種コンバータ:
B−1.分光プリンティングモデルコンバータ:
B−2.色コンバータ:
B−3.粒状性コンバータ:
B−4.平滑性コンバータ:
C.まとめおよび変形例:
A.印刷制御
A−1.ハードウェアおよびソフトウェア構成
図1は、本発明の印刷制御装置が実行する印刷制御処理の概略的な流れを示している。同図において、ステップS100(A−2節にて説明)においては、印刷制御装置が印刷装置の現在の状況と、ユーザーからの指示に基づいて色変換プロファイル作成の必要性の有無、および、色変換プロファイルCPを作成する場合の作成指針を設定する。ステップS200(A−3節にて説明)においては、ステップS100にて設定された作成指針に基づいて色変換プロファイルCPを作成する処理を行う。ステップS200における色変換プロファイルCPの作成においては、インク量セットを各指標値に変換する各種コンバータ(B−1〜B4節にて説明)を使用する。さらに、ステップS300(A−4節にて説明)においては作成された色変換プロファイルCPを使用して色変換を行い、その変換結果に基づいて印刷装置を制御することにより印刷を実行させる。
図2は、印刷制御装置のハードウェア構成およびソフトウェア構成を示している。なお、本発明の印刷制御装置の主要部は実体的にはコンピュータ10にて実行されている。具体的には、コンピュータ10が備えるCPU12が、ハードディスクトライブ(HDD)11等に記憶されたプログラムデータ11aを読み込み、当該プログラムデータ11aをRAM13上に展開しながらプログラムデータ11aにしたがった演算を実行させる。そして、当該演算によって本発明の印刷装置としてのプリンタ20をUSBインターフェース(I/F)14等を介して制御することにより、本発明の印刷制御装置を構成する各種手段を実現する。むろん、コンピュータ10とプリンタ20が赤外線や無線LAN等の他のインターフェースに接続されていてもよい。コンピュータ10は、ビデオインターフェース(I/F)15を介してディスプレイ30と接続されており、また入力インターフェース(I/F)16を介してキーボード40aとマウス40bが接続されている。
プリンタドライバPDは、ディスプレイ30にUI画面を表示させキーボード40aとマウス40bを介してユーザーからの指示を受け付けるUI部PD1と、印刷対象の画像データを取得する画像データ取得部PD2を備えている。また、プリンタドライバPDは、インクカートリッジの搭載状況をはじめとするプリンタ情報をプリンタ20から取得するプリンタ情報取得部PD3と、プリンタ情報やユーザーからの指示に基づいて色変換プロファイルCPの作成指針を設定するプロファイル作成指針設定部PD4を備えている。なお、本実施形態において色変換プロファイルCPはルックアップテーブルである。
プリンタドライバPDは、色変換プロファイルCPの作成指針にしたがって色変換プロファイルCPを作成するプロファイル作成部PD5を備えている。プロファイル作成部PD5が色変換プロファイルCPを作成する際に、分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCと粒状性コンバータGCと平滑性コンバータSCを利用する。さらに、プリンタドライバPDは、作成された色変換プロファイルCPを使用して色変換を行う色変換部PD6と、色変換を行った画像データにハーフトーン処理やマイクロウィーブ処理を行って印刷データを生成する印刷データ生成部PD7を備えている。プリンタドライバPDを構成する各モジュールPD1〜PD7,RC,CC,GC,SCの詳細は、後に処理の流れとともに説明する。
図3は、本発明の印刷制御装置によって制御されるプリンタ20の構成を示している。同図において、プリンタ20はCPU23とRAM24とROM25を備えている。ROM25に記憶されたプログラムデータ25aをRAM24に展開しつつCPU23がプログラムデータ25aにしたがった演算を行うことによりプリンタ20を制御するためのファームウェアFWが実行される。ファームウェアFWは、コンピュータ10からUSBI/F26を介して入力された印刷データに基づいて紙送り機構27やキャリッジモータ28や印刷ヘッド29への駆動信号を生成する。プリンタ20はキャリッジ21を備えており、キャリッジ21が複数の種類のインクのインクカートリッジ22,22・・・を搭載する。キャリッジ21は、インクカートリッジ22,22・・・から供給されるインクを多数のインクノズルから吐出する印刷ヘッド29を備えている。
印刷ヘッド29は、キャリッジモータ28の駆動によってキャリッジ21とともに往復動させられ、当該往復動によるインクノズルと印刷用紙との相対移動によって主走査方向のラスターを形成することができる。一方、紙送り機構27が印刷用紙を上記主走査方向と直交する副走査に移動させることにおり、印刷用紙上に平面画像を印刷することが可能となっている。本実施形態におけるプリンタはインクジェット方式のプリンタであるが、インクジェット方式の他にも種々のプリンタに対して本発明を適用可能である。例えば、色材としてトナーを使用するレーザプリンタにおいても本発明を適用することができる。
キャリッジ21はインクカートリッジ22,22・・・が取り付け可能なカートリッジホルダ21a,21a・・・を備えており、各インクカートリッジ22,22・・・をカートリッジホルダ21a,21a・・・に挿入して固定することができる。本実施形態においてカートリッジホルダ21a,21a・・・は8個備えられているものとし、最大限、8個のインクカートリッジ22,22・・・を搭載することが可能となっている。各インクカートリッジ22,22・・・においては顔料または染料の色材を液体に混合することにより形成したインクを収容しており、インクカートリッジ22,22・・・は本発明の色材容器に相当する。
各インクカートリッジ22,22・・・においてはそれぞれ異なる種類のインクが収容されており、各インクによる減方混色によってカラー画像を再現する。インクカートリッジ22,22・・・には各インクの種類を識別するための識別データと、各インクの残量を特定する残量データを記憶する不揮発性のROM22a,22a・・・が備えられている。インクカートリッジ22,22・・・をカートリッジホルダ21a,21a・・・に搭載することにより、カートリッジホルダ21a,21a・・・に備えられた図示しない端子がROM22a,22a・・・と電気的に接続し、CPU23とRAM24にて実行されるファームウェアFWのステータス調査部FW1が各インクカートリッジ22,22・・・に収容されたインクの種類および残量を取得することが可能となっている。ステータス調査部FW1は、USBI/F26を介してコンピュータ10にインクの搭載状況を伝達する。
また、インクカートリッジ22,22・・・をカートリッジホルダ21a,21a・・・に搭載することにより、インクカートリッジ22,22・・・内のインク供給経路とカートリッジホルダ21a,21a・・・から印刷ヘッド29のインクノズルまでのインク供給経路とが接続する。本実施形態において、カートリッジホルダ21a,21a・・・はすべて同じ形状となっており、インクカートリッジ22,22・・・もすべて同じ形状となっている。従って、ユーザーの好みに応じて、どのインクカートリッジ22,22・・・も、どのカートリッジホルダ21a,21a・・・に搭載することができる。ただし、少なくとも一部のインクのインクカートリッジ22,22・・・をユーザーが任意に搭載することができればよく、一部のカートリッジホルダ21a,21a・・・には特定のインクのインクカートリッジ22,22・・・しか搭載できないようにしてもよい。例えば、再現できる色再現ガマットが最低限確保できるインクの組み合わせについては、特定のカートリッジホルダ21a,21a・・・に必ず搭載されるように制限してもよい。
A−2.色変換プロファイル作成指針の設定
図4は、色変換プロファイル作成指針の設定処理の流れを示している。ステップS110においては、UI部PD1がUI画面をディスプレイ30に表示させキーボード40aとマウス40bを介して印刷指示を受け付けるとともに、画像データ取得部PD2が印刷対象の画像データを例えばHDD11や他のアプリケーションプログラムから取得する。本実施形態において、印刷対象の画像データとしてsRGB色空間のRGB座標で各画素の色が特定された画像データが指定されたものとする。印刷対象の画像データが取得できると、ステップS120においてプリンタ情報取得部PD3がUSBI/F14を介して、プリンタ20で実行中のステータス調査部FW1と通信を行うことにより、プリンタ情報を取得する。本実施形態では、上述したカートリッジホルダ21a,21a・・・におけるインクカートリッジ22,22・・・の搭載状況が取得される。
