以下、本発明の発泡積層シート、およびそれを形成するための積層シートについて、詳細に説明する。
A.発泡積層シート
本発明の発泡積層シートは、繊維質基材と、上記繊維質基材の一方の面側に配置された発泡樹脂層と、を少なくとも有し、上記発泡樹脂層が、樹脂成分および吸水性成分を含み、上記樹脂成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。
図1は、本発明の発泡積層シートの一例を示す概略断面図である。本発明の発泡積層シート10は、繊維質基材1と、繊維質基材1の一方の面側に配置された発泡樹脂層2と、を少なくとも有する。発泡樹脂層2は、樹脂成分および吸水性成分を含む。上記樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。発泡樹脂層2は、内部に発泡セルSを有する。
また、図2および図3は、本発明の発泡積層シートの他の例を示す概略断面図である。図2では、発泡樹脂層2の繊維質基材1側の面とは反対側の面に、非発泡樹脂層A(図2中の符号3)を有し、発泡樹脂層2の繊維質基材1側の面に、非発泡樹脂層B(図2中の符号4)を有する例を示している。また、図3では、図2に例示した構成に加え、非発泡樹脂層A(図2中の符号3)の繊維質基材1側の面とは反対側の面に絵柄模様層5を有し、さらに絵柄模様層5の発泡樹脂層2側の面とは反対側の面に表面保護層6を有する例を示している。
本発明によれば、上記発泡樹脂層の樹脂成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とするため、上記発泡樹脂層の表面強度を向上させることができる。また、上記発泡樹脂層が吸水性成分を含むため、例えば水系糊の塗布により繊維質基材に吸収された水分が、さらに上記発泡樹脂層に移行して吸水性成分に吸収されることで、上記発泡樹脂層も膨潤可能となる。これにより、上記発泡樹脂層が上記繊維質基材の膨潤に追従可能となり、上記繊維質基材と上記発泡樹脂層との間での体積膨張率差が小さくなるため、カールの発生を抑制することができる。このように、本発明によれば、上記発泡樹脂層を特定の組成を含むものとすることで、耐傷性および耐カール性が良好な発泡積層シートとすることができる。
以下、本発明の発泡積層シートについて、構成部材ごとに説明する。
1.発泡樹脂層
本発明における発泡樹脂層は、上記繊維質基材の一方の面側に配置され、樹脂成分および吸水性成分を含む。上記発泡樹脂層は、後述する積層シートにおける発泡剤含有樹脂層の発泡後の層であり、内部に発泡セルを有する。
(1)組成
上記発泡樹脂層は、樹脂成分および吸水性成分を含み、上記樹脂成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。
(a)樹脂成分
上記発泡樹脂層に含まれる樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。
(i)オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物
上記樹脂成分におけるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、少なくとも1種のオレフィンと、少なくとも1種の不飽和カルボン酸と、をモノマー成分として含む化合物である。また、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物とは、上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の分子鎖が架橋したポリマーである。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、二元または三元以上の共重合体であってもよい。上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、1種単独または2種以上を組み合わせて含まれる。
上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらのオレフィンの中でも、エチレンが特に好ましい。
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸の中でも、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが特に好ましい。
中でも上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−メタクリル酸共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、エチレン−メタクリル酸共重合体であることがより好ましい。上記発泡樹脂層の発泡状態が良好となり、かつ実用的な表面強度を得られるからである。なお、エチレン−アクリル酸共重合体をEAA、エチレン−メタクリル酸共重合体をEMAAと表記する場合がある。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体における上記不飽和カルボン酸の含有量は、特に限定されないが、例えば5質量%以上が好ましく、10質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。発泡樹脂層がより優れた表面強度を有することができるからである。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の共重合比率としては、その種類にもよるが、上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体がEAAまたはEMAAの場合であれば、EAAにおけるアクリル酸またはEMAAにおけるメタクリル酸の含有量が、例えば4質量%以上20質量%以下であることが好ましく、中でも10質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。EAAにおけるアクリル酸またはEMAAにおけるメタクリル酸の含有量を上記範囲とすることで、アクリル酸またはメタクリル酸の極性による相互作用に由来する強靭性と、エチレン鎖が形成する結晶化度に由来する硬度と、のバランスに優れるからである。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を主成分とする樹脂成分のメルトフローレート(MFR)値は、溶融押出適性の観点から、例えば5g/10分以上200g/10分以下であることが好ましく、中でも20g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を主成分とする樹脂成分のMFR値を上記範囲とすることで、上記発泡樹脂層の発泡前の層である発泡剤含有樹脂層を押出製膜により形成する際に、温度上昇を抑えて非発泡状態で製膜できる。なお、MFR値が大きすぎると、得られる発泡樹脂層が軟らかすぎて、耐傷性に劣る場合がある。
上記MFR値は、JIS K7210:2014「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方」に記載の試験方法により、温度190℃、加重21.18N(2.16kgf)の条件で測定することができる。
