JP4348948B2 - 吸放湿性材料の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高湿時には環境空気中の水分を吸収する一方、低湿時には吸収していた水分を環境空気中に放散することにより、環境空気中の湿度の変動を緩和する機能を有する吸放湿性材料に関するものであり、特に建築物の内装材などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
現代の建築物は、鉄筋コンクリート構造やプレハブ工法の普及、樹脂加工合板等の合成材料からなる新建材や扉及び窓における金属サッシの発達等によって、かつての純日本建築と比較すれば著しく気密性の高いものとなっている。係る建築物の高気密性は、冷暖房効果の向上によるエネルギー資源の節約や、防音性の向上による近隣騒音公害の防止などの観点からは、大変に望ましいものであると言うことができる。
【0003】
しかしその反面、室内における居住者の生活活動(人間の呼気、炊事、風呂・シャワー等)が発生する湿気が、室外に逃げられずに室内に籠もり易く、行き場を失った湿気が壁面や窓ガラス、窓枠サッシ等の表面に結露して、美観上及び触感上望ましくないのみならず、建築材料の汚損や腐蝕の原因となって、建築物の寿命を縮める要因ともなり兼ねないという問題がある。
【0004】
この問題の解決策としては、建築物に強制換気装置又は空気調和装置等を設置して、室内の湿度を常に一定範囲内に保つ方法なども、一部で研究されてはいるが、廊下や収納空間等も含めた建築物内部全体を対象に強制換気又は空気調和させる為には、初期の設備投資負担が著しく重くなることに加えて、夜間や外出時も含めて設備を24時間稼働させると電気代の負担も重く、設備の保守点検の手間や費用もかかることから、一般家庭用としてはあまり現実的な方法であるとは考えられていない。
【0005】
そこで、上記の様な特殊な設備によらずに室内の湿度を調節する方法として、高湿時には環境空気中の水分を吸収する一方、低湿時には吸収していた水分を環境空気中に放散する機能を有する、吸放湿性材料を室内に設置することで、室内の湿度変動を緩和する方法が考案されている。この吸放湿性材料の設置の態様としては種々考えられるが、吸放湿機能を迅速且つ十分に発揮するためには、環境空気と接触する表面積が大きいほど有利であると考えられることから、建築物の室内において大きな表面積を占める壁面や天井面等を、吸放湿性材料を使用した壁紙等の内装材で仕上げる方法が、最も有望視されている。
【0006】
上記の吸放湿性材料を使用した壁紙として具体的には例えば、難燃紙等の裏打紙の上にポリ塩化ビニル樹脂等の発泡樹脂層を設けた通常の壁紙において、発泡樹脂層に例えばシリカゲル又はゼオライト等の吸湿性無機粉体や、アクリル系樹脂又はポリビニルアルコール系樹脂等の高吸水性ポリマー等の吸放湿性物質を配合することによって、樹脂層に吸放湿性を具備させたものなどが考案されている(特許文献1、2)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭60−81378号公報
【特許文献2】
特開平1−229898号公報
【0008】
しかし、吸放湿性物質を配合する樹脂層を構成する樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂の様な疎水性の強い樹脂を使用すると、樹脂層の内部に存在する吸放湿性物質は、疎水性の樹脂に妨げられて外部との間での水分のやり取りが出来ないため、実質的に樹脂層の表面に存在する吸放湿性物質だけしか吸放湿性能を有効に発現することが出来ず、極めて効率が悪いという問題がある。
【0009】
そこで、吸放湿性物質を配合する樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂の様な疎水性の強い樹脂に代えて、水溶液又は水分散液の形で塗工可能な水性樹脂を用いた吸放湿性壁紙の提案も、既にある(特許文献3、4参照)。特に、微細樹脂粒子の水分散液である水性エマルジョン系樹脂を用いたものは、乾燥塗膜の微多孔質構造に起因して、透湿度の高い樹脂層が形成されるため、樹脂層の表面のみならず内部に存在する吸放湿性物質にも、効果的に吸放湿性能を発揮させ易いという利点がある。
【0010】
【特許文献3】
特開平9−123339号公報
【特許文献4】
特開平10−128892号公報
【0011】
しかし、水を溶媒又は分散媒とする水性樹脂塗工剤に、高吸水性ポリマーや吸湿性無機粉体等の吸放湿性物質を配合して塗工しようとすると、これら吸放湿性物質が塗工剤中の水分を吸収するために、塗工剤が溶媒又は分散媒としての水分の一部を失って増粘ないしゲル化して、塗工状態が不安定になったり、極端な場合には塗工不能となってしまったりするという問題がある。
【0012】
この問題の回避策として、吸放湿性物質に予め飽和するまで水を吸収させてから塗工剤中に配合する方法の提案もある(特許文献4)。しかし、特に高吸水性ポリマーは、水で飽和させると数十倍ないし数百倍にまで膨潤してゲル状体となるため、これを塗工剤中に分散して塗工することは必ずしも容易ではない。
【0013】
