JP4351208B2 - ハーフミラー材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ハーフミラー材料及びその製造方法に係り、特に、粉状の光反射成分を含有するミラーインキを用いた印刷方式によって得られる新規なハーフミラー材料と、それを有利に製造し得る方法に関するものである。
従来から、金属光沢を備え、ミラー、特に鏡面としての機能を発揮する一方、光透過性があり、表面側から裏面側を透視することの出来る特性を有する素材として、ハーフミラー材料が知られており、各種機器の表示板やディスプレイパネル、ラベル等として広く用いられてきている。
そして、そのようなハーフミラー材料は、特開平9−237045号公報(特許文献1)や特開平10−329496号公報(特許文献2)等にも明らかにされているように、一般に、透明なフィルムやシートの一方の側の面に、クロムやアルミニウム等の金属を、真空蒸着やスパッタリング、メッキ等によって、30μm以下の薄膜層において形成することにより、金属光沢と光透過性を付与し得るようになっているが、そのような従来のハーフミラー材料の製造には、大型の装置が必要とされ、そのために、大ロット生産が前提とされていると共に、ハーフミラー部をフィルム等の基材上に任意のパターンにて自由に形成することも、著しく困難なものであった。
一方、通常の印刷方式によって光輝性の表面(鏡面)を与えるべく、粉状の光反射成分を含有せしめてなるミラーインキが開発され、各種のものが市販されており、その一例が、特開2003−221538号公報(引用文献3)に明らかにされている。そして、それら従来のミラーインキにあっては、その印刷層中に存在する粉状の光反射成分に光が当り、それが反射されることによって、光輝性の表面(鏡面)が形成されるような構造となっているのである。
しかしながら、そのようなミラーインキを用いて印刷して得られる印刷物にあっては、インキ中に存在せしめられた光反射成分による反射によって、優れた光輝性表面(鏡面)が形成され、有効なメタリック調の外観を呈するものとなるのであるが、そのような光輝性の表面を形成していることによって、必然的に、ミラーインキの印刷層は、光不透過性となるのであり、従って、印刷物の表面側から裏面側を透視することが出来ないことは勿論、裏面側から光を照射しても、ミラーインキの印刷層によって反射され、かかる印刷層を透過した光が表面側に漏光することがなく、そのために、前記したハーフミラー材料を得ることができないものであった。
特開平9−237045号公報 特開平10−329496号公報 特開2003−221538号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、ミラーインキを用いた単なる印刷方式において形成され得る新規なハーフミラー材料を提供することにあり、また、大型の設備を要することなく、通常の印刷操作を利用して、ハーフミラー部位が有利に形成され、且つ、そのようなハーフミラー部位のパターニングの容易な、小ロット生産に適したハーフミラー材料を提供することにもあり、更には、そのようなハーフミラー材料を、簡便に且つ容易に製造し得る方法を提供することにもある。
そして、本発明は、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
(1) フィルム状若しくはプレート状の透明基材の一方の側の面に、粉状の光反射成分を含有するミラーインキの印刷層が形成されていると共に、かかる印刷層が、不透光性の厚膜部位の中に透光性の薄膜部位を微細に分布せしめて、構成されていることを特徴とするハーフミラー材料。
(2) 前記透光性の薄膜部位が、前記印刷層の表面を擦過して、その厚さを低下させた形態において、形成されていることを特徴とする上記態様(1)に記載のハーフミラー材料。
(3) 前記ミラーインキの印刷層が、前記光反射成分として、平均粒径:5〜20μm、アスペクト比:80〜2000の金属箔片を含有していることを特徴とする上記態様(1)又は(2)に記載のハーフミラー材料。
(4) 透明な着色インキの印刷層が、前記ミラーインキの印刷層の下層若しくは上層として形成され、又は前記透明基材の他方の側の面に形成されていることを特徴とする上記態様(1)乃至(3)の何れか一つに記載のハーフミラー材料。
(5) 前記ミラーインキの印刷層の上に、更に、透明な保護層が形成されていることを特徴とする上記態様(1)乃至(4)の何れか一つに記載のハーフミラー材料。