上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の分子鎖が架橋したポリマーである。すなわち、上記発泡樹脂層がオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物を含むとは、上記発泡樹脂層中のオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の一部または全部が架橋していることをいう。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物を構成するオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体については、先に説明したとおりである。中でも、上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物が、EMAAの架橋物であることが好ましい。上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物は、上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体が電子線照射等により架橋された架橋物であってもよく、架橋剤により架橋された架橋物であってもよい。
(ii)オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物以外の樹脂
上記樹脂成分には、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物以外の樹脂を含んでいてもよい。オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物以外の樹脂としては、例えばポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルメタクリレート共重合体(EEMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらは1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。また、上記発泡樹脂内において、これらの樹脂は、一部または全部が架橋した架橋物として含まれていてもよい。なお、上記樹脂成分には、後述する有機系吸水性材料は含まれない。
(iii)その他
上記樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。ここで、主成分するとは、上記樹脂成分中でオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方が占める割合が最も多いことをいい、上記樹脂成分中でオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を主成分とする場合と、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物を主成分とする場合と、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の混合物を主成分とする場合とがある。中でも、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物、またはオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の混合物を主成分とすることが好ましく、特にオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物を主成分とすることが好ましい。すなわち、上記発泡樹脂層は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の一部または全部が架橋していることが好ましい。より強固で、耐スクラッチ性、耐摩耗性に優れた発泡樹脂層とすることができるからである。
オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とするとは、具体的には、上記樹脂成分100質量%中のオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方の含有量が、70質量%以上であることが好ましく、中でも80質量%以上であることが好ましく、特に90質量%以上であることが好ましい。また、上記含有量は100質量%、すなわち上記樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方のみであってもよく、100質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。中でも、上記樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方のみであることが好ましい。なお、上記樹脂成分には、後述する有機系吸水性材料は含まれない。
上記樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の中でも、EMAAおよびその架橋物の少なくとも一方を主成分とすることが好ましく、上記樹脂成分が、EMAAおよびその架橋物の少なくとも一方のみであることがより好ましい。
上記発泡樹脂層100質量%(全固形分)中の上記樹脂成分の含有量としては、30質量%以上80質量%以下とすることができ、好ましくは40質量%以上70質量%以下、より好ましくは50質量%以上60質量%以下とすることができる。上記発泡樹脂層中の上記樹脂成分の含有量が上記の範囲よりも多いと、例えば本発明の発泡積層シートを発泡壁紙として用いた際に隠蔽性に劣る場合や、十分な発泡倍率が得られない場合がある。一方、上記発泡樹脂層中の上記樹脂成分の含有量が上記範囲よりも少ないと、押出製膜性に劣る場合がある。なお、上記樹脂成分には、後述する有機系吸水性材料は含まれない。
(b)吸水性成分
上記発泡樹脂層に含まれる吸水性成分は、1種または2種以上の吸水性材料を含む。上記吸水性材料としては、少なくとも吸水性を有する公知の吸水性材料を用いることができ、中でも上記樹脂成分に均一に分散し複合化することが可能な材料が好ましい。上記吸水性材料は、水を吸収して溶解する水溶性材料であってもよく、水に溶解せず水を吸収して膨潤する水膨潤性材料であってもよい。このような吸水性材料は、有機系吸水性材料であってもよく、無機系吸水性材料であってもよい。
上記有機系吸水性材料としては、例えば、熱可塑性を有する親水性高分子が挙げられる。上記親水性高分子は、水を吸収して溶解する水溶性高分子であってもよく、水に溶解せず水を吸収して膨潤する水膨潤性高分子であってもよい。このような親水性高分子としては、例えばカルボキシル基含有高分子、ビニルポリマー、ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイド、吸水性ポリマー、セルロース、セルロース誘導体、または天然高分子からなる群より選択される少なくとも1種とすることができる。これらは、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が混合して含まれていてもよい。