さらに、吸湿性無機粉体にしても高吸水性ポリマーにしても、塗工後の塗膜の乾燥工程において、塗工液の溶媒又は分散媒としての水分に加えて、これらの吸放湿性物質が吸収していた水分を乾燥させるために、多くの熱量や乾燥時間を必要とし、生産効率が悪いことや、溶媒又は分散媒としての水分が蒸発して除去された後になっても、それよりも蒸発速度の遅い、吸放湿性物質が吸収していた水分が、徐々に放出されることにより、塗膜に膨れを発生し易いことなどの問題もある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記のような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、吸放湿性物質を水性樹脂塗工液中に分散して塗工する吸放湿性材料の製造方法において、該塗工液の増粘やゲル化等の問題を発生することなく良好に塗工可能であり、しかも塗工後の塗膜の乾燥のために過大な熱量や乾燥時間を要したり乾燥後の塗膜に膨れを発生したりすることなく、安定した品質で生産性よく製造可能な吸放湿性材料の製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の吸放湿性材料の製造方法は、非透水性の殻の内部に、吸水性物質及び吸湿性物質を少なくとも含む吸放湿媒体を内包したマイクロカプセルを、水性樹脂の溶液又は水分散液中に分散してなる水性樹脂塗工剤を、基材上に塗布し乾燥させて塗膜を形成した後、前記塗膜中のマイクロカプセルの少なくとも一部の殻を破壊して、該マイクロカプセルに内包された吸放湿媒体を殻の外に露出させて、吸放湿性樹脂層を形成することを特徴とするものである。
【0016】
特に、前記マイクロカプセルの殻の破壊を、加熱により、又は加圧により、若しくはそれらの併用により行うことを特徴とするものであり、さらには、前記マイクロカプセルの殻は熱可塑性樹脂からなり、前記加熱は該熱可塑性樹脂の融点以上の温度にまで加熱することを特徴とするものである。
【0017】
また特に、前記水性樹脂塗工剤にさらに発泡剤を配合し、塗膜の形成後に発泡させることを特徴とするものであり、さらに、前記発泡は加熱により行い、該加熱により該発泡と同時に前記マイクロカプセルの殻の破壊を行うことを特徴とするものであり、またさらには、前記マイクロカプセルの殻は熱可塑性樹脂からなり、前記発泡の際の加熱は該熱可塑性樹脂の融点以上の温度にまで加熱することを特徴とするものである。
【0018】
また特に、前記塗膜の表面にエンボス加工を施すことを特徴とするものであり、さらに、前記エンボス加工の際の加圧により、前記マイクロカプセルの殻の破壊を行うことを特徴とするものであり、またさらに、前記エンボス加工は加熱エンボス加工であり、該加熱エンボス加工の際の加熱及び加圧により、前記マイクロカプセルの殻の破壊を行うことを特徴とするものであり、またさらに、前記マイクロカプセルの殻は熱可塑性樹脂からなり、前記加熱エンボス加工の際の加熱は該熱可塑性樹脂の融点以上の温度にまで加熱することを特徴とするものである。
【0019】
また特に、前記マイクロカプセルは、前記吸放湿性樹脂層の表面近傍に濃集していることを特徴とするものである。また特に、前記吸放湿性樹脂層の表面に、透湿性の保護層を設けることを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に従って吸放湿材料を製造するには、まず、吸放湿媒体を非透水性の殻内に内包したマイクロカプセルを用意する。吸放湿媒体は、吸水性物質及び吸湿性物質から選ばれる一方又は両方を少なくとも含むことが必要であり、その他に例えばバインダー樹脂や安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0021】
吸水性物質は、水酸基やカルボキシル基等の親水性の官能基を多く含む比較的疎な構造の物質であって、自身の体積を越える多量の水分を内部に吸収貯蔵可能な物質であればよく、具体的には公知の一般的な高吸水性ポリマー等が用いられる。
【0022】
この高吸水性ポリマーとしては、例えば、澱粉−アクリル酸グラフト重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体、ポリビニルアルコール架橋重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、アクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体鹸化物等が用いられる。
【0023】
また、馬鈴薯澱粉やデキストリン類、コラーゲン(膠質)、ゼラチン、カゼイン、キトサン等の天然物を用いることもでき、これらの吸水性物質はそれぞれを単独で、または2種以上を任意に混合して使用することができる。
【0024】
吸湿性物質は、例えばシリカゲル、ゼオライト、ラジオライト、珪藻土、焼成タルク等の様に、大きな比表面積を有する多孔質の親水性無機物質の粒子からなる物質であって、これらの吸湿性物質はそれぞれを単独で、または2種以上を任意に混合して使用することができる。
【0025】
上記の吸水性物質と吸湿性物質とは、そのいずれかのみを使用してもよいが、前者は飽和吸水量は非常に多いが湿度(水蒸気)に対する吸放湿速度は遅く、後者は吸放湿速度は速いが飽和吸湿(水)量はあまり多くないので、いずれか単独では十分な性能が得られにくい場合が多い。