(6) フィルム状若しくはプレート状の透明基材の一方の側の面に、粉状の光反射成分を含有するミラーインキに更にビーズ粉を均一に配合せしめてなるインキ組成物を印刷して、その印刷層を乾燥させた後、かかる印刷層の表面を擦過して、該印刷層に含まれる前記ビーズ粉を少なくとも除去することにより、かかる印刷層に透光性の薄膜部位を微細に形成せしめることを特徴とするハーフミラー材料の製造方法。
(7) 前記擦過操作が、前記印刷層の表面の洗浄操作と共に、実施されることを特徴とする上記態様(6)に記載のハーフミラー材料の製造方法。
(8) 前記ミラーインキが、前記光反射成分として、平均粒径:5〜20μm、アスペクト比:80〜2000の金属箔片を含有していることを特徴とする上記態様(6)又は(7)に記載のハーフミラー材料の製造方法。
(9) 前記ビーズ粉が、1〜10μmの平均粒径を有していることを特徴とする上記態様(6)乃至(8)の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
(10) 前記印刷操作が、スクリーン印刷であることを特徴とする上記態様(6)乃至(9)の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
(11) 透明な着色インキの印刷層が、前記インキ組成物の印刷に先立ち、若しくはその後に、前記透明基材の一方の側の面に形成され、又は該透明基材の他方の側の面に形成されることを特徴とする上記態様(6)乃至(10)の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
(12) 前記ビーズ粉の除去された印刷層上に、更に、透明インキの保護層が形成されることを特徴とする上記態様(6)乃至(11)の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
このように、本発明に従うハーフミラー材料にあっては、ミラーインキの印刷層が、不透光性の厚膜部位の中に、透光性の薄膜部位を微細に分散せしめて、構成されてなる形態とされているところから、かかる不透光性の厚膜部位においては、ミラーインキによるところの光の反射が効果的になされ得て、光輝性の表面となる一方、微細に分散して存在する透光性の薄膜部位においては、それを通じて光が透過することとなるところから、透視性があり、また裏面側からの光の照射によって、表面側に光が効果的に透過するという特性をも有しているのであり、以て、ハーフミラー材料として有利に用いられ得ることとなるのである。
しかも、そのような本発明に従うハーフミラー材料は、ミラーインキの印刷を利用して形成され得るものであるところから、通常の印刷技術を採用すれば足り、特別の装置や大型の装置を用いる必要がないことは勿論、印刷方式であるが故に、各種の印刷パターンにおいてミラーインキの印刷層を形成し、それに基づき、ハーフミラー部位を形成し得るものであるところから、そのパターニングが簡便に且つ容易に行い得ると共に、小ロット化にも有利に対応することが出来るという特徴を有しているのである。
また、本発明に従うハーフミラー材料にあっては、透明な着色インキの印刷層を、ミラーインキの印刷層の下層若しくは上層として形成することが出来、或いは透明基材の他方の側の面に形成することが出来るところから、そのような着色インキの印刷層による色相を、ハーフミラー効果が付与されたミラーインキの印刷層に付与して、所定の色相を呈するハーフミラー材料とすることが容易に可能となったのであるが、そのような着色されたハーフミラー材料は、従来のハーフミラー材料では、全く実現の困難なものであったのである。
さらに、本発明において、粉状の光反射成分を含有するミラーインキに更に配合せしめられるビーズ粉の配合量を、適宜に調節することにより、そのようなインキ組成物を用いて形成されるミラーインキの印刷層に形成される微細な透光性の薄膜部位の存在割合、更には不透光性の厚膜部位の割合等を効果的に調整せしめ得て、そのような印刷層を透過し得る光の濃度を、効果的に変化せしめ得ることも、容易に可能である等という特徴も、発揮し得るのである。
ここにおいて、本発明に従うハーフミラー材料において用いられる、フィルム状若しくはプレート状の透明基材としては、特に制限はなく、後述するミラーインキ(インキ組成物)が印刷され得る、平坦な表面を有する透明(半透明をも含む)なものであれば、何れをも採用可能であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、セルロースポリアセテート、セルロースジアセテート等のフィルムやシート、プレート(板)等の形態のものの中から、適宜に選択されることとなる。なお、このような透明基材の厚さにあっても、目的とするハーフミラー材料に応じて適宜に選定されるものであって、特別に規定されるものではないが、一般に、10μm〜10mm程度の厚さのものが用いられることとなる。