上記カルボキシル基含有高分子としては、例えばカルボキシメチルセルロース;ポリアクリル酸;ポリメタクリル酸;メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体;スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体;スチレン−無水マレイン酸共重合体;メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、エチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、イソブチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等のビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体;またはこれらの塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体)等が挙げられる。
上記ビニルポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のポリビニルエーテル;ポリビニルピロリドン;ポリアミリルアミド;またはこれらの架橋重合体が挙げられる。
上記ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドは、ポリアルキレンオキサイドを主鎖とするノニオン型の架橋物であり、水不溶性で、水を吸収すると膨潤してゲル状体を形成することができる。上記ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドは、ポリアルキレンオキサイドを電子線架橋した架橋物であってもよく、分子内にウレタン結合を有する化合物であってもよい。上記ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドが、分子内にウレタン結合を有する化合物であるとは、上記ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドが、イソシアネート化合物で架橋した架橋物であることをいう。なお、分子内にウレタン結合を有するノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドのことを、ノニオン型ポリアルキレンオキサイド変性物と称する。中でも上記ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドが、分子内にウレタン結合を有する化合物であること、すなわちノニオン型ポリアルキレンオキサイド変性物であることが好ましい。
上記ノニオン型ポリアルキレンオキサイド変性物は、分子内にウレタン結合を有する化合物であり、このようなノニオン型ポリアルキレンオキサイド変性物としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドをイソシアネート化合物で架橋したノニオン型ポリアルキレンオキサイド変性物、ポリアルキレンオキサイドとポリオールとをイソシアネート化合物で架橋したノニオン型ポリアルキレンオキサイド変性物等が挙げられる。
上記ポリアルキレンオキサイドとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレンオキサイド及びこれらの混合物等が挙げられる。上記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、所望のノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドを形成可能な分子量であれば特に限定されず、ポリアルキレンオキサイドの種類、ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドの種類等に応じて適宜設定することができる。上記ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量としては、例えば500以上であってもよく、1000以上であってもよく、1万以上であってもよい。また、上記重量平均分子量は、600万以下であってもよく、50万以下であってもよく、10万以下であってもよく、5万以下であってもよく、2万以下であってもよい。重量平均分子量の測定方法は、特に制限されないが、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
上記ポリオールとしては、分子量500以下の低分子ジオールであることが好ましい。上記低分子ジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール等のグリコール類、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセリルモノブチレート、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリルモノアセテート等の脂肪族または芳香族ジオールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用することもできる。
上記イソシアネート系化合物としては、分子内にイソシアネート基(−NCO)を1個または2個以上有する脂肪族または芳香族ジイソシアネートが挙げられる。ここでは、脂環族ジイソシアネートも含む。具体的には、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,8−ジメチルベンゾール−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,2’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用することもできる。
上記吸水性ポリマーとしては、例えば、架橋ポリアクリル酸;アクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体鹸化物;澱粉−アクリル酸グラフト共重合体;澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体;セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体;イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の架橋物;架橋ポリエチレンオキサイド又はこれらの塩等が挙げられる。
上記セルロースとしては、例えば木粉;セルロース粉末等が挙げられる。また、上記セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース;エチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
上記天然高分子としては、例えば澱粉;デキストリン類;グアーゴム;アラビアゴム;トラガントゴム;アルギン酸ナトリウム;カラギーナン;寒天;ゼラチン;コラーゲン(膠質);カゼイン;キトサ等が挙げられる。
上記無機系吸水性材料としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、活性炭、活性白土、活性酸化アルミニウム、クレー、カオリン、タルク、ベントナイト、セピオライト、珪酸アルミニウム等が挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が任意に混合して含まれていてもよい。