【0026】
これに対し、吸水性物質と吸湿性物質とを併用すると、高湿時には、環境空気中の水蒸気を吸湿性物質が積極的に吸収して液体状に凝結させ、これを吸水性物質に受け渡して貯蔵させる作用をなし、一方低湿時には逆に、吸水性物質が貯蔵していた水分を吸湿性物質が受け取って環境空気中に気化蒸散させる作用をなすことにより、飽和吸湿量及び吸放湿速度の両面に優れた吸放湿性材料を用意に得ることができる利点がある。
【0027】
これら吸水性物質及び/又は吸湿性物質を含む吸放湿媒体を被覆する殻の材質は、例えばポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエーテル系樹脂等、又はそれらの共重合体、ブレンド物等の熱可塑性樹脂が用いられるのが一般的である。
【0028】
これらの熱可塑性樹脂によって吸放湿媒体を被覆する殻を形成する方法としては、例えば界面重合法、in situ重合法、コアセルベーション法、液中乾燥法、気中懸濁法、噴霧乾燥法等が知られているが、粒子を確実に形成するには、界面重合法若しくはin situ重合法が好ましい。
【0029】
上記各種の方法の中でも、マイクロカプセルの製造に最も一般的に用いられているのは界面重合法であり、この製法において使用される殻の構成材料としては、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、又はそれらの共重合体若しくはブレンド物が好ましい。
【0030】
いずれの製法や材料による場合であっても、殻の構成材料である樹脂自体が水溶性である場合には、架橋等の手段を用いて水不溶化させる必要がある。水溶性樹脂の水不溶化の手段としては公知の技術を用い、例えばイソシアネート化合物又はエポキシ化合物等の架橋剤を共存させ、各架橋剤の架橋条件にあわせて架橋構造をとらせることができる。
【0031】
殻の構成材料の選択は、内包物質である吸放湿媒体の構成材料との相性を考慮しつつ適宜に選択すればよい。両者の重量比率としては、殻が10〜90重量%、より好ましくは10〜60重量%、吸放湿媒体が10〜90重量%、より好ましくは40〜90重量%の範囲内とすることが好ましい。
【0032】
マイクロカプセルの粒径については、本発明において特に制限はないが、あまり小さすぎると、マイクロカプセル自体の製造が困難であるほか、加熱や圧力等による殻の破壊も困難となって、本発明の目的が達成できなくなる場合があり、逆にあまり大きすぎると、水性樹脂塗工剤中への分散が困難となったり、塗工適性が悪化したり、塗膜の表面が極端に粗面化したりする原因となるので、一般的には、平均粒径0.1〜100μm程度とすることが望ましい。
【0033】
なお、上記の様に高吸水性ポリマー等を非透水性の熱可塑性樹脂からなる殻の内部に内包したマイクロカプセル自体は、例えば特開昭62−220631号や特開平10−279909号等に見られる様に、既に公知である。
【0034】
また、これに類似したものに、特開平11−76815号公報に示される如く、多数の微細孔を設けた殻の内部に吸放湿媒体を内包したマイクロカプセルも知られているが、この様に殻が多孔質のものは一般的には、本発明の目的にはそぐわない。殻の微細孔から侵入した水分を吸放湿媒体が吸収することにより、水性樹脂塗工剤の増粘やゲル化の原因となったり、水分を吸収して膨潤した吸放湿媒体が殻の微細孔から殻外へ滲み出したり、あるいは該膨潤による内圧に耐えられずに殻が破壊されてしまったりするおそれがあるからである。
【0035】
以上の様にしてマイクロカプセルを用意したら、次に、それを水性樹脂の水溶液又は水分散液中に分散して、水性樹脂塗工剤を調製する。
【0036】
上記水性樹脂として具体的には、例えば水溶塩型アクリル系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カゼイン、セルロース誘導体、デキストリン類等の水溶性樹脂や、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、シリコーン系樹脂、ポリブテン系樹脂等の非水溶性樹脂粒子を水中に分散してなる水性エマルジョン系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物等を使用することができる。
【0037】
なお、上記水性樹脂が水溶性樹脂を少なくとも含む場合には、製造される吸放湿性材料が水に濡れることがあっても塗膜が溶解することがない様に、例えばメラミン化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ヒドラジン誘導体、アジリジン、有機過酸化物等の架橋剤を添加したり、或いは電子線等の電離放射線を照射する等の手段により、塗工後に塗膜中の樹脂を架橋させて水不溶化させることが望ましい。
【0038】
上記水溶性樹脂と水性エマルジョン系樹脂とを比較すると、塗工液の安定性や塗工乾燥後の表面物性、微多孔質状となることによる高透湿性などの面で、水性エマルジョン系樹脂の採用が望ましい。また、係る水性エマルジョン系樹脂を、架橋剤の配合又は電離放射線照射等により、塗工後に架橋させてもよいことも勿論である。