また、かかる透明基材の一方の側の面に形成される印刷層を与えるミラーインキとしては、粉状の光反射成分を含有する公知の各種のものの中から、適宜に選択され得るものであるが、特に、本発明にあっては、特開2003−221538号公報に明らかにされた印刷インキからなるミラーインキが、有利に用いられることとなる。即ち、本発明の目的を有利に達成する上において、ミラーインキに含有せしめられる粉状の光反射成分としては、有利には、平均粒径が5〜20μm、アスペクト比(長径/短径比)が、80〜2000の金属箔片、中でも、アルミニウム箔片、とりわけ、真空蒸着法で得られたアルミニウム箔片が、好適に用いられるのである。そして、この種の金属箔片を用いることによって、より一層有効な光輝性を得ることができるのである。なお、このような金属箔片は、一般に、0.1μm以下、例えば0.02〜0.03μm程度の厚さを有している。
さらに、本発明において用いられるミラーインキには、上述の如き粉状の光反射成分の他に、従来と同様に、バインダーポリマーや、溶媒、更には消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等の、公知の配合成分が適宜に配合せしめられて、印刷に適したインキが構成されることとなる。そこでは、一般に、バインダーポリマーは、光反射成分である金属箔片の100重量部に対して、10〜60重量部程度の割合において、含有せしめられるのである。なお、インキの粘度を調整して、印刷による塗工を容易と為す溶媒としては、従来と同様な、エステル類、ケトン類、エーテル類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が、適宜に選択使用される。
ところで、本発明において、上述せる如きミラーインキを用いて、目的とするハーフミラー材料を製造するに際しては、かかるミラーインキに、更に、ビーズ粉が均一に配合せしめられて、インキ組成物が調製され、そしてそのインキ組成物を用いて、透明基材の一方の側の面に、所要の印刷が施されるのである。ここで、そのようなインキ組成物に均一に配合せしめられるビーズ粉は、後述する擦過操作により、印刷層から除去せしめられ、それによって、そのような印刷層に透光性の薄膜部位を微細に形成せしめ、以て、目的とするハーフミラー効果を発現せしめ得るものであって、本発明においては重要な成分となっている。
すなわち、そのようなビーズ粉は、印刷層中に存在せしめられるものの、後の擦過操作により、かかる印刷層から除去されるものであるところから、そのような印刷層を与えるミラーインキ、特に、それを構成するバインダーポリマーに対して、親和性(密着性)の低い材質のものであることが望ましく、例えば、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、アクリルウレタン樹脂ビーズ、ポリスチレン樹脂ビーズ等の樹脂ビーズが、ミラーインキの種類に応じて適宜に選択使用され、また、ガラスビーズ等の無機質ビーズにあっても、同様に使用されることとなる。そして、そのようなビーズ粉は、有利には、1〜10μm程度の平均粒径を有するものが、更には、3〜9μm程度の平均粒径を有するものが、好適に用いられることとなる。なお、このビーズ粉の平均粒径が小さくなりすぎると、ハーフミラー効果を充分に発現し難くなる問題を生じ、また大きくなりすぎると、印刷層の形成が困難となると共に、ハーフミラー効果において、粒状感が強く出過ぎて、その品質を低下せしめるようになる。
さらに、本発明にあっては、かかるビーズ粉のミラーインキへの配合量(配合比率)を調節することによって、印刷層に形成される微細な透光性の薄膜部位を調整して、ハーフミラー部位の全体としての透光量を変化させ、透過濃度を自由に変化させることが可能であるが、ビーズ粉の配合量が多くなり過ぎると、印刷膜の形成が困難となる等の問題を惹起するところから、その配合量は、ミラーインキの固形分(主として、光反射成分とバインダーポリマーから成る)の1重量部に対して、20重量部以下、好ましくは、10重量部以下の割合において用いられることとなる。また、そのようなビーズ粉の配合量が少なくなり過ぎると、有効なハーフミラー効果を発現することが困難となるところから、ビーズ粉は、ミラーインキの固形分の1重量部に対して、一般に0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上の割合において、配合せしめられることとなる。