上記吸水性材料は、吸水性に加えてさらに離水性を有することが好ましい。すなわち上記吸水性材料は、吸放湿性を有することが好ましい。吸放湿性とは、高湿度状況下では水分を吸収し、乾燥状況下では水分を放出する(離水する)機能をいう。上記吸水性材料が吸放湿性を有することで、本発明の発泡積層シートを、例えば発泡壁紙として用いる場合、糊付け施工時は、水系糊の塗布により高湿度状況となるため、繊維質基材から移行した水分を吸水性材料が吸収して、上記発泡樹脂層が膨潤することができる。一方、施工後は、乾燥により上記吸水性材料が水分を放出して上記発泡樹脂層が水分を包含しない状態となるため、カビ発生や湿気による被着体および発泡壁紙の劣化等を抑制することができる。
上記吸水性材料は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば三洋化成工業(株)製の「サンウェット」、「アクアパール」、日本触媒製の「アクアリック」(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)、住友精化(株)製「アクアキープ」(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)、「アクアコーク」(変性ポリアルキレンオキサイド)等が挙げられる。
上記吸水性成分は、有機系吸水性材料である親水性高分子を含んでいてもよく、無機系吸水性材料を含んでいてもよく、親水性高分子および無機系吸水性材料の両方を含んでいてもよい。中でも上記吸水性成分は、親水性高分子を主成分とすることがより好ましい。親水性高分子は、樹脂成分に均一に分散し複合化することが可能であり、分散および複合化された親水性高分子が吸水することで、発泡樹脂層全体で均一に膨潤することが可能となり、耐カール性をより良好とすることができるからである。ここで、上記吸水性成分が、親水性高分子を主成分とするとは、上記吸水性成分中に親水性高分子が占める割合が最も多いことをいい、具体的には、上記吸水性成分100質量%中の親水性高分子の含有量が、70質量%以上であることが好ましく、好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。すなわち、上記吸水性成分が、親水性高分子のみを含むことが特に好ましい。中でも、上記吸水性成分は、ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドを主成分とすることが好ましく、ノニオン型架橋ポリアルキレンオキサイドのみを含むことがより好ましい。
上記発泡樹脂層中の吸水性成分の含有量としては、樹脂成分100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下とすることができ、好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上10質量部以下とすることができる。上記吸水性成分の含有量が上記の範囲よりも少なすぎると、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の疎水性に起因したカール発生を十分に抑制することができない場合がある。一方、上記吸水性成分の含有量が上記範囲よりも多すぎると、上記発泡樹脂層中の樹脂成分の含有量が低下して、所望の表面強度が得られない場合がある。
(c)無機充填剤
上記発泡樹脂層は、上述した樹脂成分および吸水性成分の他に、難燃性付与、目透き抑制、表面強度向上等を目的として、無機充填剤を含んでいてもよい。上記無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、二酸化チタン等が挙げられる。なお、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
上記無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、例えば樹脂成分100質量部に対して0量部以上100質量部以下程度とすることができ、好ましくは20質量部以上70質量部以下程度である。
(d)添加剤
上記発泡樹脂層は、必要に応じて、顔料、酸化防止剤、架橋剤、架橋助剤、表面処理剤防カビ剤、防虫剤、防腐剤、抗菌剤、希釈剤、消臭剤、光安定剤、可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、未発泡の発泡剤が含まれていてもよい。
(2)構造
上記発泡樹脂層は、内部に発泡セルを有する。上記発泡セルは、独立気泡であってもよく連続気泡であってもよく、独立気泡と連続気泡とが混在していてもよい。また、上記発泡セルの数、大きさ、密度、形状等は特に限定されず、本発明の発泡積層シートの種類、用途等に応じて適宜設計することができる。上記発泡セルは、上記発泡樹脂層の形成に用いられる発泡剤含有樹脂組成物に含まれる発泡剤を発泡して形成することができる。
上記発泡樹脂層の厚みは、特に限定されないが、例えば350μm以上1500μm以下とすることができ、好ましくは500μm以上1200μm以下とすることができる。
上記発泡樹脂層は、架橋されていることが好ましい。すなわち、上記発泡樹脂層に含まれる樹脂成分が、少なくともオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物を含むことが好ましく、上記樹脂成分がオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物であることがより好ましい。
2.繊維質基材
本発明における繊維質基材は、本発明の発泡積層シートの積層方向において一方の最外層となる部材である。
上記繊維質基材は、水膨潤性を有するものが好適に用いられる。このような繊維質基材としては、例えば紙、不織布、織布等、壁紙用途に用いられる公知の材料が挙げられる。上記紙は、一般紙であってもよく、難燃紙であってもよい。
上記難燃紙は、一般紙の中に難燃剤を含有させたものである。上記難燃剤としては、例えば尿素、アンモニウム化合物等の窒素化合物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物(好ましくは水和物);自消性を有するリン又はハロゲン元素を含む難燃剤等が挙げられる。中でも水酸化マグネシウム等のように結晶水を含む化合物を配合することにより、燃焼分解時に結晶水の気化熱によって好適に難燃化を図ることができる。
上記不織布は、抄紙式等の湿式不織布であってもよく、接着剤式、機械結合式(ニードルパンチ、ステッチボンド)、スパンボンド式等の乾式不織布であってもよい。上記不織布として具体的には、レーヨン紙、パルプを混抄したもの、和紙、ガラス不織布、石綿不織布、ポリエステル不織布、ポリカーボネート不織布等の樹脂繊維不織布が挙げられる。
上記繊維質基材は、必要に応じて、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色剤、サイズ剤、定着剤等の任意の材料を含むことができる。
上記繊維質基材の厚みは特に限定されず、本発明の発泡積層シートの用途に応じて適宜設定することができる。
3.任意の構成
本発明の発泡積層シートは、上述した繊維質基材および発泡樹脂層を少なくとも有するが、任意の構成を含むことができる。
(1)非発泡樹脂層A
本発明においては、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に、非発泡樹脂層Aを有することができる。上記の位置に配置される非発泡樹脂層Aは、表面保護機能を有することで、上記発泡樹脂層の表面強度をより高めることができる。すなわち、上記非発泡樹脂層Aは、発泡樹脂層保護層とすることができる。
