JP4955817B1 - 加飾印刷物およびその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の極細溝2からなるスピン調の凹凸模様が裏面1bに形成された光透過性のポリカーボネートからなる樹脂基板1と、凹凸模様を覆うインキ被膜3と、を備える加飾印刷物であって、インキ被膜3は、裏面1bに塗布したインキ組成物から溶媒成分を乾燥除去して形成されると共に、インキ組成物は、着色顔料とバインダ樹脂とを含み、着色顔料のバインダ樹脂に対する平均比率を、インキ被膜3における着色顔料の分布が、樹脂基板1の表面から入射した光を樹脂基板1とインキ被膜3との界面で反射させる分布になるようにし、着色顔料を、黒色顔料と青色顔料と赤色顔料と紫色顔料と緑色顔料と黄色顔料のうちの少なくともひとつとした構成の加飾印刷物とした。
【選択図】図2
Description
このような加飾印刷物からプレス打ち抜きにより銘板などを形成すると、銘板の端面ではアルミが剥き出しになるため、剥き出しになったアルミが輝いてしまい、銘板の装飾性が損なわれることがあった。
また、アルミニウム基板の表面に着色処理を行っているので、銘板の表面が白く掠れたようになることがある。かかる場合には、銘板の漆黒度が低下するため、表面にスピン調やヘアライン調の模様が設けられていても、十分な重量感と高級感が得られないことがあった。
また、金属材料(アルミニウム基材)の表面にスピン調やヘアライン調の凹凸模様を設けた場合のような金属感(見る方向に応じて異なる輝度感)が得られ難い、すなわち金属感が劣るという問題があった。
その結果、樹脂基板を表面側から見ると、着色顔料の着色成分に起因する色の中に凹凸模様が輝影となり浮かび上がる。また、樹脂基板とインキ被膜との界面での反射は、凹凸模様の視認性の向上に寄与する。さらに、凹凸模様の見え方は樹脂基板に対する光の入射方向により大きく変化する。よって、凹凸模様が見る方向に応じて異なる輝度感をもって表れることになり、加飾印刷物において適度な金属感が発揮される。
本発明にかかる加飾印刷物は、シート状の樹脂基板1の裏面に極細溝2からなるスピン調またはヘアライン調の凹凸模様を形成したのち、カーボンブラックを着色成分として含むインキ組成物の樹脂基板の裏面への塗布、乾燥により得られるものである。
樹脂基板1は、ポリカーカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリテレフタレート(PET)、アクリル(PMMA)のうちの何れかからなる樹脂材料、またはこれらのうちの少なくともひとつを主成分として含む樹脂材料から形成したシート状の成形物である。
ここで、樹脂基板1の厚みは、50μm以上であることが好ましい。50μmよりも薄くなると、樹脂基板1の一方の面に極細溝2からなる凹凸模様を形成する際に、樹脂基板1にシワが生じることや、樹脂基板1が破損することがあるからである。
また、市販の入手可能なPS製のシート状基材として、例えば東洋スチレン株式会社提供のものがあり、市販の入手可能なPET製のシート状基材として、例えば東レ株式会社提供のルミラー(登録商標)などがあり、市販の入手可能なPMMA製のシート状基材として、例えば三菱レイヨン株式会社提供のアクリライト(登録商標)などがある。
図1では、加飾印刷物の樹脂基板1における凹凸模様を構成する極細溝2が説明されている。図1の(a)は、極細溝2からなるスピン調の模様が形成された樹脂基板1を、裏面1b側から見た斜視図である。図1の(b)は、(a)の樹脂基板1の裏面1bにインキ被膜3が設けられて得られる加飾印刷物の断面図であって、(a)におけるA−A断面に相当する図である。図1の(c)は、(b)における符号Bで囲んだ部分を拡大して示す部分拡大図であって、極細溝2の断面形状を説明する図である。
表面処理は、例えばサンドペーパーまたは金属ブラシを樹脂基板1に擦り付けることで行われる。なお、へライン調の模様の場合の極細溝もまた、同様にして形成される。
0.05μmよりも浅くなると、スピン調の模様が見えにくくなる。また、25μmよりも深くなると、樹脂基板1にインキ組成物を塗布した際に、インキ組成物が極細溝2内に十分に充填されなくなって、極細溝2内に空隙が残ることがある。
ここで、極細溝2内に空隙が残ると、樹脂基板1の裏面1bとインキ被膜3との界面に隙間が生じる。かかる場合には、樹脂基板1に入射した光が、樹脂基板1の裏面1bとインキ被膜3との界面で反射されなくなる。これにより、樹脂基板1の表面1a側から見たスピン調の模様の視認性が低下してしまう。
かかる範囲内に設定すると、樹脂基板1の裏面1bとインキ被膜3との界面に、カーボンブラックからなる光の反射面が密に形成される。
そうすると、樹脂基板1に表面1a側から入射した光の多くが、樹脂基板1の裏面1bとインキ被膜3との界面で反射されて樹脂基板1の表面1a側に向かうようになる。これにより、樹脂基板1の表面1a側から見たスピン調の模様の視認性が向上し、後記する輝度値、輝度比が高くなる。