【0039】
上記水性樹脂塗工剤中への前記マイクロカプセルの添加量は、本発明において特に制限されるものではないが、あまり少なすぎると十分な吸放湿効果が得られず、逆にあまり多すぎても、相対的にバインダー樹脂分が少なくなるために塗膜が脆くなり、表面強度が低下する原因となるので、一般的には水性樹脂の固形分100重量部に対して10〜200重量部程度、さらに好ましくは30〜150重量部程度の範囲内とすることが好ましい。
【0040】
この水性樹脂塗工剤には、前記マイクロカプセルの他、必要に応じて例えば着色剤、充填剤、分散剤、消泡剤、湿潤剤、増粘剤、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、減摩剤、艶調整剤、抗菌剤、防黴剤等の種々の添加剤を適宜添加することもできる。
【0041】
また、機械発泡法又は発泡剤を添加する方法等の従来公知の手段により、塗膜を多孔質の細胞状に発泡させてもよく、そうすることによって、塗膜の透湿性を更に向上させて、吸放湿機能を更に存分に発揮させることもできる。また、本発明の吸放湿性材料を住宅等の建築物における壁紙等の内装材に使用する場合には、水性樹脂塗工剤の塗膜を発泡させることでエンボスによる凹凸模様の形成を容易にし、意匠性にも優れた内装材を容易に得ることができる利点もある。
【0042】
上記発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(ADCA)等のアゾ系化合物、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等のニトロソ化合物等の有機発泡剤や、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機発泡剤等の熱分解型化学発泡剤や、例えばポリアクリロニトリル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱軟化性柔軟性殻体の内部にイソブタン等の低沸点液体を内包してなる熱膨張型マイクロカプセル発泡剤等を使用することができる。
【0043】
上記発泡剤の添加量は、本発明において特に制限されるものではないが、一般的には水性樹脂の固形分100重量部に対して1〜20重量部程度を添加することが好ましく、更に好ましくは3〜10重量部である。1重量部に満たない場合には、発泡倍率が低く、吸放湿機能の向上効果もあまり期待できず、またエンボスの凹凸模様による意匠性の向上も困難である。一方、20重量部を越えると、発泡セルが著しく粗雑な状態となり、発泡後の塗膜の表面強度が弱くなってしまうからである。
【0044】
以上の様にして水性樹脂塗工剤を調製したら、それを適宜の基材の表面に塗工して塗膜を形成する。塗工対象物である基材の材質や形状については、本発明において何ら制限されるものではなく、製造する吸放湿性材料の用途に応じて適宜選定すればよい。
【0045】
基材として使用可能な材料の例を挙げれば、例えば紙、織布又は不織布等の繊維質シートや、ポリオレフィン系樹脂シートやポリエステル系樹脂シート、アクリル系樹脂シート等の合成樹脂シート、合成ゴムシート、アクリル樹脂板やポリカーボネート樹脂板、ABS樹脂板、FRP等の合成樹脂系基材、合板や集成材、木質繊維板、パーティクルボード等の木質系基材、鋼板や真鍮板、ステンレス板、アルミニウム板等の金属系基材、石膏ボードや珪酸カルシウム板、セメント板、コンクリート板等の無機質系基材等、或いはそれらの複数種の積層体等である。
【0046】
また、基材の表面には必要に応じて、例えば目止め処理、ベースコート処理、研磨処理、プライマー処理、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、火炎処理、電離放射線処理、酸処理、アルカリ処理等の適宜の表面処理が施されていてもよい。
【0047】
特に、本発明の吸放湿性材料を壁紙として使用する場合には、従来より合成樹脂系壁紙(いわゆるビニル壁紙)用の基材として使用されていた任意のシート状の材料が使用可能である。
【0048】
具体的には例えば、木質パルプ等のセルロース系繊維からなる抄造紙にスルファニル酸グアナジン又はリン酸グアナジン等の水溶性難燃剤を含浸させたパルプ紙系難燃紙や、セルロース系繊維の抄紙時に炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の無機質剤を混抄した無機混抄紙、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維等の無機繊維を単独で又はセルロース系繊維と混合して抄造した無機繊維紙等の難燃紙乃至不燃紙や、同じく難燃剤や無機質剤を添加し又は無機繊維を用いて製造した難燃性乃至不燃性の織布又は不織布等、何れも使用可能である。
【0049】