そして、かくの如きミラーインキを調製して得られるインキ組成物を、所定の透明基材の一方の側の面に印刷するに際しては、通常の印刷手法、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷等の手法が採用されることとなるが、本発明にあっては、スクリーン印刷が有利に採用されて、目的とする透明基材の一面上に、所望のパターンが自由に且つ容易に形成されるのである。
また、そのようにして形成された透明基材上の印刷層には、乾燥操作が施される。この乾燥操作には、自然乾燥及び強制乾燥の何れをも、採用可能であるが、あまり高温下での強制乾燥は避けることが望ましく、一般に70℃程度以下の温度において、好ましくは50℃前後の温度において、乾燥が行われることとなる。この乾燥を充分に行うことによって、後の擦過によるビーズ粉の除去、更には粉状の光反射成分の部分的な脱落が効果的に行なわれ得て、ハーフミラー効果の有効な実現が可能となるのである。
次いで、かくの如き乾燥の施された印刷層を有する透明基材には、その印刷層の表面に対して、擦過操作が実施され、これによって、かかる印刷層に含まれているビーズ粉を除去し、また余分な光反射成分(印刷層部分)を取り除くことにより、透明基材の印刷層には、透光性の薄膜部位が微細に形成されることとなるのであり、そのような印刷層における光反射成分の重なり合うような存在によって形成される不透光性の厚膜部位と合わせて、目的とするハーフミラー効果が発現されるようになるのである。なお、このような擦過操作は、具体的には、透明基材の印刷層の印刷面を、流水等の液体にて洗浄しつつ、ウエス等を使用して、斑が出来ないように軽く拭くことにより、実施され、またその拭き落したビーズ粉や余剰の光反射成分は、清水等の液体を用いてよく洗い流し、透明基材上に付着しないようにされる。
かくして、透明基材におけるミラーインキ(インキ組成物)の印刷層には、そこに含有されるビーズ粉の除去や、それに伴う余剰の光反射成分の除去によって、印刷層の厚い部分と薄い部分が形成されるようになるのである。そして、その印刷層の厚い部分においては、光反射成分が重なり合って存在することとなるところから、従来のミラーインキの印刷層と同様な光反射特性を有しているのであり、これによって、光透過性の厚膜部位を構成することとなる一方、主としてビーズ粉の脱落除去によって形成される印刷層の薄い部分は、不透光性の厚膜部位の中に微細に点在するように分布し、そこでは、光反射成分の存在量が少なくなっているところから、そのような薄い層を光が透過し得るようになるのである。そして、これにより透光性の薄膜部位として存在することとなるのであり、以て、目的とするハーフミラー効果が、効果的に実現されることとなるのである。
ところで、図1には、上述のようなハーフミラー効果が実現される形態が、概略的に示されている。そこにおいて、2は、透明基材である透明シートであり、その一方の側の面に、所定のミラーインキ(インキ組成物)を用いて、所定パターンにおいて、印刷層4が、形成されている。また、そのような印刷層4内には、光反射成分としての金属箔片6が重なり合うように存在せしめられている一方、多数のビーズ粉8も、そのような印刷層2内に存在するように分布せしめられているのである。そして、そのような状態の印刷層4の表面が、例えば、水洗しながら擦過せしめられることにより、印刷層4からはビーズ粉8が脱落除去され、また、それに伴う余剰の印刷層部位、更にはそこに存在する金属箔片6も、脱落除去されることにより、透明シート2上に形成された印刷層4は、多数の金属箔片6の存在によって、不透光性とされ、光輝性の光反射特性を備えた厚膜部位10の中に、ビーズ粉8の脱落除去の後に形成される金属箔片6の存在量が低減されて、光透過性とされた薄肉の薄膜部位12が微細に形成せしめられることとなるのであり、これにより、ハーフミラー効果が発揮されることとなるのである。なお、上記の印刷層4は、一般に、5〜20μm程度の厚さにおいて形成され、そして、上述の如き擦過操作が加えられることにより、その厚さが低減され、一般に0.5〜5μm程度の厚さの範囲内において、上記厚膜部位10や、薄膜部位12が形成されている。また、薄膜部位12の微細な点在形態にあっても、一般に1〜50μmの大きさにおいて、好ましくは、5〜20μm程度の大きさにおいて存在せしめられるようになっている。
このようにして、目的とするハーフミラー材料を製造するようにすれば、単に、所定のミラーインキ組成物を、通常の印刷技術、特にスクリーン印刷によって、透明基材(2)の表面に任意のパターンにて印刷層(4)を印刷し、そして、その印刷面を単に擦過するだけで、ハーフミラー効果が実現されることとなるのであって、これにより、ハーフミラー部位の形成が容易となり、任意のパターニングにおいて、ハーフミラー部位を形成することが出来ることとなったのであり、また、単なる印刷技術を利用してハーフミラー部位が形成されるものであるところから、ハーフミラー材料の小ロット生産にも、効果的に対応することが出来るのである。