上記非発泡樹脂層Aを構成する樹脂成分としては、例えばポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上を混合して使用できる。中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、エチレンと炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン(LLDPE))、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。他の(メタ)と記載された部分についても同様である。
上記非発泡樹脂層Aは、充填剤、着色剤、光安定剤、発泡剤、その他滑剤、抗菌剤等の公知の添加物を含んでもよい。上記非発泡樹脂層Aは透明でもよく、無着色でもよく、また着色してもよい。
上記非発泡樹脂層Aの厚みは特に限定されず、上述した所望の機能を発揮できる大きさに適宜設定することができる。上記厚みとしては、例えば2μm以上50μm以下程度とすることができ、好ましくは5μm以上20μm以下程度とすることができる。
(2)非発泡樹脂層B
本発明においては、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面に、非発泡樹脂層Bを有することができる。すなわち、上記非発泡樹脂層Bは、上記繊維質基材と上記発泡樹脂層との間に配置される。上記の位置に配置される非発泡樹脂層Bは、接着機能を有することで、発泡樹脂層と繊維質基材との接着性を高めることができる。すなわち、上記非発泡樹脂層Bは、接着層とすることができる。
上記非発泡樹脂層Bを構成する樹脂成分は、接着性を有する樹脂を含む。上記樹脂としては、特に限定されず、一般的な接着剤に用いられる公知の樹脂と同様とすることができる。例えば、カルボン酸変性オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上を混合して使用できる。
中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく、酢酸ビニル成分(VA成分)の含有量(共重合比率)が10質量%以上46質量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)がさらに好ましく、15質量%以上41質量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)がより好ましい。
上記非発泡樹脂層Bの厚みは特に限定されず、上述した所望の機能を発揮できる大きさに適宜設定することができる。上記厚みとしては、例えば5μm以上50μm以下程度とすることができる。
(3)絵柄模様層
本発明の発泡積層シートは、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に、絵柄模様層を有することができる。本発明の発泡積層シートに、意匠性を付与することができるからである。
上記絵柄模様層は、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に直接接していてもよく、プライマー層や接着層を介して接していてもよい。また、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に非発泡樹脂層Aを有する場合であれば、上記絵柄模様層は、上記非発泡樹脂層Aの上記発泡樹脂層側の面とは反対側の面に有することができる。上記の場合、上記絵柄模様層は、上記非発泡樹脂層Aと直接接していてもよく、プライマー層や接着層を介して接していてもよい。
上記絵柄模様層は、少なくとも絵柄模様部を有し、絵柄模様層の形成方法に応じて、上記絵柄模様部を支持する支持層を有していてもよい。
上記絵柄模様部が示す絵柄模様は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。上記絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様等が挙げられる。
上記絵柄模様層は、例えば、支持層の一方の面に、印刷用インキを用いて絵柄模様部を印刷して形成することができる。また、上記支持層にかえて上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面、または上記非発泡樹脂層Aの上記発泡樹脂層とは反対側の面に、印刷用インキを用いて絵柄模様部を直接印刷して形成してもよい。
上記絵柄模様部を形成する印刷用インキは、例えば着色剤、結着材樹脂および溶剤を少なくとも含む組成とすることができる。上記印刷用インキの組成の詳細については、例えば特開2017−43009号公報、特開2011−179161号公報等に開示される絵柄模様層の形成に用いられる印刷インキの組成と同様とすることができる。また、上記印刷用インキは公知又は市販のものを使用することができる。印刷方法は特に限定されず、公知の印刷方法を用いることができる。また、上記絵柄模様部が全面ベタ状に形成される場合は、公知の塗工方法を用いてもよい。
上記絵柄模様層の厚みは特に限定されず、絵柄模様の種類に応じて適宜設定することができる。上記厚みとしては、例えば0.1μm以上10μm以下程度とすることができる。
(4)プライマー層
本発明の発泡積層シートは、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に、プライマー層を有することができる。
上記プライマー層に含有される樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等が挙げられる。中でもアクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂等が好ましい。
上記プライマー層の厚みは特に限定されず、適宜設定することができる。上記厚みとしては、例えば0.1μm以上10μm以下程度とすることができ、好ましくは0.1μm以上5μm以下程度である。
上記プライマー層は、本発明の発泡積層シートの層構成に応じて、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に配置された複数の層の層間に配置することができる。上記プライマー層の配置位置としては、例えば、上記発泡樹脂層と非発泡樹脂層Aとの層間、非発泡樹脂層Aと絵柄模様層との層間、非発泡樹脂層Aと表面保護層との層間、絵柄模様層と表面保護層との層間等が挙げられるが、これに限定されない。
(5)表面保護層
本発明の発泡積層シートは、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側とは反対側の最外に、表面保護層を有することができる。本発明の発泡積層シートの表面強度を高めることができるからである。
上記表面保護層の種類は特に限定されず、艶調整や絵柄模様層の保護等、表面保護層を設ける目的により、適宜選択することができる。例えば、艶調整を目的とする場合であれば、上記表面保護層としては、例えば、シリカ等の既知の艶消し剤を含むものとすることができる。また、本発明の発泡積層シートの表面強度(耐スクラッチ性等)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的とする場合であれば、上記表面保護層としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂の硬化物を樹脂成分として含有するものとすることができる。