図5は、カートリッジホルダ21a,21a・・・におけるインクカートリッジ22,22・・・の搭載状況の一例を模式的に説明している。同図において、当該プリンタ20の機種に搭載可能なインクカートリッジ22,22・・・は、M(マゼンタ)インクとlm(ライトマゼンタ)インクとC(シアン)インクとlc(ライトシアン)インクとY(イエロー)インクとK(ブラック)インクとlk(グレー)インクとllk(ライトグレー)インクとR(レッド)インクとO(オレンジ)インクとG(グリーン)インクとB(ブルー)インクとdy(ダークイエロー)インクをそれぞれ収容したものとなっている。各インクカートリッジ22,22・・・には、上述したROM22a,22a・・・が備えられている、それぞれ収容するインクの種類が識別可能なデータが書き込まれている。
従って、ステップS120では、ステータス調査部FW1が搭載されたインクカートリッジ22,22・・・のROM22a,22a・・・にアクセスすることにより、搭載されたインクカートリッジ22,22・・・に収容されたインクの情報を取得することができる。なお、非搭載のカートリッジホルダ21a,21a・・・においてはROM22a,22a・・・に対してアクセスすることができないため、アクセスできないことをもって非搭載であることを認識することができる。また、搭載されている場合であっても、ROM22a,22a・・・にインク残量がない旨が記録されている場合には、そのことをもって非搭載であることを認識してもよい。
上記の13種類のインクを収容した各インクカートリッジ22,22・・・は独立しており、それぞれ個別に購入することが可能となっている。ユーザーは、好みのインクカートリッジ22,22・・・を購入し、カートリッジホルダ21a,21a・・・に搭載する。なお、本実施形態ではCMYKRlclmインク(7種類)で構成されるインクセットがカートリッジホルダ21a,21a・・・に搭載されているものとする。ステップS130においては、UI部PD1がUI画面をディスプレイ30に表示させ、ユーザーから印刷に使用するインクの指定を受け付ける。
図6は、ステップS130にて表示されるUI画面を示している。同図において、現在カートリッジホルダ21a,21a・・・にCMYKRlclmインクのインクカートリッジ22,22・・・が搭載されていることが表示されている。そして、CMYKRlclmインクを印刷に使用したくない場合には、チェックを入れることが可能なチェックボックスがそれぞれ設けられている。当該UI画面においては、印刷に使用する印刷用紙の種類と、印刷物を観察する観察光源も指定することも可能となっている。ここでは、Rインクを印刷に使用しない旨のチェックがなされ、印刷用紙として光沢紙、観察光源としてD65光が選択されたものとして以下説明する。また、観察光源の指定を受け付けることなく、予め標準的な光源を設定しておいてもよい。ここで、印刷に使用すると選択されたインクセットが本発明の色材セットに相当する。なお、各カートリッジホルダ21a,21a・・・に対する搭載位置の差は区別しないものとして、13種類のインクを8個のカートリッジホルダ21a,21a・・・へ搭載する場合に発生し得るインクセットの組み合わせ個数は、13C8+13C7+13C6+13C5+13C4+13C3+13C2+13C1=7098個にも上る。決定ボタンがマウス40bによってクリックされたことをUI部PD1が認識すると、ステップS140においてはプロファイル作成指針設定部PD4がHDD11にすでに記憶されている既存の色変換プロファイルCPを取得する。
ステップS150においては、プロファイル作成指針設定部PD4が色変換プロファイル作成の必要性を判定する。ここでは、ステップS130にて決定されたインクセットと印刷用紙と観察光源が、ステップS150にて取得したいずれかの色変換プロファイルCPのインクセットと印刷用紙と光源に一致するか否かを判定する。すでに同一のインクセットと印刷用紙と光源の色変換プロファイルCPがHDD11に存在する場合には、新たに色変換プロファイルCPを作成する必要がないとして、そのまま図1のステップS300にて印刷を実行する。一方、既存のいずれの色変換プロファイルCPにもインクセットと印刷用紙と観察光源が一致しない場合には、色変換プロファイルCPを作成する必要があると判定する。色変換プロファイルCPを作成する必要があると判定されると、ステップS160においてUI部PD1がUI画面をディスプレイ30に表示させキーボード40aとマウス40bを介してユーザーからの色変換プロファイル作成指針の指定を受け付ける。
図7は、ステップS160にて表示されるUI画面を示している。同図において、プロファイル作成指針設定部PD4が色変換プロファイル作成指針を決定するための以下の選択肢が用意されている。
・モード1:粒状性重視
・モード2:色恒常性重視
・モード3:階調性重視
・モード4:色再現ガマット重視
・モード5:ランニングコスト重視
・モード6:画質重視
・モード7:自動判定
ユーザーがいずれかを選択すると、ステップS170にてプロファイル作成指針設定部PD4が下記の式(1)における重み係数w
1〜w
5を設定する。
上記の(1)式においては、Epは評価関数を示し、評価関数Epが小さければ小さいほど総合的な印刷パフォーマンスが高くなるという性質を有している。ψは、印刷に使用すると指定されたインクセット(本実施形態ではCMYKlclm)の各インクのインク量の組み合わせを意味するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を表している。上記の(1)式の第1項は印刷物の粒状性の性能を要求する項であり、第2項は印刷色の光源変動に対する色恒常性の性能を要求する項であり、第3項は印刷物の階調性の性能を要求する項であり、第4項は色再現ガマットの性能を要求する項であり、第5項は各インク量dc,dm,dy,dk,dlc,dlmを加算したものであり印刷時に消費するインクのランニングコストの性能を要求する項である。
第5項も、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に依存するため、ψの関数であるということができる。なお、TDutyは記録媒体に付着可能なインク量の制限に対応した値である。インク量は少ないほどランニングコストが良好となるため、(1)式の第5項が小さくなるほど最適であるといえる。このように各項は、異なる観点によって定められたインク量セットψ=(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の関数であるということができる。また、いずれの項も同一の大きさで正規化されたスカラーであり、値が小さいほどパフォーマンスが高い。また、各パフォーマンス要素に対応する第1項〜第5項を個別の重み係数w1〜w5によって重みを調整しつつ線形結合することにより、総合的な印刷パフォーマンスが評価可能な評価関数Epを定義している。すなわち、重み係数w1〜w5は、どのパフォーマンス要素を重視するかを調整する値を意味している。
ここで、モード1が選択された場合には、重み係数w1をデフォルト値から大きく設定し、他の重み係数w2〜w5をデフォルト値から一様に小さくする。これにより、粒状性の性能の評価関数Epへの寄与を高くすることができる。同様に、モード2〜5が選択された場合には、それぞれ重み係数w2〜w5をデフォルト値から大きく設定し、他の重み係数w1〜w5をデフォルト値から一様に小さくする。これにより、各パフォーマンス要素の評価関数Epへの寄与を高くすることができる。さらに、モード6が選択された場合には、重み係数w1〜w4をデフォルト値から全体的に大きく設定し、重み係数w5のみをデフォルト値から小さくする。これにより、画質に関する第1項〜第4項に対応するパフォーマンス要素の評価関数Epへの寄与を全体的に高くすることができる。なお、デフォルト値は、各パフォーマンス要素の重視度のバランスが取れた値とされる。
モード7が選択された場合には、これまでに取得した情報に基づいてプロファイル作成指針設定部PD4が最適な重み係数w1〜w5を設定する。ここでは、種々の判断手法に基づいて最適な重み係数w1〜w5を設定することができる。例えば、ステップS130にて指定されたインクセットを構成するインク数が多かったり印刷用紙が高級であるほど、ユーザーの画質への要求が高いと考えることができる。このような場合は、モード6が明示的に指定された場合よりも顕著ではないものの、重み係数w1〜w4をデフォルト値から全体的に大きく設定し、重み係数w5のみをデフォルト値から小さくする。本実施形態においては、ステップS130にて光沢紙と6種類のインクの使用が選択されているため、重み係数w1〜w4をデフォルト値から全体的に大きく設定されることとなる。