さらに、傾きが36°よりも大きくなると、後記するインキ組成物を樹脂基板1の裏面1bに塗布した際に、インキ組成物が極細溝2内に充填されずに空間を生じ易くなる。かかる場合、樹脂基板1の裏面1bにカーボンブラックからなる光の反射面が密に形成されなくなる。その結果、樹脂基板1の表面1a側に向かう光の量がいっそう少なくなって、スピン調の模様の視認性がいっそう低下する。
加飾印刷物におけるインキ被膜3は、樹脂基板1の極細溝2からなる凹凸模様が設けられた裏面1bにインキ組成物したのち、溶媒成分を乾燥除去して形成される。
インキ組成物は、着色成分としての顔料と、接着成分としてのバインダ樹脂と、樹脂基板を構成する樹脂の溶解性溶媒と非溶解性溶媒との混合溶媒と、を主成分として含むものである。
実施の形態では、株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)に、カーボンブラックと希釈溶媒とを任意の割合で添加して、インキ組成物を調整している。
図2の(a)は、インキ組成物からの溶媒成分の乾燥除去により得られるインキ被膜3でのカーボンブラックの分布が、樹脂基板1の表面から入射した光を樹脂基板1とインキ被膜3との界面で反射させる分布である場合を説明する図である。
図2の(b)は、インキ組成物(またはインキ被膜3)におけるカーボンブラックのバインダ樹脂に対する比率が(a)の場合よりも小さくなって、インキ被膜3におけるカーボンブラックの分布が、樹脂基板1の表面から入射した光の一部を樹脂基板1とインキ被膜3との界面で反射せずにインキ被膜3の内部に進入させてしまう状態である場合を説明する図である。
図3の(c)は、インキ組成物に含まれる溶媒の影響で、インキ組成物の塗布から溶媒成分の乾燥除去によりインキ被膜3を形成するまでの間に、樹脂基板1の極細溝2からなる凹凸模様が侵食された場合を説明する図である。
STRコンク710ブラック(製品名)に含まれる顔料は、カーボンブラックであるので、実施の形態では、三菱化学株式会社社提供のカーボンブラック(MA8:粒子径20nm、PVC黒度20)を、STRコンク710ブラック(製品名)に添加するカーボンブラックとして採用している。
カーボンブラックの粒径は、約10nm〜50nmの範囲内で適宜変更可能であり、例えば三菱化学株式会社社提供のMA100(粒子径20nm、PVC黒度10)や#95(粒子径40nm、PVC黒度2)などであっても良い。
バインダ樹脂は、樹脂基板1に対する接着性が良好な樹脂が、樹脂基板の種類に応じて適宜選択される。STRコンク710ブラック(製品名)には、ポリカーボネート(PC)に対する接着性が良好なビニル、アクリル系の樹脂が採用されている。
そうすると、樹脂基板1の表面1aから入射した光は、樹脂基板1とインキ被膜3との界面で確実に反射して樹脂基板1の表面1a側に向かうようになる。これにより、樹脂基板1を表面1a側から見ると、界面で反射した光により、カーボンブラックCBに起因する漆黒の中に凹凸模様が輝影となり浮かび上がるようになる。
この界面での反射は。樹脂基板1に対する光の入射方向により大きく変化する。よって、凹凸模様が見る方向に応じて異なる輝度感をもって表れることになり、加飾印刷物において適度な金属感を発揮する凹凸模様の視認性が向上する。
さらに、ーボンブラックのバインダ樹脂に対する平均比率が0.27よりも小さい場合、図2の(b)に示すように、樹脂基板1とインキ被膜3との界面におけるカーボンブラックCBの分布が疎になる(密度が低くなる)。
そうすると、樹脂基板1の表面1aから入射した光の一部が、樹脂基板1とインキ被膜3との界面で反射せずに、インキ被膜3の内部に進入するようになる。この場合、樹脂基板1の表面1a側に反射する光の量が減少して、極細溝2からなる凹凸模様(スピン調またはヘアライン調の模様)の視認性が低下してしまう。
混合溶媒は、樹脂基板の溶解性が低い溶媒(非溶解性溶媒)と、溶解性が高い溶媒(溶解性溶媒)との混合溶媒である。
STRコンク710ブラック(製品名)には、樹脂基板(ポリカーボネート)の溶解性が低いエチレングリコールモノブチルエーテル(非溶解性溶媒)と、溶解性が高いシクロヘキサノン(溶解性溶媒)とが含まれている。溶解性溶媒の非溶解性溶媒に対する比率(溶解性溶媒/非溶解性溶媒)が0.42(平均値)である。
希釈溶媒は、STRコンク710ブラック(製品名)にカーボンブラックを添加してインキ組成物を調整する際に、得られるインキ組成物の流動性を調整するために添加される。
さらに、溶媒成分の組成を、インキ組成物の樹脂基板1への塗布からインキ組成物に含まれる溶媒成分の乾燥除去までの間に、樹脂基板1の極細溝2が溶媒成分により溶解して、スピン調またはヘアライン調の模様が損なわれることのない組成に調整するために添加される。
樹脂基板1の極細溝2が溶解すると、極細溝2の略V形状の断面が崩れてしまい、最終的に得られる加飾印刷物の樹脂基板とインキ被膜3との界面において光が乱反射してしまうからである。また、白化、失透は、界面で反射した光を拡散させてしまい、クラック、膨潤は、極細溝からなる凹凸模様を崩してしまうからである。
ここで、光沢化とは、樹脂基板1の溶媒により溶解した部分が、溶媒の除去により固化して、表面の光沢が変化した場合をいう。