上記表面保護層の厚みは特に限定されず、適宜設定することができる。上記厚みとしては、例えば、0.5μm以上10μm以下程度とすることができる。
上記表面保護層は、上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面と直接接していてもよく、プライマー層や接着層を介して接していてもよい。
上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に非発泡樹脂層Aを有する場合であれば、上記表面保護層は、上記非発泡樹脂層Aの上記発泡樹脂層側の面とは反対側の面に有することができる。上記の場合、上記表面保護層は、上記非発泡樹脂層Aと直接接していてもよく、プライマー層や接着層を介して接していてもよい。
上記発泡樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に絵柄模様層を有する場合であれば、上記表面保護層は、上記絵柄模様層の上記発泡樹脂層側の面とは反対側の面に有することができる。上記の場合、上記表面保護層は、上記絵柄模様層と直接接していてもよく、プライマー層や接着層を介して接していてもよい。
(6)エンボス模様
本発明の発泡積層シートの、繊維質基材とは反対側の最表面には、エンボス模様が付されていてもよい。上記エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等があり、これらの組み合わせであってもよい。
4.製造方法
本発明の発泡積層シートの製造方法としては、例えば、上記繊維質基材と、上記繊維質基材の一方の面側に配置され、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする樹脂成分、発泡剤、並びに吸水性成分を少なくとも含む発泡剤含有樹脂層と、を少なくとも有する積層シートを加熱して、上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とする発泡工程を有する方法が挙げられる。なお、積層シートの製造方法については、後述する。上記発泡工程における加熱温度、加熱時間は、発泡剤含有樹脂層に含まれる発泡剤の分解により層内に発泡セルが形成可能となる条件であれば特に限定されず、発泡剤含有樹脂層の組成に応じて適宜設定することができる。
5.用途
本発明の発泡積層シートは、発泡壁紙、各種装飾材等の内装材として用いることができる。中でも発泡壁紙として有用である。
B.積層シート
本発明の積層シートは、繊維質基材と、上記繊維質基材の一方の面側に配置された発泡剤含有樹脂層と、を少なくとも有し、上記発泡剤含有樹脂層が、樹脂成分、吸水性成分、および発泡剤を含み、上記樹脂成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。
図4は、本発明の積層シートの一例を示す概略断面図である。本発明の積層シート100は、繊維質基材1と、繊維質基材1の一方の面側に配置された発泡剤含有樹脂層20と、を少なくとも有する。発泡剤含有樹脂層20は、樹脂成分、吸水性成分、および発泡剤を含む。上記樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。発泡剤含有樹脂層20は未発泡であるため、図1で例示した発泡樹脂層2とは異なり、層内部に発泡セルSを有さない。
本発明の積層シートは、加熱等により、発泡剤含有樹脂層内で発泡剤が発泡して発泡樹脂となる。これにより、上記「A.発泡積層シート」の項で説明した発泡積層シートを形成することができる。
本発明によれば、上記発泡剤含有樹脂層の樹脂成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とするため、上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて、表面強度の高い発泡樹脂層を形成することができる。また、上記発泡剤含有樹脂層が吸水性成分を含むため、上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて、膨潤可能な発泡樹脂層を形成することができ、カールの発生を抑制することができる。このように、本発明によれば、上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて、耐傷性および耐カール性が良好な発泡積層シートを形成することができる。
以下、本発明の積層シートについて、構成部材ごとに説明する。
1.発泡剤含有樹脂層
本発明における発泡剤含有樹脂層は、上記繊維質基材の一方の面側に配置され、樹脂成分、吸水性成分、および発泡剤を含む。上記発泡剤含有樹脂層は、内部に発泡セルを有さない。
(1)組成
上記発泡剤含有樹脂層は、樹脂成分、吸水性成分、および発泡剤を含み、上記樹脂成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とする。
(a)樹脂成分
上記発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分については、上記「A.発泡積層シート」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
上記発泡剤含有樹脂層においては、上記樹脂成分は、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の少なくとも一方を主成分とするが、中でも、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物、またはオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体およびその架橋物の混合物を主成分とすることが好ましく、特にオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物を主成分とすることが好ましい。上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて、より強固で、耐スクラッチ性、耐摩耗性に優れた発泡樹脂層を形成することができるからである。また、上記オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、中でも、エチレン−アクリル酸およびエチレン−メタクリル酸からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。上記発泡剤含有樹脂層の発泡適性が良好となり、かつ実用的な表面強度を有する発泡樹脂層を得られるからである。なお、樹脂成分の主成分の定義については、上記「A.発泡積層シート」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
(b)吸水性成分
上記発泡剤含有樹脂層に含まれる吸水性成分については、上記「A.発泡積層シート」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
上記発泡剤含有樹脂層においては、上記吸水性成分が、親水性高分子を主成分とすることが好ましい。上記発泡剤含有樹脂層内において、吸水性成分が上記樹脂成分に均一に分散し複合化するため、上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて、層全体で均一に膨潤することが可能な発泡樹脂層を形成することができるからである。