しかも、得られたハーフミラー材料におるハーフミラー部位の光の透過濃度は、そのようなハーフミラー部位を与える印刷層(4)におけるビーズ粉(8)の存在量によって変化させられ得るものであるところから、ミラーインキに対するビーズ粉の配合比率を種々調整することによって、かかる透過濃度を自由に制御することも、簡単に為し得ることとなったのであり、これによって、各種のハーフミラー材料を自由に提供することが出来るのである。
なお、このようにして得られる透明基材(2)上のハーフミラー層(16)は、物理的耐久性に乏しいものであるところから、そのようなハーフミラー層(16)の上に、更に透明インキの保護層を印刷などによって設けることが望ましく、これによって、ハーフミラー層(16)の剥落が効果的に抑制乃至は阻止されると共に、ハーフミラー層(16)内に存在する光反射成分(6)の酸化等の変性を有利に防止することも可能となり、以て、ハーフミラー材料の耐久性の向上をも有利に図り得るのである。
また、上述の如くして得られるハーフミラー材料にあっては、その透明基材(2)上に形成されるハーフミラー層(16)が全体的に薄い膜厚において形成されているところから、透明インキとのコンビネーションが可能であり、例えば、着色された透明インキの印刷層を透明基材(2)に対して形成することにより、かかる透明基材(2)のハーフミラー層(16)の着色を、任意に且つ自由に行うことが出来、以て、ハーフミラー材料の商品価値を更に一層高めることが出来るのである。
そして、そのような透明インキの印刷層は、透明基材(2)に対して印刷層(4)が形成されるに先立って、かかる透明基材(2)に形成されたり、また、透明基材(2)上にハーフミラー層(16)が形成された後、かかるハーフミラー層(16)の上に形成することも可能であり、更には、透明基材(2)の印刷層(4)形成側とは反対側の面に、所定の透明インキの印刷層を形成することも可能である。なお、ハーフミラー層(16)の上に、透明インキの印刷層を形成する場合にあっては、それを前記した保護層を兼ねるように構成することも可能である。
ところで、本発明は、以上で説明したことの他、各種の形態において実施されるものであって、当業者の知識に基づいて採用される本発明についての種々なる変更、修正、改良等に係る各種の実施の形態が、何れも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
以下に、本発明の代表的な幾つかの実施例を示し、本発明の特徴を更に明確にすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
−実施例1−
粉状の光反射成分として、真空蒸着法で得られた、平均粒径:12μm、及びアスペクト比:400(厚さ:0.03μm)のアルミニウム箔片を用い、その100重量部と、バインダとしてのビニルポリマーの30重量部と、エステル系溶剤の1500重量部とからなるミラーインキを用い、その30重量部に対して、希釈溶媒の30重量部と共に、ビーズ粉としてのアクリル樹脂ビーズ(大日精化工業株式会社製ラブコロール230(M)クリアー:平均粒径=8.5μm)の30重量部を配合して、均一に混合することにより、ミラーインキ組成物を調製した。
次いで、厚さが188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の表面に対して、上記で調製されたミラーインキ組成物を、ポリエステル270メッシュのスクリーン版を用いて、常法に従ってスクリーン印刷し、そして50℃×20分の乾燥を行った。
かくして得られたスクリーン印刷PETフィルムについて、その印刷面を流水で洗浄しつつ、ウエスを使用して、ムラが出来ないように軽く拭くことにより擦過し、印刷層に含まれるアクリル樹脂ビーズを脱落除去せしめると共に、余剰の印刷層部分をも除去して、厚膜部位の中に薄膜部位が微細に分布せしめられてなる印刷層を形成した。なお、ウエスで拭き落したアクリル樹脂ビーズやアルミニウム箔(粉)等は、清水でよく洗い流し、また、そのような洗浄擦過操作の後、PETフィルムには充分な乾燥操作が施されて、付着水分をよく乾燥させた。
かくして得られたスクリーン印刷PETフィルムにおける印刷層は、その厚膜部位においては、アルミニウム箔片の重なり合いによって、不透光性であって、良好な光反射特性を有し、光輝性を発揮する一方、そのような厚膜部位の中に微細に分布、存在する薄膜部位においては、アルミニウム箔片の存在が少なく、透光性となり、シート表側からシート裏側を透視することが出来、従って、裏側からの照明によって表側に光が透過する特性を有するものとなって、ハーフミラー材料として、有用なものであることを確認した。