なお、希釈溶媒は、例示された上記溶媒のうちのひとつであっても良いし、例示された上記溶媒の中から選択された2つ以上の混合物であっても良い。
かかる場合、樹脂基板1のインキ被膜3との接触界面の平滑性が損なわれると共に、樹脂基板1の極細溝2が損なわれてしまう。この場合、樹脂基板1の表面1aから入射した光が、インキ被膜3に達する前に樹脂基板1内で拡散してしまう。そうすると、樹脂基板1の表面1a側に向かう光が少なくなって、極細溝2からなる凹凸模様(スピン調またはヘアライン調の模様)の視認性が低下してしまう。
ポリカーボネート製の樹脂基板の極細溝からなる凹凸模様が形成された裏面1bに、組成の異なるインキ組成物を塗布、乾燥して得られる加飾印刷物の各々について、凹凸模様の視認性と、インキ被膜3の抵抗値と、を評価した。
各インキ組成物の詳細と、加飾印刷物の作成方法と評価結果は、以下の通りである。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、希釈溶媒(T475)を5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物A1を作成した。
ここで、希釈溶媒(T475)は、非溶解性溶媒(ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ)と、溶解性溶媒(シクロヘキサノン)とが大凡8:2の割合で含まれた混合溶媒である。
STRコンク710ブラックは、カーボンブラックを着色成分として含み、ビニル、アクリル系樹脂を接着成分(バインダ成分)として含み、ブチルセロソルブ、シクロヘキサノンの混合溶媒を溶媒成分として含むものである。
STRコンク710ブラックにおける着色成分と、バインダ成分と、溶解性溶媒(シクロヘキサノン)と、非溶解性溶媒(ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ)との平均混合比率は、16.04:29.42:16.04:38.50である。
なお、このインキ組成物A1における溶解性溶媒/非溶解性溶媒比の平均値は、0.39であり、カーボンブラック(CB)/バインダ比の平均値は、0.55である。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を3.33重量部、希釈溶媒(T475)を9.5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物A2を作成した。
なお、インキ組成物A2における溶解性溶媒/非溶解性溶媒比の平均値は、0.36であり、CB/バインダ比の平均値は、0.77である。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を7.14重量部、希釈溶媒(T475)を23重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物A3を作成した。
なお、このインキ組成物A3における溶解性溶媒/非溶解性溶媒比の平均値は、0.33であり、カーボンブラック(CB)/バインダ比の平均値は、1.03である。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を11.54重量部、希釈溶媒(T475)を26重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物A4を作成した。
なお、このインキ組成物A1における溶解性溶媒/非溶解性溶媒比の平均値は、0.32であり、カーボンブラック(CB)/バインダ比の平均値は、1.33である。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、非溶解性溶媒(ブチルセロソルブ)を5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物B1を作成した。
なお、このインキ組成物B1における溶解性溶媒/非溶解性溶媒比の平均値は、0.33であり、カーボンブラック(CB)/バインダ比の平均値は、0.55である。
上記インキ組成物A2〜A4の希釈溶媒をブチルセロソルブに置き換えたインキ組成物B2〜B4を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を7.14重量部、溶解性溶媒(シクロヘキサノン)を23.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物C3を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を7.14重量部、溶解性溶媒(1、3、5トリメチルベンゼン)を23.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物D3を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を7.14重量部、非溶解性溶媒(ブチルセロソルブ)を11.5重量部、溶解性溶媒(シクロヘキサノン)を11.5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物E3を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTR765プロセスブラック(製品名)50重量部に対し、希釈溶媒(T475)を5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物R1を作成した。