水性樹脂塗工剤を基材上に塗工する方法としては、例えばナイフコート法、エアーナイフコート法、ノズルコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロータリースクリーンコート法、リバースロールコート法、コンマコート法、リップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法等、従来公知の任意の塗工方法が採用可能であり、塗工後の乾燥方法としては、例えば熱風または赤外線ヒーター等の熱源をそれぞれ単独若しくはこれらの複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
水性樹脂塗工剤の塗布量は、本発明において特に限定されるものではないが、あまり薄すぎると含まれる吸放湿媒体の絶対量が少ないために十分な吸放湿効果が得られず、一方逆にあまり厚すぎても底層部に含まれる吸放湿媒体が実質的に機能せずに材料の無駄となってしまうので、これらを考慮して適宜設計する必要がある。
【0051】
一般的には、十分な吸放湿効果を得るためには、少なくとも厚さが10μm以上の塗膜を形成する必要があり、さらに好ましくは30μm以上である。一方、厚みの上限については、塗膜の透湿度にも依存するが、透湿度を向上させにくい非発泡層とする場合には概ね300μm程度、高い透湿度を容易に得やすい発泡層とする場合には概ね2000μm程度を、それぞれ上限とするのがよい。
【0052】
こうして水性樹脂塗工剤を塗工し、十分に乾燥させて塗膜を形成したら、該塗膜中に含まれる吸放湿媒体を内包したマイクロカプセルのうち、少なくとも一部のマイクロカプセルの殻を破壊して、該マイクロカプセルに内包された吸放湿媒体を殻の外に露出させる処理を施す。この処理を施すことによって、吸放湿媒体が外気中の水蒸気を吸収したり、又は吸収していた水分を水蒸気として外気中へ放散したりすることが可能となり、塗膜は吸放湿機能を獲得して吸放湿性樹脂層となる。
【0053】
マイクロカプセルの殻の破壊は、塗膜に含まれる全てのマイクロカプセルに対して実施できれば最も理想的であるが、実際には全てのマイクロカプセルの殻を破壊し尽くすことはあまり現実的ではないから、実用上十分な吸放湿性機能が発現する様に、出来るだけ多くのマイクロカプセルの殻を破壊すればよい。
【0054】
マイクロカプセルの殻の破壊方法については、本発明において特に制限されることなく任意の方法を適用して構わないが、最も一般的なのは加熱による方法と加圧による方法である。勿論その両者を併用することも可能である。
【0055】
前者の加熱による方法の原理には主として次の2通りがある。その第1は、殻を構成する熱可塑性樹脂が溶融して流動し、殻の厚みが不均一となって最終的には孔があく現象を利用するものである。この場合には、少なくとも殻を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱する必要がある。また、殻を構成する熱可塑性樹脂を架橋させ過ぎると、溶融粘度が高くなって流動しにくくなるので、架橋はさせないか又は控え目にしておくことが有利である。
【0056】
また第2は、殻と内包物との熱膨張差を利用するもので、内包物である吸放湿媒体の熱膨張率が殻の熱膨張率より大きく、しかも殻の伸びが小さい場合には、加熱による吸放湿媒体の膨張に殻が追従できずに割れる現象を利用するものである。この場合には、殻が熱膨張しにくく且つ伸びにくくなる様に十分に架橋させてやる必要があるが、架橋させすぎたり又は殻が厚すぎたりすると、殻の強度が増して加熱しても割れにくくなるので、殻の架橋密度と厚さの設計に十分な配慮が必要である。
【0057】
後者の加圧による方法は、要するに、マイクロカプセルに圧力を掛けて圧し潰す方法である。この方法による場合は、殻は伸びが少なく脆く割れ易いことが有利であり、このためには、分子鎖の絡み合いの少ない低分子量の樹脂や、分子内架橋等により団子状になった分子からなる樹脂を使用するか、若しくは分子間を十分に架橋させて伸びにくくすることが有利である。但し、架橋させすぎたり殻が厚すぎたりすると、殻の強度が増して加圧しても割れにくくなるので、注意が必要である。
【0058】
また、より効率良くマイクロカプセルの殻を破壊するためには、加熱と加圧とを併用する方法が有効である。上記した殻の溶融流動を利用するタイプの場合には、加圧が溶融した殻の流動を促進し、孔があきやすくなる。また、後者の熱膨張差を利用するタイプの場合にあっても、熱膨張差による応力に加圧による応力が加わって、殻が割れ易くなるからである。
【0059】
塗膜の加圧は、平圧方式で行っても構わないが、特に基材がシート状である場合には、連続生産性を考慮して、円圧(ロールプレス)方式が採用される場合が多い。この場合、シートがロール間を通過する際に、塗膜の表面とロールの表面との間には、かなり大きな摩擦力が発生し、この摩擦力は、少なくとも塗膜の表面近傍に存在するマイクロカプセルの殻の破壊を促進する作用をなす。
【0060】
この作用は、前述した殻の溶融流動を利用するタイプのマイクロカプセルを使用し、加熱を併用する場合に、特に顕著である。従って、殻を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱しつつ加圧する方法によることが、殻の破壊方法としては最も効率が高い。
【0061】
但し、上記の作用は、塗膜の底層部に存在するマイクロカプセルには殆ど及ばないので、あまりこの作用に頼ると、結果的に吸放湿機能に寄与せずに無駄になるマイクロカプセルが増えることになる。この無駄を低減するためには、吸放湿媒体を内包するマイクロカプセルを、塗膜中においてその表面近傍に濃集させてやるとよい。