また、上記発泡剤含有樹脂層においては、上記吸水性成分の含有量が、樹脂成分100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。上記発泡剤含有樹脂層を発泡させて、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の疎水性に起因したカール発生を十分に抑制しつつ、表面強度の高い発泡樹脂層を形成することができるからである。上記吸水性成分の含有量の、より好ましい範囲については、上記「A.発泡積層シート」の項で説明した発泡樹脂層中の吸水性成分の含有量と同様とすることができる。
(c)発泡剤
上記発泡剤含有樹脂層に含まれる発泡剤は、公知の発泡剤から選択することができる。上記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系などの有機系熱分解型発泡剤や、マイクロカプセル型発泡剤、重曹などの無機系発泡剤等が挙げられる。これらは、上記発泡剤含有樹脂層中に1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。中でも上記発泡剤含有樹脂層は、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を含むことが好ましい。
上記発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率は、例えば1.5倍以上、好ましくは3倍以上7倍以下程度とすることができる。また、上記発泡剤の含有量は、上記発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下程度とすることができ、好ましくは3質量部以上10質量部以下とすることができる。なお、上記樹脂成分には、有機系吸水性材料は含まないものとする。
(d)発泡助剤
上記発泡剤含有樹脂層は、発泡助剤を含むことができる。上記発泡助剤としては、例えば金属酸化物、脂肪酸金属塩等の、発泡助剤として用いられる公知の材料が挙げられ、上記発泡剤の種類に応じて適宜選択することができる。上記発泡助剤として具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、カルボン酸ヒドラジド化合物等が挙げられる。これらは、上記発泡剤含有樹脂層中に1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
中でも上記発泡剤含有樹脂層は、発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を含むことが好ましい。カルボン酸ヒドラジド化合物は、カルボキシル基を有するオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体と組み合わせて使用しても、化学的な反応により発泡助剤の効能を失活しにくい。このため、上記発泡剤含有樹脂層の発泡の際に生じる焼けや発色団の形成により、発泡樹脂層や繊維質基材等が黄変することを抑制できるからである。カルボン酸ヒドラジド化合物としては、例えば、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物が挙げられる。具体的なモノヒドラジド化合物、ジヒドラジド化合物およびポリヒドラジド化合物については、例えば特開2009−197219号公報に開示される化合物とすることができる。これらは、上記発泡剤含有樹脂層中に1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
上記発泡助剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、上記発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上10質量部以下程度とすることができ、好ましくは1質量部以上5質量部以下とすることができる。なお、上記樹脂成分には、有機系吸水性材料は含まないものとする。
また、上記発泡剤含有樹脂層は、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を含み、上記発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を含むことが好ましい。この場合のカルボン酸ヒドラジド化合物の含有量としては、例えばアゾジカルボンアミド(ADCA)1質量部に対して0.2質量部以上1質量部以下程度とすることができる。
(e)その他
上記発泡剤含有樹脂層は、無機充填剤や任意の添加剤を含んでいてもよい。無機充填剤および任意の添加剤については、上記「A.発泡積層シート」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
(2)構造
上記発泡剤含有樹脂層の厚みは、発泡後の発泡樹脂層の厚みを所望の範囲とすることができれば特に限定されないが、例えば30μm以上300μm以下とすることができ、好ましくは50μm以上150μm以下である。
上記発泡剤含有樹脂層は、架橋されていることが好ましい。すなわち、上記発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分が、少なくともオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物を含むことが好ましく、上記樹脂成分がオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の架橋物であることがより好ましい。
2.繊維質基材
本発明における繊維質基材については、上記「A.発泡積層シート」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
3.任意の構成
本発明の積層シートは、上述した繊維質基材および発泡剤含有樹脂層を少なくとも有するが、さらに任意の構成を含むことができる。例えば、本発明の積層シートは、上記発泡剤含有樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に、非発泡樹脂層Aを有することができる。上記非発泡樹脂層Aが表面保護機能を有することで、発泡剤含有樹脂層および上記発泡剤含有樹脂層を発泡させてなる発泡樹脂層の表面強度をより高めることができるからである。
また、本発明の積層シートは、上記発泡剤含有樹脂層の上記繊維質基材側の面に、非発泡樹脂層Bを有することができる。上記非発泡樹脂層Bが接着機能を有することで、上記繊維質基材と発泡剤含有樹脂層および上記発泡剤含有樹脂層を発泡させてなる発泡樹脂層との接着性を高めることができるからである。
上記非発泡樹脂層Aおよび非発泡樹脂層Bについては、上記「A.発泡積層シート」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
また、本発明の積層シートは、上記発泡剤含有樹脂層の上記繊維質基材側の面とは反対側の面に、例えば絵柄模様層、プライマー層、表面保護層等を有することができる。さらに、本発明の発泡積層シートの、繊維質基材とは反対側の最表面には、エンボス模様が付されていてもよい。絵柄模様層、プライマー層、および表面保護層、ならびにエンボス模様については、上記「A.発泡積層シート」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