ここで、STR765プロセスブラックにおける着色成分と、バインダ成分と、溶解性溶媒(シクロヘキサノン)と、非溶解性溶媒(エチレングリコールモノブチルエーテル)との平均混合比率は、2.69:29.57:19.35:48.39である。
よって、このインキ組成物R1における溶解性溶媒/非溶解性溶媒比の平均値は、0.38であり、カーボンブラック(CB)/バインダ比の平均値は、0.09である。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTR710ブラック(製品名)50重量部に対し、希釈溶媒(T475)を5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物R2を作成した。
ここで、STR710ブラックにおける着色成分と、バインダ成分と、溶解性溶媒(シクロヘキサノン)と、非溶解性溶媒(エチレングリコールモノブチルエーテル)との平均混合比率は、7.89:28.96:17.89:45.26である。
よって、このインキ組成物R2における非溶解性溶媒/溶解性溶媒比の平均値は、0.37であり、カーボンブラック(CB)/バインダ比の平均値は、0.27である。
ポリカーボネートからなるシート状の樹脂基板(帝人化成株式会社提供のパンライト(登録商標))の裏面1bに極細溝からなるスピン調の模様を形成し、樹脂基板のスピン調の模様が形成された裏面に、スクリーン印刷によりインキ組成物を塗布してインキ組成物のパターンを形成し、所定の乾燥条件のもと、インキ組成物から溶媒成分を揮発させて、スピン調の模様を覆うインキ被膜が設けられた加飾印刷物を得た。
得られた加飾印刷物を、極細溝からなるスピン調の模様が形成されていない面(表面)から見た場合におけるスピン調の模様の視認性の確認を行った。
図3では、スピン調の模様の視認性の評価方法が説明されている。図3の(a)は、加飾印刷物の表面を、表面に対して直交する方向から見た図であり、図3の(b)は、加飾印刷物を側方から見た図である。
実施の形態では、スピン調の模様の中心から見て、扇形状の明部と暗部とがそれぞれ90度範囲で形成されるように、加飾印刷物と直管形蛍光灯とを配置し(図3の(b)参照)、この状態における明部と暗部とのコントラストに基づいて、スピン調の模様の視認性を評価している。
具体的には、明部と暗部の各々における光の反射量(輝度値)を、加飾印刷物の表面から距離h離間した位置に配置した輝度計(株式会社トプコン製色差輝度計)で測定し、明部の輝度値と暗部の輝度値との比(輝度比=明部の輝度値/暗部の輝度値)を求めて、輝度比と所定の閾値との比較により、スピン調の模様の視認性を評価している。
よって、実施の形態では、着色成分が黒色顔料のみである場合には、輝度比の値が3.5以上である場合に、スピン調の模様の視認性が良好であると判断している。
この場合、CB/バインダ比が0.77を超えると輝度比の値が顕著に大きくなり、スピン調の模様の視認性が向上することが確認された。
その結果、樹脂基板の表面から入射した光が、樹脂基板とインキ被膜との界面となる反射面で反射して、入射した光の大部分が表面側に向かうことになる。その結果として、凹凸模様の視認性が向上する。
一方、CB/バインダ比が0.77よりも少なくなると、図2の(b)に示すように、インキ被膜におけるカーボンブラックの含有量が少なくなる。この場合、バインダ樹脂が極細溝の内部に入り込んで、極細溝内にカーボンブラックの粒子が密に並ばなくなる。
そうすると、樹脂基板に入射した光が樹脂基板とインキ被膜との界面で反射せずにインキ被膜内に進入して、樹脂基板の表面側に向かう光の量が減少してしまう。これにより、明部の暗部の間の輝度値の差が小さくなって輝度比が小さくなるので、スピン調またはヘアライン調の模様の視認性が低下する。
例えば、図2の(c)に示すように、樹脂基板の極細溝が、厚み方向で0.5μm以上溶解されて、極細溝2の略V字形状の断面が崩れてなだらかな凹凸となると、表面側に向かう光の量が少なくなることが、極細溝の観察(例えばレーザーマイクロスコープVK−9700キーエンス)の結果、確認された。
また、C3とE3の比較、A3とB3とC3とD3とE3の結果、溶解性溶媒の量が少なくなるほど、輝度比の値が大きくなり、スピン調の模様の視認性が向上することが確認された。
そのため、樹脂基板1の表面1aから入射した光は、樹脂基板1とインキ被膜3との界面で確実に反射して樹脂基板1の表面1a側に向かうようになるので、樹脂基板1を表面1a側から見ると、カーボンブラックに起因する漆黒の中に凹凸模様が輝影となり浮かび上がる。