【0062】
その方法としては、水性樹脂塗工剤の主成分である水性樹脂の水溶液又は水分散液よりも比重の小さいマイクロカプセルを使用して、塗工後の塗膜中で重力の作用によりマイクロカプセルを表面に浮揚させる方法や、マイクロカプセルの表面にシリコーン化合物や脂肪酸誘導体等の疎水性物質を付着させる等して疎水性を付与しておき、水との反撥作用を利用してマイクロカプセルを塗膜表面に浮揚させる方法などを用いることができる。
【0063】
なお、殻の破壊方法の種類を問わず、吸放湿媒体を内包したマイクロカプセルが塗膜の表面近傍に濃集していれば、外気との間での吸放湿に対するバインダー樹脂の阻害が少ないため、同一の量のマイクロカプセルを使用しても、吸放湿速度や飽和吸湿量をより向上させることができるので有利である。
【0064】
水性樹脂塗工剤に発泡剤を配合し、塗工後に加熱により発泡させる場合には、該発泡時の加熱により、塗膜の発泡と同時にマイクロカプセルの殻の破壊を行うこともできる。例えば、殻が熱可塑性樹脂からなるマイクロカプセルを使用して、その融点以上の温度で加熱発泡を行うことにより、発泡と同時にマイクロカプセルの殻を破壊して、吸放湿機能を発現させることができる。
【0065】
水性樹脂塗工剤の塗工後、その塗膜の表面には、凹凸模様による立体的な意匠感を付与するために、金属製等のエンボス版又はエンボスロール等を使用して加圧することによるエンボス加工を施すことができる。そしてその際には、該エンボス加工時の加圧を利用して、マイクロカプセルの殻の破壊を行うことにより、凹凸模様の付与と同時に吸放湿機能を発現させることもできる。
【0066】
上記エンボス加工は、常温で行われる場合もあるが、一般的には、塗膜を熱により軟化させて容易に凹凸模様を成形可能とするために、加熱下で行われる場合(加熱エンボス加工)が多い。そして、該加熱エンボス加工時の加熱及び加圧により、マイクロカプセルの殻の破壊を行うことにより、加熱の効果と加圧の効果との相乗効果により、極めて効率的に殻を破壊させることができる。
【0067】
例えば、殻が熱可塑性樹脂からなるマイクロカプセルを使用して、その融点以上の温度で加熱エンボス加工を行うことにより、加熱エンボス加工と同時にマイクロカプセルの殻を破壊して、吸放湿機能を発現させることができる。
【0068】
水性樹脂塗工剤の塗膜に、上記加熱発泡及び加熱エンボス加工の双方の処理を施す場合には、まず加熱発泡させ、しかる後に加熱エンボス加工を行うのが一般的である。そして、後者の加熱エンボス加工は、前者の加熱発泡よりも高温且つ短時間で行われるのが一般的である。
【0069】
この場合、マイクロカプセルの殻の破壊は、先の工程である加熱発泡工程において既に行われる様にすることも出来るし、或いは、加熱発泡の際には殻を破壊させない温度範囲で行うことにより、殻が未破壊の発泡層を形成し、しかる後に、加熱エンボス加工の工程において、加熱及び加圧により殻を破壊させるようにしてもよい。
【0070】
しかし、上記両者を比較すると、前者の方法によると、加熱発泡工程において殻が破壊され、殻から露出して発泡層のバインダー樹脂中に分散した吸放湿媒体が、後の加熱エンボス工程において、溶融したバインダー樹脂によって周囲を包囲された形で圧密される結果、得られる吸放湿効果が減殺される場合がある。
【0071】
これに対し、後者の方法によれば、加熱発泡の際には殻が未破壊の状態を保持したマイクロカプセルが、塗膜の発泡の作用により発泡層の表面近傍に押し上げられ、その後の加熱エンボス工程において、短時間の加熱及び加圧により、周囲の発泡層との関係を大きく変更しないまま、マイクロカプセルの殻が破壊されて吸放湿媒体が露出する結果、優れた吸放湿効果を発現し易い利点がある。
【0072】
本発明の製造方法によって得られる吸放湿性材料は、マイクロカプセルに内包された吸放湿媒体が、該マイクロカプセルの殻の破壊により露出しているとは言っても、該マイクロカプセル自体が吸放湿性樹脂層中に分散状態で存在していることに加え、吸放湿媒体の表面のうちの多くの部分が殻の残骸で被覆されていることから、単に高吸水性ポリマーの分散液を表面に塗布した場合等に比較すれば、高湿時や水濡れ時の表面のべとつきは遥かに少ない。
【0073】
しかし、それでも高湿時や水濡れ時の表面のべとつき等の問題が気になる場合には、上記の様にして得た吸放湿媒体を内包するマイクロカプセルを含む吸放湿性樹脂層の表面に、透湿性の保護層を設けることもできる。この透湿性の保護層は、着色した水分を吸放湿媒体が吸収することによる変色を防止し、耐汚染性を向上させる効果をも有する。
【0074】
上記透湿性の保護層は、それ自体は水に溶けたり吸水により膨潤したりすることのない程度の耐水性を有しつつ、吸放湿媒体を内包したマイクロカプセルを含む下地の塗膜と外気との間での水蒸気の流通を妨げない程度の透湿性を有する材質であればよく、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリブテン系樹脂等を使用することができ、これらの2種以上の混合物や積層被膜等であってもよい。
【0075】