反対に、指定されたインクセットを構成するインク数が少なかったり印刷用紙が低級であるほど、ユーザーの画質への要求が低いと考えることができる。さらに、カートリッジホルダ21a,21a・・・に多くの種類のインクカートリッジ22,22・・・が搭載されているにもかかわらず、ユーザーがステップS130にて明示的に印刷に使用するインクの種類を減らしている場合には、ユーザーの画質への要求が低いと考えることができる。これらの場合は、モード5が明示的に指定された場合よりも顕著ではないものの、重み係数w1〜w4をデフォルト値から全体的に小さく設定し、重み係数w5のみをデフォルト値から大きくする。
また、プリンタ20の製造元が特定のインクセットを推奨する場合も考えられる。例えば、鮮やかな色が再現できるインクセットとして、CMYKRGBlkからなるインクセットが推奨することが考えられる。推奨通りのCMYKRGBlkが印刷に使用すると指定された場合、高彩度の色再現ガマットを重視する必要があるため、重み係数w4を大きく設定すべきである。また、モノトーン印刷に適したインクセットとして、YKlklclmからなるインクセットが推奨することが考えられる。推奨通りのYKlklclmが印刷に使用すると指定された場合、階調性を重視する必要があるため、重み係数w3を大きく設定すべきである。このように、特定のインクセットと重み係数w1〜w5との対応関係をプリセットしておいてもよい。
さらに、各インクカートリッジ22,22・・・のROM22a,22a・・・からインク残量も読み取り可能であるため、モード7では、印刷に使用すると指定されたインクのインク残量に応じて最適な重み係数w1〜w5を自動設定してもよい。印刷に使用すると指定されたインクのいずれかのインク残量が少ない場合には、インクの消費量を極力抑えるべきであるため、重み係数w5をデフォルト値よりも大きめに設定すべきである。さらに、印刷枚数や印刷対象の画像データが示す色も考慮して、重み係数w5を大きくする程度を決定するようにしてもよい。例えば、印刷枚数が少ない場合には、重み係数w5をあまり大きくしなくても印刷を完了させることができる。
さらに、ステップS110にて印刷対象として指定された画像データに応じて重み係数w1〜w4を設定することもできる。例えば、印刷対象の画像データがグレースケール画像やセピア画像を示す場合、画像を階調のみで表現する必要があるため、モード3と同様に重み係数w3をデフォルト値から大きく設定し、他の重み係数w1,w2,w4,w5をデフォルト値から一様に小さくするようにしてもよい。また、色彩のずれも目立ちやすいため、モード2と同様に重み係数w2をデフォルト値から大きく設定し、他の重み係数w1,w3〜w5をデフォルト値から一様に小さくするようにしてもよい。むろん、印刷対象の画像データが文書であるか写真であるかに応じて重み係数w1〜w5を設定することも可能である。以上のようにして重み係数w1〜w5が設定されると、評価関数Epが確定されたこととなり、以下に説明する色変換プロファイルCPの作成処理(ステップS200)における作成指針が設定されたこととなる。
A−3.色変換プロファイルCPの作成
図8はプロファイル作成部PD5が実行する色変換プロファイルCPの作成処理の流れを示し、図9は色変換プロファイルCPの作成手順を模式的に示している。図8に示すステップS210においては、色変換プロファイルCPの作成条件を取得し、分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCに設定する。分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCは、インク量セットから絶対色空間であるCIELAB色空間での色(L*a*b*)を予測するものであるが、再現される色は印刷用紙と観察光源に依存することとなる。そこで、ステップS130において指定された印刷用紙(光沢紙)と観察光源(D65)を分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCに設定する。
ステップS220においては、初期のインクプロファイルIPを作成する。なお、インクプロファイルIPは、CIELAB色空間(L*a*b*)と、本実施形態で印刷に使用するインク量空間であるCMYKlclm空間(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を複数の代表的な格子点について規定したプロファイルである。初期のインクプロファイルIPの作成においては、例えば印刷に使用するインク量空間から173組のランダムなインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を生成する。また、初期の格子点に対応するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)が得られれば、これらのインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)でステップS130にて指定された印刷用紙に印刷を行い、さらに指定された光源のもとで観察したときの色(L*a*b*)を分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCの予測によって得ることができる。従って、得られた色(L*a*b*)とインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の対応関係を各格子点について記述することにより初期のインクプロファイルIPを作成することができる。なお、初期の173組のインク量セットは、後述する処理によって最適化されていくため、初期の段階においてどのように生成してもよい。
次に、ステップS230においては、ステップS210にて設定した評価関数Epおよび重み係数w1〜w5をプロファイル作成部PD5が取得する。次のステップS240においては、初期のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を順次最適化していく。具体的には、各格子点について総合的な印刷パフォーマンスを示す評価関数Epを極小化させるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を順次算出していく。例えば、インク量空間における初期のインク量セットの位置から局所的にインク量セットを移動させ、その際に評価関数Epを極小化させるインク量セットを各格子点について算出していく。
これにより、インク量空間における格子点の位置が評価関数Epを極小化させる方向に修正されたこととなる。さらに、修正後の位置から同様に局所的にインク量セットを移動させ、その際に評価関数Epを極小化させるインク量セットを各格子点について算出していく。以上のような処理を繰り返し(例えば200回)実行することにより、最終的には各格子点についての評価関数Epが極めて小さくなる(総合的な印刷パフォーマンスが高い)格子点に最適化することができる。なお、以上の処理を規定回数行うことをもって格子点の最適化を完了させてもよいし、評価関数Epの値が所定の閾値を下回ることをもって格子点の最適化を完了させてもよい。
この最適化処理においては順次更新されるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)について評価関数Epを算出することが必要となるが、その際に、後述する各コンバータRC,CC,GC,SCを利用することによって、逐次、各インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に対応する分光反射率R(λ)や粒状性指数GIや色恒常性指数CIIや平滑程度評価指数SIや色差ΔEやインク総量が算出され、評価関数Epが求められることとなる。最適化を行う際にもステップS210にて設定された印刷用紙と観察光源のもとで分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCが色(L*a*b*)の予測を行う。なお、本実施形態において、特開2006−197080号公報に開示された格子点の最適化の手法を適用することもできる。この場合、インク量空間にて評価関数Epを0とする方向の仮想的な力を各格子点に作用させ、当該力によってインク量空間における格子点の位置を定常状態に収束させればよい。