樹脂基板1とインキ被膜3との界面での反射は、凹凸模様の視認性の向上に寄与し、さらに凹凸模様の見え方は樹脂基板1に対する光の入射方向により大きく変化するので、凹凸模様が見る方向に応じて異なる輝度感をもって表れることになり、加飾印刷物において適度な金属感を発揮することになる。
この場合において、インキ組成物におけるカーボンブラックのバインダ樹脂に対する平均比率を0.77以上1.33以下に設定すると、凹凸模様の視認性が最も高く、適度な金属感を発揮する加飾印刷物を得ることができる。
よって、凹凸模様が損なわれることに起因する凹凸模様の視認性の低下と、加飾印刷物における金属感の低下を好適に防止できる。
ここで、総ての斜面2aの傾斜角θが上記の範囲内にある必要はなく、斜面2aの傾斜角θの大半(少なくとも60%以上)が上記の範囲内にあればよい。
スピン調またはヘアライン調の模様が施された加飾印刷物(銘板)では、使用状態を考慮すると、表面1aの鉛直方向側から見た場合にスピン調またはヘアライン調の模様が視認可能であることが必要とされ、極細溝2は、表面1aの鉛直方向側から入射する光を表面1a側に反射するように設けられている必要がある。そのため、傾斜角θを、上記の角度範囲に設定することで、加飾印刷物(銘板)に使用状態におけるスピン調またはヘアライン調の模様の視認性が良好となる。
しかし、インキ組成物のバインダ成分は、実施の形態の限定されるものではなく、例えばビニル系樹脂とアクリル系樹脂のうちの何れか一方をバインダ樹脂として用いても良い。
ここで、ビニル系の樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどが採用可能であり、アクリル系の樹脂としては、アクリル酸・メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合物、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸グリシジル・スチレン共重合物、などが採用可能である。
また、スクリーン印刷により、インキ組成物を樹脂基板に塗布する場合を例示したが、オフセット印刷、パッド印刷、塗装、筆塗りなどにより塗布するようにしても良い。
さらに、実施の形態では、インキ組成物に含まれる着色成分が黒色顔料である場合を例示したが、最終的に形成されるインキ被膜の光透過率が黒色顔料を用いた場合と略同等になる青系の顔料を採用しても良い。
なお、インキ組成物A3の組成は、前記した実施の形態の表1に示すインキ組成物A3と同じであるので、ここではその説明を省略する。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に対し、希釈溶媒(T475)を7.5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Refを作成した。
ここで、希釈溶媒(T475)と、STRコンク710ブラックの組成は、前記した実施の形態で用いたものと同じであるので、ここでは説明を省略する。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)と、株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク440ブルー(製品名)とを、下記表2に示す割合で混合し、希釈溶媒(T475)を7.5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物X1〜X4を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)30重量部と、株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク440ブルー(製品名)20重量部とを混合し、これに三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を4.80重量部と、フタロシアニンブルー(青色顔料:ホルベイン工業株式会社提供、製品名:オリエンタルブルー)2.35重量部とを加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を16.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物X5を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク440ブルー(製品名)50重量部に対し、フタロシアニンブルー(青色顔料:ホルベイン工業株式会社提供、製品名:オリエンタルブルー)を1.38重量部を混合したのち、希釈溶媒(T475)を7.5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物X6を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク440ブルー(製品名)50重量部に対し、フタロシアニンブルー(青色顔料:ホルベイン工業株式会社提供、製品名:オリエンタルブルー)を9.62重量部加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を16.