また、上記で得られたPETフィルムについて、そのスクリーン印刷層の擦過前の状態と擦過後の状態を明らかにするために、走査型電子顕微鏡にて観察し、その結果(写真)を、図2〜図7に示した。なお、それらの図において、図2及び図4は、それぞれ、擦過前の印刷面をその直上より観察した250倍及び500倍の写真であり、また図3及び図5は、それぞれ、擦過後の印刷面の状態をその直上より観察した250倍及び500倍の写真である。更に、図6及び図7は、それぞれ、擦過前及び擦過後の印刷面を60°斜め上方より観察した500倍の顕微鏡写真である。
それら、図2〜図7に示される顕微鏡写真の対比から明らかなように、前記した洗浄・擦過操作により、スクリーン印刷層中に存在する球形のアクリル樹脂ビーズが除去され、また、それと共に、印刷層の突出部分も除去されて、厚膜部位の中に薄膜部位が微細に分布せしめられてなる印刷層が形成されていることが、明確に認められるのである。
−実施例2−
市販のミラーインキ(株式会社ミノグループ製ミラーG750MRシルバー)と、アクリル樹脂ビーズ(大日精化工業株式会社製ラブコロール230(M)クリアー)と、希釈溶媒(エクソンモービル社製ソルベッソR150)とを用いて、下記表1に示される配合割合において、均一に混合せしめることにより、アクリル樹脂ビーズの配合割合の異なる各種のインキ組成物を調製した。
Figure 0004351208
このようにして得られた各種のインキ組成物を用いて、実施例1と同様にして、PETフィルム上にスクリーン印刷し、更に乾燥した後、実施例1と同様な洗浄・擦過操作を施すことにより、それぞれ、ハーフミラー材料を作製した。
かくして得られたハーフミラー材料にあっては、アクリル樹脂ビーズ(ビーズ粉)の配合量が少なくなるほど、換言すれば、インキ組成物Aからインキ組成物Eに至るほど、印刷層における透光性の薄膜部位の割合が少なくなり、従って、透光度が順次低下したハーフミラー材料が得られることが明らかとなった。
−実施例3−
実施例2において用いた市販のミラーインキ及び希釈溶媒を用いると共に、下記表2に示される各種ビーズ粉を用いて、下記表3に示される各種のインキ組成物F〜Jを調製した。なお、表2におけるビーズ粉(イ)及び(ロ)は、それぞれ、大日精化工業株式会社製のラブコロール230(M)クリアー及びラブコロール230(SM)クリアーであり、ビーズ粉(ハ)は、根上工業株式会社製アートパールC−800透明であり、また、ビーズ粉(ニ)は、岐阜セラック株式会社製BC−79であり、更に、ビーズ粉(ホ)は、旭テクノグラス株式会社製WGB232である。そして、インキ組成物F〜Jの調製に際しては、ミラーインキの36重量部に、ビーズ粉の24重量部と、表3に示される割合の希釈溶媒を用いて、均一に配合せしめることによりその調製を行った。
次いで、かくして得られた5種類のインキ組成物を用い、実施例1と同様にして、ハーフミラー材料をそれぞれ作製し、そのハーフミラー効果、印刷面の洗浄性(擦過除去性)、及びハーフミラーの仕上り状態を示す粒状感について評価し、その結果を、下記表3に合わせて示した。なお、表3において、評価結果を示す◎印は、最良の状態であることを示し、また、○印は、良好な状態であることを示し、更に△印は、実用上許容できるものであることを示している。
Figure 0004351208
Figure 0004351208
−実施例4−
厚さが188μmのPETフィルムを用い、その一方の面に、透明着色インキ(株式会社ミノグループ製ルミニスト耐熱904LMピンクゴールド)にて、所定パターンのスクリーン印刷を行った後、その印刷面上に、同一のパターンにて、実施例1において用いたミラーインキ組成物のスクリーン印刷を行い、その後、実施例1と同様にして、乾燥、洗浄・擦過、乾燥することにより、着色したハーフミラー材料を作製した。
かくして得られた着色ハーフミラー材料にあっては、その着色面が優れた光輝性を示すと共に、光の透過性においても優れ、商品価値の高いものであることを認めた。
−実施例5−
実施例2においてインキ組成物Aを用いて得られたハーフミラー材料について、その印刷層(ハーフミラー層)の上に、透明なインキ(株式会社ミノグループ製ルミニスト標準909LMブラックシルバー)をスクリーン印刷することにより、透明な保護層(裏抑え)を形成した。