透湿性の保護層の厚さは、薄過ぎると防水性が不十分となってべとつき防止や汚染防止等の効果を十分に得ることができず、一方厚過ぎても透湿度が低下して吸放湿性能を減殺する原因となるので、両者を勘案して適宜設計する必要があり、一般的には0.5〜20μm程度の範囲内で設計することが好ましい。
【0076】
上記透湿性の保護層を形成する時期には一切制限はなく、水性樹脂塗工剤の塗工後、マイクロカプセルの殻の破壊前であっても破壊後であっても良いし、発泡させる場合は発泡前であっても発泡後であってもよく、また、エンボス加工を施す場合はその前であっても後であってもよい。さらに、多層塗工法により水性樹脂塗工剤の塗工と同時に塗工形成してもよい。このほか必要に応じて、吸放湿性樹脂層の表面及び/又は透湿性の保護層の表面に、適宜の絵柄の印刷を施したりしてもよい。
【0077】
【実施例】
以下に本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明する。
【0078】
参考例1
<マイクロカプセルの調製>
水100重量部に平均粒径0.7μmのシリカゲル粉末を30重量部分散したものをセパラブルフラスコに仕込み、窒素を吹き込み空気を置換した。これを80℃に昇温し、ジアミノエチルメタクリレート80重量部を添加し、80℃で1時間懸濁させた。その後、8%の過硫酸アンモニウム水溶液を1時間かけて滴下し、その後2時間80℃を保ち、シリカゲル粉末を内包し平均粒径約1μm、殻の融点約180℃、固形分50重量%のマイクロカプセルの水分散液を得た。
【0079】
<水性樹脂塗工剤の調製>
上記のマイクロカプセルの水分散液100重量部を、固形分50重量%、固形分樹脂の融点約170℃のアクリル系樹脂水性エマルジョン100重量部と混合したところ、増粘したりゲル化したりすることなく、良好な塗工適性を有する水性樹脂塗工剤が得られた。
【0080】
<吸放湿性材料の作製>
上記水性樹脂塗工剤を、通常の壁紙用裏打紙の表面に、乾燥後の塗布厚100μmに塗布し、100℃で3分間乾燥させた。その際の乾燥条件は、マイクロカプセルを配合していない塗工剤を同厚で塗工した場合と同等の条件で、迅速且つ十分に乾燥可能であり、乾燥後の表面状態も良好であった。しかる後、250℃30秒間の条件で加熱エンボス加工を施して、凹凸模様を賦形すると同時にマイクロカプセルの殻を破壊して、本発明の吸放湿性材料を作製した。
【0081】
比較例1
上記マイクロカプセルに代えて、その作製に使用したものと同一のシリカゲル粉末100重量部を、上記アクリル系樹脂水性エマルジョン100重量部と混合したところ、液がゲル化して塗工不可能となった。そこで、シリカゲル粉末の配合量を減らしながら塗工可能な水性樹脂塗工剤が得られる条件を探したところ、アクリル系樹脂水性エマルジョン100重量部当たりシリカゲル粉末10重量部が限度であることが分かった。そこで、この配合比率で水性樹脂塗工剤を調製し、以下上記実施例1と同一の条件で吸放湿性材料を作製した。
【0082】
参考例2
上記比較例1との対照のため、上記参考例1において、アクリル系樹脂水性エマルジョン100重量部に対するマイクロカプセルの配合量を10重量部に減じ、その他は上記参考例1と同一の条件で本発明の吸放湿性材料を作製した。
【0083】
吸放湿試験
上記実施例1、2及び比較例1の吸放湿性材料について、まず25℃50%RHの環境下で24時間養生した後、25℃90%RHの環境下に入れて、経時による重量変化を求め、十分に飽和したと認められた120時間後に、25℃50%RHの環境下に戻し、さらに経時による重量変化を求めた。その結果を図1のグラフに示す。但し、吸湿量は、最初の養生の完了時の重量を基準にした、その後の吸湿後の重量増加量である。
【0084】
このグラフに示されるとおり、配合量が同じであれば、マイクロカプセル化したもの(実施例2)としていないもの(比較例1)とでは、吸放湿効果の差は殆ど無いことが確認できた。そして、前者は後者よりも大量に配合可能であり(実施例1)、それにより後者よりも遥かに大きな吸放湿機能の付与が可能であるという優位性が実証された。
【0085】
参考例3
<水性樹脂塗工剤の調製>
上記参考例1において調製したマイクロカプセルの水分散液100重量部と、固形分50重量%、固形分樹脂の融点約170℃のアクリル系樹脂水性エマルジョン100重量部と、ポリアクリロニトリル系樹脂製の殻の内部にイソブタンを内包したマイクロカプセル発泡剤5重量部とを混合して、水性樹脂塗工剤を調製した。
【0086】
<吸放湿性材料の作製>
上記水性樹脂塗工剤を、通常の壁紙用裏打紙の表面に、乾燥後の塗布厚100μmに塗布し、100℃で3分間乾燥させた後、220℃に加熱して発泡させると同時に、シリカゲル粉末を内包するマイクロカプセルの殻を破壊して、本発明の吸放湿性材料を作製した。
【0087】
参考例4
上記参考例3において、水性樹脂塗工剤の乾燥後の発泡を、シリカゲル粉末を内包するマイクロカプセルの殻が破壊されない160℃で行い、しかる後、250℃30秒間の条件で加熱エンボス加工を施して、凹凸模様を賦形すると同時にマイクロカプセルの殻を破壊して、本発明の吸放湿性材料を作製した。
【0088】
参考例5