以上のようにして各格子点が最適化されると、ステップS250おいて、最適化された格子点のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に対応した色(L*a*b*)を分光プリンティングモデルコンバータRCおよび色コンバータCCによって算出する。ここでも、ステップS210にて設定された印刷用紙(光沢紙)と観察光源(D65光)のもとで分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCが色(L*a*b*)の予測を行う。そして、互いに対応するL*a*b*値とインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を記述したインクプロファイルIPをプロファイル作成部PD5が作成する。
ステップS260においては、プロファイル作成部PD5がインクプロファイルIPに基づいて色変換プロファイルCPを作成する。図9に示すように色変換プロファイルCPは、例えばsRGB色空間で各画素の色が表された画像データをプリンタ20におけるインク量空間の画像データに変換するプロファイルである。sRGB色空間はCIE標準に基づいてCIELAB色空間との対応関係(sRGBプロファイルSP)が定められているため、インクプロファイルIPに規定された各格子点のL*a*b*値によってsRGB色空間のRGB値とインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を特定し、プロファイル化することができる。また、sRGB色空間のRGB値とインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を特定する際に、意図的に補正量を与えて、色補正を行う色変換プロファイルCPを作成するようにしてもよい。sRGBプロファイルSPについても平滑程度評価指数SIによる最適化を行っておくことが望ましい(特開2006−197080号公報、参照。)。なお、CIELAB色空間におけるsRGB色空間のガマットとプリンタ20の色再現ガマットが異なるため、適宜ガマットマッピングが行われる。プロファイル作成部PD5は、作成した色変換プロファイルCPに、印刷用紙(光沢紙)と観察光源(D65光)を特定したヘッダを添付してHDD11に記憶する。
以上のようにして作成された色変換プロファイルCPにおいては、sRGB色空間におけるRGB値とインク量空間におけるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)との対応関係を複数(例えば173個)の格子点について規定することができる。さらに、色変換プロファイルCPにおいては、粒状性と色恒常性と階調性と色再現ガマットとランニングコストが各重み係数w1〜w5に応じた良好度合いとなるインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を持つ格子点が規定されることとなる。上述した最適化を行うことにより、インク量空間における格子点の座標(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)は粒状性と色恒常性と階調性と色再現ガマットとランニングコストが良好となる領域に徐々に移動していき、最終的に最適な位置に移動させることができるからである。印刷画像にて再現すべき色の色域が大きく変動することはないが、当該色域に対応するインク量空間の領域の自由度ははるかに大きいと言える。すなわち、CIELAB色空間にて一のL*a*b*値を定めたとしても、ある光源下で当該L*a*b*値が再現可能な印刷結果を実現するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を一意に定めることはできない。
例えば、KインクとCMYインクは分版可能な関係にあるため、ある光源において分版比率を変更しても同一のL*a*b*を再現することができる。CインクとlcインクやMインクとlmインクの関係についても同様である。例えば、KインクとCMYインクとの分版比率はCIELAB色空間におけるL*a*b*値を定めても一意に定めることができないが、ハイライト領域において濃いKインクを発生させると粒状性が目立つこととなる。従って、粒状性の面では、ハイライト領域のL*a*b*値に対してはdkを抑えることにより、インク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を最適化することができると言える。その一方で、Kインクのインク量dkを抑え、分光反射率がフラットでないCMYインクによるコンポジットグレーを多用すれば、色恒常性が損なわれることとなる。このように、複数のパフォーマンス要素を同時に満足させることは困難であり、そのような妥協点を解とする分版規則を多次元のインク量空間において規定するのは実質的に不可能である。さらに、どのパフォーマンス要素をどれだけ重視するかということを設定可能とした場合、より分版規則を規定するのは困難となる。
これに対して、各パフォーマンス要素の重視度合いを重み係数w1〜w5によって設定された総合的な印刷パフォーマンスの指標となる評価関数Epを使用して各格子点を最適化することにより、上述した複雑な分版規則を規定することなく好適なインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を探し出すことができる。また、ユーザーの指定に応じて重み係数w1〜w5が設定されるため、ユーザーの意図に応じた印刷パフォーマンスが実現できる色変換プロファイルCPを作成することができる。色変換プロファイルCPが作成できると、ステップS300にて色変換処理および印刷処理が実行される。
A−4.色変換および印刷
図10は、色変換処理および印刷処理の流れを示している。ステップS310においては、色変換部PD6がステップS110にて印刷対象として指定された画像データと、ステップS130にて指定された印刷用紙と観察光源を取得する。本実施形態では、sRGBの画像データを光沢紙に印刷し、D65光にて観察するように指定されている。ステップS320では、ステップS310にて取得した画像データおよび印刷用紙と観察光源に対応した色変換プロファイルCPをHDD11から取得する。本実施形態では、ステップS260にて該当する色変換プロファイルCPが作成されているため、当該色変換プロファイルCPが取得される。なお、ステップS150においてプロファイル作成指針設定部PD4が色変換プロファイル作成の必要性がないと判断した場合には、ステップS320で該当する既存の色変換プロファイルCPがHDD11に存在していることとなるため、既存の色変換プロファイルCPがHDD11から取得されることとなる。
ステップS330においては、ステップS310にて取得した印刷対象の画像データを、ステップS320にて取得した色変換プロファイルCPによって色変換する。具体的には、画像データの各画素のRGB値を取得し、当該RGB値に対応付けられたインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を色変換プロファイルCPによって順次取得していく。色変換プロファイルCPは、代表的な格子点についてのみ対応関係を規定するが、格子点間のRGB値に対応するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)は補間演算によって求めることができる。すべての画素についてインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)が補間演算によって求められると、各画素がインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)で表された色変換データに変換できたこととなる。
本発明においては、印刷に使用するインクセットを取得し、そのインクセットに適合する色変換プロファイルCPを検索し、適合するものがなければプロファイル作成部PD5が当該インクセットに対応した色変換プロファイルCPを作成するようにしている。従って、予め考えられ得るすべてのインクセット(13種類のインクを8個のカートリッジホルダ21a,21a・・・へ搭載する場合、7098種類のインクセットが考えられ得る。)に対応する色変換プロファイルCPを用意しておく必要がなく、かつ、ユーザーが使用したい任意のインクセットでの印刷を可能にすることができる。
次のステップS340においては、印刷データ生成部PD7がインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の画素情報を有する色変換データを取得し、当該色変換データにハーフトーン処理を実行する。ここでは、ディザ法や誤差拡散法等を適用することができ、各画素がインク吐出をする/しないか、あるいは、大ドットを吐出する/中ドットを吐出する/小ドットを吐出する/いずれも吐出しないか等を特定する情報を有するハーフトーンデータに変換する。ステップS350においては、印刷データ生成部PD7がハーフトーンデータを取得し、当該ハーフトーンデータに基づいてマイクロウィーブ処理を実行する。