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物X7を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)25重量部と、株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク495バイオレッド(製品名)25重量部とを混合し、これに希釈溶媒(T475)を7.5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Y1を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)30重量部と、株式会社セイコーアドバンス提供のSTRパーマネントレッド(製品名)20重量部とを混合したのち、希釈溶媒(T475)を7.5重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Y2を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)30重量部と、株式会社セイコーアドバンス提供のSTRパーマネントレッド(製品名)20重量部とを混合し、これにピオニーレッド(赤色顔料:ホルベイン工業株式会社提供、製品名:ピオニーレッド)8.25重量部を加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を12.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Y3を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRパーマネントレッド(製品名)50重量部に対し、ピオニーレッド(赤色顔料:ホルベイン工業株式会社提供、製品名:ピオニーレッド)を11.25重量部加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を17.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Y4を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を2.11重量部と、ピオニーレッド(赤色顔料:ホルベイン工業株式会社提供、製品名:ピオニーレッド)5.51重量部とを加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を18.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Z1を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を2.11重量部と、フタロシアニンブルー(青色顔料:ホルベイン工業株式会社提供、製品名:オリエンタルブルー)5.51重量部とを加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を18.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Z2を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を2.11重量部と、フタロシアニングリーン(緑色顔料:株式会社クサカベ提供、製品名:フタロシアニングリーン)を5.51重量部、加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を18.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Z3を作成した。
株式会社セイコーアドバンス提供のSTRコンク710ブラック(製品名)50重量部に、三菱化学株式会社提供のカーボンブラックMA8を2.11重量部と、パーマネントイエローレモン(黄色顔料:株式会社クサカベ提供、製品名:パーマネントイエローレモン)5.51重量部を加えて混合したのち、希釈溶媒(T475)を21.0重量部加えて希釈し、加飾印刷物用のインキ組成物Z4を作成した。
これらインキ組成物Ref、X1〜X7、Y1〜Y4、Z1〜Z4を用いた加飾印刷物の作成は、前記した実施の形態の場合と同様の方法で行った。
ここで、着色成分が黒色顔料以外の顔料を含む場合、着色成分が黒色顔料のみである場合に比べてインキ被膜の色濃度が小さくなる。そのため、着色成分が黒色顔料である場合のように、加飾印刷物におけるスピン調の模様の視認性の評価を輝度比のみで行うと、求めた輝度値の誤差が大きいため、正確な評価が難しい。そこで、実施の形態では、トプコン製色差輝度計を用いて求めた輝度比に基づく評価に加えて、目視によるスピン調の模様の視認性評価を行っている。
なお、スピン調の模様の目視による視認性は、4段階(良好:◎、良:○、やや悪い:△、不良:×)で評価した。そして、目視評価にあたり、インキ組成物Refを用いて作成した加飾印刷物におけるスピン調の模様の視認性を基準(良好:◎)としている。