上記参考例4において、加熱エンボス加工後の塗膜の表面に、透湿性ポリウレタン系樹脂をスプレーコート法にて乾燥後の厚み3μmに塗布して、透湿性の保護層を形成して、本発明の吸放湿性材料を作製した。
【0089】
上記参考例3〜5の吸放湿性材料について、前記と同一の条件で吸放湿試験を実施したところ、これらはいずれも上記参考例1とほぼ同等の吸放湿効果を示すことが確認された。
【0090】
【発明の効果】
以上詳細に説明したとおり、本発明の吸放湿材料の製造方法によれば、吸放湿媒体を非透水性の殻で被覆したマイクロカプセルとすることにより、増粘やゲル化等により塗工を困難にすることなく、水性樹脂塗工剤中への配合量を従来より格段に増すことが可能となる。
【0091】
しかも、該マイクロカプセルに内包される吸放湿媒体は、水性樹脂塗工剤の配合中や塗工中に水分を吸収したり、乾燥中にその水分を放出したりすることがないから、乾燥に要する熱量や乾燥時間等の負荷を増すことがなく、乾燥中の水分放出により塗膜の表面が粗れたりすることもない。
【0092】
そして、該塗工剤の塗工後に、該マイクロカプセルの少なくとも一部の殻を加熱及び/又は加圧により破壊することにより、該マイクロカプセルに内包される吸放湿媒体を殻の外に露出させることができることから、従来よりも格段に優れた吸放湿効果を発現させることができるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び比較例の吸放湿性能試験結果を示すグラフ。

Claims (14)

  1. 非透水性の殻の内部に、吸水性物質及び吸湿性物質を少なくとも含む吸放湿媒体を内包したマイクロカプセルを、水性樹脂の溶液又は水分散液中に分散してなる水性樹脂塗工剤を、基材上に塗布し乾燥させて塗膜を形成した後、前記塗膜中のマイクロカプセルの少なくとも一部の殻を破壊して、該マイクロカプセルに内包された吸放湿媒体を殻の外に露出させて、吸放湿性樹脂層を形成することを特徴とする吸放湿性材料の製造方法。
  2. 前記マイクロカプセルの殻の破壊を、加熱により行うことを特徴とする請求項1に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  3. 前記マイクロカプセルの殻の破壊を、加圧により行うことを特徴とする請求項1に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  4. 前記マイクロカプセルの殻の破壊を、加熱及び加圧の併用により行うことを特徴とする請求項1に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  5. 前記マイクロカプセルの殻は熱可塑性樹脂からなり、前記加熱は該熱可塑性樹脂の融点以上の温度にまで加熱することを特徴とする請求項2又は4に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  6. 前記水性樹脂塗工剤にさらに発泡剤を配合し、塗膜の形成後に発泡させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸放湿性材料の製造方法。
  7. 前記発泡は加熱により行い、該加熱により該発泡と同時に前記マイクロカプセルの殻の破壊を行うことを特徴とする請求項6に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  8. 前記マイクロカプセルの殻は熱可塑性樹脂からなり、前記発泡の際の加熱は該熱可塑性樹脂の融点以上の温度にまで加熱することを特徴とする請求項7に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  9. 前記塗膜の表面にエンボス加工を施すことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸放湿性材料の製造方法。
  10. 前記エンボス加工の際の加圧により、前記マイクロカプセルの殻の破壊を行うことを特徴とする請求項9に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  11. 前記エンボス加工は加熱エンボス加工であり、該加熱エンボス加工の際の加熱及び加圧により、前記マイクロカプセルの殻の破壊を行うことを特徴とする請求項10に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  12. 前記マイクロカプセルの殻は熱可塑性樹脂からなり、前記加熱エンボス加工の際の加熱は該熱可塑性樹脂の融点以上の温度にまで加熱することを特徴とする請求項11に記載の吸放湿性材料の製造方法。
  13. 前記マイクロカプセルは、前記吸放湿性樹脂層の表面近傍に濃集していることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の吸放湿性材料の製造方法。
  14. 前記吸放湿性樹脂層の表面に、透湿性の保護層を設けることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の吸放湿性材料の製造方法。
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