具体的には、ハーフトーンデータの各画素を、どの主走査/副走査タイミングにおけるどのインクノズルに担当させるかを特定した印刷データを生成する。ステップS350においては、印刷データ生成部PD7が印刷条件等のプリンタ20の制御情報を添付した印刷データをUSBI/F14を介して、プリンタ20に出力する。ステップS360においては、プリンタ20のファームウェアFWが印刷データを取得するとともに、当該印刷データに基づいて紙送り機構27やキャリッジモータ28や印刷ヘッド29への駆動信号を生成する。これにより、印刷用紙上の各位置に色変換データの各画素が有するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に応じた量のインクを吐出することができ、印刷画像を形成することができる。
この印刷画像における各インクの割合(被覆率)、および、印刷中のインク吐出量の割合は、色変換プロファイルCPに規定された格子点のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)が反映されたものとなる。従って、色変換プロファイルCPに規定された格子点のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)と同様に、ユーザーが所望する総合的な印刷パフォーマンスを満足する印刷および印刷画像を得ることができる。すなわち、印刷中においてはユーザーの期待に応じたインクのランニングコストを実現することができ、印刷後の印刷画像においてはユーザーが期待に応じた粒状性や色恒常性や階調性や色再現ガマットを実現することができる。さらに、上述したようにユーザーが使用したいインクセットで印刷を行うことができるため、ユーザーの満足度の高い印刷を実現することができる。
B.各種コンバータ
B−1.分光プリンティングモデルコンバータ
分光プリンティングモデルコンバータCCは、本実施形態のプリンタ20で使用され得る任意のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm,dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,db)で印刷を行った場合の分光反射率R(λ)を予測するコンバータである。分光プリンティングモデルコンバータCCは、インク量空間における複数の代表点について実際にカラーパッチを印刷し、分光反射率R(λ)を測定することにより得られた分光反射率データRDをHDD11から読み出して使用する。そして、この分光反射率データRDを使用したセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Cellular Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)による予測を行うことにより、正確に任意のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm,dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,db)で印刷を行った場合の分光反射率R(λ)を予測する。
図11は、分光反射率データRDを示している。同図に示すように分光反射率データRDはインク量空間(本実施形態では13次元であるが、図の簡略化のためCM面のみ図示。)における複数の格子点のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm,dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,db)について実際に印刷/測定をして得られた分光反射率R(λ)が記述されたルックアップテーブルとなっている。例えば、各インク量軸を均等に分割する5グリッドの格子点を発生させる。ここでは513個もの格子点が発生し、膨大な量のカラーパッチの印刷/測定をすることが必要となるが、実際にはプリンタ20にて同時に搭載可能なインク数や同時に吐出可能なインクデューティの制限があるため、印刷/測定をする格子点の数は絞られることとなる。
さらに、一部の格子点のみ実際に印刷/測定をし、他の格子点については実際に印刷/測定を行った格子点の分光反射率R(λ)に基づいて分光反射率R(λ)を予測することにより、実際に印刷/測定を行うカラーパッチの個数を低減させてもよい。分光反射率データRDは、プリンタ20が印刷可能な印刷用紙ごとに用意されている必要がある。厳密には、分光反射率R(λ)は印刷用紙上に形成されたインク膜による分光透過率と印刷用紙の反射率によって決まるものであり、印刷用紙の表面物性(インク膜形状が依存)や反射率の影響を大きく受けるからである。分光反射率データRDの作成には、分光反射率計が必要となるため、一般のユーザーが分光反射率データRDを用意することができないため、予めプリンタ20の製造元が分光反射率データRDを用意し、プリンタドライバPDのインストール等によりHDD11に記憶される。次に、分光反射率データRDを使用したセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルによる予測を説明する。
分光プリンティングモデルコンバータCCは、プロファイル作成部PD5の要請に応じて分光反射率データRDを使用したセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルによる予測を実行する。この予測にあたっては、まずプロファイル作成部PD5から予測条件を取得し、この予測条件を設定する。具体的には、ステップS130にてユーザーが指定した印刷用紙について作成した分光反射率データRDを予測に使用するように設定するとともに、ステップS130にてユーザーが指定したインクセットについて予測するように設定する。本実施形態では、光沢紙が選択されているため、光沢紙にカラーパッチを印刷することにより作成した分光反射率データRDが設定される。インクセットとしてはCMYKlclmが設定されているため、CMYKlclm以外のインク量dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,dbを使用しないように(dlk=dllk=ddy=dr=do=dg=db=0)とする制限を加える。これにより、分光プリンティングモデルコンバータCCの予測の作業空間が実質的に6次元に抑えられたこととなる。
以上のようにして分光反射率データRDの設定ができると、任意のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)で印刷したときの分光反射率R(λ)の予測を行う。予測すべきインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)は、プロファイル作成部PD5から順次入力される。例えば、ステップS240における最適化では、各格子点のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)が順次入力され、最終的には最適化された各格子点のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)が入力されることとなる。分光プリンティングモデルコンバータCCは、プロファイル作成部PD5からのインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)の入力に応じて、予測した分光反射率R(λ)を色コンバータCCに渡す。
セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルは、よく知られた分光ノイゲバウアモデルとユール・ニールセンモデルとに基づいている。なお、以下の説明では、説明の簡略化のためCMYの3種類のインクを用いた場合のモデルについて説明するが、同様のモデルを本実施形態のCMYKlclmやORGBdylkllkを含む任意のインクセットを用いたモデルに拡張することは容易である。また、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルについては、Color Res Appl 25, 4-19, 2000およびR Balasubramanian, Optimization of the spectral Neugebauer model for printer characterization, J. Electronic Imaging 8(2), 156-166 (1999)を参照。