4.製造方法
本発明の積層シートの製造方法としては、例えば、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を主成分とする樹脂成分、発泡剤、および吸水性成分を少なくとも含む発泡剤含有樹脂組成物を用いて、繊維質基材上に発泡剤含有樹脂層を形成する発泡剤含有樹脂層形成工程を有する方法が挙げられる。
上記発泡剤含有樹脂組成物に含まれる樹脂成分、発泡剤、および吸水性成分については、「1.発泡剤含有樹脂層」の項で説明した各材料と同様である。
上記発泡剤含有樹脂組成物を用いて繊維質基材上に発泡剤含有樹脂層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、繊維質基材上に、Tダイ押出し機により上記発泡剤含有樹脂組成物を押出して製膜する押出しラミネート法を用いることができる。また、発泡剤含有樹脂組成物を押出して発泡剤含有樹脂層のシートを形成後、別工程で上記発泡剤含有樹脂層のシートを繊維質基材にラミネートしてもよい。押出製膜時のシリンダー温度及びダイス温度は、適宜調整することができる。
本発明の積層シートの製造方法は、発泡剤含有樹脂層形成工程後に、上記発泡剤含有樹脂層に電子線を照射して樹脂成分を架橋する電子線照射工程を有していてもよい。上記発泡剤含有樹脂層に含まれるオレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の一部または全部が架橋して架橋物を形成することができ、最終的に得られる発泡樹脂層の表面強度、発泡特性等を調整することができるからである。電子線のエネルギー強度は、特に限定されないが、例えば150kV以上250kV以下程度とすることができ、好ましくは175kV以上200kV以下程度である。また、照射量は、特に限定されないが、例えば10kGy以上100kGy以下程度とすることができ、好ましくは10kGy以上50kGy以下程度とすることができる。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
本発明の積層シートが、上記発泡剤含有樹脂層の片面又は両面に非発泡樹脂層を有する場合には、上記発泡剤含有樹脂層の片面又は両面に非発泡樹脂層を形成する非発泡樹脂層形成工程を有することができる。非発泡樹脂層は、押出製膜により形成してもよく、各フィルムを熱ラミネートすることにより形成してもよい。中でもTダイ押出機による同時押出製膜が好適である。例えば、非発泡樹脂層Aおよび非発泡樹脂層Bの両方を設ける場合であれば、3層同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いて、発泡剤含有樹脂組成物および各非発泡樹脂層形成用の樹脂組成物を同時に押出すること、つまり発泡剤含有樹脂層形成工程と非発泡樹脂層形成工程とを同時に行うことにより、非発泡樹脂層A、発泡剤含有樹脂層、および非発泡樹脂層Bがこの順で積層された3層積層体を形成することができる。
なお、上記発泡剤含有樹脂組成物に顔料等の無機物が含まれている場合、3層同時押出製膜による方法を用いることが好ましい。上記発泡剤含有樹脂層を押出製膜により形成する際に、押出機の押出口に無機物の残渣(目やに)が発生し易く、これが発泡剤含有樹脂層の表面で異物となり易い。これに対し、3層同時押出製膜による方法を用いて、上記発泡剤含有樹脂層および非発泡樹脂層を、上記発泡剤含有樹脂層を無機物非含有の非発泡樹脂層で挟み込むようにして同時に形成することにより、目やにの発生を抑制することができる。
また、本発明の積層シートの製造方法は、上記発泡剤含有樹脂層の繊維質基材側の面とは反対側の面上に、絵柄模様やプライマー層を任意の順序で形成する工程、上記発泡剤含有樹脂層の繊維質基材側とは反対側の最外に表面保護層を設ける工程、最表面層の上からエンボス加工を施す工程等を有することができる。これらの工程は、電子線照射工程の後に行うことが好ましい。絵柄模様、プライマー層および表面保護層の各層の形成方法は、特に限定されず、例えば、印刷、塗布等の常法のコーティング法、押出製膜法等が挙げられる。また、上記エンボス模様の形成方法としては、例えば上記積層シートの繊維質基材側とは反対側の最表面層を加熱軟化後、所望のエンボス模様を有するエンボス版を押圧する方法が挙げられる。
5.用途
本発明の積層シートは、上記「A.発泡積層シート」の項で説明した発泡積層シートの形成に有用である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1〜3および比較例1〜3]
下記表1に示す配合で発泡剤含有樹脂組成物を溶融混練により調製した。
Tダイ押出機を用いて、発泡剤含有樹脂組成物を100μmの厚さになるように押出して発泡剤含有樹脂層を形成し、一方の面に裏打紙をラミネートして積層シートを形成した。押出条件は、シリンダー温度は110℃、ダイス温度を120℃とした。
上記積層シートに対し、発泡剤含有樹脂層側から電子線(200kV、35kGy)を照射した。次に、上記発泡剤含有樹脂層上に、グラビア印刷機を用いてアクリル系水性インキ(昭和インク製)をコートして、絵柄模様層を形成した。その後、上記積層シートをギアオーブンにて220℃で30秒〜40秒間加熱して、発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層とし、発泡積層シートを得た。
[評価1:耐カール性]
実施例1〜3、および比較例1〜3で得た発泡積層シートを水に浸漬し、カールの程度を目視で確認し、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
・○:全くカールせず、シートが真っ直ぐ垂れ下がる
・△:僅かカールし、シートの半分程度が巻き上がる
・×: カールし、シートの全体が巻き上がる
[評価2:耐傷性]
実施例1〜3、および比較例1〜3で得た発泡積層シートの絵柄模様層側表面に対し、日本ビニル工業会ビニル建装部会制定の「表面強化壁紙性能規定」に準拠して荷重200gで5往復の引掻き試験を行い、下記評価基準に基づいて耐傷性を評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
・○:引掻き跡の変化(毛羽立ち)がない
・△:引掻き跡が僅かに変化(毛羽立つ)
・▲:引掻き跡が大きく変化(毛羽立つ)
・×:引掻き跡の樹脂が破れ、裏打紙が露出した
[考察]
実施例1〜3で得た発泡積層シートは、発泡樹脂層が、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体であるEMAAおよびその架橋物、ならびに吸水性材料を含むことから、耐カール性および耐傷性が共に良好であった。一方、比較例1で得た発泡積層シートは、発泡樹脂層にEMAAおよびその架橋物を含むため、耐傷性は良好であったが、吸水性材料を含まないため、カールの発生を十分に抑制することができず、耐カール性が悪かった。また、比較例2、3で得た発泡積層シートは、発泡樹脂層にEMAAおよびその架橋物を含まず、EVAおよびその架橋物を含んでおり、オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体またはその架橋物を含まないため、表面強度が得られず耐傷性が悪かった。