これは、青色顔料の含有量が多くなると、インキ被膜の着色成分の色濃度が黒色顔料のみからなるインキ被膜の色濃度よりも低くなるためであると考えられる。
顔料/バインダ比が高くなると、インキ被膜の色濃度が高くなるためであると考えられる。
X7から明らかなように、かかる場合にも、顔料を添加して顔料/バインダ比を大きくすると、輝度比とスピン模様の視認性を、着色成分が黒色顔料のみの場合(Ref)と略同等にできることが確認された。
赤色顔料の場合、Y2とY3の比較から、顔料を増やして顔料とバインダの比率(顔料/バインダ比)を高くすると、輝度比の値が高くなると共に、スピン模様の視認性が向上することが確認された。
このことから、紫色顔料の場合についても、顔料/バインダ比を高くすることで、輝度比とスピン模様の視認性を向上させることができると推測される。
なお、同色系の顔料であっても、顔料の種類により、黒色顔料と混合した場合に得られる最終的な加飾印刷物の色調が異なるので、黒色顔料と混合する着色顔料を代えることや、同色系の顔料同士を混合することで、より多くの異なる色調を備えた加飾印刷物を提供できる。よって、このことによっても、スピン調の模様の視認性に優れると共に、装飾性に優れた加飾印刷物を提供できる。
さらに、着色顔料は、有機顔料と無機顔料の何れも利用可能である。また、インキ被膜の色濃度が、上記の実施形態および変形例に例示された着色顔料からなるインキ被膜と同等であれば、顔料に代えて、染料を着色成分として含むようにしても良い。
さらに、上記の変形例では、インキ組成物(インキ被膜)の着色成分が、2種類の着色顔料の混合物である場合を例示したが、複数種類の着色顔料の混合物であっても良い。
1a 表面
1b 裏面
2 極細溝
2a 斜面
3 インキ皮膜
CB カーボンブラック
V バインダ樹脂
Claims (4)
- 複数の溝からなる凹凸模様が裏面に形成された光透過性の樹脂基板と、
前記凹凸模様を覆うインキ被膜と、を備え、
前記凹凸模様を前記樹脂基板の表面側から視認可能とした加飾印刷物であって、
前記インキ被膜は、前記裏面に塗布したインキ組成物から溶媒成分を乾燥除去して形成されると共に、前記インキ組成物は、着色成分としての着色顔料と、接着成分としてのバインダ樹脂とを含み、
前記着色顔料の前記バインダ樹脂に対する比率を、前記インキ被膜における前記着色顔料の分布が、前記樹脂基板の表面から入射した光を前記樹脂基板と前記インキ被膜との界面で反射させる分布になる値に設定し、
前記インキ被膜では、前記着色顔料の前記バインダ樹脂に対する比率が、0.27以上1.40以下に設定されており、
前記着色顔料は、黒色顔料と青色顔料と赤色顔料と緑色顔料と黄色顔料のうちの少なくともひとつであり、
前記黒色顔料はカーボンブラックであり、前記青色顔料はフタロシアニンブルーであり、
前記赤色顔料はピオニーレッドであり、前記緑色顔料はフタロシアニングリーンであり、前記黄色顔料はパーマネントレモンイエローであることを特徴とする加飾印刷物。 - 前記インキ組成物は、
第1の溶媒と、
前記樹脂基板の溶解性が前記第1の溶媒よりも高い第2の溶媒と、を溶媒成分として含み、
前記第1の溶媒の前記第2の溶媒に対する比率を、
前記インキ組成物の塗布から前記溶媒成分の乾燥除去までの間で、前記凹凸模様が前記溶媒成分により損なわれない比率に設定したことを特徴とする請求項1に記載の加飾印刷物。 - 前記第1の溶媒は、
ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサンからなる群から選択された少なくともひとつであり、
前記第2の溶媒は、
シクロヘキサノン、1,3,5トリメチルベンゼン、1,2,4トリメチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、イソホロン、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼンからなる群から選択された少なくともひとつであることを特徴とする請求項2に記載の加飾印刷物。 - 光透過性の樹脂基板の裏面に所定の溝を設けて凹凸模様を形成するステップと、
着色顔料を着色成分として含むインキ組成物を、前記樹脂基板の裏面に塗布するステップと、
前記インキ組成物の溶媒成分の乾燥除去により、前記凹凸模様を覆うインキ被膜を形成するステップと、を備え、
前記着色顔料の前記バインダ樹脂に対する比率を、前記インキ被膜における前記着色顔料の分布が、前記樹脂基板の表面から入射した光を前記樹脂基板と前記インキ被膜との界面で反射させる分布になる値に設定し、
前記インキ被膜では、前記着色顔料の前記バインダ樹脂に対する比率が、0.27以上1.40以下に設定されており、
前記着色顔料は、黒色顔料と青色顔料と赤色顔料と緑色顔料と黄色顔料のうちの少なくともひとつであり、
前記黒色顔料はカーボンブラックであり、前記青色顔料はフタロシアニンブルーであり、前記赤色顔料はピオニーレッドであり、前記緑色顔料はフタロシアニングリーンであり、前記黄色顔料はパーマネントレモンイエローであることを特徴とする加飾印刷物の製法。
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