図12は、分光ノイゲバウアモデルを示す図である。分光ノイゲバウアモデルでは、任意のインク量セット(d
c,d
m,d
y)で印刷したときの印刷物の分光反射率R(λ)は、以下の(2)式で与えられる。
ここで、a
iはi番目の領域の面積率であり、R
i(λ)はi番目の領域の分光反射率である。添え字iは、インクの無い領域(w)と、シアンインクのみの領域(c)と、マゼンタインクのみの領域(m)と、イエローインクのみの領域(y)と、マゼンタインクとイエローインクが吐出される領域(r)と、イエローインクとシアンインクが吐出される領域(g)と、シアンインクとマゼンタインクが吐出される領域(b)と、CMYの3つのインクが吐出される領域(k)をそれぞれ意味している。また、f
c,f
m,f
yは、CMY各インクを1種類のみ吐出したときにそのインクで覆われる面積の割合(「インク被覆率(Ink area coverage)」と呼ぶ)である。
インク被覆率fc,fm,fyは、図12(B)に示すマーレイ・デービスモデルで与えられる。マーレイ・デービスモデルでは、例えばシアンインクのインク被覆率fcは、シアンのインク量dcの非線形関数であり、例えば1次元ルックアップテーブルによってインク量dcをインク被覆率fcに換算することができる。インク被覆率fc,fm,fyがインク量dc,dm,dyの非線形関数となる理由は、単位面積に少量のインクが吐出された場合にはインクが十分に広がるが、多量のインクが吐出された場合にはインクが重なり合うためにインクで覆われる面積があまり増加しないためである。他の種類のMYインクについても同様である。
分光反射率に関するユール・ニールセンモデルを適用すると、上記(2)式は以下の(3a)式または(3b)式に書き換えられる。
ここで、nは1以上の所定の係数であり、例えばn=10に設定することができる。(3a)式および(3b)式は、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)を表す式である。
本実施形態で採用するセル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Cellular Yule-Nielsen Spectral Neugebauer Model)は、上述したユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルのインク量空間を複数のセルに分割したものである。
図13(A)は、セル分割ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルにおけるセル分割の例を示している。ここでは、説明の簡略化のために、CMインクのインク量dc,dmの2つの軸を含む2次元インク量空間でのセル分割を描いている。なお、インク被覆率fc,fmは上述したマーレイ・デービスモデルにてインク量dc,dmと一意の関係にあるため、インク被覆率fc,fmを示す軸と考えることもできる。白丸は、セル分割のグリッド点(「ノード」と呼ぶ)であり、2次元のインク量(被覆率)空間が9つのセルC1〜C9に分割されている。各ノードに対応するインク量セット(dc,dm)は、分光反射率データRDに規定された格子点に対応するインク量セットとされている。すなわち、上述した分光反射率データRDを参照することにより、各ノードの分光反射率R(λ)を得ることができる。従って、各ノードの分光反射率R(λ)00,R(λ)10,R(λ)20・・・R(λ)33は、分光反射率データRDから取得することができる。
実際には、本実施形態ではセル分割もCMYKlclmの6次元インク量空間で行うとともに、各ノードの座標も6次元のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)によって表される。そして、各ノードのインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)に対応する格子点の分光反射率R(λ)が分光反射率データRD(光沢紙のもの)から取得されることとなる。
図13(B)は、セル分割モデルにて使用するインク被覆率fcとインク量dcとの関係を示している。ここでは、1種類のインクのインク量の範囲0〜dcmaxも3つの区間に分割されており、各区間毎に0から1まで単調に増加する非線形の曲線によってセル分割モデルにて使用する仮想的なインク被覆率fcが求められる。他のインクについても同様にインク被覆率fm,fyが求められる。
図13(C)は、図13(A)の中央のセルC5内にある任意のインク量セット(d
c,d
m)にて印刷を行った場合の分光反射率R(λ)の算出方法を示している。インク量セット(d
c,d
m)にて印刷を行った場合の分光反射率R(λ)は、以下の(3)式で与えられる。
ここで、(4)式におけるインク被覆率f
c,f
mは図13(B)のグラフで与えられる値である。また、セルC5を囲む4つのノードに対応する分光反射率R(λ)
11,(λ)
12,(λ)
21,(λ)
22は分光反射率データRDを参照することにより取得することができる。これにより、(4)式の右辺を構成するすべての値を確定することができ、その計算結果として任意のインク量セット(d
c,d
m)にて印刷を行った場合の分光反射率R(λ)を算出することができる。波長λを可視光域にて順次シフトさせていくことにより、可視光領域における分光反射率R(λ)を得ることができる。インク量空間を複数のセルに分割すれば、分割しない場合に比べてサンプルの分光反射率R(λ)をより精度良く算出することができる。予測した分光反射率R(λ)は、色コンバータCCに出力される。次に、色コンバータCCについて説明する。
B−2.色コンバータ
図14は、本発明の色特定手段としての色コンバータCCが分光反射率R(λ)に基づいて色を特定する処理を模式的に示している。同図において、分光プリンティングコンバータRCが予測した分光反射率R(λ)の各波長λにおいて所望の光源のスペクトルを乗算することにより、印刷物からの反射光のスペクトルを予測する。本実施形態ではD65光が設定されているため、D65光のスペクトルが使用される。次に、反射光のスペクトルに対して所望の観察条件での感度関数x(λ),y(λ),z(λ)を畳み込み、正規化をすることにより、三刺激値XYZを算出する。本実施形態においては、特に示さない限りCIE1931 2°観測者の観察条件で三刺激値XYZを算出するものとする。さらに、色コンバータCCは、三刺激値XYZにCIE標準の変換式を適用することにより、CIELAB表色系のL*a*b*値を算出する。このように、分光プリンティングコンバータRCと色コンバータCCを順次使用することによりプロファイル作成部PD5が予測を要請するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)にて印刷を行った場合のL*a*b*値を得ることができ、予測したL*a*b*値を平滑性コンバータSCに受け渡すことができる。
さらに、色コンバータCCは、三刺激値XYZに対して色順応変換を行うことが可能となっている。例えば、D50光にて算出した三刺激値XYZにCIECAT02に基づく色順応変換式を適用することにより、例えばD50光の下での色の見えを、D65光の対応色で表現したL*a*b*値に変換することができる。なお、CIECAT02については、例えば"The CIECAM02 Color Appearance Model", Nathan Moroney et al., IS&T/SID Tenth Color Imaging Conference, pp.23-27, および、"The performance of CIECAM02", Changjun Li et al., IS&T/SID Tenth Color Imaging Conference, pp.28-31に記載されている。ただし、色順応変換としては、フォン・クリースの色順応予測式などの他の任意の色順応変換を用いることも可能である。
この色順応変換によって得られたL
*a
*b
*値をCV
L1→Lsと表記するものとする。この下付き文字「L1→Ls」は、光源L1の下での色の見えを、標準光源Lsの対応色で表現したL
*a
*b
*値であることを意味している。色コンバータCCは、少なくとも2以上の比較用光源L1,L2の下での見えを、標準光源Lsの対応色で表現した色彩値CV
L1→Ls,CV
L2→Lsを求めるとともに、これらに基づいて色恒常性指数CIIを算出する。本実施形態では、ステップS130にて観察光源がD65光と設定されているため、標準光源LsがD65光とされる。比較用光源L1,L2は、例えばD50光やF11光とされる。色恒常性指数CIIは、例えば下記の式(5)によって算出することができる。