このようにして得られたハーフミラー材料にあっては、その印刷層(ハーフミラー層)の上を手で擦っても、印刷層が脱落するようなことが全くなく、物理的な耐久性において優れていることが認められると共に、また、透明保護層によって印刷層が被覆されていることによって、印刷層中に存在するアルミニウム箔の酸化等の変質からも良好に保護されていることが認められた。
本発明に従うハーフミラー材料の製造方法の工程を模式的に示す断面説明図である。 実施例1において得られたスクリーン印刷PETフィルムの擦過前の印刷面をその直上から撮影した走査型電子顕微鏡写真(250倍)である。 実施例1において得られたスクリーン印刷PETフィルムの擦過後の印刷面をその直上から撮影した走査型電子顕微鏡写真(250倍)である。 図2に示される顕微鏡写真を500倍に拡大したものである。 図3に示される顕微鏡写真を500倍に拡大したものである。 実施例1において得られたスクリーン印刷PETフィルムについて、その擦過前の印刷面の状況を60°斜め上方から撮影した電子顕微鏡写真(500倍)である。 実施例1において得られたスクリーン印刷PETフィルムについて、その擦過後の印刷面の状況を60°斜め上方から撮影した電子顕微鏡写真(500倍)である。
符号の説明
2 透明基材 4 印刷層
6 光反射成分 8 ビーズ粉
10 厚膜部位 12 薄膜部位
16 ハーフミラー層

Claims (12)

  1. フィルム状若しくはプレート状の透明基材の一方の側の面に、粉状の光反射成分を含有するミラーインキの印刷層が形成されていると共に、かかる印刷層が、不透光性の厚膜部位透光性の薄膜部位とから構成され、且つ該薄膜部位が該印刷層において微細に分布せしめれていることを特徴とするハーフミラー材料。
  2. 前記透光性の薄膜部位が、前記印刷層の表面を擦過して、その厚さを低下させた形態において、形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハーフミラー材料。
  3. 前記ミラーインキの印刷層が、前記光反射成分として、平均粒径:5〜20μm、アスペクト比:80〜2000の金属箔片を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のハーフミラー材料。
  4. 透明な着色インキの印刷層が、前記ミラーインキの印刷層の下層若しくは上層として形成され、又は前記透明基材の他方の側の面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のハーフミラー材料。
  5. 前記ミラーインキの印刷層の上に、更に、透明な保護層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載のハーフミラー材料。
  6. フィルム状若しくはプレート状の透明基材の一方の側の面に、粉状の光反射成分を含有するミラーインキに更にビーズ粉を均一に配合せしめてなるインキ組成物を印刷して、その印刷層を乾燥させた後、かかる印刷層の表面を擦過して、該印刷層に含まれる前記ビーズ粉を少なくとも除去することにより、かかる印刷層に透光性の薄膜部位を微細に形成せしめることを特徴とするハーフミラー材料の製造方法。
  7. 前記擦過操作が、前記印刷層の表面の洗浄操作と共に、実施されることを特徴とする請求項6に記載のハーフミラー材料の製造方法。
  8. 前記ミラーインキが、前記光反射成分として、平均粒径:5〜20μm、アスペクト比:80〜2000の金属箔片を含有していることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のハーフミラー材料の製造方法。
  9. 前記ビーズ粉が、1〜10μmの平均粒径を有していることを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
  10. 前記印刷操作が、スクリーン印刷であることを特徴とする請求項6乃至請求項9の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
  11. 透明な着色インキの印刷層が、前記インキ組成物の印刷に先立ち、若しくはその後に、前記透明基材の一方の側の面に形成され、又は該透明基材の他方の側の面に形成されることを特徴とする請求項6乃至請求項10の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
  12. 前記ビーズ粉の除去された印刷層上に、更に、透明インキの保護層が形成されることを特徴とする請求項6乃至請求項11の何れか一つに記載のハーフミラー材料の製造方法。
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