色恒常性指数CIIについては、Billmeyer and Saltzman's Principles of Color Technology, 3rd edition, John Wiley & Sons, Inc, 2000, p.129,p. 213-215を参照。なお、(5)式の右辺は、CIE1994年色差式において、明度と彩度の係数kL,kCの値を2に設定し、色相の係数kHの値を1に設定した色差ΔE
*94(2:2)に相当する。CIE1994年色差式では、(5)式の右辺の分母の係数SL,Sc,SHは以下の(6)式で与えられる。
なお、色恒常性指数CIIの算出に使用する色差式としては、他の式を用いることも可能である。色恒常性指数CIIは、あるカラーパッチを異なる観察条件下で観察したときの色の見えの差として定義されている。従って、印刷したときに色恒常性指数CIIが小さくなるインク量セットは、異なる観察条件での色の見えの差が小さいという点で好ましい。また、色彩値CVL1→Ls,CVL2→Lsは、同一の標準観察条件におけるそれぞれの対応色の測色値なので、それらの色差である色恒常性指数CIIは色の見えの違いをかなり正確に表現する値となる。色コンバータCCは、プロファイル作成部PD5が予測を要請するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)にて印刷を行った場合のL*a*b*値とともに、色恒常性指数CIIもプロファイル作成部PD5に返す。次に、粒状性コンバータGCおよびその準備について説明する。
B−3.粒状性コンバータ
粒状性コンバータGCはプロファイル作成部PD5が予測を要請するインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm,dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,db)にて印刷を行った場合の粒状性指数GIを予測し、当該粒状性指数GIをプロファイル作成部PD5に返す処理を行う。なお、本実施形態では、CMYKlclmのみ印刷に使用するため、他のインク量は常にdlk=dllk=ddy=dr=do=dg=db=0が入力される。ニューラルネットワークNNGを印刷に使用され得るすべてのインクのインク量dc,dm,dy,dk,dlc,dlm,dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,dbが入力可能な構造としておくことにより、印刷に使用しないインクのインク量を0として入力することにより印刷に使用する任意のインクセットにおける粒状性指数GIを得ることができる。
図15は、ニューラルネットワークNNGを示している。同図において、各インクのインク量dc,dm,dy,dk,dlc,dlm,dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,dbがニューラルネットワークNNGの入力層に入力可能となっており、出力層では粒状生成数GIを出力することが可能となっている。このような、ニューラルネットワークNNGをHDD11に予め用意しておけば、プロファイル作成部PD5に要請されたインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を粒状生成数GIにコンバートし、当該粒状生成数GIをプロファイル作成部PD5に返すことができる。
なお、粒状性指数GIが以下の(7)式で定義されるものとする。
粒状性指数GIについては、例えば、Makoto Fujino,Image Quality Evaluation of Inkjet Prints, Japan Hardcopy '99, p.291-294を参照。なお、(7)式のa
Lは明度補正項、WS(u)は画像のウイナースペクトラム、VTFは視覚の空間周波数特性、uは空間周波数である。
上記の(7)式において、粒状性指数GIはカラーパッチをスキャナ等で撮像した画像データを画像平面に関してフーリエ変換することにより、画像に存在する空間波のパワースペクトルを得るとともに、当該パワースペクトルに対して視覚の空間周波数特性VTFを畳み込むことにより算出される。なお、画像データは明度の画像データを使用するのが一般的である。このように粒状性指数GIは、カラーパッチ内に存在する明度の空間波の大きさを空間周波数特性VTFによる重み付けを考慮して全空間周波数に関して累積した値であるといえる。したがって、目立ちやすい粒状性を定量化することができる。なお、明度補正項aLによって全体の明度の粒状性指数GIへの寄与を減殺している。
印刷に使用され得るCMYKlclmlkllkORGBdyインクのインク量空間における代表的なインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm,dlk,dllk,ddy,dr,do,dg,db)について実際にカラーパッチを印刷し、粒状性指数GIを上記の(7)式によって算出することにより、ニューラルネットワークNNGの学習データを用意する。そして、当該学習データによって学習を行うことによって、図15に示すニューラルネットワークNNGの構造を決定する層数や中間ユニットの数や各重み係数やバイアスを順次最適化していく。ニューラルネットワークNNGの学習においてはバックプロバケーション法を使用するのが一般的である。本実施形態においては、ニューラルネットワークNNGがHDD11に予め用意されており、粒状性コンバータGCが使用することが可能となっている。粒状性コンバータGCは、得られた粒状性指数GIをプロファイル作成部PD5に返す。
B−4.平滑性コンバータ
図16は、平滑性コンバータSCが算出する平滑程度評価指数SIを模式的に説明している。平滑性コンバータSCは、プロファイル作成部PD5が予測を要請する格子点のインク量セットで印刷したときの色のCIELAB色空間における平滑程度を評価する処理を行う。平滑性コンバータSCは、本実施形態ではプロファイル作成部PD5が予測を要請する格子点のインク量セットで印刷したときの色をD65光にて観察したときのL*a*b*値が色コンバータCCから入力されており、このL*a*b*値のCIELAB色空間における平滑程度が定量化される。
同図において、○はCIELAB空間における複数の格子点の位置を示し、●は当該格子点のうち注目する格子点(評価関数E
pの算出対象の格子点)を示している。注目する格子点の位置ベクトルをLpとし、当該格子点に隣接する6個の格子点の位置ベクトルをL
a1〜L
a6とすると、平滑程度評価指数SIは下記の式(8)によって表される。
平滑程度評価指数SIは、注目する格子点から互いに逆向きのベクトルの距離が等しく、方向が正反対に近いほど値が小さくなるようにしてある。
図16(B)に示すように、隣接する格子点を結ぶ線(ベクトルLa1〜ベクトルLp〜ベクトルLa2が示す格子点を通る線等)が直線に近く、また格子点が均等に配置されるほどCIELAB色空間における格子点の配置が平滑化される傾向にあるので、式(8)に示す平滑程度評価指数SIが小さくなればなるほど、平滑程度が高くなるということができる。CIELAB色空間におけるL*a*b*値は、本実施形態のインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)を分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCによって順次変換することにより得ることができるため、平滑程度評価指数SIはインク量セットの関数であるということができる。平滑程度評価指数SIは小さい方が良好な階調性が期待できる。平滑性コンバータSCは、平滑程度評価指数SIを算出すると、平滑程度評価指数SIをプロファイル作成部PD5に返す。
図17は、本実施形態のインクセットCMYKlclmでプリンタ20が印刷を行う場合の色再現ガマットをCIELAB色空間において示している。同図に示すように、プリンタ20の色再現ガマットは予めプリンタ20のハードウェア仕様やインクセットによって定められており、この範囲において色を再現することができる。色再現ガマットはHDD11の色再現ガマットデータGDに格納されており、印刷に使用するインクセットに対応する色再現ガマットを平滑性コンバータSCが取得することが可能となっている。平滑性コンバータSCは、この色再現ガマットの情報を有しており、当該色再現ガマットの外面上や稜線上や頂点上のL*a*b*値と、色コンバータCCが算出した一部の格子点のL*a*b*値との色差ΔEを算出する。色差ΔEの算出の対象は、格子点のうちインク量空間の外縁に存在するものとされ、内側の格子点については色差ΔE=0とする。インク量空間の外縁に存在する格子点を分光プリンティングモデルコンバータRCによって変換したL*a*b*値も同様にCIELAB空間において外縁に存在すると考えられるからである。これにより、格子点のうちインク量空間の外縁に存在するものを分光プリンティングモデルコンバータRCと色コンバータCCによって順次変換したL*a*b*値の、プリンタ20が再現可能な色再現ガマットの外面上や稜線上や頂点上までの色ずれを定量化することができる。平滑性コンバータSCは、色差ΔEをプロファイル作成部PD5に返し、当該色差ΔEが最適化に使用される。
この色差ΔEは式(1)の評価関数Epに加算されており、評価関数Epを極小化するように最適化(ステップS240)することにより、CIELAB色空間における外縁の格子点は色再現ガマットの外面上や稜線上や頂点上に近づくように移動することとなる。これにより、色再現ガマットを最大限に利用するインクプロファイルIPおよび色変換プロファイルCPを作成することができる。一方、色再現ガマットの内側の格子点については色差ΔE=0とされるため、CIELAB色空間における特定の色に拘束されることはない。しかし、平滑程度評価指数SIを加算した評価関数Epが極小化するように最適化を行うことによって、上述した色再現ガマットの内側にて平滑的に分布するように各格子点を移動させることができる。このようにして、ステップS240における最適化では、CIELAB色空間における格子点の最適化されることとなる。なお、図17のCIELAB色空間では可視化することができないが、CIELAB色空間における格子点の最適化されると同時に、ステップS240では他の粒状性指数GIや色恒常性指数CIIやインクのランニングコストも良好となるようインク量セット(dc,dm,dy,dk,dlc,dlm)が最適化されることとなる。
C.まとめと変形例
A節において説明したように、本発明においては、印刷に使用するインクセットを取得し、そのインクセットに適合する色変換プロファイルCPを検索し、適合するものがなければプロファイル作成部PD5が当該インクセットに対応した色変換プロファイルCPを作成するようにしている。従って、予め考えられ得るすべてのインクセットに対応する膨大な色変換プロファイルCPをHDD11等に用意しておく必要がなく、かつ、ユーザーが使用したい任意のインクセットでの印刷を可能にすることができる。また、作成した色変換プロファイルCPをユーザーの指示で削除できるようにしても良い。また、上述した実施形態において、インクプロファイルIPに基づいて作成した色変換プロファイルCPを使用して色変換を行うようにしたが、入力された画像データの色空間に関するソースプロファイルとインクプロファイルIPとを使用して当該画像データをインク量の画像データに換算するようにしてもよい。また、本発明において作成される色変換プロファイルCPは、インク量とsRGB色空間との関係を記載したものに限られず、インク量とLab色空間と(上記実施形態のインクプロファイルIP)との関係を記述したものや、インク量とXYZ色空間との関係を記述したものなど、インク量と他の色空間との関係を記載したものでもよい。
以上の実施形態においては、種々のパフォーマンス要素が総合的に満足されるような色変換プロファイルCPを作成するようにしたが、いずれかのパフォーマンス要素の考慮を省略することも可能である。考慮するパフォーマンス要素を少なくすることにより、最適化を高速に行うことができ、色変換プロファイルCPを速やかに作成することができる。逆に、他のパフォーマンス要素を追加することも可能である。また、重み係数w1〜w4は必ずしも上述した実施形態のように調整可能である必要はなく、適度にバランスの取れた値にて固定されていてもよい。上述した実施形態においては、本発明の印刷制御に必要なすべてのハードウェアおよびソフトウェア資源がコンピュータ10に備えられているものを例示したが一部の資源が外部装置から提供されるものであってもよい。
図18は、変形例にかかる印刷制御装置の構成を示している。同図に示すように、前実施形態のコンピュータ10と基本的には同じ構成を有するコンピュータ100において、WANインターフェース(I/F)119が接続されている。そして、上述した実施形態のプリンタドライバPDに備えられていたプロファイル作成部PD5の代わりにプロファイル要求部PD5aが備えられている。プロファイル要求部PD5aは、ステップS130にて取得したインクセットと印刷用紙と観察光源と、ステップS170にてプロファイル作成指針設定部PD4が設定した重み係数w1〜w5をWANI/F119およびインターネットINTを介して接続されたプロファイルサーバSVに送信して、プロファイルサーバSVに色変換プロファイルCPの作成を要求する。
プロファイルサーバSVにおいては、ステップS200において前実施形態のコンピュータ10が実行した処理と同様の処理が行われ、プロファイル要求部PD5aの要求に応じた色変換プロファイルCPが作成される。そして、ステップS320においては、色変換部PD6がプロファイルサーバSVから色変換プロファイルCPを受信し、受信した色変換プロファイルCPをステップS330における色変換に使用する。このように、例えばプリンタ20の製造元が提供するプロファイルサーバSVにて色変換プロファイルCPの作成を行うようにすれば、色変換プロファイルCPを作成するための各種コンバータRC,GC,CIIも一般家庭のコンピュータ100から省略することができる。また、各種コンバータRC,GC,CIIのメンテナンスやアップデートをプリンタ20の製造元が行うことができ、管理が容易となる。
また、プロファイルサーバSVが色変換プロファイルCPを作成する際に課金を行うようにしてもよい。例えば、スタンダードなインクセットについてはプリンタドライバPDのインストールと同時に無償で色変換プロファイルCPもインストールされるようにし、ユーザーがインクセットをカスタマイズした場合のみ課金を行うようにしてもよい。重み係数w1〜w4を含めユーザーがインクセットをカスタマイズすることができるため、ユーザーが色変換プロファイルCPを購入することによってオリジナル性と付加価値の高い絵づくりを楽しむことができる。さらに、ユーザー同士が好みのインクセットと色変換プロファイルCPを交換することができるように、色変換プロファイルCPをインターネットINTへ送信可能にするようにしてもよい。コンピュータ100は、色変換プロファイルCPの作成を行わないため、比較的に処理負荷の少ない処理のみで印刷制御を完了させることができる。
図19は、色変換プロファイルCPの要求を行うプリンタの構成を示している。一般的に演算処理能力に乏しいプリンタ220においては、処理速度や記憶容量の大きいCPUやRAMやHDDを備えることができないため、色変換プロファイルCPをプリンタ220にて作成するのは困難であるが、色変換プロファイルCPをプロファイルサーバSVに要求するようにすれば、プリンタ220においても任意のインクセットに応じた印刷を実現することができる。むろん、CPUやRAMやROMの能力がある場合等には、プリンタ220において色変換プロファイルCPを作成するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、すべてのインクが独立したインクカートリッジ22,22・・・を例示したが、複数の種類のインクが収容された集合タイプのインクカートリッジであっても本発明を適用することができる。仮に、集合タイプのインクカートリッジのみしか搭載することができないようなプリンタであっても、ユーザーがそのなから使用するインクを限定させていけばよいため、ユーザーが任意のインクセットを指定することができることには違いはない。さらに、以上は分光反射率R(λ)の形成に寄与する色材を含んだインクのみを使用して印刷を行うプリンタを例示したが、例えば印刷物に光沢を付与するためのグロスオプティマイザを併用することもできる。グロスオプティマイザのインク量は分光反射率R(λ)の形成に寄与しないため、ステップS240の最適化の対象とはせず、最適化された他のインクのインク量に基づいて、最後にグロスオプティマイザのインク量が求められるようにすればよい。
10,110…コンピュータ、11,111…HDD、12,112…CPU、20,220…プリンタ、PD…プリンタドライバ、PD1…UI部、PD2…画像データ取得部、PD3…プリンタ情報取得部、PD4…プロファイル作成指針設定部、PD5…プロファイル作成部、PD5a…プロファイル要求部、PD6…色変換部、PD7…印刷データ生成部、RC…分光プリンティングコンバータ、CC…色コンバータ、GC…粒状性コンバータ、SC…平滑性コンバータ、SV…プロファイルサーバ、IP…インクプロファイル、CP…色変換プロファイル、SP…sRGBプロファイル、RD…分光反射率データ。